説明

防音構造体

【課題】通気性、採光性を有しながら防音性に優れた防音構造体を得る。
【解決手段】複数の中空体が間隔を空けて並設されてなる防音構造体であって、複数の中空体は、音が入射される側に入射音を反射する反射面を有しているとともに、ヘルムホルツ共鳴器として機能する中空部30A〜30Cを有し、中空体には、隣接する中空体との対向面に中空部に連通して長手方向に延びるスリット状の開口部が設けられている構成とした。中空体は、当該中空体の軸方向に延びる2つ以上の形材を組み合わせて構成されており、開口部は形材同士の対向部によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音機能を備えた防音構造体に関し、特に、通気性および採光性に優れた防音構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な防音構造体としては、特許文献1,2に記載されたものが知られている。
特許文献1の防音構造体は、グラスウール等の吸音材が充填されたパネル材を支柱で支持した構造を有しており、支柱がパネル材で隠れるように設置して防音効果を得るようにしたものである。
また、特許文献2の防音構造体は、パネル材の表面に、いわゆるヘルムホルツ共鳴器を構成する開口が並設されており、ヘルムホルツ共鳴器による吸音を利用した防音構造を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−338913号公報
【特許文献2】特許第2547927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2の防音構造体では、いずれもパネル材を用いて防音する構造であるため、パネル材によって空間が仕切られることとなり、設置によって通気性や採光性が損なわれるという問題があった。
通気性や採光性を得るために、例えば、パネル材をルーバー状や柵状に細く形成することが考えられるが、このようにすると、ルーバーの間や柵の間を入射音が通過してしまい、入射音を効果的に遮ることが難しかった。
このように、通気性や採光性と、防音性という、相反する2つの機能が要求されるところ、現状では、これらを一緒に満足する防音構造体は得られていない。
【0005】
このような観点から、本発明は、通気性、採光性を有しながら防音性に優れた防音構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決する本発明に係る防音構造体は、複数の中空体が間隔を空けて並設されてなる防音構造体であって、前記複数の中空体は、音が入射される側に入射音を反射する反射面を有しているとともに、ヘルムホルツ共鳴器として機能する中空部を有し、前記中空体には、隣接する前記中空体との対向面に前記中空部に連通して長手方向に延びるスリット状の開口部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この防音構造体によれば、複数の中空体は、音が入射される側に入射音を反射する反射面を有しているので、入射音を反射面で直接的に反射して遮ることができる。一方、中空体間への入射音は、中空体間の開口幅と、中空体間におけるスリット状の開口部を通じて中空部の奥行きが加えられた開口幅との通路幅の断面変化によって、インピーダンス(音響抵抗)変化を起こすことで反射される。さらに、中空体間への入射音は、スリット状の開口部を通じてヘルムホルツ共鳴器として機能するスリット部の摩擦損失によって吸音される。
【0008】
したがって、これらの3つの相乗効果によって、入射音に対して、中空体間を通過する音の割合が低減されるようになる。
したがって、中空体間を通じて、通気性、採光性を確保することができるとともに、防音性に優れた防音構造体が得られる。
【0009】
また、本発明は、前記中空体が、当該中空体の軸方向に延びる2つ以上の形材を組み合わせて構成されており、前記開口部は前記形材同士の対向部によって形成されている構成とするのがよい。
【0010】
この防音構造体によれば、長手方向に延びる2つ以上の形材を組み合わせて中空体を構成する際に、開口部を一緒に形成することができる。したがって、別途開口部を形成する必要がなくなり、中空体の製造工程が簡単になる。
また、中空体に複数の中空部を形成する場合にも形材の組み合わせによって簡単に形成することができる。
【0011】
また、前記中空体が、アルミニウム合金製または樹脂製の押出形材からなる場合には、中空体を容易に製造することができる。また、アルミニウム合金製の押出形材は、寸法精度が高く、また、強度を有する割に軽量である。したがって、所望のヘルムホルツ共鳴器として作用する防音構造体を高精度に製造することができる。
【0012】
また、前記中空体の中空部には吸音材が配置されている構成とするのがよい。
このような構成とすることにより、吸音効果をより高めることができ防音機能を向上させることができる。
【0013】
また、隣接する前記中空体の対向面は、横断面が曲線を含んで構成されているのがよい。
このように構成することによって、中空体間を通り抜ける空気により生じる笛鳴り現象を低減させることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通気性、採光性を有しながら防音性に優れた防音構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る防音構造体としての柵を示す斜視図である。
【図2】同じく柵の分解斜視図である。
【図3】(a)は縦桟の配置状態を示す模式平面図、(b)は柵の一部省略正面図である。
【図4】(a)は柵の一部省略側断面図、横桟の係合部分を示す拡大断面図である。
【図5】(a)は縦桟の平面図、(b)は縦桟の分解平面図である。
【図6】(a)(b)は縦桟の作用説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る防音構造体としての柵を示す図であり、(a)は縦桟の配置状態を示す模式平面図、(b)は柵の一部省略正面図である。
【図8】第2実施形態の柵の一部省略側断面図である。
【図9】(a)〜(c)は縦桟の変形例を示す模式平面図である。
【図10】(a)は変形例に係る縦桟の平面図、(b)は同じく分解平面図、(c)は横桟との接続を示した説明図である。
【図11】(a)は変形例に係る縦桟の平面図、(b)は同じく分解平面図、(c)は横桟との接続を示した説明図である。
【図12】図10、図11に係る縦桟の配置例を示す模式平面図である。
【図13】(a)(b)は変形例に係る縦桟の模式平面図である。
【図14】(a)(b)は変形例に係る縦桟の模式平面図である。
【図15】(a)〜(c)は変形例に係る縦桟の模式平面図である。
【図16】(a)〜(d)は変形例に係る縦桟の模式平面図である。
【図17】(a)〜(d)は実施例に係る縦桟の模式平面図である。
【図18】音響透過損失と周波数との関係を示す図である。
【図19】その他の変形例に係る縦桟の模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の実施形態においては、ベランダやバルコニー等に設置される柵(手摺)に防音構造体を適用した例について説明するが、防音構造体が適用される構造物を限定する趣旨ではない。なお、以下の説明においては、横桟20の長手方向に沿う方向を「左右方向」とし、これに直交する方向を「前後方向」とする。
【0017】
(第1実施形態)
本実施形態に係る防音構造体としての柵Fは、図1に示すように、ベランダ等の支持構造部Kに固定されて立設される支柱10と、隣り合う支柱10,10間に支持される上下一対の横桟20と、上下一対の横桟20,20間に接続される中空体としての複数本の縦桟30と、を有している。
なお、図1に示した柵Fは、複数の支柱10,10・・・を備えるとともに、隣り合う支柱10,10間に四つの縦桟30,30…を備えるものであるが、支柱10および縦桟30の設置個数を限定する趣旨ではなく、設置状況等に応じて適宜変更しても差し支えない。
【0018】
支柱10は、平面視矩形の外形を備えた筒状の部材であり、図示しないアンカーボルトを用いた固定手段等により支持構造部Kの固定部K1に固定されている。
支柱10は、アルミニウム合金製の押出形材から形成されており、上端部が平板状の蓋部材10aで閉じられている。なお、本実施形態において、固定部K1の上面K2は水平かつ平坦に形成されている。
【0019】
横桟20は、隣り合う支柱10,10の上端間および下端間にそれぞれ渡されて取り付けられた部材である。隣り合う支柱10,10間において、上下の横桟20の間には複数本の縦桟30(本実施形態では4本の縦桟30…)が配置されている。
図2に示すように、上端の横桟20は、基部材21と、カバー部材22が組み合わされて構成され、下端の横桟20は、基部材21のみから構成されている。
【0020】
基部材21は、底部210と、この底部210に連続する前後の側壁211,212と、を有しており、図4(a)に示すように、側面視で略コ字形に形成されている。
上端の横桟20において、基部材21は、前記した底部210を下側にして前後の側壁211,212間に形成される開口を上方へ向けて設置されている。
また、これとは逆に下側の横桟20において、基部材21は、底部210を上側にして前後の側壁211,212間に形成される開口を下方へ向けて設置され、固定部K1の上面K2に側壁211,212の先端部が当接するように設置されている。すなわち、下側の横桟20は、計4本の縦桟30を支持するための基台としても機能している。
【0021】
基部材21の底部210には、前後縁において長手方向にそれぞれ所定の間隔を空けて挿通孔21aが複数形成されている。各挿通孔21aの形成位置は、縦桟30の取付位置に対応しており、各挿通孔21aには、縦桟30を固定するための固定ボルト302が挿通可能である。具体的に、各挿通孔21aは、図2に示すように、縦桟30の各角部に形成されたボルト挿通孔301に対応する位置に形成されている。
【0022】
側壁211,212の先端内側には、図4(b)に示すように、内側側方へ向けて山形に突出する係合突部211a,212aがそれぞれ形成されている(図4(b)においては一方側のみ図示、以下同じ)。この係合突部211a,212aは、当該係合突部211a,212aに対峙するようにして、カバー部材22の天部220から垂下された略同形状の係合受け部221a,222aに係合するようになっている。
【0023】
カバー部材22は、図4(a)に示すように、天部220とこの天部220に連続する前後の縦壁221,222を有しており、上側の横桟20の基部材21に被着可能な側面視で略コ字形状に形成されている。
カバー部材22の内側には、縦壁221,222に沿うように、縦壁221,222から間隔を隔てて係合片223,224が設けられている。係合片223,224は、天部220の下面から下方へ向けて突設されており、その下部には基部材21の側壁211,212へ向けて山形に突出する係合受け部223a,224aが形成されている。この係合受け部223a,224aには、係合突部211a,212aが係合可能であり、この係合によって、基部材21にカバー部材22が取り付けられるようになっている。なお、カバー部材22は、接着剤や図示しないボルト等を用いて基部材21に固着してもよい。
【0024】
このような横桟20,20は、図2,図3(b)に示すように、正面視で略L字形のブラケット25を介して支柱10,10にそれぞれ固定されている。ブラケット25には図2,図4(a)に示すように、ねじ挿通孔25aが形成されており、このねじ挿通孔25aに挿通されたねじ25bを支柱10と横桟20とにそれぞれ螺合することで、横桟20が支柱10に固定される。なお、図示しないボルトとナットとを用いて固定するようにしてもよい。
【0025】
縦桟30は、図5(a)に示すように、複数のアルミニウム合金製の押出形材(31,32,33)を組み合わせて形成したものであり、平面視矩形の外形を備えている。縦桟30の内部には、上下方向(押出方向)に貫通する複数の中空部30A〜30Cが形成されていて、その上端および下端が開口している。そして、縦桟30の上端の開口が上側の横桟20である基部材21の底部210の下面によって閉塞され、縦桟30の下端の開口が下側の横桟20である基部材21の底部210の上面によって閉塞されている。
また、縦桟30の四隅には、断面C字状の開断面を有して上下方向に貫通するボルト挿通孔301が形成されている。このボルト挿通孔301には、図2に示すように、基部材21に設けられた挿通孔21aを通じて固定ボルト302が螺入可能である。
なお、ボルト挿通孔301は、押出成形する際に一緒に形成してもよいし、押出成形後に孔あけ加工を施して形成してもよい。また、ボルト挿通孔301は、断面C字状の開断面である必要はなく、固定ボルト302を挿通可能な形状であれば、閉断面であっても差し支えない。
【0026】
本実施形態では、縦桟30が複数の押出形材(31,32,33)を組み合わせた接合品として構成されている。具体的に、縦桟30は、図5(a)に示すように、第1の形材31と、第2の形材32と、これらの形材を連結する第3の形材33とを組み合わせて構成されている。なお、形材同士の接合には、溶接や接着剤、ねじ、ボルト等の接合手段を用いることができる。
第1の形材31と第2の形材32は、同形状であり、第1の形材31を、第3の形材33の前後で向きを変えて配置したものが第2の形材32である。したがって、第1の形材31と第2の形材32は、1つの形材を適宜長さに切断することにより得ることができる。
【0027】
第1の形材31は、図5(b)に示すように、前部311と、この前部311の左右に連続する側部312,313とを備えている。本実施形態では、一方の側部312に比べて他方の側部313が前後方向において後方へ長く延在されており、以下の説明では、説明の便宜上、側部312を短側部312と称し、側部313を長側部313と称する。
前部311の前面は、入射音(騒音)を反射する反射面として機能する。
【0028】
また、前部311の後面には、断面略C字状の開断面を有して上下方向に貫通する係合溝314が形成されている。この係合溝314には、第3の形材33に形成された係合片331a(331b)が係合可能である。
また、前部311と短側部312との隅部および前部311と長側部313との隅部には、前記したボルト挿通孔301がそれぞれ形成されている。
短側部312の後端部312aは、前部311と平行となるように長側部313側に向けて直角に折曲形成されている。また、長側部313の後端部313aは、前部311と平行となるように短側部312側に向けて直角に折曲形成されている。
なお、以下の説明で、第1の形材31の前部311、短側部312の後端部312aおよび長側部313の後端部313aは、第2の形材32において、それぞれ、後部311’、前端部312a’および前端部313a’と称する。
【0029】
ここで、図5(a)に示すように、第1の形材31における短側部312の後端部312aは、第3の形材33の前端部333aと間隔を空けて対峙し、前端部333aとの間に、スリット(スリット状の開口部)S1を形成する。また、第1の形材31における長側部313の後端部313aは、第2の形材32の前端部313a’と間隔を空けて対峙し、前端部313a’との間に、スリットS3を形成する。
さらに、第2の形材32における短側部312の前端部312a’は、第3の形材33の後端部333bと間隔を空けて対峙し、後端部333bとの間に、スリットS2を形成する。
これらのスリットS1〜S3は、各中空部30A〜30Cにより構成される共鳴器の導入部を形成しており、各中空部30A〜30Cと外部との間を連通している。
各スリットS1〜S3は、縦桟30の上下方向(押出方向)に開口しており、縦桟30の上下方向に亘って各中空部30A〜30Cが各スリットS1〜S3を通じて隣接する通路(R1〜R5、図3(a)(b)参照)に連通している。
【0030】
第3の形材33は、基部331と、連結部332を介して基部331と平行に設けられた側部333とを備えており、第1の形材31と第2の形材32とを連結する連結部材としての機能を有するとともに、縦桟30内を複数の部屋(中空部30A〜30C)に仕切る仕切り壁としての機能も併せ備えている。
基部331は、平板状を呈しており、その前端部および後端部には、第1の形材31の係合溝314および第2の形材32の係合溝314にそれぞれ係合可能な左右方向に延びる係合片331a,331bが形成されている。
【0031】
連結部332は、図5(a)に示すように、基部331および側部333の前後方向の中央部よりも後方寄り(第2の形材32に近い側)となる位置で、基部331と側部333とを連結するとともに、縦桟30内に形成される中空部30Aと中空部30Bとを仕切っている。これにより、連結部332で仕切られる中空部30Aの容積は、中空部30Bの容積よりも大きなものとなるようにされている。
【0032】
側部333は、縦桟30の左側壁の一部を構成しており、側部333の前端部333aは、第1の形材31の後端部312aに間隔を空けて対峙するように、基部331に向けて直角に折曲形成されている。また、側部333の後端部333bは、第2の形材32の前端部312a’に間隔を空けて対峙するように、基部331に向けて直角に折曲形成されている。
【0033】
なお、第1の形材31と第2の形材32とを第3の形材33を介して連結した状態で、縦桟30の前後方向に所定の間隔を有するスリットS1〜S3がそれぞれ形成されるように、第1の形材31〜第3の形材33の各部の寸法が調整されている。
【0034】
このような縦桟30は、第1の形材31および第2の形材32に形成された係合溝314に、第3の形材33の係合片331a(331b)を上下方向からスライドさせるようにしてそれぞれ係合させることで組み立てることができる。そして、組み付けにより、第1の形材31の後端部312aと第3の形材33の前端部333aとの間にスリットS1が形成され、第1の形材31の後端部313aと第2の形材32の前端部313a’との間にスリットS3が形成され、さらに、第2の形材32における短側部312の前端部312a’と第3の形材33の後端部333bとの間にスリットS2が形成されるようになっている。
本実施形態の柵Fでは、図2に示すように、各スリットS1〜S3同士が通路内において前後方向に位置をずらして(非対向位置となるように)配置されている。
【0035】
次に、以上説明した柵Fの防音作用について説明する。
複数本の縦桟30は、前部311が入射音Tを反射する反射面として機能するようになっているので、図6(a)に示すように、柵Fに対して前側から入射音Tが入射されると、前部311で入射音Tの一部が直接的に反射される。
【0036】
一方、縦桟30と縦桟30との間(縦桟30と支柱10の間を含む)に侵入した入射音Tは、縦桟30,30間の開口幅L1と、スリットS1〜S3が設けられた部分においてスリットS1〜S3を通じて中空部30A〜30Cの奥行きが加えられた開口幅L2と、の差による通路幅の急激な変化によって、インピーダンス(音響抵抗)変化を起こすことで反射される。
ここで、縦桟30,30間への入射音Tのうち、主にどの周波数域の音が反射されるかについては、スリットS1〜S3を含む中空部30A〜30Cの仕様(ヘルムホルツ共鳴器の仕様)により設定することができる。
インピーダンス変化により好適に反射される周波数は、ヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数を求める計算式に相関していると考えられるから、これを応用して、以下の式(1)に基づいて設定することができる。
【0037】
【数1】

【0038】
f:共鳴周波数
c:音速(m/sec)
b:スリット(S1〜S3)の幅
l:スリット(S1〜S3)の長さ(ネック長さ)
k:係数
P:開口率(スリットの幅b/スリットの間隔B)
L:中空部(30A〜30C)の容積(m
なお、符号b、l、Bについては、図6(a)参照。
【0039】
そして、さらに、縦桟30,30間への入射音Tは、スリットS1〜S3を通じてヘルムホルツ共鳴器として機能するスリットS1〜S3部分の摩擦損失によって吸音される。つまり、共鳴周波数付近の音波が入射すると、スリットS1〜S3部分の空気が激しく振動し(例えば、中空部30A内の空気は、スリットS1の空気の圧縮・膨張に対してばねの作用をする)、摩擦損失による吸音が生じる(入射した音を音響エネルギから熱エネルギへ変換させることで吸音される)。
【0040】
ここで、縦桟30,30間への入射音Tのうち、主にどの周波数域の音を損失させるかは、ヘルムホルツ共鳴器の仕様により設定することができる(前記式参照)。
【0041】
本実施形態では、図6(a)に示すように、縦桟30に設けられている中空部30A〜30Cの容積がそれぞれ異なっているので、図6(b)に示すように、縦桟30,30間に入射された入射音Tは、各中空部30A〜30Cに相関したインピーダンス変化を起こすことで所定の周波数域の音が反射され、また、スリットS1〜S3を通じてヘルムホルツ共鳴器として機能するスリットS1〜S3部分の摩擦損失によってそれぞれ吸音される。
【0042】
したがって、これらの3つの相乗効果によって、縦桟30,30間を通過する入射音Tの割合が低減されるようになる。
【0043】
以上説明した本実施形態の柵Fによれば、縦桟30,30間(縦桟30と支柱10との間を含む)を通じて、通気性、採光性を確保することができるとともに、前記した3つの相乗効果によって、縦桟30,30間を通過する入射音の割合が低減されるようになり、防音性に優れている。
【0044】
また、縦桟30が、長手方向に延びる3つの形材(第1〜第3の形材31〜33)を組み合わせて構成されており、スリットS1〜S3は、組み合わされた形材同士の対向部によって形成されているので、形材を組み合わせて柵Fを構成する際に、スリットS1〜S3を一緒に形成することができる。したがって、別途スリットS1〜S3を形成する必要がなくなり、縦桟30の製造工程が簡単になる。
また、縦桟30に複数の中空部30A〜30Cを形成する場合にも第1の形材31〜第3の形材33の組み合わせによって簡単に形成することができる。
【0045】
また、縦桟30が、アルミニウム合金製の押出形材からなるので、縦桟30を容易に製造することができる。また、アルミニウム合金製の押出形材は、寸法精度が高く、また、強度を有する割に軽量である。したがって、所望のヘルムホルツ共鳴器として作用する防音構造体を高精度に製造することができる。縦桟30を樹脂製の押出形材で形成した場合にも同様の効果が得られる。
【0046】
また、吸音材が不要なので経年変化等による性能劣化がなく、構造も簡単である。したがって、廃棄時に廃棄物を削減でき、リサイクル性に優れる。
【0047】
(第2実施形態)
本実施形態に係る防音構造体としての柵F1が前記第1実施形態と異なるところは、図7(b)に示すように、支柱10,10の後面の上下に横桟20A,20Aが取り付けられており、これらの横桟20A,20Aの後面に、複数の縦桟30が取り付けられた点である。
【0048】
横桟20Aは、図8に示すように、基部材28と、カバー部材29が組み合わされて構成されている。
基部材28は、底部280とこの底部280に連続する上下の側壁281,282を有しており、側面視で略コ字形に形成されている。
底部280には、図7(a)に示すように、左右方向に所定の間隔を空けて挿通孔27aが複数形成されている。各挿通孔27aの形成位置は、縦桟30の取付位置に対応しており、各挿通孔27aには、縦桟30を固定するための固定ねじ27bが挿通可能である。基部材28は、各挿通孔27aに挿通した固定ねじ27bを縦桟30にそれぞれ螺合することにより、縦桟30の前部311に固定される。
本実施形態では、計6本の縦桟30が横桟20A,20Aに固定されており、そのうちの左端の縦桟30と右端の縦桟30は、前方から見て、支柱10,10の後方に略全体がそれぞれ隠れる状態に位置している。なお、図7(a)に示すように、左端の通路R1および右端の通路R5は、縦桟30,30の間に形成されることとなるので(片側が支柱10の左側壁または右側壁とならないので)、通路R1,R5内を通過する入射音の割合を効果的に低減することができる。また、左端の縦桟30のさらに左側、および右端の縦桟30のさらに右側には、隣の支柱10との間に横桟20Aによって取り付けられる縦桟30が配置可能であるので、支柱10を間に挟むことなく、縦桟30を連続的に配置することができる。
【0049】
基部材28の側壁281,282の先端部には、図8に示すように、外側側方へ向けてく字形に膨出する係合突部281a,282aがそれぞれ形成されている。この係合突部281a,282aは、当該係合突部281a,282aに対峙するようにして、カバー部材29の底部290に連続する上下の側壁291,292に設けられた係合受け部291a,292aに係合するようになっている。
【0050】
カバー部材29は、底部290とこの底部290に連続する前後の側壁291,292を有しており、基部材28に被着可能な側面視で略コ字形状に形成されている。
カバー部材29の前後の側壁291,292の先端内側には、基部材28の側壁281,282へ向けて山形に突出する係合受け部291a,292aが形成されている。この係合受け部291a,292aには、基部材28の側壁281,282の係合突部281a,282aが係合可能であり、この係合によって、基部材28にカバー部材29が取り付けられるようになっている。なお、カバー部材29は、接着剤や図示しないボルト等を用いて基部材28に固着してもよい。
なお、カバー部材29は、支柱10,10間において、基部材28を覆う長さに形成されている。カバー部材29の左端部の側方および右端部の側方には、ブラケット26,26を通すためのスペースSPがそれぞれ形成されている(図7(b)参照)。
【0051】
このような横桟20A,20Aは、図7(a)に示すように、平面視で略L字形のブラケット26を介して支柱10,10にそれぞれ固定されている。ブラケット26の一端側は、固定ねじ26bを介して横桟20Aの基部材28の底部280に固定され、他端側は、固定ねじ26bを介して支柱10の右側壁および左側壁に固定される。なお、固定ねじ26bによらず、図示しないボルトとナットとを用いて固定するようにしてもよい。
【0052】
本実施形態の柵F1によれば、第1実施形態の柵Fに比べて縦桟30を左右方向に連続的に配置することができるので、縦桟30,30間を通過する入射音の割合がより一層低減されるようになり、効果的な防音を実現することができる。
【0053】
次に、縦桟30の変形例について説明する。
はじめに、図9(a)に示した例は、縦桟30の第3の形材33を前記第1,第2の実施形態で説明した配置と上下方向を逆に配置して、縦桟30の前側に容積の一番小さい中空部30Bを配置し、縦桟30の後側にこれよりも容積のある中空部30Aを配置するようにしたものである。なお、図9では、ボルト挿通孔301を省略している。
【0054】
また、図9(b)に示した例は、前側に中空部30Bを配置した縦桟30と、前側に中空部30Aを配置した縦桟30と、を左右方向に交互に配置したものである。
【0055】
さらに、図9(c)に示した例は、隣接する縦桟30,30において、対応する容積の中空部30A〜30CのスリットS1〜S3同士が対向するように、各縦桟30を配置したものである。
【0056】
以上のような構成とすることによっても、縦桟30,30間を通過する入射音の割合が低減されるようになり、効果的な防音を実現することができる。
また、図9(c)に示した例では、相互に対向するスリットS1〜S3を通じて、縦桟30,30間の開口幅L3を前記した開口幅L2(図6(b)参照)よりも幅広にすることができる。これによって、開口幅のより急激な変化を生じさせることができ、インピーダンス(音響抵抗)変化を好適に生じさせて入射音を好適に反射することができる。
【0057】
次に、図10に示した例について説明する。
図10(a)に示すように、縦桟300Aは、前記した第1,第2実施形態と同様に平面視矩形の外形を備えた筒状の部材であり、アルミニウム合金製の押出形材からなる。縦桟300Aは、図10(b)に示すように、第1の形材31Aと、第2の形材32Aと、第3の形材33Aとを組み合わせた接合品として構成されており、その内部に、上下方向(押出方向)に貫通する2つの中空部30A,30Cを備えている。縦桟300Aの上端および下端は、開口しており、第1実施形態で示した例と同様に、上端が上側の横桟20(図2参照)の下面(底部210の下面)に当接され、下端が下側の横桟20(図2参照)の上面(底部210の上面)に当接されている。なお、縦桟300Aは、図10(c)に示すように、第2実施形態で示した例と同様にして、固定ねじ27bにより横桟20Aの基部材28に固定することもできる。
【0058】
縦桟300Aを構成している第1の形材31Aと第2の形材32Aとは、同形状であり、第1の形材31Aを、第3の形材33Aの前後で向きを変えて配置したものが第2の形材32Aとなっている。これにより、第1の形材31Aと第2の形材32Aは、1つの形材を適宜長さに切断することにより得ることができる。
【0059】
第1の形材31Aは、図10(b)に示すように、前部311Aと、この前部311Aの左側に連続する短側部312Aと、前部311Aの右側に連続する長側部313Aとを備えている。本実施形態では、短側部312Aよりも長側部313Aの長さを長く形成してある。
なお、以下の説明で、第1の形材31Aの前部311A、短側部312Aの後端部312aおよび長側部313Aの後端部313aは、第2の形材32Aにおいて、それぞれ、後部311A’、前端部312a’および前端部313a’と称する。
【0060】
図10(a)に示すように、第1の形材31Aにおける短側部312Aの後端部312aは、第2の形材32Aの長側部313Aの前端部313a’と間隔を空けて対峙し、前端部313a’との間に、スリットS1を形成する。また、第1の形材31Aにおける長側部313Aの後端部313aは、第2の形材32Aの前端部312a’と間隔を空けて対峙し、前端部312a’との間に、スリットS3を形成する。
これらの2つのスリットS1,S3は、各中空部30A,30Cにより構成される共鳴器の導入部を形成しており、各中空部30A,30Cと外部との間を連通している。
各スリットS1,S3は、縦桟300Aの上下方向(押出方向)に開口しており、縦桟300Aの上下方向に亘って各中空部30A,30Cが各スリットS1,S3を通じて隣接する通路(R1〜R5、図3(a)(b)参照)に連通している。
【0061】
第3の形材33Aは、第1の形材31Aと第2の形材32Aとを連結する連結部材としての機能を有するとともに、縦桟300A内を中空部30A,30Cに仕切る仕切り壁としての機能も併せ備えている。
第3の形材33Aは、直線部331cと、直線部331cの前後端に形成された折曲部331dと、前後端の折曲部331d,331dにそれぞれ連続して形成され、第1の形材31Aの係合溝314および第2の形材32Aの係合溝314にそれぞれ係合可能な係合片331a,331bと、を有している。
ここで、直線部331cは、折曲部311d,311dを介して縦桟300Aの中央部よりも左右方向(ここでは左方向)に偏位しているので、図10(a)に示すように、中空部30Aの容積が中空部30Cの容積よりも小さくなっている。
【0062】
なお、第1の形材31Aと第2の形材32Aとを第3の形材33Aを介して連結した状態で、縦桟300Aの前後方向に所定の間隔を有するスリットS1,S3がそれぞれ形成されるように、第1の形材31A〜第3の形材33Aの各部の寸法が調整されている。
【0063】
このような縦桟300Aは、第1の形材31Aおよび第2の形材32Aに形成された係合溝314に、第3の形材33Aの係合片331a(331b)を上下方向からスライドさせるようにしてそれぞれ係合させることで組み立てることができる。そして、組み付けにより、第1の形材31Aの後端部312aと第2の形材32Aの前端部313a’との間にスリットS1が形成され、第1の形材31Aの後端部313aと第2の形材32Aの前端部312a’との間にスリットS3が形成される。
【0064】
なお、第3の形材33Aを水平方向に180度回転させた状態で、第1の形材31Aおよび第2の形材32Aをこれに組み付けてもよい。このようにすることで、第3の形材33Aの直線部331cは、折曲部311d,311dを介して縦桟300Aの中央部よりも右方向に偏位することとなるので、中空部30Aの容積を中空部30Cの容積よりも大きくすることができる。
また、第1の形材31Aの向きを変えて、前部311Aの左側に長側部313Aが位置するように(右側に短側部312Aが位置するように)組み付けてもよい。この場合には、第2の形材32Aも第1の形材31Aに対応させて向きを変えることで組み付けることができる。
【0065】
以上のような縦桟300Aを用いることにより、前記と同様に、通気性、採光性を確保することができるとともに、縦桟300A,300A間を通過する入射音の割合が低減され、効果的な防音を図ることができる。
【0066】
また、縦桟300Aが、長手方向に延びる3つの形材(第1〜第3の形材31A〜33A)を組み合わせて構成されており、スリットS1,S3は、組み合わされた形材同士の対向部によって形成されているので、形材を組み合わせる際に、スリットS1,S3を一緒に形成することができる。したがって、別途スリットS1,S3を形成する必要がなくなり、縦桟300Aの製造工程が簡単になる。
また、縦桟300Aに2つの中空部30A,30Cを形成する場合にも第1の形材31A,第3の形材33Aの組み合わせによって簡単に形成することができる。
【0067】
また、縦桟300Aが、アルミニウム合金製の押出形材からなるので、縦桟300Aを容易に製造することができる。また、アルミニウム合金製の押出形材は、寸法精度が高く、また、強度を有する割に軽量である。したがって、所望のヘルムホルツ共鳴器として作用する防音構造体を高精度に製造することができる。縦桟300Aを樹脂製の押出形材で形成した場合にも同様の効果が得られる。
【0068】
図11に示した縦桟300aは、前記した縦桟300Aの変形例であり、直線部331cに連続する折曲部311d’,311d’の左右方向の長さを、前記した折曲部311d,311dよりも短く形成したものである。
このような折曲部311d’,311d’を有する第3の形材33A’を用いることにより、中空部30A,30Cの容積の割合を変更することができる。
なお、この場合にも、第3の形材33A’を水平方向に180度回転させて、中央部よりも右方向に直線部331cが偏位するように組み付けることができる。
また、第1の形材31Aの向きを変えて、前部311Aの左側に長側部313Aが位置するように(右側に短側部312Aが位置するように)組み付けてもよい。この場合には、第2の形材32Aも第1の形材31Aに対応させて向きを変えることで組み付けることができる。
【0069】
図12は、前記した縦桟300Aを用いた配置例を示している。この例では、縦桟300A’’と縦桟300a’とが交互に配置されている。
縦桟300A’’は、第1の形材31Aにおいて、前部311Aの左側に長側部313Aが位置するように組み付けるとともに、これに対応するように第2の形材32Aを組み付けたものである。このような縦桟300A’’では、中空部30Aの容積が中空部30Cの容積よりも大きくなっている。
縦桟300a’は、中央部よりも右方向に直線部331cが偏位し、第1の形材31Aにおいて、前部311Aの左側に長側部313Aが位置するように組み付けるとともに、これに対応するように第2の形材32Aを組み付けたものである。
【0070】
このように異なる縦桟300A’’と縦桟300a’とが交互に配置されることにより、形成される中空部30A,30Cの容積、および開口幅L2の大きさが異なる仕様とすることができ、インピーダンス(音響抵抗)変化を好適に生じさせて所望の周波数域の音を好適に反射することができるとともに、ヘルムホルツ共鳴器により所望の周波数域の音を損失させることができる。
なお、段差部331d,331d’の大きさや偏位方向(第3の形材33Aの向き)、第1,第2の形材31A,32Aの向きを適宜設定することにより、所望の周波数域の音に対応した吸音を実現することができる。
【0071】
図13(a)に示した例では、縦桟300Bを構成する第3の形材33Bの基部331Bに、仕切壁として機能する連結部332Bが十字状に直交しており、この第3の形材33Bで縦桟300B内が4つの中空部30A〜30Dに仕切られている。
【0072】
このように容積の異なる4つの中空部30A〜30Dを有することにより、インピーダンス(音響抵抗)変化を好適に生じさせて所望の周波数域の音を好適に反射することができるとともに、ヘルムホルツ共鳴器により所望の周波数域の音を損失させることができる。
なお、この場合にも、基部331Bの偏位量や偏位方向を適宜設定することにより、所望の周波数域の音を好適に吸音することができる。
【0073】
また、例えば、図13(b)に示すように、縦桟300B’の第3の形材33Bを、図13(a)に示した縦桟300Bと上下方向を逆に配置して、縦桟300B’の前側に容積の一番小さい中空部30Bを配置し、縦桟300B’の後側にこれよりも容積のある中空部30Aを配置するようにしてもよい。
このように配置することによっても、縦桟300B,300B’間を通過する入射音の割合が低減されるようになり、効果的な防音を実現することができる。
【0074】
図14(a)に示した例は、縦桟300Cを一つの押出形材で一体的に形成したものであり、押出成形時にスリットS1が一体的に形成されるものである。
このような縦桟300Cを用いることにより、構成がシンプルなものとなり生産性が向上する。
なお、縦桟300Cは、図14(b)に示すように、隣合う縦桟300Cとの間に、スリットS1を対向させて配置してもよい。
【0075】
次に、図15(a)に示した例は、縦桟300Fの内側に、これを左右に仕切る仕切壁37が設けられており、この仕切壁37を隔てて左側に中空部30Aが形成され、右側に中空部30Cが形成されている。仕切壁37は仕切り位置を中央部から左右方向(ここでは左方向)にずらして設けられており、左側の中空部30Aの容積が右側の中空部30Cの容積よりも小さくなるように設定されている。このような縦桟300Fは、一つの押出形材で一体的に形成することができる。
【0076】
スリットS1,S3は、対向して配置されているが、図15(b)に示すように、前後方向に位置をずらして対向しないように配置してもよい。
また、図15(c)に示すように、縦桟300Cと縦桟300Fとを左右方向に交互に配置してもよい。
【0077】
以上のような縦桟300Fを用いた構成によっても、インピーダンス(音響抵抗)変化を好適に生じさせて所望の周波数域の音を好適に反射することができるとともに、ヘルムホルツ共鳴器により所望の周波数域の音を損失させることができ、縦桟300F,300F間(縦桟300F,300C間)を通過する入射音の割合が低減されるようになり、効果的な防音を実現することができる。
【0078】
また、図16(a)に示すように、平面視で略く字形に折曲形成されたスリットS7を有するように縦桟300Qを設けてもよいし、図16(b)に示すように、通路Rが隣接する縦桟300R,300Rの間に平面視で略く字形となるように、側部312’,313’を形成してもよい。
【0079】
さらに、図16(c)に示すように、隣接する対向面312B、313Bの横断面が、曲線を含んでなるように構成してもよい。
このように構成することによって、縦桟300S,300S間を通り抜ける空気により生じる笛鳴り現象を低減させることが可能になる。
なお、図16(d)に示すように、隣接する対向面312C、313Cの横断面が、よりアールの小さい曲線を含んでなるように縦桟300Tを構成してもよい。
このように構成することによって、笛鳴り現象をより低減させることが可能になる。
【実施例】
【0080】
続いて、本発明の実施例について説明する。
<実施例>
実施例に係る柵として、図10,図11で示した縦桟300A,300aをベースとして、容積の異なる2つのヘルムホルツ共鳴器を交互に配置した4種類の試料(柵F−1、F−2、F−3、F−4)を作成し、後記のように条件を変えて音響透過損失を測定した(音響インテンシティ法音響透過損失試験)。
<試料>
(1)柵F−1は、図17(a)に示すように、縦桟300a’と縦桟300A’’とを交互に配置したものであり、通路R1〜R3に臨むスリットS1,S3を非対向位置に配置したものである。音源は、柵F−1に対して左向きに入射する入射音を発するものを用いた。縦桟300a’および縦桟300A’’は実施形態で説明した仕様である。
(2)柵F−2は、図17(b)に示すように、縦桟300a’’と縦桟300Aとを交互に配置したものであり、通路R1〜R3に臨むスリットS1,S3を非対向位置に配置したものである。音源は、柵F−2に対して右向きに入射する入射音を発するものを用いた。なお、縦桟300a’’は、中央部よりも右方向に直線部331cが偏位し、第1の形材31Aにおいて、前部311Aの左側に短側部312Aが位置するように組み付けるとともに、これに対応するように第2の形材32Aを組み付けたものである。また、縦桟300Aは実施形態で説明した仕様である。
(3)柵F−3は、図17(c)に示すように、縦桟300a’と縦桟300A’とを交互に配置したものであり、通路R1〜R3に臨むスリットS1,S3が非対向位置に配置されたものである。音源は、柵F−3に対して左向きに入射する入射音を発するものを用いた。なお、縦桟300A’は、中央部よりも右方向に直線部331cが偏位し、第1の形材31Aにおいて、前部311Aの左側に長側部313Aが位置するように組み付けるとともに、これに対応するように第2の形材32Aを組み付けたものである。
(4)柵F−4は、図17(d)に示すように、縦桟300a’と縦桟300Aとを交互に配置したものであり、通路R1〜R3に臨むスリットS1,S3が対向位置に配置されたものである。音源は、柵F−4に対して左向きに入射する入射音を発するものを用いた。
なお、各柵F−1〜F−4において、隣接する縦桟間の距離は10[mm]とした。
【0081】
<比較例>
比較例に係る柵として、ヘルムホルツ共鳴器を有しないアルミニウム合金製の押出形材からなる縦桟で、柵N−1を作成した。柵N−1において、隣接する縦桟間の距離は10[mm]とした。
【0082】
<測定環境>
温度:28℃、湿度:48%、気圧:1030hPa。
<使用機器>
マイクロホン:4165(B&K(株)製)、マイクロホンアンプ:NEXUS(B&K(株)製)、インテンシティマイクロホンペア:4178(B&K(株)製)、マイクロホンスペーサ:UC0196(B&K(株)製)、インテンシティプローブ:3545(B&K(株)製)
<試験方法>
まず、各試料を残響室(9.0m)と無響室(3.7m)の間仕切に設置し、周囲を粘土で固定した。次に、残響室内の音源音圧レベルの計測を行い、無響室側に透過してくる音響インテンシティの計測を行った。そして音源音圧レベルと透過音響インテンシティを基に次の算出式により、各試料の音響透過損失TL[dB]を算出した。
TL = Lp−Lw+10logS−6+10log(1+λS1/8V1)
ここで、Lp:音源室内の空間平均音圧レベル[dB]、Lw:透過音のパワーレベル[dB]、S:試料面積[m]、λ:帯域中心周波数の音の波長[m]、S1:音源室の総表面積[m2]、V1:音源室の容積[m3]である。
結果を表1および図18に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
表1および図18に示すように、実施例に係る柵F−1〜F−4は、比較例の柵N−1に比べて、音響透過損失[dB]が向上し、通気性、採光性を有しながら防音機能(遮音機能)を向上させることができた。特に、630Hzを超えたあたりから3150Hzに至る広周波数帯で好適な遮音機能を発揮した。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、図19に示すように、前後方向に4つ以上の中空部30A〜30D、30E〜30Hが連なるように縦桟300Uを構成してもよい。この場合にも複数の形材同士を組み合わせて接合することにより、縦桟300Uを構成することが可能であり、また、一つの形材で一体的に縦桟300Uを構成することもできる。この場合にも、各スリットS1〜S8による通路幅の変化によりインピーダンス(音響抵抗)変化を好適に生じさせて所望の周波数域の音を好適に反射する効果と、ヘルムホルツ共鳴器により所望の周波数域の音を損失させること、との相乗効果によって好適に防音することができる。
【0086】
また、縦桟30は、棒状としたが、板状としてもよい。また、各実施形態や変形例において、縦桟30(300等)は、支柱10間に縦方向(垂直方向)に配置したものを示したが、これに限られることはなく、横方向(水平方向)や斜めに傾斜する方向に配置してもよい。
【0087】
また、縦桟30は、2つの形材を組み合わせて構成してもよく、また、4つ以上の形材を組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 支柱
10a 蓋部材
20,20A 横桟
30 縦桟(中空体)
30A〜30H 中空部
31,31A 第1の形材
32,32A 第2の形材
33,33A,33B 第3の形材
300A〜300D 縦桟(中空体)
300F 縦桟(中空体)
300H〜300N 縦桟(中空体)
300P〜300U 縦桟(中空体)
300a 縦桟(中空体)
311 前部(反射面)
360 吸音材
361 吸音材
363 吸音材
410 吸音板
F,F1 柵
S1〜S3 スリット
S5〜S7 スリット
T 入射音

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空体が間隔を空けて並設されてなる防音構造体であって、
前記複数の中空体は、
音が入射される側に入射音を反射する反射面を有しているとともに、ヘルムホルツ共鳴器として機能する中空部を有し、
前記中空体には、隣接する前記中空体との対向面に前記中空部に連通して長手方向に延びるスリット状の開口部が設けられていることを特徴とする防音構造体。
【請求項2】
前記中空体は、当該中空体の軸方向に延びる2つ以上の形材を組み合わせて構成されており、前記開口部は前記形材同士の対向部によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防音構造体。
【請求項3】
前記中空体は、アルミニウム合金製または樹脂製の押出形材からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防音構造体。
【請求項4】
前記中空部には吸音材が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の防音構造体。
【請求項5】
隣接する前記中空体の対向面は、横断面が曲線を含んで構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の防音構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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