説明

防錆フィルムとそれを用いた防錆包装方法

【課題】 防性寿命の長大化が図れるようにする。
【解決手段】 防錆剤5を含有しこれを外部に発散ないしは反応させる透過性樹脂フィルム1の片面に少なくともバリア蒸着層2を備えた防錆フィルム11とし、これを、透過性樹脂フィルム1を内側にして用い、防錆対象物3ないしは防錆対象部分を覆って密封し、透過性樹脂フィルム1に含有している防錆剤5を透過性樹脂フィルム1を通じ包装域内4に発散ないしは働かせて、防錆対象物3ないしは防錆対象部分の防錆を図るようにして、上記の目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過性樹脂フィルムに防錆剤を含有させて透過性樹脂フィルムを通じ外部に発散ないしは働かせて防錆を図る防錆フィルムと、それを用いた防錆包装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透過性樹脂フィルムに防錆剤を含有させて透過性樹脂フィルムを通じ外部に発散させて防錆を図る技術や防錆フィルムは既に知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。このような防錆剤としては気化性防錆剤ないしは昇華性防錆剤が一般的で、特許文献1は多くの例を挙げている。一方、特許文献2、3は気化性防錆剤を用いる技術を開示しながらも、特許文献2は特に、防錆剤として気化性のない水溶性ガラス粉末を単体で熱可塑性樹脂の含有させる金属包装用フィルムを開示しているし、特許文献3は特に、防錆剤として気化性のないp−ターシャリ・ブチル安息香酸金属塩を単独で熱可塑性樹脂に含有する金属防錆用の樹脂組成物を開示している。いずれにしても、防錆剤はそれを含有している樹脂材料の透過性を利用して防錆対象物の表面ないしはそのまわりの結露水などと反応して防錆作用をなすものである。
【特許文献1】特開2005−139317号公報
【特許文献2】特開平7−316314号公報
【特許文献3】特開平9−124383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、防錆フィルムは防錆対象物や防錆対象部分を覆って密封しておくだけで防錆が図れるので、油性系の防錆剤の場合のように材料、部品、製品などの防錆対象物や防錆対象部分に塗布する手間や、材料、部品、製品などの使用に際してそれを拭い取る手間が要らず、その採用が勢い広がっているし、用途も拡大している。中でも、エンジンブロックといった重量物やミサイルランチャーといった軍事機器なども対象となり高評価されている。しかし、軍事機器などは特に、長期間使用されず保存されたままになることが多々あるものの、防錆フィルムによる防錆作用の寿命は2、3年と短く、寿命に達する前の再包装が必須となっている。このような再包装は時期を逸すると防錆包装している材料や部品、製品に錆びが発生してしまうので、時期的な管理が必要な上、一旦包装を解いてから再包装しなければならず、これらにも手間が掛かり、防錆フィルムの一層の長寿命化が望まれる。
【0004】
本発明者はこれに応えるべく種々に実験をし検討を重ねる中、防錆フィルムに含有している気化性防錆剤は、防錆フィルムの透過性上防錆包装域内に発散はするが、包装域外部にも無駄に発散すること、および、防錆包装域内では乾燥剤などによって除湿したり脱気しておいても、温度差が生じた時や、朝夕などの環境温度の繰り返し変化による降温時に、蒸気や結露水が発生するのに加え、外部の蒸気や酸素が防錆包装域内に透過、侵入するので、防錆包装域内の防錆負荷が経時的に増大すること、を知見し、防錆剤の発散ないしは働きが、防錆フィルムの一方側だけに及ぶようにして防錆寿命を増大させる手段を見出した。
【0005】
本発明の目的は、このような新たな知見の基に、防性寿命の長大化が図れる防錆フィルムとそれを用いた防錆包装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の防錆フィルムは、防錆剤を含有しこれを外部に発散ないしは反応させる透過性樹脂フィルムの片面に水蒸気や酸素、防錆剤の気化ガスに対するバリア蒸着層を備えたことを1つの特徴としている。
【0007】
このような構成では、透過性樹脂フィルムが透過性であることにより、それに含有している防錆剤を外部に発散ないしは反応させるが、透過性樹脂フィルムの片面に備えているバリア蒸着層の防錆剤の気化ガスなどに対する非透過性によってこの片面側での防錆剤の外部への発散ないしは反応を阻止し、他面の側でのみ防錆剤を外部へ発散ないしは反応させるので、この他面側が内側になるように包装を行い密封することにより、包装した防錆対象物ないしは防錆対象部分の防錆を図り、包装域外に防錆剤が無駄に発散し反応するのを防止する。併せ、バリア蒸着層の水蒸気や酸素などに対する非透過性は包装域外から水蒸気や酸素が包装域内に透過、侵入して防錆負荷を増大させることを防止する。しかも、バリア蒸着層は薄く形成して非透過性能が得られ、防錆フィルムの柔軟性を損なわないので、溶着、縫製などの作業を伴なう各種包装形態への加工時の取り扱い性、加工時や包装時の他への馴染み性に優れる。
【0008】
本発明の防錆フィルムは、また、防錆剤を含有しこれを外部に発散ないしは反応させる透過性樹脂フィルムの片面に、水蒸気や酸素、防錆剤の気化ガスに対するバリア蒸着層を蒸着形成した樹脂フィルムが積層され、透過性樹脂フィルムの片面にバリア蒸着層を備えたことを別の特徴としている。
【0009】
このような構成では、前記1つの特徴に加え、さらに、透過性樹脂フィルムが、バリア蒸着層を蒸着形成した樹脂フィルムとの積層にて、片面にバリア蒸着層を備えているので、バリア蒸着層を形成する上での制約無しに材料の種類を選択することができる。
【0010】
防錆剤を含有しこれを外部に発散ないしは反応させる透過性樹脂フィルムの片面に、水蒸気や酸素、防錆剤の気化ガスに対するバリア蒸着層を蒸着形成した樹脂フィルがバリア蒸着層を透過性樹脂フィルムの前記片面に当てがい積層され、透過性樹脂フィルムの片面にバリア蒸着層を備えたことを他の特徴としている。
【0011】
このような構成では、前記別の特徴に加え、さらに、バリア蒸着層が、それを蒸着形成している樹脂フィルムと透過性樹脂フィルムとの間に挟まれて、他と直接接触するようなことから保護される。
【0012】
防錆剤は、気化性であるのが好適であるが、これに限られることはなく、既述した非気化性の防錆剤を単独で使用して、あるいは気化性防錆剤と併用して有効である。
【0013】
透過性樹脂フィルムはポリエチレンであると、透過性に優れ防錆剤の外部への発散性、反応性が十分に得られるが、これに限られることはなく、既に知られる透過性樹脂フィルムと防錆剤との各種組み合わせに本発明を提供して有効である。
【0014】
本発明の防錆包装方法は、上記のような各種の防錆フィルムを、透過性樹脂フィルムを内側にして用い、防錆包装対象物ないしは防錆包装対象部分を覆って密封し、透過性樹脂フィルムに含有している防錆剤を透過性樹脂フィルムを通じ密封領域内に発散ないしは働かせて、防錆包装物ないしは防錆包装部分の防錆を図ることを特徴とし、各防錆フィルムの特徴を防錆包装に発揮させられる。
【0015】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面によって明らかになる。本発明の各特徴はそれ単独で、あるいは可能な限り種々な組合せで複合して用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の防錆フィルムの1つの特徴によれば、防錆剤を含有した透過性樹脂フィルムがバリア蒸着層を有して、取り扱い性、加工性、包装性を特に損なうことなく、防錆包装に関与しない片面側に防錆剤が無駄に発散し反応して散逸したり劣化するのを防止して、しかも、包装域外からの水蒸気や酸素の透過、侵入を遮断して防錆剤の防錆負荷を軽減するので、防錆寿命を長大化することができる。
【0017】
本発明の防錆フィルムの別の特徴によれば、前記1つの特徴に加え、さらに、透過性樹脂フィルムにバリア蒸着層の蒸着性能を不要とし、防錆剤の練り込み性、成形性、防錆剤の外部への発散性、反応性といった本来の特性のみを満足すればよく、従来からのポリエチレンを使用して実現できる。
【0018】
本発明の防錆フィルムの他の特徴によれば、前記別の特徴に加え、さらに、バリア蒸着層がその両側の樹脂フィルムによって他と直接接触して損傷したり破損するようなことから保護され、防錆の長寿命化に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1〜図6を参照して本発明に係る防錆フィルムとそれを用いた防錆包装方法の実施の形態、および防錆包装具例について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下に示す実施の形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0020】
本実施の形態の防錆フィルムは、図1に1つの例を示すように、防錆剤を含有しこれを外部に発散ないしは反応させる透過性樹脂フィルム1の片面1aに水蒸気や酸素、防錆剤の気化ガスに対するバリア蒸着層2を備えた防錆フィルム11としている。防錆フィルム11のこのような構成だけでも、透過性樹脂フィルム1が透過性であることにより、それに含有している防錆剤5を外部に発散ないしは反応させるが、透過性樹脂フィルム1の片面1aに備えているバリア蒸着層2の、透過性樹脂フィルム1に比ベての非透過性によってこの片面1a側での防錆剤の外部への発散ないしは反応を阻止し、他面1bの側でのみ防錆剤を外部へ発散ないしは反応させられる。これによって、この他面1b側が内側になるよう図1の模式的図例、図2に示す具体例、図3に示す具体例のように、防錆対象物3や防錆対象部分3aの包装を行い密封することにより、包装した防錆対象物3ないしは防錆対象部分3aの防錆を図り、包装域外6に防錆剤が無駄に発散し反応するのを防止する。これに併せ、バリア蒸着層2の非透過性は包装域外6から水蒸気や酸素といった錆の原因になるいわば防錆阻害ガス類7を反射させて包装域内4に透過、侵入し、防錆負荷を増大させるようなことをも防止する。しかも、バリア蒸着層2は薄く形成して非透過性能が得られ、防錆フィルムの柔軟性を損なわないので、溶着、縫製などの作業を伴なう各種包装形態への加工時の取り扱い性、加工時や包装時の他への馴染み性に優れる。
【0021】
この結果、防錆剤5を含有した透過性樹脂フィルム1がバリア蒸着層2を有して、取り扱い性、加工性、包装性を特に損なうことなく、防錆包装に関与しない片面1a側に防錆剤5が無駄に発散し反応して散逸したり劣化するのを防止して、しかも、包装域外6からの水蒸気や酸素などの防錆阻害ガス類7の透過、侵入を遮断して防錆剤5の防錆負荷を軽減するので、防錆フィルム11の防錆寿命を長大化することができる。
【0022】
ここで、防錆剤5は、防錆上から気化性であると包装域内4に防錆剤ガス類を充満させて防錆が図れるので好適であるが、これに限られることはなく、既述した結露水などと反応する非気化性の防錆剤を単独で使用して、あるいは気化性防錆剤と併用して有効である。もっとも、防錆剤5は熱可塑性の透過性樹脂フィルム1と相溶であり、均一に含有していて、外部への発散にむらの無いことが要求されるが、それには防錆剤5が調整された既成製品であるマスターバッチペレットと樹脂材料とをよくブレンドして、インフレーション法により150℃程度の成形温度で所望の厚みのフィルムに成形すればよく、材料は既に知られる各種の透過性樹脂を用いてよい。厚みは、防錆剤5の総含有量や防錆対象物3や防錆対象部分3aを包装し、また取り扱い、収納しておくときの耐久性や取り扱い性の面から選定されるが、通常35μm〜200μm程度でよい。しかし、特にこれに限られることはない。
【0023】
ここで、バリア蒸着層2の1つの実施例を示すと、透過性樹脂フィルム1を防錆剤5を塗布あるいは含浸させた防錆紙の代替物の主流となっており、ガス類に対する透過性が特に優れるポリエチレン製の樹脂フィルムに防錆剤5を練り込んだものとし、適度に防錆剤5を発散させまた反応させる優れた透過性とヒートシール性とを満足しながら、バリア蒸着層2、それも金属製の、特にアルミニウムよりなる500Å(=0.05μm)程度の厚みのバリア蒸着層2を設けた場合と、設けない場合とで、水蒸気および酸素の透過率の違いを比較したところ、
バリア蒸着層2を設けないポリエチレンフィルムの場合
水蒸気の透過率:18g/m2/24hr
酸素の透過率 :2900〜13000cc/m2/24hr
であったのに対し、バリア蒸着層2を設けたポリエチレンフィルムの場合
水蒸気の透過率:0.7〜2.0g/m2/24hr
酸素の透過率 :1.0〜2.0cc/m2/24hr
であった。
【0024】
ここに、バリア蒸着層2はポリエチレンフィルムの酸素透過率を600〜1000分の1に、水蒸気透過率を8〜10分の1に、それぞれ低減していて、その分防錆剤5の外部からの防錆阻害ガス類7により防錆負荷が高まるのを大きく軽減され、防錆剤5の外部への無駄な発散ないしは反応を無くして防錆寿命が倍化するのを、さらに長大化させられる。また、アルミニウム製のバリア蒸着層2ではUVカット性に優れているので、防錆対象物3や防錆対象部分3aをUVから保護する必要がある場合に有効となる。しかし、これに限られることはなく、他の金属であってもよいし、シリカなど金属以外のものでもよくいわゆる真空蒸着によって用に形成することができる。
【0025】
本実施の形態では、また、防錆剤5を含有しこれを外部に発散ないしは反応させる透過性樹脂フィルム1の片面1aにバリア蒸着層2を設けるのに、図1の例、図2の例、図3の例に示すようにバリア蒸着層2を蒸着形成した別の樹脂フィルム12を、透過性樹脂シート1の片面1aの側に積層する方法、構造を採用している。積層の貼り合わせはラミネート方式でもボンディング方式でもよく、ラミネートでは樹脂が熱可塑性であることを利用するなどして簡単に行える。このようにすると、透過性樹脂フィルム1は、バリア蒸着層2を蒸着形成した樹脂フィルム12との積層により、片面1aの側にバリア蒸着層2を備え、バリア蒸着層2を形成する上での制約無しに材料の種類を選択することができる。つまり、バリア蒸着層2の蒸着には伸縮性の低い樹脂フィルムが好適なところ、ポリエチレンフィルムでは防錆フィルム11としては好適であるが、伸縮性が高く金属蒸着には向かない。しかし、積層した樹脂フィルム12の使用は透過性樹脂フィルム1のバリア蒸着層2の蒸着性能を不要とし、防錆剤5の練り込み性、成形性、防錆剤5の外部への発散性、反応性といった本来の特性のみを満足すればよく、本実施の形態の防錆フィルム11はポリエチレンの透過性樹脂フィルム1を使用して実現できる。なお、積層する樹脂フィルム12としては蒸着のために伸縮性の低いポリエチレンテレフタレートが好適であり、伸縮性の高いポリエチレンなどの樹脂フィルムによる場合のような層の不均一や皺などが生じない利点がある。価格は高いがナイロンフィルム、アセテートなども蒸着を行うには適している。
【0026】
また、前記透過性樹脂フィルム1とバリア蒸着層2を持った樹脂フィルム12との積層は、透過性樹脂フィルム1の片面1aにバリア蒸着層2を当てがう向きにて行うようにしている。この結果、バリア蒸着層2が、それを蒸着形成している樹脂フィルム12と透過性樹脂フィルム1との間に挟まれて、他と直接接触して損傷したり破損するようなことから保護され、防錆の長寿命化に対応できる。このようなバリア蒸着層2を保護する面から、積層する樹脂フィルム12は12μm程度の厚みがあれば十分であるし、防錆フィルム11全体の耐久性も向上させる。ここに、樹脂フィルム12は特に異種フィルムを複数積層したものとしてバリア蒸着層2や防錆フィルム11の保護強度を高めることもできる。特に、シリカによるバリア蒸着層2とする場合はその上に樹脂フィルム12を積層して保護するのがその取り扱う上好適である。
【0027】
以上から、本実施の形態の防錆フィルム11により防錆対象物3や防性対象部分3aを防錆包装するには、図1の例、図2の例、図3の例で示すように、透過性樹脂フィルム1を内側にして用い、防錆包装対象物3ないしは防錆包装対象部分3aを覆って密封し、透過性樹脂フィルム1に含有している防錆剤5を透過性樹脂フィルム1を通じ密封領域である包装域内4に発散ないしは働かせて、防錆対象物3ないしは防錆対象部分3aの防錆を図ることになるが、図2の例、図3の例で示すように防錆フィルム11を包装形態に合った包装容器21ないしは包装カバー22など専用の包装体に加工しておき、ジッパー23、124や締め付けベルト25など適当な密封具を備えた包装具31としておくのが使用しやすく好適である。締め付けベルト25など密封具の種類によっては包装体から分離したものであってもよいが、必要な位置に一体に設けておくことにより紛失することがないし、使用位置などを間違えるトラブルが解消する。
【0028】
図2に示す例はバラ物や扁平な防錆対象物3の防錆包装に適した形態を有している。防錆フィルム11を2つ折りにして両側を超音波溶着やヒートシールによるシール部32にて気密的に閉じ、開口部の延長としてジッパー23を密封具として超音波溶着やヒートシールによるシール部32にて気密的に接続した袋状の包装容器21としている。ジッパー23はそれが形成する開口23aの打ち合わせ面間に、それらに形成されて互いに噛み合う雌雄レール23b、23cを有し、開口23aに外方より跨るように被さって矢印Aの方向へのスライドにより雌雄レール23b、23cが互いに噛み合うように両側壁24a、24b間で開口23aを両側から挟み付けるスライダ24が、矢印Bの方向へのスライドにより雌雄のレール23b、23c間にてそれらの噛み合いを両側へ押し外す足24cを有して設けられ、両側壁24a、24bと足24cとはスライダ24がジッパー23から脱落するのを防止している。これによれば、開いたジッパー23の部分から防錆対象物3を投入ないしは挿入した後、スライダ24を閉じ方向にスライドさせるだけで包装および密封が完了する。ジッパー23の一方の端部にはスライダ24を密封位置に係止させるストッパホール125を設けてあるが、種々なものを採用してよい。
【0029】
図3の例は長尺な部材の中央部を防錆対象部分として防錆包装するのに適した形態を有している。具体的には図3に仮想線で示すようなパイプ41、41のフランジ部41a、41aによるカップリング部を防錆対象部分3aとするもので、防錆フィルム11をパイプ41、41のカップリング部を含む防錆対象部分3aをまわりから立体的に包んで、フランジ部41a、41aを中央に両側へ跨いで包み込む立体的な包装カバー22をなしている。ジッパー124は包装カバー22が防錆対象部分3aを包み込んだときの合わせ縁22a間に設けられ、両側にある多数の噛み合わせセル124a、124bが図示しないスライダの一方へのスライドによって交互に噛み合って閉じ、スライダの他方へのスライドによって噛み合いを解除して両側に分離して開かれる。締め付けベルト25は包装カバー22の両端部22bにあって、それぞれ2つの尾錠環25aを持った一端部が包装カバー22の一方の合わせ縁近くに、この合わせ縁に先端を向けて縫い付け部42により止着され、包装カバー22をパイプ41、41にそれらのフランジ部41aを含んで包み込み、ジッパー124により包装カバー22の合わせ縁22a間を閉じた後、締め付けベルト25の自由端部25bを包装カバー22の端部まわりに回してから2つの尾錠環25aに図3、図4に示すように通して締め上げることにより、包装カバー22の端部22bをパイプ41の外面に密着するように締め付けることができ、閉じているジッパー124と併せ、包装カバー22により包み込んだ防錆対象部分3aを密封することができる。
【0030】
ここで、ジッパー124は噛み合わせセル124a、124bを持った左右のジッパーテープ124c、124dを包装カバー22の合わせ縁22aに図3、図4に示す縫い付け部43により気密性を確保して止着するのに、合わせ縁22aを2つ折りにしてSBRフォーム45を挟み込んでジッパーテープ124c、124dと重ね合わせて止着している。さらに、シール性を高める必要がある場合には樹脂などの気密性のフィルム、シートなどよりなるジッパーカバーテープ46で一重ないしはそれ以上に覆って粘着させれば対応できる。また、包装カバー22の締め付けベルト25を持った端部22bの内側には、図3、図4に示すようにネオプレンパッド47を両面テープ44を介し当てがって接着などしておき締め付けベルト25により包装カバー22の端部22bをパイプ41の外面に締め付けたときに、ネオプレンパッド47がパイプ41の外面と包装カバー22の端部22bの内面とに圧着して双方間の気密性を高めるようにしている。しかも、ネオプレンパッド47の包装カバー22の打ち合わせ縁22a、22aに対応する部分には、それら打ち合わせ縁22a、22a間がジッパー124により閉じられたとき互いに打ち合わさる打ち合わせ端部47a、47bを有し、これらの打ち合わせ端部47a、47bが締め付けベルト25による締め付けに際し、他の部分よりも厚みは倍化して締め付けられるために、パイプ41の外面および包装カバー22の端部22bの内面間でより強く密着し合い、ネオプレンパッド47の端部47a、47b間で気密性が低下するようなことを回避している。
【0031】
なお、図3、図4に示す包装カバー22は、パイプ41、41のフランジ部41aによるカップリング部を防錆対象部分3aとし防錆包装するのに、それとの間に無駄な空間を作らないための立体の形態を付与すべく、平面的な防錆フィルム11を立体裁断して裁断縁間を接合した立体接合部51を持ったものとしてあり、立体接合部51は超音波溶着ないしはヒートシールによるシール部としてある。しかし、これに限られることはなく、立体接合部51は図5、図6に示すように縫製による止着部52とすることもできる。このような縫製による止着部52にて気密性を高めるのに図5に示す例では、包装カバー22の打ち合わせた立体裁断縁22cどうしを2つ折りしたネオプレンファブリック53により挟み込んだ状態にて縫製するようにしている。図6に示す例では包装カバー22の立体裁断縁22cどうしの間にSBRフォーム54を挟み込んだ状態にて縫製するようにしている。
【0032】
また、包装容器21や包装カバー22において、防錆包装状態で包装している防錆対象物などの重量や形態において強度が不足するような部分、例えば図3に示す包装カバー22のボトム部のある部分などには、補強シートを当てがえばよい。補強シートは包装カバー22の内面とするのが、防錆対象物などから及ぶ直接外力に対する補強となって好適である。しかし、補強面積が多くなるほど包装カバー22などの透過性樹脂シート1の透過性を損なわないように通気性素材によるもとするのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、金属製よりなる防錆対象物や防錆対象部分を防錆フィルムによって防錆包装するのに、防錆寿命および防錆の信頼性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る防錆フィルムの1つの例を示す断面図であり、包装した防錆対象物との関係を模式的に示している。
【図2】図1の包装フィルムを用いた包装方法とそれに用いる包装具の1つの例を示す斜視図である。
【図3】図1の包装フィルムを用いた包装方法とそれに用いる包装具の別の例を示す斜視図である。
【図4】図3の包装具の一部を示す横断面図である。
【図5】図1の包装フィルムを立体裁断して包装容器型の立体的な包装具を形成する場合の縫製例を示す断面図である。
【図6】図1の包装フィルムを立体裁断して包装カバー型の立体的な包装具を形成する場合の別の縫製例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 透過性樹脂フィルム
2 バリア蒸着層
3 防錆対象物
3a 防錆対象部分
4 包装域内
5 防錆剤
6 包装域外
7 防錆阻害ガス類
11 防錆フィルム
12 樹脂フィルム
21 包装容器
22 包装カバー
23、124 ジッパー
24 スライダ
25 締め付けベルト
31 包装具
32 シール部
41 パイプ
41a フランジ部
51 立体接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防錆剤を含有しこれを外部に発散ないしは反応させる透過性樹脂フィルムの片面に水蒸気や酸素、防錆剤の気化ガスに対するバリア蒸着層を備えたことを特徴とする防錆フィルム。
【請求項2】
防錆剤を含有しこれを外部に発散ないしは反応させる透過性樹脂フィルムの片面に、水蒸気や酸素、防錆剤の気化ガスに対するバリア蒸着層を蒸着形成した樹脂フィルムが積層されて、透過性樹脂フィルムの片面にバリア蒸着層を備えていることを特徴とする防錆フィルム。
【請求項3】
防錆剤を含有しこれを外部に発散ないしは反応させる透過性樹脂フィルムの片面に、水蒸気や酸素、防錆剤の気化ガスに対するバリア蒸着層を蒸着形成した樹脂フィルムがバリア蒸着層を透過性樹脂フィルムの前記片面に当てがい積層され、透過性樹脂フィルムの片面にバリア蒸着層を備えたことを特徴とする防錆フィルム。
【請求項4】
防錆剤は、気化性である請求項1〜3のいずれか1項に記載の防錆フィルム。
【請求項5】
透過性樹脂フィルムは、ポリエチレンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の防錆フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の防錆フィルムを、透過性樹脂フィルムを内側にして用い、防錆包装対象物ないしは防錆包装対象部分を覆って密封し、透過性樹脂フィルムに含有している防錆剤を透過性樹脂フィルムを通じ密封領域内に発散ないしは働かせて、防錆包装物ないしは防錆包装部分の防錆を図ることを特徴とする防錆包装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−44984(P2007−44984A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231511(P2005−231511)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(398012443)ニッカ工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】