防眩性シートの製造方法、防眩性シート、及び、光学部材
【課題】表面の凹凸を簡便に制御可能な防眩性シートの製造方法ならびに製造容易な防眩性シートの提供。
【解決手段】硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有するポリマー溶液を作製し、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が前記低分子量物質よりも揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液を作製し、該ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも一面に塗布した後に前記溶媒を蒸発除去させることにより前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜を前記基材の表面に作製し、前記ポリマー成分を硬化させて硬化被膜を形成させるとともに前記低分子量物質を加熱して蒸発除去させることによって表面に凹凸を有する防眩性シートを作製する。
【解決手段】硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有するポリマー溶液を作製し、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が前記低分子量物質よりも揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液を作製し、該ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも一面に塗布した後に前記溶媒を蒸発除去させることにより前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜を前記基材の表面に作製し、前記ポリマー成分を硬化させて硬化被膜を形成させるとともに前記低分子量物質を加熱して蒸発除去させることによって表面に凹凸を有する防眩性シートを作製する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯端末用ディスプレイ、タッチパネル式入力装置等の表示装置として有用な液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイに用いられる防眩性シートの製造方法、及び、該防眩性シートが用いられてなる光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ等の表示装置は、蛍光灯などの照明光や太陽光等の外光がその表示面に入射した場合に、反射光が邪魔で画面の視認性が著しく妨げられるという問題を有している。
そのため、前記表示装置表面には、反射光をある程度拡散させて画面の視認性を向上させるために防眩層が設けられている。
【0003】
防眩層として、例えば、下記特許文献1には、粒径が0.5μm以下の微粒子を含有するノングレア層と支持体層からなるノングレアシート(防眩性シート)が開示されている。
この方法は、例えば、紫外線硬化性樹脂にシリカ(例えば、合成二酸化珪素)、金属化合物(例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア等)、高分子化合物(例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂等)の微粒子を分散させてノングレア層を形成するものである。
【0004】
しかし、この特許文献1に記載の防眩性シートの製造方法においては、フィラー等によって表面に凹凸形状を形成するため、製造工程上表面の凹凸形状を緻密に制御することが難しい。
例えば、上記のような微粒子は、凝集を生じやすいためにノングレア層において分散不良を発生させやすく、所望の防眩性が発現しなかったり、防眩性シートの透明性が低下したりするおそれを有し、場合によっては、外観不良の問題を生じさせるおそれも有する。
【0005】
また、下記特許文献2には、電離放射線硬化型樹脂を溶媒に分散させた溶液を基材となる透明フィルムに塗工し、溶媒を乾燥除去させた後、賦型フィルムを前記電離放射線硬化型樹脂にラミネートし、電離放射線を照射して、電離放射線硬化型樹脂を硬化させ、前記賦型フィルムを剥離して表面に所望の凹凸を形成させる方法が提案されている(例えば、段落〔0005〕)。
しかし、この特許文献2に記載の防眩性シートの製造方法においては、そもそも賦型フィルムに凹凸形状を形成させる手間を必要とするばかりでなく、例えば、賦型フィルムの凹部となる部分(防眩性シートの凸部となる部分)などにおいて電離放射線硬化型樹脂が賦型フィルムに付着した状態で賦型フィルムが剥離されるおそれがあり、賦型フィルムの凹凸形状が防眩性シートの表面凹凸として十分反映されないおそれを有する。
また、微細な表面凹凸を有する防眩性シートを作製する場合において、賦型フィルムの微細な凹部に電離放射線硬化型樹脂が十分進入できずに賦型フィルムの凹凸形状が防眩性シートの表面に正確に転写されないおそれを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−236702号公報
【特許文献2】特許第3374299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来の防眩性シートの製造方法においては、簡便なる方法で表面の凹凸を制御する方法が見出されておらず、防眩性の調整が困難な状況となっている。
そのため、このような防眩性シートを使用する光学部材も安定した品質のものを簡便に得ることが困難となっている。
本発明は、このような問題に鑑み、表面の凹凸を簡便に制御可能な防眩性シートの製造方法、ならびに、防眩性に優れながらも製造容易な防眩性シートを提供して、ひいては光学部材の品質の安定化を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための防眩性シートの製造方法にかかる本発明は、硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有するポリマー溶液を作製し、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液を作製し、該ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも一面に塗布した後に前記溶媒を蒸発除去させることにより前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜を前記基材の表面に作製し、該ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分を硬化させて硬化被膜を形成させるとともに前記低分子量物質を加熱して蒸発除去させることによって表面に凹凸を有する防眩性シートを作製することを特徴としている。
【0009】
また、防眩性シートにかかる本発明は、硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有するポリマー溶液が作製され、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液が作製され、該ポリマー溶液がシート状の基材の少なくとも一面に塗布された後に前記溶媒が蒸発除去されることにより前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜が前記基材の表面に作製され、該ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分が硬化されて硬化被膜が形成されるとともに前記低分子量物質が加熱されて蒸発除去されることによって表面に凹凸が形成されていることを特徴としている。
【0010】
なお、前記ポリマー成分として紫外線硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜に対する紫外線照射によって実施されるか、又は、前記ポリマー成分として熱硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜の加熱によって実施されるかのいずれかとされることが好ましい。
また、前記紫外線硬化性樹脂は、ウレタンアクリレート系樹脂であることが好ましい。
【0011】
さらに、前記低分子量物質が、18以上300以下の分子量であり、50℃以上350℃以下の沸点を有し、しかも、23℃未満の融点を有している有機化合物であることが好ましく、水酸基を有する有機化合物であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の防眩性シートは、前記硬化被膜の算術平均粗さ(Ra)が50nm以上1500nm以下であり、60以上150以下の60°光沢度を有することが好ましく、ヘイズ値が2%以上50%以下であり、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。
そして、本発明の防眩性シートの製造方法は、このような防眩性シートの製造に好適である。
【0013】
また、前記基材として、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が80%以上の透明基材を用いることが好ましい。
【0014】
そして、本発明の光学部材は、上記のような防眩性シートが用いられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の防眩性シートの製造方法によれば、硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、両者が可溶な溶媒を含むポリマー溶液が作製され、これを基材に塗布乾燥するという簡便な手段によって前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜が作製される。
そして、このポリマー被膜に対して前記ポリマー成分を硬化させる処理を実施するとともに前記非相溶性物質として用いられている低分子量物質を蒸発除去するという簡単な作業によって防眩性シートが作製され得る。
したがって、用いるポリマー成分と非相溶性物質の量や種類といった配合条件や、基材表面におけるポリマー溶液の乾燥条件などの作業条件の調整によってポリマー被膜における相分離状態を調整することができる。
すなわち、本発明の防眩性シートの製造方法によれば、簡便なる方法で防眩性シートの表面の凹凸を制御し得る。
また、このようなことから本発明の防眩性シートは、製造容易でありながら防眩性能に係る品質が安定され得る。
そして、このような防眩性シートが用いられることによって光学部材もその品質安定性の向上を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図2】実施例2の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図3】実施例3の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図4】実施例4の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図5】実施例5の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図6】実施例6の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図7】実施例7の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図8】実施例8の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図9】実施例9の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図10】比較例1のシートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図11】比較例2のシートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図12】比較例3のシートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図13】比較例4のシートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図14】実施例10の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図15】実施例11の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の防眩性シートの製造方法の実施の形態について説明する。
本実施形態の防眩性シートの製造方法は、次のような(a)〜(e)の工程を実施して防眩性シートを作製するものである。
・工程(a) 硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有し、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が、前記低分子量物質よりも蒸発させることが容易な揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液を作製する工程。
・工程(b) ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも一面に塗布する工程。
・工程(c) 塗布したポリマー溶液に含まれている溶媒を蒸発除去させて前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜を前記基材の表面に作製する工程。
・工程(d) ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分を硬化させて硬化被膜を形成させる工程。
・工程(e) 前記低分子量物質を加熱して蒸発除去させる工程。
【0018】
まず、本実施形態の防眩性シートの製造方法に用いられる各材料について説明する。
【0019】
(ポリマー成分)
前記ポリマー溶液に用いられるポリマー成分は、硬化性を有していることが重要であり、該ポリマー成分は、単独又は複数種類の樹脂やゴムによって構成させることができ、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などがその構成材料として挙げられる。
また、該ポリマー成分は、溶媒除去後の前記ポリマー被膜に形成される凹凸形状を硬化終了まで維持可能であることが好ましく、常温(例えば、23℃)において自然流動を示すことがない固形状又は半固体状(ゲル状やグリース状)であることが好ましい。
【0020】
前記紫外線硬化性樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エステル系、アミド系、シリコーン系樹脂等の各種のものが挙げられる。
なお、ポリマー成分に含有される紫外線硬化性樹脂は、ポリマーの状態のみで含有される必要性はなく、紫外線硬化性のモノマーやオリゴマーの状態で含有されていても良い。
なかでも、紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系樹脂が好適である。
このウレタンアクリレート系樹脂は、高硬度であるために耐擦傷性に優れている点においてポリマー成分として好適である。
【0021】
また、前記熱硬化性樹脂としてはアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エステル系、メラミン系、尿素系、シリコーン系、フェノール系樹脂等の各種のものが挙げられる。
この熱硬化性樹脂についても、モノマーやオリゴマーの状態で含有されていても良い。
これらの紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂は、数多くの種類のものが市販されており、用いる樹脂種や組み合わせのバリュエーションを豊富に取り揃えることができ、防眩性シートの表面の凹凸形状を調整することが容易である点において優れている。
【0022】
(非相溶性物質)
上記のようなポリマー成分に対して非相溶性を示すもので、上記ポリマー成分の硬化後に加熱することで蒸発除去可能な低分子量物質であれば特にその物質が限定されるものではない。
【0023】
ただし、後述する溶媒とその蒸発除去における温度条件などを近似させると、先述の「工程(c)」において当該低分子量物質を残存させつつ溶媒を蒸発除去するために高い精度での温度管理を必要とさせることになる。
一方で、高沸点なものを用いると、先述の「工程(e)」における蒸発除去時に、多大な熱エネルギーを必要とさせるばかりでなく、基材や硬化被膜に熱劣化を与えるおそれを有する。
このような観点から、前記ポリマー成分に対する非相溶性物質として用いられる低分子量物質は、50℃以上350℃以下の沸点を有する有機化合物が好ましく、100℃以上320℃以下の沸点を有する物質であることがさらに好ましい。
さらには、その融点が23℃未満の有機化合物であることが好ましく、20℃未満の融点を有することがより好ましい。
【0024】
また、低分子量物質としては、分子量が300以下であることが好ましく、250未満であることがより好ましく、200未満であることが特に好ましい。
ただし、あまり分子量が小さい物質では、溶媒の蒸発時にともに蒸発されてしまう可能性が高くなることから、この低分子量物質としては、分子量が18以上であることが好ましい。
【0025】
このような低分子量物質の具体的な物質名としては、例えば、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどのエステル;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−ヘプチルケトンなどのケトン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、1,3−オクチレングリコールなどの多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテートなどの多価アルコールエステル誘導体などが挙げられる。
これらは、単独、又は2種類以上混合した混合物であっても良く、用いる物質の種類、組み合わせ方、組み合わせた場合の量の割合などを調整することで前記ポリマー成分との相分離状態、すなわち、凹凸形状の調整が可能となる。
この低分子量物質としては、水酸基を有する有機化合物であることが好ましい。
この水酸基を有する有機化合物は、一般的に、ポリマー成分との相溶性が低く、また、ポリマー溶液を塗布する前記工程(b)や溶媒の蒸発を行う前記工程(c)で蒸発しない程度の沸点を有するものが得られやすい点において低分子量物質として好適である。
【0026】
なお、非相溶性物質として、この低分子量物質のような加熱による蒸発除去可能な物質を採用することで、加熱装置などの比較的簡便な装置によって除去可能となるため、防眩性シートを安価に作製する上で、非相溶性物質としてこの低分子量物質を使用することが重要な要件となるものである。
【0027】
なお、前記ポリマー成分と、この低分子量物質とが非相溶であることは、例えば、次のようにして確認することができる。
(非相溶の判断方法の一例)
50mlスクリュー管にポリマー成分10gと低分子量物質10mlを入れる。
そして、スクリュー管の蓋を閉めて十分に振とうし、1分以上静置した時に目視レベルで不均一なものは非相溶であると判断することが出来る。
また、低分子量物質が樹脂に相溶してしまうと、相分離による凹凸形状が形成されないため、乾燥及び/又は硬化した後のポリマー被膜(硬化被膜)の表面の形状を観察することでも非相溶かどうかの判断は可能である。
【0028】
(溶媒)
前記ポリマー成分ならびに前記低分子量物質とともに前記ポリマー溶液を構成する前記溶媒としては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが可溶であることが重要である。
また、前記低分子量物質よりも揮発性の高い(蒸発させやすい)物質がこの溶媒として選択されることが重要である。
なお、この溶媒としては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質との両方に対して良溶媒となる単独物質からなるもの、複数の良溶媒が混合されてなる混合溶媒、あるいは、ポリマー成分と低分子量物質の一方又は両方に対して難溶又は不溶となる貧溶媒と良溶媒との混合溶媒などが用いられ得る。
【0029】
この溶媒としては、前記ポリマー成分として水溶性ポリマーなどが用いられる場合などにおいては、水などをも採用可能ではあるが、通常、有機溶媒が好適に用いられ得る。
この用いられ得る有機溶媒の具体的な物質名としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソブチルエーテルなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミドなどが挙げられる。
【0030】
この溶媒は、ポリマー成分や低分子量成分が均一に分散されたポリマー溶液を調整し、塗布された際に均一な表面形状の塗膜を得るための重要な成分であり、ポリマー溶液を塗布する前に相分離を生じると均一な表面形状を得ることが難しくなる。
また、この溶媒をポリマー溶液に含有させることによって、ポリマー溶液の粘度を基材に塗布するのに適した粘度に調整できるという効果も発揮され得る。
【0031】
この溶媒についても、ポリマー成分や低分子量成分と同様に、用いる物質の種類や、前記ポリマー溶液における含有量(ポリマー成分や低分子量成分との配合割合)を変化させるなどしてポリマー被膜の凹凸形状の調整を行うことができる。
【0032】
これらのポリマー溶液を構成する主たる成分において、前記低分子量物質の添加量が前記ポリマー成分などに対して多くなり過ぎると、ポリマー成分と低分子量物質とを均一に溶解させたポリマー溶液を作製するために必要となる溶媒の量が多くなり過ぎて、濃度の調整に制約が加わるおそれを有する。
そのため、ポリマー溶液に含有させる前記低分子量物質の含有量は、該ポリマー溶液に含有されるポリマー成分100重量部に対して0.1重量部以上150重量部以下とされることが好ましく、1重量部以上75重量部以下とされることがより好ましい。
【0033】
また、このポリマー溶液は、その粘度が高すぎると、ポリマー被膜にスジやムラが生じ易くなって均一に塗布することが難しくなる。
したがって、塗布作業(工程b)を容易に実施させ得る点において、前記ポリマー溶液は、その粘度が5Pa・s以下となるように調整されることが好ましく、3Pa・s以下となるように調整されることがより好ましい。
【0034】
また、前記ポリマー溶液における前記溶媒の含有量が少なく、ポリマー溶液の濃度が高くなり過ぎると、互いに相溶しないポリマー成分と低分子量成分とを均一に溶解させることが困難になる。
したがって、ポリマー溶液は、その濃度が0.1重量%以上40重量%以下の範囲となるように前記溶媒にて調整されることが好ましく、1重量%以上30重量%以下となるように調整されることがより好ましい。
そして、このポリマー溶液の濃度を変えることによって、ポリマー被膜における凹凸形状を調整することができる。
【0035】
なお、前記ポリマー成分として、紫外線硬化性樹脂が採用される場合には、さらに、光重合開始剤を前記ポリマー溶液に含有させておくことが好ましい。
【0036】
(光重合開始剤)
この光重合開始剤としては、用いる紫外線硬化性樹脂にもよるが、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどが挙げられる。
光重合開始剤の配合量は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、通常、0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは0.5重量部以上5重量部以下の割合で前記ポリマー溶液に含有させうる。
【0037】
(基材)
このポリマー溶液を塗布するシート状の基材としては、特に、その材質を限定するものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン;エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等;イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等が、その形成材料として挙げられる。
また、光学部材に使用されることを考慮すると、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が80%以上の透明性を有する透明基材を用いることが好ましい。
【0038】
なお、さらなる詳細な説明をここでは省略するが、本発明においては、前記ポリマー溶液やこの基材として、上記に例示のもの以外を適宜採用することが可能であり、従来、防眩性シートに採用されている各種の材料を、その目的に応じた使用方法で、本発明において採用することが可能である。
【0039】
次いで、本実施形態における防眩性シートの製造方法における各工程について説明する。
(工程a:ポリマー溶液の作製)
前記ポリマー溶液の作製には、従来公知のポリマー溶液作製方法を採用することができ、例えば、前記ポリマー成分と、前記低分子量物質と、前記溶媒とを、ミキサーやホモジナイザーなどの混合攪拌手段によって分散混合させてポリマー溶液を作製する方法などが挙げられる。
【0040】
(工程b:基材への塗布)
前記基材に対する前記ポリマー溶液の塗布方法は、任意の塗布方法が利用できる。
小面積の防眩性シートを作製する場合は、ベーカー式アプリケータやドクターブレード、バーコーターなどを使用して手塗りすることができる。
一方で、塗工機で連続して塗工する場合は、リバースコーター、ダイレクトグラビアコーター、ダイレクトバーコーター、リバースバーコーター、ダイコーター等、目的とする塗布量に応じて適宜選択が可能である。
なお、塗工の方法を変えることによって、得られるポリマー被膜の形状を変えることができる。
【0041】
このときのポリマー溶液の塗布は、通常、低分子量物質を含有させずに作製したポリマー溶液を前記基材に塗布、乾燥した場合に、そのポリマー被膜の厚みが0.1μm以上100μm以下の範囲となるように塗布条件を設定して実施することが好ましい。
ただし、このポリマー溶液の塗布厚みを変更することで、溶媒蒸発後のポリマー被膜の表面形状を調整することが可能であるため、ポリマー溶液の塗布厚みはこの範囲には限定されず、目的に応じて任意の塗布厚みとすることができ、この塗布厚みの調整によって凹凸形状を調整することが可能である。
【0042】
(工程c:溶媒除去、相分離状態の形成)
先に例示した材料によって構成されたポリマー溶液を用いる場合においては、該ポリマー溶液を塗布した基材を室温に近い雰囲気温度下に保持して溶媒を蒸発(揮発)させて除去させることができる。
溶媒を除去する方法としては、一般的な加熱装置が適用でき、該加熱装置としては、例えば、熱対流式乾燥機、熱循環式乾燥機、真空乾燥機、フローティング式オーブン等が挙げられる。
この時の雰囲気温度が高すぎると前記低分子量物質を蒸発させてしまうおそれを有する一方で、雰囲気温度を低く設定し過ぎると溶媒の蒸発に長時間要することになる。
このことから、先に例示の有機溶媒と低分子量物質が用いられているような場合においては、通常、0℃以上80℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことが好ましく、10℃以上70℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことがより好ましい。
特に、15℃以上50℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことが好ましい。
【0043】
特に有機溶媒を蒸発除去させるにあたっては、塗膜の表面に風を当てることによって、乾燥後に得られるポリマー被膜の表面凹凸形状を変えることができる。
そして、溶媒を蒸発除去させることにより、ポリマー成分と低分子量物質とが相分離を起こして、乾燥後のポリマー被膜表面に凹凸形状が形成されることになる。
また、先にも述べたように、ポリマー成分に対する低分子量物質の割合を変えることでも最終的な被膜表面の凹凸形状を異ならせることができる。
特にポリマー被膜の凹部は、相分離した後の低分子量物質の存在位置に相当する箇所に形成され、その形状は、蒸発前の低分子量物質の形状が反映されるため、低分子量物質の添加量を多くすると凹部が大きくなる傾向がある。
したがって、この低分子量物質の量の調整によって所望の凹部を形成させることができる。
【0044】
(工程d:硬化)
先の「工程c」において基材表面に形成させたポリマー被膜は、最終的な表面凹凸形状をコントロールする意味からは、その表面の相分離状態を維持させてポリマー成分の硬化を実施することが好ましい。
硬化後の硬化被膜に、硬化前のポリマー被膜の相分離状態を反映させるには、ポリマー成分と低分子量物質との相分離を維持させた状態、あるいは、この硬化に際して一部の低分子量物質が蒸発除去されるような場合であってもその痕跡が凹部として残る状態でポリマー成分を硬化させることが好ましい。
【0045】
したがって、通常、ポリマー溶液を基材に塗布し、溶媒を蒸発除去させた後に速やかに樹脂を硬化させることが好ましい。
そのため、ポリマー被膜のすばやい硬化を行うことが可能な紫外線硬化性樹脂が前記ポリマー成分として好適であるといえる。
すなわち、溶媒を蒸発除去させた後に紫外線を照射することによってポリマー被膜を形成している紫外線硬化性樹脂をすばやく硬化させることが好ましい。
なお、熱硬化性樹脂を用いる場合においては、溶媒の蒸発除去(工程c)と、この硬化の工程とを一連の工程として実施可能である。
すなわち、ポリマー溶液を基材に塗布した後に、塗膜を加熱することによって溶媒を蒸発除去し、この溶媒が除去された後も引き続き加熱を行うことで熱硬化性樹脂に熱硬化反応を発生させて硬化被膜を形成させることもできる。
この場合には、低分子量物質が蒸発して、ポリマー被膜の表面が熱硬化性樹脂の軟化によってレベリングされてしまう前に前記熱硬化性樹脂を硬化させることが好ましい。
すなわち、加熱によって、ポリマー被膜の軟化と、ポリマー成分の硬化反応の進行との競争が生じることになるが、この硬化反応を優先させる条件選択を行うことが好ましい。
そのことによって低分子量物質が表面に凹部を形成させるべく残存された硬化被膜を形成させることができる。
【0046】
(工程e:低分子量物質の除去)
硬化被膜からの低分子量物質の除去は、低分子量物質が短時間で蒸発可能な温度で加熱実施することが好ましい。
なお、その際の温度は、低分子量物質の沸点以上とする必要はない。
例えば、沸点100℃の水も室温で蒸発させることが可能であり、沸点197℃のエチレングリコールも60℃程度の温度で蒸発する。
このエチレングリコールが低分子量物質として用いられている場合に、速やかな蒸発除去を目的とするのであれば、加熱温度を80℃以上とすることが好ましい。
また、沸点290℃のグリセリンが低分子量物質として用いられている場合であれば、80℃以上の加熱温度とすることが好ましく、速やかな蒸発を目的とする場合には、加熱温度を100℃以上とすることが望ましい。
ただし、基材の耐熱性に鑑みて、適当な温度を設定することが重要である。
例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムが基材として用いられているような場合であれば、加熱収縮によるシワの発生を防止し得るように、140℃以下、好ましくは130℃以下の加熱温度とすることが望ましい。
この加熱による低分子量物質の蒸発除去方法としては、一般的な加熱装置が適用でき、該加熱装置としては、例えば、熱対流式乾燥機、熱循環式乾燥機、真空乾燥機、フローティング式オーブン等が挙げられる。
【0047】
以上のような工程を実施することで、例えば、相分離を生じている際の低分子量物質の大きさが表面の凹部の状態に反映された硬化被膜を防眩性シートに形成させることができる。
通常、低分子量物質は、ポリマー被膜の表面に種々の大きさで分散されることから、大小広い範囲にわたる凹凸が形成可能であり、上記のような工程を実施することで、小さいものでは直径約0.05μm、大きいものでは直径約100μmの大きさの凹凸を防眩性シートの表面に形成させうる。
【0048】
なお、防眩性シートの表面における凹凸(硬化被膜の凹凸)は、光の反射性能の観点から、所定の表面粗さを有していることが好ましく、硬化被膜の表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した際に、その値が50nm以上1500nm以下の範囲の内のいずれかの値となるように形成されていることが好ましい。さらには、50nm以上1200nm以下の算術平均粗さ(Ra)を有していることが好ましい。
【0049】
また、60°光沢度は、防眩性の観点から、60以上150以下であることが好ましく、65以上130以下であることがより好ましい。
さらに、当該防眩性シートは、表示装置などに用いられる場合などに、その表示画像の鮮明性を確保させ得る点において、そのヘイズ値が2%以上50%以下であることが好ましく、2%以上30%以下であることがより好ましい。
そして、表示装置などに用いられる場合には、さらに、その全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0050】
このような防眩性シートは、簡便なる方法で表面の凹凸の調整が行われることから、その防眩性や光透過性などの調整も容易に実施されうる。
したがって、上記の方法によって、光の透過性と防眩性とのバランスに優れた偏光板などの光学部材を構成するのに適した防眩性シートが容易に作製されうる。
なお、この「偏光板」のみならず本実施形態の製造方法によって作製される防眩性シートは、タッチパネルのような光学部材にも有用なものである。
なお、本実施形態においては、防眩性シートの製造方法として上記のような例示を行っているが、本発明は、上記例示に限定されるものではなく、例えば、上記に例示の材料以外を採用することや、上記に例示の操作以外の操作を行う場合も可能である。
【実施例】
【0051】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
まず、各特性に関する測定方法について説明する。
(1)全光線透過率の測定方法
全光線透過率は、JIS K 7361に準じて、「(株)村上色彩技術研究所製、機種名:ヘーズメーターHM−150」を用いて測定した。
測定は、硬化被膜の面が光源を向くようにして行った。
(2)ヘイズの測定方法
ヘイズは、JIS K 7136に準じて、「(株)村上色彩技術研究所製、機種名:ヘーズメーターHM−150」を用いて測定した。
測定は、硬化被膜の面が光源を向くようにして行った。
(3)60°光沢度の測定方法
60°光沢度をJIS K 7105に準じて、「BYK Gardner製、機種名:micro−TRI−gloss」を用いて測定した。
(4)算術平均粗さの測定方法
算術平均粗さ(Ra)を、JIS K 0601(2001)に準拠して「日本ビーコ(株)製、機種名:高輝度非接触3次元表面形状粗さ計 Wyko NT9100」を用いて測定した。
測定は、10倍の倍率で行った。
【0053】
(実施例1)
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(ポリマー成分:日本合成化学工業(株)製、商品名:紫光UV−7640B)100重量部、低分子量物質として特級グリセリン(和研薬(株)製)8重量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、商品名:イルガキュア184)4重量部、有機溶媒として酢酸エチル107重量部、エタノール205重量部を混合して固形分濃度が25%となるポリマー溶液を調整した。
得られたポリマー溶液は無色透明の均一な溶液であった。
前記ポリマー溶液を、基材となるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ100μm)の片面に塗布した。
このポリマー溶液の塗布は、低分子量物質が未添加の25%ポリマー溶液を塗布・乾燥させ、硬化させた時の硬化被膜が約3μmになるように12番手のマイヤーバーを用いて実施した。
このポリマー溶液の塗布されたPETフィルムを23℃で1分間乾燥後、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、前記PETフィルム上に硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で2分間加熱して低分子量物質を蒸発除去させ、表面に凹凸形状を有する防眩性シートを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図1に示す。
【0054】
(実施例2)
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂として、「(日本合成化学工業(株)製、商品名:紫光UV−1700B)」を用いた以外は、実施例1と同じ方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図2に示す。
【0055】
(実施例3)
低分子量物質として「1級エチレングリコール(キシダ化学(株)製)」を用いた以外は、実施例1と同じ方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図3に示す。
【0056】
(実施例4)
低分子量物質として「特級グリセリン(和研薬(株)製)」20重量部、溶媒として「酢酸エチル104重量部とエタノール187重量部との混合溶媒」を用いた以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図4に示す。
【0057】
(実施例5)
溶媒として「酢酸エチル107重量部、エタノール185重量部、及びn−ヘキサン20重量部の混合溶媒」を用いた以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図5に示す。
【0058】
(実施例6)
溶媒として「酢酸エチル104重量部、エタノール304重量部の混合溶媒」を用い、ポリマー溶液の固形分濃度を20重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図6に示す。
【0059】
(実施例7)
低分子量物質未添加の25%有機溶媒溶液を塗布し乾燥硬化させた時の硬化被膜が約4μmになるように「16番手のマイヤーバーを用いて」ポリマー溶液の塗布を実施した以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図7に示す。
【0060】
(実施例8)
バーコーターを「ベーカー式アプリケータ」に変更し、低分子量物質未添加の25%有機溶媒溶液を塗布し乾燥硬化させた時の硬化被膜が約3μmになるように塗布した以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図8に示す。
【0061】
(実施例9)
風乾条件を、「23℃で1分間、ポリマー被膜の表面に風をあてながらの乾燥」とした以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図9に示す。
【0062】
(実施例10)
低分子量物質として「1級エチレングリコール(キシダ化学(株)製)」8重量部、有機溶媒として「酢酸エチル」312重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図14に示す。
【0063】
(実施例11)
紫外線硬化性樹脂を「アクリル系紫外線硬化性樹脂(日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート))」を用いた以外は、実施例1と同じ方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図15に示す。
【0064】
(比較例1)
低分子量物質として、ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂と相溶する「1級エチレングリコールジアセテート(和研薬(株)製)」を用いた以外は、実施例1と同じ方法でフィルムを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図10に示す。
【0065】
(比較例2)
「低分子量物質を添加しなかった」こと以外は、実施例1と同じ方法でフィルムを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図11に示す。
【0066】
(比較例3)
「低分子量物質を添加しなかった」以外は、実施例2と同じ方法でフィルムを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図12に示す。
【0067】
(比較例4)
「有機溶媒を添加せず、固形分濃度93重量%」とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。有機溶媒を添加していないので、塗布した溶液は目視レベルで2層に分かれていた。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図13に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
上記のことからも、本発明によれば、優れた防眩性を有する防眩性シートが得られることがわかる。
しかも、上記に示したように、簡便な方法で防眩性シートが得られることがわかる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯端末用ディスプレイ、タッチパネル式入力装置等の表示装置として有用な液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイに用いられる防眩性シートの製造方法、及び、該防眩性シートが用いられてなる光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ等の表示装置は、蛍光灯などの照明光や太陽光等の外光がその表示面に入射した場合に、反射光が邪魔で画面の視認性が著しく妨げられるという問題を有している。
そのため、前記表示装置表面には、反射光をある程度拡散させて画面の視認性を向上させるために防眩層が設けられている。
【0003】
防眩層として、例えば、下記特許文献1には、粒径が0.5μm以下の微粒子を含有するノングレア層と支持体層からなるノングレアシート(防眩性シート)が開示されている。
この方法は、例えば、紫外線硬化性樹脂にシリカ(例えば、合成二酸化珪素)、金属化合物(例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア等)、高分子化合物(例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂等)の微粒子を分散させてノングレア層を形成するものである。
【0004】
しかし、この特許文献1に記載の防眩性シートの製造方法においては、フィラー等によって表面に凹凸形状を形成するため、製造工程上表面の凹凸形状を緻密に制御することが難しい。
例えば、上記のような微粒子は、凝集を生じやすいためにノングレア層において分散不良を発生させやすく、所望の防眩性が発現しなかったり、防眩性シートの透明性が低下したりするおそれを有し、場合によっては、外観不良の問題を生じさせるおそれも有する。
【0005】
また、下記特許文献2には、電離放射線硬化型樹脂を溶媒に分散させた溶液を基材となる透明フィルムに塗工し、溶媒を乾燥除去させた後、賦型フィルムを前記電離放射線硬化型樹脂にラミネートし、電離放射線を照射して、電離放射線硬化型樹脂を硬化させ、前記賦型フィルムを剥離して表面に所望の凹凸を形成させる方法が提案されている(例えば、段落〔0005〕)。
しかし、この特許文献2に記載の防眩性シートの製造方法においては、そもそも賦型フィルムに凹凸形状を形成させる手間を必要とするばかりでなく、例えば、賦型フィルムの凹部となる部分(防眩性シートの凸部となる部分)などにおいて電離放射線硬化型樹脂が賦型フィルムに付着した状態で賦型フィルムが剥離されるおそれがあり、賦型フィルムの凹凸形状が防眩性シートの表面凹凸として十分反映されないおそれを有する。
また、微細な表面凹凸を有する防眩性シートを作製する場合において、賦型フィルムの微細な凹部に電離放射線硬化型樹脂が十分進入できずに賦型フィルムの凹凸形状が防眩性シートの表面に正確に転写されないおそれを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−236702号公報
【特許文献2】特許第3374299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来の防眩性シートの製造方法においては、簡便なる方法で表面の凹凸を制御する方法が見出されておらず、防眩性の調整が困難な状況となっている。
そのため、このような防眩性シートを使用する光学部材も安定した品質のものを簡便に得ることが困難となっている。
本発明は、このような問題に鑑み、表面の凹凸を簡便に制御可能な防眩性シートの製造方法、ならびに、防眩性に優れながらも製造容易な防眩性シートを提供して、ひいては光学部材の品質の安定化を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための防眩性シートの製造方法にかかる本発明は、硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有するポリマー溶液を作製し、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液を作製し、該ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも一面に塗布した後に前記溶媒を蒸発除去させることにより前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜を前記基材の表面に作製し、該ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分を硬化させて硬化被膜を形成させるとともに前記低分子量物質を加熱して蒸発除去させることによって表面に凹凸を有する防眩性シートを作製することを特徴としている。
【0009】
また、防眩性シートにかかる本発明は、硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有するポリマー溶液が作製され、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液が作製され、該ポリマー溶液がシート状の基材の少なくとも一面に塗布された後に前記溶媒が蒸発除去されることにより前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜が前記基材の表面に作製され、該ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分が硬化されて硬化被膜が形成されるとともに前記低分子量物質が加熱されて蒸発除去されることによって表面に凹凸が形成されていることを特徴としている。
【0010】
なお、前記ポリマー成分として紫外線硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜に対する紫外線照射によって実施されるか、又は、前記ポリマー成分として熱硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜の加熱によって実施されるかのいずれかとされることが好ましい。
また、前記紫外線硬化性樹脂は、ウレタンアクリレート系樹脂であることが好ましい。
【0011】
さらに、前記低分子量物質が、18以上300以下の分子量であり、50℃以上350℃以下の沸点を有し、しかも、23℃未満の融点を有している有機化合物であることが好ましく、水酸基を有する有機化合物であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の防眩性シートは、前記硬化被膜の算術平均粗さ(Ra)が50nm以上1500nm以下であり、60以上150以下の60°光沢度を有することが好ましく、ヘイズ値が2%以上50%以下であり、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。
そして、本発明の防眩性シートの製造方法は、このような防眩性シートの製造に好適である。
【0013】
また、前記基材として、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が80%以上の透明基材を用いることが好ましい。
【0014】
そして、本発明の光学部材は、上記のような防眩性シートが用いられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の防眩性シートの製造方法によれば、硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、両者が可溶な溶媒を含むポリマー溶液が作製され、これを基材に塗布乾燥するという簡便な手段によって前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜が作製される。
そして、このポリマー被膜に対して前記ポリマー成分を硬化させる処理を実施するとともに前記非相溶性物質として用いられている低分子量物質を蒸発除去するという簡単な作業によって防眩性シートが作製され得る。
したがって、用いるポリマー成分と非相溶性物質の量や種類といった配合条件や、基材表面におけるポリマー溶液の乾燥条件などの作業条件の調整によってポリマー被膜における相分離状態を調整することができる。
すなわち、本発明の防眩性シートの製造方法によれば、簡便なる方法で防眩性シートの表面の凹凸を制御し得る。
また、このようなことから本発明の防眩性シートは、製造容易でありながら防眩性能に係る品質が安定され得る。
そして、このような防眩性シートが用いられることによって光学部材もその品質安定性の向上を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図2】実施例2の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図3】実施例3の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図4】実施例4の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図5】実施例5の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図6】実施例6の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図7】実施例7の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図8】実施例8の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図9】実施例9の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図10】比較例1のシートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図11】比較例2のシートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図12】比較例3のシートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図13】比較例4のシートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図14】実施例10の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図15】実施例11の防眩性シートの光学顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の防眩性シートの製造方法の実施の形態について説明する。
本実施形態の防眩性シートの製造方法は、次のような(a)〜(e)の工程を実施して防眩性シートを作製するものである。
・工程(a) 硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有し、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が、前記低分子量物質よりも蒸発させることが容易な揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液を作製する工程。
・工程(b) ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも一面に塗布する工程。
・工程(c) 塗布したポリマー溶液に含まれている溶媒を蒸発除去させて前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜を前記基材の表面に作製する工程。
・工程(d) ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分を硬化させて硬化被膜を形成させる工程。
・工程(e) 前記低分子量物質を加熱して蒸発除去させる工程。
【0018】
まず、本実施形態の防眩性シートの製造方法に用いられる各材料について説明する。
【0019】
(ポリマー成分)
前記ポリマー溶液に用いられるポリマー成分は、硬化性を有していることが重要であり、該ポリマー成分は、単独又は複数種類の樹脂やゴムによって構成させることができ、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などがその構成材料として挙げられる。
また、該ポリマー成分は、溶媒除去後の前記ポリマー被膜に形成される凹凸形状を硬化終了まで維持可能であることが好ましく、常温(例えば、23℃)において自然流動を示すことがない固形状又は半固体状(ゲル状やグリース状)であることが好ましい。
【0020】
前記紫外線硬化性樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エステル系、アミド系、シリコーン系樹脂等の各種のものが挙げられる。
なお、ポリマー成分に含有される紫外線硬化性樹脂は、ポリマーの状態のみで含有される必要性はなく、紫外線硬化性のモノマーやオリゴマーの状態で含有されていても良い。
なかでも、紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系樹脂が好適である。
このウレタンアクリレート系樹脂は、高硬度であるために耐擦傷性に優れている点においてポリマー成分として好適である。
【0021】
また、前記熱硬化性樹脂としてはアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エステル系、メラミン系、尿素系、シリコーン系、フェノール系樹脂等の各種のものが挙げられる。
この熱硬化性樹脂についても、モノマーやオリゴマーの状態で含有されていても良い。
これらの紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂は、数多くの種類のものが市販されており、用いる樹脂種や組み合わせのバリュエーションを豊富に取り揃えることができ、防眩性シートの表面の凹凸形状を調整することが容易である点において優れている。
【0022】
(非相溶性物質)
上記のようなポリマー成分に対して非相溶性を示すもので、上記ポリマー成分の硬化後に加熱することで蒸発除去可能な低分子量物質であれば特にその物質が限定されるものではない。
【0023】
ただし、後述する溶媒とその蒸発除去における温度条件などを近似させると、先述の「工程(c)」において当該低分子量物質を残存させつつ溶媒を蒸発除去するために高い精度での温度管理を必要とさせることになる。
一方で、高沸点なものを用いると、先述の「工程(e)」における蒸発除去時に、多大な熱エネルギーを必要とさせるばかりでなく、基材や硬化被膜に熱劣化を与えるおそれを有する。
このような観点から、前記ポリマー成分に対する非相溶性物質として用いられる低分子量物質は、50℃以上350℃以下の沸点を有する有機化合物が好ましく、100℃以上320℃以下の沸点を有する物質であることがさらに好ましい。
さらには、その融点が23℃未満の有機化合物であることが好ましく、20℃未満の融点を有することがより好ましい。
【0024】
また、低分子量物質としては、分子量が300以下であることが好ましく、250未満であることがより好ましく、200未満であることが特に好ましい。
ただし、あまり分子量が小さい物質では、溶媒の蒸発時にともに蒸発されてしまう可能性が高くなることから、この低分子量物質としては、分子量が18以上であることが好ましい。
【0025】
このような低分子量物質の具体的な物質名としては、例えば、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどのエステル;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−ヘプチルケトンなどのケトン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、1,3−オクチレングリコールなどの多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテートなどの多価アルコールエステル誘導体などが挙げられる。
これらは、単独、又は2種類以上混合した混合物であっても良く、用いる物質の種類、組み合わせ方、組み合わせた場合の量の割合などを調整することで前記ポリマー成分との相分離状態、すなわち、凹凸形状の調整が可能となる。
この低分子量物質としては、水酸基を有する有機化合物であることが好ましい。
この水酸基を有する有機化合物は、一般的に、ポリマー成分との相溶性が低く、また、ポリマー溶液を塗布する前記工程(b)や溶媒の蒸発を行う前記工程(c)で蒸発しない程度の沸点を有するものが得られやすい点において低分子量物質として好適である。
【0026】
なお、非相溶性物質として、この低分子量物質のような加熱による蒸発除去可能な物質を採用することで、加熱装置などの比較的簡便な装置によって除去可能となるため、防眩性シートを安価に作製する上で、非相溶性物質としてこの低分子量物質を使用することが重要な要件となるものである。
【0027】
なお、前記ポリマー成分と、この低分子量物質とが非相溶であることは、例えば、次のようにして確認することができる。
(非相溶の判断方法の一例)
50mlスクリュー管にポリマー成分10gと低分子量物質10mlを入れる。
そして、スクリュー管の蓋を閉めて十分に振とうし、1分以上静置した時に目視レベルで不均一なものは非相溶であると判断することが出来る。
また、低分子量物質が樹脂に相溶してしまうと、相分離による凹凸形状が形成されないため、乾燥及び/又は硬化した後のポリマー被膜(硬化被膜)の表面の形状を観察することでも非相溶かどうかの判断は可能である。
【0028】
(溶媒)
前記ポリマー成分ならびに前記低分子量物質とともに前記ポリマー溶液を構成する前記溶媒としては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが可溶であることが重要である。
また、前記低分子量物質よりも揮発性の高い(蒸発させやすい)物質がこの溶媒として選択されることが重要である。
なお、この溶媒としては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質との両方に対して良溶媒となる単独物質からなるもの、複数の良溶媒が混合されてなる混合溶媒、あるいは、ポリマー成分と低分子量物質の一方又は両方に対して難溶又は不溶となる貧溶媒と良溶媒との混合溶媒などが用いられ得る。
【0029】
この溶媒としては、前記ポリマー成分として水溶性ポリマーなどが用いられる場合などにおいては、水などをも採用可能ではあるが、通常、有機溶媒が好適に用いられ得る。
この用いられ得る有機溶媒の具体的な物質名としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソブチルエーテルなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミドなどが挙げられる。
【0030】
この溶媒は、ポリマー成分や低分子量成分が均一に分散されたポリマー溶液を調整し、塗布された際に均一な表面形状の塗膜を得るための重要な成分であり、ポリマー溶液を塗布する前に相分離を生じると均一な表面形状を得ることが難しくなる。
また、この溶媒をポリマー溶液に含有させることによって、ポリマー溶液の粘度を基材に塗布するのに適した粘度に調整できるという効果も発揮され得る。
【0031】
この溶媒についても、ポリマー成分や低分子量成分と同様に、用いる物質の種類や、前記ポリマー溶液における含有量(ポリマー成分や低分子量成分との配合割合)を変化させるなどしてポリマー被膜の凹凸形状の調整を行うことができる。
【0032】
これらのポリマー溶液を構成する主たる成分において、前記低分子量物質の添加量が前記ポリマー成分などに対して多くなり過ぎると、ポリマー成分と低分子量物質とを均一に溶解させたポリマー溶液を作製するために必要となる溶媒の量が多くなり過ぎて、濃度の調整に制約が加わるおそれを有する。
そのため、ポリマー溶液に含有させる前記低分子量物質の含有量は、該ポリマー溶液に含有されるポリマー成分100重量部に対して0.1重量部以上150重量部以下とされることが好ましく、1重量部以上75重量部以下とされることがより好ましい。
【0033】
また、このポリマー溶液は、その粘度が高すぎると、ポリマー被膜にスジやムラが生じ易くなって均一に塗布することが難しくなる。
したがって、塗布作業(工程b)を容易に実施させ得る点において、前記ポリマー溶液は、その粘度が5Pa・s以下となるように調整されることが好ましく、3Pa・s以下となるように調整されることがより好ましい。
【0034】
また、前記ポリマー溶液における前記溶媒の含有量が少なく、ポリマー溶液の濃度が高くなり過ぎると、互いに相溶しないポリマー成分と低分子量成分とを均一に溶解させることが困難になる。
したがって、ポリマー溶液は、その濃度が0.1重量%以上40重量%以下の範囲となるように前記溶媒にて調整されることが好ましく、1重量%以上30重量%以下となるように調整されることがより好ましい。
そして、このポリマー溶液の濃度を変えることによって、ポリマー被膜における凹凸形状を調整することができる。
【0035】
なお、前記ポリマー成分として、紫外線硬化性樹脂が採用される場合には、さらに、光重合開始剤を前記ポリマー溶液に含有させておくことが好ましい。
【0036】
(光重合開始剤)
この光重合開始剤としては、用いる紫外線硬化性樹脂にもよるが、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどが挙げられる。
光重合開始剤の配合量は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、通常、0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは0.5重量部以上5重量部以下の割合で前記ポリマー溶液に含有させうる。
【0037】
(基材)
このポリマー溶液を塗布するシート状の基材としては、特に、その材質を限定するものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン;エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等;イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等が、その形成材料として挙げられる。
また、光学部材に使用されることを考慮すると、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が80%以上の透明性を有する透明基材を用いることが好ましい。
【0038】
なお、さらなる詳細な説明をここでは省略するが、本発明においては、前記ポリマー溶液やこの基材として、上記に例示のもの以外を適宜採用することが可能であり、従来、防眩性シートに採用されている各種の材料を、その目的に応じた使用方法で、本発明において採用することが可能である。
【0039】
次いで、本実施形態における防眩性シートの製造方法における各工程について説明する。
(工程a:ポリマー溶液の作製)
前記ポリマー溶液の作製には、従来公知のポリマー溶液作製方法を採用することができ、例えば、前記ポリマー成分と、前記低分子量物質と、前記溶媒とを、ミキサーやホモジナイザーなどの混合攪拌手段によって分散混合させてポリマー溶液を作製する方法などが挙げられる。
【0040】
(工程b:基材への塗布)
前記基材に対する前記ポリマー溶液の塗布方法は、任意の塗布方法が利用できる。
小面積の防眩性シートを作製する場合は、ベーカー式アプリケータやドクターブレード、バーコーターなどを使用して手塗りすることができる。
一方で、塗工機で連続して塗工する場合は、リバースコーター、ダイレクトグラビアコーター、ダイレクトバーコーター、リバースバーコーター、ダイコーター等、目的とする塗布量に応じて適宜選択が可能である。
なお、塗工の方法を変えることによって、得られるポリマー被膜の形状を変えることができる。
【0041】
このときのポリマー溶液の塗布は、通常、低分子量物質を含有させずに作製したポリマー溶液を前記基材に塗布、乾燥した場合に、そのポリマー被膜の厚みが0.1μm以上100μm以下の範囲となるように塗布条件を設定して実施することが好ましい。
ただし、このポリマー溶液の塗布厚みを変更することで、溶媒蒸発後のポリマー被膜の表面形状を調整することが可能であるため、ポリマー溶液の塗布厚みはこの範囲には限定されず、目的に応じて任意の塗布厚みとすることができ、この塗布厚みの調整によって凹凸形状を調整することが可能である。
【0042】
(工程c:溶媒除去、相分離状態の形成)
先に例示した材料によって構成されたポリマー溶液を用いる場合においては、該ポリマー溶液を塗布した基材を室温に近い雰囲気温度下に保持して溶媒を蒸発(揮発)させて除去させることができる。
溶媒を除去する方法としては、一般的な加熱装置が適用でき、該加熱装置としては、例えば、熱対流式乾燥機、熱循環式乾燥機、真空乾燥機、フローティング式オーブン等が挙げられる。
この時の雰囲気温度が高すぎると前記低分子量物質を蒸発させてしまうおそれを有する一方で、雰囲気温度を低く設定し過ぎると溶媒の蒸発に長時間要することになる。
このことから、先に例示の有機溶媒と低分子量物質が用いられているような場合においては、通常、0℃以上80℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことが好ましく、10℃以上70℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことがより好ましい。
特に、15℃以上50℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことが好ましい。
【0043】
特に有機溶媒を蒸発除去させるにあたっては、塗膜の表面に風を当てることによって、乾燥後に得られるポリマー被膜の表面凹凸形状を変えることができる。
そして、溶媒を蒸発除去させることにより、ポリマー成分と低分子量物質とが相分離を起こして、乾燥後のポリマー被膜表面に凹凸形状が形成されることになる。
また、先にも述べたように、ポリマー成分に対する低分子量物質の割合を変えることでも最終的な被膜表面の凹凸形状を異ならせることができる。
特にポリマー被膜の凹部は、相分離した後の低分子量物質の存在位置に相当する箇所に形成され、その形状は、蒸発前の低分子量物質の形状が反映されるため、低分子量物質の添加量を多くすると凹部が大きくなる傾向がある。
したがって、この低分子量物質の量の調整によって所望の凹部を形成させることができる。
【0044】
(工程d:硬化)
先の「工程c」において基材表面に形成させたポリマー被膜は、最終的な表面凹凸形状をコントロールする意味からは、その表面の相分離状態を維持させてポリマー成分の硬化を実施することが好ましい。
硬化後の硬化被膜に、硬化前のポリマー被膜の相分離状態を反映させるには、ポリマー成分と低分子量物質との相分離を維持させた状態、あるいは、この硬化に際して一部の低分子量物質が蒸発除去されるような場合であってもその痕跡が凹部として残る状態でポリマー成分を硬化させることが好ましい。
【0045】
したがって、通常、ポリマー溶液を基材に塗布し、溶媒を蒸発除去させた後に速やかに樹脂を硬化させることが好ましい。
そのため、ポリマー被膜のすばやい硬化を行うことが可能な紫外線硬化性樹脂が前記ポリマー成分として好適であるといえる。
すなわち、溶媒を蒸発除去させた後に紫外線を照射することによってポリマー被膜を形成している紫外線硬化性樹脂をすばやく硬化させることが好ましい。
なお、熱硬化性樹脂を用いる場合においては、溶媒の蒸発除去(工程c)と、この硬化の工程とを一連の工程として実施可能である。
すなわち、ポリマー溶液を基材に塗布した後に、塗膜を加熱することによって溶媒を蒸発除去し、この溶媒が除去された後も引き続き加熱を行うことで熱硬化性樹脂に熱硬化反応を発生させて硬化被膜を形成させることもできる。
この場合には、低分子量物質が蒸発して、ポリマー被膜の表面が熱硬化性樹脂の軟化によってレベリングされてしまう前に前記熱硬化性樹脂を硬化させることが好ましい。
すなわち、加熱によって、ポリマー被膜の軟化と、ポリマー成分の硬化反応の進行との競争が生じることになるが、この硬化反応を優先させる条件選択を行うことが好ましい。
そのことによって低分子量物質が表面に凹部を形成させるべく残存された硬化被膜を形成させることができる。
【0046】
(工程e:低分子量物質の除去)
硬化被膜からの低分子量物質の除去は、低分子量物質が短時間で蒸発可能な温度で加熱実施することが好ましい。
なお、その際の温度は、低分子量物質の沸点以上とする必要はない。
例えば、沸点100℃の水も室温で蒸発させることが可能であり、沸点197℃のエチレングリコールも60℃程度の温度で蒸発する。
このエチレングリコールが低分子量物質として用いられている場合に、速やかな蒸発除去を目的とするのであれば、加熱温度を80℃以上とすることが好ましい。
また、沸点290℃のグリセリンが低分子量物質として用いられている場合であれば、80℃以上の加熱温度とすることが好ましく、速やかな蒸発を目的とする場合には、加熱温度を100℃以上とすることが望ましい。
ただし、基材の耐熱性に鑑みて、適当な温度を設定することが重要である。
例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムが基材として用いられているような場合であれば、加熱収縮によるシワの発生を防止し得るように、140℃以下、好ましくは130℃以下の加熱温度とすることが望ましい。
この加熱による低分子量物質の蒸発除去方法としては、一般的な加熱装置が適用でき、該加熱装置としては、例えば、熱対流式乾燥機、熱循環式乾燥機、真空乾燥機、フローティング式オーブン等が挙げられる。
【0047】
以上のような工程を実施することで、例えば、相分離を生じている際の低分子量物質の大きさが表面の凹部の状態に反映された硬化被膜を防眩性シートに形成させることができる。
通常、低分子量物質は、ポリマー被膜の表面に種々の大きさで分散されることから、大小広い範囲にわたる凹凸が形成可能であり、上記のような工程を実施することで、小さいものでは直径約0.05μm、大きいものでは直径約100μmの大きさの凹凸を防眩性シートの表面に形成させうる。
【0048】
なお、防眩性シートの表面における凹凸(硬化被膜の凹凸)は、光の反射性能の観点から、所定の表面粗さを有していることが好ましく、硬化被膜の表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した際に、その値が50nm以上1500nm以下の範囲の内のいずれかの値となるように形成されていることが好ましい。さらには、50nm以上1200nm以下の算術平均粗さ(Ra)を有していることが好ましい。
【0049】
また、60°光沢度は、防眩性の観点から、60以上150以下であることが好ましく、65以上130以下であることがより好ましい。
さらに、当該防眩性シートは、表示装置などに用いられる場合などに、その表示画像の鮮明性を確保させ得る点において、そのヘイズ値が2%以上50%以下であることが好ましく、2%以上30%以下であることがより好ましい。
そして、表示装置などに用いられる場合には、さらに、その全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0050】
このような防眩性シートは、簡便なる方法で表面の凹凸の調整が行われることから、その防眩性や光透過性などの調整も容易に実施されうる。
したがって、上記の方法によって、光の透過性と防眩性とのバランスに優れた偏光板などの光学部材を構成するのに適した防眩性シートが容易に作製されうる。
なお、この「偏光板」のみならず本実施形態の製造方法によって作製される防眩性シートは、タッチパネルのような光学部材にも有用なものである。
なお、本実施形態においては、防眩性シートの製造方法として上記のような例示を行っているが、本発明は、上記例示に限定されるものではなく、例えば、上記に例示の材料以外を採用することや、上記に例示の操作以外の操作を行う場合も可能である。
【実施例】
【0051】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
まず、各特性に関する測定方法について説明する。
(1)全光線透過率の測定方法
全光線透過率は、JIS K 7361に準じて、「(株)村上色彩技術研究所製、機種名:ヘーズメーターHM−150」を用いて測定した。
測定は、硬化被膜の面が光源を向くようにして行った。
(2)ヘイズの測定方法
ヘイズは、JIS K 7136に準じて、「(株)村上色彩技術研究所製、機種名:ヘーズメーターHM−150」を用いて測定した。
測定は、硬化被膜の面が光源を向くようにして行った。
(3)60°光沢度の測定方法
60°光沢度をJIS K 7105に準じて、「BYK Gardner製、機種名:micro−TRI−gloss」を用いて測定した。
(4)算術平均粗さの測定方法
算術平均粗さ(Ra)を、JIS K 0601(2001)に準拠して「日本ビーコ(株)製、機種名:高輝度非接触3次元表面形状粗さ計 Wyko NT9100」を用いて測定した。
測定は、10倍の倍率で行った。
【0053】
(実施例1)
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(ポリマー成分:日本合成化学工業(株)製、商品名:紫光UV−7640B)100重量部、低分子量物質として特級グリセリン(和研薬(株)製)8重量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、商品名:イルガキュア184)4重量部、有機溶媒として酢酸エチル107重量部、エタノール205重量部を混合して固形分濃度が25%となるポリマー溶液を調整した。
得られたポリマー溶液は無色透明の均一な溶液であった。
前記ポリマー溶液を、基材となるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ100μm)の片面に塗布した。
このポリマー溶液の塗布は、低分子量物質が未添加の25%ポリマー溶液を塗布・乾燥させ、硬化させた時の硬化被膜が約3μmになるように12番手のマイヤーバーを用いて実施した。
このポリマー溶液の塗布されたPETフィルムを23℃で1分間乾燥後、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、前記PETフィルム上に硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で2分間加熱して低分子量物質を蒸発除去させ、表面に凹凸形状を有する防眩性シートを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図1に示す。
【0054】
(実施例2)
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂として、「(日本合成化学工業(株)製、商品名:紫光UV−1700B)」を用いた以外は、実施例1と同じ方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図2に示す。
【0055】
(実施例3)
低分子量物質として「1級エチレングリコール(キシダ化学(株)製)」を用いた以外は、実施例1と同じ方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図3に示す。
【0056】
(実施例4)
低分子量物質として「特級グリセリン(和研薬(株)製)」20重量部、溶媒として「酢酸エチル104重量部とエタノール187重量部との混合溶媒」を用いた以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図4に示す。
【0057】
(実施例5)
溶媒として「酢酸エチル107重量部、エタノール185重量部、及びn−ヘキサン20重量部の混合溶媒」を用いた以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図5に示す。
【0058】
(実施例6)
溶媒として「酢酸エチル104重量部、エタノール304重量部の混合溶媒」を用い、ポリマー溶液の固形分濃度を20重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図6に示す。
【0059】
(実施例7)
低分子量物質未添加の25%有機溶媒溶液を塗布し乾燥硬化させた時の硬化被膜が約4μmになるように「16番手のマイヤーバーを用いて」ポリマー溶液の塗布を実施した以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図7に示す。
【0060】
(実施例8)
バーコーターを「ベーカー式アプリケータ」に変更し、低分子量物質未添加の25%有機溶媒溶液を塗布し乾燥硬化させた時の硬化被膜が約3μmになるように塗布した以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図8に示す。
【0061】
(実施例9)
風乾条件を、「23℃で1分間、ポリマー被膜の表面に風をあてながらの乾燥」とした以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図9に示す。
【0062】
(実施例10)
低分子量物質として「1級エチレングリコール(キシダ化学(株)製)」8重量部、有機溶媒として「酢酸エチル」312重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図14に示す。
【0063】
(実施例11)
紫外線硬化性樹脂を「アクリル系紫外線硬化性樹脂(日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート))」を用いた以外は、実施例1と同じ方法で防眩性シートを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図15に示す。
【0064】
(比較例1)
低分子量物質として、ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂と相溶する「1級エチレングリコールジアセテート(和研薬(株)製)」を用いた以外は、実施例1と同じ方法でフィルムを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図10に示す。
【0065】
(比較例2)
「低分子量物質を添加しなかった」こと以外は、実施例1と同じ方法でフィルムを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図11に示す。
【0066】
(比較例3)
「低分子量物質を添加しなかった」以外は、実施例2と同じ方法でフィルムを作製した。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図12に示す。
【0067】
(比較例4)
「有機溶媒を添加せず、固形分濃度93重量%」とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。有機溶媒を添加していないので、塗布した溶液は目視レベルで2層に分かれていた。
各試薬の配合量、固形分濃度、塗布方法、風乾条件を表1に、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、60°光沢度)と算術平均粗さを表2に、光学顕微鏡写真を図13に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
上記のことからも、本発明によれば、優れた防眩性を有する防眩性シートが得られることがわかる。
しかも、上記に示したように、簡便な方法で防眩性シートが得られることがわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有するポリマー溶液を作製し、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液を作製し、該ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも一面に塗布した後に前記溶媒を蒸発除去させることにより前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜を前記基材の表面に作製し、該ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分を硬化させて硬化被膜を形成させるとともに前記低分子量物質を加熱して蒸発除去させることによって表面に凹凸を有する防眩性シートを作製することを特徴とする防眩性シートの製造方法。
【請求項2】
前記ポリマー成分として紫外線硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜に対する紫外線照射によって実施される請求項1記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項3】
前記ポリマー成分として熱硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜の加熱によって実施される請求項1記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化性樹脂がウレタンアクリレート系樹脂である請求項2に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項5】
前記低分子量物質が、18以上300以下の分子量であり、50℃以上350℃以下の沸点を有し、しかも、23℃未満の融点を有している有機化合物である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項6】
前記低分子量物質が、水酸基を有する有機化合物である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項7】
前記硬化被膜の算術平均粗さ(Ra)が50nm以上1500nm以下であり、しかも、60以上150以下の60°光沢度を有する防眩性シートを製造するための請求項1乃至6のいずれか1項に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項8】
ヘイズ値が2%以上50%以下であり、且つ全光線透過率が80%以上の防眩性シートを製造するための請求項1乃至7のいずれか1項に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項9】
前記基材として、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が80%以上の透明基材を用いる請求項1乃至8のいずれか1項に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項10】
硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有するポリマー溶液が作製され、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液が作製され、該ポリマー溶液がシート状の基材の少なくとも一面に塗布された後に前記溶媒が蒸発除去されることにより前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜が前記基材の表面に作製され、該ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分が硬化されて硬化被膜が形成されるとともに前記低分子量物質が加熱されて蒸発除去されることによって表面に凹凸が形成されていることを特徴とする防眩性シート。
【請求項11】
前記ポリマー成分として紫外線硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜に対する紫外線照射によって実施されている請求項10記載の防眩性シート。
【請求項12】
前記ポリマー成分として熱硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜の加熱によって実施されている請求項10記載の防眩性シート。
【請求項13】
前記紫外線硬化性樹脂がウレタンアクリレート系樹脂である請求項11に記載の防眩性シート。
【請求項14】
前記低分子量物質が、18以上300以下の分子量であり、50℃以上350℃以下の沸点を有し、しかも、23℃未満の融点を有している有機化合物である請求項10乃至13のいずれか1項に記載の防眩性シート。
【請求項15】
前記低分子量物質が、水酸基を有する有機化合物である請求項10乃至14のいずれか1項に記載の防眩性シート。
【請求項16】
前記硬化被膜の算術平均粗さ(Ra)が50nm以上1500nm以下であり、しかも、60以上150以下の60°光沢度を有する請求項10乃至15のいずれか1項に記載の防眩性シート。
【請求項17】
ヘイズ値が2%以上50%以下であり、且つ全光線透過率が80%以上である請求項10乃至16のいずれか1項に記載の防眩性シート。
【請求項18】
前記基材として、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が80%以上の透明基材を用いる請求項10乃至17のいずれか1項に記載の防眩性シート。
【請求項19】
請求項10乃至18のいずれか1項に記載された防眩性シートが用いられていることを特徴とする光学部材。
【請求項1】
硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有するポリマー溶液を作製し、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液を作製し、該ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも一面に塗布した後に前記溶媒を蒸発除去させることにより前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜を前記基材の表面に作製し、該ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分を硬化させて硬化被膜を形成させるとともに前記低分子量物質を加熱して蒸発除去させることによって表面に凹凸を有する防眩性シートを作製することを特徴とする防眩性シートの製造方法。
【請求項2】
前記ポリマー成分として紫外線硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜に対する紫外線照射によって実施される請求項1記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項3】
前記ポリマー成分として熱硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜の加熱によって実施される請求項1記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化性樹脂がウレタンアクリレート系樹脂である請求項2に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項5】
前記低分子量物質が、18以上300以下の分子量であり、50℃以上350℃以下の沸点を有し、しかも、23℃未満の融点を有している有機化合物である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項6】
前記低分子量物質が、水酸基を有する有機化合物である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項7】
前記硬化被膜の算術平均粗さ(Ra)が50nm以上1500nm以下であり、しかも、60以上150以下の60°光沢度を有する防眩性シートを製造するための請求項1乃至6のいずれか1項に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項8】
ヘイズ値が2%以上50%以下であり、且つ全光線透過率が80%以上の防眩性シートを製造するための請求項1乃至7のいずれか1項に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項9】
前記基材として、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が80%以上の透明基材を用いる請求項1乃至8のいずれか1項に記載の防眩性シートの製造方法。
【請求項10】
硬化性を有するポリマー成分と、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な溶媒とを含有するポリマー溶液が作製され、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性の高い溶媒であるポリマー溶液が作製され、該ポリマー溶液がシート状の基材の少なくとも一面に塗布された後に前記溶媒が蒸発除去されることにより前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜が前記基材の表面に作製され、該ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分が硬化されて硬化被膜が形成されるとともに前記低分子量物質が加熱されて蒸発除去されることによって表面に凹凸が形成されていることを特徴とする防眩性シート。
【請求項11】
前記ポリマー成分として紫外線硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜に対する紫外線照射によって実施されている請求項10記載の防眩性シート。
【請求項12】
前記ポリマー成分として熱硬化性樹脂が用いられ前記硬化が前記ポリマー被膜の加熱によって実施されている請求項10記載の防眩性シート。
【請求項13】
前記紫外線硬化性樹脂がウレタンアクリレート系樹脂である請求項11に記載の防眩性シート。
【請求項14】
前記低分子量物質が、18以上300以下の分子量であり、50℃以上350℃以下の沸点を有し、しかも、23℃未満の融点を有している有機化合物である請求項10乃至13のいずれか1項に記載の防眩性シート。
【請求項15】
前記低分子量物質が、水酸基を有する有機化合物である請求項10乃至14のいずれか1項に記載の防眩性シート。
【請求項16】
前記硬化被膜の算術平均粗さ(Ra)が50nm以上1500nm以下であり、しかも、60以上150以下の60°光沢度を有する請求項10乃至15のいずれか1項に記載の防眩性シート。
【請求項17】
ヘイズ値が2%以上50%以下であり、且つ全光線透過率が80%以上である請求項10乃至16のいずれか1項に記載の防眩性シート。
【請求項18】
前記基材として、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が80%以上の透明基材を用いる請求項10乃至17のいずれか1項に記載の防眩性シート。
【請求項19】
請求項10乃至18のいずれか1項に記載された防眩性シートが用いられていることを特徴とする光学部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−72983(P2011−72983A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87110(P2010−87110)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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