説明

防護柵の端末構造および袖キャップ

【課題】道路用防護柵の端末構造と、そのボルト接合に使用するナットを保持した袖キャップを提供する。
【解決手段】道路用防護柵の端末部は、支柱1と、同支柱1へボルト接合されるブラケット3と、ビームパイプ10、および袖パイプ8と、インナースリーブ7と、袖キャップ9とから成る。袖キャップ9は、同袖キャップ9の軸部9aにナット嵌め込み部9cを備え、同ナット嵌め込み部9cにはナット6が嵌め込まれている。袖キャップ9の軸部9aは、インナースリーブ7の中空部に挿入され、ナット嵌め込み部9cに嵌め込まれたナット6と同袖パイプ8のボルト孔とインナースリーブ7の対応するボルト孔7dとを合わせ、ブラケット3のボルト孔3d、3eをそれぞれ合わせ、各ボルト孔へ通したボルトを袖キャップ9のナット6へ締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビームパイプによる道路用防護柵の端末構造と、同端末構造を組み立てるボルト接合に使用するナットを保持可能な袖キャップの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビームパイプによる道路用防護柵には、横断歩道の外側や交差点などで構造の連続性を断つべき場所に設ける端末部がある。その端末部分の構造は、他の中間部分の構造とはかなり異なる。その上、通行人や車両等が端末構造へ衝突し負傷等する事故を未然に防止することに十分配慮した構成としなければならない。
一例として下記の特許文献1に記載され、図14、図15に例示したビームパイプによる防護柵(ガードパイプ)の端末構造は、貫通ボルト2とナット4で支柱1の前面部へ固定したブラケット30に対し、端側から袖パイプ20を嵌め込み、前記ブラケット30と袖パイプ20を垂直方向へ共通に貫通させたボルト40へ、下方からナット40aをねじ込み締結して支柱1への取付が行われている。
その後、前記袖パイプ20のインナースリーブ部20aの外周へビームパイプ10の端末部を嵌めて、ビームパイプ10と袖パイプ20のボルト接合が行われる。このボルト接合は、袖パイプ20の下面側へ予めボルト孔を設けると共に、同ボルト孔と一致する配置でインナースリーブ部20aの中空部内にナットを溶接又は半田付けで取付けておく。そして、袖パイプ20へ嵌めたビームパイプ10のボルト孔を前記袖パイプ20のボルト孔と一致させ、そのボルト孔へ上向きに通したボルト70を袖パイプ20の前記ナットへねじ込み締結することで行われる。
上記袖パイプ20の端面には、目視に明解な反射体10が取り付けられて、歩行者等の衝突事故を未然に防ぐ構成とされている。
【0003】
その他、特許文献2には、支柱の上端開口部を閉鎖するキャップが嵌め込み方式で取り付けられ、景観性と安全性を向上したキャップの取付構造が開示されている。
また、特許文献3には、一例としてガードレールに使用可能な管体の端部に、キャップを簡単に脱落のおそれもない状態に取り付けたキャップ取付構造が開示されている。
また、特許文献4には、歩行者が当たった際の衝撃を吸収するガードフェンスの端部取付具を用いて、支柱へ取り付けたブラケットへ接合する端部の取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−63611号公報
【特許文献2】特開平10−60845号公報
【特許文献3】特開平10−246038号公報
【特許文献4】特開2007−2528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の発明は、ビームパイプ10による防護柵の端末部分として、端末位置の支柱1の車道側へ固定したブラケット30に対し、端側からブラケット30へ通した袖パイプ20の内側のインナースリーブ部20aへビームパイプ10の端部を嵌めて、同袖パイプ2とビームパイプ1をボルト接合している。一方、ブラケット30へ通した袖パイプ20は、垂直方向下向きに共通に貫通させたボルト40へナット40aを締結して支柱1へ取付けた構成が開示されている。
しかし、前記ボルト40の頭はブラケット30の上面に突き出た突起物となっており、これに通行人等が当たると負傷する危険があるし、見た目の意匠性を考えると、ボルトの頭は目立たない方が良い。
一方、袖パイプ20とビームパイプ10をボルト接合する手段として、袖パイプ20の下面側へボルト孔を設けて、その中空部内に前記ボルト孔と一致する配置でナットを挿入し溶接又は半田付けで取付けている。しかし、通例の外径がφ40mm程度で、内径はφ32mm程度と小径である袖パイプ20(インナースリーブ部20a)の中空部内のかなり奥まった位置へ、ナットを精度良く溶接又は半田付けする作業は、手が入らないので技術的、作業的に容易なことではなく、手間とコストの負担が大きいのである。
【0006】
本発明の目的は、少なくともビームパイプの上面側に通行人等が当たると負傷しやすいボルト頭の如き突起物を一切を生じさせない構成とし、また、車道の外側を通る人の見える範囲はもとより、車道側から見た場合でも、ボルト頭やナット、或いはボルト軸部等の露出が極力少なく、且つ視界に入り難い構成として、見た目の意匠性、景観性に優れ、周辺環境との調和に優れた構成の防護柵端末構造を提供することである。
本発明の次の目的は、上記したように車道の外側から見ても車道側から見ても、ボルト頭やナット、或いはボルト軸部などのが突起物を極力露出させないで、視界に入り難い構成とする手段として、各ボルト接合に必要とされる個数のナットを、各ボルト孔の位置および向きに一致させた配置でインナースリーブの中空部内に簡単に設備できるナット保持可能な袖キャップを使用して構築した防護柵の端末構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る防護柵の端末構造は、車道に沿って設置される道路用防護柵の設置が途切れる端末部の端末構造であって、
前記端末部は、地面に立設された支柱1と、同支柱1へボルト接合されるブラケット3と、同ブラケット3へボルト接合されるビームパイプ10、および袖パイプ8と、前記ビームパイプ10および袖パイプ8の中空部内にそれぞれ別の端部を挿入するインナースリーブ7と、前記インナースリーブ7を挿入された袖パイプ8に嵌め込まれる袖キャップ9とから成り、
前記袖キャップ9は、同袖キャップ9の軸部9aにナット嵌め込み部9cを備え、同ナット嵌め込み部9cにはナット6が嵌め込まれており、
前記袖キャップ9の軸部9aは、前記袖パイプ8に挿入された前記インナースリーブ7の中空部に道路用防護柵の端末部側から挿入されており、前記ナット嵌め込み部9cに嵌め込まれたナット6と同袖パイプ8のボルト孔とインナースリーブ7の対応するボルト孔7dとが合致され、
前記ブラケット3は、前記ビームパイプ10および袖パイプ8を接合するパイプ受け部3cを備え、前記ブラケット3のパイプ受け部3cは、前記インナースリーブ7に挿入された前記ビームパイプ10および袖パイプ8と袖キャップ9の組み合わせが当てがわれ、
前記ブラケット3のパイプ受け部3cに設けられた少なくとも2個のボルト孔3d、3eと、ビームパイプ10の対応するボルト孔、並びに前記袖パイプ8のボルト孔がそれぞれ合致され、各ボルト孔へ外部から通したボルトの少なくとも1本13は袖キャップ9が保持するナット6へ締結され、他の1本14は同ビームパイプ10内部の前記インナースリーブ7内部でナット6に締結されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した防護柵の端末構造において、
袖キャップ9は、インナースリーブ7の一側へ挿入される軸部9aと、袖パイプ8の端部へ突き当たるエンドプレート部9bと、ナット6を嵌め込まれたナット嵌め込み部9cとで構成され、
前記エンドプレート部9bの外径は前記袖パイプ8の外径と略同一とされ、
前記ナット嵌め込み部9cは、前記袖パイプ8の対応するボルト孔と一致する配置および向きに、回り止め状態にナット6を保持可能で、ナット6が抜け外れないように保持する係止部9dを備えていることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した防護柵の端末構造において、
ナット嵌め込み部9cは、ナット6を横方向に嵌め込むための切り欠き部51aを有することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した防護柵の端末構造において、
エンドプレート部9bは、外側面に凹面部9fが形成され、該凹面部9fの奥端面に視認部材15が取付られていることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した防護柵の端末構造において、
インナースリーブ7とビームパイプ10を接合したボルト12と21、およびブラケット3と前記ビームパイプ10を接合したボルト14、並びに前記ブラケット3と袖パイプ8および袖キャップ9を接合したボルト13はそれぞれ、下面側から上向きないし車道の外側寄りの下面側から斜め上向き方向にねじ込まれていることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載した発明に係る袖キャップは、道路用防護柵に用いる管状部材の端部に装着される袖キャップであって、
管状部材の端末部側からその中空部へ挿入される軸部9aと、ナット6を嵌め込み可能なナット嵌め込み部9cとで構成されていることを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、請求項6に記載した袖キャップにおいて、
ナット嵌め込み部9cは、管状部材の対応するボルト孔と一致する配置および向きに、ナット6を回り止め状態に保持可能で、ナット6が抜け外れないように保持する係止部9dを備えていることを特徴とする。
請求項8に記載した発明は、請求項6又は7に記載した袖キャップにおいて、
ナット嵌め込み部9cは、ナット6の外径よりも若干大きく形成され、当該ナット嵌め込み部9cへ嵌め込まれたナット6は、当該ナット嵌め込み部9cの中で回らない程度に緩く保持されていることを特徴とする。
請求項9に記載した発明は、請求項1〜8のいずれか一に記載した袖キャップにおいて、
袖キャップ9は、管状部材の端部へ突き当たるエンドプレート部9bを備え、前記エンドプレート部9bの外径は管状部材の外径と略同一であることを特徴とする。
【0011】
請求項10に記載した発明は、請求項6ないし9のいずれか一に記載した袖キャップにおいて、
管状部材は、道路用防護柵のビームパイプ10の端部に取り付ける袖パイプ8であることを特徴とする。
請求項11に記載した発明は、請求項6ないし9のいずれか一に記載した袖キャップにおいて、
管状部材は、道路用防護柵のビームパイプ10であることを特徴とする。
請求項12に記載した発明は、請求項6ないし9のいずれか一に記載した袖キャップにおいて、
管状部材は、道路用防護柵の支柱1であることを特徴とする。
請求項13に記載した発明は、請求項10に記載した袖キャップにおいて、
袖パイプ8の中空部内にインナースリーブ7が挿入されており、
袖キャップ9は、前記インナースリーブ7の道路用防護柵の端末部側からその中空部内へ挿入する軸部9aを備えていることを特徴とする。
請求項14に記載した発明は、請求項6ないし8のいずれか一に記載した袖キャップにおいて、
ナット嵌め込み部9cは、ナット6を横方向に嵌め込むための切り欠き部51aを有することを特徴とする。
請求項15に記載した発明は、請求項13に記載した袖キャップにおいて、
袖キャップ9は、袖パイプ8の端部へ突き当たるエンドプレート部9bを備え、
エンドプレート部9bの外側面に凹面部9fが形成され、該凹面部9fの奥端面に視認部材15が取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜5に記載した発明に係る防護柵の端末構造は、少なくともビームパイプ10の上面側に通行人等が当たると負傷しやすい突起物は一切生じない構成であり、ビームパイプ10の上面に掴まり手を滑らせつつ伝い歩きした人、或いは不意にビームパイプの上面へ倒れかかった人が不用意に負傷等する心配がない。
また、防護柵の端末を形成する袖キャップ9のエンドプレート部9bの端面に視認部材15が貼り付けられているので、特に夜間に車道の外側や車道を通行する人や自転車、車両の運転者等に、防護柵の連続性が断たれた端末構造の存在を良く知らしめ、衝突事故等の発生を未然に防ぐ効果がある。しかも視認部材15は、袖キャップ9のエンドプレート部9bの外側端面に形成された凹面部9fの奥端面に取り付けているので、恒久的に脱落の心配がなく、道路メンテナンスの観点で有利である。
次に、本発明に係る防護柵の端末構造は、車道の外側から見ても、車道側から見ても、ボルト頭やナット、およびボルト軸部の露出が極力少なく、視界に入り難い構成であるから、見た目の意匠性および景観性に優れ、周辺環境と調和に優れている。
しかも前記のようにボルトの頭やナットおよびボルト軸部などのが突起物を露出させず、ボルトの頭が極力視界に入り難い構成とする手段として、各ボルト接合に必要とされる個数のナットを、種々な向きの各ボルト孔に一致させて用意できるナット保持部材5又は5’および袖キャップ9を使用して構築するから、作業性に優れ、精度、品質の確保に優れる。即ち、前記ナット保持部材5又は5’および袖キャップ9は、インナースリーブ7の中空部内へ単に嵌め込むだけの操作で簡単、確実に設備でき、防護柵の端末構造の構築作業がすこぶる容易であり、効率的に短工期で実施できる。
【0013】
また、請求項6〜15に記載した発明に係る袖キャップ9は、ナット6を保持可能な形状・構造であるから、保持したナット6へボルト13がねじ込まれ固定されることにより、当該袖キャップ9も移動しないように位置決めされる。したがって、車両が通行する際の振動や歩行者のいたずらなどで袖キャップ9が抜け外れたり取り除かれることを防ぐことができる。
袖キャップ9に埋めたナット6は、ナット嵌め込み部9cの孔壁との間で供回りはしない程度に緩く埋め込まれているから、ボルト接合時に差し入れた接合ボルト13とナット6の芯合わせとボルト締め作業をボルト13の操作のみで自在に行えるので、ネジ接合当初の位置合わせ(ネジ始端の探索ないし整合)も含めて的確に迅速に行うことができ、能率の良いボルト接合作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る防護柵の端末構造部分を車道側から見た立面図である。
【図2】同上の防護柵の端末構造部分を車道の外側から見た立面図である。
【図3】図1に示した防護柵の支柱上部の構成を示した端面図である。
【図4】図1に示した防護柵の支柱部分を拡大した平面図である。
【図5】図2中に指示したV−V線矢視の拡大した断面図である。
【図6】インナースリーブとこれに組み合わせた袖キャップおよびナット保持部材との関連する構成を示した正面図である。
【図7】インナースリーブとこれに組み合わせた袖キャップおよびブラケットとの関連する構成を示した正面図である。
【図8】図7の左側面図である。
【図9】A図は袖キャップを一部破断して示した正面図、B図はA図の左側面図、C図はA図のc−c線矢視断面図である。
【図10】ナット保持部材の斜視図である。
【図11】ナット保持部材の平面図である。
【図12】A図は図11に指示したa−a線矢視図、B図は同b−b線矢視の断面図、C図は同c−c線矢視の断面図、D図は同d−d線矢視の拡大した断面図である。
【図13】A図はナット保持部材の異なる実施例をナット保持前の状態で示した斜視図、B図はナットを保持させた状態で示した斜視図である。
【図14】従来の防護柵の端末構造部分を車道側から見て示した立面図である。
【図15】図14に示した防護柵の拡大した左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る防護柵の端末構造は、車道に沿って設置される道路用防護柵の設置が途切れる端末部の端末構造である。
前記端末部は、地面に立設された支柱1と、同支柱1へボルト接合されるブラケット3と、同ブラケット3へボルト接合されるビームパイプ10、および袖パイプ8と、前記ビームパイプ10および袖パイプ8の中空部内にそれぞれ別の端部を挿入するインナースリーブ7と、前記インナースリーブ7を挿入された袖パイプ8に嵌め込まれる袖キャップ9とから成る。
前記袖キャップ9は、同袖キャップ9の軸部9aにナット嵌め込み部9cを備え、同ナット嵌め込み部9cにはナット6が嵌め込まれている。
前記袖キャップ9の軸部9aは、前記袖パイプ8に挿入された前記インナースリーブ7の中空部に道路用防護柵の端末部側から挿入されている。前記ナット嵌め込み部9cに嵌め込まれたナット6と同袖パイプ8のボルト孔とインナースリーブ7の対応するボルト孔7dとが合致される。
前記ブラケット3は、前記ビームパイプ10および袖パイプ8を接合するパイプ受け部3cを備え、前記ブラケット3のパイプ受け部3cは、前記インナースリーブ7に挿入された前記ビームパイプ10および袖パイプ8と袖キャップ9の組み合わせが当てがわれる。
前記ブラケット3のパイプ受け部3cに設けられた少なくとも2個のボルト孔3d、3eと、ビームパイプ10の対応するボルト孔、並びに前記袖パイプ8のボルト孔がそれぞれ合致され、各ボルト孔へ外部から通したボルトの少なくとも1本13は袖キャップ9が保持するナット6へ締結され、他の1本14は同ビームパイプ10内部の前記インナースリーブ7内部でナット6に締結されている。
【0016】
袖キャップ9は、インナースリーブ7の一側の中空部内へ嵌め込まれる軸部9aと、袖パイプ8の端部へ突き当たるエンドプレート部9bと、および同袖パイプ8にで嵌め込まれる段状嵌め部9gとで構成され、前記エンドプレート部9bの外径はビームパイプ10の外径と略同一とされている。
前記ナット嵌め込み部9cは、前記袖パイプ8の対応するボルト孔と一致する配置および向きに、回り止め状態にナット6を保持可能で、ナット6が抜け外れないように保持する係止部9dを備えている。
ナット嵌め込み部9cは、ナット6を横方向に嵌め込むための切り欠き部51aを有する。
エンドプレート部9bは、外側面に凹面部9fが形成され、該凹面部9fの奥端面に視認部材15が取付られている。
インナースリーブ7とビームパイプ10を接合したボルト12と21、およびブラケット3と前記ビームパイプ10を接合したボルト14、並びに前記ブラケット3と袖パイプ8および袖キャップ9を接合したボルト13はそれぞれ、下面側から上向きないし車道の外側寄りの下面側から斜め上向き方向にねじ込まれている。
袖キャップは、道路用防護柵に用いる管状部材の端部に装着されるのであり、管状部材の端末部側からその中空部へ挿入される軸部9aと、ナット6を嵌め込み可能なナット嵌め込み部9cとで構成されている。
ナット嵌め込み部9cは、管状部材の対応するボルト孔と一致する配置および向きに、ナット6を回り止め状態に保持可能で、ナット6が抜け外れないように保持する係止部9dを備えている。
袖キャップ9は、管状部材の端部へ突き当たるエンドプレート部9bを備え、前記エンドプレート部9bの外径は管状部材の外径と略同一である。
【実施例1】
【0017】
先ず請求項1〜7に記載した発明に係る防護柵の端末構造を、図示した実施例に基づいて説明する。
図1〜図5は、本発明による防護柵の端末構造の実施例を示している。即ち、防護柵の端末位置に立てられた支柱1へ車道の外側から車道側に向かって水平方向に貫通させたボルト2を、同支柱1の車道側へ配置したブラケット3の固定部分3aのボルト孔へ通し、同ボルト2のネジ軸へねじ込んだナット4を締結してブラケット3が支柱1へ取り付け固定されている。なお、前記ボルト2およびナット4は、支柱1の上端へ被せたキャップ11の取付けにも兼用されている。また、ボルト2の頭2aは、支柱1の外面への出っ張り量が可及的に少ない平頭に形成されている。
【0018】
この防護柵(ガードパイプ)の主要構成部材であるビームパイプ10は、一例を図6に示した端末構造用のインナースリーブ7を使用して、ブラケット3へ、ひいては支柱1への取付けが行われている。
本発明による防護柵の端末構造の特徴は、上記インナースリーブ7の一側、つまり図6の右側の約半分の中空部内に、図10と図11に一例を示した構成のナット保持部材5が嵌め込まれ、同ナット保持部材5に保持させたナット6をインナースリーブ7の該当する各ボルト孔7a〜7cと合致させて、それぞれ以下のボルト接合を行っていることである。
先ず同じく図6の右側のインナースリーブ外周部に一端部を嵌めたビームパイプ10の各ボルト孔がインナースリーブ7の対応するボルト孔7a〜7cと合致され、このビームパイプ10をインナースリーブ7と接合するべきボルト孔7a、7bへ外側から内向きに通したボルト12(図5参照)を、ナット保持部材5の対応するナット6へねじ込み締結してビームパイプ10とインナースリーブ7の接合が行われている。
【0019】
ここで、図10と図11に示したナット保持部材5の構成、作用について説明する。 このナット保持部材5の外周面の形状は、上記インナースリーブ7の中空部内へ挿入されると、同インナースリーブ7の内面へ内側から接して、同インナースリーブ7の管軸に対して直交する方向(周方向)および管軸方向への移動を制限する位置決め手段を、以下の構成で備えている。
このナット保持部材5の外周面には、上記インナースリーブ7のボルト孔7a〜7c(図6、図7参照。)と一致する配置で、ナット6を回り止め状態に嵌め込み保持させるナット嵌め込み部51が必要数設けられている。このナット嵌め込み部51は、嵌め込まれたナット6が抜け外れないように保持する係止部53を口部に備えている。このナット保持部材5は、インナースリーブ7の管軸方向及び周方向にいわゆる3次元方向に立体的な配置で、インナースリーブ7に設けられたボルト孔7a〜7cの個数および配置に対応する配置と向きで、必要数のナット6を保持させ得る長さ及び外径の成形部材50を主体として構成されている。
【0020】
因みに図6に示したインナースリーブ7の全長は約200mmで、その右側約半分の外周部へビームパイプ10を嵌めてボルト接合するため、当該インナースリーブ7には、図6に示したように、インナースリーブ7の右側約半分の中空部内へ上記のナット保持部材5を嵌め込む。更にその外周部へビームパイプ10を嵌めてボルト接合が行われる。前記ボルト接合の必要上、インナースリーブ7の右側約半分に前記ボルト接合のためのボルト孔7a〜7cが3個設けられ、他端側(末端側)にはブラケット3への取付けと、及び後述する袖パイプ8並びに袖キャップ9の接合を目的とする1個のボルト孔7dが設けられている
【0021】
ナット保持部材5の主体である成形部材50の外周面は、上述したようにインナースリーブ7の内周面へ接して、同インナースリーブ7の管軸に対し直交する方向及び管軸方向への移動が制限される形状とされているが、インナースリーブ7の内周面へ接触して移動が制限される形状に限らない。後述する位置決め手段の機能を害さない程度のガタを有する形状であっても良い。図示した袖キャップ9および成形部材50は、大量生産に適して安価に軽く製造でき、取り扱いが容易であるように、熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂、例えばフェノール樹脂やエポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等々を使用して成形する。或いは低・中発泡ないし高発泡のポリスチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等で成形して実施することもできる。非発泡の合成樹脂製として実施することもできる。また、木製や金属製として製作し実施することもできる。
【0022】
上記成形部材50には、上記インナースリーブ7に設けられたボルト孔7a〜7cと合致する配置で、ナット6を回り止め状態に嵌め込みむナット嵌め込み部51が同数設けられている。
具体的には図10と図11に示したとおり、成形部材50においてナット6を保持させるべき位置に、ナット嵌め込み用の孔が、ナット嵌め込み部51として同成形部材50の中心線と直交する方向へ貫通する形態で設けられている。前記ナット嵌め込み部51は、嵌め込んだナット6をボルト接合の作業時に共回りしない程度にゆるく固定する形状、大きさに成形されている。ナット嵌め込み部51を貫通孔形状に設けた理由は、成形部材50の使用材料量を減量化し、軽量化する肉盗みにより製造原価を引き下げるためである。ナット嵌め込み部51は、図示した正六角形のナット6を楽に挿入でき、かつ同ナット6へ接合するボルトの先端で多少ぐらつかせられる余裕をもつ状態に保持させるべく、以下のように構成されている。
【0023】
このナット嵌め込み部51はナット6の外径よりも若干大きく形成され、成形部材50の外周面からナット6の高さ相当の寸法だけ入った内部に、ナット6の底面を座らせる段部52が形成されている。ナット嵌め込み部51へ嵌め入れたナット6は、その底面を前記段部52へ座らせて回り止め状態に保持させた構成である。したがって、前記段部52より以深の孔を貫通孔形状で設ける大きさと形状は、ナット6へねじ込まれたボルトの先端が貫通孔の孔壁へ当たることが無く、そして、成形部材50の使用材料量の減量化と軽量化の目的を達する肉盗みの必要に応じた形態に形成する。一方、前記段部52へ座ったナット6の上面は、同成形部材50の外周面よりも少し沈み込み、インナースリーブ7の中空部内への挿入に支障とならない状態にナット嵌め込み部51内に嵌め込まれ保持される。
【0024】
上記のナット嵌め込み部51内へ挿入したナット6が不用意に浮上して抜け外れる不都合を防ぐため、ナット保持部材5には、ナット6の上面を押さえる係止部53が、次のように設けられている。図10と図11および図12Cによれば、ナット嵌め込み部51の入口部分における六角形の一つの辺の中央部位に、係止部53が成形部材50の構成材料を弾性変形可能な形状に一体成形した構成で設けられている。したがって、ナット6は、ナット嵌め込み部51の入口部分に在る弾性変形可能な係止部53を押し退けてナット嵌め込み部51の中へ挿入すると、直ちに係止部53が働いて同ナット6を止め、当該ナット6が不用意に浮上したり抜け外れない状態に保持される。しかし、この係止部53を適度に押しのけることにより、用済みのナット6は簡単に抜き外して回収できる。
【0025】
次に、このナット保持部材5を、上述したインナースリーブ7の中空部内へ挿入した際に、保持させた各ナット6を、インナースリーブ7の対応するボルト孔7a〜7c(図6参照)と合致する位置へきちんと機械的に位置決めする手段が、成形部材50の外周面に次のように設けられている。
図12Dに拡大して示したとおり、ナット保持部材5において、成形部材50の長さ方向の中央部に位置するナット嵌め込み部51の外周部位に、インナースリーブ7の長手方向へ一定幅の板状に突き出るスライドガイド54が、成形部材50の材料で一体成形した突部として設けられている。
このスライドガイド54は、インナースリーブ7の管壁の長手方向に連続するように形成された開口隙間7f(通例、この開口隙間7fは帯鋼板を丸めてインナースリーブ7を成形する際に発生する目地隙間として形成される。)へ通して挿入する。かくすると、当該ナット保持部材5を、インナースリーブ7の中空部内で周方向(管軸方向と直交する方向)へは回転しない状態に位置決めする。このスライドガイド54は、インナースリーブ7の開口隙間7fへ嵌めて通すことが容易で確実な形状、大きさの突片部として設けられる。
【0026】
次に、ナット保持部材5の上記スライドガイド54を、インナースリーブ7開口隙間7fへ嵌めて中空部内へ挿入した場合に、同インナースリーブ7の管軸方向の奥行き位置を決める手段である位置決めストッパ55が、やはり成形部材50の外周面へ突き出る凸部として上記スライドガイド54の近傍位置に設けられている(図10と図12D参照)。一方、インナースリーブ7には、図6と図12Dに示したように、その中空部内へ挿入したナット保持部材5の各ナット6が、インナースリーブ7の対応するボルト孔7a〜7cと合致する位置へ到達すると、前記位置決めストッパ55が挿し入れられて止まる位置決め部7eが、本実施例では丸孔として設けられている。従って、位置決めストッパ55が位置決め部7eへ挿し入れられて止まると、その時点で丁度、ナット保持部材5の管軸方向への位置決めが行われたことになる。
図12Dに示す実施例では、位置決めストッパ55は、上記スライドガイド54を設けたナット嵌め込み部51を形成する貫通孔の出口側口縁から成形部材50の外周面へ突き出る突部として、やはり成形部材50の材料により一体的に形成された構成を示している。
したがって、ナット保持部材5をインナースリーブ7の中空部内へ挿入するに際しては、上記スライドガイド54を開口隙間3bへ嵌めて単に押し込み挿入するだけでよい。そうしてナット保持部材5の上記位置決めストッパ部55が位置決め部7eへ挿し入れられて止まる手応えを感じて手を離すと、ナット保持部材5の各ナット6はインナースリーブ7の対応するボルト孔7a〜7cと合致している。
【0027】
なお、図6と図12Dに示したように、インナースリーブ7の位置決め部7eを貫通孔として設けた場合、この位置決め部7eへ挿し入れる位置決めストッパ55は、インナースリーブ7の外側からドライバー等で押すと弾性変形する形状、構造とするのが好ましい。そのように構成すると、インナースリーブ7に設けた位置決め部7eたる孔へ外部から押し入れたドライバー等で位置決めストッパ55を押し込むと、位置決め部7eから内方へ押し外すことが容易に可能である。よって、用済みとなったナット保持部材5は、インナースリーブ7から簡単に抜き外して回収できる。
【0028】
次に、図10と図11とに示したナット保持部材5には、インナースリーブ7の中空部内へ挿入する作業、又は逆に用済みになったナット保持部材5を引き抜く作業を容易にする手段として、ナット保持部材5の両端部に掴み部56が設けられ、更に掴み部56の先端部の上下両面に、指先で掴みやすく又は滑り難くするグリップエンド56aが形成されている。したがって、ナット保持部材5をインナースリーブ7の中空部内へ挿入する作業、又は引き抜く作業時には、前記掴み部56を指先でしっかりと掴んで行うことができ、インナースリーブ7の中空部内への出し入れ操作を簡単、確実に容易に行うことができる。
なお、図12Aに示した掴み部56の凹み56bは、ナット保持部材5の両端の掴み部56の一方にのみ設けられている。この凹み56bの意義は、インナースリーブ7に設けられたボルト孔7a〜7cの配置に対し、ナット保持部材5に保持させた各ナット6の位置を合致させるためには、インナースリーブ7へ挿入する向きに勝手があることを理解されるであろう。よって、前記挿入方向の勝手を、目視と手で掴んだ際の感触で確認を容易にさせるために凹み56bが形成されている。
【0029】
次に、以上に説明したナット保持部材5とインナースリーブ7の構成を前提として構築する防護柵の端末構造について説明を進める。
上述したように、防護柵の端末位置に立てられた支柱1へ車道の外側から車道側に向かって水平方向に貫通させたボルト2を、同支柱1の車道側へ配置したブラケット3の固定部分3aのボルト孔3bへ通し、同ボルト2のネジ軸先端へねじ込んだナット4を締結してブラケット3が支柱1へ取り付け固定される。このブラケット3の前面には、ビームパイプ10の外径と略同じ曲率で凹面状に湾曲させたパイプ受け部3cが設けられていることは既に説明した。
その上で、上記インナースリーブ7における図6の右側約半分の中空部内へ上記のナット保持部材5が嵌め込まれ、同ナット保持部材5が保持したナット6をインナースリーブ7の各ボルト孔7a〜7cと合致させる。そして更に、インナースリーブ7の同じ右側部分の外周部へビームパイプ10の一側端部を嵌めて、その各ボルト孔をインナースリーブ7の前記ボルト孔と合致させる。しかる後に、インナースリーブ7とビームパイプ10を接合するボルト孔7a、7bへ外から内向きに通した2本のボルト12(図5参照)を、ナット保持部材5の対応するナット6へねじ込み締結することで、ビームパイプ10とインナースリーブ7のボルト接合が強固に行われる。
その上で、当該ビームパイプ10とインナースリーブ7の接合体を、上記したように先行して支柱1の車道側へ取付固定された上記ブラケット3のパイプ受け部3cの前面へ当てがい、同パイプ受け部2aへ設けてあるボルト孔3d(図7参照)とビームパイプ4の対応するボルト孔並びにインナースリーブ7のボルト孔7cとを合致させ、同パイプ受け部3aの背面側から前記ボルト孔3dへボルト14(図5)を挿入し、ナット保持部材5の対応するナット6へねじ込み締結することにより、ビームパイプ4とインナースリーブ7並びにブラケット2とを三位一体の関係で強固にボルト接合することができる。
【0030】
次に、上記インナースリーブ7の他端側(端末側)の外周部へ、ビームパイプ10と略同じ外径で短い袖パイプ8を嵌める。更に、同じ端末側の中空部内へ、下記する構成の袖キャップ9の軸部9aを嵌め込み(以上、図6参照)、同袖キャップ9が保持するナット6を利用して、インナースリーブ7と袖パイプ8並びに袖キャップ9がブラケット3へボルト接合され、図1と図4に示したようにビームパイプ10が一連に連なる意匠を感得させる端末構造を形成して、支柱1への取付け固定が行われている。
因みに、袖キャップ9の構成は、図9A〜Cに一例を示した通り、インナースリーブ7の中空部内へ嵌め込まれる軸部9aと、同インナースリーブ7の端部へ突き当たるエンドプレート部9bとで構成され、通例、上記ナット保持部材5と同様に合成樹脂等々で成形して実施される。前記エンドプレート部9bの外径は、ビームパイプ10の外径と略同一の大きさに形成されている。エンドプレート部9bの外側端面には浅い凹面部9fが形成され、該凹面部9fの奥端面に視認部材15が貼り付けられて、特に夜間の通行人や車両の運転者に防護柵の端末の存在を視覚に明瞭に知らしめて衝突事故の発生を未然に防ぐ構成とされている(図9A、B)。凹面部9fの奥端面に貼り付けられた視認部材15は、長期にわたり剥落する心配がなく、道路および車道の外側の保守管理に手間要らずで有益である。
前記軸部9aに、インナースリーブ7の端末寄りに位置するボルト孔7dと一致する配置および向きに、ナット6を回り止め状態に嵌め込み保持させる1個(ただし、1個の限りではなく、用途に応じて必要数設けることができる。)のナット嵌め込み部9cが設けられている。更に、このナット嵌め込み部9cへ嵌め込まれたナット6が抜け外れないように保持する係止部9dを、例えば上記ナット保持部材5の係止部53と同様に適度な弾性変形が可能な構成で備えている。前記ナット嵌め込み部9cは肉盗みの目的で貫通孔として形成され、ナット嵌め込み部9cの奥部にナット14の底面を座らせる段部9eを設けている構成はそれぞれ、上記ナット保持部材5と同じ考えに立脚している。
【0031】
上記構成の袖キャップ9を用い、上記インナースリーブ7の先端側(防護柵の端末側)の外周部へ嵌めた短い袖パイプ8を、ブラケット3とボルト接合して端末構造を完成する組み立ては次のように行う。
上記したように支柱1の車道側へ取り付けたブラケット3のパイプ受け部3cへ、上記インナースリーブ7とビームパイプ10の接合体を先行してボルト接合(実質は仮止め)した後に、同インナースリーブ7の端末側の外周部へ短い袖パイプ8を嵌める。また、同インナースリーブ7の中空部内へ袖キャップ9の軸部9aが嵌め込まれる。そして、各々のボルト孔およびナット6の向きと位置を、パイプ受け部3cの該当するボルト孔3e(図7参照)と合致させた上で、パイプ受け部3cのボルト孔3eを通じてその背面側から挿入したボルト13(図5)を、袖キャップ9が保持するナット6へねじ込み締結することにより、袖パイプ8および袖キャップ9がインナースリーブ7と共にブラケット3へボルト接合され、ひいては支柱1への取付け固定がやはり三位一体的に行われる。
上記のようにしてブラケット3へボルト接合されたビームパイプ10と袖パイプ8との接合箇所を表す突き合わせ目地21は、図1と図4および図5に示したように、たった1本形成されるだけであるから、従前は図14に示したようにブラケット30が必ず露出していた構成に比較すると、シンプルな意匠的外観を呈するのである。
【0032】
次に、上記したように支柱1を水平方向に貫通させたボルト2の他端(ネジ軸)および同他端へねじ込み締結したナット4を車道の外側を歩く通行人等の視界から覆い隠し、また、ブラケット3の固定部分3aから上記パイプ受け部3cへ至る部分に形成された隙間部分を塞ぐ手段として、下記のナットカバー17が使用されている(図3、図5参照)。
即ち、図示したブラケット3の構造は、図7と図8に示したとおり、上記の貫通ボルト2とナット4で支柱1へ固定された固定部分3a(図3も参照)の上辺部位から車道側へ若干の上り傾斜で迂回する繋ぎ部分3fを経て車道側へ突き出されたパイプ受け部3cへ至る構成であり、前記貫通ボルト2の軸部先端とナット4を繋ぎ部分3fで上面側を覆う構成である。しかし、図3のようにビームパイプ10の管軸と直角方向(側面方向)に見ると、前記貫通ボルト2の軸部先端とナット4は、固定部分3aとパイプ受け部3cとが形成する間隙部分へ露出して丸見えの状態となる。
そこで上記の丸見え状態を覆い隠す手段として、本実施例では、側面形状が上記ブラケット3の固定部分3aとパイプ受け部3cとの間に形成された上記側面方向に見える間隙部分の形状にほぼ等しい形態で、下向きにコの字形状をなすナットカバー17が使用されている。即ち、上記の貫通ボルト2を通す以前に、予めナット4の平行な2辺を両側面で回り止め状態に保持したナットカバー17が前記間隙部分へ横方向から挿入され、ナット4がボルト2のねじ込みを待つ状態とされる。このときナットカバー17に平行な2辺を両側面で保持されるにすぎないナット4が下方へ脱落すること防ぐ手段として、ブラケット3における固定部分3aの下辺を略V字形状に折り返したフック部3hがナット4の下面へ当たって支持する。前記の状態で待機するナット4に対して、ボルト2が支柱1を貫通され前記回り止め状態のナット4へねじ込まれる。よって、ブラケット3のボルト2による取付け固定は容易に確実な作業として行われる。かくして固定部分3aとパイプ受け部3cとの間に形成される側面方向に見た間隙部分がナットカバー17により塞がれるので、貫通ボルト2の軸部先端とナット4が目隠しされることはもとより、当該間隙部分へ異物が詰め込まれる不都合の防止にも役立つのである。
【0033】
上記したように構成される本発明による防護柵の端末構造は、図1〜図5に示した通り、ビームパイプ10とインナースリーブ7を接合したボルト12、およびビームパイプ10をブラケット3へ接合したボルト14、並びにブラケット3と袖パイプ8および袖キャップ9を共通に接合したボルト13はそれぞれ、車道の外側寄りの下面側から上向きないし斜め上向き方向にねじ込まれている。したがって、この防護柵に沿って車道の外側を進む歩行者が通常の下向き目線で見た場合、および車道を走行する車両の運転者等が水平ないし下向き目線で見た場合に、各ボルト12、13、14は殆ど視認されないか極僅かにボルト頭が見える程度でしかなく、突起物の存在感を感得させない。よって、スマートで意匠的美感に優れるし、防護柵のスマートな外観は周辺の環境に自然に溶け込んで調和するという効果がある。もとより、ビームパイプ10及び袖パイプ8の上面部にボルト頭等の突起物が露出しないということは、該ビームパイプ10を掴みつつ手を滑らせる歩行者の手に思いがけない負傷や痛みを与えることはないし、仮に衝突などした場合でも負傷等する危険性が低い。
さらに上述した効果を一層盛り上げる手段として、本実施例で使用する各ボルト12、13、14の頭はそれぞれ、表面への出っ張りが少ないように必要最少限度に薄く形成した平頭に構成されている。
【実施例2】
【0034】
次に、図13A、Bは、上記したインナースリーブ7とビームパイプ10及びブラケット3をボルト接合するためインナースリーブ7の中空部内へ挿入して使用するナット保持部材の異なる実施例2を示している。
このナット保持部材5’の基本的構成は、上記実施例1のナット保持部材5とほとんど共通する。
即ち、ナット保持部材5’の外周面の形状は、上記インナースリーブ7の内面へ内側から接して、同インナースリーブの管軸に対して直交する方向への移動が制限される形状であり、且つ当該ナット保持部材5’に保持されたナット6を、インナースリーブ7のボルト孔7a〜7cと当該インナースリーブの管軸方向及び管軸と直交する周方向に関して位置を一致させる位置決め手段を備えた形状とされている。或いはまた、上記実施例1のナット保持部材5で説明した管軸方向及び管軸と直交する周方向に関する2種類の位置決め手段54、55を備えている。
このナット保持部材5’も、外周面には上記インナースリーブ7のボルト孔7a〜7cと一致する配置で、ナットが回り止め状態に嵌め込まれ保持されるナット嵌め込み部51が設けられている。このナット嵌め込み部51に嵌め込まれたナット6が抜け外れないように保持する係止部53も備えている。
ただし、本実施例2のナット保持部材5’の場合は、ナット6が回り止め状態に嵌め込まれるナット嵌め込み部51の構成として、ナット6は孔の中心線方向へ挿入する構成ではなく、ナット6を横方向に嵌め込む切り欠き部51aを有する構成を特徴とする。そのため、挿入したナット6が抜け外れないように保持する係止部53の構成は、前記切り欠き部51aを通じてナット6を横方向に嵌め込むことを許容する下向きの段部構造として切り欠き部51aの奥側位置に形成されている。
【0035】
なお、上記図9に示した袖キャップ9に関しても、その軸部9aに設けられたナット嵌め込み部9cを、ナットが横方向に嵌め込まれる切り欠き部を有する構成として実施することができる。従って、この場合の係止部9dの構成は、上記ナット保持部材5’と同様に、前記切り欠き部を通じてナット6を横方向に嵌め込むことを許容する下向きの段部構造として形成される。
【0036】
また、本発明の袖キャップ9を適用する相手は、袖パイプ8に限らない。管状部材の端部であれば、上記ビームパイプ10などにも取り付け可能である。たとえば上記実施例とは異なるが、袖パイプ8やインナースリーブ7を用いず、道路用防護柵のビームパイプ10の端部に直接取り付けることもできる。この場合、支柱1とビームパイプ10の接合は、やはり袖キャップ9が保持するナット6を利用して行い、支柱1とビームパイプ10を直接、又はブラケット3を介して間接的にボルト13を通し、袖キャップ9が保持するナット6へボルト13をねじ込んで接合することができる。
【0037】
また、本発明の袖キャップ9は、管状部材の端部であれば、支柱1などにも取り付けることができる。たとえば上記実施例とは異なるが、袖パイプ8やインナースリーブ7を用いず、道路用防護柵の支柱1の上端部に直接取り付けることもできる。この場合、支柱1のキャップとして本発明の袖キャップ9を取り付けると、支柱1の内側にナット6を保持させることができる。よって、支柱1とビームパイプ10、又は支柱1とブラケット3をボルト13、14で固定する際に、支柱1の内側に袖キャップ9で保持されたナット6へボルト13をねじ込んで固定することができる。つまり、車道の外側から支柱1を見た場合に、支柱1とビームパイプ10、又は支柱1とブラケット3を固定するボルトの頭部が露出しない構造で構成し実施することができる。
【0038】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。要するに、本発明は、その目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。
【符号の説明】
【0039】
1 支柱
2 ボルト
3 ブラケット
4 ナット
5、5’ ナット保持部材
6 ナット
7 インナースリーブ
7a〜7d ボルト孔
10 ビームパイプ
8 袖パイプ
9 袖キャップ
3a ブラケットの固定部分
3c パイプ受け部
3e、3d ボルト孔
12、13、14 ボルト
17 ナットカバー
7f インナースリーブの開口隙間
51 ナット嵌め込み部
51a 切り欠き部
53 ナットの係止部
54 スライドガイド(位置決め手段)
55 位置決めストッパ(位置決め手段)
7c 位置決め部
9a 袖キャップの軸部
9b 同エンドプレート部
9c ナット嵌め込み部
9f 凹面部
15 視認部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道に沿って設置される道路用防護柵の設置が途切れる端末部の端末構造であって、
前記端末部は、地面に立設された支柱と、同支柱へボルト接合されるブラケットと、同ブラケットへボルト接合されるビームパイプ、および袖パイプと、前記ビームパイプおよび袖パイプの中空部内にそれぞれ別の端部を挿入するインナースリーブと、前記インナースリーブを挿入された袖パイプに嵌め込まれる袖キャップとから成り、
前記袖キャップは、同袖キャップの軸部にナット嵌め込み部を備え、同ナット嵌め込み部にはナットが嵌め込まれており、
前記袖キャップの軸部は、前記袖パイプに挿入された前記インナースリーブの中空部に道路用防護柵の端末部側から挿入されており、前記ナット嵌め込み部に嵌め込まれたナットと同袖パイプのボルト孔とインナースリーブの対応するボルト孔とが合致され、
前記ブラケットは、前記ビームパイプおよび袖パイプを接合するパイプ受け部を備え、 前記ブラケットのパイプ受け部は、前記インナースリーブに挿入された前記ビームパイプおよび袖パイプと袖キャップの組み合わせが当てがわれ、
前記ブラケットのパイプ受け部に設けられた少なくとも2個のボルト孔と、ビームパイプの対応するボルト孔、並びに前記袖パイプのボルト孔がそれぞれ合致され、各ボルト孔へ外部から通したボルトの少なくとも1本は袖キャップが保持するナットへ締結され、他の1本は同ビームパイプ内部の前記インナースリーブ内部でナットに締結されていることを特徴とする、防護柵の端末構造。
【請求項2】
袖キャップは、インナースリーブの一側へ挿入される軸部と、袖パイプの端部へ突き当たるエンドプレート部と、ナットを嵌め込まれたナット嵌め込み部とで構成され、
前記エンドプレート部の外径は前記袖パイプの外径と略同一とされ、
前記ナット嵌め込み部は、前記袖パイプの対応するボルト孔と一致する配置および向きに、回り止め状態にナットを保持可能で、ナットが抜け外れないように保持する係止部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載した防護柵の端末構造。
【請求項3】
ナット嵌め込み部は、ナットを横方向に嵌め込むための切り欠き部を有することを特徴とする、請求項2に記載した防護柵の端末構造。
【請求項4】
エンドプレート部は、外側面に凹面部が形成され、該凹面部の奥端面に視認部材が取付られていることを特徴とする、請求項3に記載した防護柵の端末構造。
【請求項5】
インナースリーブとビームパイプを接合したボルト、およびブラケットと前記ビームパイプを接合したボルト、並びに前記ブラケットと袖パイプおよび袖キャップを接合したボルトはそれぞれ、下面側から上向きないし車道の外側寄りの下面側から斜め上向き方向にねじ込まれていることを特徴とする、請求項4に記載した防護柵の端末構造。
【請求項6】
道路用防護柵に用いる管状部材の端部に装着される袖キャップであって、
管状部材の端末部側からその中空部へ挿入される軸部と、ナットを嵌め込み可能なナット嵌め込み部とで構成されていることを特徴とする袖キャップ。
【請求項7】
ナット嵌め込み部は、管状部材の対応するボルト孔と一致する配置および向きに、ナットを回り止め状態に保持可能で、ナットが抜け外れないように保持する係止部を備えていることを特徴とする、請求項6に記載した袖キャップ。
【請求項8】
ナット嵌め込み部はナットの外径よりも若干大きく形成され、当該ナット嵌め込み部へ嵌め込まれたナットは、当該ナット嵌め込み部の中で回らない程度に緩く保持されていることを特徴とする。請求項6又は7に記載した袖キャップ。
【請求項9】
袖キャップは、管状部材の端部へ突き当たるエンドプレート部を備え、前記エンドプレート部の外径は管状部材の外径と略同一であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一に記載した袖キャップ。
【請求項10】
管状部材は、道路用防護柵のビームパイプの端部に取り付ける袖パイプであることを特徴とする、請求項6ないし9のいずれか一に記載した袖キャップ。
【請求項11】
管状部材は、道路用防護柵のビームパイプであることを特徴とする、請求項6ないし9のいずれか一に記載した袖キャップ。
【請求項12】
管状部材は、道路用防護柵の支柱であることを特徴とする、請求項6ないし9のいずれか一に記載した袖キャップ。
【請求項13】
袖パイプの中空部内にインナースリーブが挿入されており、
袖キャップは、前記インナースリーブの道路用防護柵の端末部側からその中空部内へ挿入する軸部を備えていることを特徴とする、請求項10に記載した袖キャップ。
【請求項14】
ナット嵌め込み部は、ナットを横方向に嵌め込むための切り欠き部を有することを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一に記載した袖キャップ。
【請求項15】
袖キャップは、袖パイプの端部へ突き当たるエンドプレート部を備え、
エンドプレート部の外側面に凹面部が形成され、該凹面部の奥端面に視認部材が取り付けられていることを特徴とする、請求項13に記載した袖キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−6904(P2011−6904A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151019(P2009−151019)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】