説明

除湿材及び除湿装置

【課題】 温度が高温になりすぎないため除湿効率が低下しにくく、且つ加熱時間が短縮し省エネ効果のある除湿材及び除湿装置を提供することである。
【解決手段】 本発明の除湿材2は、一面21から他面22に気体が通過する孔23を有し、孔23を通過中に気体中の水分を除去可能であり、遠赤外線効果を有する物質を内在する加熱再生可能な吸湿材を有することを特徴とする。
また、本発明の除湿装置11は、除湿材2を回転させ、一部を加熱することで除湿材2が吸着した水分を蒸発させ、吸湿機能を再生させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中などの気体の水分を除去する除湿材及びその除湿材を用いた除湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンプレッサにより圧縮した気体を熱交換器で冷却し、気体中の水分を凝結させることにより除湿を行う、いわゆるコンプレッサ型の除湿装置が知られている。しかし、このコンプレッサ型の除湿装置には、冷媒としてフロンを使用する、可動部が多いため運転音が大きい、冬季などの比較的低温度低湿度の条件下では除湿能力が低いなどの問題がある。そのため、非コンプレッサ型の除湿装置が提案されている。
【0003】
例えば、セラミックなどの母材に吸湿材を担持させたハニカム構造のローター(除湿材)を備えるデシカント式の除湿装置が知られている。デシカント式の除湿装置は、ローターを回転させながら、ローターの一部に除湿したい気体を通過させ除去すると共に、残りの一部を加熱しローターから水分を除去し、ローターを再生させる。例えば、特許文献1〜3では、多孔体のセラミックの表面にゼオライト粉末と無機繊維とを無機結合材を介して分散し、保持させたローターを回転させる発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−23529号公報
【特許文献2】特開平5−23584号公報
【特許文献3】特開平5−146676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このデシカント式の除湿装置では、ローターに吸着した水分を除去するために水の沸点以上、例えば500℃で加熱する。しかし、実際には、適正な温度よりも高温になる場合がある。例えば、ローターの一面側から加熱する場合、他面側は直接加熱されず一面側からの伝熱による温度上昇により適正な温度にまで加熱する必要があるため、一面側から他面側の伝熱が遅いほど一面側の温度は適正温度になった他面側よりも高温になる。高温のロータは除湿効率が低下するため、ロータの伝熱速度を向上させて再生操作における温度上昇は可能な限り抑制することが望ましい。また、他面が所定温度になるまで一面を加熱し続ける時間が長いとエネルギー消費が大きい等の問題もある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、温度が高温になりすぎないため除湿効率が低下しにくく、且つ加熱時間が短縮し省エネ効果のある除湿材及び除湿装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の構成上の特徴は、一面から他面に気体が通過する孔を有し、前記孔を通過中に前記気体中の水分を除去可能であり、遠赤外線効果を有する物質を内在する加熱再生可能な吸湿材を有することである。
【0008】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記吸湿材の表面に白金微粒子を備えることである。
【0009】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記吸湿材はハニカム状であることである。
【0010】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3の何れか1項において、前記吸湿材は、吸湿性を有するシリカゲル、ゼオライト、塩化リチウム、又は活性体の何れか1つを主成分とすることである。
【0011】
また請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4の何れか1項において、前記遠赤外線効果を有する物質は、セラミックス、炭素、ガラス、金属、及び天然鉱物のうち少なくとも1種類以上を含有することである。
【0012】
また請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜5の何れか1項において、前記セラミックスは、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化セリウム、酸化クロム、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化タリウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、これらの複合酸化物、ホウ化アルミニウム、ホウ化バリウム、ホウ化カルシウム、ホウ化セリウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ランタン、ホウ化ストロンチウム、ホウ化イットリウム、窒化アルミニウム、窒化クロム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素(立方体)、炭化ホウ素、炭化クロム、炭化ハフニウム、炭化モリブデン、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化タリウム、炭化タングステン、炭化イットリウム、及び炭化ジルコニウムからなる群から選択される1種類以上を含有することである。
【0013】
また請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜6の何れか1項において、前記遠赤外線効果を有する物質は前記吸湿材の表面に付着していることである。
【0014】
また請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜7の何れか1項において、前記遠赤外線効果を有する物質は前記吸湿材の内部に練り込まれていることである。
【0015】
上記課題を解決するための請求項9に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜8の何れかに記載の除湿材を有し、
前記除湿材を回転させ、一部を加熱することで前記除湿材が吸着した水分を蒸発させ、吸湿機能を再生させることである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明においては、除湿材が一面から他面に気体が通過する孔を有し、遠赤外線効果を有する物質を内在する可燃再生可能な吸湿材を有することで、熱伝導性が高い遠赤外線効果を有する物質を介して熱伝導が進行し、一面から他面への熱伝導が速い。そのため、一面を加熱し、他面が吸着した水分を除去するための温度(以下、「除湿温度」とする。)に至るのが速くなる。結果、除湿材が高温に保存される時間を短くでき、除湿効率が低下しにくい。そして、他面が除湿温度になるのが速いから加熱時間が短縮でき、加熱のためのエネルギー消費を抑制できるため、省エネ効果が期待できる。
【0017】
請求項2に係る発明においては、表面に白金微粒子を備えることにより、気体中の有機物を分解する作用、気体の酸化還元電位を変位させる作用などの白金がもつ作用を発揮させることができる。
【0018】
請求項3に係る発明においては吸湿材がハニカム状にしたことから気体が通過する孔が多数存在させることができ比表面積を大きくできた。その結果、効率良く気体中の水分を吸着させることができる。そして、遠赤外線効果を有する物質が内在することで、一面から他面への熱伝導をより速くすることが可能になり、除湿材の高温化が抑制できる。
【0019】
請求項4に係る発明においては、吸湿材として、ゼオライト、シリカゲル、及び塩化リチウムの何れか1つを主成分とすることで、気体中の水分を吸着することができる。
【0020】
請求項5に係る発明においては、遠赤外線効果を有する物質として、熱伝導性が高い、例えば、セラミックス、炭素、ガラス、金属、及び天然鉱物 等が挙げられ、これらのうち少なくとも1種類以上を好適に用いることができる。
【0021】
炭素としては、例えば、黒鉛、ダイヤモンド、カルビン、コークス、木炭、すす、カーボンブラック、ダイヤモンドライクカーボン、炭素繊維、ガラス状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブン等が挙げられる。
【0022】
ガラスとしては、例えば、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、水ガラス、石英ガラス等が挙げられる。
【0023】
金属としては、遠赤外線効果が大きい金属を用いることが好ましく、例えば、亜鉛、スズ、アルミニウム、クロム、チタン、マグネシウム、ベリリウム、銅、マンガン、タングステン等の中から適宜選択して用いることができる。
【0024】
天然鉱物としては、例えば、珪石、白土、珪藻土、シリカブラック、パーライト、貢石、ゼオライト、粘土、カオリン、ベントナイト、水酸化マグネシウム、マグネサイト、マグネシア、水酸化カルシウム、石灰石、セッコウ、アパタイト、タルク、かんらん岩、コージェライト、セビオライト、ドロマイト、珪灰石、珪酸ジルコン、長石、赤泥、レンガ等が挙げられる。
【0025】
請求項6に係る発明においては、セラミックスは、例えば、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化セリウム、酸化クロム、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化タリウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、これらの複合酸化物、ホウ化アルミニウム、ホウ化バリウム、ホウ化カルシウム、ホウ化セリウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ランタン、ホウ化ストロンチウム、ホウ化イットリウム、窒化アルミニウム、窒化クロム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素(立方体)、炭化ホウ素、炭化クロム、炭化ハフニウム、炭化モリブデン、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化タリウム、炭化タングステン、炭化イットリウム、及び炭化ジルコニウム等が挙げられ、これらのうち少なくとも1種類以上を好適に用いることができる。特に酸化鉄のFe23を用いることで、タバコタール分の分解を促進させ、吸湿材の孔の目詰まりを防止でき、吸湿材の水分吸着能の劣化を低減することができる。
【0026】
請求項7に係る発明においては、遠赤外線効果を有する物質を吸湿材の表面に付着させているため、水分が吸着している表面付近が除湿温度になりやすい。その結果、吸湿材に吸着した水分の除去を速やかに行うことができる。除湿材が速く再生できると加熱時間も短くなり、加熱により除湿に寄与しない除湿材を減らすことが可能になって相対的に除湿に使用できる除湿材を増加させることができる。
【0027】
請求項8に係る発明においては、遠赤外線効果を有する物質を吸湿材の内部に練り込んでいるため、請求項7に係る発明と同様の効果を奏することができる。
【0028】
請求項9に係る発明においては、前述の除湿材を採用していることから高性能な除湿装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態1の除湿装置11の構成を示す分解図である。(a)は、一部を拡大した説明図である。
【図2】本実施形態1の除湿装置11のローター2として用いられる除湿材及び従来品として遠赤外線効果を有する物質を内在していない除湿材についての熱特性を表したグラフである。
【図3】本実施形態1のローター2と従来ローターを加熱したときの温度変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本実施形態の除湿材は遠赤外線効果を有する物質が内在乃至表面にもつ吸湿材を有する。吸湿材は一面から他面に気体が通過可能な孔を備える。孔の数、孔の大きさは特に限定しないが、機械的強度との兼ね合いもあるが、できるだけ比表面積が大きくできる形態が望ましい。例えばハニカム形状のように、多数の孔が形成された形態が望ましく、その孔径もミリメートルオーダーからセンチメートルオーダー程度にすることができる。吸湿材の形態、大きさについても特に限定しない。例えば、円筒形状が例示できる。円筒形状を採用する場合には円筒の両底面を一面と他面とにするように孔を形成することができる。大きさについては必要に応じて設定される。
【0031】
吸湿材は水分を除去可能であり且つ加熱再生可能な材料から形成される。例えばゼオライト、シリカゲル、塩化リチウムが例示でき、これらを主成分とすることができる。吸湿材は全体を水分除去可能な材料から構成することはもちろん、一部に水分を除去可能な材料にて構成することもできる。例えば、水分を除去する性能を有さない金属やセラミックスなどにて骨格を形成し、その表面に水分を除去することができる材料にて被覆することで除湿材を構成することができる。このように、別の材料にて骨格を形成すると、水分除去性能を実現する材料と機械的強度を実現する材料とを分離・適正化することができる。例えば、金属による骨格としてはコルゲート状に加工した金属板を巻回して形成することができる。また、セラミックスによる骨格としては、グリーン体を押出成形法などにより形成し、焼結することで骨格を形成することができる。このようにして形成した骨格に対し、その表面(孔内面を含む)に水分を除去することができる材料を担持させることにより除湿材を形成できる。また、ゼオライトは天然あるいは合成品のいずれでも使用でき、モレキュラーシーブ等の市販品や石油化学の分野にて広く利用されている種々組成のものを特に限定することなく利用できる。
【0032】
遠赤外線効果を有する物質は吸湿材に内在するか、又は、表面に偏在する。遠赤外線効果を有する物質は、セラミックス、炭素、ガラス、金属、及び天然鉱物のうち少なくとも1種類以上を含有することができる。遠赤外線効果を有する物質は粉末状の形態にて含有することが望ましく、更にはそれらの粉末の間は、その間の熱伝導性が確実に進行するように、接触していることが望ましい。遠赤外線効果を有する物質は吸湿材の内在するが、孔の表面を隙間なく覆う形態よりも、ある程度の隙間を形成する形態(例えば多孔質状)の方が望ましい。その隙間を介して水分が吸湿材に到達・除去される。隙間なく覆う形態であっても遠赤外線効果を有する物質自身が透湿性を有する場合や、遠赤外線効果を有する物質を粉末とすることで水分を除去することができる。遠赤外線効果を有する物質は吸湿材の孔の内面の表面に付着する形態や、吸湿材の孔の内面に練り込まれるような形態を採用できる。
【0033】
本実施形態の吸湿材及び/又は遠赤外線効果を有する物質は白金微粒子を備えることができる。白金微粒子は処理対象である気体に接触できるように吸湿材などの表面に付着乃至偏在させることが望ましい。白金微粒子はそのまま吸湿材などの表面に付着させることもできるし、コロイダルシリカなどを介して吸湿材などの表面に接着させることもできる。
【0034】
本実施形態の除湿装置は上述した除湿材を採用する。そして、その除湿材について回転させ、一部を加熱することで除湿材が吸着した水分を蒸発させ、吸湿機能を再生させる構成を有する。除湿材は回転しているため、その加熱される部位は順次移動することになり、除湿材の除湿性能はその加熱に伴い再生される。加熱する手段としては特に限定しないが加熱した空気を流通させる方法や、直接、ヒータなどにより加熱する手段が例示できる。加熱温度は必要に応じて設定される。例えば、除湿材を構成する材料の耐熱温度などを考慮して決定する。
【0035】
以下、具体的な装置に基づき更に詳細に説明する。
【0036】
(実施形態1)
本実施形態1の除湿装置11は、図1に示されるように、ローター(除湿材)2、ローター用モーター3、再生用ヒーター4、除湿用ファン5、再生用ファン6とを有する。
【0037】
ローター2は外形が円柱形状で、中心軸の軸方向に垂直な一面21と他面22と、一面21から他面22に気体が通過できる孔23を多数有する。ローター2は、吸湿性を有するゼオライトを主成分とする板状の吸湿材の内部に、遠赤外線効果を有する物質を偏在させた除湿材である。そして、ローター2は、図1の拡大図(a)に示されるように、コルゲート状の除湿材が巻かれて円柱状に成形されている。よって、ローター2の一面21及び他面22を見るとハニカム状をしている。そして、ローター2の一面21及び他面22の表面、孔23の内面、あるいは内部に遠赤外線効果を有する物質が偏在している。遠赤外線効果を有する物質は、セラミックス、炭素、ガラス、金属、及び天然鉱物のうち少なくとも1種類以上を含有する。セラミックスは、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化セリウム、酸化クロム、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化タリウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、これらの複合酸化物、ホウ化アルミニウム、ホウ化バリウム、ホウ化カルシウム、ホウ化セリウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ランタン、ホウ化ストロンチウム、ホウ化イットリウム、窒化アルミニウム、窒化クロム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素(立方体)、炭化ホウ素、炭化クロム、炭化ハフニウム、炭化モリブデン、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化タリウム、炭化タングステン、炭化イットリウム、及び炭化ジルコニウムからなる群から選択される1種類以上を含有する。セラミックスは、上記群の内、炭化ケイ素を含有するのが好ましい。ここで、酸化鉄は表面に付着した有機物などを分解する効果を発揮できる。酸化鉄としては、Fe23、FeO、Fe34を用いることが可能であり、特にFe23を選択することが望ましい。
【0038】
ローター2の表面乃至内部には白金又は白金合金(以下、「白金等」と称する)を備える白金部材を有することが望ましい。白金部材としてはローター2の表面を被覆する白金等からなるメッキ層や、白金等の微粒子(白金ナノコロイドなど)を付着させることもできる。白金ナノコロイドは何らかの担体上に担持させた後にローター2に含有乃至被覆することができる。白金ナノコロイドを担持する担体としてはセラミックス又は炭素材料からなる微粒子を採用することが望ましい。白金ナノコロイドと担体との間にはコロイダルシリカを介設することができる。間に介設されたコロイダルシリカは一部乃至全部が融解する場合を含み、粒子間が融解などにより一部、接着している場合を含む。コロイダルシリカの含有量は特に限定されないが、全体の質量を基準として、20%〜50%程度とすることが望ましく、25%〜30%程度とすることが更に望ましい。
【0039】
担体は無機材料から形成されており、その形状は任意である。例えば、粉末状とすることができる。粉末の大きさは白金ナノコロイドと同じかそれ以上の大きさであれば十分であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。また、0.1μm以上とすることが好ましく、0.5μm以上とすることがより好ましい。
【0040】
粉末状であっても多孔質体とすることもできる。そして、担体の形状としてはその他の形状とすることもできる。例えば、ロータ2をそのまま担体にすることができる。
【0041】
担体を形成する無機材料としては、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、粘土化合物を焼成したもの、そして、これらの混合物などのセラミックス;並びに、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、カーボーンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン、ケッチェンブラックなどの炭素材料が例示できる。特にシリカ、アルミナが望ましい。
【0042】
白金ナノコロイドは白金以外の元素を含むこともできる。白金ナノコロイドの体積平均粒径は1nm〜10nm程度であり、好ましくは1nm〜5nm程度である。そして、特に質量基準で90%の粒子の粒径が0.1nm〜10nmに入るものであることが望ましい。白金ナノコロイドの含有量は特に限定されず、必要に応じて適正な量だけ混合される。
【0043】
ロータを構成する除湿剤の組成を例示すると、処方1:ゼオライト(60〜80質量%)、炭化ケイ素(10〜30質量%)、酸化チタン(5〜10質量%)、炭化ジルコニウム(5〜10質量%)、処方2:ゼオライト(60〜80質量%)、窒化ケイ素(10〜30質量%)、酸化チタン(5〜10質量%)、窒化アルミニウム(5〜10質量%)
が挙げられる。ゼオライト、炭化ケイ素、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウムのうちの少なくとも一部には白金微粒子を担持させることができる。特に炭化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ジルコニウム、窒化ケイ素のうちの何れかに白金微粒子を担持させることが望ましい。
【0044】
ローター2は、後述するローター用モーター3によって回転しており、後述する再生用ヒーター4によって一部の扇形部分が加熱される。ローター2の加熱される部分は再生ゾーン24、周方向で再生ゾーン24の前後の扇形部分はパージゾーン25,26、再生ゾーン24及びパージゾーン225,26以外の部分は除湿ゾーン27である。
【0045】
ローター用モーター3は、ロータ2の外周に巻き付けられているベルト31を介して、ローター2を周方向に回転させるためのモーターである。
【0046】
再生用ヒーター4は、ローター2の再生ゾーン24を加熱するためのヒーターであり、ローター2の一面21側に位置する。
【0047】
除湿用ファン5は、ローター2の除湿ゾーン27に気体を送り込むためのファンであり、ローター2の他面22から一面21側に気体が通過するように、ローター2の他面22側から気体を送り込む。
【0048】
再生用ファン6は、ローター2の再生ゾーン24で吸湿材から除去された水分を含んだ気体を排気するためのファンであり、ローター2の一面21から他面22に気体が流れるようにファンを回す。
【0049】
本実施形態1の除湿装置11は、除湿用ファン5によって除湿したい気体をローター2の除湿ゾーン27に吸気する。ローター2は、ローター用モーター3によって周方向の一方(例えば時計方向)に回転しており、除湿ゾーン27に位置する吸湿材に気体中の湿気が吸着され、除湿される。吸気された気体は、ローター2の他面22から一面21へと通過し、装置外へと排出される。この気体の流れを除湿流れ(図中、矢印A方向)とする。ローター2は、再生ゾーン24に位置した部分を再生用ヒーター4によって加熱される。再生ゾーン24には、再生用ファン6によって、ローター2の一面21側から他面22側に流れるように、気体が送り込まれる。この気体の流れを再生流れ(図中、矢印B方向)とする。再生流れの方向は、ローター2の軸方向で除湿流れと対抗する方向である。再生ゾーン24では、再生用ヒーター4によって、他面22側が水の沸点以上の高温、例えば500℃になるまで一面21側から加熱される。加熱される温度は水分の除去の観点の他、ローター2の表面に付着した有機物の分解の観点からも決定することが望ましい。ローター2の表面に付着した有機物は酸化鉄などの分解を促進する触媒の存在下で200℃〜600℃程度で分解されることを見出している。従って、ローター2が200℃〜600℃程度になるように加熱することも望ましい。
【0050】
本実施形態1の除湿装置11で用いられるローター2は、ローター2の除湿ゾーン27で吸着した水分が除去されるのに高温に加熱される必要がある。ローター2の再生ゾーン24の加熱は一面21側から行うため、ローター2の一面21から他面22側に熱が伝達することで、再生ゾーン24の軸方向全体が再生される。熱は、主にローター2の表面(孔23の内面)にネットワーク状に偏在している遠赤外線効果を有する物質によって一面21側から他面22側へと伝達される。ゼオライトよりも遠赤外線効果を有する物質の方が熱伝導性に優れているからである。そして、高温に加熱されたローター2の吸湿材から水分が除去され、再生用ファン6によって流れ込んでいる気体と混合し、装置外へと排出される。
【0051】
ローター2は、高温に加熱されて水分が除去され、その後冷却することで水分を再び吸着することができる。そのため、ローター2の回転方向で再生ゾーン24の先の扇形状の一部は、ローター2の冷却のためのパージゾーン26がある。また、回転方向で再生ゾーン24の後ろの扇形状の一部は、再生用ヒーター4で加熱されているが、500℃には達しておらず、水分が除去される前の待機状態にあり、再生用ファン6からの気体が流れ込んでこない。
(比較試験1)
本実施形態1の除湿装置11のローター2として用いられる除湿材と、従来品として遠赤外線効果を有する物質を内在していない除湿材とについて、熱特性を測定した。
【0052】
ロータ−2として用いられる除湿材は、遠赤外線効果を有する物質を表面に加工した除湿材A(処方1)と遠赤外線効果を有する物質を吸湿材に練り込んだ除湿材Bとの2つを用いた。
【0053】
試験は、除湿材を回転させずに一面側を加熱し、500℃まで加熱し、達したら保持状態にし、他面側表面温度を測定した。図2は、一面側の温度に伴う他面の表面温度及び内部温度を時間経過(分)によるグラフ化したものである。
【0054】
図2により、除湿材A及び除湿材Bは、従来の除湿材の温度変化と比べ、他面の表面温度も内部温度も早く上昇している。遠赤外線効果を有する物質を内部に練り込んだ除湿材Bの内部温度は特に、加熱し始めから加熱と共に温度が上昇している。そして、除湿材Bの他面の表面温度は、加熱から14分経過後から従来より上昇率が上がり、31分頃に500℃に達している。除湿材Aは内部温度が18分以降、他面の表面温度は22分以降、従来より上昇率が上がり、500℃に達するか近い温度まで上昇している。
(比較試験2)
本実施形態1の除湿装置11のローター2と、従来品として遠赤外線効果を有する物質を内在していない吸湿材のみのローター(従来ローター)とについて、熱特性について測定した。
【0055】
試験は、380ワット(W)のヒーターで、一回転39.6secのローターの一面側を加熱し、約500℃に達したら加熱を停止する。図3は、縦軸に温度、横軸に時間(秒)として、本実施形態1のローター2の表面温度と従来ローターの表面温度の変化をグラフで表している。
【0056】
図3より、加熱による温度変化は、ローター2の上昇率が高く、500℃近くに早く達している。そして、加熱停止の際、ローター2の方は500℃近く、従来ローターは400℃程度であったにも関わらず、停止後はローター2が急激に温度低下していることが分かる。ローター2は150℃に10秒以内に低下し、従来ローターは20秒以上の時間を要している。
【0057】
本実施形態1のローター2は、従来のローターより温度上昇が早いことから熱伝達するのが早いことが分かり、また冷却速度も速い。よって、ローター2は加熱時間を短くしても再生することができるため、省エネ効果が期待できる。加熱時間が短縮できれば、除湿時間を長くできる。つまり吸着ゾーン27を拡大することができ、除湿効率の向上が可能である。
【符号の説明】
【0058】
11:除湿装置、
2:ローター、
3:ローター用モーター、
4:再生用ヒーター、
5:除湿用ファン、
6:再生用ファン、
21:一面、22:他面、23:孔、24:再生ゾーン、25,26:パージゾーン、
27:除湿ゾーン、
31:ベルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面から他面に気体が通過する孔を有し、前記孔を通過中に前記気体中の水分を除去可能であり、遠赤外線効果を有する物質を内在する加熱再生可能な吸湿材を有することを特徴とする除湿材。
【請求項2】
前記吸湿材の表面に白金微粒子を備える請求項1に記載の除湿材。
【請求項3】
前記吸湿材はハニカム状である請求項1又は2に記載の除湿材。
【請求項4】
前記吸湿材は、吸湿性を有するシリカゲル、ゼオライト、又は塩化リチウムの何れか1つを主成分とする請求項1〜3の何れか1項に記載の除湿材。
【請求項5】
前記遠赤外線効果を有する物質は、セラミックス、炭素、ガラス、金属、及び天然鉱物のうち少なくとも1種類以上を含有する請求項1〜4の何れか1項に記載の除湿材。
【請求項6】
前記セラミックスは、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化セリウム、酸化クロム、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化タリウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、これらの複合酸化物、ホウ化アルミニウム、ホウ化バリウム、ホウ化カルシウム、ホウ化セリウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ランタン、ホウ化ストロンチウム、ホウ化イットリウム、窒化アルミニウム、窒化クロム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素(立方体)、炭化ホウ素、炭化クロム、炭化ハフニウム、炭化モリブデン、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化タリウム、炭化タングステン、炭化イットリウム、及び炭化ジルコニウムからなる群から選択される1種類以上を含有する請求項5に記載の除湿材。
【請求項7】
前記遠赤外線効果を有する物質は前記吸湿材の表面に付着している請求項1〜6の何れか1項に記載の除湿材。
【請求項8】
前記遠赤外線効果を有する物質は前記吸湿材の内部に練り込まれている請求項1〜7の何れか1項に記載の除湿材。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の除湿材を有し、
前記除湿材を回転させ、一部を加熱することで前記除湿材が吸着した水分を蒸発させ、吸湿機能を再生させることを特徴とする除湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−247093(P2010−247093A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100118(P2009−100118)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(596087812)株式会社エルブ (15)
【Fターム(参考)】