説明

防護ネット装置

【課題】磯根資源の稚体、餌料生物藻類や魚類を外敵から防護しつつ、且つ所望の磯根資源等を好適に開放することができる防護ネット装置を提供する。
【解決手段】アワビやウニ等の磯根資源の稚体や藻類等を生育又は増殖させる増殖部1と、当該増殖部1を支持する台座2と、当該台座2に立設した柱状部材3と、柱状部材3に位置決めされ増殖部1を被覆し得る防護ネット5と、防護ネット5の下端を取り付ける防護ネット取付部材61及び当該防護ネット取付部材61の固定位置を上下方向に所望寸法移動させ得る固定位置調整部62を有し、防護ネット5と台座2との間に所望の大きさの隙間sを形成し得る隙間形成手段6とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底において藻類や水産資源を生育又は増殖させるために利用される増殖礁に用いられ、増殖礁に生息する藻類や水産資源等の生物を藻食性魚類等の他の生物から防護するための防護ネット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アワビ、トコブシ、サザエ、ウニ、イセエビ等の磯根資源を成育、増殖させて漁獲するための増殖礁が各種案出されている。このような増殖礁のうち、比較的単純な構造のものとしては、台座上に、磯根資源が通過できる程度の環状の通路及び放射状の通路を組み合わせて形成したコンクリート板からなる磯根資源増殖礁を載置した増殖部を設けたものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。このものは、台座上の磯根資源増殖礁の上方に、磯根資源の餌となるプランクトン等を培養できる餌料培養礁や藻類を増殖させるための藻類増殖礁等を配置することで、礁全体として磯根資源のみならず餌料生物藻類、魚類を増殖させる多機能型の増殖部を構成することができるものである。
【0003】
そして、台座に柱状部材を設け、この柱状部材に防護ネットを留め具を用いて固定し台座上の増殖部を被覆し得るものが考案されている(例えば、特許文献2参照)。このものは、防護ネットの良好な取付状態を維持することができる結果、藻食性魚類等による食害を好適に防ぐことができるとともに、留め状態にある留め具を適宜の手段で取り外すことにより防護ネットと柱状部材との取付状態を解除すれば、防護ネット自体のメンテナンスや交換作業を容易に行うことができるとともに、増殖部の交換作業や増殖部で生育又は増殖した藻類、磯根資源、餌料生物藻類や、魚類の収穫作業を行う場合に必要な防護ネットを一部開放させることもできるものとなっている。
【特許文献1】特開2002−335806号公報
【特許文献2】実用新案登録第3109447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献2のようなものでは、増殖させている磯根資源、餌料生物藻類、魚類のうち、ある程度成長した特定の磯根資源のみを開放する為に防護ネットの一部を開放する際、所要の寸法を正確に開放させることが困難なものとなっている。すなわち、開放させた部分は留め具の位置に依存する為に、開放させた部分が小さすぎると十分に生育した磯根資源が通過出来ないものとなり、大きすぎるものとなると、外敵等の他の動物が防護ネット内に侵入したり、開放させようとする種以外の磯根資源等をも開放したりしてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、例えば磯根資源の稚体、餌料生物藻類や魚類を外敵から防護しつつ、且つ所望の磯根資源等を好適に開放することができる防護ネット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち、本発明に係る防護ネット装置は、アワビやウニ等の磯根資源の稚体や藻類等を生育又は増殖させる増殖部と、当該増殖部を支持する台座と、当該台座に立設した柱状部材と、前記柱状部材に位置決めされ増殖部を被覆し得る防護ネットと、防護ネットの下端を取り付ける防護ネット取付部材及び当該防護ネット取付部材の固定位置を上下方向に所望寸法移動させ得る固定位置調整部を有し、前記防護ネットと前記台座との間に隙間を形成し得る隙間形成手段とを少なくとも具備していることを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、防護ネットに被覆された空間を所定寸法形成された隙間の寸法のみ外側へ開放させることが可能となるので、他の生物等を誤って逃がしてしまうという不具合を有効に回避しつつ、所要の磯根資源のみを確実に防護ネットの外側へ移動させる事が可能となる。
【0008】
特に、斯かる防護ネット装置において上述の隙間を形成する作業は、水中にて行われることとなるが、このような水中における作業は陸上に比べて困難であり、且つ連続して作業出来る時間も限られている。そのため、迅速さが要求される水中においても容易且つ簡便に隙間の寸法を構成し得る態様として、固定位置調整部を、台座に取り付けたボルト柱とナットとによって構成し、防護ネット取付部材を、防護ネットを取り付ける取付部材本体とボルト柱に支持され得る被支持部とによって構成しているものを挙げることができる。
【0009】
具体的には、迅速且つ正確に所定の寸法を有する隙間を形成する固定位置調整部を、被支持部と台座との間を所定寸法隔てて介在し得るスペーサを更に有するものとすることが望ましい。そして、スペーサを位置決めする好適な態様として、スペーサを、ボルト柱に螺合し得る雌ねじ部を有するものとすることが好ましい。
【0010】
防護ネット取付部の固定位置の調整や、防護ネットの着脱をさらに迅速に行うために、被支持部を、一端を開放させた形状を有する挟持部とすることが好ましい。
【0011】
また、隙間形成手段を下枠として機能させて確実に防護ネットを位置決めし得るものとするためには、柱状部材を増殖部の周囲に複数設けたものとし、固定位置調整部を、複数の柱状部材近傍にそれぞれ複数設け、防護ネット取付部材を、ボルト柱間に架設して設けていることが望ましい。
【0012】
溶接等の作業を回避しつつ柱状部材の強度を好適に向上させるためには、複数の柱状部材の上端に、当該柱状部材間を着脱可能に架設する上枠部材を設けることが望ましい。また、防護ネットを確実に取り付け得る構成として、上枠部材を、防護ネットを固定する防護ネット固定部を設けた態様を挙げることができる。
【0013】
そして、防護ネットが水流等により損傷することを有効に回避するためには、防護ネットを、複数の柱状部材に対して開放させることが望ましい。
【0014】
また、防護ネットを好適に構成する態様として、複数の柱状部材の外側を一体に周回し得る周回部と、周回部に連続し複数の柱状部材の上側を覆う上面部とを有する態様を挙げることができる。また磯根資源や藻類の収穫など、防護ネット内の作業を好適に行うためには、周回部に、防護ネットの内外を連通させ得る連通窓を設けることが望ましい。斯かる作業をさらに好適に行う為の態様として、連通窓を、それぞれ対向する位置に一対設けたものとすることが好ましい。
【0015】
ここで、防護ネットを確実に取り付けるためには、柱状部材を被覆することにより取り付ける袋形状を構成し得るものとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、このようなものであれば、防護ネットに被覆された空間を所定寸法形成された隙間の寸法のみ外側へ開放させることが可能となるので、他の生物等を誤って逃がしてしまうという不具合を有効に回避しつつ、所要の磯根資源のみを確実に防護ネットの外側へ移動させる事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る防護ネット装置Xは、例えば図1に示すように、海底に沈設して使用される増殖部1を有しているものである。このものは、台座2上の後述する磯根資源増殖ブロック11の上方に、磯根資源の餌となるプランクトン等を培養できる餌料培養礁や藻類を増殖させるための後述する藻類増殖部材12等を配置することで、礁全体として磯根資源のみならず餌料生物藻類、さらには後述する防護ネット5を配することにより、魚類をも増殖させることができるという多機能型のものとなっている。
【0019】
ここで、本実施形態に係る防護ネット装置Xは、アワビやウニ等の磯根資源の稚体や藻類等を生育又は増殖させる増殖部1と、当該増殖部1を支持する台座2と、当該台座2に立設した柱状部材3と、柱状部材3に位置決めされ増殖部1を被覆し得る防護ネット5と、防護ネット5の下端を取り付ける防護ネット取付部材61及び当該防護ネット取付部材61の固定位置を上下方向に所望寸法移動させ得る固定位置調整部62を有し、防護ネット5と台座2との間に隙間を形成し得る隙間形成手段6とを少なくとも具備していることを特徴としている。
【0020】
以下、防護ネット装置Xの各構成要素について、具体的に説明する。
【0021】
増殖部1は、図1に示すように、アワビ、トコブシ、サザエ、ウニ、イセエビ等の水産資源(以下、「磯根資源」)を稚体から成体まで生育・増殖させることを主目的とする磯根資源増殖ブロック11と、アラメ、クロメ、カジメ、ホンダワラ等の海藻類(以下、「藻類」)を増殖させて藻場を形成することを主目的とする藻類増殖部材12とを備えたものである。ここで、本実施形態における磯根資源増殖ブロック11及び藻類増殖部材12が、いわゆる「増殖礁」に相当する。磯根資源増殖ブロック11は、コンクリート製ブロックからなり、外側面に上方から下方へ漸次内側に傾斜するテーパ面を有するものである。この磯根資源増殖ブロック11は、その上面に他の磯根資源増殖ブロック11又は藻類増殖部材12の何れかを選択的に取付可能に設定している。藻類増殖部材12は、同図では概略プレート状をなした平面視長方形状のタイプのものを図示しているが、藻類増殖部材12の形状は図示のものに限定されるものではなく種々の形状を採用することが可能である。このような藻類増殖部材12は、表面に藻類を着生させていない状態で磯根資源増殖ブロック11に装着して潮流に流されてくる藻類の胞子や遊走子を着床させるようにしてもよいし、予め海中又は陸上水槽中で中間育成した藻類を表面に活着させた状態で磯根資源増殖ブロック11に装着してもよい。
【0022】
台座2は、図1に示すように、海底において長期に亘り安定した設置状態を維持することができる程度の大きさ及び重量を有する大型のコンクリート構造物である。この台座2は、平面視六角形状をなす枠状本体21と、この枠状本体21の各コーナー部分から斜め下外方へ突出させた脚部22と、枠状本体21の一対の内側面間に渡され磯根資源増殖ブロック11を配置するための配置部として機能する横桟23とを一体に備えたものである。
【0023】
柱状部材3は、図1及び、増殖部1、横桟23並びに防護ネット5を省略した図である図2に示すように、台座2上に立設されたL形鋼材を主体としてなるものであり、防護ネット5を支えるに足る強度を有するものとしている。詳細には、この柱状部材3は、台座2の枠状本体21に立設され、本実施形態では、各柱状部材3を枠状本体21上に配置される複数の磯根資源増殖ブロック11のうち端部に配置される磯根資源増殖ブロック11及び防護ネット5の位置決めを行い得る位置に計4つ設けている。各柱状部材3は、L型鋼材を内角側が内側を向くように起立させた状態で枠状本体21に埋め込んだものである。そして具体的には、この柱状部材3は、上述のL形鋼材からなる支柱本体31と、支柱本体31の上端に、例えば雄ねじ部材を固定するなどして設けられ、後述する上枠部材4を取り付け得る上枠取付部32とを有するものとなっている。
【0024】
そして本実施形態では上述の通り、柱状部材3の上側に上枠部材4を取り付けたものとしている。上枠部材4は、図2に示すように、柱状部材3の上枠取付部32に例えばボルトなどで着脱可能に取り付けて固定される被固定部41と、各被固定部41間に架設される横架部42とによって主に構成されている。そして本実施形態ではこの横架部42に例えば樹脂製の結束帯tを用いて防護ネット5を固定している。言い換えれば、この横架部42は、本発明に係る防護ネット固定部の役割を担っている。そしてこの上枠部材4の取り付けは、上述の雄ねじ部材の位置に被固定部41を位置決めして挿通させた後、雄ねじ部材の先端に図示しないナットを螺合させることにより取り付ける。
【0025】
防護ネット5は、特に増殖部1並びに横桟23を省略した図である図3及び図4に示すように、柱状部材3に支持されて増殖部1を被覆することにより、通常は増殖部1内の磯根資源や魚類の脱出を防止するためのものである。また防護ネット5は、後述する周回部52を設けることにより、柱状部材3を被覆することにより取り付ける袋形状を構成したものとしている。そしてこの防護ネット5は、同図に示すように本実施形態では柱状部材3に直接固定する箇所を設けない構成、言い換えれば防護ネット5を複数の柱状部材3に対して開放させた態様を採用して取り付けたものとしている。具体的に説明すると、防護ネット5は同図に示すように、例えば可撓性を有する化繊製のものであって、4つの柱状部材3の上端部間を結んでなる面と略同じ大きさを有する上面部51と、複数の柱状部材3の外側を一体に周回し得る周回部52とを有するものとしている。そして特に図4に示すように周回部52には、当該防護ネット5の内外を一部連通させ得る連通窓521をそれぞれ対向する位置に一対設けたものとしている。なお図3に示した状態では、連通窓521をそれぞれ上述同様の結束帯tを用いて閉じている通常の使用状態を示している。一方図4は連通窓521を開けて増殖部1に対する作業等をし得る状態を示している。また周回部52の下側領域の網目寸法を、アワビ、ウニなどの稚体の通過を妨げ得るとともにヒトデ、タコ等の肉食性海中動物の侵入を防ぎ得る程度に設定する一方、周回部52の上側の網目寸法を、下側領域の網目寸法よりも拡開させアイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類が通過できない程度の大きさに設定している。
【0026】
しかして本実施形態に係る防護ネット装置Xは、上述の通り、防護ネット5と台座2との間に所要の大きさの隙間sを形成し得る隙間形成手段6を具備しているものである。
【0027】
隙間形成手段6は、図2、図3、図4、図5、図6及び図7に示すように、防護ネット取付部材61の固定位置を上下方向に所望寸法だけ移動させ得る固定位置調整部62と、防護ネット5の下端を取り付ける防護ネット取付部材61とを有している。
【0028】
固定位置調整部62は、図5、図6及び図7に示すように、複数の柱状部材3近傍にそれぞれ計4箇所に位置付けられ、台座2に取り付けたボルト柱621と、ボルト柱621の先端位置においてボルト柱621に螺合し得るナット622と、ボルト柱621を挿通させた状態で、防護ネット取付部材61の後述する被支持部612、ナット622、或いは台座2の間に介在し得るスペーサ623とを有している。そしてスペーサ623は、ボルト柱621に螺合し得る雌ねじ部623aを有するものとしている。なおスペーサ623の側面はナット622と同種の工具が使用し得る形状とし、防護ネット取付部材61の固定位置を調整するための一連の作業を1種類の工具のみで行い得るように構成している。
【0029】
防護ネット取付部材61は、図2、図3及び図4に示すように、2箇所のボルト柱621間に架設して取り付けられて防護ネット5の下端を位置決めするものであり、防護ネット5を固定する棒状の取付部材本体611とボルト柱621の位置で支持・固定され得る被支持部612とを有している。本実施形態において取付部材本体611は、図3及び図4に示すように任意の位置において結束帯tを用いて防護ネット5の下端を固定している。被支持部612は、上下方向の厚み寸法を取付部材本体611の略半分に設定することによって、防護ネット取付部材61を被支持部612の位置で2本重層した際に、2本の防護ネット取付部材61が上下方向の位相を等しく配置し得るように構成しているものである。そして図5、図6及び図7に示すように、被支持部612は、ボルト柱621を側方から挟持し得るように一端を開放させた形状とした本発明に係る挟持部として機能させている。この被支持部612は取付部材本体611から上述のようにほぼ半分の厚み寸法を持って延出する基端612aと、ボルト柱621を側方から挟持し得る挟持片612bと、挟持片612bの先端側からボルト柱621に対して移動・開放させ得る開放端612cとを有するものとしている。
【0030】
続いて、斯かる隙間形成手段6によって、台座2と防護ネット5との間に所要の大きさの隙間sを形成する態様を図6、図7に示す。図6は、図示左側の防護ネット取付部材61の被支持部612と図示右側の被支持部612との間にスペーサ623を位置付けて図示右側の防護ネット取付部材61のみを上方に固定することにより、固定位置調整部62の右側に任意の隙間sを形成している態様である。図7は、固定位置調整部62の両側の防護ネット固定部を上方に位置付けて固定することにより、固定位置調整部62の両側に任意の大きさの隙間sを形成している態様である。なお同図において、防護ネット取付部材61の固定は、ボルト柱621の上端にナット622を締結することによって完了する。
【0031】
このように、本実施形態に係る防護ネット装置Xは、被支持部612及びスペーサ623の位置を適宜調整することにより、所要の大きさの隙間sを任意に形成することが可能なものとなっている。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る防護ネット装置Xは、防護ネット5の下端を取り付ける防護ネット取付部材61及び当該防護ネット取付部材61の固定位置を上下方向に所望寸法だけ移動させ得る固定位置調整部62を有し、防護ネット5と台座2との間に隙間sを形成し得る隙間形成手段6とを少なくともので、防護ネット5に被覆された増殖部1を含む空間を所定寸法形成された隙間sの寸法のみ外側へ開放させることが可能となるので、他の生物等を誤って逃がしてしまうという不具合を有効に回避しつつ、所要の磯根資源のみを確実に防護ネット5の外側へ移動させる事が可能となる。
【0033】
特に、このような防護ネット装置Xでは、実際に上述の隙間sを形成する作業は、水中にて手作業で行われることとなる。そのため、迅速さが要求される水中においても容易且つ簡便に隙間sの寸法を構成し得るように、固定位置調整部62を、台座2に取り付けたボルト柱621とナット622とを有するものとし、防護ネット取付部材61を取付部材本体611とボルト柱621に支持され得る被支持部612とによって構成したものとしている。
【0034】
具体的には、被支持部612と台座2との間を所定寸法隔てて介在し得るスペーサ623を有することにより、迅速且つ正確に所定の寸法を有する隙間sを形成することができるものとなっている。そしてこのスペーサ623に、ボルト柱621に螺合し得る雌ねじ部623aを設けているので、スペーサ623自体を好適に位置決めするとともに、更に確実に防護ネット取付部材61を固定し得るものとなっている。
【0035】
また本実施形態では、被支持部612を、一端を開放させた形状を有する挟持部として機能させているため、防護ネット取付部材61の固定位置の調整作業や、防護ネット5の着脱作業中に被支持部が適宜傾斜、移動することによるボルト柱621との相対位置の移動を好適に許容し得るものとなり、防護ネット取付部材61の固定位置の調整や、防護ネット5の着脱をさらに迅速に行うことを可能にしている。
【0036】
また、柱状部材3を増殖部1の周囲に複数設けたものとし、固定位置調整部62を、複数の柱状部材3近傍にそれぞれ複数設け、防護ネット取付部材61を、ボルト柱621間に架設して設けている。そうすることにより、隙間形成手段6を防護ネット5に対する下枠として機能させて確実に防護ネット5が増殖部1を被覆した状態で位置決めし得るものとなっている。
【0037】
そして4本設けた柱状部材3の上端に、当該柱状部材3間を着脱可能に架設する上枠部材4を設けているので、溶接の工程・作業を回避しつつ柱状部材3の強度を好適に向上させたものとなっている。また、防護ネット5を確実に取り付ける構成として、上枠部材4を、結束帯tによって防護ネット5を固定することにより、防護ネット固定部として機能させた態様としている。
【0038】
特に本実施形態では、防護ネット5を柱状部材3には直接固定せずに、上枠部材4及び防護ネット取付部材61のみを結束帯tを用いて固定することにより、柱状部材3に支持させた状態で取り付けているので、柱状部材3と防護ネット5とを直接固定する態様に比べ、水流等による強い水平方向の力を受けて柱状部材3と防護ネット5とが擦れて損傷したり、結束帯tが破損したりすることを有効に回避し得たものとなっている。
【0039】
そして本実施形態に係る防護ネット装置Xは、防護ネット5を確実に取り付けるために、周回部52の下側部分を一体に構成することによって、柱状部材3を被覆する態様とすることにより取り付ける袋形状を構成したものとしている。また具体的には、防護ネット5を、複数の柱状部材3の外側を一体に周回し得る周回部52と、周回部52に連続し複数の柱状部材3の上側を覆う上面部51とを有するものとして、好適に袋状に構成する態様を実現している。さらには磯根資源や藻類の収穫など、防護ネット5内の作業を好適に行うためには、周回部52に、防護ネット5の内外を一部連通させ得る連通窓521を設けている。しかも斯かる作業をさらに好適に行う為、周回部52における対向する位置に、一対の連通窓521を設けている。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0041】
例えば、柱状部材は複数であるものに限定されることはなく、例えば一本の柱状部材の上端を頂点として錐状に防護ネットを取り付けたものであっても良い。さらに柱状部材は直立したものに限られず、例えば屈曲・湾曲したものなど、種々の形状をなすものであってもよい。
【0042】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る防護ネット装置の外観図。
【図2】同実施形態に係る構成説明図。
【図3】同上。
【図4】同上。
【図5】同実施形態に係る要部説明図。
【図6】同実施形態に係る作用説明図。
【図7】同上。
【符号の説明】
【0044】
1…増殖部、
2…台座
3…柱状部材
4…上枠部材
42…防護ネット固定部(横架部)
5…防護ネット
51…上面部
52…周回部
521…連通窓
6…隙間形成手段
61…防護ネット取付部材
611…取付部材本体
612…被支持部、挟持部(被支持部)
62…固定位置調整部
621…ボルト柱
622…ナット
623…スペーサ
623a…雌ねじ部
X…防護ネット装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アワビやウニ等の磯根資源の稚体や藻類等を生育又は増殖させる増殖部と、
当該増殖部を支持する台座と、
当該台座に立設した柱状部材と、
前記柱状部材に位置決めされ増殖部を被覆し得る防護ネットと、
防護ネットの下端を取り付ける防護ネット取付部材及び当該防護ネット取付部材の固定位置を上下方向に所望寸法移動させ得る固定位置調整部を有し、前記防護ネットと前記台座との間に隙間を形成し得る隙間形成手段とを少なくとも具備していることを特徴とする防護ネット装置。
【請求項2】
前記固定位置調整部を、前記台座に取り付けたボルト柱とナットとによって構成し、前記防護ネット取付部材を、前記防護ネットを取り付ける取付部材本体と前記ボルト柱に支持され得る被支持部とによって構成している請求項1記載の防護ネット装置。
【請求項3】
前記固定位置調整部を、前記被支持部と前記台座との間を所定寸法隔てて介在し得るスペーサを更に有するものとしている請求項2記載の防護ネット装置。
【請求項4】
前記スペーサを、前記ボルト柱に螺合し得る雌ねじ部を有するものとしている請求項3記載の防護ネット装置。
【請求項5】
前記被支持部を、一端を開放させた形状を有する挟持部としている請求項3又は4記載の防護ネット装置。
【請求項6】
前記柱状部材を前記増殖部の周囲に複数設けたものとし、
前記固定位置調整部を、前記複数の柱状部材近傍にそれぞれ複数設け、前記防護ネット取付部材を、前記ボルト柱間に架設して設けている請求項3、4又は5記載の防護ネット装置。
【請求項7】
前記複数の柱状部材の上端に、当該柱状部材間を着脱可能に架設する上枠部材を設けている請求項6記載の防護ネット装置。
【請求項8】
前記上枠部材を、前記防護ネットを固定する防護ネット固定部を有するものとしている請求項7記載の防護ネット装置。
【請求項9】
前記防護ネットを、前記複数の柱状部材に対して開放させている請求項6、7又は8記載の防護ネット装置。
【請求項10】
前記防護ネットを、前記複数の柱状部材の外側を一体に周回し得る周回部と、前記周回部に連続し前記複数の柱状部材の上側を覆う上面部とを有するものとしている請求項6、7、8又は9記載の防護ネット装置。
【請求項11】
前記周回部を、当該防護ネットの内外を連通させ得る連通窓を有するものとしている請求項10記載の防護ネット装置。
【請求項12】
前記連通窓を、それぞれ対向する位置に一対設けたものとしている請求項11記載の防護ネット装置。
【請求項13】
前記防護ネットを、前記柱状部材を被覆することにより取り付ける袋形状を構成し得るものとしている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載の防護ネット装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−54557(P2008−54557A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234025(P2006−234025)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】