説明

防護用塗膜および防護用塗膜施工方法

【課題】金属系、コンクリート系、また合成樹脂系部材等の防錆、防蝕、電触、表面の保護を行うことができる防護用塗膜および防護用塗膜施工方法を提供する。
【解決手段】防護用塗膜は、構造物等の外表面および/または内表面上に、第1の合成樹脂製塗料21、繊維状布地または不織布22、第2の合成樹脂製塗料23が順次形成されている。前記繊維状布地または不織布は、最初に塗布された前記第1の合成樹脂製塗料によって前記部材上に貼着される。前記第2の合成樹脂製塗料は、前記繊維状布地または不織布内に塗り込まれて、防護用塗膜となる。前記防護用塗膜は、2層の合成樹脂製塗料の間にサンドイッチ状に前記繊維状布地または不織布が入っているため、構造物等の部材の硬さが強化され、傷が付かず、表面を保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属系、コンクリート系、また合成樹脂系部材等の防錆、防蝕、電触、表面の保護を行うことができる防護用塗膜および防護用塗膜施工方法に関するものである。特に、本発明の防護用塗膜および防護用塗膜施工方法は、塗膜とする塗料の硬さおよび前記部材の防護性を向上させることができる防護用塗膜および防護用塗膜施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板状、棒状、管、タンク、筐体、柱等の躯体部等の構築部材は、金属系、コンクリート系、また合成樹脂系部材等から構成されている場合があり、これらの表面の錆、電触、腐食、劣化、傷等を保護する防護用塗膜が塗布されている。また、前記構築部材は、合成樹脂部材を使用した管の場合であっても、水中の金属と電解質とにより電触が起こり、規定の強度を維持できないことがある。さらに、前記構築部材は、防護用塗膜を塗布して、長期間にわたり、規定の強度を保持する必要がある。しかし、前記防護用塗膜は、強度が高い部材であると、施工が困難であり、施工が簡単なものは、経年変化により劣化あるいは傷が付き、前記構築部材等の防護ができなくなるという欠点を有する。
【0003】
たとえば、特開平7−913号公報に記載された発明は、トンネルの内装板、橋梁用防護柵、道路柵、標識支柱等の道路関連製品、および建築物の内外装等を耐久性等に優れた塗装を行っている。前記発明は、金属体上に金属被膜を形成し、該金属被膜上にシリコーン化合物を主成分とする塗膜が形成された塗装金属体であって、前記金属被膜を、アルミニウムが50〜60重量%含有された亜鉛ーアルミニウム合金から形成することにより、該金属被膜に含有されたアルミニウムにより金属被膜とシリコーン化合物を主成分とする塗膜との付着性を向上させ、且つ安価な亜鉛により防錆効果を具備させている。
【特許文献1】特開平7−913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記部材は、その表面を保護する場合、合成樹脂製塗料を何重にも塗布する必要があった。前記何重もの合成樹脂製塗料は、経費が嵩むだけでなく、経年変化によって、剥がれ、傷が付き、錆の発生、あるいは、電触等の問題があった。前記部材が合成樹脂の場合であっても、防護用塗膜は、外部からの力または内部の物質あるいは塗膜の種類によって、電触が発生して、孔が開くという問題があった。
【0005】
本発明は、合成樹脂製塗料の強さだけでなく、部材の表面を堅固にして、経年変化によっても表面に傷が付かず、また、電触等の問題が発生することなく、施工が容易である防護用塗膜および防護用塗膜施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1発明)
第1発明の防護用塗膜は、部材の外表面および/または内表面に塗布された第1の合成樹脂製塗料と、前記第1の合成樹脂製塗料の表面に貼着された繊維状布地または不織布と、前記繊維状布地または不織布内に塗り込まれた第2の合成樹脂製塗料とから少なくとも構成されている。
【0007】
(第2発明)
第2発明の防護用塗膜は、第1発明の繊維状布地がガラス繊維製布地であることを特徴とする。
【0008】
(第3発明)
第3発明の防護用塗膜は、第1発明または第2発明の第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料がエポキシ樹脂系の2液硬化型接着剤からなることを特徴とする。
【0009】
(第4発明)
第4発明の防護用塗膜は、第1発明から第3発明の第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料がエポキシ樹脂およびコールタールに硬化剤を混入して硬化するものであることを特徴とする。
【0010】
(第5発明)
第5発明の防護用塗膜は、第1発明から第4発明の第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料が異なる性質の合成樹脂部材であることを特徴とする。
【0011】
(第6発明)
第6発明の防護用塗膜施工方法は、部材の外表面および/または内表面に第1の合成樹脂製塗料を塗布する第1の工程と、前記第1の合成樹脂製塗料の表面に繊維状布地または不織布を貼着する第2の工程と、前記繊維状布地または不織布内に第2の合成樹脂製塗料を塗り込む第3の工程とから少なくともなることを特徴とする。
【0012】
(第7発明)
第7発明の防護用塗膜施工方法は、第2の工程において、第1の合成樹脂製塗料が乾燥する前であることを特徴とする。
【0013】
(第8発明)
第8発明の防護用塗膜施工方法は、第3の工程において、第1の合成樹脂製塗料の乾燥後であることを特徴とする。
【0014】
(第9発明)
第9発明の防護用塗膜施工方法は、第3の工程において、第1の合成樹脂製塗料の半硬化後であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の防護用塗膜によれば、2層の合成樹脂製塗料の間にサンドイッチ状に繊維状布地または不織布が入っているため、硬さが強化され、傷が付かず、表面を保護し、非電触性、防護性、防錆性、および耐久性を高めることができる。
【0016】
本発明によれば、第1の合成樹脂製塗料がガラス繊維製布地の繊維の中に塗り込まれることにより、繊維そのものの強度を前記合成樹脂塗料により、より向上させて、防護用塗膜としての強度を高くすることができる。
【0017】
本発明によれば、第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料として、エポキシ樹脂系の2液硬化性接着剤を使用することにより、防護用塗膜が安価になるだけでなく、早く硬化させることができる。
【0018】
本発明によれば、第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料を異なる性質のものにして、酸に強くしたり、あるいは強度をより強くして、鉄部材または鉄系合金部材の表面の保護および電触、防錆、および合成樹脂部材の強化を果たすことが容易にできる。
【0019】
本発明によれば、合成樹脂製塗料をローラを介した簡単な手法を使用することができ、安価な施工が容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1発明)
第1発明の防護用塗膜は、たとえば、管、板状部材、棒状部材等、または、構造物、たとえば、タンク、筐体、柱等からなる金属系、コンクリート系、また合成樹脂系部材等の外表面および/または内表面上に、第1の合成樹脂製塗料、繊維状布地または不織布、第2の合成樹脂製塗料が順次形成されている。前記第1の合成樹脂製塗料は、前記管、板状部材、棒状部材等、または、構造物等の外表面および/または内表面に形成される。前記繊維状布地または不織布は、最初に塗布された前記第1の合成樹脂製塗料によって前記部材上に貼着される。
【0021】
前記第2の合成樹脂製塗料は、前記繊維状布地または不織布内に塗り込まれて、防護用塗膜となる。前記防護用塗膜は、2層の合成樹脂製塗料の間にサンドイッチ状に前記繊維状布地または不織布が入っているため、構造物等の部材の硬さが強化され、傷が付かず、表面を保護し、防錆性、防電触性、および耐久性を高めることができる。
【0022】
(第2発明)
第2発明の防護用塗膜は、繊維状布地として、ガラス繊維製布地を使用することにより、第1の合成樹脂製塗料がガラス繊維の中に入り易いだけでなく、ガラス繊維そのものの強度が高いため、防護用塗膜としての強度を高くすることができる。本発明は、合成樹脂製塗料およびガラス繊維のそれぞれの単独の強度を加算したものより、さらに強度を強くすることが可能である。
【0023】
(第3発明)
第3発明の防護用塗膜は、第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料として、エポキシ樹脂系の2液硬化型接着剤を使用することにより、安価であるだけでなく、早く硬化させることができる。
【0024】
(第4発明)
第4発明の防護用塗膜は、前記第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料として、エポキシ樹脂およびコールタールに硬化剤を混入したものを使用している。前記エポキシ樹脂およびコールタールは、安価な材料であり、前記繊維状布地または不織布とともに、部材の内外表面を強化するに十分な強度を有する防護用塗膜とすることができる。
【0025】
(第5発明)
第5発明の防護用塗膜は、第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料を異なる性質のものとすることができる。前記合成樹脂製塗料は、たとえば、酸に強い材料と強度の強い材料を組み合わせ、あるいは材料の強度と、施工のし易い部材、等公知または周知の材料から選択することができ、表面の保護および防錆等を果たすことが容易にできる。
【0026】
(第6発明)
第6発明の防護用塗膜施工方法において、第1の工程は、傷が付き易い部材の外表面または内表面の上に、エポキシ樹脂系硬化剤を含む第1の合成樹脂製塗料を塗布する。第2の工程は、前記第1の合成樹脂製塗料の上にガラス繊維のような繊維状布地または不織布を貼着する。第3の工程は、前記繊維状布地または不織布の凹凸内に第2の合成樹脂製塗料を塗り込む。前記第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料の間に前記繊維状布地または不織布が存在しているため、防護用塗膜としての強度を高めるだけでなく、施工が簡単にできる。また、前記第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料は、公知または周知の塗布方法によって塗ることができる。
【0027】
(第7発明)
第7発明の防護用塗膜施工方法は、第2の工程において、第1の合成樹脂製塗料が乾燥する前に繊維状布地または不織布を貼着する。前記繊維状布地または不織布は、特別の接着剤を使用することなく、部材の外表面または内表面の上に、安価に貼着することができる。
【0028】
(第8発明)
第8発明の防護用塗膜施工方法は、第3の工程において、第1の合成樹脂製塗料の乾燥後、すなわち、前記繊維状布地または不織布が第1の合成樹脂製塗料に貼着した後、前記繊維状布地または不織布の凸凹を利用して、前記凸凹内に第2の合成樹脂製塗料を塗り込むようにしている。前記繊維状布地または不織布は、内部に合成樹脂塗料が染み込むため、たとえば、構造物としての強度を向上させ、防錆および表面の保護を行うことがもできる。
【0029】
(第9発明)
第9発明の防護用塗膜施工方法は、第3の工程において、第1の合成樹脂製塗料の半硬化後で、また、多少接着力が残っている間に第2の合成樹脂製塗料を塗布して、互いの接着力を高めることができる。前記防護用塗膜施工方法は、第1の合成樹脂製塗料、繊維状布地または不織布、第2の合成樹脂製塗料が堅固に接着することができるため、経年変化による剥離あるいは電触等が少なくなる。
【実施例】
【0030】
図1は本発明の実施例で、タンクに防護用塗膜を形成した例であり、一部断面が拡大されて示されている。図1において、タンク11は、たとえば、鉄系部材111からなる有底円筒体(必要に応じて、上部に蓋等を設ける)で構成されている。前記タンク11は、鉄系部材111の外表面に防護用塗膜112、および内表面に防護用塗膜113が塗布されている。
【0031】
図2(イ)から(ハ)は図1における防護用塗膜の塗布順を説明するための断面図である。図2(イ)において、たとえば、鉄系部材111は、最初に、外表面に第1の合成樹脂製塗料21が塗布されている。前記塗布は、たとえば、第1の合成樹脂製塗料21をローラに付着した後、前記鉄系部材111の外(内)表面に転写する。前記塗布手段は、ローラ以外の通常の手段を採用することができる。
【0032】
図2(ロ)において、繊維状布地または不織布、好ましくはガラス繊維は、前記第1の合成樹脂製塗料21上に貼着される。前記合成樹脂製塗料21は、前記繊維状布地または不織布22の内部に浸入する。図2(ハ)において、前記繊維状布地または不織布22の上には、第2の合成樹脂製塗料23が塗り込まれる。前記第1の合成樹脂製塗料21および第2の合成樹脂製塗料23は、前記繊維状布地22がサンドイッチ状に上下方向から染み込む状態になり、素材自体の強度より丈夫にな防護用塗膜となる。前記防護用塗膜は、表面が強化されて傷が付かないように保護し、防錆性、防電触性、および耐久性を高めることができる。
【0033】
前記防護用塗膜は、第1の合成樹脂製塗料21が乾燥する前に前記繊維状布地22等を貼着することが望ましい。前記繊維状布地22等は、第1の合成樹脂製塗料21が乾燥した後では、貼着が困難になる。また、第2の合成樹脂製塗料23は、前記繊維状布地22等の上に塗布する際に、前記第1の合成樹脂製塗料21に濡れ性がある時点、乾燥前、あるいは、半硬化状態の間に塗布するのが望ましい。
【0034】
本発明の部材は、前記実施例のタンク11以外に、管、板状部材、棒状部材、筐体、柱等からなる構造物で、金属系、コンクリート系、また合成樹脂系部材等からなるものである。前記繊維状布地または不織布22は、ガラス繊維を使用すると、第1の合成樹脂製塗料21および第2の合成樹脂製塗料23が繊維の内部に入り易く、強度を向上させることができる。
【0035】
第1の合成樹脂製塗料21および第2の合成樹脂製塗料23は、たとえば、エポキシ樹脂系の2液硬化型接着剤、あるいは、エポキシ樹脂およびコールタールに硬化剤を混入したものを使用することができる。また、第1の合成樹脂製塗料21および第2の合成樹脂製塗料23は、前記エポキシ樹脂およびコールタールの種類を異なるようにすることができる。すなわち、第1の合成樹脂製塗料21および第2の合成樹脂製塗料23は、異なる素材を主成分とすることにより、塗布する対象となる部材、使用目的等に合った材料を組み合わせ、表面を所望の強度にすることができる。
【0036】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記本実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。たとえば、塗布方法、または部材の材質および形状、あるいは、合成樹脂製塗料の材質等は、公知または周知のものから任意に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例で、タンクに防護用塗膜を形成した例であり、一部断面が拡大されて示されている。(実施例1)
【図2】(イ)から(ハ)は図1における防護用塗膜の塗布順を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0038】
11・・・タンク
111・・・鉄系部材
112、113・・・防護用塗膜
21・・・第1の合成樹脂製塗料
22・・・繊維状布地または不織布
23・・・第2の合成樹脂製塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の外表面および/または内表面に塗布された第1の合成樹脂製塗料と、
前記第1の合成樹脂製塗料の表面に貼着された繊維状布地または不織布と、
前記繊維状布地または不織布内に塗り込まれた第2の合成樹脂製塗料と、
から少なくとも構成されている防護用塗膜。
【請求項2】
前記繊維状布地は、ガラス繊維製布地であることを特徴とする請求項1に記載された防護用塗膜。
【請求項3】
前記第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料は、エポキシ樹脂系の2液硬化型接着剤からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された防護用塗膜。
【請求項4】
前記第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料は、エポキシ樹脂およびコールタールに硬化剤を混入して硬化するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された防護用塗膜。
【請求項5】
前記第1の合成樹脂製塗料および第2の合成樹脂製塗料は、異なる性質の合成樹脂部材であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された防護用塗膜。
【請求項6】
部材の外表面および/または内表面に第1の合成樹脂製塗料を塗布する第1の工程と、
前記第1の合成樹脂製塗料の表面に繊維状布地または不織布を貼着する第2の工程と、
前記繊維状布地または不織布内に第2の合成樹脂製塗料を塗り込む第3の工程と、
から少なくともなることを特徴とする防護用塗膜施工方法。
【請求項7】
第2の工程は、第1の合成樹脂製塗料が乾燥する前であることを特徴とする請求項6に記載された防護用塗膜施工方法。
【請求項8】
第3の工程は、第1の合成樹脂製塗料の乾燥後であることを特徴とする請求項6に記載された防護用塗膜施工方法。
【請求項9】
第3の工程は、第1の合成樹脂製塗料の半硬化後であることを特徴とする請求項6に記載された防護用塗膜施工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−184259(P2009−184259A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27470(P2008−27470)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(501434878)
【Fターム(参考)】