説明

除塵システム

【課題】除塵機能と排気機能とをともに持たせたハンディタイプの除塵システムを提供する。
【解決手段】加圧エア供給源40から供給される加圧エアに対し、高電圧を印加することによりイオン化してイオン化エアを噴射するイオナイザ10を用いる除塵システム1であって、加圧エア供給源40から供給される加圧エアにより真空を発生する真空発生器22と、真空発生器22の吸引口に接続される吸引部23と、を有する真空発生ユニット20を備える。真空発生ユニット20は、イオナイザ10から噴射されたイオン化エアが除塵対象物70に噴射されて飛散した塵埃を含む排気エアを、真空発生ユニット20の吸引部23を通じて吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除塵対象物から塵埃を除去する除塵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
除塵システムは用途別に多数のシステムが開発されているが、その一つとしてペン型イオナイザを用いた除塵システムがある。このようなペン型イオナイザを用いる除塵システムの従来技術について図4を参照しつつ説明する。
【0003】
図4に示す除塵システム200はイオナイザ210を備える。さらに、このイオナイザ210は、高電圧駆動部211、共通ライン212、ペン型イオナイザ213を備えている。高電圧駆動部211はエア供給線220を介して加圧エア供給源230に接続されている。また、高電圧駆動部211は電力供給線240を介して電源250に接続されている。
【0004】
加圧エア供給源230から供給される加圧エアは、高電圧駆動部211に送られる。 高電圧駆動部211では内部流路を経て共通ライン212内の図示しない流路を通じてそのまま加圧エアが送られる。最終的に加圧エアはペン型イオナイザ213に供給される。
【0005】
一方、電源250から供給される電力は、高電圧駆動部211にて高電圧信号に変換される。そして高電圧信号は内部回路および共通ライン212内の図示しないケーブルを経て最終的にペン型イオナイザ213に供給される。
【0006】
ペン型イオナイザ213では加圧エアが通過する箇所に図示しない電極が配置されており、この電極に高電圧信号が印加されて電極周囲にイオンを生成し、このイオンを含む加圧エアをイオン化エアとして噴射する。作業者がペン型イオナイザ213を除塵対象物260に向けてイオン化エアを噴射することで、静電気により付着した微細な塵埃が除去される。除塵システム200はこのようなものである。
【0007】
また、このようなペン型イオナイザの他の従来技術として、例えば、特許文献1(国際公開WO2007/013182号公報、発明の名称「ハンディタイプイオナイザ」)により開示されたものも知られている。このハンディタイプイオナイザは、特に電極の配置に特徴を持たせたものである。
【0008】
特許文献1のハンディタイプイオナイザは除塵ではなく除電を目的とするものであるため、塵埃が飛散する点を考慮した記載はない。一般にイオナイザでは除塵された塵埃が空中に飛散するおそれがあり、通常は塵埃を他の外部領域へ排気する。このようなイオナイザの一例として、例えば、特許文献2(特開平11−319741号公報、発明の名称「除塵方法及び除塵装置」)により開示されたものが知られている。この従来技術では基板又はシートという除塵対象物に吐出ノズルからイオン化空気を吹き付けて塵埃を飛散させ、この塵埃を吸引ノズルを通じて排気するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO2007/013182号公報(図1)
【特許文献2】特開平11−319741号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先に説明したように、特許文献2のように大型の除塵装置では塵埃の吸引除去が行われているが、特に図4の除塵システムや特許文献1に記載の「ハンディタイプイオナイザ」では扱い易さや持ち運び易さ等が優先されており、除塵後に飛散する塵埃の除去についてまでは考慮されていない。塵埃が飛散したままでは他の除塵対象物に塵埃が付着するおそれもあり、問題があるものであった。吸引除去機能を有する小型でハンディタイプの除塵システムは存在せず、開発が望まれていた。
また、このような吸引除去機能を有する小型でハンディタイプの除塵システムでは真空ポンプ等が使用できない環境にあることが多く、このような環境下でも使用できるようにしたいという要請もあった。
【0011】
そこで、本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、除塵機能と排気機能とをともに持たせたハンディタイプの除塵システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る除塵システムは、
加圧エア供給源から供給される加圧エアに対し、高電圧を印加することによりイオン化してイオン化エアを噴射するイオナイザを用いる除塵システムであって、
加圧エア供給源から供給される加圧エアにより真空を発生する真空発生器と、真空発生器の吸引口に接続される吸引部と、を有する真空発生ユニットを備え、
真空発生ユニットは、イオナイザから噴射されたイオン化エアが除塵対象物に噴射されて飛散した塵埃を含む排気エアを、真空発生ユニットの吸引部を通じて吸引することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る除塵システムは、
請求項1に記載の除塵システムにおいて、
前記イオナイザは、
加圧エア供給源から供給される加圧エアを入力し、電源から供給される電力を用いて高電圧を発生する高電圧駆動部と、
高電圧駆動部に接続され、加圧エアと高電圧とが出力される共通ラインと、
共通ラインに接続され、高電圧により発生したイオンを加圧エアに載せてイオン化エアとして出力するペン型イオナイザと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る除塵システムは、
請求項2に記載の除塵システムにおいて、
前記高電圧駆動部を第1ユニットとし、
前記真空発生器を収納する収納部を第2ユニットとし、
ほぼ同一形状の第1,第2ユニットを並置するシステムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、除塵機能と排気機能とをともに持たせたハンディタイプの除塵システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を実施するための形態の除塵システムの構成図である。
【図2】本発明を実施するための他の形態の除塵システムの構成図である。
【図3】本発明を実施するための形態の除塵システムの外観図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は正面図である。
【図4】従来技術の除塵システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、本発明を実施するための形態の除塵システムについて図1を参照しつつ以下に説明する。なお、従来技術と重複する説明もあるが、説明の明瞭化のため再掲する。
図1に示す除塵システム1はイオナイザ10、真空発生ユニット20を備える。
【0018】
イオナイザ10は、高電圧駆動部11、共通ライン12、ペン型イオナイザ13を備えている。
真空発生ユニット20は、エア分岐線21,真空発生器22、吸引部23、排気部24を備える。
高電圧駆動部11はエア供給線30を介して加圧エア供給源40に接続されている。また、高電圧駆動部11は電力供給線50を介して電源60に接続されている。
【0019】
加圧エア供給源40は、例えば送風ポンプに接続されてクリーンルーム内に引き込まれた加圧エア供給管の接続部等である。この加圧エア供給源40から供給される加圧エアは、高電圧駆動部11に送風される。高電圧駆動部11での加圧エアは内部流路を経て外部のフィルタ11aを通過する。このフィルタ11aで異物が除去された加圧エアは、内部流路から共通ライン12内の図示しない流路を通流し、ペン型イオナイザ13に供給される。
【0020】
なお、ペン型イオナイザ13には図示しないスイッチが設けられ、このスイッチを押すと図示しない電磁弁が開成して加圧エアが流れ、スイッチを押さずに開放すると電磁弁が閉成して加圧エアが流れなくなる。この電磁弁は高圧駆動部11内に配置されており、スイッチのオン・オフ信号は共通ライン12内の制御線を介して駆動回路に出力され、この駆動回路により電磁弁が制御されることとなる。
【0021】
一方、商用電源等である電源60から供給される電力は、高電圧駆動部11にて高電圧信号に変換される。そして高電圧信号は内部回路および共通ライン12内の図示しないケーブルを経て最終的にペン型イオナイザ13に供給される。ペン型イオナイザ13では加圧エアが通過する箇所に図示しない電極が配置されている。
【0022】
ペン型イオナイザ13の図示しないスイッチが押下されると、上記電磁弁が開成して加圧エアが流れると同時にこの電極に高電圧が印加されて電極周囲にイオンを生成し、このイオンを含む加圧エアをイオン化エアとして噴射する。作業者がペン型イオナイザ13を除塵対象物70に向けてイオン化エアを噴射することで、塵埃が除去される。スイッチが開放されると上記電磁弁が閉成して加圧エアの噴射終了とともにイオン生成も終了する。
【0023】
続いて真空発生ユニット20について説明する。
真空発生器22の吸引口には吸引部23が、また、排気口には排気部24がそれぞれ接続され、さらに中央ではエア分岐線21が接続されている。吸引部23や排気部24は弾性を有する部材(例えばチューブや折り曲げ可能な金属管など)であり、適宜最適位置にて吸引・排気できるようになされている。エア供給線30から分岐するエア分岐線21を通じて真空発生器22へも加圧エアが供給される。加圧エアは排気部24へ流れるようになされており、加圧エアが高速に流れるときにベンチュリー効果により真空が発生し、塵埃が合流した排気エアが吸引部23から真空へ流れ込み、集塵回収エアとして排気部24を通じて外部領域へ排気される。例えば、クリーンルームなどではグレーティング床として下面に塵埃が流れ込むようになされており、このグレーティング床内まで引き込まれるチューブ状の排気部24とすれば塵埃は確実に外部領域へ除去される。
【0024】
なお、本形態では、イオン化エアの噴射・停止はスイッチにより制御されるが、真空発生ユニット20は常に吸引状態であって排気エアや大気を常時吸引することを想定している。しかしながら、例えば、真空発生ユニット20内のエア分岐線21の途中にも電磁弁を配置し、共通ライン12内の制御線が真空発生ユニット20内まで配線されて電磁弁の駆動回路と接続されており、ペン型イオナイザ13の図示しないスイッチが押下されると、イオン化エアの生成開始とともに、スイッチのオン・オフ信号がこの制御線を介して真空発生ユニット20内の駆動回路を制御して電磁弁が開成されて排気エアの吸引が開始され、また、スイッチを開放すると、イオン化エアの生成終了とともに、電磁弁が閉成されて真空発生ユニット20を動作停止させるようにしても良い。さらには駆動回路にタイマ回路を併せて設け、スイッチが開放されると同時にイオン化エアの噴射は停止するも真空発生ユニット20はスイッチ開放から所定時間(例えば10秒間)動作させて排気エアを確実に吸引するようにしても良い。除塵システム1はこのようなものである。
【0025】
このような除塵システムによれば、特に真空ポンプのような大型装置を不要とし、加圧エアのみ用いて噴射と吸引との両方を行えるようにしており、ハンディタイプとして利用できる。
【0026】
続いて、本発明を実施するための他の形態の除塵システム2について図2を参照しつつ以下に説明する。図1に示す除塵システム1と比較するとイオナイザ10については同じであるが真空発生ユニット20に代えて新たな真空発生ユニット80とした点が相違する。この真空発生ユニット80の説明に重点を置き、構成が同じイオナイザ10については同じ番号を付すとともに重複する説明を省略する。また、エア供給線30、加圧エア供給源40、電力供給線50、電源60についても同様であり重複する説明を省略する。
【0027】
真空発生ユニット80は、エア分岐線81,真空発生器82、吸引部83、排気部84、収納部85を備える。
真空発生器82の吸引口には吸引部83が、また、排気口には排気部84がそれぞれ接続され、さらに中央ではエア分岐線81が接続されている。吸引部83や排気部84は弾性を有しており、適宜最適位置にて吸引・排気できるようになされている。エア供給線30から分岐するエア分岐線81を通じて真空発生器82へも加圧エアが供給される。加圧エアは排気部84へ流れるようになされており、加圧エアが高速に流れるときにベンチュリー効果により真空が発生し、塵埃が合流した排気エアが吸引部83から真空へ流れ込み、集塵回収エアとして排気部84を通じてフィルタ90へ排気される。この集塵回収エアがフィルタ90を通過するとフィルタ90からは塵埃が除去されたエアが流出する。そして、排気ダクト接続部100を介して排気管へ流入する。例えば、クリーンルーム外へ排気される排気管が設置されており、この排気管を通じて塵埃は確実に外部領域へ除去される。
【0028】
なお、本形態では真空発生ユニット80は常に吸引状態であって排気エアや大気を常時吸引することを想定しているが、例えば、真空発生ユニット80内のエア分岐線81の途中に電磁弁を配置し、共通ライン12内の制御線が真空発生ユニット80内まで配線されて電磁弁の駆動回路と接続されており、ペン型イオナイザ13の図示しないスイッチが押下されると、イオン化エアの生成開始とともに、スイッチのオン・オフ信号がこの制御線を介して真空発生ユニット80内の駆動回路を制御して電磁弁が開成されて排気エアの吸引が開始され、スイッチを開放すると電磁弁が閉成されて真空発生ユニット80を動作停止させるようにしても良い。さらには駆動回路にタイマ回路を併せて設け、スイッチが開放されると同時にイオン化エアの噴射は停止するも真空発生ユニット80はスイッチ開放から所定時間(例えば10秒間)動作させて排気エアを確実に吸引するようにしても良い。除塵システム2はこのようなものである。
【0029】
このような除塵システムによれば、特に真空ポンプのような大型装置を不要とし、加圧エアのみが噴射と吸引との両方を行えるようにしており、ハンディタイプとして利用できる。
【0030】
続いて、上記した除塵システム2の外観について図3を参照しつつ説明する。図3(a)の平面図,図3(b)の正面図で示すように高電圧駆動部11を箱状の第1ユニットとし、真空発生器82を収納する収納部85を箱状の第2ユニットとした。そして第1ユニットおよび第2ユニットを同一形状とし、第1ユニットおよび第2ユニットとを並置するようにした。このような除塵システム2とすると、設置性等が向上する。また、予め所有するイオナイザ(第1ユニット)に真空発生ユニット(第2ユニット)を追加するときに意匠性を高める。このような除塵システム2としても良い。なお、第1ユニットおよび第2ユニットのような共通の収納部を除塵システム1に適用しても良い。
【0031】
以上、本発明の除塵システムについて説明した。なお本形態の説明ではエアという用語を用いており、大気を使用することを想定して説明した。しかしながら、大気に限定する趣旨ではなく、例えば、窒素ガス・アルゴンガス等の非反応性ガスを採用してもよい。本形態のエアは大気や非反応性ガスを含む概念である。
【0032】
このような本発明によれば、加圧エアから真空を作り出して塵埃を吸引除去するため、加圧エアしか使用できない箇所でも塵埃を飛散させることなく除塵する除塵システムとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の除塵システムは、特に基板やシートのような除塵対象物に除電除塵を行う際の簡易システムとして特に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1,2:除塵システム
10:イオナイザ
11:高電圧駆動部
11a:フィルタ
12:共通ライン
13:ペン型イオナイザ
20:真空発生ユニット
21:エア分岐線
22:真空発生器
23:吸引部
24:排気部
30:エア供給線
40:加圧エア供給源
50:電力供給線
60:電源
70:除塵対象物
80:真空発生ユニット
81:エア分岐線
82:真空発生器
83:吸引部
84:排気部
85:収納部
90:フィルタ
100:排気ダクト接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧エア供給源から供給される加圧エアに対し、高電圧を印加することによりイオン化してイオン化エアを噴射するイオナイザを用いる除塵システムであって、
加圧エア供給源から供給される加圧エアにより真空を発生する真空発生器と、真空発生器の吸引口に接続される吸引部と、を有する真空発生ユニットを備え、
真空発生ユニットは、イオナイザから噴射されたイオン化エアが除塵対象物に噴射されて飛散した塵埃を含む排気エアを、真空発生ユニットの吸引部を通じて吸引することを特徴とする除塵システム。
【請求項2】
請求項1に記載の除塵システムにおいて、
前記イオナイザは、
加圧エア供給源から供給される加圧エアを入力し、電源から供給される電力を用いて高電圧を発生する高電圧駆動部と、
高電圧駆動部に接続され、加圧エアと高電圧とが出力される共通ラインと、
共通ラインに接続され、高電圧により発生したイオンを加圧エアに載せてイオン化エアとして出力するペン型イオナイザと、
を備えることを特徴とする除塵システム。
【請求項3】
請求項2に記載の除塵システムにおいて、
前記高電圧駆動部を第1ユニットとし、
前記真空発生器を収納する収納部を第2ユニットとし、
ほぼ同一形状の第1,第2ユニットを並置するシステムであることを特徴とする除塵システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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