説明

除煙脱臭用触媒体およびその製造方法

【課題】加熱調理器などからの煙や臭気を効果的に除去する触媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】繊維質セラミック構造体2と、繊維質セラミック構造体2の表面に酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布し熱処理形成したアルミナ系担体3と、アルミナ系担体3の表面に貴金属溶液を浸漬塗布し熱処理形成した貴金属触媒4とを有するものである。これによって、繊維質セラミック構造体2の表面に表面積が大きなアルミナ系担体3が、またアルミナ系担体3の表面に表面積が大きな貴金属触媒4がそれぞれ強固に形成され、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の効果的な除煙脱臭が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器などにおいて魚介類などの加熱調理により発生する油煙、臭気を除去するための手段とした除煙脱臭用触媒体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の触媒体としては、ハニカム基材に貴金属を主成分とする触媒を担持するもの(例えば、特許文献1参照)、金属基材にアルミナと貴金属を担持するもの(例えば、特許文献2参照)、あるいはハニカム基材に酸化マンガンを担持するもの(例えば、特許文献3参照)など、種々のものが知られている。
【特許文献1】特開平8−332392号公報
【特許文献2】特開平5−21143号公報
【特許文献3】特開平10−314283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、ハニカム基材に触媒を担持するだけでは基材の表面積が小さいため十分な量の触媒が担持できず、煙などを効果的に除煙できない。また、金属基材にアルミナを担持するものでは、触媒を高温に加熱した際にアルミナと金属の熱膨張の違いにより、金属からアルミナが剥離する可能性がある。また、ハニカム基材に酸化マンガンを担持するものでは、酸化マンガンを用いることから触媒温度を500℃以上に上げることができず、効果的な除煙脱臭ができないなど、それぞれ課題を有していた。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、表面積が大きくかつ強固で、効果的な除煙脱臭が可能な除煙脱臭用触媒体とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の除煙脱臭用触媒体は、繊維質セラミック構造体と、前記繊維質セラミック構造体の表面に酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布し熱処理形成したアルミナ系担体と、前記アルミナ系担体の表面に貴金属溶液を浸漬塗布し熱処理形成した貴金属触媒とを有するものである。
【0006】
これによって、繊維質セラミック構造体の表面に表面積が大きなアルミナ系担体が、またアルミナ系担体の表面に表面積が大きな貴金属触媒がそれぞれ強固に形成され、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の効果的な除煙脱臭が可能となる。
【0007】
また、本発明の除煙脱臭用触媒体の製造方法は、繊維質セラミック構造体の表面に酸化アルミニウムを主成分としたゾルを浸漬塗布した後に熱処理をしてアルミナ系担体を形成する工程と、前記アルミナ系担体に貴金属溶液を浸漬塗布した後に熱処理をして貴金属触媒を形成する工程とを有するものである。
【0008】
これによって、繊維質セラミック構造体を、適切な成分比率とした酸化アルミニウムを主成分とするゾルに浸漬し、繊維質セラミック構造体の表面の細部に渡って酸化アルミニウムが広がり、熱処理を行うことで繊維質セラミック構造体全体に強固に表面積が大きなアルミナ系担体を形成する工程となり、さらに表面積が大きなアルミナ系担体に貴金属溶液を浸漬することによって、アルミナ系担体の表面の細部に渡って貴金属溶液が高分散され、熱処理を行うことでアルミナ系担体の上に貴金属触媒が強固に形成される工程となる。このため、2つの工程により、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の効果的な除煙脱臭が可能な除煙脱臭用触媒体の製造ができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の除煙脱臭用触媒体は、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の効果的な除煙脱臭が可能となる。
【0010】
また、本発明の除煙脱臭用触媒体の製造方法は、繊維質セラミック構造体の表面にアルミナ系担体を形成する工程と、アルミナ系担体に貴金属溶液を形成する工程との2つの工程により、前記除煙脱臭用触媒体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、繊維質セラミック構造体と、前記繊維質セラミック構造体の表面に酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布し熱処理形成したアルミナ系担体と、前記アルミナ系担体の表面に貴金属溶液を浸漬塗布し熱処理形成した貴金属触媒とを有する除煙脱臭用触媒体とすることにより、繊維質セラミック構造体の表面に表面積が大きなアルミナ系担体が、またアルミナ系担体の表面に表面積が大きな貴金属触媒がそれぞれ強固に形成され、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の効果的な除煙脱臭が可能となる。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明において、酸化アルミニウムを主成分としたゾルは固形成分の重量をWs、水の重量をWaとし、その比をWa/Wsとした場合、1≦Wa/Ws≦100となるように混合したことにより、繊維質セラミック構造体を固形成分と水の比率を最適にした酸化アルミニウムが主成分のゾルに浸漬することができる。これにより、繊維質セラミック構造体の表面の細部に渡って酸化アルミニウムが広がり、また酸化アルミニウムが適切量だけ担持され、熱処理を行うことで繊維質セラミック構造体表面の全体に最適な担持量で強固に表面積が大きなアルミナ系担体が形成される。このため、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気などの一層効果的な除煙脱臭が実現できる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、アルミナ系担体は酸化セリウム単独または酸化バリウム単独または酸化セリウムと酸化バリウムを含有したことにより、アルミナ系担体の成分として酸化セリウムや酸化バリウムを含有すると、その上に担持される貴金属触媒の活性が向上する。このため、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の一層効果的な除煙脱臭が実現できる。
【0014】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、繊維質セラミック構造体はインチ当たり100セル以上500セル以下のハニカム構造としたことにより、繊維質セラミック構造体が適切なハニカム状であれば煙や臭気などを含む空気が流れやすく、なおかつ触媒体に接触する時間も長くなる。そのため、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の一層効果的な除煙脱臭が実現できる。
【0015】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、貴金属溶液は白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウムの少なくとも1種で構成したことにより、触媒層が活性の高い貴金属であるため、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の一層効果的な除煙脱臭が実現できる。
【0016】
第6の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、貴金属溶液は白金、パラジウムの2種類で構成したことにより、触媒層が活性の高い白金とパラジウムであり、低温域でも活性が高い白金と、煙を除去する能力が高いパラジウムを混合しているため、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の一層効果的な除煙脱臭が実現できる。
【0017】
第7の発明は、繊維質セラミック構造体の表面に酸化アルミニウムを主成分としたゾルを浸漬塗布した後に熱処理をしてアルミナ系担体を形成する工程と、前記アルミナ系担体に貴金属溶液を浸漬塗布した後に熱処理をして貴金属触媒を形成する工程とを有する除煙脱臭用触媒体の製造方法とするものである。これによって、繊維質セラミック構造体を、適切な成分比率とした酸化アルミニウムを主成分とするゾルに浸漬し、繊維質セラミック構造体の表面の細部に渡って酸化アルミニウムが広がり、熱処理を行うことで繊維質セラミック構造体全体に強固に表面積が大きなアルミナ系担体を形成する工程となり、さらに表面積が大きなアルミナ系担体に貴金属溶液を浸漬することによって、アルミナ系担体の表面の細部に渡って貴金属溶液が高分散され、熱処理を行うことでアルミナ系担体の上に貴金属触媒が強固に形成される工程となる。このため、2つの工程により、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の効果的な除煙脱臭が可能な除煙脱臭用触媒体の製造ができる。
【0018】
第8の発明は、特に、第7の発明において、繊維質セラミック構造体の表面に酸化アルミニウムを主成分としたゾルを浸漬塗布した後にエアブローを行うとともに、アルミナ系担体に貴金属溶液を浸漬塗布した後にもエアブローを行うようにしたことにより、酸化アルミニウムの余分のゾルおよび余分の貴金属をエアブローで除去できる。このため、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の効果的な除煙脱臭が可能な除煙脱臭用触媒体の製造方法とすることができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1〜図4は、本発明の実施の形態1における除煙脱臭用触媒体を示すものである。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態における除煙脱臭用触媒体1は、繊維質セラミック構造体2と、繊維質セラミック構造体2の表面に酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布し熱処理形成したアルミナ系担体3と、アルミナ系担体3の表面に貴金属溶液を浸漬塗布し熱処理形成した貴金属触媒4とを有するものである。
【0022】
前記除煙脱臭用触媒体1の製造方法は、まず繊維質セラミック構造体2の表面に、酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布した後、300℃以上の温度で熱処理をしてアルミナ系担体3を形成する工程を行う。次に、アルミナ系担体3の表面に貴金属溶液を浸漬塗布した後、300℃以上の温度で熱処理をして貴金属触媒4を形成する工程を行う。この2つの工程により、除煙脱臭用触媒体1は製造されている。
【0023】
また、除煙脱臭用触媒体1の製造において、繊維質セラミック構造体2の表面に酸化アルミニウムを主成分としたゾルを浸漬塗布した後にエアブローを行うとともに、アルミナ系担体3に貴金属溶液を浸漬塗布した後にもエアブローを行うようにして、酸化アルミニウムの余分のゾルおよび余分の貴金属をエアブローで除去するようにして酸化アルミニウムと貴金属を最適化するようにしてもよい。
【0024】
そして、前記除煙脱臭用触媒体1は、図2に示すように、加熱調理器20において用いられるものである。加熱調理器20は、受け皿19を備えた焼き網12上に載せた調理物13を収容する調理室11内に、調理物13の上面を加熱する上面加熱手段14と、下面を加熱する下面加熱手段15と、調理室11の上部に設けた排気口16とを設け、排気口16には調理室11の上方を通る排気通路17が設けられている。この排気口16に除煙脱臭用触媒体1を貴金属触媒4側が調理室11内に向くようにして取り付けてある。
【0025】
以上のように構成された除煙脱臭用触媒体について、以下その動作、作用を説明する。
【0026】
図2に示した加熱調理器において、まず、焼き網12上に載せた調理物13は、上面加熱手段14と、下面加熱手段15からの加熱により調理される。加熱された調理物13からは高温の油煙や臭気成分が発生し、調理室11の上部に移動し、調理室11の上部に設けた排気口16に取り付けた除煙脱臭用触媒体1を通過する。一方、除煙脱臭用触媒体1は上面加熱手段14によって高温に加熱されており、通過する油煙や臭気成分は高温に加熱された除煙脱臭用触媒体1によって分解され、排気通路17を通って外部に油煙や臭気を出さずに放出される。
【0027】
ここで、除煙脱臭用触媒体の性能評価の実験1〜4を行った。以下、各実験の結果について説明する。
【0028】
(実験1)
加熱調理器としては、図2に示した構成の加熱調理器を用いた。本実施の形態の除煙脱臭用触媒体1Aは、繊維質セラミックからなるインチ当たり300セルのハニカム構造体の表面に、酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布した後、300℃以上の温度で熱処理をしてアルミナ系担体を形成し、次にアルミナ系担体の表面に白金溶液を浸漬塗布した後、300℃以上の温度で熱処理をして白金触媒を形成する工程を行い作成した。
【0029】
また、比較例の触媒体1Bとして、耐熱セラミックからなるインチ当たり300セルのハニカム構造体の表面に、アルミナからなる担体層と、担体層の表面に担持した白金からなる触媒体を用いた。また、比較例の触媒体1Cとして、セラミック繊維堆積ペーパーからなるインチ当たり300セルのハニカム状形成体に、酸化マンガンを主体とする成分を吸着担持した触媒体を用いた。
【0030】
除煙脱臭用触媒体1Aと、触媒体1B、1Cについて、図2に示す加熱調理器を用いて、以下の手段により評価を行った。加熱調理器の調理室11に秋刀魚4匹を入れ、調理開始から経過時間ごとに調理終了まで、排気口16より排出される煙と臭気成分の総量として炭化水素濃度を測定した。結果を図3に示す。
【0031】
図3から明らかなように、本実施の形態における除煙脱臭用触媒体1Aの方が、比較例の触媒体1Bや1Cよりも、排出される炭化水素の濃度が低いことがわかる。特に、除煙脱臭用触媒体1Aは調理終盤の最も多くの油煙や臭気が発生するときでも、炭化水素濃度は低くなっており、触媒体1B、1Cとの差は明らかである。
【0032】
これにより、本実施の形態における除煙脱臭用触媒体1Aは、油煙や臭気の発生量が多いときでも比較例の触媒体よりも性能が高く、多くの油煙や臭気成分を処理できることがわかる。
【0033】
(実験2)
加熱調理器としては、図2に示した構成の加熱調理器を用いた。本実施の形態の除煙脱臭用触媒体2Aは、繊維質セラミックからなるインチ当たり300セルのハニカム構造体の表面に、酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布した後、エアブローを行い、300℃以上の温度で熱処理をしてアルミナ系担体を形成し、次にアルミナ系担体の表面に白金溶液を浸漬塗布した後、エアブローを行い、300℃以上の温度で熱処理をして白金触媒を形成する工程を行い作成した。
【0034】
除煙脱臭用触媒体2Aについて、図2に示す加熱調理器を用いて、以下の手段により評価を行った。加熱調理器の調理室11に秋刀魚4匹を入れ、調理開始から経過時間ごとに調理終了まで、排気口16より排出される煙と臭気成分の総量として炭化水素濃度を測定した。結果を図4に示す。
【0035】
図4から明らかなように、本実施の形態の除煙脱臭用触媒体2Aは、排出される炭化水素の濃度が一層低いことがわかる。除煙脱臭用触媒体2Aは製造方法において、エアブローを行うことで担持量を最適化しているため、調理終盤の最も多くの油煙や臭気が発生するときでも、炭化水素濃度は低くなっている。
【0036】
これにより、本実施の形態の除煙脱臭用触媒体2Aは、油煙や臭気の発生量が多いときでも比較例の触媒体よりも性能が高く、多くの油煙や臭気成分を処理できることがわかる。
【0037】
(実験3)
加熱調理器としては、図2に示した構成の加熱調理器を用いた。本実施の形態の除煙脱臭用触媒体3Aは、繊維質セラミックからなるインチ当たり300セルのハニカム構造体の表面に、酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布した後、エアブローを行い、300℃以上の温度で熱処理をしてアルミナ系担体を形成し、次にアルミナ系担体の表面に白金溶液を浸漬塗布した後、エアブローを行い、300℃以上の温度で熱処理をして白金触媒を形成する工程を行い作成した。
【0038】
除煙脱臭用触媒体3Aについて、担体層のアルミナ系担体として酸化セリウム、および酸化バリウム、および酸化セリウムと酸化バリウムを混合した場合について以下の手段を用いて評価を行った。性能評価用の加熱調理器の調理室11に秋刀魚4匹を入れ、調理開始8分から調理終了(開始から18分)まで、排気口16より排出される煙と臭気成分の総量として炭化水素濃度を測定し10分間の平均値をもとめた。結果を(表1)に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
(表1)から明らかなように、本実施の形態の除煙脱臭用触媒体3Aを用いれば、担体層として、酸化アルミニウムを主成分とする担体を用いれば排出される煙や臭気成分である炭化水素の濃度が低いことがわかる。特に、酸化アルミニウムに酸化セリウムや酸化バリウムを混合したときにその活性は高く、排出される炭化水素の濃度が低い。
【0041】
これにより、本実施の形態の除煙脱臭用触媒体3Aは、担体層として、酸化セリウムと酸化アルミニウムを主成分とするものや、酸化バリウムと酸化アルミニウムを主成分とするものや、酸化バリウムと酸化セリウムと酸化アルミニウムを主成分とするものを用いることで、多くの油煙や臭気成分を処理できることがわかる。
【0042】
(実験4)
加熱調理器としては、図2に示した構成の加熱調理器を用いた。本実施の形態の除煙脱臭用触媒体4Aは、繊維質セラミックからなるハニカム構造体の表面に、酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布した後、エアブローを行い、300℃以上の温度で熱処理をしてアルミナ系担体を形成し、次にアルミナ系担体の表面に白金溶液を浸漬塗布した後、エアブローを行い、300℃以上の温度で熱処理をして白金触媒を形成する工程を行い作成した。
【0043】
除煙脱臭用触媒体4Aについて、ハニカム構造体をインチ当たりのセル数が50、100、150、200、300、400、500、600セルと変えて、以下の手段を用いて評価を行った。性能評価用の加熱調理器の調理室11に秋刀魚4匹を入れ、調理開始8分から調理終了(開始から18分)まで、排気口16より排出される煙と臭気成分の総量として炭化水素濃度を測定し10分間の平均値をもとめた。結果を(表2)に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
(表2)から明らかなように、本実施の形態の除煙脱臭用触媒体4Aを用いれば、ハニカム構造体のインチ当たりのセル数が100セル以上500セル以下であれば、排出される煙や臭気成分である炭化水素の濃度が低いことがわかる。特に、インチ当たりのセル数が200セル、300セルのときにその活性は高く、炭化水素の濃度が低い。
【0046】
これにより、本実施の形態の除煙脱臭用触媒体4Aは、繊維質セラミックの構造体として、インチ当たり100セル以上500セル以下、望ましくは200セル以上300セル以下のハニカム構造の構造体を用いることで、多くの油煙や臭気成分を処理できることがわかる。
【0047】
(実験5)
加熱調理器としては、図2に示した構成の加熱調理器を用いた。本実施の形態の除煙脱臭用触媒体5Aは、繊維質セラミックからなるインチ当たり300セルのハニカム構造体の表面に、酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布した後、エアブローを行い、300℃以上の温度で熱処理をしてアルミナ系担体を形成し、次にアルミナ系担体の表面に貴金属溶液を浸漬塗布した後、エアブローを行い、300℃以上の温度で熱処理をして貴金属触媒を形成する工程を行い作成した。
【0048】
除煙脱臭用触媒体5Aについて、貴金属触媒を白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、および白金とパラジウムの混合物と変えて、以下の手段を用いて評価を行った。性能評価用の加熱調理器の調理室11に秋刀魚4匹を入れ、調理開始8分から調理終了(開始から18分)まで、排気口16より排出される臭気成分の総量として炭化水素濃度を測定し10分間の平均値をもとめた。結果を(表3)に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
(表3)から明らかなように、本実施の形態の除煙脱臭用触媒体5Aを用いれば、触媒として貴金属を用いることにより排出される臭気成分である炭化水素の濃度が低いことがわかる。特に、白金やパラジウムを用いたときにその活性は高く、炭化水素の濃度が低い。
【0051】
これにより、本実施の形態の除煙脱臭用触媒体は、触媒として、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、および白金とパラジウムの混合物の貴金属を用いることで、多くの油煙や臭気成分を処理できることがわかる。
【0052】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における除煙脱臭用触媒体について説明する。
【0053】
除煙脱臭用触媒体の性能評価として、アルミナ系担体を形成したときの単位面積当たりのアルミナ担持量と、目詰まりの有無を測定し、除煙脱臭性能に関しては実施の形態1と同様に図2の加熱調理器を用いた。
【0054】
本実施の形態の除煙脱臭用触媒体6Aは、繊維質セラミックからなるインチ当たり300セルのハニカム構造体の表面に、酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布した後、エアブローを行い、300℃以上の温度で熱処理をしてアルミナ系担体を形成し、次にアルミナ系担体の表面に白金溶液を浸漬塗布した後、エアブローを行い、300℃以上の温度で熱処理をして白金触媒を形成する工程を行い作成した。
【0055】
除煙脱臭用触媒体6Aについて、酸化アルミニウムを主成分とするゾルは、固形成分の重量をWs、水の重量をWaとした場合Wa/Wsが、0.5、1、5、10、30、50、100、200と変えて以下の手段を用いて評価を行った。ハニカム構造体の表面に、酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布した後、エアブローを行い、300℃以上の温度で熱処理をしてアルミナ系担体を形成した際の単位面積当たりのアルミナ担持量を測定し、目詰まりの有無を確認した。さらに、性能評価用の加熱調理器の調理室11に秋刀魚4匹を入れ、調理開始8分から調理終了(開始から18分)まで、排気口16より排出される煙と臭気成分の総量として炭化水素濃度を測定し10分間の平均値をもとめた。結果を(表4)に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
(表4)から明らかなように、本実施の形態の除煙脱臭用触媒体6Aを用いれば、酸化アルミニウムを主成分とするゾルは、固形成分の重量をWs、水の重量をWaとした場合Wa/Wsが、1≦Wa/Ws≦100であれば、ハニカムの目詰まりが無く、排出される煙や臭気成分である炭化水素の濃度が低いことがわかる。特に、Wa/Wsが5、10のときにその活性は高く、炭化水素の濃度が低いため、より最適な酸化アルミニウムの担持量であるとわかる。
【0058】
これにより、本実施の形態の除煙脱臭用触媒体6Aは、酸化アルミニウムを主成分とするゾルは、固形成分の重量をWs、水の重量をWaとした場合Wa/Wsが、1≦Wa/Ws≦100で、望ましくはWa/Wsが5≦Wa/Ws≦10である酸化アルミニウムを主成分とするゾルを用いることで、ハニカムの目詰まりが無く多くの油煙や臭気成分を処理できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明にかかる除煙脱臭用触媒体およびその製造方法は、魚介類などの加熱調理により発生する煙や臭気の効果的な除煙脱臭が可能となり、その製造方法は、繊維質セラミック構造体の表面にアルミナ系担体を形成する工程と、アルミナ系担体に貴金属溶液を形成する工程との2つの工程により製造することができるので、加熱調理器はもちろんのこと、除煙脱臭を必要とする機器全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態1における除煙脱臭用触媒体の断面図
【図2】同除煙脱臭用触媒体を用いた加熱調理器の断面図
【図3】同除煙脱臭触媒体を用いた加熱調理器からの炭化水素濃度を示す特性図
【図4】同除煙脱臭触媒体の他例を用いた場合の加熱調理器からの炭化水素濃度を示す特性図
【符号の説明】
【0061】
1 除煙脱臭用触媒体
2 繊維質セラミック構造体
3 アルミナ系担体
4 貴金属触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質セラミック構造体と、前記繊維質セラミック構造体の表面に酸化アルミニウムを主成分とするゾルを浸漬塗布し熱処理形成したアルミナ系担体と、前記アルミナ系担体の表面に貴金属溶液を浸漬塗布し熱処理形成した貴金属触媒とを有する除煙脱臭用触媒体。
【請求項2】
酸化アルミニウムを主成分としたゾルは固形成分の重量をWs、水の重量をWaとし、その比をWa/Wsとした場合、1≦Wa/Ws≦100となるように混合した請求項1に記載の除煙脱臭用触媒体。
【請求項3】
アルミナ系担体は酸化セリウム単独または酸化バリウム単独または酸化セリウムと酸化バリウムを含有した請求項1または2に記載の除煙脱臭用触媒体。
【請求項4】
繊維質セラミック構造体はインチ当たり100セル以上500セル以下のハニカム構造とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の除煙脱臭用触媒体。
【請求項5】
貴金属溶液は白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウムの少なくとも1種で構成した請求項1〜4のいずれか1項に記載の除煙脱臭用触媒体。
【請求項6】
貴金属溶液は白金、パラジウムの2種類で構成した請求項1〜4のいずれか1項に記載の除煙脱臭用触媒体。
【請求項7】
繊維質セラミック構造体の表面に酸化アルミニウムを主成分としたゾルを浸漬塗布した後に熱処理をしてアルミナ系担体を形成する工程と、前記アルミナ系担体に貴金属溶液を浸漬塗布した後に熱処理をして貴金属触媒を形成する工程とを有する除煙脱臭用触媒体の製造方法。
【請求項8】
繊維質セラミック構造体の表面に酸化アルミニウムを主成分としたゾルを浸漬塗布した後にエアブローを行うとともに、アルミナ系担体に貴金属溶液を浸漬塗布した後にもエアブローを行うようにした請求項7に記載の除煙脱臭用触媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−207101(P2008−207101A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46481(P2007−46481)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】