説明

防爆型無線器

【課題】危険地域に設置された異常監視システムにおける無線電送に使用する防爆型無線器に関し、台数を増やすことなく無線電送路を容易に確保しうる防爆型無線器を提供する。
【解決手段】 耐圧防爆構造の耐圧防爆筐体20と、耐圧防爆筐体20中に収容された無線機22と、無線機22に接続された送信用アンテナ32及び受信用アンテナ42とを有する防爆型無線器において、送信用アンテナ32及び受信用アンテナ42の少なくとも一方を、耐圧防爆筐体22とは異なる防爆構造のアンテナ用筐体30,40に収容し、耐圧防爆筐体20とアンテナ用筐体30,40とをケーブル状の伝送線路50,52によって互いに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防爆型無線器に係り、特に、危険地域に設置された異常監視システムにおける無線電送に使用する防爆型無線器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントが正常に稼働しているかを常時監視する異常監視システムには、現場に設置した遠隔操作可能な工業用カメラが広く用いられている。また、監視装置本体に、カメラの他にマイクを取り付けた装置も知られている。このような異常監視システムにおける監視装置と本局との間での信号の送受信には、無線中継器を介した無線電送が広く用いられている。
【0003】
このような異常監視システムを消防法上の危険場所に設置するためには、爆発事故を未然に防止するために、危険場所に設置する監視装置を耐圧防爆構造とする必要がある。なお、危険場所とは、可燃性ガスや可燃性の液体の蒸気が存在し或いは存在する虞のある場所であり、例えば石油プラントの防爆エリアが該当する。
【0004】
図5は、防爆エリア内での無線電送に用いる従来の防爆型無線器の構造を示す概略断面図である。
【0005】
耐圧防爆構造の耐圧防爆筐体100中には、無線機102が収容されている。無線機102には、送受信用のアンテナ104が設けられている。アンテナ104は耐圧防爆筐体100の外側に突出するように設置されており、アンテナ104の突出部は防爆構造のアンテナレドーム106により覆われている。防爆エリア内で無線電送するために用いる防爆型無線器は、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2000−004533号公報
【特許文献2】特開平09−182284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示すように、従来の防爆型無線器は、送受信用のアンテナ104用のアンテナレドーム106が無線機102の本体を収容する耐圧防爆筐体100と一体になったものである。
【0007】
しかしながら、石油プラント内は装置が入り組んでおり、無線電送の見通しは悪い。このため、アンテナレドーム106が無線機102を収容する耐圧防爆筐体と一体化されていると、アンテナの設置場所が耐圧防爆筐体の場所に制限されてしまい、無線電送路の確保が困難になることがあった。また、無線電送路が確保できない場合は配置する防爆型無線器の間隔を近づけなければならず、防爆型無線器の台数を増やす必要があった。
【0008】
本発明の目的は、危険地域に設置された異常監視システムにおける無線電送に使用する防爆型無線器において、台数を増やすことなく無線電送路を容易に確保しうる防爆型無線器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、耐圧防爆構造の耐圧防爆筐体と、前記耐圧防爆筐体中に収容された無線機と、前記無線機に接続された送信用アンテナ及び受信用アンテナとを有する防爆型無線器であって、前記送信用アンテナ及び前記受信用アンテナの少なくとも一方は、前記耐圧防爆筐体とは異なる防爆構造のアンテナ用筐体に収容されており、前記耐圧防爆筐体と前記アンテナ用筐体とは、ケーブル状の伝送線路によって互いに接続されていることを特徴とする防爆型無線器によって達成される。
【0010】
また、上記の防爆型無線器において、前記少なくとも一方は、前記受信用アンテナであることが望ましい
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、防爆型無線器の送信用アンテナ及び受信用アンテナの少なくとも一方を無線機本体が収容された耐圧防爆筐体とは別のアンテナ用筐体に収容し、耐圧防爆筐体とアンテナ用筐体とをケーブル状の伝送線路によって接続するので、アンテナ用筐体を耐圧防爆筐体から独立して移動することができる。これにより、耐圧防爆筐体の制限を受けることなく、防爆監視装置等の設置場所に応じてアンテナを容易に移動することができ、見通しが悪いような場所においても無線電送路を容易に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態による異常監視システムについて図1乃至図4を用いて説明する。
【0013】
図1は本実施形態による異常監視システムの構成を示す概略図、図2は本実施形態による防爆型無線器の構造を示す概略断面図、図3及び図4は本実施形態による防爆型無線器の使用態様を示す概略断面図である。
【0014】
はじめに、本実施形態による異常監視システムについて図1及び図2を用いて説明する。
【0015】
本実施形態による異常監視システムは、石油プラントや工場等の危険場所における装置、配管等の漏洩や回転機の不具合などを監視して異常を報知するものである。
【0016】
監視対象である例えば石油プラントの防爆エリア内には、図1に示すように、プラント内を監視する防爆監視装置10a,10bと、防爆エリア内における無線電送を中継する防爆型無線器12a,12b,12cと、防爆型無線器14とが設置されている。防爆型無線器14は無線本局としての無線機であり、計器室などの非防爆エリアに設置された処理装置16に接続されている。
【0017】
防爆監視装置10a,10bには、プラントの運転音を監視するための防爆マイク(図示せず)、プラント内の様子を撮影するための防爆カメラ(図示せず)、防爆マイクからの音響データ及び防爆カメラからの画像データの送信や防爆マイク及び防爆カメラ用制御信号の受信のための防爆アンテナ(図示せず)等が搭載されている。なお、図1において、防爆監視装置10aは所定の場所に固定された固定監視装置であり、防爆監視装置10bは移動可能な移動監視装置であるものとする。
【0018】
防爆型無線器12a,12b,12cは、それぞれが図2に示すように、無線機本体22を収容する耐圧防爆構造の耐圧防爆筐体20と、送信用アンテナ32を収容する送信用アンテナ収納部30と、受信用アンテナ42を収容する受信用アンテナ収納部40とを有している。耐圧防爆筐体20と送信用アンテナ収納部30とは、ケーブル状の伝送線路50を介して互いに接続されている。同様に、耐圧防爆筐体20と受信用アンテナ収納部40とは、ケーブル状の伝送線路52を介して互いに接続されている。送信用アンテナ収納部30及び受信用アンテナ収納部40は、耐圧防爆筐体20に対してビス等により着脱可能になっている。また、伝送線路50,52は、防爆構造のフレキシブルケーブルであり、送信用アンテナ収納部30及び受信用アンテナ収納部40を移動できるようになっている。
【0019】
無線機本体22は、例えば小電力データ通信システムの無線カテゴリに属する無線機である。例えば伝送形式は、IEEE802.11gに準拠した直交周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を適用することができる。この場合、無線チャンネル数は、13チャンネルである。データ転送速度は、最高で54Mbpsである。アクセス方式は、CSMA/CA+ACK方式(RTS/CTS方式)である。セキュリティは、WEP(64/128/512Bit)、AES(128Bit)、IEEE802.1X/EAPである。電源は、AC100Vの商用電源である。なお、伝送形式には、IEEE802.11a又はIEEE802.11bを適用してもよい。
【0020】
無線機本体22を収容する耐圧防爆筐体20は、耐圧防爆仕様を満足した、例えばアルミダイキャストにより構成された耐圧防爆筐体である。耐圧防爆筐体20には、耐圧パッキン式引き込み部24,26が設けられており、防爆性能を保持しつつ伝送線路50,52と接続できるようになっている。
【0021】
送信用アンテナ収納部30は、端子ボックス34と、端子ボックス34上に接続された中空筒状のアンテナレドーム36とを有している。アンテナレドーム36は、電波を透過する材質、例えばプラスチック、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂やエポキシ樹脂等の合成樹脂又はガラス等により構成された防爆構造を有している。端子ボックス34には、耐圧パッキン式引き込み部38が設けられており、防爆性能を保持しつつ伝送線路50と接続できるようになっている。
【0022】
同様に、受信用アンテナ収納部40は、端子ボックス44と、端子ボックス44上に接続された中空筒状のアンテナレドーム46とを有している。アンテナレドーム46は、電波を透過する材質、例えばプラスチック、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂やエポキシ樹脂等の合成樹脂又はガラス等により構成された防爆構造を有している。端子ボックス44には、耐圧パッキン式引き込み部48が設けられており、防爆性能を保持しつつ伝送線路52と接続できるようになっている。
【0023】
防爆型無線器14は、処理装置16から出力される制御信号を防爆監視装置10a,10bに向けて送信し、また防爆監視装置10a,10bから出力される音響データや画像データを受信して処理装置16へ伝達するためのものである。
【0024】
処理装置16は、画像と音響データを管理する装置と、画像処理をメインに行う装置と、監視装置の移動処理をメインに行う装置とを含むものである。
【0025】
このように、本実施形態による異常監視システムは、防爆型無線器12の送信用アンテナ32及び受信用アンテナ42が、無線機本体22を収容する耐圧防爆筐体20とは別のアンテナ用筐体(送信用アンテナ収納部30、受信用アンテナ収納部40)に収容されており、送信用アンテナ32及び受信用アンテナ42の位置を耐圧防爆筐体20の位置とは独立して動かすことができるようになっていることに主たる特徴がある。
【0026】
次に、本実施形態による異常監視システムを用いたプラントの異常監視方法について図1、図3及び図4用いて説明する。
【0027】
処理装置16は、防爆監視装置10a,10bの制御用のシリアル信号を、防爆型無線器14及び防爆型無線器12a,12b,12cを介して防爆監視装置10a,10bに無線電送する。制御用のシリアル信号には、防爆監視装置10bを移動するための制御信号、防爆監視装置10a,10bの防爆カメラを水平方向及び垂直方向に駆動するための制御信号、防爆監視装置10a,10bの監視モデル情報等が含まれる。
【0028】
プラント内に設置された防爆監視装置10a,10bは、処理装置16から送信された制御用シリアル信号の情報に基づき、プラント内の監視用データを取得する。プラント内の運転音は防爆監視装置10a,10bに搭載された防爆マイクにより収集し、プラント内の外観的な様子は防爆監視装置10a,10bに搭載された防爆カメラにより撮影することができる。
【0029】
防爆監視装置10a,10bの防爆マイクにより収集された音響データ及び防爆カメラにより撮影された動画像データは、防爆型無線器12a,12b,12cを介して防爆型無線器14に無線電送される。例えば、図1に示すシステム構成では、防爆監視装置10aにより収集された監視用データは、防爆型無線器12cを介して防爆型無線器14に無線電送される。また、防爆監視装置10bにより収集された監視用データは、防爆型無線器12aを介して防爆型無線器14に無線電送される。
【0030】
防爆監視装置10bは、移動監視装置であり、処理装置16からの制御信号に基づき、例えば図1の防爆監視装置10b′の場所に移動することができる。この場合、防爆監視装置10b′により収集された監視用データは、防爆型無線器12bを介して防爆型無線器14に無線電送される。
【0031】
防爆型無線器14に伝送された監視用データは、計器室等の非防爆エリアに設けられた処理装置16に伝送され、処理装置16によって処理・監視される。すなわち、処理装置16の画像処理装置では、防爆監視装置10a,10bにより取得された画像データを、予め保存しておいた比較画像と比較して画像中の変化を検知することにより、プラント内の異常監視を行う。また、音響データを管理する装置では、防爆監視装置10a,10bにより取得された音響データから周波数スペクトルを算出し、ニューラルネットワークモデルによりプラント内の異常発生を検知する。
【0032】
上記手法に基づきプラントの監視を行うに当たり、場合によっては防爆型無線器12a,12b,12cから見た無線電送路が、プラント内の構造物により遮蔽されてしまうことが予想される。特に、移動監視装置に対して無線電送する場合は、移動監視装置がプラントの陰に隠れてしまい、アンテナ設置場所の調整が困難になることが予想される。
【0033】
この点、本実施形態による防爆型無線器は、防爆型無線器12の送信用アンテナ32及び受信用アンテナ42が、無線機本体22を収容する耐圧防爆筐体20とは別のアンテナ用筐体(送信用アンテナ収納部30、受信用アンテナ収納部40)に収容されており、送信用アンテナ32及び受信用アンテナ42の位置を耐圧防爆筐体20の位置とは独立して動かすことができる。
【0034】
したがって、無線電送路がプラント内の構造物により遮蔽されて受信用アンテナと送信用アンテナとが同時に見通せないときは、伝送線路50,52を伸ばして送信用アンテナ収納部30又は受信用アンテナ収納部40の少なくとも一方を移動して見通しが利く場所に設置することができる。すなわち、本実施形態による防爆型無線器によれば、アンテナの設置場所を簡便に変更することができるので、重く大きな耐圧防爆筐体20を移動する場合と比較して容易に無線電送路を確保することができる。
【0035】
送信用アンテナ収納部30及び受信用アンテナ収納部40を移動することなく無線電送路を確保できるような場合には、例えば図3に示すように、送信用アンテナ収納部30及び受信用アンテナ収納部40を耐圧防爆筐体20にビス等で固定する。
【0036】
送信用アンテナ収納部30及び受信用アンテナ収納部40を耐圧防爆筐体20に固定したままでは無線電送路を確保することが困難な場合には、例えば図4に示すように、例えば受信用アンテナ収納部40を、耐圧防爆筐体20から外して無線電送路を確保できる場所まで移動し、必要に応じて壁面、床面、他の装置の筐体等にビス等で固定する。
【0037】
無線電送路を確保する際には、送信アンテナ収納部30のみを移動しても良いし、受信用アンテナ収納部40のみを移動しても良いし、送信用アンテナ収納部30及び受信用アンテナ収納部40の双方を移動しても良い。送信用アンテナ収納部30及び受信用アンテナ収納部40のいずれを移動するかは、直接通信する他の無線局との位置関係に応じて適宜選択することができる。
【0038】
但し、送信用アンテナ収納部30を移動する場合には、この送信用アンテナ32から送信された電波を受信する防爆監視装置や防爆型無線器の受信アンテナの位置をも考慮する必要がある。特に、受信装置が複数ある場合には、アンテナの位置調整が煩雑となる。したがって、無線電送路を確保するためのアンテナの位置調整では、受信用アンテナ収容部40を移動する方が好ましい。
【0039】
このように、本実施形態によれば、防爆型無線器の送信用アンテナ及び受信用アンテナを無線機本体が収容された耐圧防爆筐体とは別のアンテナ用筐体にそれぞれ収容し、耐圧防爆筐体とアンテナ用筐体とをケーブル状の伝送線路によって接続するので、アンテナ用筐体を耐圧防爆筐体から独立して移動することができる。これにより、耐圧防爆筐体の制限を受けることなく、防爆監視装置等の設置場所に応じてアンテナを容易に移動することができ、見通しが悪いような場所においても無線電送路を容易に確保することができる。
【0040】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、送信用アンテナ及び受信用アンテナの双方を、無線機本体を収容する耐圧防爆筐体とは別のアンテナ用筐体に収容したが、いずれか一方(例えば、送信用アンテナ)を耐圧防爆筐体側に一体化し、他方(例えば受信用アンテナ)を無線機本体を収容する耐圧防爆筐体とは別のアンテナ用筐体に収容するようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、送信用アンテナ収納部及び受信用アンテナ収納部を、無線機本体を収容する耐圧防爆筐体に直接固定したが、送信用アンテナ収納部及び受信用アンテナ収納部を固定するスペーサを別途設け、このスペーサを耐圧防爆筐体に固定するようにしてもよい。これにより、耐圧防爆筐体上における送信用アンテナ収納部及び受信用アンテナ収納部の設置の自由度を向上することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、防爆型無線器の送信用アンテナ及び受信用アンテナを、無線機本体を収容する耐圧防爆筐体とは別のアンテナ用筐体にそれぞれ収容したが、防爆監視装置に搭載する送信用アンテナ及び受信用アンテナを、監視装置本体が収容された耐圧防爆筐体とは別のアンテナ用筐体に収容するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】

【図1】本発明の一実施形態による異常監視システムの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による防爆型無線器の構造を示す概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による防爆型無線器の使用態様を示す概略断面図(その1)である。
【図4】本発明の一実施形態による防爆型無線器の使用態様を示す概略断面図(その2)である。
【図5】従来の防爆型無線器の構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10a,10b,10b′…防爆監視装置
12a,12b,12c,14…防爆型無線器
16…処理装置
20…耐圧防爆筐体
22…無線機本体
24,26,38,48…耐圧パッキン式引き込み部
30…送信用アンテナ収納部
32…送信用アンテナ
34,44…端子ボックス
36,46…アンテナレドーム
40…受信用アンテナ収納部
42…受信用アンテナ
100…耐圧防爆筐体
102…無線機
104…アンテナ
106…アンテナレドーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧防爆構造の耐圧防爆筐体と、前記耐圧防爆筐体中に収容された無線機と、前記無線機に接続された送信用アンテナ及び受信用アンテナとを有する防爆型無線器であって、
前記送信用アンテナ及び前記受信用アンテナの少なくとも一方は、前記耐圧防爆筐体とは異なる防爆構造のアンテナ用筐体に収容されており、前記耐圧防爆筐体と前記アンテナ用筐体とは、ケーブル状の伝送線路によって互いに接続されている
ことを特徴とする防爆型無線器。
【請求項2】
請求項1記載の防爆型無線器において、
前記少なくとも一方は、前記受信用アンテナである
ことを特徴とする防爆型無線器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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