説明

除染製剤を散布するための方法およびシステム

車両を除染するための静電噴霧システムを説明する。このシステムは、車両の内部に合うようにサイズ設定された車輪付きプラットフォームと、1つまたは複数の除染剤を収容するように操作可能であり、前記車輪付きプラットフォームにより支持される少なくとも1つのタンクと、車輪付きプラットフォームに固定された複数の静電ノズルであって、それぞれが少なくとも1つの事前に定められた方向に除染剤を送達するように位置決めされる、静電ノズルと、除染剤が散布される際に除染剤に静電電荷を印加するために各ノズルに接続された静電帯電システムと、除染剤を加圧するためにタンクと連通状態にある少なくとも1つの圧縮機とを備える。この1つまたは複数の圧縮機は、静電ノズルを通して除染剤を定量送達するのに十分な圧力を供給することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、概して人々が定期的に集まる閉鎖空間の除染に関し、より詳細には生物学的除染製剤および化学的除染製剤などの除染製剤を散布するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、重症急性呼吸器症候群(SARS)の汎発性流行により、世界的な疾病伝播に関する明確な脆弱性および世界経済に対するその影響が明らかになった。深刻な影響を受けた業界の1つが、航空業界を含む輸送業界である。H1N1ウイルスに関する現在の懸念から、世界経済および航空業界経済に対するかかる汎発性流行病の影響の再確認が行われている。例えば、SARSの汎発性流行の際には、航空会社は、保守および利用可能な航空便の減少により、多大な収益の損失を被る。
【0003】
しかし、航空機内部の除染に関して現行においてCDC(アメリカ疾病予防管理センター)により推奨されるものは、多大な時間を要し、客席の下に位置する表面など、キャビン内の表面の全てには対応していない。表面の手作業による拭取りを用いる長時間の除染プロセスが航空機の稼働に影響を与えることは、容易に理解し得ることであり、この長時間の除染プロセスは、航空会社に収益の損失を与える一因となる。例えば、航空機の手作業による消毒は、非常に多大な時間を要する。典型的な民間航空機の場合には、この手作業による拭取りプロセスは、完了までに数日またはさらには数週間を要し得る。このプロセスは、航空会社の人員により行われるため、人的エラーがこの「布とバケツ」アプローチにより生ずる場合がある。手動スプレーヤが知られているが、そのようなプロセスもやはり人的エラーを被りやすい。
【発明の概要】
【0004】
一態様においては、車両を除染するための静電噴霧システムが説明される。このシステムは、車両の内部に合うようにサイズ設定された車輪付きプラットフォームと、1つまたは複数の除染剤を収容するように操作可能であり、前記車輪付きプラットフォームにより支持される少なくとも1つのタンクと、車輪付きプラットフォームに固定された複数の静電ノズルであって、それぞれが少なくとも1つの事前に定められた方向に除染剤を送達するように位置決めされる、静電ノズルと、除染剤が散布される際に除染剤に静電電荷を印加するために各ノズルに接続された静電帯電システムと、除染剤を加圧するためにタンクと連通状態にある少なくとも1つの圧縮機とを備える。この1つまたは複数の圧縮機は、静電ノズルを通して除染剤を定量送達するのに十分な圧力を供給することが可能である。
【0005】
別の態様においては、航空機キャビン内に除染剤を散布するための方法が説明される。この方法は、ローリングカート内に位置決めされたタンクから航空機キャビン内の1つまたは複数の所定の区域に静電帯電した除染剤を手動で散布するステップと、航空機内の所定の経路に沿ってローリングカートを移動させるステップと、ローリングカートに装着された複数の静電帯電ノズルを通してタンクからキャビンの追加的な区域に静電帯電した除染剤を自動的に散布するステップであって、少なくとも部分的には、航空機内の所定の経路に沿ってローリングカートが移動する際に実施される、ステップとを含む。この方法は、ローリングカート内に位置決めされた圧縮機を使用してタンクを加圧するステップをさらに含んでもよい。任意には、静電帯電ノズルは、除染剤を散布する際にある可動域にわたってサイクル運動されてもよい。また、この方法は、ローリングカートに対して制御された運動速度を与えて、航空機内の所定の経路に沿ってローリングカートを移動させるように構成された、ローリングカートに接続された駆動システムを使用するステップを含んでもよい。
【0006】
さらに別の態様においては、航空機の給仕カート保管区域内に合うようにサイズ設定された車輪付きプラットフォームと、車輪付きプラットフォーム内に取り付けられ、除染剤を収容するように操作可能なキャニスタと、車輪付きプラットフォーム内に取り付けられ、キャニスタ内の除染剤に圧力を印加するように作動可能な圧縮機と、車輪付きプラットフォームに固定され、キャニスタに流体結合された複数のノズルであって、それぞれが少なくとも1つの事前に定められた方向に除染剤を送達するように位置決めされる、静電ノズルと、除染剤がノズルから散布される際に除染剤の液滴に静電電荷を印加するために各ノズルに作動的に装着された静電帯電システムと、キャニスタに装着された手動ノズルとを備える、航空機除染システムが提示される。任意には、複数のノズルは、除染剤を散布する際にある可動域にわたりサイクル運動するように構成されてもよい。航空機除染システムは、車輪付きプラットフォームに装着され、前記車輪付きプラットフォームに対して運動を与えるように構成された、駆動システムをさらに備えてもよい。
【0007】
論じてきたこれらの特徴、機能、および利点は、本発明の様々な実施形態において個別に実現することが可能であり、または、以下の説明および図面を参照としてさらなる詳細が示されるさらに他の実施形態において組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】航空機生産/稼働方法の流れ図である。
【図2】航空機のブロック図である。
【図3】除染システムの一実施形態の概略図である。
【図4】図3のシステムを展開し得るカートの斜視図である。
【図5】図4のカートの側面図である。
【図6】図4および図5のカートの端面図である。
【図7】除染システムの別の実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述の実施形態によりさらに開示されるものとして、航空輸送機システムおよび地上輸送車両システムならびに恒久配置地上構造物のための自己完結型システムを説明する。このシステムは、いくつか例を挙げればインフルエンザウイルス、バクテリア、化学的薬剤、および生物学的薬剤に対するそれらの構造物の内部除染を可能にする機構を提供する。本デバイスの実施形態には、局所的散布用に使用される手動式ハンドスプレーヤと、静電スプレーを介して除染剤を散布することにより、例えば車両内部の完全な対応を確実なものとし、それにより最小限の保守を伴う除染が得られるように取り付けられた複数の自動スプレーノズルとが含まれる。好ましい一実施形態においては、静電スプレーを使用することにより、2ミクロン〜40ミクロンのサイズの液滴が得られ、それにより、少なくともいくつかの現行の除染方法よりも少ない除染剤の使用が可能となり、また、除染剤との接触による身体的損傷が最小限に抑えられる。
【0010】
一実施形態においては、開示されるシステムは、既存の航空機サービス/フードカートに類似したデバイス内に収容され得る一体型システムであり、そのため航空機内での保管が可能(サービス/フードカートの中の1つと置き換えて)となる。1つのシナリオにおいては、かかるシステムは、汎発性流行の際にサービス/フードカートの中の1つと置き換えらえる。次いで、かかるシステムは、手動でまたは自動的に航空機の1つまたは複数の通路を周期的に誘導されると共に、手動でおよび/または自動的に1つまたは複数の薬剤を散布する。民間航空機での実装に関して説明するが、他の航空機(軍事、プライベート、貨物)用途もまた、地上輸送車両および建築物内における用途と並んで予期される。中でさらに説明されるように、このシステムは、多様な化学的除染剤および生物学的除染剤を局所的区域に任意に手動噴霧するために作動可能であり、さらに、例えば化学的、生物学的、および/または他の除染剤などを用いた航空機内部除染のために静電スプレーノズルを使用してなど、航空機の残りの区域に自動噴霧するために作動可能である。
【0011】
さらに個別に図面を参照すると、本開示の実施形態は、図1に示すような航空機製造/稼働方法100および図2に示すような航空機200のコンテクストにおいて説明することができる。生産前に、航空機製造/稼働方法100は、航空機200の仕様指定および設計102と、材料調達104とを含んでもよい。
【0012】
生産の際に、構成要素およびサブアセンブリの製造106と、航空機200のシステム統合108とが行われる。その後、航空機200は、認証および配送110を経て、稼働112される。顧客による稼働時に、航空機200は、定期保守点検114(これは、変更、再構成、改装、等々を含んでもよい)がスケジュールに組み込まれる。本明細書において説明する実施形態は、概して民間航空機の稼働に関するものであるが、航空機製造/稼働方法100の他の段階で実施されてもよい。例えば、生産プロセスの間には多数の人々が航空機およびその構成要素にアクセスするため、除染プロセスは、航空機生産の様々な段階で実施されてもよい。
【0013】
航空機製造/稼働方法100の各プロセスは、システム統合者、第三者、および/またはオペレータ(例えば顧客)により実施または実行されてもよい。この説明において、システム統合者には、任意の人数の航空機製造業者および主要システム下請契約者が非限定的に含まれてもよく、第三者には、例えば任意の人数の供給業者、下請契約者、および納入業者が非限定的に含まれてもよく、オペレータには、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織、等々が含まれてもよい。
【0014】
図2に示すように、航空機製造/稼働方法100により生産される航空機200は、複数のシステム204および内部206を有する機体202を備えてもよい。システム204の例には、推進システム208、電気システム210、油圧システム212、および環境システム214の中の1つまたは複数が含まれる。任意の個数の他のシステムが、この例に含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示すが、本開示の原理は、自動車産業などの他の産業に適用されてもよい。
【0015】
本明細書に包含される装置および方法は、航空機製造/稼働方法100の段階の中の1つまたは複数の際に使用されてもよい。例えば、非限定的には、構成要素およびサブアセンブリの製造106に対応する構成要素またはサブアセンブリは、航空機200の稼働中に生産される構成要素またはサブアセンブリと同様の態様で構成または製造されてもよい。
【0016】
また、1つまたは複数の装置実施形態、方法実施形態、またはそれらの組合せが、例えば非限定的には航空機200の実質的に迅速な組立またはコスト削減などによる構成要素およびサブアセンブリの製造106ならびにシステム統合108の際に、使用されてもよい。同様に、装置実施形態、方法実施形態、またはそれらの組合せの中の1つまたは複数は、例えば、パーツが相互に連結および/または対合し得るか否かを判定するために、保守点検114がシステム統合108および/または保守点検114の際に利用され得るということなどに限定されることなく、航空機200の稼働中に使用されてもよい。
【0017】
個々の有利な実施形態の説明は、図示および説明を目的として提示したが、開示された形態に実施形態を限定するようには意図されない。多数の変更および変形が、当業者には明らかになろう。さらに、異なる有利な実施形態により、他の有利な実施形態と比べて異なる利点がもたらされてもよい。選択された実施形態は、実施形態の原理および実際的な用途を最も良く説明するために、ならびに、予期される特定の使用に適合するような様々な変更を伴う様々な実施形態の開示の他の当業者による理解を可能にするために選択および説明される。
【0018】
次に図3を参照すると、例示的な一実施形態による除染製剤散布システム300の概略図が図示される。システム300は、時としてキャニスタと呼ばれる2つの貯蔵タンク310および312を備えるが、さらに少数のまたは追加の貯蔵タンクをシステム300に組み込み得ることが容易に理解される。別個のタンク310および312は、例えば共に貯蔵することのできないタイプなどの除染流体を保持する。あるいは、これらのタンクは、同一の流体を保持してもよいが、以下において説明するように異なるノズルに流体連結され得る。各タンクは、対応する圧縮機320および322に流体結合されるが、圧縮機を1つのみ使用するシステム300と同様のシステムを展開する方が、はるかに単純であろう。
【0019】
各圧縮機320および322からの空気は、加圧空気遮断弁330、332、圧力調整器340、342を通過し、圧力逃がし弁350、352に作動的に結合されて、その後各流体貯蔵タンク310、312に進入する。タンク310、312はそれぞれ、圧力計360、362と流体連通状態にある。
【0020】
図3に図示するシステム300の実施形態は、複数のノズル370、372、374、376、および378を備える。この実施形態においては、タンク310からの加圧流体が、弁380を通過し(開放時)、ノズル370および372に進む。ノズル370および372に到達する前に、加圧流体は、弁390を通過する(開放時)圧縮機320からの空気圧と組み合わされる。同様に、タンク312からの加圧流体は、弁382を通過して(開放時)ノズル374および376に進む。ノズル374および376に到達する前に、加圧流体は、弁392を通過する圧縮機322からの空気圧と組み合わされる。この例示の実施形態においては、ノズル376は、ハンドノズルであり、ノズル370、372、374、および376とは別個に作動される。この実施形態においては、タンク312からの加圧流体は、弁384を通過し(開放時)ノズル378に進む。ノズル378に到達する前に、加圧流体は、弁394を通過する圧縮機322からの空気圧と組み合わされる。いくつかの実施形態においては、ノズル370、372、374、376、および378は、静電ノズルである。そのため、電源396および398は、システム300内に含まれ、種々の個々のノズルに対応する静電帯電システムに電力を供給する。
【0021】
上述のシステム300は、少なくとも1つの実施形態においては、図4に図示されるように航空機および他の輸送車両などの殆どの車両に合うようにサイズ設定されたローリングカート400の中に設置される。さらに説明するように、蒸気スプレーノズル、蒸気液滴の静電帯電、および少なくとも1つの空気圧縮機が、船舶、列車、および他の大型車両などの車両内における除染流体の気化および散布のために組み込まれる。
【0022】
具体的には図4を参照すると、ノズル370、372、および374、ならびにタンク310および312を備えるカート400の斜視図が示される。この実施形態のカート400は、典型的な民間航空機の通路を移動するようにサイズ設定される。さらに、この実施形態のカート400は、航空機給仕カートとほぼ同一寸法となるようにサイズ設定され、民間航空機内の給仕カート保管区域の中の1つの中に保管され得る。使用時には、カート400は、保守人員が、例えば手動ノズルとして示される(および図5においてはカート400内の保管箇所に位置する)ノズル378(図3に図示)などを用いて、シート、ならびに空の荷物入れ、洗面所のドア、および他のコンパートメントに手動で噴霧を行いつつ、民間航空機の通路を押し進められ得る。初めの局所噴霧の後に、カート400は、車両内の残りの表面の全ての消毒を継続し、事前位置決めされたノズル370、372、374、および376空の除染流体液滴を出力しながら、航空機の通路を手動でまたは自動的に移動され得る。一実施形態においては、カート400の自動稼働の際に、最大限の効果を得るために航空機の様々な表面に対する除染剤の付着を確実なものにするために、静電散布噴霧技術がこれらのノズルにより実施される。
【0023】
図5は、カバーパネルが取り外された状態のカート400の側面図である。この図においては、タンク310および312、空気圧縮機320および322、ならびにノズル370、372、374、および376の一配置が、それらの間に位置する流体連通装置のいくつかと共に示される。いくつかの実施形態において、ノズル370、372、374、および376は、カート400に対して固定されており、他の実施形態においては、ノズル370、372、374、および376は、1つまたは複数の次元において移動(自動または手動による)が可能である。
【0024】
図6に図示するように、カート400の端面図は、カート400内におけるノズル370、372、374、および376の配置に関するさらなる情報を提供すると共に、カート400の相対寸法をさらに提示する。図6の考察から容易に認識されるように、カート400は、航空会社による除染を可能にするために容易に適合化が可能である。サービス/フードカート構成の除染システム300は、細菌またはウイルスが発生した場合に航空機内において容易に利用可能である。カート400内の除染システム300により、1日以内での航空機の除染および航空機の稼働復帰が可能となる。除染システム300からの液滴は、航空会社の人員では届くことが難しい区域を含む比較的複雑なジオメトリの表面に到達するために使用される。
【0025】
上述のカート400およびシステム300は、多数の特徴およびオプションの装備を備えるように変更されてもよい。例えば、図7は、カート上に配置するように構成された除染システム500のブロック図であり、これらのオプションの中のいくつかを図示する。簡略化のために、図1に関連して説明したアイテムのいくつかは、図7に関連しては示さず、または説明しない。
【0026】
この例示の実施形態においては、除染システム500は、相互に流体連結されたタンク502および圧縮機504を備える。複数のアイテムが、タンク502から流出する除染流体流を測定するための流量計510、タンク502内の圧力を測定するための圧力計512、およびタンク502内に残留している除染流体の量を判定するための流体計514を備える、タンク502に関連付けられてもよい。
【0027】
加圧除染流体が、タンク502から出て、流量計510を通過する際に、この流体は、1つまたは複数のノズルへと分散される。図7は、静電帯電システム522、ノズル524、およびノズル方向制御装置526を備える1つのノズルシステム520の構成要素を図示する。1つまたは複数の追加のノズルシステム520が、除染システム500に組み込まれてもよい点に留意されたい。いくつかの実施形態においては、ノズル方向制御装置526が、ステッピングモータ、または除染剤が散布される際にノズル524をある位置範囲にわたって移動させる他のデバイスを備えてもよい。
【0028】
電源530が、システム500内に含まれて、圧縮機504、様々な静電帯電システム522、ノズル方向制御コントローラ526、ならびにカート駆動システム540およびカートコントローラ550を作動させるのに必要な電圧を供給してもよい。いくつかの実施形態においては、電源530は、外部電源を使用し、他の実施形態においては、電源530は、航空機発電電力を使用する。コントローラは、ディスプレイ560で受容したデータに基づき、カート駆動システム540によるカートの移動を含むカートの作動、ならびにタンク502および圧縮機504の組合せの作動を制御するために使用される。コントローラ550は、カート駆動システム540に信号を供給してカートの移動速度および移動方向を制御するように、さらにプログラミングされてもよい。いくつかの実施形態においては、ディスプレイ560は、流量計510、圧力計512、およびタンク液位計514の中の1つまたは複数からのデータを含む。
【0029】
コントローラ550を介したカート駆動システム540を使用するカートの自動移動のために、センサシステム570が組み込まれてもよく、このセンサシステム570は、所定の速度での例えば航空機の通路に沿ってなど所定のコースに沿ったカートの移動を維持する機能を提供する。
【0030】
現行において利用されている除染方法は、手作業による拭取り、手動スプレー送達システム(例えばバックパックタイプのシステム)の使用、または車両の雲霧充満を含む。手作業による拭取りまたはスプレー送達は、非常に多大な時間を要する。雲霧充満方法は、区域全体に充満させることが必要となる。雲霧充満作業においては、サブミクロンの雲霧粒子(2ミクロン未満のサイズの液滴)が、例えば長時間にわたって、航空機のキャビン内に浮遊状態に留まり得る。さらに、雲霧粒子は、例えばワイヤ束および高感度の航空電子工学設備などのそのような水分が望ましくない区域に侵入し、これらの区域に残留物を残す場合がある。対照的に、システム300を中に設置したカート400は、最小限の除染剤を使用したいくつかの区域の手動噴霧と、単一の使用の容易なシステムを用いて残りの区域に対処する除染剤の散布を行うための自動静電蒸気噴霧とを可能にする。静電相のスプレーノズルにより、帯電した除染剤の散布が実現され、これにより、粒子は例えば航空機内などの様々な表面に付着させられ、さらにそれにより、粒子がコンパートメント内で浮遊させられる時間量が短縮される。
【0031】
システム300の1つの独特な態様は、航空機内部で使用するための容易に適合化が可能であり、輸送可能であり、有効な除染ツールであり、民間航空機の場合の除染時間が数日から数時間に短縮されると共に、優れた除染成果を伴うと考えられる。カート400により例示されるように、システム300は、航空機内に容易に保管することが可能であり、航空機除染の所要時間を劇的に短縮させ得るため、航空機の稼働にプラスの影響をもたらし、航空便のコスト削減に寄与する。
【0032】
民間航空機における使用以外に、システム300は、国土安全保障、プライベート航空機および軍用航空機、恒久施設(例えば建築物)、船舶、トラック、バス、列車、ならびに殆どの任意の形態の輸送における使用のために、他のカート構成に対する配置向けに容易に適合化することが可能であり、やはりそれにより、車両および設備の停止時間が短縮され、独立型システムでコスト削減が実現される。
【0033】
本明細書は、例を用いて、最良の実施形態を含む様々な実施形態を開示することにより、任意の当業者が、任意のデバイスまたはシステムの作製および使用ならびに任意の組み込まれる方法の実施を含むこれらの実施形態の実施を行い得るようにする。特許請求可能な範囲は、特許請求の範囲により規定され、当業者によって想起される他の例を含んでもよい。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造的要素を有する場合には、または特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない均等な構造的要素を備える場合には、特許請求の範囲内に含まれるように意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を除染するための静電噴霧システムであって、
車両の内部に合うようにサイズ設定された車輪付きプラットフォームと、
1つまたは複数の除染剤を収容するように操作可能であり、前記車輪付きプラットフォームにより支持される少なくとも1つのタンクと、
前記車輪付きプラットフォームに固定された複数の静電ノズルであって、それぞれが少なくとも1つの事前に定められた方向に除染剤を送達するように位置決めされる、静電ノズルと、
除染剤が散布される際に前記除染剤に静電電荷を印加するために前記ノズルに接続された静電帯電システムと、
除染剤を加圧するために前記少なくとも1つのタンクと連通状態にある少なくとも1つの圧縮機であって、前記静電ノズルを通して前記除染剤を定量送達するのに十分な圧力を供給することが可能である、圧縮機と
を備える、静電噴霧システム。
【請求項2】
少なくとも1つの前記タンクと連通状態にある少なくとも1つの手動スプレーヤをさらに備える、請求項1に記載の静電噴霧システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの手動スプレーヤは、少なくとも1つの手動静電スプレーヤを含む、請求項2に記載の静電噴霧システム。
【請求項4】
前記複数の静電ノズルの中の少なくとも1つが、前記除染剤を散布する際に、ある可動域にわたってサイクル運動するように構成される、請求項1に記載の静電噴霧システム。
【請求項5】
前記タンクの中の少なくとも1つと連通状態にある流量計をさらに備え、前記流量計は、前記タンクの中の少なくとも1つからの流量を示唆するデータを提示する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の静電噴霧システム。
【請求項6】
前記タンクの中の少なくとも1つと連通状態にある計器をさらに備え、前記計器は、前記タンクの中の少なくとも1つの中の残留除染剤を示唆するデータを提示する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の静電噴霧システム。
【請求項7】
前記静電帯電システムおよび前記少なくとも1つの圧縮機の少なくとも一方に電力を供給するように作動可能な電源をさらに備える、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の静電噴霧システム。
【請求項8】
前記タンクと前記圧縮機との間の連通経路内に圧力調整器をさらに備え、前記圧力調整器は、前記圧縮機により生成される前記タンク内の圧力を調整するように構成される、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の静電噴霧システム。
【請求項9】
前記システムは、航空機発電電力を使用して前記静電帯電システムおよび前記少なくとも1つの圧縮機を作動させるように構成される、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の静電噴霧システム。
【請求項10】
前記車輪付きプラットフォームは、航空機給仕カートを保管するために使用可能な保管区域内に配置され得るようにサイズ設定される、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の静電噴霧システム。
【請求項11】
前記静電ノズルは、約2ミクロン径から約40ミクロン径の範囲の静電帯電液滴を散布するように構成される、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の静電噴霧システム。
【請求項12】
前記車輪付きプラットフォームに作動的に連結され、前記車輪付きプラットフォームに対して動作を与えるように構成された駆動システムをさらに備える、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の静電噴霧システム。
【請求項13】
前記駆動システムは、車輪付きプラットフォームの運動速度を制御するように構成される、請求項12に記載の静電噴霧システム。
【請求項14】
前記駆動システムは、航空機発電電力を使用するように構成される、請求項12または13に記載の静電噴霧システム。
【請求項15】
前記車輪付きプラットフォームに装着され、前記駆動システムに通信結合されるセンサシステムをさらに備え、前記駆動システムは、前記センサシステムから受容した信号を使用して所定の経路に沿って前記車輪付きプラットフォームを誘導するようにプログラミングされる、請求項12ないし14のいずれか一項に記載の静電噴霧システム。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか一項に記載の静電噴霧システムを備える航空機除染システム。
【請求項17】
航空機キャビン内に除染剤を散布するための方法であって、
ローリングカート内に位置決めされたタンクから航空機キャビン内の1つまたは複数の所定の区域に除染剤を散布するステップと、
航空機内の所定の経路に沿ってローリングカートを移動させるステップと、
ローリングカートに装着された複数の静電帯電ノズルを通してタンクからキャビンの追加的な区域に除染剤を散布するステップであって、少なくとも部分的には、航空機内の所定の経路に沿ってローリングカートが移動する際に実施される、ステップと
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−516359(P2013−516359A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548010(P2012−548010)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/059079
【国際公開番号】WO2011/139300
【国際公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】