説明

防風雪柵及び防風雪柵の設置方法

【課題】支柱を傾倒させた際に、その傾倒状態を安定的に支持可能となされる共に、専用重機等を用いなくても、比較的容易に支柱の傾倒及び起立作業が可能となる防風雪柵を提供する。
【解決手段】間隔をおいて立設された支柱1間に防風雪部材2が架設され、支柱1は、隣の支柱1に向けて傾倒可能となされると共に、支柱1が傾倒された際に、支柱1の先端部は、同じ方向に傾倒された隣の支柱1の上面と重合されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪地方の道路周辺に設置され、支柱が傾倒可能な防風雪柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積雪地域では強風や積雪から自動車等を防護するために道路に沿って防風雪柵が設置されている。防風雪柵は、冬期の積雪期間のみ必要なものであり、冬期以外の季節では、不要となるばかりではなく、自動車からの景観を損ない、又運転手に対して走行時に不必要な圧迫感を与える恐れがあり、これらの点が問題であった。そこで、防風雪柵の取り外し型や収納型等の様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、防風雪用板や防風雪用シート等の防風雪部材を取り外して、支柱のみをそのままにしたものや、下方向に折り畳み可能なパンタグラフ状で支柱とこの支柱間に架設された上下複数段のルーバー型防風雪板材とから構成されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。前者は、冬期以外では支柱のみが残った状態となり、景観上必ずしもよくない。又、後者は、支柱を一つずつ折り畳んで収納する必要があり、収納時或いは使用時の作業が煩雑である。
【0004】
又、道路脇に立設される複数の支柱間にパネル部材が横架され、支柱は、その基底部が道路に沿って路面下に設けられた収納部内に配設され、この基底部において前記収納部の長手方向に傾倒可能に構成され、前記パネル部材は収納部内に収納され、支柱及びパネル部材の収納状態において収納部の最上部が路面より低くなるように構成された防風雪柵が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この防風雪柵は、収納時の景観を完全に確保することができ、収納期間中の部材の劣化を軽減することができ、設置時のドライバーへの安全配慮と共に降雪期以外においても有効に利用できるものである。
【0006】
【特許文献1】実開昭63−126410号公報
【特許文献2】特開平9−59938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の防風雪柵には次のような問題点があった。すなわち防風雪柵の支柱を収納する際、支柱が収納部に収納されたパネル部材上に載置されると、支柱の荷重によりパネル部材が変形する恐れがあり、一方、支柱の先端部が収納部の底部に接する状態となると、収納部に滞留する雨水等により錆等の腐食が起こる恐れがあり、その点が問題であった。又、支柱は道路路面より低い位置の収納部内に収納されるため、道路路面より低い位置の支柱を起立させたり、逆に、道路路面より低い位置まで傾倒させたりするにはクレーン等の専用重機が必要となることが多く、その点も問題であった。
【0008】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、支柱を傾倒させた際に、その傾倒状態を安定的に支持可能となされる共に、専用重機等を用いなくても、比較的容易に支柱の傾倒及び起立作業が可能となる防風雪柵を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわちこの発明に係る防風雪柵は、間隔をおいて立設された支柱間に防風雪部材が架設され、前記支柱は、隣の支柱に向けて傾倒可能となされると共に、該支柱が傾倒された際に、支柱先端部は、同じ方向に傾倒された隣の支柱の上面と重合されるようになされたことを特徴とするものである。
【0010】
前記支柱は、基礎ブロック上で前後に間隔をあけて立設された縦板部材の間に配置され、一方の縦板部材から支柱を貫通してもう一方の縦板部材まで通された固定ボルトを軸として、隣の支柱に向けて傾倒可能となされると共に、該支柱が傾倒された際に、支柱先端部は、前記固定ボルトより上方に位置するようになされてもよい。
【0011】
又、この発明に係る防風雪柵の設置方法は、道路の路面端部より下向きに傾斜した法面に適宜間隔をあけて基礎ブロックを突設し、該基礎ブロック上に、隣の支柱に向けて傾倒可能となされ支柱を立設すると共に、各支柱が傾倒された際に、各支柱先端部が、同じ方向に傾倒された隣の支柱の上面と重合され、且つ各支柱の側面が道路の路面より下方に位置するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、間隔をおいて立設された支柱間に防風雪部材が架設され、前記支柱は、隣の支柱に向けて傾倒可能となされると共に、該支柱が傾倒された際に、支柱先端部は、同じ方向に傾倒された隣の支柱の上面と重合されるようになされているので、支柱が傾倒した状態を安定に支持することが可能となる。加えて、作業者が法面の下側に位置して、支柱を起立作業や傾倒作業を行う場合、地面に直接載置された支柱に比べて、比較的高い位置で前記作業が可能となり作業者の負荷を軽減させることができる。
【0013】
本発明に係る防風雪柵において、支柱は、基礎ブロック上で前後に間隔をあけて立設された縦板部材の間に配置され、一方の縦板部材から支柱を貫通してもう一方の縦板部材まで通された固定ボルトを軸として、隣の支柱に向けて傾倒可能となされると共に、該支柱が傾倒された際に、支柱先端部は、前記固定ボルトより上方に位置するようになされれば、支柱を起立作業や傾倒作業を行う場合、作業者の負荷をより軽減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0015】
すなわち、
図1は本発明に係る防風雪柵の実施の一形態を示す正面図、図2は図1のA−A断面における拡大縦断面図、図3は図1の側面図、図4は図3の部分拡大図、図5は本発明に係る防風雪柵の収納状態の一形態を示す正面図、図6は図5のC−C断面における拡大縦断面図、図7は図5の斜視図である。
【0016】
先ず図1〜7は本発明に係る防風雪柵の実施の一形態を示すもので、図1は道路側から見た正面図である。図1に示すように、間隔をおいて立設された支柱1の間に防風雪部材2が架設され、防風雪柵Pが形成されている。支柱1は、縦板状の2個のフランジ11とその間に配置された縦板状のウエブ12とからなる断面H型の鋼材であり、その表面は塗装やめっき等の処理が施されている。支柱1の材料は、大きな風圧のかかる防風雪部材2が架設されることを考慮すると金属製のものを用いるのが好ましく、一般的なH形鋼、アルミニウム、ステンレス、鉄鋼等の型材やパイプ等を適宜用いることができる。又、支柱1の上端には横桟13が架設されており、支柱1の間隔を保持すると共に、防風雪柵Pの剛性を高めることができる。
【0017】
防風雪部材2は、本実施形態においては、合成樹脂製の繊維からなる縦糸と横糸とによってネット状に形成されたものであり、縦糸と横糸との交点において互いに編み込まれて容易に解れないようになされたものである。尚、防風雪部材2は、本実施形態に限られるものではなく、例えば、金属製の線材から構成されるものでもよく、或いは樹脂シートに多数の透孔を穿設したものでもよく、必要とされる強度や開口率等によって適宜選択することができる。又、本実施形態においては、収納性や運搬の容易性を考慮して、防風雪部材2が巻き取り可能となるように可撓性を有するものであるが、例えば、複数の帯状部材が折り曲げ可能に連結されて折り畳み可能な形態となされたものでもよい。
【0018】
図2は図1のA−A断面における拡大縦断面図である。防風雪部材2は、その両端部を支持する支持部材3を介して支柱1の間に架設されている。支持部材3は、防風雪部材2が巻き付けられる断面矩形状の軸部材31と、巻き付けられた軸部材31との間で防風雪部材2を挟持する断面L字状の押さえ部材32とからなる。そして、防風雪部材2の両側端部は、上下に亘って支持部材3が取付けられると共に、支柱1のウエブ12から固定ボルトBが挿入され、押さえ部材及び防風雪部材2を経て軸部材31に挿通され、ワッシャW1及びナットN1で締結されている。そして、ナットN1の締結位置を適宜調節することによって、支柱1の間で防風雪部材2を左右方向に張設する。支持部材3は、支柱1の間に防風雪部材2を張設できるものであればよく、例えば、防風雪部材2の側端部を支持する支持部と、ボルトBを介して支柱1に連結される連結部とが別体で形成されたものでもよい。支持部材3は、大きな風圧が加わる防風雪部材2を支持することを考慮すると金属製のものを用いるのが好ましく、アルミニウム、ステンレス、鉄鋼等のパイプ、形材や、それらにめっき、塗装を施したもの等を好適に用いることができる。
【0019】
図3は図1の側面図である。支柱1は、道路の路面Rの端部より下向きに傾斜した法面Sに適宜間隔をおいて突設された基礎ブロック4の上に立設されている。基礎ブロック4の上面には支柱1を支えるための支持台5が取付けられている。
【0020】
支持台5は、コンクリートの基礎ブロック4上に載置され、アンカーボルトB2によって固定されるベースプレート51と、このベースプレート51上に前後方向に間隔をあけて相対して形成された縦板部52とを備え、この両縦板部52の間に支柱1の下部が配置されて固定されている。そして、両縦板部52の上縁部は道路の路面Rと同じ高さかそれより低くなされている。縦板部52は、相対する縦板部52の反対面から縦リブが形成され、この縦リブの下端部がベースプレートに接合されている。本実施形態においては、縦リブは間隔をおいて2個設けられているが、縦板部52の支持するために必要な個数を適宜設けてよい。
【0021】
図4は、図3の支柱1の下部を拡大したものであり、(a)は拡大側面図、(b)は(a)のA−A断面における縦断面図である。支柱1は、支持台5の一方の縦板部52から支柱1の下部を経て、もう一方の縦板部52に挿通された固定ボルトB3により固定されている。固定ボルトB3は、支柱1の下部において、一方のフランジ11を通り、ウエブ12に形成された挿通孔14を経て、もう一方のフランジ11を通り、外部からは見えないようになされている。そして、この固定ボルトB3は、上下2段に設けられているので、固定ボルトB3の一方を外せば、もう一方の固定ボルトB3を軸として、支柱1が左右方向に傾倒可能となされている。
【0022】
支持台5のベースプレート51には、支柱1のウエブ12において縦板状の一方の面に当接される当て板部53が設けられている。これにより、支柱1を左右方向に傾倒させる際、傾倒方向をいずれか一方のみに規制することができ、又、支柱1を傾倒状態から立設させる時は、支柱1が略垂直に立設された状態から更にそれを超えて反対方向に傾倒することはなく、支柱1の立設作業が容易となる。支持台5は、支柱1を支持することを考慮すると金属製のものを用いるのが好ましく、アルミニウム、ステンレス、鉄鋼等の板材や形材を溶接等で接合して形成したものや、それらにめっき、塗装を施したもの等を好適に用いることができる。
【0023】
図5〜7は、図1において、防風雪部材2を収納して支柱1を左方向に傾倒させた後の状態を示すものであり、図5は支柱1の傾倒状態を示す部分拡大正面図、図6は図5のC−C断面における縦断面図、図7は図5の斜視図である。まず、防風雪部材2の収納は、本実施形態では、防風雪部材2の端部において一方の支持部材3を支柱1から外し、この支持部材3を芯として、もう一方の支持部材3側に向けて防風雪部材2を巻き取り、防風雪部材2が支柱1に取付られた状態で、支柱1のH形の内側に収納するようにしたものである。尚、防風雪部材2の両側の支持部材3を支柱1から外して収納してもよい。
【0024】
次に、支柱1の下部において、上方の固定ボルトB3を外して、残った下方の固定ボルトB3を回動軸として支柱1を左側の隣の基礎ブロック4側に向けて傾倒させる。この時、作業者は、基礎ブロック3より下った側の法面Sに位置して支柱1の傾倒作業を行えば、水平面上に立設された同様な支柱を傾倒させる場合に比べて、作業者は比較的高い位置で支柱1を持って作業することができるので、作業者への負荷が低減され、作業性を向上させることができる。
【0025】
そして、傾倒させた支柱1の先端部15を、同方向に倒した隣の支柱1の上面に重合させる。これにより、支柱1の先端部15は、地面に接触せず地面より上方で保持されるので、支柱1の傾倒時に、支柱先端部が雨水等により錆等の腐食が起こりにくくなる。又、前記下方の固定ボルトB3を回動軸に支柱1を傾倒させているので、支柱1の先端部15を傾倒された隣の支柱1の上面に重合した際、支柱1の先端部15は回動軸の固定ボルトB3より高い位置で保持されることとなり、支柱1を傾倒させる際、或いは立設させる際、作業負荷がより軽減されると共に、支柱1は回動軸の固定ボルトB3側が低い傾斜状態となるので、支柱1及び支柱1の内側に収納された防風雪部材2の箇所に雨水等が滞留せず、腐食等の不具合を防ぐことができる。
【0026】
更に、本実施形態においては、傾倒させた支柱1の先端部15は、隣の基礎ブロック4上に取付けられた支持台5の縦板部52の間に配置されている。これにより、傾倒させた支柱1は、前後方向への移動が縦板部52により阻止されるため、不用意に前後方向にずれて生じる変形等の不具合は起こりにくくなる。
【0027】
加えて、傾倒させた支柱1の先端部15は、道路の路面Rより、低い位置で保持されている。これにより、支柱1を傾倒させた状態では、道路を通行する自動車等からの運転手からは、支柱1が見えにくく、景観を損なうことがない。このように、防風雪柵Pが不要となる期間は防風雪柵Pを別の場所へ移動させることがなく、設置場所に防風雪柵Pの支柱1等の部材を収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る防風雪柵の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面における拡大縦断面図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】本発明に係る防風雪柵の収納状態の一形態を示す正面図である。
【図6】図5のC−C断面における拡大縦断面図である。
【図7】図5の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 支柱
11 フランジ
12 ウエブ
15 先端部
2 防風雪部材
3 支持部材
4 基礎ブロック
5 支持台
52 縦板部
B3 固定ボルト
P 防風雪柵
R 道路の路面
S 法面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて立設された支柱間に防風雪部材が架設され、前記支柱は、隣の支柱に向けて傾倒可能となされると共に、該支柱が傾倒された際に、支柱先端部は、同じ方向に傾倒された隣の支柱の上面と重合されるようになされたことを特徴とする防風雪柵。
【請求項2】
前記支柱は、基礎ブロック上で前後に間隔をあけて立設された縦板部材の間に配置され、一方の縦板部材から支柱を貫通してもう一方の縦板部材まで通された固定ボルトを軸として、隣の支柱に向けて傾倒可能となされると共に、該支柱が傾倒された際に、支柱先端部は、前記固定ボルトより上方に位置するようになされたことを特徴とする請求項1に記載の防風雪柵。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の防風雪柵を設置する方法であって、道路の路面端部より下向きに傾斜した法面に適宜間隔をあけて基礎ブロックを突設し、該基礎ブロック上に、隣の支柱に向けて傾倒可能となされ支柱を立設すると共に、各支柱が傾倒された際に、各支柱先端部が、同じ方向に傾倒された隣の支柱の上面と重合され、且つ各支柱の側面が道路の路面より下方に位置するようにしたことを特徴とする防風雪柵の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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