説明

防虫構造

【課題】床下空間への虫の侵入を防止するとともに床下空間の通気性を確保することができる防虫構造を提供することを課題とする。
【解決手段】住宅Jの基礎2と、基礎2の上に設置された土台4と、基礎2と土台4との間に介設され基礎2と土台4との間の通気を可能にする基礎パッキン3と、土台4の上に形成された壁部5と、土台4又は壁部5に取り付けられ住宅Jの外側下方に向けて張り出された水切り板6と、基礎2の上端及び水切り板6にそれぞれ当接し基礎2の上端と水切り板6との隙間K2を塞ぐ防虫部材7と、を有し、防虫部材7には、複数の微細な通気孔44が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床下空間への虫の侵入を防止するとともに、床下空間の通気性を確保することができる防虫構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の床下空間への白蟻の侵入を防ぐために、基礎や土壌に防蟻剤を散布する処理が行われている。一般的に、土壌処理は、基礎内の土壌処理を対象とし、原則的に基礎の外周には行わない。そのため、例えば、基礎の立ち上り部の外側に塗布された化粧モルタルと立ち上り部の間の微細な隙間に沿って白蟻が基礎を上り、立ち上り部と土台との隙間から床下空間に進入する問題があった。通常、化粧モルタルは、立ち上り部の上端を覆う水切り板で隠れる部分まで塗り上げられている。そのため、白蟻の侵入を発見しづらいという問題もあった。また、建物にウッドデッキを隣設する場合、このウッドデッキと基礎との隙間から床下空間に白蟻が侵入するという問題があった。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、床下空間に白蟻を侵入させないように形成された防蟻構造が開示されている。この防蟻構造は、基礎の立ち上り部の上端と建物の土台との間にバリヤ本体を設けている。バリヤ本体は、板状を呈し、基礎の上端を覆う基礎被覆部と、この基礎被覆部から基礎の両側下方に延設された一対の遮壁部とを有している。遮壁部の先端は自由端になっており、基礎から離間している。これにより、基礎の立ち上り部を上がってきた白蟻は、いわゆるネズミ返しの要領で通路を遮られるため、床下空間への白蟻の侵入を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−194345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係る防蟻構造では、基礎の立ち上り部と土台とを密閉するため、床下空間の通気性が悪いという問題があった。一方で、通気性を確保しようとすると、白蟻の侵入を許してしまう。つまり、床下空間の白蟻等の侵入防止と床下空間の通気性の確保の両立を図ることは困難であった。
【0006】
本発明は、前記した問題に鑑みて創案されたものであり、床下空間への虫の侵入を防止するとともに床下空間の通気性を確保することができる防虫構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、建物の基礎と、前記基礎の上に設置された土台と、前記基礎と前記土台との間に介設され前記基礎と前記土台との間の通気を可能にする基礎パッキンと、前記土台の上に形成された壁部と、前記土台又は前記壁部に取り付けられ前記建物の外側下方に向けて張り出された水切り板と、前記基礎の上端及び前記水切り板にそれぞれ当接し前記基礎の上端と前記水切り板との隙間を塞ぐ防虫部材と、を有し、前記防虫部材には、複数の微細な通気孔が形成されていることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、防虫部材が基礎の上端と水切り板との隙間を塞ぐので、虫が床下空間に侵入するのを防ぐことができる。また、防虫部材に形成された通気孔と基礎パッキンによって空気の通り道ができるため、床下空間の通気性を確保することができる。なお、防虫部材に形成された通気孔は、虫は通さないが空気は通る大きさとなっている。
【0009】
また、前記水切り板は、先端側に第一係合部を有し、前記防虫部材は、基端側に被挟持部と先端側に第二係合部とを有し、前記基礎の上端と前記基礎パッキンの間に前記被挟持部が挟持されているとともに、前記第一係合部と前記第二係合部とが係合されていることが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、防虫部材の第一係合部と水切り板の第二係合部とを係合させるだけで、基礎の上端と水切り板との隙間を容易に塞ぐことができる。これにより、施工性を高めることができる。
【0011】
また、前記壁部は、外装下地とこの外装下地と隙間をあけて設置された外装材とを備え、前記外装下地と前記外装材との隙間と、前記防虫部材の通気孔とが連通することが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、外装下地と外装材との隙間と防虫部材の通気孔とが連通するため、建物の通気性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る防虫構造によれば、床下空間への白蟻等の侵入を防止するとともに床下空間の通気性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る防虫構造を示す一部破断斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】本実施形態に係る基礎パッキンを示す図であって(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図4】本実施形態に係る防虫部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る防虫構造1は、床下空間Yを備えた住宅Jに設けられる。
【0016】
防虫構造1は、基礎2と、基礎パッキン3と、土台4と、壁部5と、水切り板6と、防虫部材7とで主に構成されている。防虫構造1は、住宅J等の建物の基礎2周りに設けられ、床下空間Yへの虫の侵入を防止するとともに、床下空間Yの通気を確保する。住宅Jは、本実施形態では枠組壁工法で構築された場合を例示するが、構築方法を限定するものではなく、軸組工法等公知の工法を採用することができる。
【0017】
基礎2は、図1及び図2に示すように、住宅Jを支持するための鉄筋コンクリート製の部材である。基礎2は、底面を構成するスラブ部2aとスラブ部2aから立ち上がる立ち上り部2bとを備えている。立ち上り部2bの外側には化粧モルタル2cが塗布されている。化粧モルタル2cは、図2に示すように水切り板6によって隠れる高さまで塗布されている。基礎2は、本実施形態ではベタ基礎を例示するが、布基礎であってもよい。
【0018】
基礎パッキン3は、基礎2と土台4との間に介設される樹脂製の部材である。基礎パッキン3は、基礎2と土台4との間に隙間又は通気口を形成することによって、床下空間Yの通気を可能にする部材である。基礎パッキン3は、具体的な図示はしないが、住宅Jの外周に位置する立ち上り部2bの略全長に亘って設けられている。
【0019】
基礎パッキン3は、図3に示すように、長尺のパッキンであって、一対の長辺部11と、長辺部11同士を連結する複数の短辺部12とを有する。基礎パッキン3は例えば20mm程度の厚みで形成されている。長辺部11は、立ち上り部2bの長手方向に沿って配設される部位であって、幅方向に連通する複数の通気口11aを備えている。通気口11aを備えることにより、床下空間Yと外部との通気が可能になる。短辺部12は、所定の間隔をあけて長辺部11,11を略垂直に連結する部位である。
【0020】
また、基礎パッキン3は、図3の(b)に示すように上下方向に連通する連通孔13が形成されている。連通孔13は、一対の長辺部11及び一対の短辺部12で形成される。連通孔13は、図示しないアンカーボルトを挿通させる部位である。
【0021】
なお、基礎パッキン3は、本実施形態では前記した構成のものを採用したが、床下空間Yと外部との通気が可能な構成であればこれに限定されるものではない。例えば、通気口11aを備えていない中実の基礎パッキン(スペーサー)を、立ち上り部2bの上に間隔をあけて複数個配設し、立ち上り部2bと土台4との間に通気用の隙間を設けてもよい。
【0022】
土台4は、図1及び図2に示すように、基礎パッキン3の上に設置された木材である。土台4は、アンカーボルト(図示省略)によって基礎2の立ち上り部2bに固定される。土台4の上には、床材8が設置されている。床材8は、水平方向に延びる平板部材である。
【0023】
壁部5は、図1及び図2に示すように、鉛直方向に立設される部材であって、床材8の上に設置されている。壁部5は、枠材21,22と、外装下地23と、外装材24とで主に構成されている。外装下地23は、枠材21,22によって形成された枠状部材に取り付けられている。外装下地23の外側面には、防水シート(図示省略)が貼付されている。
【0024】
外装材24は、鉛直方向に立設し、住宅Jの外側を構成する板状部材である。外装材24と外装下地23の間は、例えば胴縁(図示省略)を介設することで隙間K1が形成されている。隙間K1は、壁部5の鉛直方向に亘って形成されているため、壁部5内の通気性を高めることができる。なお、本実施形態では、外装下地23と外装材24との間に胴縁を介設して隙間K1を設けたが、例えば、突条を備えた防水シート等を介設することで隙間K1を形成してもよい。
【0025】
水切り板6は、図1及び図2に示すように、壁部5の下端に取り付けられた金属製の板状部材である。水切り板6は、立ち上り部2bの上端、基礎パッキン3及び土台4の側部を覆うように配設されており、これらの部材を雨水から保護する。水切り板6は、玄関口を除く住宅Jの外周の略全長に亘って設けられている。
【0026】
水切り板6は、基板31と、傾斜板32と、垂下板33と、第一係合部34とを有する。基板31は、本実施形態では、外装下地23に配設された防水シート又は銅縁(図示省略)に取り付けられている。傾斜板32は、基板31の下端から住宅Jの外側に向けて斜め下方に張り出されている。垂下板33は、傾斜板32の下端から下方に延設されている。立ち上り部2bの上端を雨水から保護するために、垂下板33の下端は、立ち上り部2bの上端よりも下方に位置するように設定することが好ましい。
【0027】
第一係合部34は、垂下板33の下端から基礎2側に向けて斜め上方に延設されている。第一係合部34の先端は垂下板33側に向けて折り返されている。第一係合部34は、後記する第二係合部43と係合する部位である。立ち上り部2bと水切り板6との間には隙間K2が形成されている。
【0028】
防虫部材7は、図1及び図2に示すように、ステンレス製の網状部材であって、立ち上り部2bの上端と水切り板6との隙間K2を塞ぐ。防虫部材7は、床下空間Yへの虫の侵入を防止するとともに通気性を備える部材である。防虫部材7は、本実施形態では水切り板6が配設されている部位の全長に亘って配設されている。
【0029】
防虫部材7は、図4に示すように、被挟持部41と、本体部42と、第二係合部43とを有する。防虫部材7は、網状の薄いステンレス材を折り曲げ加工して形成されている。被挟持部41は、水平方向に延設されている。本体部42は、被挟持部41の端部から斜め下方に向けて延設されている。第二係合部43は、本体部42の下端で折り返され斜め下方に向けて延設されている。
【0030】
図2に示すように、被挟持部41は、立ち上り部2bと基礎パッキン3の間に挟持される。被挟持部41は、本実施形態では、立ち上り部2bの外側の三分の一程度が重なるように設定されている。防虫部材7は、例えば1mm程度の厚みになっているため、基礎パッキン3の傾きは無視することができる。なお、被挟持部41の長さを基礎パッキン3の幅と同等に設定してもよい。
【0031】
第二係合部43と第一係合部34とは互いに引っ掛けるようにして係合されている。これにより、立ち上り部2bと水切り板6との隙間K2が防虫部材7によって塞がれる。立ち上り部2bの外側面と防虫部材7とでなす角度は、鋭角であることが好ましい。これにより、虫を外側下方に導くことができるため、虫の侵入をより効果的に防止することができる。
【0032】
また、防虫部材7は、網状になっているため、微細な複数の通気孔44を備えている。本実施形態では、白蟻の侵入を防ぐことを主な目的としているため、通気孔44の大きさを1mm×1mm程度に設定している。通気孔44の大きさ及び形状は、空気を通すことを前提としつつ、進入を防ぐ虫の対象に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
防虫部材7は、本実施形態では網状の部材を設けたが、例えば、金属製の薄板部材に複数の微細な孔を穿設して形成してもよい。また、防虫部材7は、本実施形態では、金属製としたが、樹脂製であってもよい。また、防虫部材7は、可撓性を備えた材料で形成してもよい。
【0034】
次に、防虫構造1の施工方法について説明する。
基礎2を構築した後、立ち上り部2bの上端に防虫部材7を配設しつつ、基礎パッキン3を載置する。このとき、防虫部材7の被挟持部41は、立ち上り部2bと基礎パッキン3とに挟まれるとともに、本体部42は立ち上り部2bの外側に向けて張り出している。
【0035】
次に、基礎パッキン3の上に土台4を配置してアンカーボルトで固定する。そして、床材8を配置した後、壁部5を構築する。壁部5を構築する際には、外装下地23に配設された防水シート又は銅縁(図示省略)に水切り板6を取り付ける。最後に、水切り板6の第一係合部34と防虫部材7の第二係合部43とを係合させる。
【0036】
以上説明した防虫構造1によれば、防虫部材7が基礎2の立ち上り部2bの上端と水切り板6との隙間K2を塞ぐので、虫が床下空間Yに侵入するのを防ぐことができる。また、防虫部材7に形成された通気孔44と基礎パッキン3によって空気の通り道ができるため、床下空間Yの通気性を確保することができる。
【0037】
また、水切り板6の第一係合部34と防虫部材7の第二係合部43とを係合させるだけで、基礎2の上端と水切り板6との隙間K2を容易に塞ぐことができる。これにより、施工性を高めることができる。
【0038】
また、外装下地23と外装材24との隙間K1と防虫部材7の通気孔44とが連通するため、住宅Jの通気性をより高めることができる。
【0039】
また、防虫部材7は、水切り板6の内部に配設されるため、通常人目に触れることがない。これにより、住宅Jの外観の意匠性を損ねることがない。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、第一係合部34及び第二係合部43は、本実施形態では、部材の先端を折り曲げて両者を引っ掛けるようにして係合させたが、第一係合部34及び第二係合部43を容易に係合可能であれば他の構成であってもよい。また、第一係合部34及び第二係合部43を設けずに、少なくとも防虫部材7の先端が、水切り板6の裏側に当接する構成であってもよい。
【0041】
また、本実施形態では、防虫部材7に被挟持部41を設けたが、これに限定されるものではない。防虫部材7の基端側は、立ち上り部2bの上端に当接していればよく、例えば、防虫部材7と立ち上り部2bの上端とを接着剤で接着してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、図2に示すように、水切り板6と基礎パッキン3とを上下方向に離間させているが、両者を当接させてもよい。また、本実施形態では、水切り板6を外装下地23に配設された防水シート又は銅縁(図示省略)に取り付けたが、外装下地23又は土台4の外側に直接取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 防虫構造
2 基礎
2a スラブ部
2b 立ち上り部
2c 化粧モルタル
3 基礎パッキン
4 土台
5 壁部
6 水切り板
7 防虫部材
8 床材
23 外装下地
24 外装材
34 第一係合部
41 被挟持部
42 本体部
43 第二係合部
44 通気孔
K1 隙間
K2 隙間
J 住宅
Y 床下空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎と、
前記基礎の上に設置された土台と、
前記基礎と前記土台との間に介設され前記基礎と前記土台との間の通気を可能にする基礎パッキンと、
前記土台の上に形成された壁部と、
前記土台又は前記壁部に取り付けられ前記建物の外側下方に向けて張り出された水切り板と、
前記基礎の上端及び前記水切り板にそれぞれ当接し前記基礎の上端と前記水切り板との隙間を塞ぐ防虫部材と、を有し、
前記防虫部材には、複数の微細な通気孔が形成されていることを特徴とする防虫構造。
【請求項2】
前記水切り板は、先端側に第一係合部を有し、
前記防虫部材は、基端側に被挟持部と先端側に第二係合部とを有し、
前記基礎の上端と前記基礎パッキンの間に前記被挟持部が挟持されているとともに、
前記第一係合部と前記第二係合部とが係合されていることを特徴とする請求項1に記載の防虫構造。
【請求項3】
前記壁部は、外装下地とこの外装下地と隙間をあけて設置された外装材とを備え、
前記外装下地と前記外装材との隙間と、前記防虫部材の通気孔とが連通することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防虫構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−41690(P2012−41690A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182064(P2010−182064)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【Fターム(参考)】