説明

阻止バーホルダーのリリース制限機構

【課題】阻止バーに受ける風圧などの影響を受けずに、設定したリリース回転制限力を一定する。
【解決手段】連結部材は長さ方向が阻止バー駆動用回転軸と直交するように結合して阻止バー駆動用回転軸の回転に伴い回転する。阻止バーホルダーは阻止バーを保持し、ホルダー回転軸を中心に回転可能に連結部材に搭載される。連結部材の長さ方向の端に係止片が形成され、ボールとバネを有するリリース力調整子を備える。阻止バーホルダーは係止片内のボールによりホルダー回転軸と直交した力を与えられる。ボールに力を与えるバネの定数は阻止バー駆動用回転軸の回転に伴って変化せず、ボールが阻止バーホルダーの凹部に嵌入して、阻止バー駆動用回転軸の回転、風圧による微力に抗して、阻止バーホルダーの連結部材からのリリースを制限するので、一定衝撃力以上に反応して安定してリリースできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の通過を制御するゲート装置に関し、その阻止バーのリリースを制限する機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば駐車場ゲート及びETCゲートにおいて、車両が阻止バーに衝突して破損するケースが多くあった(図2)。
この破損を防ぐために、ゲート装置に、車両接触時阻止バーを車両進行方向に回転(リリース)させ(図3)てダメージを軽減するリリース機構を備えるものがある。このリリース機構に付随してゲートバーが通常の運用状態でむやみにリリースしないようにする必要がある。例えば、風圧によるバーの回転を防止するため、リリースする条件として風圧による力を基準としたリリース制限力を設定している。
【0003】
図4はリリース制限力を設定する機構を説明する従来例であり、図4(a)は平面図、図4(b)は正面図である。図4において、401は阻止バー駆動装置、402は連結部材、403は阻止バー駆動用回転軸、404はホルダー回転軸、405は阻止バーホルダー、407は阻止バー、408はリリース力調整子である。
連結部材402はその長さ方向が阻止バー駆動用回転軸403と直交するようにその先端に配設される。阻止バー駆動用回転軸403は阻止バー駆動装置401の制御により往復回転する。連結部材402は断面コ字状を形成し、その長さ方向と阻止バー駆動用回転軸403とに直交してホルダー回転軸404を配設する。連結部材402はホルダー回転軸404に連結して阻止バーホルダー405を搭載する。阻止バーホルダー405は回転状態により連結部材402内に収納され互いの長さ方向が一致するようになる。阻止バーホルダー405には阻止バー407が挿入され、図示しない機構により保持している。
連結部材402の断面コ字状を形成するいずれかの側面にリリース力調整子408が設けられる。リリース力調整子408は、円筒部材4081と、その内部に設けたメネジに合うオネジ4082と、オネジ4082の先端部に接触するコイルバネ4083と、コイルバネ4083の先端に位置してその反発力を受けるボール4084からなり、ボール4084は円筒部材4081の先端の係止部4085により飛び出しを制限され、係止部4085に設けた孔により外部に露出する。
阻止バーホルダー405が連結部材402に収納されている状態で、リリース力調整子408のボール4084が対向する阻止バーホルダー405の側面に設けた凹部に嵌入して、阻止バーホルダー405の連結部材402からの回転リリースを制限する。
【0004】
運用時、阻止バー407に阻止バーホルダー405を装着した状態で、車両の運行に応じて阻止バー駆動用回転軸403を制御して、阻止バー407を阻止バー駆動用回転軸403に直交する面内に回転移動させて、車両の通行を制御している。この制御にもかかわらず何らかの理由で、車両が阻止バー407閉じているときに通行しようとすると阻止バー407と衝突する。衝突による阻止バー407の破壊を防ぎ損傷を少なくするため、阻止バーホルダー405は、リリース制御機構408のコイルバネ4083による回転制限に抗して、ホルダー回転軸404を中心に回転させ衝撃を和らげる。
このとき、リリース制御機構408によるリリース回転制限はコイルバネ4083の調整により行っているが、コイルバネ403の配置方向を阻止バーホルダー405の長さ方向に直交し、阻止バー駆動用回転軸403による往復回転に伴う阻止バーホルダー405の移動面に平行にしているので、阻止バー駆動用回転軸403による往復回転にともない、コイルバネ4083の伸縮方向に負荷が加わり、バネ定数が変化し、リリース回転制限力が変化するおそれがあった。変化する風圧の状況下で使用する場合に、設定したリリース回転制限力を一定することが困難なこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4171567号公報
【特許文献2】特許第4183582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、運用時の阻止バーの車両制御のための回転時に受ける風圧などの影響を受け、設定したリリース回転制限力を一定することが困難なこととなることであり、本発明はリリース回転制限力が一定な阻止バーホルダーのリリース制限機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る阻止バーホルダーのリリース制限機構は、長手状の部材であって長さ方向が阻止バー駆動用回転軸と直交するように結合して前記阻止バー駆動用回転軸の回転に伴い回転する連結部材と、阻止バーを一端部から挿入し保持するための長手状の筒状部材であって、前記連結部材の長さ方向に対し直角に形成したホルダー回転軸を中心に回転可能に搭載される阻止バーホルダーと、前記連結部材の前記一端部の辺部に形成された側部であって、ボールにバネの力を与えてリリース制限力を発生するリリース力調整子を挿入し当該連結部材の長さ方向の通過孔を備えた係止側部と、前記阻止バーホルダーがホルダー回転軸周りで連結部材方向の回転を当該連結部材により制限された状態で、当該阻止バーホルダーの長さ方向について前記一端部に対向する他端部の前記係止側部に対向する面に設けられ当該係止側部に備えられるボールがバネの押力により嵌入できる凹部を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る阻止バーホルダーのリリース制限機構によると、阻止バーホルダーは係止側部内のボールによりホルダー回転軸と直交した力を与えられ、ボールに力を与えるバネの定数は阻止バー駆動用回転軸の回転に伴って変化することはなく、ボールが阻止バーホルダーの凹部に嵌入して、阻止バー駆動用回転軸の回転、また風圧による微力に抗して、阻止バーホルダーの連結部材からのリリースを制限することができる。また、バネのバネ定数を変化させることなく一定衝撃力以上に反応して安定してリリースさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1−1】リリース制限機構の実施例を説明する図である。
【図1−2】リリース力調整子の実施例を説明する図である。
【図2】ゲート装置の破損を説明する図である。
【図3】ゲート装置のリリースを説明する図である。
【図4】従来のリリース制限機構を説明する図である。
【実施例1】
【0010】
図1−1は本発明によるリリース制限機構を説明する実施例の図であり、図1−1(a)は平面図、図1−1(b)は正面図である。図1において、101は阻止バー駆動装置、102は連結部材、103は阻止バー駆動用回転軸、104はホルダー回転軸、105は阻止バーホルダー、106は係止側部、107は阻止バー、108はリリース力調整子である。
阻止バー駆動装置101は阻止バー駆動用回転軸103を備える。阻止バー駆動用回転軸103は阻止バー駆動装置101の制御により往復回転する。連結部材102はその長さ方向が阻止バー駆動用回転軸103と直交するようにその先端に配設され、結合される。連結部材102は断面コ字状を形成し、その長さ方向と阻止バー駆動用回転軸103とに直交してホルダー回転軸104を配設する。連結部材102はホルダー回転軸104に連結して阻止バーホルダー105を搭載する。阻止バーホルダー105は回転状態により連結部材102内に収納され互いの長さ方向が一致するようになる。連結部材101は、その長さ方向においてホルダー回転軸104が配設される方向とは反対側端に係止側部106を形成する。阻止バーホルダー105には阻止バー107が挿入され、図示しない機構により保持している。阻止バーホルダー105の長さ方向において阻止バー107を挿入する開口部1051が設けられる反対方向の面に凹部1052を設ける。
連結部材102の係止側部106にリリース力調整子108が設けられる(図1−2(c))。リリース力調整子108は、円筒部材1081と、その内部に設けたメネジに合うオネジ1082と、オネジ1082の先端部に接触するコイルバネ1083と、コイルバネ1083の先端に位置してその反発力を受けるボール1084からなり、ボール1084は円筒部材1081の先端の係止部1085により飛び出しを制限され、係止部1085に設けた孔により外部に露出する。
リリース力調整子108の他の実施例を図1−2(d)に示す。連結部材102の係止側部106にリリース力調整子108が設けられる(図1−2(c))。リリース力調整子108は、係止側部106に直接メネジを形成し、その内部にメネジに合うオネジ1082と、オネジ1082の先端部に接触するコイルバネ1083と、コイルバネ1083の先端に位置してその反発力を受けるボール1084からなり、ボール1084は係止側部106の係止部1085により飛び出しを制限され、係止部1085に設けた孔により外部に露出する。
阻止バーホルダー105が連結部材102に収納されている状態で、リリース力調整子108のボール1084が対向する阻止バーホルダー105の凹部1052に嵌入して、バーホルダー105の連結部材102からの回転リリースを制限する。
【0011】
運用時、阻止バー107に阻止バーホルダー105を装着した状態で、車両の運行に応じて阻止バー駆動用回転軸103を制御して、阻止バー107を阻止バー駆動用回転軸103に直交する面内に回転移動させて、車両の通行を制御している。何らかの理由で、車両が阻止バー107閉じているときに通行しようとして阻止バー107と衝突する。
阻止バーホルダー105は、リリース制御機構108のコイルバネ1083による回転制限に抗して、ホルダー回転軸104を中心に回転させ衝撃を和らげる。
このとき、リリース制御機構108によるリリース回転制限はコイルバネ1083の調整により行っているが、コイルバネ1083は係止側部1085に設けたリリース制御機構108内に配置しているから、コイルバネ1083の反発力の方向はホルダー回転軸104に直交し、ボール1084に力を与えるコイルバネ1083の定数は阻止バー駆動用回転軸103の回転に伴って変化することはなく、阻止バーホルダー105の凹部1052に嵌入して、阻止バー駆動用回転軸103の回転により、また風圧による微力により、阻止バーホルダー105の連結部材102からのリリースを制限することができ、コイルバネ1083のバネ定数を変化させることなく一定衝撃力以上に反応して安定してリリースさせることができる。
【0012】
リリース力調整子108の他の実施例を図1−2(e)、図1−2(f)に示す。図1−2(e)の実施例は、図1−2(c),(d)のボール1084を、曲面を有するカムとしたものである。連結部材102の係止側部106にリリース力調整子108が設けられる(図1−2(e))。リリース力調整子108は、係止側部106に直接メネジを形成し、その内部にメネジに合うオネジ1082と、オネジ1082の先端部に接触するコイルバネ1083と、コイルバネ1083の先端とカム1086の間に接触するように位置してコイルバネ1083の反発力をカム1086に伝える伝達皿1087とからなる。カム1086に支持軸1088を備え、その支持軸1088の両端は係止側部106のメネジを形成する面に設けた上下方向に沿う溝1089にはまる。この溝1089は、リリース力調整子108が係止側部106に設けられたときに、支持軸1088がホルダー回転軸104と平行になるように形成される。カム1086は、係止側部106の係止部1085により飛び出しを制限され、係止部1085に設けた孔により外部に露出する。カム1086が係止部1085から露出する部分は、阻止バーホルダー105の凹部1052に嵌入して、阻止バー駆動用回転軸103の回転により、また風圧による微力により、阻止バーホルダー105の連結部材102からのリリースを制限することができる。阻止バー107がホルダー回転軸104を中心に回転しようとする力が加わると、その所定以上の力によりカム1086はコイルバネ1083に押されながら支持軸1088を中心にして回転し、溝1089に沿って移動し、コイルバネ1083のバネ定数を変化させることなく一定衝撃力以上に反応して安定してリリースさせることができる。
図1−2(e)では、カム1086の形状はほぼ球状であるが、支持軸1087方向に短い円盤状であってもよく、円でなくとも曲面を形成すればよい。また、図1−2(c)のように円筒部材を形成しその中にオネジメネジを形成しスプリング、カム、伝達皿を収納したものとしてもよい。このとき、阻止バーホルダー105の凹部1052はカム1086が形成する幅に合った幅を形成すればよい。
【符号の説明】
【0013】
101 阻止バー駆動装置
102 連結部材
103 阻止バー駆動用回転軸
104 ホルダー回転軸
105 阻止バーホルダー
106 係止側部
107 阻止バー
108 リリース力調整子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手状の部材であって長さ方向が阻止バー駆動用回転軸と直交するように結合して前記阻止バー駆動用回転軸の回転に伴い回転する連結部材と、
阻止バーを一端部から挿入し保持するための長手状の筒状部材であって、前記連結部材の長さ方向に対し直角に形成したホルダー回転軸を中心に回転可能に搭載される阻止バーホルダーと、
前記連結部材の前記一端部の辺部に形成された側部であって、ボールにバネの力を与えてリリース制限力を発生するリリース力調整子を挿入し当該連結部材の長さ方向の通過孔を備えた係止側部と、
前記阻止バーホルダーがホルダー回転軸周りで連結部材方向の回転を当該連結部材により制限された状態で、当該阻止バーホルダーの長さ方向について前記一端部に対向する他端部の前記係止側部に対向する面に設けられ当該係止側部に備えられるボールがバネの押力により嵌入できる凹部を備えることを特徴とする阻止バーホルダーのリリース制限機構。


【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−168987(P2011−168987A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32061(P2010−32061)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000176730)三菱プレシジョン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】