説明

防眩性ハードコートフィルム

【課題】表面硬度、透明性、防眩性、黒色再現性、画像のクリア感に優れた防眩性ハードコートフィルムを提供する。また、適度な防眩性を有し、特に透明性に優れ、近年PDPに要求されている黒色再現性および画像のクリア感を備えた防眩性ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】バインダー成分、および有機粒子を構成成分として含む防眩性ハードコート層を有する防眩性ハードコートフィルムにおいて、トータルヘイズおよび表面の光沢度を特定の数値範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性ハードコートフィルムに関する。特に、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや電子ペーパー等のフレキシブルディスプレイに好適に用いることができる防眩性ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイにおいては、その画面に映る映像をより見やすくするために、反射防止フィルムや防眩フィルムが用いられている。反射防止フィルムとは、例えば特許文献1にあるように、屈折率の異なる層を積層することによって反射光の強度を低下させるものである。それによって、例えば太陽光や蛍光灯等の外部光源からの光が画面に入射したとしても、その反射光によって画面が見にくくなることを抑制できる。また、防眩フィルムとは、例えば特許文献2にあるように、入射光を防眩フィルムの表面もしくは内部において拡散させるものである。それによって、上記のような外部光源からの光によって画面がぎらついて眩しく見えるのを抑制できる。
【0003】
近年においては、このような防眩フィルムとしては、製造工程の短縮および低コスト化のため、ハードコートフィルムに防眩性を付与した防眩性ハードコートフィルムとすることが一般的であり、例えば特許文献3〜5に開示されている。また、映像の黒色再現性が重要視されてきており、例えば特許文献6、7によって黒色再現性の向上が検討されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−728号公報
【特許文献2】特開2002−182015号公報
【特許文献3】特開2002−36452号公報
【特許文献4】特開2003−266582号公報
【特許文献5】特開2006−137835号公報
【特許文献6】特開2007−219485号公報
【特許文献7】特開2007−233374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような防眩フィルムは、これまでLCDにはよく用いられてきたが、実際にはPDPに用いられることは少なかった。一般的に、PDPは黒色再現性および画像のクリア感に優れるため、これらの特性がより要求される用途に用いられる。しかしながら、光拡散を生じさせるような防眩フィルムをPDPに用いると、かかるPDPは、黒色再現性および画像のクリア感に劣るものとなってしまい、これらの特性がより要求される用途に用いることができなくなってしまう。そのため、PDPには、防眩フィルムではなく、反射防止フィルムが好ましく用いられてきた。
【0006】
しかしながら、近年においては、低コスト化のために、PDPにおいても、よりコストの低い防眩フィルムを用いることが要求されている。そのような中で、上記特許文献2〜5に開示されているような防眩フィルムをPDPに用いると、PDPの黒色再現性および画像のクリア感が不十分となってしまう問題がある。さらに、上記特許文献6、7に開示されている防眩性ハードコートフィルムにおいても、近年PDPに要求されている黒色再現性および画像のクリア感を満足するものではない。
【0007】
本発明の目的は、表面硬度、透明性、防眩性、黒色再現性、画像のクリア感に優れた防眩性ハードコートフィルムを提供することにある。また、本発明の目的は、適度な防眩性を有し、特に透明性に優れ、近年PDPに要求されている黒色再現性および画像のクリア感を備えた防眩性ハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、バインダー成分、および有機粒子を構成成分として含む防眩性ハードコート層を有する防眩性ハードコートフィルムにおいて、トータルヘイズおよび表面の光沢度を特定の数値範囲とすることによって、上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、
(1)透明樹脂基材の少なくとも片面に、バインダー成分と、有機粒子とを構成成分として含む防眩性ハードコート層を有する防眩性ハードコートフィルムであって、トータルヘイズ(Hz)が0.1%以上4.0%以下、60度光沢度が120以上150以下である防眩性ハードコートフィルムである。
【0009】
さらに本発明は、
(2)防眩性ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)が0.5以下であること、
(3)有機粒子の含有量が、バインダー成分の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下であること、
(4)有機粒子が、バインダー成分との屈折率差が0.03未満、平均粒径が1μm以上10μm以下であること、
(5)防眩性ハードコート層の膜厚みが、有機粒子の平均粒径の50%以上200%以下の範囲にあること、
(6)防眩性ハードコート層の表面における表面突起高さ分布の半値幅が0.2μm以上0.4μm以下の範囲にあること、
(7)防眩性ハードコート層の表面における中心線平均表面粗さ(Ra)が0.01μm以上0.25μm以下であること
のうち、少なくともいずれか1つの態様を具備することによって、さらに優れた防眩性ハードコートフィルムを得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面硬度、透明性、防眩性、黒色再現性、画像のクリア感に優れた防眩性ハードコートフィルムを提供することができる。また、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、適度な防眩性を有し、特に透明性に優れるため、PDPに特に好適に用いることができる。特に、黒色再現性および画像のクリア感に優れるため、PDPに用いたとしても、近年PDPに要求されている黒色再現性および画像のクリア感を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[防眩性ハードコートフィルム]
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、後述する透明樹脂基材の少なくとも片面に、後述する防眩性ハードコート層を有するものである。
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、トータルヘイズ(Hz)が0.1%以上4.0%以下である。トータルヘイズ(Hz)を上記数値範囲とすることによって、透明性に優れ、ディスプレイ画面においては画像の視認性に優れる。また、黒色再現性および画像のクリア感に優れる。トータルヘイズ(Hz)が高すぎる場合は、透明性に劣り、ディスプレイ画面においては画像の視認性に劣るものとなる。また、黒色再現性および画像のクリア感に劣る。このような観点から、トータルヘイズ(Hz)の上限は、好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.5%以下、特に好ましくは2.0%以下である。他方、トータルヘイズ(Hz)は低いことが好ましいが、低すぎると防眩性に劣る傾向にある。このような観点から、実質的な下限は、好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、特に好ましくは1.5%以上である。
【0012】
また、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、内部ヘイズ(Hi)が1.5%以下であることが好ましい。防眩性ハードコートフィルムの内部ヘイズ(Hi)を上記数値範囲とすることによって、透明性を維持しながら、適度な防眩性を得ることができ、透明性と防眩性とのバランスをより優れたものとすることができる。また、黒色再現性および画像のクリア感により優れる。さらに、防眩性を維持しながら、黒色再現性および画像のクリア感をより優れたものとすることができる。防眩性ハードコートフィルムの内部ヘイズ(Hi)が高すぎる場合は、トータルヘイズ(Hz)を維持しながら、防眩性を高くすることが困難となる傾向にある。また、黒色再現性および画像のクリア感に劣る傾向にある。このような観点から、防眩性ハードコートフィルムの内部ヘイズ(Hi)の上限は、さらに好ましくは1.4%以下、特に好ましくは1.3%以下である。他方、防眩性ハードコートフィルムの内部ヘイズ(Hi)は低いほど好ましく、その下限は0%以上であることが特に好ましい。
【0013】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、そのトータルヘイズ(Hz)に対する内部ヘイズ(Hi)の比率(Hi/Hz)が0.75以下であることが好ましい。かかる比率(Hi/Hz)を上記数値範囲とすることによって、透明性と防眩性とのバランスをより優れたものとすることができる。また、黒色再現性および画像のクリア感により優れる。このような観点から、上記比率(Hi/Hz)のは、さらに好ましくは0.45以上0.65以下、特に好ましくは0.50以上0.58以下である。
【0014】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、防眩性ハードコート層の表面における60度光沢度が120以上150以下である。60度光沢度を上記数値範囲とすることによって、適度な防眩性を得ることができるばかりでなく、黒色再現性および画像のクリア感に優れる。60度光沢度が高すぎる場合は、防眩性および黒色再現性に劣る傾向にある。このような観点から、60度光沢度の上限は、好ましくは145以下、さらに好ましくは140以下である。他方、低すぎる場合は、黒色再現性および画像のクリア感に劣る傾向にある。このような観点から、60度光沢度の下限は、好ましくは123以上、さらに好ましくは126以上、特に好ましくは130以上である。
【0015】
本発明においては、トータルヘイズ(Hz)と60度光沢度とが同時に上記数値範囲にあることによって、適度な防眩性を有し、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感に同時に優れたものとなり、特に近年PDPに要求されている透明性、黒色再現性、および画像のクリア感を同時に達成することができる。
【0016】
上記のようなトータルヘイズ(Hz)、内部ヘイズ(Hi)、および60度光沢度を達成するためには、防眩性ハードコート層におけるバインダー成分の屈折率、有機粒子の屈折率、平均粒径、含有量、バインダー樹脂および無機充填剤の屈折率、防眩性ハードコート層の膜厚み、透明樹脂基材のヘイズおよび厚みを適宜調整することによって達成することができる。例えば、バインダー成分の屈折率と有機粒子の屈折率との差を小さくしたり、有機粒子の平均粒径を小さくしたり、有機粒子の含有量を少なくしたりすると、トータルヘイズ(Hz)および内部ヘイズ(Hi)は低くなる傾向にあり、60度光沢度は高くなる傾向にある。
【0017】
[防眩性ハードコート層]
本発明における防眩性ハードコート層は、後述するバインダー成分と、有機粒子とを構成成分として含むものである。
本発明における防眩性ハードコート層は、そのトータルヘイズ(Hzhc)が0.1%以上4.0%以下であることが好ましい。防眩性ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)を上記数値範囲とすることによって、防眩性ハードコートフィルムの透明性、黒色再現性、および画像のクリア感により優れる。防眩性ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)が高すぎる場合は、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感に劣る傾向にある。このような観点から、防眩性ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)の上限は、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.5%以下、特に好ましくは2.0%以下である。他方、防眩性ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)は低いことが好ましいが、低すぎると防眩性に劣る傾向にある。このような観点から、実質的な下限は、より好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.5%以上、特に好ましくは1.0%以上である。
【0018】
また、本発明における防眩性ハードコート層は、その内部ヘイズ(Hihc)が0.5%以下であることが好ましい。防眩性ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)を上記数値範囲とすることによって、トータルヘイズ(Hzhc)を維持しながら、表面ヘイズ(Hshc)を高くすることができ、すなわち防眩性を高くすることができ、透明性と防眩性とのバランスをより優れたものとすることができる。また、黒色再現性および画像のクリア感により優れる。さらに、防眩性を維持したまま、黒色再現性および画像のクリア感をより優れたものとすることができる。防眩性ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)が高すぎる場合は、トータルヘイズ(Hzhc)を維持するためには、表面ヘイズ(Hshc)を充分に高くすることができず、防眩性を高くすることが困難となる傾向にある。また、黒色再現性および画像のクリア感に劣る傾向にある。このような観点から、防眩性ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)の上限は、さらに好ましくは0.4%以下、特に好ましくは0.3%以下である。他方、防眩性ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)は低いほど好ましく、その下限は0%以上であることが特に好ましい。
【0019】
本発明における防眩性ハードコート層は、そのトータルヘイズ(Hzhc)に対する内部ヘイズ(Hihc)の比率(Hihc/Hzhc)が0.35以下であることが好ましい。かかる比率(Hihc/Hzhc)を上記数値範囲とすることによって、透明性と防眩性とのバランスをより優れたものとすることができる。また、黒色再現性および画像のクリア感により優れる。このような観点から、上記比率(Hi/Hz)は、さらに好ましくは0.01以上0.20以下、特に好ましくは0.05以上0.17以下である。
【0020】
上記のような防眩性ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)、および内部ヘイズ(Hihc)を達成するためには、防眩性ハードコート層におけるバインダー成分の屈折率、有機粒子の屈折率、平均粒径、含有量、バインダー樹脂および無機充填剤の屈折率、防眩性ハードコート層の膜厚みを適宜調整することによって達成することができる。例えば、バインダー成分の屈折率と有機粒子の屈折率との差を小さくしたり、有機粒子の平均粒径を小さくしたり、有機粒子の含有量を少なくしたりすると、防眩性ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)および内部ヘイズ(Hihc)は低くなる傾向にある。
【0021】
本発明における防眩性ハードコート層の膜厚みは、有機粒子の平均粒径の50%以上200%以下の範囲にあることが好ましい。防眩性ハードコート層の膜厚みを上記数理範囲とすることによって、透明性および防眩性により優れる。また、透明性と防眩性とのバランスにより優れる。また、黒色再現性および画像のクリア感により優れる。さらに、有機粒子の脱落を抑制することができる。防眩性ハードコート層の膜厚みが薄すぎる場合は、防眩性ハードコート層表面において、有機粒子が形成する突起の高さが高くなりすぎる傾向にあり、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感に劣る傾向にある。また、粒子が脱落しやすくなる傾向にある。他方、厚すぎる場合は、防眩性ハードコート層表面において、有機粒子が突起を形成しにくくなる傾向にあり、それにより光拡散しにくくなる傾向にあり、防眩性に劣る傾向にある。このような観点から、防眩性ハードコート層の膜厚みは、さらに好ましくは有機粒子の平均粒径の90%以上140%以下の範囲、特に好ましくは有機粒子の平均粒径の92%以上116%以下の範囲である。
【0022】
本発明における防眩性ハードコート層は、その表面における表面突起高さ分布の半値幅が0.20μm以上0.40μm以下の範囲にあることが好ましい。ここで、表面突起高さ分布の半値幅は、非接触光学粗さ計(ZYGO社製:商品名NewView5022)によって得られた表面プロファイルから、Histogram Plotにより、横軸に突起高さ(単位:μm)、縦軸に頻度(単位:Counts)をプロットした突起分布における半値幅(ピーク位置における分布の高さの、半分の高さの位置における分布の幅)(単位:μm)を示す。表面突起高さ分布の半値幅を上記数値範囲とすることによって、透明性および防眩性により優れる。また、透明性と防眩性とのバランスにより優れる。また、黒色再現性および画像のクリア感により優れる。表面突起高さ分布の半値幅の値が大きすぎる場合は、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感に劣る傾向にある。他方、小さすぎる場合は、防眩性に劣る傾向にある。このような観点から、表面突起高さ分布の半値幅は、0.24μm以上0.39μm以下の範囲にあることがさらに好ましく、0.27μm以上0.38μm以下の範囲にあることが特に好ましい。
【0023】
本発明における防眩性ハードコート層は、その表面における中心線平均表面粗さ(Ra)が0.01μm以上0.25μm以下であることが好ましい。中心線平均表面粗さ(Ra)を上記数値範囲とすることによって、透明性および防眩性により優れる。また、透明性と防眩性とのバランスにより優れる。また、黒色再現性および画像のクリア感により優れる。中心線平均表面粗さ(Ra)の値が大きすぎる場合は、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感に劣る傾向にある。他方、小さすぎる場合は、防眩性に劣る傾向にある。このような観点から、中心線平均表面粗さ(Ra)の下限は、さらに好ましくは0.11μm以上、特に好ましくは0.14μm以上である。また、中心線平均表面粗さ(Ra)の上限は、さらに好ましくは0.22μm以下、特に好ましくは0.17μm以下である。
【0024】
以上のような防眩性ハードコート層の表面における表面突起高さ分布の半値幅および中心線平均表面粗さ(Ra)は、防眩性ハードコート層における有機粒子の平均粒径および含有量を適宜調整することによって達成される。例えば、有機粒子の平均粒径を大きくすると、表面突起高さ分布の半値幅の値は大きくなる傾向にある。また、含有する有機粒子の平均粒径を大きくしたり、含有量を多くしたりすると、中心線平均表面粗さ(Ra)の値は大きくなる傾向にある。また、後述する無機充填剤が、防眩性ハードコート層中において均一に分散した態様で存在することも、防眩性ハードコート層の表面の態様を上記のごとくするための1つの好ましい手段である。
【0025】
以下、本発明における防眩性ハードコート層に含まれる各構成成分について説明する。
[バインダー成分]
本発明におけるバインダー成分は、主に、後述するバインダー樹脂からなる。本発明におけるバインダー成分は、無機充填剤を構成成分として含むことが好ましい。
【0026】
[バインダー樹脂]
本発明におけるバインダー樹脂は、主に、放射線硬化型樹脂組成物からなる。
かかる放射線硬化型樹脂組成物は、放射線により硬化させることができるモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーである。本発明における放射線硬化型樹脂組成物としては、硬化後の架橋密度を高くすることができ、表面硬度の向上効果を高くすることができ、かつ透明性の向上効果を高くすることができるという観点から、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマー等の多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0027】
かかる多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基を含有する化合物であるが、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有することが好ましく、そのような態様とすることによって、放射線硬化型樹脂組成物の架橋反応が進行しやすくなり、表面硬度の向上効果をより高くすることができる。また、本発明における多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基以外の他の重合性官能基を含有してもよい。
【0028】
分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えばネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート)、メラミン(メタ)アクリレート等、およびこれらのうち少なくとも1種からなる1〜20量体程度のオリゴマーや、これらのうち少なくとも1種からなるポリマーを挙げることができる。このような多官能(メタ)アクリレート化合物は、一種類を単独で用いても良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
【0029】
以上のような、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えばアロニックスM−400、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、TO−1200、TO−1231、TO−595、TO−756(以上、東亞合成製)、KAYARD D−310、D−330、DPHA、DPHA−2C(以上、日本化薬製)、ニカラックMX−302(三和ケミカル社製)等の市販品として入手することができる。
【0030】
また、本発明においては、より優れた防眩性ハードコート層を形成するために、バインダー樹脂には、光重合開始剤を添加するのが好ましい。光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フロオレノン、アントラキノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
【0031】
本発明における光重合開始剤の添加量は、放射線硬化型樹脂組成物100質量%を基準として、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。添加量を上記数値範囲とすることによって、防眩性ハードコート層の表面硬度の向上効果をより高くすることができる。添加量が多すぎる場合は、添加した光重合開始剤が可塑剤として働く傾向にあり、防眩性ハードコート層の強度が低くなってしまう恐れがある。
本発明におけるバインダー樹脂には、さらにシリコーン樹脂を添加することができ、防眩性ハードコート層の強度、および表面硬度の向上効果をより高めることができる。
【0032】
[無機充填剤]
本発明におけるバインダー成分は、防眩性ハードコート層の表面硬度および強度の向上効果を高める目的、あるいはカールを抑制する目的で無機充填剤を含有することが好ましい。
【0033】
かかる無機充填剤としては、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物が好ましく、防眩性ハードコート層の表面硬度および強度の向上効果をより高くすることができる。また、透明性および防眩性の向上効果をより高くすることができる。さらに、滑り性に優れる。中でも、ケイ素酸化物が好ましく、表面硬度の向上効果を特に高くすることができ、強度を特に高くすることができる。
【0034】
本発明においては、上記のような無機充填剤を添加することによって、防眩性ハードコート層において、強度等の機械特性の向上効果を高めることができるが、本発明の目的とする透明性および防眩性等の光学特性に影響を及ぼさないような無機充填剤を選定する必要がある。具体的には、無機充填剤の平均粒径や屈折率を特定の数値範囲とすることが好ましい。
【0035】
上記のような目的において、本発明においては、無機充填剤の平均粒径は、2nm以上2000nm以下であることが好ましい。平均粒径が上記数値範囲にあると、防眩性ハードコート層の透明性、黒色再現性、および画像のクリア感を維持しながら、表面硬度および強度の向上効果を高くすることができる。また、防眩性ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)をより低くすることができる。無機充填剤の平均粒径が大きすぎる場合は、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感に劣る傾向にある。他方、小さすぎる場合は、無機充填剤自体の強度が低くなる傾向にあり、表面硬度および強度の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、無機充填剤の平均粒径は、さらに好ましくは3nm以上200nm以下、特に好ましくは5nm以上100nm以下である。
【0036】
また、特定の屈折率を有する無機充填剤を用いることが好ましく、上述のバインダー樹脂との屈折率差が0.1未満である無機充填剤が好ましい。屈折率差が上記数値範囲にあると、防眩性ハードコート層の透明性を維持しながら、表面硬度および強度の向上効果を高くすることができる。また、防眩性ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)をより低くすることができる。また、黒色再現性および画像のクリア感により優れる。屈折率差が大きすぎる場合は、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感に劣る傾向にある。このような観点から、屈折率差は、好ましくは0.08未満、さらに好ましくは0.07未満である。
【0037】
無機充填剤の含有量は、バインダー成分100質量%中に、10質量%以上70質量%以下が好ましい。含有量を上記数値範囲とすることによって、防眩性ハードコート層の透明性を維持しながら、表面硬度および強度の向上効果を高くすることができる。また、防眩性ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)をより低くすることができる。また、黒色再現性および画像のクリア感により優れる。含有量が多すぎる場合は、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感に劣る傾向にある。他方、含有量が少なすぎる場合は、表面硬度および強度の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、含有量は、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下、特に好ましくは30質量%以上50質量%以下である。
上記のような無機充填剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明においては、粉体状、もしくは粉体状の無機充填剤を溶媒に分散してゾル状とした溶媒分散ゾル状である無機充填剤を用いることが好ましい。無機充填剤が溶媒分散ゾル状である場合は、バインダー樹脂との相溶性を高めるという観点から、分散媒は有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等を挙げることができる。中でもメタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましく、相溶性に優れる。また、無機充填剤の分散性を向上するために、各種の界面活性剤やアミン類等を添加することができる。
【0039】
以上のような無機充填剤は、例えば溶媒分散ゾル状のケイ素酸化物は、IPA−ST,MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40(以上、日産化学社製)等の市販品として入手することができ、好ましく用いることができる。また、溶媒分散ゾル状のアルミニウム酸化物は、アルミナゾルー100、アルミナゾルー200、アルミナゾルー500(以上、日産科学社製)、AS−150I、AS−150T(以上、住友大阪セメント製)等の市販品として入手することができ、好ましく用いることができる。
【0040】
さらに、本発明における無機充填剤は、バインダー樹脂に対する分散性を向上させる目的、防眩性ハードコート層中における分散常態を良好なものとする目的、あるいはバインダー樹脂と架橋点を生成して、防眩性ハードコート層の表面硬度および強度を向上させる目的で、重合性の表面処理剤によって表面処理されている態様が好ましい。
【0041】
かかる表面処理剤としては、例えばシラノール基を含有する、もしくは加水分解することでシラノール基を生成する化合物(以下、シランカップリング剤と表記することがある。)が挙げられ、好ましく用いられる。さらにはシラノール基と、シラノール基以外の重合性官能基とを併せ持ったシランカップリング剤が好ましい。このようなシランカップリング剤におけるシラノール基と無機充填剤の表面に存在する水酸基とは、熱等により架橋反応することができ、それによって無機充填剤の表面にシランカップリング剤が結合した態様となり、有機成分中における分散性を高くすることができる。シラノール基以外の重合性官能基としては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、アクリルアミド基、水酸基等を挙げることができる。
【0042】
上記のようなシランカップリング剤は、例えばTSL−8350、TSL−8337、TSL−8370、TSL−8375(以上、GE東芝シリコーン社製)、A−9530(新中村化学製)、A−187(日本ユニカー製)等の市販品として入手することができ、好ましく用いることができる。
【0043】
表面処理された無機充填剤を得る方法は特に限定されないが、例えば次の方法によって得ることができる。すなわち、まず前記のようなシランカップリング剤と無機充填剤とを混合し、さらにイオン交換水を添加した後に室温で静置することでシランカップリング剤の加水分解を進める。加水分解させるのに必要な時間は、用いる物質によって異なるが、1時間〜24時間程度である。シランカップリング剤の加水分解が十分に進行した後に20℃〜150℃の温度をかけることにより、シランカップリング剤におけるシラノール基と無機充填剤の表面における水酸基とが反応し、表面処理された無機充填剤を得ることができる。
【0044】
本発明においては、無機充填剤は、防眩性ハードコート層中においてほとんど凝集体を形成しておらず、均一に分散した態様で存在することが、本発明が規定するトータルヘイズ(Hz)および60度光沢度を同時に達成するための1つの好ましい手段である。かかる分散の態様によって、防眩性ハードコート層の内部における光拡散が低減し、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感をより優れたものとすることができる。
【0045】
[有機粒子]
本発明における有機粒子としては、(メタ)アクリル樹脂粒子、架橋(メタ)アクリル樹脂粒子、架橋(メタ)アクリル−スチレン共重合樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ポリカーボネート樹脂粒子、ポリ塩化ビニル樹脂粒子等の樹脂粒子を挙げることができる。中でも、透明性の向上効果を高くすることができる、防眩性ハードコート層から脱落しにくいという観点から、架橋(メタ)アクリル樹脂粒子が好ましい。
【0046】
本発明においては、有機粒子の屈折率とバインダー成分の屈折率との差(屈折率差)が0.03未満であることが好ましい。屈折率差を上記数値範囲とすることによって、防眩性ハードコート層の内部において、有機粒子による光拡散を低減することができ、防眩性ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)を低くすることができ、透明性の向上効果を高くすることができる。このような観点から、有機粒子とバインダー成分との屈折率差は、さらに好ましくは0.025未満である。
【0047】
また、本発明における有機粒子は、平均粒径が1μm以上10μm以下であることが好ましい。有機粒子の平均粒径を上記数値範囲とすることによって、防眩性ハードコート層の表面において、有機粒子による光拡散を生じやすくなり、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感を維持したまま、防眩性の向上効果を高くすることができる。また、本発明が好ましく規定する表面突起高さ分布の半値幅、および中心線平均表面粗さ(Ra)を達成しやすくなる。有機粒子の平均粒径が小さすぎる場合は、防眩性に劣る傾向にある。他方、大きすぎる場合は、防眩性の向上効果は高くなるものの、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感に劣る傾向にある。このような観点から、有機粒子の平均粒径は、より好ましくは1.5μm以上8μm以下、さらに好ましくは2μm以上6μm以下、特に好ましくは2.5μm以上3.5μm以下である。
【0048】
本発明における防眩性ハードコート層は、このような有機粒子を、バインダー成分100質量%を基準として0.1質量%以上5質量%以下含有することが好ましい。有機粒子の含有量を上記数値範囲とすることによって、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感を維持しながら防眩性の向上効果を高くすることができ、これらのバランスをより優れたものとすることができる。また、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感により優れる。また、本発明が好ましく規定する中心線平均表面粗さ(Ra)を達成しやすくなる。含有量が少なすぎる場合は、防眩性ハードコート層の表面において、有機粒子による光拡散が生じにくくなる傾向にあり、防眩性に劣る傾向にある。他方、多すぎる場合は、防眩性の向上効果は高くなるものの、透明性、黒色再現性、および画像のクリア感に劣る傾向にある。このような観点から、有機粒子の含有量は、さらに好ましくは0.5質量%以上3質量%以下、特に好ましくは1質量%以上2質量%以下である。
【0049】
本発明においては、以上のような有機粒子は、防眩性ハードコート層において大径粒子として作用する。この大径粒子は、防眩性ハードコート層の表面においては、突起を形成し、光拡散を生じさせるための土台となる表面を形成する。一方で、防眩性ハードコート層の内部においては、光拡散を生じさせないことが重要であり、これらを同時に満足することによって、透明性の向上効果を高くすることができる。また、黒色再現性および画像のクリア感をより優れたものとすることができる。このような作用効果をより効果的に発現するために、ならびに本発明におけるトータルヘイズ(Hz)および60度光沢度をより効果的に達成するために、上記のような屈折率および平均粒径を有する架橋(メタ)アクリル樹脂粒子を、上記含有量において採用することが特に好ましい。このような有機粒子は、例えばMX−150、MX−180、MX−300(以上、綜研化学製)、XX−10GA、XX−1140Z、XX1141Z(以上、積水化学工業製)等の市販品として入手することができ、好ましく用いることができる。
【0050】
以上のように、本発明における防眩性ハードコート層は、バインダー樹脂と無機充填剤とを構成成分として含むバインダー成分に、大径粒子としての有機粒子を含有する態様が好ましい。かかる態様とすることによって、適度な防眩性を有し、優れた透明性、黒色再現性、画像のクリア感を達成することができる。特に、近年PDPに要求されている透明性、黒色再現性、画像のクリア感を同時に達成することができる。
【0051】
[その他の添加剤]
本発明における防眩性ハードコート層においては、前記のものに加えて、さらに本発明の目的を阻害しない範囲で、光増感剤、レベリング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料等を加えることができる。
【0052】
[透明樹脂基材]
本発明における透明樹脂基材は、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレントリアセチルセルロース、アクリル等からなるシートあるいはフィルムを挙げることができる。中でも、透明性等の光学特性、機械特性、耐熱性、価格のバランスが良いという観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなるフィルムが好ましい。これら透明樹脂基材には、防眩性ハードコート層との密着性を高める等の目的で、易接着層を設ける、あるいはコロナ処理を施す等、表面処理を施すことができる。また、透明樹脂基材の厚みは特には限定されないが、光学特性とハンドリング性が良好であるという観点から、好ましくは25μm以上300μm以下、さらに好ましくは50μm以上200μm以下、特に好ましくは75μm以上188μm以下である。
【0053】
[防眩性ハードコート層の形成方法]
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、防眩性ハードコート層を形成するための塗液を、前記の透明樹脂基材上の防眩性ハードコート層を形成したい側の表面に塗工し、加熱乾燥し、硬化することにより得ることができる。
【0054】
本発明における防眩性ハードコート層を形成するための塗液は、溶媒に、前記バインダー成分、有機粒子および任意に添加してもよいその他の添加剤を添加し、混合した溶液である。各成分の添加にあたっては、粉体等の固体として添加してもよいし、固体を適当な溶媒を用いて溶液あるいは分単体の態様としたものを添加してもよい。本発明においては、バインダー成分が構成成分として含む無機充填剤が凝集体を形成しないように各成分を添加、混合することが好ましく、本発明が規定するトータルヘイズ(Hz)および60度光沢度を同時に達成するための1つの好ましい手段である。塗液に用いられる溶媒は、特に限定はされないが、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、セカンダリーブタノール、t−ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸ブチル、酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類等を用いることができ、塗液の分散性が良好となり、防眩性ハードコート層の外観が良好となる。中でも、溶解性が良好であるという観点から、ケトン類が好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが特に好ましい。塗液の固形分濃度としては、1〜70質量%が好ましく、このような態様とすることによって、塗り斑等の欠点を低減することができる。
【0055】
防眩性ハードコート層を形成するための塗液を塗布する方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法等を好ましく挙げることができる。これらの塗布方法によって、透明樹脂基材上に塗液を塗布し、塗膜を形成し、得られた塗膜を加熱乾燥する。加熱乾燥の条件としては、50〜150℃で10〜150秒間加熱することが好ましく、50〜120℃で20〜130秒間加熱することがさらに好ましく、50〜80℃で30〜120秒間加熱することが特に好ましい。加熱乾燥後、紫外線照射または電子線照射により塗膜を硬化する。紫外線照射の場合、その照射量は、好ましくは10〜2000mJ/cm、さらに好ましくは50〜1500mJ/cm、特に好ましくは100〜1000mJ/cmであり、表面硬度の向上効果をより高くすることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。
【0057】
(1)トータルヘイズおよび内部ヘイズ
(1−1)防眩性ハードコートフィルムのトータルヘイズ(Hz)
防眩性ハードコートフィルムのトータルヘイズ(Hz)は、JIS K7150に準拠して、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHCM−2Bにて測定を行った。入射光は、防眩性ハードコート層側から入射した。測定は、任意の5箇所について実施し、それらの平均値をトータルヘイズ(Hz)(単位:%)とした。
【0058】
(1−2)防眩性ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)および内部ヘイズ(Hihc)
防眩性ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)および内部ヘイズ(Hihc)は次の方法により求めた。まず、上記(1−1)の方法に従って透明樹脂基材のトータルヘイズ(Hzf)を求めた。次いで、かかる透明樹脂基材の片面(防眩性ハードコート層を設ける側の表面)に、バインダー成分(JSR株式会社製、商品名:Z7501)を、マイヤーバーを用いて、乾燥後の塗布厚みが約10μmとなるように塗布し、充分に乾燥、硬化させて、バインダー成分層が形成された透明樹脂基材を得た。得られたサンプルについて、上記(1−1)の方法に従ってトータルヘイズ(Hzfb)を求めた。ここで、後述のように、上記バインダー成分層のトータルヘイズは0%であるため、次式によって透明樹脂基材の表面ヘイズ(Hsf)および内部ヘイズ(Hif)を求めることができる。
(Hzf)=(Hif)+2×(Hsf)
(Hzfb)=(Hif)+(Hsf)
(Hsf)=(Hzf)−(Hzfb)
(Hif)=(Hzf)−2×(Hsf)
【0059】
次に、防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層上に、上記と同様にバインダー成分層を形成して、バインダー成分層が形成された防眩性ハードコートフィルムを得た。かかるサンプルについて、上記(1−1)の方法に従ってトータルヘイズ(Hzb)を求めた。ここで、上記(1−1)で得られた防眩性ハードコートフィルムのトータルヘイズ(Hz)、上記で得られた透明樹脂基材の表面ヘイズ(Hsf)および内部ヘイズ(Hif)を用いて、次式によって防眩性ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)、表面ヘイズ(Hshc)、内部ヘイズ(Hihc)を求めることができる。
(Hz)=(Hshc)+(Hihc)+(Hif)+(Hsf)
(Hzb)=(Hihc)+(Hif)+(Hsf)
(Hshc)=(Hz)−(Hzb)
(Hihc)=(Hzb)−(Hif)−(Hsf)
(Hzhc)=(Hihc)+2×(Hshc)
【0060】
さらに、防眩性ハードコートフィルムの内部ヘイズ(Hi)は、次式によって求めることができる。
(Hi)=(Hihc)+(Hif)
なお、バインダー成分を乾燥、硬化させて、厚み約10μmのバインダー成分からなる板状サンプルを作成し、上記(1−1)の方法に従ってトータルヘイズを測定したところ、0%であることを確認した。
【0061】
(2)60度光沢度
日本電色工業(株)製グロスメーターを使用しJIS K7105に準拠して60度光沢度を測定した。測定は、サンプルの防眩性ハードコート層の表面において、任意の10箇所について実施し、それらの平均値を測定値とした。
【0062】
(3)屈折率
(3−1)バインダー成分、バインダー樹脂の屈折率
バインダー成分、およびバインダー樹脂の屈折率は、以下の方法により測定した。
まず、樹脂サンプルをシャーレにサンプリングし、80℃で24時間放置して、十分に乾燥させて、厚さ約1mmの板状サンプルを作成した。得られた板状サンプルについて、ナトリウムD線(589nm)を光源としたアッベ屈折計を用いて、温度23℃、相対湿度65%RHの環境下にて屈折率を測定した。測定は、任意の5箇所について実施し、それらの平均値を樹脂サンプルの屈折率とした。
【0063】
(3−2)有機粒子、無機充填剤の屈折率
有機粒子および無機充填剤の屈折率は、以下の方法により測定した。
まず、粒子サンプルを、80℃で24時間放置して乾燥させた後、屈折率の異なる種々の液(25℃)に懸濁させた。次いで、懸濁液が最も透明に見える液の屈折率を、ナトリウムD線(589nm)を光源としたアッベ屈折率計を用いて、温度23℃、相対湿度65%RHの環境下にて測定し、得られた値を粒子サンプルの屈折率とした。
【0064】
(4)平均粒径
試料台上に、粉体を個々の粒子ができるだけ重ならないようにうに散在させ、金スパッター装置によりこの表面に金薄膜蒸着層を厚み200〜300Åで形成し、走査型電子顕微鏡を用いて1万〜3万倍で観察し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも1000個の粒子についてその面積相当粒径を求め、それらの平均値を平均粒径(単位:μmもしくはnm)とした。
【0065】
(5)防眩性ハードコート層の膜厚み
サンプルフィルムを鋭利な剃刀にてカットし、得られた断面を光学顕微鏡によって観察し、防眩性ハードコート層の表面において、有機粒子および無機微粒子による突起が形成されていない部分の厚みを測定した。測定は、任意の10箇所について実施し、それらの平均値を防眩性ハードコート層の膜厚み(単位;μm)とした。
【0066】
(6)突起高さ分布の半値幅
非接触光学粗さ計(ZYGO社製:商品名NewView5022)を使用し、倍率25倍にて283μm×213μmの領域についてスキャンを実施し、表面プロファイルを得た。得られた表面プロファイルから、Histogram Plotにより、横軸に突起高さ(単位:μm)、縦軸に頻度(単位:Counts)をプロットした突起分布を得た。得られた突起分布から、そのピーク位置における分布の高さの、半分の高さの位置における分布の幅を読み取り、突起高さ分布の半値幅(単位:μm)とした。測定は、防眩性ハードコート層の表面において、任意の5箇所について実施し、それらの平均値を測定値とした。
【0067】
(7)中心線平均表面粗さ(Ra)
非接触式三次元粗さ計(小坂研究所製、ET−30HK)を用いて波長780nmの半導体レーザー、ビーム径1.6μmの光触針で測定長(Lx)1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、厚み方向拡大倍率1万倍、横方向拡大倍率200倍、走査線数100本(従って、Y方向の測定長Ly=0.2mm)の条件にてフィルム表面の突起プロファイルを測定した。その粗さ曲面をZ=f(x,y)で表わしたとき、次の式で得られる値をフィルムの中心線平均表面粗さ(Ra、単位:μm)とした。
【0068】
【数1】

【0069】
(8)黒色再現性
(8−1)黒色テープ法
防眩性ハードコートフィルムの、防眩性ハードコート層とは反対側の表面に黒色テープを貼り付けたサンプルを作成し、防眩性ハードコート層側から黒色の再現度を目視にて確認し、以下の基準で評価を行った。
○:黒色テープが全く白っぽく見えず、黒色の再現性が良好である。
△:黒色テープ自体の黒さとの差が何とか認識できる。
×:黒色テープが全体的に白っぽく見え、黒色の再現性が不十分である。
【0070】
(8−2)PDP法
市販の50インチプラズマディスプレイ(解像度XGA)の画面表面から反射防止フィルムを剥がし、次いで、かかる表面に、本発明において得られた防眩性ハードコートフィルムを、防眩性ハードコード層が表側となるように粘着剤を用いて貼り付けた。かかる作業は、プラズマディスプレイの画面半分について行い、残りの半分は市販品の状態のままとした。プラズマディスプレイの表示を黒色表示にして、500luxの明室にて画面を観測し、目視にて市販品のままの部分と比較することで、黒色再現性を評価した。評価は、以下の指標に従った。
◎:外光による白ちゃけ感が全く無く、非常に黒が締まった表示(合格)
○:外光による白ちゃけ感がほとんど無く、黒が締まった表示(合格)
△:外光による白ちゃけ感が有り、黒の締まりが低い表示(不合格)
×:外光による白ちゃけ感が強く、黒の締まりが無い表示(不合格)
【0071】
(9)画像のクリア感
上記(8−2)で得られた、本発明において得られた防眩性ハードコートフィルムを貼り付けたプラズマディスプレイの表示をカラーバー表示とし、目視にて市販品のままの部分と比較することで、画像のクリア感を評価した。評価は、以下の指標に従った。
◎:市販品のままの部分に比較して、画像の透明感および光沢感が極めて良好であり、画像のクリア感に極めて優れる(合格)
○:市販品のままの部分に比較して、画像の透明感および光沢感が良好であり、画像のクリア感に優れる(合格)
△:画像の透明感および光沢感が市販品のままの部分と同じであり、画像のクリア感は通常レベルと同等である(不合格)
×:画像の透明感および光沢感が市販品のままの部分よりも劣り、画像のクリア感は通常レベルより劣る(不合格)
【0072】
(10)防眩性
得られた防眩性ハードコートフィルムの、防眩性ハードコート層側の表面から上方30cmの位置に蛍光灯を設置し、ハードコートフィルムの表面における、蛍光灯からの光の映り込みについて目視にて観察し、以下の基準で防眩性の評価を行った。
◎:蛍光灯の形状が全く分からず、防眩性が良好(合格)
○:蛍光灯の形状が何とか認識できる程度であり、防眩性が十分(合格)
△:蛍光灯の形状が明確に認識でき、防眩性が不足(不合格)
×:蛍光灯の形状が完全に鏡像として見え、防眩性がない(不合格)
【0073】
(11)鉛筆硬度
JIS K5400に準拠し実施した。
評価は、防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層表面において実施した。
【0074】
[実施例1]
<易接着層を形成するための塗液の調製>
ポリエステル:酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%と、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%とからなるポリエステル(Tg=80℃、数平均分子量13000)を用いた。
なお、かかるポリエステルは、特開平6−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル44部、イソフタル酸ジメチル16部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール34部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで、反応系の温度を徐々に255℃までに上昇させ、系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。
得られたポリエステルは、溶液としてテトラヒドロフランを用い、常法により、水分散体(固形分濃度15質量%)として用いた。
【0075】
アクリル:メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%からなるアクリル(Tg=50℃)を用いた。
なお、かかるアクリルは、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部、およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温し、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、さらにモノマー類であるメチルメタクリレート23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるように調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却してアクリルの水分散体(固形分濃度35質量%)を得た。
添加剤:シリカフィラー(平均粒径100nm)(日産化学株式会社製、商品名:スノーテックスZL)を用いた。
濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製、商品名:ナロアクティーN−70)を用いた。
上記で得られた各原料を、固形分比率で、ポリエステル60質量%、アクリル30質量%、添加剤5質量%、濡れ剤5質量%となるように配合し、十分に攪拌し、さらにイオン交換水を用いて固形分濃度8質量%となるように希釈し、易接着層を形成するための塗液を作成した。
【0076】
<透明樹脂基材および易接着層の形成>
溶融ポリエチレンテレフタレート(〔η〕=0.62dl/g(25℃、オルトクロロフェノール)、Tg=78℃)をダイより押し出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとした。次いで、かかる未延伸フィルムを縦方向に3.4倍延伸し、縦一軸延伸フィルムを得た。その後、得られた縦一軸延伸フィルムの両面に、上記で得られた易接着層を形成するための塗液を、ロールコーターで均一に塗布した。次いで、横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させながら熱固定を行い、易接着層が形成された、厚さ188μmの透明樹脂基材を得た。なお、易接着層の厚さは0.04μmであった。また、易接着層が形成された透明樹脂基材のトータルヘイズ(Hzf)は1.4%、表面ヘイズ(Hsf)は0.2%、内部ヘイズ(Hif)は1.0%であった。
【0077】
<防眩性ハードコート層を形成するための塗液>
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを主成分とするバインダー樹脂(屈折率1.53)と、無機充填剤としてのケイ素酸化物(平均粒径20nm、屈折率1.47、シランカップリング剤により表面処理されているもの)とを構成成分として含む塗剤(JSR株式会社製、商品名:Z7501、乾燥後の屈折率1.51、バインダー樹脂と無機充填剤の固形分質量比率60:40)をバインダー成分として用い、有機粒子として平均粒径3.0μm、屈折率1.49の架橋アクリル樹脂粒子(綜研化学製、商品名:MX−300)を、バインダー成分の固形分100質量%に対して1.5質量%となるように添加し、これをメチルエチルケトン(MEK)を用いて固形分濃度30質量%となるように希釈し、防眩性ハードコート層を形成するための塗液を得た。
【0078】
<防眩性ハードコート層の形成>
上記で得られた防眩性ハードコート層を形成するための塗液を、ロールコーターを用いて、易接着層が形成された透明樹脂基材の片側の表面に、乾燥・硬化後の膜厚みが3.3μmとなるように均一に塗布し、70℃で2分間の条件で乾燥した。次いで、紫外線照射装置(FusionUV Systems Japan(株)製:商品名フュージョンHバルブ)を用いて、光量300mJ/cmの条件で紫外線を照射し防眩性ハードコートフィルムを得た。得られた防眩性ハードコート層、および防眩性ハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0079】
[実施例2]
有機粒子として、平均粒径3.5μm、屈折率1.53の架橋アクリル−スチレン共重合樹脂粒子(精機水化学工業製、商品名:XX−12GA)を用いる以外は実施例1と同様にして防眩性ハードコートフィルムを得た。得られた防眩性ハードコート層、および防眩性ハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0080】
[実施例3]
バインダー成分として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを主成分とする塗剤(荒川化学製、商品名:ビームセット575、屈折率1.52)用い、防眩性ハードコート層の膜厚みを3.2μmとする以外は実施例1と同様にして防眩性ハードコートフィルムを得た。得られた防眩性ハードコート層、および防眩性ハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0081】
[実施例4]
バインダー成分として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを主成分とする塗剤(大日精化工業製、商品名:セイカビームD202、屈折率1.53)、有機粒子として、平均粒径3.5μm、屈折率1.53の架橋アクリル−スチレン共重合樹脂粒子(精機水化学工業製、商品名:XX−12GA)を用い、防眩性ハードコート層の膜厚みを4.0μmとする以外は実施例1と同様にして防眩性ハードコートフィルムを得た。得られた防眩性ハードコート層、および防眩性ハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0082】
[比較例1]
有機粒子として、平均粒径3.5μm、屈折率1.43のシリコーン樹脂粒子(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製、商品名:トスパール130)を用い、防眩性ハードコート層の膜厚みを3.1μmとする以外は実施例1と同様にして防眩性ハードコートフィルムを得た。得られた防眩性ハードコート層、および防眩性ハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0083】
[比較例2]
有機粒子の代わりに、平均粒径3.5μm、屈折率1.45のシリカ粒子(富士シリシア製、商品名:SYLOPHOBIC200)を、バインダー成分の固形分100質量%に対して2.0質量%となるように添加し、防眩性ハードコート層の膜厚みを3.0μmとする以外は実施例1と同様にして防眩性ハードコートフィルムを得た。得られた防眩性ハードコート層、および防眩性ハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0084】
[比較例3]
シリカ粒子の含有量を、バインダー成分の固形分100質量%に対して1.5質量%とし、防眩性ハードコート層の膜厚みを5.5μmとする以外は比較例2と同様にして防眩性ハードコートフィルムを得た。得られた防眩性ハードコート層、および防眩性ハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0085】
[比較例4]
防眩性ハードコート層の膜厚みを5.5μmとする以外は実施例1と同様にして防眩性ハードコートフィルムを得た。得られた防眩性ハードコート層、および防眩性ハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0086】
[比較例5]
防眩性ハードコート層を形成するための塗液として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを主成分とするバインダー樹脂(屈折率1.53)と、無機充填剤としてのケイ素酸化物(平均粒径20nm、屈折率1.47、シランカップリング剤により表面処理されているもの)とを構成成分として含む塗剤(JSR株式会社製、商品名:Z7501、乾燥後の屈折率1.51、バインダー樹脂と無機充填剤の固形分質量比率60:40)をバインダー成分として用い、有機粒子として平均粒径3.0μm、屈折率1.49の架橋アクリル樹脂粒子(綜研化学製、商品名:MX−300)を、バインダー成分の固形分100質量%に対して1.5質量%、無機微粒子として平均粒径20nm、屈折率1.45のシリカ微粒子の分散体(シーアイ化成製、商品名:SIトルG−240)を、バインダー成分の固形分100質量%に対してシリカ微粒子の固形分が1.0質量%となるように添加し、これをメチルエチルケトン(MEK)を用いて固形分濃度30質量%となるように希釈したものを用い、防眩性ハードコート層の膜厚みを4.5μmとする以外は実施例1と同様にして防眩性ハードコートフィルムを得た。得られた防眩性ハードコート層、および防眩性ハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
上記表1から分かるように、本発明の要件を満たしている防眩性ハードコートフィルムは、優れた黒色再現性と画像のクリア感とを達成できている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂基材の少なくとも片面に、バインダー成分と、有機粒子とを構成成分として含む防眩性ハードコート層を有する防眩性ハードコートフィルムであって、トータルヘイズ(Hz)が0.1%以上4.0%以下、60度光沢度が120以上150以下である防眩性ハードコートフィルム。
【請求項2】
防眩性ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)が0.5%以下である請求項1に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項3】
有機粒子の含有量が、バインダー成分の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下である請求項1または2に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項4】
有機粒子が、バインダー成分との屈折率差が0.03未満、平均粒径が1μm以上10μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項5】
防眩性ハードコート層の膜厚みが、有機粒子の平均粒径の50%以上200%以下の範囲にある請求項1〜4のいずれか1項に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項6】
防眩性ハードコート層の表面における表面突起高さ分布の半値幅が0.2μm以上0.4m以下の範囲にある請求項1〜5のいずれか1項に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項7】
防眩性ハードコート層の表面における中心線平均表面粗さ(Ra)が0.01μm以上0.25μm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の防眩性ハードコートフィルム。

【公開番号】特開2010−113220(P2010−113220A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286680(P2008−286680)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】