防草マット
【課題】雑草の繁殖を抑えつつ植生植物で緑化すべき土壌表面に敷設される防草マットを提供する。
【解決手段】本発明の防草マット100は、表面110aおよび裏面110bを有するマット体110と、そのマット体110の表面110aから上方に延び出るように当該マット体110に一体形成された少なくとも1つの可撓性の筒状部120とを備え、マット体110のうち、筒状部120によって取り囲まれた筒状部120の内側領域が、植生植物Pを土壌Gに植生するための植生部112を提供すると共に、筒状部120の外側領域が、土壌表面Gを被覆して土壌表面Gから雑草が伸び出るのを防止するための非植生部111を提供し、当該防草マット120を土壌表面Gに敷設した際、筒状部120を植生部112内に折り込んでマット体110の裏面110b側に反転突出させることにより、土壌中に植生空間(R)を確保可能である。
【解決手段】本発明の防草マット100は、表面110aおよび裏面110bを有するマット体110と、そのマット体110の表面110aから上方に延び出るように当該マット体110に一体形成された少なくとも1つの可撓性の筒状部120とを備え、マット体110のうち、筒状部120によって取り囲まれた筒状部120の内側領域が、植生植物Pを土壌Gに植生するための植生部112を提供すると共に、筒状部120の外側領域が、土壌表面Gを被覆して土壌表面Gから雑草が伸び出るのを防止するための非植生部111を提供し、当該防草マット120を土壌表面Gに敷設した際、筒状部120を植生部112内に折り込んでマット体110の裏面110b側に反転突出させることにより、土壌中に植生空間(R)を確保可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草の繁殖を抑えつつ植生植物で緑化すべき土壌表面に敷設される防草マット、及び、当該防草マットを使用して土壌表面を緑化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種法面や新規造成地等の施工面においては、その緑化を積極的に行って、法面等の美化と土砂の流亡を防止することが行われている。この緑化には、その法面の周囲環境に合わせた植生植物が選定されるが、ある程度の管理を行わないと、施工した緑化植物が、そうではない雑草に負けて絶えてしまい、元の雑草が繁茂した法面になってしまう。
【0003】
従来、雑草の繁茂を防止しつつ施工面を緑化するために、施工面の土壌表面に生えた雑草を除去した上で、防草マットを施工面に敷設し、その防草マットの一部に孔又は切り込みを形成して植生植物を植え込むことが一般的であった。しかしながら、雑草は完全に根絶やしにしないと再生してくるものである。例えば、図11の(a)に示すように、育苗ポットを用いないでシート1に形成したマット開口部1aから植生植物の苗を植え付けた場合は勿論、図11の(b)に示すように、育苗ポットを使用してその周囲をシート1によって覆うようにした場合も、雑草は、穴またはポット上端とマット孔縁との隙間からその芽や根茎を延ばし、植生植物の周りに繁茂することになる。
【0004】
これに対して、防草マットの下の雑草が回り込んでマットの開口から延び出ることを防止するために、引用文献1の防草キャップが提案されている。図12(a)に示す第1の防草キャップ2は、筒部2aと、つば部2bと、浮き上がり防止手段としての抜け止め具2cとを備え、防草マット2dに形成されたマット開口部2eを介して当該防草キャップ2を地中に埋め込んで筒部2a内に植生植物の植生を行う。このとき、筒部2aが雑草の進入を防止し、抜け止め具2cが防草キャップ2を地中に保持する役割を有する。他方、図12(b)に示す第2の防草キャップ3は、筒部3aと、つば部3bとを備えており、防草キャップ3の浮き上がり防止手段として、接着材3cでつば部3bと防草マット3dに形成されたマット開口部3eの縁とを接合している。これも同様に、筒部3aが雑草の進入を防止し、接着剤3cが防草キャップ3を地中に保持する役割を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−144155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記第1の防草キャップ2では、土壌が柔らかい場合や雨などで土壌がぬかるんだ場合には、抜け止め具2cは浮き上がり防止手段としての役割を十分に果たすことができない。つまり、土壌が軟らかいと、抜け止め具2cと土との密着性が低下して、抜け止め具2cは地中で自由に動ける状態になってしまい、防草キャップ2が浮き上がり、つば部2bとマット開口部2eの縁との間に隙間が生じるおそれがある。即ち、時間とともに土壌の状態が変化することで、防草キャップ2が防草マット2dから外れ、それによって生じた隙間から雑草が繁茂することが考えられる。また、施工時において、防草キャップ2をしっかりと土壌に固定するには、施工前後において土壌を踏み固める必要があり、施工に余分な工数及び時間がかかることが問題であった。他方、接着剤3cを使用する第2の防草キャップ3では、風雨に曝されることで接着剤3cが弱まり、防草キャップ3と防草マット3dとの一体性を保持できずに、防草キャップ3が外れ易いという問題があった。さらに、施工時において、防草マット3dが環境要因で濡れたり汚れたりすると接着剤を添付できなくなって施工が困難になるという不具合、及び、接着剤3cの乾燥を待たなければ植生の工程に進めないので施工時間が余分にかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであり、その目的は、雑草の繁殖を抑えつつ土壌表面を植生植物で緑化するように迅速且つ容易に施工可能であり、且つ、長期間に亘って安定的に雑草の繁殖を抑えることが可能である防草マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の防草マットは、雑草の繁殖を抑えつつ、植生植物で緑化すべき土壌の表面に敷設される防草マットであって、表面および裏面を有するマット体と、そのマット体の表面から上方に延び出るように当該マット体に一体形成された少なくとも1つの可撓性の筒状部とを備え、前記マット体のうち、前記筒状部によって取り囲まれた筒状部の内側領域が、植生植物を土壌に植生するための植生部を提供すると共に、前記筒状部の外側領域が、土壌表面を被覆して土壌表面から雑草が伸び出るのを防止するための非植生部を提供し、当該防草マットを土壌表面に敷設した際、前記筒状部を前記植生部内に折り込んで前記マット体の裏面側に反転突出させることにより、土壌中にその反転突出した筒状部に囲まれた植生空間(R)を確保可能である、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の防草マットは、請求項1に記載の防草マットにおいて、前記筒状部に取り囲まれた植生部には、予め開口が形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の防草マットは、請求項1に記載の防草マットにおいて、前記筒状部に取り囲まれた植生部は、前記マット体により閉塞されているが、当該防草マットの使用時に開口ないし切れ目を形成可能な程度の厚みないし固さを有している、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の防草マットは、請求項2に記載の防草マットにおいて、前記植生部において前記マット体に略H字形状の切れ目をつけることで形成された2つの切片を前記マット体表面側に折曲することによって、前記開口が前記植生部に予め形成されており、前記2つの切片が折曲された状態で前記筒状部を形成するように、一方の切片の側端と他方の切片の側端とをそれぞれ接続する壁部が設けられて、前記壁部と前記切片とで前記筒状部の側壁を形成することを特徴とする
【0012】
請求項5に記載の防草マットは、請求項4に記載の防草マットにおいて、前記各壁部は、一対の切り込みを有する矩形状の可撓性シートを屈曲することによって構成されており、当該可撓性シートの基端には前記マット体に固定された固定部が設けられ、その両側端には前記各切片に接続された接続部が設けられ、その先端が前記筒状部の上端に対応していることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の防草マットは、請求項1から5のいずれか一項に記載の防草マットにおいて、前記筒状部は、当該防草マットの不使用時または保管時において、前記マット体の表面に重なるように折り畳み可能である、ことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の緑化方法は、雑草の繁殖を抑えつつ、土壌の表面を緑化する方法であって、請求項1又は3に記載の防草マットを土壌表面に敷設するステップと、前記筒状部に取り囲まれた植生部に開口ないし切れ目を形成するステップと、前記筒状部を植生部内に折り込んで前記マット体の裏面側に反転突出させることにより、土壌中にその反転突出した筒状部に囲まれた植生空間(R)を形成するステップと、 前記植生空間(R)に植生植物を植生するステップと、を経ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、本発明の防草マットは、マット体の裏面側に反転突出されて土壌中に埋め込まれた筒状部によって包囲された植生空間に植生植物を植生することで、植生植物の根を筒状部で取り囲んで保護するとともに、周囲の雑草が植生空間に進入して防草マットの植生部から延び出ることを防止することができる。即ち、雑草の繁茂を押さえつつ、植生植物の成長を助けることができる。また、マット体と筒状部とが一体になっていることで、風雨等の外部環境要因によって両者が分離して雑草が進入可能な「隙間」を生じるおそれがないので、筒状部は長期間に亘って安定して地中に保持され、植生植物の根を保護しつつ雑草が植生部に進入することを防止することができる。さらに、本発明の防草マットでは、防草マットを土壌表面に敷いた後に、筒状部の先端が植生部内に入るように可撓性の筒状部を撓み変形させて土壌中に折り込むだけで、筒状部をマット体の裏面側に反転突出させて簡単且つ安定的に地中に保持することができる。従って、天候等の環境要因(特に雨天)又は施工面の土壌状態(柔らかさ又はぬかるみ等)に関わらず、施工面の緑化を迅速且つ容易に施工することが可能である。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、開口が予め防草マットに形成されていることにより、開口を形成する手間が省け、より迅速に施工することが可能である。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、マット体により閉塞された植生部に、容易に開口ないし切れ目を形成することができ、施工の容易性及び迅速性に貢献する。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加えて、マット体にH字形状の切り込みを形成し、切り込みによって形成された切片と壁部とで筒状部を構成している。つまり、必要な材料を削減可能であるとともに、容易に筒状部を形成することが可能になる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加えて、壁部は矩形状の可撓性シートからなるので、さらに本防草マットの加工性を向上させることが可能である。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1から5のいずれか一項に記載の効果に加えて、可撓性の筒状部をマット体に重ねることで、防草マットを略平面状に変形させ、よりコンパクトな形態で防草マットを保管、輸送等することが可能である。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、本発明に係る緑化方法は、請求項1又は3に記載の防草マットを使用することで、長期間に亘って安定して、植生植物の根を保護しつつ雑草が植生部に進入することを防止可能である。さらに、防草マットを敷いた後に、植生部に開口ないし切れ目を形成し、可撓性の筒状部を撓み変形させて植生部(開口ないし切れ目)内に折り込むだけで、マット体裏面側に反転突出した筒状部が簡単且つ安定的に地中に保持されるので、雨天等の天候又は施工面の土壌の状態(柔らかさ又はぬかるみ等)に関わらず、施工面の緑化を迅速且つ容易に施工することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態の防草マットの斜視図。
【図2】(a)は、図1の防草マットの部分拡大平面図であり、(b)はそのA−A断面図。
【図3】図1の防草マットを使用して植生を行う各工程を表す概略図であって、(a)は防草マットを土壌表面に敷設した状態、(b)は植生部に開口を形成した状態、(c)は筒状部を土壌に埋め込んだ状態、(d)は、植生部に植生植物を植生した状態を示す。
【図4】図1の防草マットを施工面に設置して匍匐性植物を植生した状態を示し、(a)は平面図、(b)はB−B断面図。
【図5】図1の防草マットを施工面に敷設した状態の全体斜視図。
【図6】図1の防草マットの折り畳み形態を示し、(a)はその平面図、(b)はC−C断面図。
【図7】(a)及び(b)は本発明の防草マットの別実施例の斜視図。
【図8】(a)〜(c)は本発明の防草マットの別実施例の断面図。
【図9】(a)〜(c)は本発明の防草マットの別実施例を示す図。
【図10】(a)〜(c)は本発明の防草マットの別実施例を示す図。
【図11】従来技術の施工後の様子を示すもので、(a)は苗ポットを使用していない場合の縦断面図、(b)は苗ポットを使用している場合の縦断面図。
【図12】従来技術の施工後の様子を示すもので、(a)は第1の防草キャップを使用して施工した場合の縦断面図、(b)は第2の防草キャップを使用して施工した場合の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
図1は防草マット100の斜視図である。防草マット100は、表面110a及び裏面110bからなる平面状のマット体110と、当該マット体110の表面110aから上方に延び出る中空の筒状部120とを備える。この筒状部120は可撓性材料からなり、撓み変形可能である。また、当該筒状部120はマット体110の表面110aに縫製によって一体化されているが、他の方法で接合してもよい。そして、複数の筒状部120がマット体110から延び出ており、これらは互いに等間隔に配列されている。しかしながら、本発明は図1の配列状態に限定されず、緑化が必要な位置に任意に筒状部を配置することが可能である。
【0025】
図2(a)は、防草マット100の拡大平面図である。マット体110は、土壌表面Gを被覆するための被覆部(非植生部)111、及び、植生植物Pを土壌に植生するための植生部112からなる。即ち、被覆部111は、雑草が成長しないように日光を遮蔽しつつ、マット体110の厚みで雑草がマット体を突き抜けるのを防止するための領域である。他方、植生部112は、筒状部120の内側に位置する平面視(水平断面)が略矩形状の領域であり、施工前はマット体110によって閉塞されているが、後述するように、施工時には、植物Pを植生部112に植生するために、ここに開口112a及び植生空間Rが形成される。
【0026】
図2(b)に示すとおり、筒状部120は、マット体110から略垂直に立ち上がる中空の筒状体であり、筒状の側壁121及び底壁部123からなる。そして、筒状部120の上端部122が開口するとともに、底壁部123が開口せずにマット体110に一体化している。この底壁部123がマット体110の植生部112に対応している。
【0027】
該筒状部120は高さH及び幅Wを有する略角柱体であり、これら寸法は植生する植物の種類等に合わせて任意に設定される。ただし、筒状部120の高さHが1cm未満であると、地中に残った雑草の根の進入を防止する効果を十分に発揮することができなくなるので、一般に、Hは1cm以上に設定されるのが好ましい。また、HがWに対して大きくなりすぎると、後述するように、筒状部120が底壁部123に形成される開口112aを通り抜けるのが困難になり、施工容易性に影響を与えるので、WとHとの大きさ比W/Hは1/2以上であることが好ましい。しかしながら、本発明の目的を解決可能である限り、本発明の筒状部の高さ及び幅を任意に設定することができ、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施形態では、市販の育苗ポット(3号)の径に合わせて、高さH=約6cm、幅W=約9cmに設定されている。
【0028】
本実施形態の防草マット100では、マット体110及び筒状部120はともに不織布からなる。後述するように、マット体110を不織布とすることで、マット体110の植生部112にスコップ等により孔ないし切り目を容易に形成可能である。しかしながら、本発明において、マット体110の材質は本実施形態の材質に限定されない。即ち、マット体110の材質は、通水性を有し、日光を遮蔽し、雑草の突き抜けを防止することができれば、任意に選択可能である。例えば、不織布、フェルト、化繊シート、合成繊維などを使用可能である。他方、本実施形態の防草マット100では、筒状部120の材料にマット体110と同じ材料を用いているが、本発明では、これに限定されない。即ち、筒状部の材質はマット体と異なる材料であってもよく、雑草の根を遮断可能であり且つ可撓性を有している材料から選択可能である。例えば、不織布、フェルト、化繊シート、合成繊維などの他に、ゴム、シリコン又は可撓性プラスチックなどを使用してもよい。
【0029】
以下に、防草マット100を施工面Gに敷設して施工面Gを緑化する方法について図3を参照しつつ説明する。
【0030】
最初に、防草マット100を施工面Gに敷設するために、施工面Gに繁茂した雑草を除去する(図示せず)。ここで、雑草除去後、土壌表面では雑草がきれいに除去されているように見えるが、通常、雑草の根X(図3参照)は地中に深く根付いており、完全に除去することができない。つまり、このまま放置すると、雑草は地中に残った根Xから再生し、短期間で再び生い茂ってしまう。
【0031】
そこで、雑草を除去した後に、刈り取られた雑草に対して日光を遮蔽し、且つ、その厚みで雑草が延び出るのを遮断するように、防草マット100をマット体裏面110bが土壌表面に接するように施工面Gに配置する(図3(a)参照)。本実施形態では、防草マット100は施工面Gに杭で固定されている(図示せず)が、固定手段はこれに限定されるものではなく、任意の固定手段を用いることが可能である。
【0032】
防草マット100を施工面Gに敷設したら、スコップS、杭、カッター等の開口形成手段を用いて、植生部112(底壁部123)に開口(又は切れ目)112aを形成した上で、植生植物Pを植え込み可能な植生空間Rを形成するように土を部分的に除去する(図3(b)参照)。なお、土壌が十分に柔らかい場合には、土をスコップSで除去せずに、手や側壁121で土壌を押圧して、地中に押し下げることによっても、植生植物Pを植生するための植生空間Rを形成可能である。さらに、形成すべき開口112aの径に対応する所定の径を有する杭を、植生部112に打ち込むことで、開口112aと植生空間Rを同時に形成することも可能である。
【0033】
次に、筒状部120を可撓変形させつつ、図3(b)の矢印方向に可撓性の筒状部120の側壁121を開口112a内に折り込み、その上端部122を開口112a内に進入させる。そして、図3(c)に示すとおり、筒状部120を裏面110bから反転突出させると、筒状部120が地中に埋め込まれた状態になり、筒状部120の側壁121によって包囲された筒状の植生空間Rを土壌中が形成される。このとき、筒状部120は反転されているので、当初(図3(a))の状態における筒状部120の側壁121の外壁面が筒状部120の内壁側に位置し、且つ、上端部122が筒状部120の下端に位置する(図3(c)参照)。
【0034】
そして、筒状部120の側壁121によって包囲された植生領域R内に植生植物Pを植え込む。図3(d)に示すとおり、土壌中では、植生植物Pの根は側壁121によって包囲されて保護されているとともに、雑草の根Xはマット体110及び側壁121に阻まれて、雑草が開口112aから延び出ることができない。このとき、側壁121の内壁面及び外壁面は、土と密着してしっかりと地中に固定されている。なお、本実施形態では、植生植物Pとしてポット苗を植生しているが、植生部112に種子を蒔くことによって施工面Gを緑化することも可能である。
【0035】
さらに、複数の植生部112に対しても同様の作業を行うことで、防草マット100全体、即ち施工面Gを緑化することができる。なお、使用者は、防草マット100の全ての植生部112に必ずしも植生をする必要はなく、植生が必要な箇所を適宜選択可能であることは言うまでもない。
【0036】
図4(a)は、植生植物Pを植生した状態の防草マット100の部分平面図である。本実施形態では、植生植物Pは匍匐性植物のヒメイワダレソウである。匍匐性植物とは、成長において余り垂直方向に枝葉を伸ばそうとせず、水平方向に地面の上に伸びる性質の植物を指す。これら匍匐性の植物は、株元から匍匐茎を周囲に延ばし、さらにこの匍匐茎の節目から根を出して増殖するものであり、匍匐茎からの根が十分活着できる環境であれば、十分生育し且つ繁茂することができる。本実施形態の防草マット100のマット体110は不織布であるので、図4(a)及び(b)に示すとおり、匍匐性植物Pの細い根はマット体110の表面の繊維に入り込み、植物Pの成長ととともにマット体110上に繁殖していく。即ち、マット体110の被覆部111上に繁茂して、施工面G(又は防草マット100)の全体を緑化することが可能である。
【0037】
本実施形態において、隣接するヒメイワダレソウ(植生部111)同士の間隔が約50cmであるので、防草マット100上の植生被覆率が80%を超えるのに約2〜3ヶ月必要である。なお、必要な育苗ポットの数及び植物の被覆(繁殖)速度を踏まえると、一般的に、約30cm〜100cmくらいの間隔で匍匐性植物を植生するのが好ましいとされる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、防草マット上に植生部の間隔及び位置等を任意に設定可能である。
【0038】
なお、本実施形態では、植生植物Pはヒメイワダレソウであるが、これに限定されるものではない。例えば、匍匐性植物として、クラピア、マツバギク、イブキジャコウソウ、及び、シバザクラなどを植生することも可能である。また、植生植物Pは匍匐性植物でなくてもよく、立性の植物や樹木等を植生して、施工面Gを部分的に緑化することも可能である。
【0039】
図5に、本実施形態の防草マット100を施工面Gに敷設した状態の全体斜視図を示す。防草マット100を敷設可能な施工面は水平面に限らず、傾斜面や凹凸面でも設置可能である。また、図5に示すとおり、複数の防草マット100を並べて敷設することで、広範囲に防草しつつ緑化することができる。
【0040】
図6(a)及び(b)に、防草マット100の筒状部120をマット体110に対して押し潰して折り畳んだ状態を示す。このように、筒状部120は可撓性であるので、マット体110に重なるように簡単に押し潰すことが可能である。通常、防草マット100の出荷時や収納時に防草マット100を折り畳み形態に変形させ、コンパクトなロール状に巻かれるが、施工するときには、防草マット100を広げて、筒状部120を上方に延ばすだけで図1の形態に簡単且つ迅速に変形可能である。
【0041】
以下、本発明の一実施形態の防草マット100及び(該防草マットを使用した)緑化方法の作用効果について説明する。
【0042】
本発明の防草マット100によれば、マット体110によって非植生部としての被覆部111に雑草が生えるのを防止するとともに、反転されて埋め込まれた筒状部120により包囲された植生空間Rに植生植物Pを植生することで、植生植物Pの根を筒状部120の側壁121で取り囲んで保護しつつ、周囲の雑草の根が植生部112に進入して、雑草が防草マット100の開口112aから延び出ることを防止することができる。また、マット体110と筒状部120とで光を完全に遮蔽し、日光が雑草の成長を助けるのを防ぐことができる。
【0043】
そして、マット体110と筒状部120とが一体形成されていることで、風雨等の外部環境要因によって両者が分離して、マット体110と筒状部120との間に雑草が進入可能な「隙間」を生じるおそれがなく、筒状部120は安定して地中に保持される。従って、本発明の防草マット100を使用することで、長期間に亘って、雑草の繁茂を抑えつつ、施工面Gの緑化をおこなうことができる。
【0044】
さらに、植生植物Pの植生直後、側壁121の内壁面及び外壁面は土と密着して、筒状部120はしっかりと地中に固定されている。そして、経時とともに植生植物Pが成長し、植生空間R内で植生植物Pの根が広がると、筒状部120の側壁121の内壁面が根によって外側に押圧される。これによって、可撓性である筒状部120の側壁121が撓み変形により外側に広がろうとし、植生空間Rの外側の土と側壁121の外壁面との密着度がさらに高まる。即ち、植物の成長とともに筒状部120はより堅固に地中に保持されることになる。
【0045】
従って、本発明の防草マット100を使用することによって、防草マット100を敷いた後に、マット体110の植生部112に開口112aを形成し、可撓性の筒状部120を撓み変形させて開口112a内に折り込むだけで、マット体110の裏面110b側に反転突出した筒状部120が簡単且つ安定的に地中に保持されるので、天候等の環境要因(特に雨天)又は施工面Gの土壌状態(柔らかさ又はぬかるみ等)に関わらず、施工面Gの緑化を迅速且つ容易に施工する方法を提供することができる。
【0046】
また、本実施形態の防草マット100では、図5に示すとおり、可撓性の筒状部120を潰してマット体110に重ねるように折り畳むことで、防草マット100全体を平面形状に近づけることができる。つまり、防草マット100の未使用時の折り畳み形態では、防草マット100を小さく折り重ねたり、ロール状に巻いたり、複数の防草マット100を積み重ねたりすることが可能であるので、よりコンパクトな形態で防草マット100を保管及び輸送等することができる。
【0047】
そして、本実施形態では、防草マット100の配置後に開口112aが形成されることにより、使用者は植生植物Pを植生する場所を複数の植生部112のなかから適宜選択可能である。即ち、使用者は必ずしも全ての植生部112に植生植物Pを植生するわけでないので、植生位置を任意に選択して開口112aを形成するが、植生植物が植生されない植生部112には開口が形成されることはない。つまり、開口を介して土壌だけがむき出しになることを防ぎ、雑草の繁茂する可能性を減少させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態の防草マット100の使用形態において、植生植物Pが匍匐性であり、且つ、マット体110の被覆部111が不織布からなることで、図4(a)及び(b)に示すとおり、植生部112に匍匐性植物Pを植生すると、匍匐性植物Pの細い根が被覆部111の不織布表面に入り込んで根付き、匍匐性植物Pが植生部112から被覆部111に広がっていく。このように、匍匐性の植生植物Pがマット体110を被覆する所謂「コーティング現象」によって、雑草の繁茂を抑えながら防草マット100の劣化も防ぐことができる。即ち、本実施形態では、防草マット100のメンテナンスの頻度を減らしつつ、施工面G全体を緑化することが可能である。
【0049】
ここで、本実施形態の防草マット100を使用する緑化方法と先行技術の第1の防草キャップ2を使用する緑化方法とを比較する。先行技術の第1の防草キャップ2では、経時によって、別体として取り付けられた抜け止め具2cがキャップ体2aから分離するおそれがあり、且つ、土壌中で抜け止め具2cと土との密着性が弱くなって防草キャップ2が地中から浮き上がるおそれがあるので、安定的に防草キャップ2を地中に保持することは困難であると考えられる。また、施工時に、抜け止め具2cを土に密着させ、防草キャップ2を地中に固定するためには、施工前後に施工面を踏み固める必要があると考えられる。これに対して、本実施形態の防草マット100では、マット体110と筒状部120とは一体的に形成されているので、両者が分離するおそれがなく、長期に亘って植生植物Pの保護及び雑草の繁茂の防止をすることが可能である。さらに、防草マット100では、裏面110bから反転突出した筒状部120が地中に埋め込まれ、植生植物Pが植生されると、可撓性である筒状部120の側壁121の内壁面及び外壁面が土に密着して、筒状部120が所定位置にしっかりと固定されるので、施工前後に土壌を踏み固める必要がなく、施工を容易にすることができる。従って、防草マット100は、施工の安定性、容易性及び迅速性の点で当該先行技術よりも優れている。その上、本実施形態の防草マット100は、抜け止め具等を取り付ける必要がなく、部材点数を削減できるので製造コストの点でも先行技術と比べて有利である。
【0050】
次に、本実施形態の防草マット100を使用する緑化方法と先行技術の第2の防草キャップ3を使用する緑化方法とを比較する。第2の防草キャップ3では、防草キャップ3を防草マット3dに接着剤3cで固定しているので、風雨に曝されて接着剤3cの接着力が劣化し、防草キャップ3が防草マット3dから外れることが考えられる。また、第2の防草キャップ3を使用して施工する際、接着剤3cの乾燥を待つ必要があり、且つ、雨天等によりマットが濡れるとすぐに接着剤が使用不可能になる。これに対して、本実施形態の防草マット100では、マット体110と筒状部120とが一体形成にされており、マット体110と筒状部120との接合部の経時による強度低下は非常に小さいので、長期に亘って植生植物Pの保護及び雑草の繁茂の防止をすることが可能である。また、本実施形態の防草マット100で施工する際、筒状部120を開口112a内に折り込むだけで植生植物Pを植生可能な状態にすることができる。従って、防草マット100は、施工の安定性、容易性及び迅速性の点で当該先行技術よりも優れている。さらに、本実施形態の防草マット100は、施工時に接着剤を使用する必要がないので施工コストの点でも先行技術と比べて有利である。
【0051】
なお、本発明は上述の一実施形態に限定されない。以下に本発明の一実施形態の構成を一部変更した変形例1及び2を示すが、変更例1及び2は、一実施形態と共通する構成において、上述の作用効果を奏するものであることは言うまでもない。
【0052】
(実施例2)
本実施形態の防草マット100では、筒状部120の水平断面は略矩形状であるが、本発明の筒状部の形状はこれに限定されない。例えば、図7(a)に示す防草マット100Aのように筒状部120Aの水平断面を円形状としたり、図7(b)に示す防草マット100Bのように筒状部120Bの水平断面を三角形状としたりすることができる。即ち、植生植物を植生するための植生空間を形成可能であれば、筒状部の形状を任意に選択することができる。
【0053】
(実施例3)
本実施形態の防草マット100では、筒状部120の上端部122が開口するとともに、植生部112としての底壁部123がマット体110で閉塞されているが、本発明の防草マット100はこれに限定されない。例えば、図8(a)に示す防草マット100Cのように、筒状部120Cの底壁部123Cに開口112aC(又は切り込み)が予め形成されていてもよい。この場合、雑草の繁茂を効果的に防止するには、使用者は全ての開口112aCに植生植物を植生する必要があるが、施工時に各開口112aCを形成する工程を省略できるので、さらに迅速に施工することを可能にする。
【0054】
図8(b)に示す防草マット100Dでは、筒状部120Dの上端部122Dが開口しておらず、底壁部123Dが開口しているように構成されている。この場合、上端部122Dを穿設すること又は筒状部120Dの先端を水平に切断することによって、植生植物を植生するための孔を形成する。当該防草マット100Dでは、筒状部120Dの側壁121Dと上端部122Dとマット体110D表面とで連続する表面を形成しており、当該筒状部120Dを潰すとマット体110Dと筒状部120Dとが外観において同化し、筒状部120Dの存在があまり目立たない。つまり、当該防草マット100Dは、植生植物を植生しない箇所112Dが部分的に存在するときに施工面の美観を損なう程度が少ないという利点を有する。また、図8(c)に示す防草マット100Eのように、筒状部120Eの上端部122Eと底壁部123Eとがともに開口していないように構成することも可能である。
【0055】
(実施例4)
図9の防草マット100Fは、マット体110Fと筒状部120Fとを有し、予め開口112aFが形成されているものである。図9(a)に示すとおり、筒状部120Fの側壁121Fは、マット体110Fに一体的に立設された2つの切片121aFと、両方の切片121aFを接続する2つの壁部121bFとからなる。図9(b)に示すとおり、この切片121aFは、防草マット110Fを略H字形状に切り込んで形成されたものである。また、壁部121bFは矩形状の可撓性シートからなる。そして、その基端には防草マット表面110aFに固定される固定部121b1Fが設けられ、その両側端には各切片121aFに接続される接続部121b2Fが設けられ、且つ、その先端が筒状部120Fの上端部122Fに対応する。さらに、当該可撓性シート(壁部)121bFの両側部には、固定部121b1Fと接続部121b2Fとの間で一対の切り込み121b3Fが設けられている。図9(c)のように、切片121aF及び可撓性シート(壁部)121bFを破線に沿って折り曲げることで、切片121aFをマット体110Fから立ち上げて、壁部121bFを固定部121b1Fでマット体110Fに固定しつつ、接続部121b2Fを介して壁部121bFで切片121aF同士を接続することができる。
【0056】
この実施例4の防草マット100Fでは、マット体110Fの一部から筒状部120Fの側壁121Fを構成することができるので、製造コストを削減することができる。また、可撓性シート121bFをマット体110Fに取り付けるだけで、筒状部120Fを形成することができるので、当該防草マット100Fを容易に製造することが可能である。さらに、切片121aFを折り目に沿って元に復帰する方向(閉方向)に屈曲させることで、簡単に筒状体120Fを折り畳むことができる。すなわち、防草マット100Fを折り畳み形態に簡単且つ迅速に変形させることが可能である。
【0057】
(実施例5)
図10の防草マット100Gは、図9の防草マット100Fの形態から部分的に変形したものである。この防草マット100Gでは、略H字形状の切り込みの各先端が内側に折れ曲がっており、その結果として、開口112aGは八角形になる。さらに、壁部121bGを構成する可撓性シートは、その基端に一対の切り込み121b3Gが設けられており、同様に固定部121b1Gにてマット体110G表面に固定される。本実施例5では、実施例4の防草マット100Fの効果に加えて、開口112aGが八角形になっていることで、開口の4隅が側壁121Gの外側にはみ出すことを防止することができる。
【0058】
なお、本発明は上述した複数の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0059】
100 防草マット
110 マット体
111 被覆部(非植生部)
112 植生部
112a 開口
120 筒状部
121 側壁
122 上端部
123 底壁部
G 施工面(土壌表面)
P 植生植物
R 植生空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草の繁殖を抑えつつ植生植物で緑化すべき土壌表面に敷設される防草マット、及び、当該防草マットを使用して土壌表面を緑化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種法面や新規造成地等の施工面においては、その緑化を積極的に行って、法面等の美化と土砂の流亡を防止することが行われている。この緑化には、その法面の周囲環境に合わせた植生植物が選定されるが、ある程度の管理を行わないと、施工した緑化植物が、そうではない雑草に負けて絶えてしまい、元の雑草が繁茂した法面になってしまう。
【0003】
従来、雑草の繁茂を防止しつつ施工面を緑化するために、施工面の土壌表面に生えた雑草を除去した上で、防草マットを施工面に敷設し、その防草マットの一部に孔又は切り込みを形成して植生植物を植え込むことが一般的であった。しかしながら、雑草は完全に根絶やしにしないと再生してくるものである。例えば、図11の(a)に示すように、育苗ポットを用いないでシート1に形成したマット開口部1aから植生植物の苗を植え付けた場合は勿論、図11の(b)に示すように、育苗ポットを使用してその周囲をシート1によって覆うようにした場合も、雑草は、穴またはポット上端とマット孔縁との隙間からその芽や根茎を延ばし、植生植物の周りに繁茂することになる。
【0004】
これに対して、防草マットの下の雑草が回り込んでマットの開口から延び出ることを防止するために、引用文献1の防草キャップが提案されている。図12(a)に示す第1の防草キャップ2は、筒部2aと、つば部2bと、浮き上がり防止手段としての抜け止め具2cとを備え、防草マット2dに形成されたマット開口部2eを介して当該防草キャップ2を地中に埋め込んで筒部2a内に植生植物の植生を行う。このとき、筒部2aが雑草の進入を防止し、抜け止め具2cが防草キャップ2を地中に保持する役割を有する。他方、図12(b)に示す第2の防草キャップ3は、筒部3aと、つば部3bとを備えており、防草キャップ3の浮き上がり防止手段として、接着材3cでつば部3bと防草マット3dに形成されたマット開口部3eの縁とを接合している。これも同様に、筒部3aが雑草の進入を防止し、接着剤3cが防草キャップ3を地中に保持する役割を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−144155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記第1の防草キャップ2では、土壌が柔らかい場合や雨などで土壌がぬかるんだ場合には、抜け止め具2cは浮き上がり防止手段としての役割を十分に果たすことができない。つまり、土壌が軟らかいと、抜け止め具2cと土との密着性が低下して、抜け止め具2cは地中で自由に動ける状態になってしまい、防草キャップ2が浮き上がり、つば部2bとマット開口部2eの縁との間に隙間が生じるおそれがある。即ち、時間とともに土壌の状態が変化することで、防草キャップ2が防草マット2dから外れ、それによって生じた隙間から雑草が繁茂することが考えられる。また、施工時において、防草キャップ2をしっかりと土壌に固定するには、施工前後において土壌を踏み固める必要があり、施工に余分な工数及び時間がかかることが問題であった。他方、接着剤3cを使用する第2の防草キャップ3では、風雨に曝されることで接着剤3cが弱まり、防草キャップ3と防草マット3dとの一体性を保持できずに、防草キャップ3が外れ易いという問題があった。さらに、施工時において、防草マット3dが環境要因で濡れたり汚れたりすると接着剤を添付できなくなって施工が困難になるという不具合、及び、接着剤3cの乾燥を待たなければ植生の工程に進めないので施工時間が余分にかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであり、その目的は、雑草の繁殖を抑えつつ土壌表面を植生植物で緑化するように迅速且つ容易に施工可能であり、且つ、長期間に亘って安定的に雑草の繁殖を抑えることが可能である防草マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の防草マットは、雑草の繁殖を抑えつつ、植生植物で緑化すべき土壌の表面に敷設される防草マットであって、表面および裏面を有するマット体と、そのマット体の表面から上方に延び出るように当該マット体に一体形成された少なくとも1つの可撓性の筒状部とを備え、前記マット体のうち、前記筒状部によって取り囲まれた筒状部の内側領域が、植生植物を土壌に植生するための植生部を提供すると共に、前記筒状部の外側領域が、土壌表面を被覆して土壌表面から雑草が伸び出るのを防止するための非植生部を提供し、当該防草マットを土壌表面に敷設した際、前記筒状部を前記植生部内に折り込んで前記マット体の裏面側に反転突出させることにより、土壌中にその反転突出した筒状部に囲まれた植生空間(R)を確保可能である、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の防草マットは、請求項1に記載の防草マットにおいて、前記筒状部に取り囲まれた植生部には、予め開口が形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の防草マットは、請求項1に記載の防草マットにおいて、前記筒状部に取り囲まれた植生部は、前記マット体により閉塞されているが、当該防草マットの使用時に開口ないし切れ目を形成可能な程度の厚みないし固さを有している、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の防草マットは、請求項2に記載の防草マットにおいて、前記植生部において前記マット体に略H字形状の切れ目をつけることで形成された2つの切片を前記マット体表面側に折曲することによって、前記開口が前記植生部に予め形成されており、前記2つの切片が折曲された状態で前記筒状部を形成するように、一方の切片の側端と他方の切片の側端とをそれぞれ接続する壁部が設けられて、前記壁部と前記切片とで前記筒状部の側壁を形成することを特徴とする
【0012】
請求項5に記載の防草マットは、請求項4に記載の防草マットにおいて、前記各壁部は、一対の切り込みを有する矩形状の可撓性シートを屈曲することによって構成されており、当該可撓性シートの基端には前記マット体に固定された固定部が設けられ、その両側端には前記各切片に接続された接続部が設けられ、その先端が前記筒状部の上端に対応していることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の防草マットは、請求項1から5のいずれか一項に記載の防草マットにおいて、前記筒状部は、当該防草マットの不使用時または保管時において、前記マット体の表面に重なるように折り畳み可能である、ことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の緑化方法は、雑草の繁殖を抑えつつ、土壌の表面を緑化する方法であって、請求項1又は3に記載の防草マットを土壌表面に敷設するステップと、前記筒状部に取り囲まれた植生部に開口ないし切れ目を形成するステップと、前記筒状部を植生部内に折り込んで前記マット体の裏面側に反転突出させることにより、土壌中にその反転突出した筒状部に囲まれた植生空間(R)を形成するステップと、 前記植生空間(R)に植生植物を植生するステップと、を経ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、本発明の防草マットは、マット体の裏面側に反転突出されて土壌中に埋め込まれた筒状部によって包囲された植生空間に植生植物を植生することで、植生植物の根を筒状部で取り囲んで保護するとともに、周囲の雑草が植生空間に進入して防草マットの植生部から延び出ることを防止することができる。即ち、雑草の繁茂を押さえつつ、植生植物の成長を助けることができる。また、マット体と筒状部とが一体になっていることで、風雨等の外部環境要因によって両者が分離して雑草が進入可能な「隙間」を生じるおそれがないので、筒状部は長期間に亘って安定して地中に保持され、植生植物の根を保護しつつ雑草が植生部に進入することを防止することができる。さらに、本発明の防草マットでは、防草マットを土壌表面に敷いた後に、筒状部の先端が植生部内に入るように可撓性の筒状部を撓み変形させて土壌中に折り込むだけで、筒状部をマット体の裏面側に反転突出させて簡単且つ安定的に地中に保持することができる。従って、天候等の環境要因(特に雨天)又は施工面の土壌状態(柔らかさ又はぬかるみ等)に関わらず、施工面の緑化を迅速且つ容易に施工することが可能である。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、開口が予め防草マットに形成されていることにより、開口を形成する手間が省け、より迅速に施工することが可能である。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、マット体により閉塞された植生部に、容易に開口ないし切れ目を形成することができ、施工の容易性及び迅速性に貢献する。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加えて、マット体にH字形状の切り込みを形成し、切り込みによって形成された切片と壁部とで筒状部を構成している。つまり、必要な材料を削減可能であるとともに、容易に筒状部を形成することが可能になる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加えて、壁部は矩形状の可撓性シートからなるので、さらに本防草マットの加工性を向上させることが可能である。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1から5のいずれか一項に記載の効果に加えて、可撓性の筒状部をマット体に重ねることで、防草マットを略平面状に変形させ、よりコンパクトな形態で防草マットを保管、輸送等することが可能である。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、本発明に係る緑化方法は、請求項1又は3に記載の防草マットを使用することで、長期間に亘って安定して、植生植物の根を保護しつつ雑草が植生部に進入することを防止可能である。さらに、防草マットを敷いた後に、植生部に開口ないし切れ目を形成し、可撓性の筒状部を撓み変形させて植生部(開口ないし切れ目)内に折り込むだけで、マット体裏面側に反転突出した筒状部が簡単且つ安定的に地中に保持されるので、雨天等の天候又は施工面の土壌の状態(柔らかさ又はぬかるみ等)に関わらず、施工面の緑化を迅速且つ容易に施工することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態の防草マットの斜視図。
【図2】(a)は、図1の防草マットの部分拡大平面図であり、(b)はそのA−A断面図。
【図3】図1の防草マットを使用して植生を行う各工程を表す概略図であって、(a)は防草マットを土壌表面に敷設した状態、(b)は植生部に開口を形成した状態、(c)は筒状部を土壌に埋め込んだ状態、(d)は、植生部に植生植物を植生した状態を示す。
【図4】図1の防草マットを施工面に設置して匍匐性植物を植生した状態を示し、(a)は平面図、(b)はB−B断面図。
【図5】図1の防草マットを施工面に敷設した状態の全体斜視図。
【図6】図1の防草マットの折り畳み形態を示し、(a)はその平面図、(b)はC−C断面図。
【図7】(a)及び(b)は本発明の防草マットの別実施例の斜視図。
【図8】(a)〜(c)は本発明の防草マットの別実施例の断面図。
【図9】(a)〜(c)は本発明の防草マットの別実施例を示す図。
【図10】(a)〜(c)は本発明の防草マットの別実施例を示す図。
【図11】従来技術の施工後の様子を示すもので、(a)は苗ポットを使用していない場合の縦断面図、(b)は苗ポットを使用している場合の縦断面図。
【図12】従来技術の施工後の様子を示すもので、(a)は第1の防草キャップを使用して施工した場合の縦断面図、(b)は第2の防草キャップを使用して施工した場合の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
図1は防草マット100の斜視図である。防草マット100は、表面110a及び裏面110bからなる平面状のマット体110と、当該マット体110の表面110aから上方に延び出る中空の筒状部120とを備える。この筒状部120は可撓性材料からなり、撓み変形可能である。また、当該筒状部120はマット体110の表面110aに縫製によって一体化されているが、他の方法で接合してもよい。そして、複数の筒状部120がマット体110から延び出ており、これらは互いに等間隔に配列されている。しかしながら、本発明は図1の配列状態に限定されず、緑化が必要な位置に任意に筒状部を配置することが可能である。
【0025】
図2(a)は、防草マット100の拡大平面図である。マット体110は、土壌表面Gを被覆するための被覆部(非植生部)111、及び、植生植物Pを土壌に植生するための植生部112からなる。即ち、被覆部111は、雑草が成長しないように日光を遮蔽しつつ、マット体110の厚みで雑草がマット体を突き抜けるのを防止するための領域である。他方、植生部112は、筒状部120の内側に位置する平面視(水平断面)が略矩形状の領域であり、施工前はマット体110によって閉塞されているが、後述するように、施工時には、植物Pを植生部112に植生するために、ここに開口112a及び植生空間Rが形成される。
【0026】
図2(b)に示すとおり、筒状部120は、マット体110から略垂直に立ち上がる中空の筒状体であり、筒状の側壁121及び底壁部123からなる。そして、筒状部120の上端部122が開口するとともに、底壁部123が開口せずにマット体110に一体化している。この底壁部123がマット体110の植生部112に対応している。
【0027】
該筒状部120は高さH及び幅Wを有する略角柱体であり、これら寸法は植生する植物の種類等に合わせて任意に設定される。ただし、筒状部120の高さHが1cm未満であると、地中に残った雑草の根の進入を防止する効果を十分に発揮することができなくなるので、一般に、Hは1cm以上に設定されるのが好ましい。また、HがWに対して大きくなりすぎると、後述するように、筒状部120が底壁部123に形成される開口112aを通り抜けるのが困難になり、施工容易性に影響を与えるので、WとHとの大きさ比W/Hは1/2以上であることが好ましい。しかしながら、本発明の目的を解決可能である限り、本発明の筒状部の高さ及び幅を任意に設定することができ、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施形態では、市販の育苗ポット(3号)の径に合わせて、高さH=約6cm、幅W=約9cmに設定されている。
【0028】
本実施形態の防草マット100では、マット体110及び筒状部120はともに不織布からなる。後述するように、マット体110を不織布とすることで、マット体110の植生部112にスコップ等により孔ないし切り目を容易に形成可能である。しかしながら、本発明において、マット体110の材質は本実施形態の材質に限定されない。即ち、マット体110の材質は、通水性を有し、日光を遮蔽し、雑草の突き抜けを防止することができれば、任意に選択可能である。例えば、不織布、フェルト、化繊シート、合成繊維などを使用可能である。他方、本実施形態の防草マット100では、筒状部120の材料にマット体110と同じ材料を用いているが、本発明では、これに限定されない。即ち、筒状部の材質はマット体と異なる材料であってもよく、雑草の根を遮断可能であり且つ可撓性を有している材料から選択可能である。例えば、不織布、フェルト、化繊シート、合成繊維などの他に、ゴム、シリコン又は可撓性プラスチックなどを使用してもよい。
【0029】
以下に、防草マット100を施工面Gに敷設して施工面Gを緑化する方法について図3を参照しつつ説明する。
【0030】
最初に、防草マット100を施工面Gに敷設するために、施工面Gに繁茂した雑草を除去する(図示せず)。ここで、雑草除去後、土壌表面では雑草がきれいに除去されているように見えるが、通常、雑草の根X(図3参照)は地中に深く根付いており、完全に除去することができない。つまり、このまま放置すると、雑草は地中に残った根Xから再生し、短期間で再び生い茂ってしまう。
【0031】
そこで、雑草を除去した後に、刈り取られた雑草に対して日光を遮蔽し、且つ、その厚みで雑草が延び出るのを遮断するように、防草マット100をマット体裏面110bが土壌表面に接するように施工面Gに配置する(図3(a)参照)。本実施形態では、防草マット100は施工面Gに杭で固定されている(図示せず)が、固定手段はこれに限定されるものではなく、任意の固定手段を用いることが可能である。
【0032】
防草マット100を施工面Gに敷設したら、スコップS、杭、カッター等の開口形成手段を用いて、植生部112(底壁部123)に開口(又は切れ目)112aを形成した上で、植生植物Pを植え込み可能な植生空間Rを形成するように土を部分的に除去する(図3(b)参照)。なお、土壌が十分に柔らかい場合には、土をスコップSで除去せずに、手や側壁121で土壌を押圧して、地中に押し下げることによっても、植生植物Pを植生するための植生空間Rを形成可能である。さらに、形成すべき開口112aの径に対応する所定の径を有する杭を、植生部112に打ち込むことで、開口112aと植生空間Rを同時に形成することも可能である。
【0033】
次に、筒状部120を可撓変形させつつ、図3(b)の矢印方向に可撓性の筒状部120の側壁121を開口112a内に折り込み、その上端部122を開口112a内に進入させる。そして、図3(c)に示すとおり、筒状部120を裏面110bから反転突出させると、筒状部120が地中に埋め込まれた状態になり、筒状部120の側壁121によって包囲された筒状の植生空間Rを土壌中が形成される。このとき、筒状部120は反転されているので、当初(図3(a))の状態における筒状部120の側壁121の外壁面が筒状部120の内壁側に位置し、且つ、上端部122が筒状部120の下端に位置する(図3(c)参照)。
【0034】
そして、筒状部120の側壁121によって包囲された植生領域R内に植生植物Pを植え込む。図3(d)に示すとおり、土壌中では、植生植物Pの根は側壁121によって包囲されて保護されているとともに、雑草の根Xはマット体110及び側壁121に阻まれて、雑草が開口112aから延び出ることができない。このとき、側壁121の内壁面及び外壁面は、土と密着してしっかりと地中に固定されている。なお、本実施形態では、植生植物Pとしてポット苗を植生しているが、植生部112に種子を蒔くことによって施工面Gを緑化することも可能である。
【0035】
さらに、複数の植生部112に対しても同様の作業を行うことで、防草マット100全体、即ち施工面Gを緑化することができる。なお、使用者は、防草マット100の全ての植生部112に必ずしも植生をする必要はなく、植生が必要な箇所を適宜選択可能であることは言うまでもない。
【0036】
図4(a)は、植生植物Pを植生した状態の防草マット100の部分平面図である。本実施形態では、植生植物Pは匍匐性植物のヒメイワダレソウである。匍匐性植物とは、成長において余り垂直方向に枝葉を伸ばそうとせず、水平方向に地面の上に伸びる性質の植物を指す。これら匍匐性の植物は、株元から匍匐茎を周囲に延ばし、さらにこの匍匐茎の節目から根を出して増殖するものであり、匍匐茎からの根が十分活着できる環境であれば、十分生育し且つ繁茂することができる。本実施形態の防草マット100のマット体110は不織布であるので、図4(a)及び(b)に示すとおり、匍匐性植物Pの細い根はマット体110の表面の繊維に入り込み、植物Pの成長ととともにマット体110上に繁殖していく。即ち、マット体110の被覆部111上に繁茂して、施工面G(又は防草マット100)の全体を緑化することが可能である。
【0037】
本実施形態において、隣接するヒメイワダレソウ(植生部111)同士の間隔が約50cmであるので、防草マット100上の植生被覆率が80%を超えるのに約2〜3ヶ月必要である。なお、必要な育苗ポットの数及び植物の被覆(繁殖)速度を踏まえると、一般的に、約30cm〜100cmくらいの間隔で匍匐性植物を植生するのが好ましいとされる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、防草マット上に植生部の間隔及び位置等を任意に設定可能である。
【0038】
なお、本実施形態では、植生植物Pはヒメイワダレソウであるが、これに限定されるものではない。例えば、匍匐性植物として、クラピア、マツバギク、イブキジャコウソウ、及び、シバザクラなどを植生することも可能である。また、植生植物Pは匍匐性植物でなくてもよく、立性の植物や樹木等を植生して、施工面Gを部分的に緑化することも可能である。
【0039】
図5に、本実施形態の防草マット100を施工面Gに敷設した状態の全体斜視図を示す。防草マット100を敷設可能な施工面は水平面に限らず、傾斜面や凹凸面でも設置可能である。また、図5に示すとおり、複数の防草マット100を並べて敷設することで、広範囲に防草しつつ緑化することができる。
【0040】
図6(a)及び(b)に、防草マット100の筒状部120をマット体110に対して押し潰して折り畳んだ状態を示す。このように、筒状部120は可撓性であるので、マット体110に重なるように簡単に押し潰すことが可能である。通常、防草マット100の出荷時や収納時に防草マット100を折り畳み形態に変形させ、コンパクトなロール状に巻かれるが、施工するときには、防草マット100を広げて、筒状部120を上方に延ばすだけで図1の形態に簡単且つ迅速に変形可能である。
【0041】
以下、本発明の一実施形態の防草マット100及び(該防草マットを使用した)緑化方法の作用効果について説明する。
【0042】
本発明の防草マット100によれば、マット体110によって非植生部としての被覆部111に雑草が生えるのを防止するとともに、反転されて埋め込まれた筒状部120により包囲された植生空間Rに植生植物Pを植生することで、植生植物Pの根を筒状部120の側壁121で取り囲んで保護しつつ、周囲の雑草の根が植生部112に進入して、雑草が防草マット100の開口112aから延び出ることを防止することができる。また、マット体110と筒状部120とで光を完全に遮蔽し、日光が雑草の成長を助けるのを防ぐことができる。
【0043】
そして、マット体110と筒状部120とが一体形成されていることで、風雨等の外部環境要因によって両者が分離して、マット体110と筒状部120との間に雑草が進入可能な「隙間」を生じるおそれがなく、筒状部120は安定して地中に保持される。従って、本発明の防草マット100を使用することで、長期間に亘って、雑草の繁茂を抑えつつ、施工面Gの緑化をおこなうことができる。
【0044】
さらに、植生植物Pの植生直後、側壁121の内壁面及び外壁面は土と密着して、筒状部120はしっかりと地中に固定されている。そして、経時とともに植生植物Pが成長し、植生空間R内で植生植物Pの根が広がると、筒状部120の側壁121の内壁面が根によって外側に押圧される。これによって、可撓性である筒状部120の側壁121が撓み変形により外側に広がろうとし、植生空間Rの外側の土と側壁121の外壁面との密着度がさらに高まる。即ち、植物の成長とともに筒状部120はより堅固に地中に保持されることになる。
【0045】
従って、本発明の防草マット100を使用することによって、防草マット100を敷いた後に、マット体110の植生部112に開口112aを形成し、可撓性の筒状部120を撓み変形させて開口112a内に折り込むだけで、マット体110の裏面110b側に反転突出した筒状部120が簡単且つ安定的に地中に保持されるので、天候等の環境要因(特に雨天)又は施工面Gの土壌状態(柔らかさ又はぬかるみ等)に関わらず、施工面Gの緑化を迅速且つ容易に施工する方法を提供することができる。
【0046】
また、本実施形態の防草マット100では、図5に示すとおり、可撓性の筒状部120を潰してマット体110に重ねるように折り畳むことで、防草マット100全体を平面形状に近づけることができる。つまり、防草マット100の未使用時の折り畳み形態では、防草マット100を小さく折り重ねたり、ロール状に巻いたり、複数の防草マット100を積み重ねたりすることが可能であるので、よりコンパクトな形態で防草マット100を保管及び輸送等することができる。
【0047】
そして、本実施形態では、防草マット100の配置後に開口112aが形成されることにより、使用者は植生植物Pを植生する場所を複数の植生部112のなかから適宜選択可能である。即ち、使用者は必ずしも全ての植生部112に植生植物Pを植生するわけでないので、植生位置を任意に選択して開口112aを形成するが、植生植物が植生されない植生部112には開口が形成されることはない。つまり、開口を介して土壌だけがむき出しになることを防ぎ、雑草の繁茂する可能性を減少させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態の防草マット100の使用形態において、植生植物Pが匍匐性であり、且つ、マット体110の被覆部111が不織布からなることで、図4(a)及び(b)に示すとおり、植生部112に匍匐性植物Pを植生すると、匍匐性植物Pの細い根が被覆部111の不織布表面に入り込んで根付き、匍匐性植物Pが植生部112から被覆部111に広がっていく。このように、匍匐性の植生植物Pがマット体110を被覆する所謂「コーティング現象」によって、雑草の繁茂を抑えながら防草マット100の劣化も防ぐことができる。即ち、本実施形態では、防草マット100のメンテナンスの頻度を減らしつつ、施工面G全体を緑化することが可能である。
【0049】
ここで、本実施形態の防草マット100を使用する緑化方法と先行技術の第1の防草キャップ2を使用する緑化方法とを比較する。先行技術の第1の防草キャップ2では、経時によって、別体として取り付けられた抜け止め具2cがキャップ体2aから分離するおそれがあり、且つ、土壌中で抜け止め具2cと土との密着性が弱くなって防草キャップ2が地中から浮き上がるおそれがあるので、安定的に防草キャップ2を地中に保持することは困難であると考えられる。また、施工時に、抜け止め具2cを土に密着させ、防草キャップ2を地中に固定するためには、施工前後に施工面を踏み固める必要があると考えられる。これに対して、本実施形態の防草マット100では、マット体110と筒状部120とは一体的に形成されているので、両者が分離するおそれがなく、長期に亘って植生植物Pの保護及び雑草の繁茂の防止をすることが可能である。さらに、防草マット100では、裏面110bから反転突出した筒状部120が地中に埋め込まれ、植生植物Pが植生されると、可撓性である筒状部120の側壁121の内壁面及び外壁面が土に密着して、筒状部120が所定位置にしっかりと固定されるので、施工前後に土壌を踏み固める必要がなく、施工を容易にすることができる。従って、防草マット100は、施工の安定性、容易性及び迅速性の点で当該先行技術よりも優れている。その上、本実施形態の防草マット100は、抜け止め具等を取り付ける必要がなく、部材点数を削減できるので製造コストの点でも先行技術と比べて有利である。
【0050】
次に、本実施形態の防草マット100を使用する緑化方法と先行技術の第2の防草キャップ3を使用する緑化方法とを比較する。第2の防草キャップ3では、防草キャップ3を防草マット3dに接着剤3cで固定しているので、風雨に曝されて接着剤3cの接着力が劣化し、防草キャップ3が防草マット3dから外れることが考えられる。また、第2の防草キャップ3を使用して施工する際、接着剤3cの乾燥を待つ必要があり、且つ、雨天等によりマットが濡れるとすぐに接着剤が使用不可能になる。これに対して、本実施形態の防草マット100では、マット体110と筒状部120とが一体形成にされており、マット体110と筒状部120との接合部の経時による強度低下は非常に小さいので、長期に亘って植生植物Pの保護及び雑草の繁茂の防止をすることが可能である。また、本実施形態の防草マット100で施工する際、筒状部120を開口112a内に折り込むだけで植生植物Pを植生可能な状態にすることができる。従って、防草マット100は、施工の安定性、容易性及び迅速性の点で当該先行技術よりも優れている。さらに、本実施形態の防草マット100は、施工時に接着剤を使用する必要がないので施工コストの点でも先行技術と比べて有利である。
【0051】
なお、本発明は上述の一実施形態に限定されない。以下に本発明の一実施形態の構成を一部変更した変形例1及び2を示すが、変更例1及び2は、一実施形態と共通する構成において、上述の作用効果を奏するものであることは言うまでもない。
【0052】
(実施例2)
本実施形態の防草マット100では、筒状部120の水平断面は略矩形状であるが、本発明の筒状部の形状はこれに限定されない。例えば、図7(a)に示す防草マット100Aのように筒状部120Aの水平断面を円形状としたり、図7(b)に示す防草マット100Bのように筒状部120Bの水平断面を三角形状としたりすることができる。即ち、植生植物を植生するための植生空間を形成可能であれば、筒状部の形状を任意に選択することができる。
【0053】
(実施例3)
本実施形態の防草マット100では、筒状部120の上端部122が開口するとともに、植生部112としての底壁部123がマット体110で閉塞されているが、本発明の防草マット100はこれに限定されない。例えば、図8(a)に示す防草マット100Cのように、筒状部120Cの底壁部123Cに開口112aC(又は切り込み)が予め形成されていてもよい。この場合、雑草の繁茂を効果的に防止するには、使用者は全ての開口112aCに植生植物を植生する必要があるが、施工時に各開口112aCを形成する工程を省略できるので、さらに迅速に施工することを可能にする。
【0054】
図8(b)に示す防草マット100Dでは、筒状部120Dの上端部122Dが開口しておらず、底壁部123Dが開口しているように構成されている。この場合、上端部122Dを穿設すること又は筒状部120Dの先端を水平に切断することによって、植生植物を植生するための孔を形成する。当該防草マット100Dでは、筒状部120Dの側壁121Dと上端部122Dとマット体110D表面とで連続する表面を形成しており、当該筒状部120Dを潰すとマット体110Dと筒状部120Dとが外観において同化し、筒状部120Dの存在があまり目立たない。つまり、当該防草マット100Dは、植生植物を植生しない箇所112Dが部分的に存在するときに施工面の美観を損なう程度が少ないという利点を有する。また、図8(c)に示す防草マット100Eのように、筒状部120Eの上端部122Eと底壁部123Eとがともに開口していないように構成することも可能である。
【0055】
(実施例4)
図9の防草マット100Fは、マット体110Fと筒状部120Fとを有し、予め開口112aFが形成されているものである。図9(a)に示すとおり、筒状部120Fの側壁121Fは、マット体110Fに一体的に立設された2つの切片121aFと、両方の切片121aFを接続する2つの壁部121bFとからなる。図9(b)に示すとおり、この切片121aFは、防草マット110Fを略H字形状に切り込んで形成されたものである。また、壁部121bFは矩形状の可撓性シートからなる。そして、その基端には防草マット表面110aFに固定される固定部121b1Fが設けられ、その両側端には各切片121aFに接続される接続部121b2Fが設けられ、且つ、その先端が筒状部120Fの上端部122Fに対応する。さらに、当該可撓性シート(壁部)121bFの両側部には、固定部121b1Fと接続部121b2Fとの間で一対の切り込み121b3Fが設けられている。図9(c)のように、切片121aF及び可撓性シート(壁部)121bFを破線に沿って折り曲げることで、切片121aFをマット体110Fから立ち上げて、壁部121bFを固定部121b1Fでマット体110Fに固定しつつ、接続部121b2Fを介して壁部121bFで切片121aF同士を接続することができる。
【0056】
この実施例4の防草マット100Fでは、マット体110Fの一部から筒状部120Fの側壁121Fを構成することができるので、製造コストを削減することができる。また、可撓性シート121bFをマット体110Fに取り付けるだけで、筒状部120Fを形成することができるので、当該防草マット100Fを容易に製造することが可能である。さらに、切片121aFを折り目に沿って元に復帰する方向(閉方向)に屈曲させることで、簡単に筒状体120Fを折り畳むことができる。すなわち、防草マット100Fを折り畳み形態に簡単且つ迅速に変形させることが可能である。
【0057】
(実施例5)
図10の防草マット100Gは、図9の防草マット100Fの形態から部分的に変形したものである。この防草マット100Gでは、略H字形状の切り込みの各先端が内側に折れ曲がっており、その結果として、開口112aGは八角形になる。さらに、壁部121bGを構成する可撓性シートは、その基端に一対の切り込み121b3Gが設けられており、同様に固定部121b1Gにてマット体110G表面に固定される。本実施例5では、実施例4の防草マット100Fの効果に加えて、開口112aGが八角形になっていることで、開口の4隅が側壁121Gの外側にはみ出すことを防止することができる。
【0058】
なお、本発明は上述した複数の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0059】
100 防草マット
110 マット体
111 被覆部(非植生部)
112 植生部
112a 開口
120 筒状部
121 側壁
122 上端部
123 底壁部
G 施工面(土壌表面)
P 植生植物
R 植生空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雑草の繁殖を抑えつつ、植生植物で緑化すべき土壌の表面に敷設される防草マットであって、
表面および裏面を有するマット体と、そのマット体の表面から上方に延び出るように当該マット体に一体形成された少なくとも1つの可撓性の筒状部とを備え、
前記マット体のうち、前記筒状部によって取り囲まれた筒状部の内側領域が、植生植物を土壌に植生するための植生部を提供すると共に、前記筒状部の外側領域が、土壌表面を被覆して土壌表面から雑草が伸び出るのを防止するための非植生部を提供し、
当該防草マットを土壌表面に敷設した際、前記筒状部を前記植生部内に折り込んで前記マット体の裏面側に反転突出させることにより、土壌中にその反転突出した筒状部に囲まれた植生空間(R)を確保可能である、ことを特徴とする防草マット。
【請求項2】
前記筒状部に取り囲まれた植生部には、予め開口ないし切れ目が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の防草マット。
【請求項3】
前記筒状部に取り囲まれた植生部は、前記マット体により閉塞されているが、当該防草マットの使用時に開口ないし切れ目を形成可能な程度の厚みないし固さを有している、ことを特徴とする請求項1に記載の防草マット。
【請求項4】
前記植生部において前記マット体に略H字形状の切れ目をつけることで形成された2つの切片を前記マット体表面側に折曲することによって、前記開口が前記植生部に予め形成されており、
前記2つの切片が折曲された状態で前記筒状部を形成するように、一方の切片の側端と他方の切片の側端とをそれぞれ接続する壁部が設けられて、前記壁部と前記切片とで前記筒状部の側壁を形成することを特徴とする請求項2に記載の防草マット。
【請求項5】
前記各壁部は、一対の切り込みを有する矩形状の可撓性シートを屈曲することによって構成されており、当該可撓性シートの基端には前記マット体に固定された固定部が設けられ、その両側端には前記各切片に接続された接続部が設けられ、その先端が前記筒状部の上端に対応していることを特徴とする請求項4に記載の防草マット。
【請求項6】
前記筒状部は、当該防草マットの不使用時または保管時において、前記マット体の表面に重なるように折り畳み可能である、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の防草マット。
【請求項7】
雑草の繁殖を抑えつつ、土壌の表面を緑化する方法であって、
請求項1又は3に記載の防草マットを土壌表面に敷設するステップと、
前記筒状部に取り囲まれた植生部に開口ないし切れ目を形成するステップと、
前記筒状部を植生部内に折り込んで前記マット体の裏面側に反転突出させることにより、土壌中にその反転突出した筒状部に囲まれた植生空間(R)を形成するステップと、
前記植生空間(R)に植生植物を植生するステップと、
を経ることを特徴とする土壌表面の緑化方法。
【請求項1】
雑草の繁殖を抑えつつ、植生植物で緑化すべき土壌の表面に敷設される防草マットであって、
表面および裏面を有するマット体と、そのマット体の表面から上方に延び出るように当該マット体に一体形成された少なくとも1つの可撓性の筒状部とを備え、
前記マット体のうち、前記筒状部によって取り囲まれた筒状部の内側領域が、植生植物を土壌に植生するための植生部を提供すると共に、前記筒状部の外側領域が、土壌表面を被覆して土壌表面から雑草が伸び出るのを防止するための非植生部を提供し、
当該防草マットを土壌表面に敷設した際、前記筒状部を前記植生部内に折り込んで前記マット体の裏面側に反転突出させることにより、土壌中にその反転突出した筒状部に囲まれた植生空間(R)を確保可能である、ことを特徴とする防草マット。
【請求項2】
前記筒状部に取り囲まれた植生部には、予め開口ないし切れ目が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の防草マット。
【請求項3】
前記筒状部に取り囲まれた植生部は、前記マット体により閉塞されているが、当該防草マットの使用時に開口ないし切れ目を形成可能な程度の厚みないし固さを有している、ことを特徴とする請求項1に記載の防草マット。
【請求項4】
前記植生部において前記マット体に略H字形状の切れ目をつけることで形成された2つの切片を前記マット体表面側に折曲することによって、前記開口が前記植生部に予め形成されており、
前記2つの切片が折曲された状態で前記筒状部を形成するように、一方の切片の側端と他方の切片の側端とをそれぞれ接続する壁部が設けられて、前記壁部と前記切片とで前記筒状部の側壁を形成することを特徴とする請求項2に記載の防草マット。
【請求項5】
前記各壁部は、一対の切り込みを有する矩形状の可撓性シートを屈曲することによって構成されており、当該可撓性シートの基端には前記マット体に固定された固定部が設けられ、その両側端には前記各切片に接続された接続部が設けられ、その先端が前記筒状部の上端に対応していることを特徴とする請求項4に記載の防草マット。
【請求項6】
前記筒状部は、当該防草マットの不使用時または保管時において、前記マット体の表面に重なるように折り畳み可能である、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の防草マット。
【請求項7】
雑草の繁殖を抑えつつ、土壌の表面を緑化する方法であって、
請求項1又は3に記載の防草マットを土壌表面に敷設するステップと、
前記筒状部に取り囲まれた植生部に開口ないし切れ目を形成するステップと、
前記筒状部を植生部内に折り込んで前記マット体の裏面側に反転突出させることにより、土壌中にその反転突出した筒状部に囲まれた植生空間(R)を形成するステップと、
前記植生空間(R)に植生植物を植生するステップと、
を経ることを特徴とする土壌表面の緑化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−161276(P2012−161276A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23821(P2011−23821)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000226747)日新産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000226747)日新産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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