説明

防虫剤

【課題】実使用場面において使い勝手が良く、安定した防虫効果を発揮する一方、ひとつの施用場所に限定せず広く使用できる衣料用防虫剤を提供することにある。
【課題の解決手段】固形担体からなる薬剤保持体を通気性材料で包装した衣料用防虫剤であって、前記薬剤保持体が、18〜60%の見掛け容積率で前記通気性材料に包装される。前記通気性材料は45度カンチレバー法で測定したときの剛軟度が、50〜100mmである不織布であり、前記固形担体として、平均粒径が2〜6mmのセルロース製ビーズが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類害虫に対して使用される防虫剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、イガ類、カツオブシムシ類やシミ類等の衣料害虫から繊維製品を保護するために、主にタンスの引き出し、押入れ等の衣類収納箱用やクローゼットに、様々な防虫剤が実用化されている。洋タンスやクローゼットには、液体の防虫剤を吸液させた薬剤保持体をプラスチックの容器に収納したものをハンガーに吊下げて使用する防虫剤や、芳香剤に似た形態で、ゲルや液体式の防虫剤がある。一方、和タンスの引き出し、押入れ等の衣類収納箱用には、昇華性固形の防虫剤、あるいは液体の防虫剤を吸液させた薬剤保持体を、プラスチックの容器に収納したり、あるいは和紙や不織布など包装した形態の物を衣類の近辺に置いて使用する。この場合、薬剤保持体の形状としては、シート状、板状、粒状のものなど様々なものが考えられるが、これらの中では、粒状の形態がより大きい表面積が期待でき、揮散の観点から利点があると考えられる。このような粒状薬剤保持体の防虫剤の形態例として、実用新案第2597878号公報(特許文献1)には、粒状の吸液素材に薬剤を含浸させたものを、通気性を有するフレキシブルな包装材の袋に入れる形態の衣類防虫用蒸散パックが開示されている。ここではパックに詰める粒状吸液体(ビーズ)のサイズ、数を調節することでパック自体の形状が自由に変形するようフレキシブルであることを特徴としている。
【0003】
また特開2009-51832号公報(特許文献2)では、有効成分である植物精油を粒状パルプに含浸させたものを、実質的に有効成分を透過しない包装材に封入した防虫剤が開示されている。
これらはいずれも薬剤を保持させた粒状の担体を袋に詰めたものであるが、このような形態において、粒状の薬剤保持体がフレキシブルな状態でありさえすれば実用場面で常に有効であるというわけではないことに我々は気付いた。すなわち、フレキシブルな程度により、防虫剤の設置の場面によっては、包装材が柔らかすぎて手触りと作業性が悪かったり、内容物である粒状薬剤保持体が偏ったりして均一な有効成分の揮散に影響するという問題があった。また、形状の安定性に欠けるため、立てた状態では内容物である粒状薬剤保持体が偏よってしまうなど、使用状況によっては設置が難しいなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案第2597878号公報
【特許文献2】特開2009-51832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、有効成分を吸液させた薬剤保持体を通気性材料で包装した衣類用の防虫剤であって、実使用場面において使い勝手が良く、安定した防虫効果を発揮する一方、ひとつの施用場所に限定せず広く使用できる防虫剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、薬剤を保持した固形担体である薬剤保持体の不織布袋への充填量、その不織布袋の材質性状、さらには薬剤保持体となる固形担体のサイズをそれぞれ調節することにより、実際での使用場面において作業性の良く、安定した効力を発揮する防虫剤が作り出せるということに気付いたことから始まる。
すなわち、以下の構成が上記目的を達成するためにすぐれた効果を奏することを見出したものである。
(1) 有効成分を固形担体に保持させた薬剤保持体を通気性材料で包装した衣料用防虫剤であって、前記薬剤保持体が、18〜60%の見掛け容積率で前記通気性材料に包装されることを特徴とする衣料用防虫剤
(2) 前記通気性材料が不織布であって、45度カンチレバー法で測定したときの剛軟度が、50〜100mmであることを特徴とする(1)記載の衣料用防虫剤。
(3) 前記通気性材料の材質が、紙が積層されてもよいポリエステル、ポリエチレン又はポリプロピレンの不織布である(1)または(2)記載の衣料用防虫剤。
(4) 前記固形担体として、平均粒径が2〜6mm、見掛け比重が0.10〜0.35であって炭が配合されてもよいセルロース製ビーズを用い、有効成分としてp−メンタン−3,8−ジオールまたはテルピネオールのいずれか少なくとも1つを含有させたことを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の衣料用防虫剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の衣料用防虫剤では、特定な粒径の固形担体に有効成分を保持させた薬剤保持体を、特定の剛軟度を有する通気性材料によって、特定の見掛け容積率で包装することで、設置する場所に関わらず、適度に安定な形状と持続した揮散を発揮することができる。加えて、本発明の衣料用防虫剤は、その平面を垂直に立てた状態にしても内容物が局在化して型崩れしない為に、引き出し用の防虫剤としてだけでなく、衣装ケース内などに縦置きしても安定した防虫効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の防虫剤を詳細に説明する。
本発明の衣料用防虫剤は、有効成分を含有させた特定粒径の固体担体を、45度カンチレバー法で測定したとき特定の剛軟度を有する通気性材料に封入し、その封入の際は特定の見掛け容積率で充填することにより、封入後も薬剤保持体は袋状体内において偏ることなく適度な移動性を有し、かつ安定した揮散性を示すものである。
【0009】
本発明の衣料用防虫剤は、各種の方法で有効成分を固形担体に保持させた薬剤保持体を、通気性材料で包装して製造する。かかる防虫剤をタンスの引き出しに入った衣類の上下やその付近、あるいは衣装ケース内に自由な方向で設置させ、薬剤保持体から防虫成分を揮散させればよい。
固形担体としてはパルプ、リンター、レーヨン等の繊維質担体、セルロース(再生セルロース)製ビーズもしくは発泡体、ケイ酸塩、シリカ、ゼオライト等の無機担体、トリオキサン、アダマンタン等の昇華性固体があげられる。中でも平均粒径が2〜6mmで見掛け比重が0.10〜0.35程度のセルロース製ビーズが好ましく、これに炭を配合したものを用いれば消臭効果も付与でき、より好適である。なお、配合する炭の量は、セルロース製ビーズに対して5〜70質量%の範囲で適宜決定すればよい。
【0010】
この固形担体に薬剤を保持させた薬剤保持体は、後に記載する通気性材料の包装体に対して、見掛け容積率で18〜60%の割合で充填されることが好ましく、より好ましくは25〜40%の割合である。
本発明でいう見掛け容積率とは、通気性材料の包装体に薬剤保持体を最大に充填した時の薬剤保持体の総重量を100%とした際の、実際に充填した薬剤保持体の重量の比率をいう。見掛け容積率が18%未満であると、袋内の内容物に偏りが生じ、設置状態によっては防虫効果に差が生じる可能性がある。また袋が起立した状態の場合にはその状況が顕著となりえる。見掛け容積率が60%を超えると、通気性材料の袋のフレキシビリティが不足するため、例えば衣類の隙間に設置した際に衣類の形状に応じて袋が変形せず、衣類との密着性が減り、防虫効果の減少につながる。また、意図しない荷重によって袋が破裂する可能性があり、内容物が飛び出し衣類を汚染する危険性が生じる。
【0011】
通気性材料を用いた包装体としては、不織布袋、綿袋、ネットケース、有孔プラスチック製容器などがあげられるが、これらのなかでは不織布袋が使いやすい。不織布の材質は特に限定されず、例えば、ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリ乳酸、レーヨン等があげられ、これらは単一の繊維であってもよいし、あるいは、紙を積層したポリエステルやポリプロピレン/レーヨンのような積層品や混紡品を用いても構わない。なかでも、前記有効成分を一部吸着してその揮散量を二次的に調節しえる、紙を積層したポリエステルやポリエチレン及びポリプロピレンが好ましい。
また不織布の形状や構成も適宜決定することができ、例えば、両面を前記材料の通気性不織布で構成してもよいし、あるいは、片面が前記材質の通気性不織布で、他面が小孔を多数有してもよいプラスチックフィルムを張り合わせたものであってもよい。
【0012】
本発明に用いる通気性材料は、45度カンチレバー法で測定した剛軟度が50〜100mmであることが好ましく、60〜80mmであることがより好ましい。45度カンチレバー法で測定した剛軟度とは、2×15cmの試験片を、カンチレバー形試験装置で一端が45゜の斜面をもつ水平台の上に、短辺をスケールの基線に合わせておいたのち、試験片を斜面の方に滑らせて、試験片の一端が斜面と接したときの試験片の押し出された長さであり、JISのL-1085に従って測定することができる。
【0013】
45度カンチレバー法で測定した剛軟度が50mm未満であると、不織布製の袋の剛性が小さくなり、形状保持性が不足するため、設置した状態によっては充填した粒が偏ることとなる。特に不織布製の袋が立てた状態に置かれた場合、充填した粒が底面に局在化し、袋の上部に大きな空間が生じることとなる。一方、45度カンチレバー法で測定した剛軟度が100mmを超えると、不織布製の袋の剛性が大きくなることから、不織布製の袋のフレキシビリティが不足するため、衣類の隙間に設置した際に衣類の形状に応じて袋が変形せず、衣類との密着性が減り、防虫効果の減少につながる。
【0014】
通常の引き出し用として用いられる防虫剤は、保管される衣類の間や真上に置く形で設置される。しかしながら、本発明の防虫剤では、固形担体が特定の容積を持って、特定の剛軟度を有する不織布素材にて封入されるため、先に述べたように直立した状態でも充填した粒が極度に偏ることがない。このことから、従来の引き出し用の防虫剤のように水平に配置することはもちろん、衣類と衣類の隙間に垂直な状態で設置することも可能である。さらには、洋ダンスやクローゼットにおいて、吊下げて使用する事も可能であり、使用する空間の大きさによって複数個連結したものを使用することも可能である。
【0015】
本発明に用いられる揮散性薬剤としては、常温において有効成分が揮散するものであれば、特に限定されるものではなく、防虫剤、芳香剤、消臭剤、防黴剤、抗菌剤などを用いることができる。
【0016】
ここで、薬剤に防虫剤を使用する場合には、少量で十分な効力を有し、においがなく、人体に対する安全性が高いという点からp−メンタン−3,8−ジオール、防虫活性を有する各種香料成分やピレスロイド系防虫剤を使用することが好ましい。
防虫活性を有する各種香料成分としては、テルピネオール、ジヒドロミルセノール、オクタン酸アリル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸アリル、シクロプロピオン酸アリル、イソアミルオキシ酢酸アリル、シキロヘキシルオキシ酢酸アリルなどがある。
ピレスロイド系防虫剤としては、エムペントリン、トランスフルトリン、プロフルトリン、テラレスリン、メトフルトリン等の化合物が揮散性の防虫剤として挙げられる。なお、これらの揮散性のピレスロイド系防虫剤については、各種の光学異性体または幾何異性体が存在するが、いずれの異性体類も使用することができ、また、各種の添加剤を使用することもできる。
【0017】
芳香剤としては、シトロネラ油、オレンジ油、レモン油、ライム油、ユズ油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、リモネン、α―ピネン、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、アミルシンナミックアルデヒド、ベンジルアセテートなどが挙げられる。
【0018】
消臭剤としては、植物抽出物である緑茶抽出物や柿抽出物のほか、ヒバ油、ヒノキ油、竹エキス、ヨモギエキス、キリ油やピルビン酸エチル、ピルビン酸フェニルエチル等のピルビン酸エステルなどが挙げられるが、活性炭、ゼオライト等の多孔性物質から成る消臭剤や銀、銅、亜鉛等の金属イオン、あるいは酸化チタン光触媒を有する消臭剤を、板状、顆粒状、シート状等の状態としたものも使用できる。
【0019】
防黴剤としては、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、イソプロピルメチルフェノール、オルソフェニールフェノールなどが挙げられる。
抗菌剤としては、ヒノキチオール、テトラヒドロリナロール、オイゲノール、シトロネラール、アリルイソチオシアネートなどが挙げられる。
【0020】
次に具体的な実施例に基づき、本発明の衣料用防虫剤についてさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
平均粒径が3mmの炭配合セルロース製ビーズ(炭の配合量:50質量%)約4gに、防虫成分として、p−メンタン−3,8−ジオールを200mg、その他成分として、緑茶エキスを5mg、及びプロピレングリコールを50mg含有させ、このビーズを、両面が通気性の紙積層ポリエステル不織布(剛軟度:71mm)からなる袋(7.5×7.5cm)に収納して、本発明の衣料用防虫剤を調製した。この時の薬剤を保持したセルロース製ビーズの見掛け容積率は約30%であった。
衣類が8割ほど収納されたタンスの引き出し(約50リットル)内の衣類の隙間に、この防虫剤を水平となるように2個設置したところ、約6ヶ月にわたり、イガ、コイガ、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ等の衣類害虫に対して食害を受けることなく、さらに消臭効果も付与されて極めて実用的であった。
【実施例2】
【0022】
縦50cm×横40cm×高さ25cm(約50リットル)の衣装ケース内に8分目くらいまでウール毛布を入れ、実施例1において調整した衣料用防虫剤2個を衣装ケース内部の側面に立てかけて設置し、室温条件下に放置した。本防虫剤は、約3ヶ月にわたり、衣類害虫に対して食害を受けることなく、実用的であった。
【0023】
(試験例1: 薬剤保持体の見掛け容積率の影響)
実施例1における防虫成分をテルピネオールに替え、通気性材料の剛軟度およびセルロース製ビーズの見掛け容積率以外は記載のない限りすべて、実施例1に準じて、各種衣料用防虫剤を調製した。
各衣料用防虫剤について、下記の性能試験を実施した。
(防虫成分の揮散量)
縦50cm×横40cm×高さ25cm(約50リットル)の衣装ケース内に8分目くらいまでウール毛布を入れ、衣料用防虫剤を毛布上部に設置し、室温条件下に放置した。5日間経過後に、衣料用防虫剤に残存する防虫成分を分析して、1日あたりの揮散量を求めた。(なお、その後の揮散量はデータとして示していないが、1日あたりの揮散量は防虫成分の揮散が終了するまでほぼ同じであった。)
(防虫効力試験)
縦50cm×横40cm×高さ25cm(約50リットル)の衣装ケース内に8分目くらいまでウール毛布を入れ、衣料用防虫剤を毛布上部に設置した。同様に、ウール毛布のみ入れて衣料用防虫剤を設置しない同サイズの衣装ケースを無処理区とした。
衣装ケース内に、イガ幼虫10匹と5cm×5cmのウール布を入れた網かごを4ヶ所設置し、1週間後にウール布の食害の程度を以下に従って判定した。
− :食害はない
+ :ウール布の毛足が削がれたような食害が認められるが貫通してはいない
++ :食害が認められ貫通孔がある
+++:甚大な食害が認められ、複数または大きな貫通孔がある
(香り強度試験)
防虫成分の揮散量測定後(5日後)、衣装ケース内の香りについて、モニター10人による官能試験を行った。以下のように評価を行い、点数の平均値を香り強度として示した。
1点:香りはない、またはほとんどしない。
2点:香りが弱い。
3点:香りがちょうどよい。
4点:香りが強い。
5点:香りが強すぎて不快。
算出された値が、4以上であれば香りが強すぎて実際の使用場面には適さない。
(不織布袋内での薬剤保持体の移動性)
通気性材料である不織布袋内での薬剤保持体の移動性を以下の方法で試験した。
衣料用防虫剤の平面を平台の上に置き、その袋の厚み(A)を予めノギスにて測定する。
次に衣料用防虫剤の平面を平台に対して垂直に起立させた状態を保ちながら、5cmの高さから平台へ落下させ、落下後の袋の厚み(B)をノギスにて測定する。
落下後の厚みの変化(B/A値)を計算した。 数値が示す状態の目安を以下に示した。
B/A=1〜1.3:不織布袋は変形せず、薬剤保持体はほとんど移動しない。
B/A=1.3〜1.8:不織布袋は適度に変形し、薬剤保持体も適度に移動することができる。
B/A=1.8〜:不織布袋は大きく変形し、薬剤保持体が底面に局在化する。
結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
見掛け容積率が14%と低い場合、有効成分の揮散が乏しいことから有効な防虫剤効力が発揮されず、イガ幼虫による食害の被害を受けた。また見掛け容積率が71%や100%と高すぎる場合は、内容量が多すぎることから、不織布袋は変形せず、薬剤保持体はほとんど移動しないことから使用感が悪い。さらに香りが強すぎるという問題が生じ、さらに製造時や実使用時に急な衝撃を受けた際に、不織布袋が破れ内容物が散らばる危険性がある。
本試験結果より、本発明である18〜60%の範囲にある見掛け容積率の防虫剤は、通気性不織布袋内の薬剤保持体に適度な揮散性と移動性を与え、その結果、有効な防虫効果を発揮することがわかった。
【0026】
(試験例2: 通気性材料の剛軟度の影響)
試験例1と同様に、実施例1における防虫成分をテルピネオールに替え、通気性材料の剛軟度および薬剤保持したセルロース製ビーズの見掛け容積率以外は記載のない限りすべて、実施例1に準じて、各種衣料用防虫剤を調製した。各衣料用防虫剤について、試験例1と同様の性能試験を実施した。
結果を表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
通気性材料である不織布の剛軟度が40mmでおよび132mmのものは薬剤保持体の移動性に関して、剛軟度が71mmおよび90mmのものに比べ、ビーズの状態の均一性に差が出ることから、揮散量が若干落ちる傾向にあった。このことから、50〜100mmの範囲にある剛軟度の通気性不織布を用いることで、揮散量を落とさずに、不織布袋に適度な柔軟性を与え、さらに使い勝手の良い衣料用防虫剤となりえることがわかった。
【0029】
(試験例3: 薬剤保持体の粒子径の影響)
各種平均粒径の炭配合セルロース製ビーズ(炭の配合量:30質量%)約4gに、防虫成分として、テルピネオールを200mg、その他成分として、緑茶エキスを5mg、及びプロピレングリコールを50mg含有させ、このビーズを見掛け容積率約30%にて、両面が通気性の紙積層ポリエステル不織布(剛軟度:71mm)からなる袋(7.5×7.5cm)に収納して、本発明の衣料用防虫剤を調製した。
各衣料用防虫剤について、試験例1および2と同様に防虫効力試験および薬剤保持体の移動性を確認する試験を実施した。
結果を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
いずれの粒径においても防虫効力は発揮されたが、不織布袋内でのビーズの移動性に差が生じた。径0.7mmではビーズが軽く、細かいことから適度な移動性が発揮されず、逆に径10mmの大粒径になると移動そのものが制限され、かつ不織布袋表面に顕著な凹凸が現われることから柔軟性に欠け、実使用場面での見た目も良くなかった。
【0032】
以上の試験より、特定な粒径の固形担体に有効成分を保持させた薬剤保持体を、特定の剛軟度を有する通気性不織布によって、特定の見掛け容積率で包装することによって、設置する場所に関わらず、適度に安定な形状と持続した揮散を示す衣料用防虫剤となることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、衣料用防虫剤だけでなく、飛翔害虫等の害虫忌避分野に加えて、芳香消臭剤においても広く利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分を固形担体に保持させた薬剤保持体を通気性材料で包装した衣料用防虫剤であって、前記薬剤保持体が、18〜60%の見掛け容積率で前記通気性材料に包装されることを特徴とする衣料用防虫剤。
【請求項2】
前記通気性材料が不織布であって、45度カンチレバー法で測定したときの剛軟度が、50〜100mmであることを特徴とする請求項1記載の衣料用防虫剤。
【請求項3】
前記通気性材料の材質が、紙が積層されてもよいポリエステル、ポリエチレン又はポリプロピレンの不織布である請求項1または請求項2記載の衣料用防虫剤。
【請求項4】
前記固形担体として、平均粒径が2〜6mm、見掛け比重が0.10〜0.35であって炭が配合されてもよいセルロース製ビーズを用い、有効成分としてp−メンタン−3,8−ジオールまたはテルピネオールのいずれか少なくとも1つを含有させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の衣料用防虫剤。

【公開番号】特開2012−144502(P2012−144502A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5545(P2011−5545)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】