説明

除草剤の標的としてのグリシンデカルボキシラーゼ複合体

本発明は、グリシンデカルボキシラーゼ複合体の使用に関し、それは、生育遅延および退緑葉の非存在下での除草剤の標的として使用される。このために、配列番号1および配列番号1の機能的同等物を含む新規核酸配列が開示される。本発明はまた、除草剤効果または生育調節効果を有する化合物を同定する方法におけるグリシンデカルボキシラーゼ複合体およびその機能的同等物の使用、さらに、その方法によって同定された化合物の除草剤または生育調節剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草剤の標的としてのグリシンデカルボキシラーゼ複合体の使用に関し、グリシンデカルボキシラーゼ複合体が存在しない場合は、生育の低下およびクロロティックリーフ(chlorotic leaves:退緑葉)が生じる。このために、配列番号1および配列番号1の機能的同等物を含む新規核酸配列が提供される。更に、本発明は、除草剤活性または生育調節活性を有する化合物を同定する方法におけるグリシンデカルボキシラーゼ複合体およびその機能的同等物の使用、ならびにその方法によって同定されたこれらの化合物の除草剤または生育調節剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特定された標的を阻害することにより除草剤を同定する基本原理が知られている(例えば、US 5,187,071、WO 98/33925、WO 00/77185)。一般的に、除草剤の新規標的となりうる酵素を検出することに対する大きな需要がある。その理由は、既知の標的に作用する除草剤活性成分に生じる耐性の問題、ならびに、できるだけ広範囲の作用スペクトル、生態学的、毒物学的容認性および/または低い散布量によって特徴づけられる新規除草剤活性成分を同定するための継続的な試みのためである。
【0003】
実際には、代謝経路の一部を形成する酵素の阻害はしばしば植物の生育に対して更なる影響を及ぼさないため、新規標的の検出は大きな困難を伴う。これは、植物が存在の知られていない代替の代謝経路に切り替えるか、または阻害された酵素が代謝経路に制限的でないという事実によるかもしれない。更に、植物ゲノムは高度の機能的冗長性によって特徴づけられる。機能的に同等の酵素は、昆虫または哺乳動物よりもシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)ゲノムでの遺伝子ファミリーにおいて、より頻繁に見いだされる(Nature, 2000, 408(6814):796-815)。この仮説は、シロイヌナズナへのT-DNAまたはトランスポゾン挿入による網羅的な遺伝子ノックアウト計画が、今までに期待されるよりも少ない明白な表現型しか生じなかったという事実によって実験的に確認される(Curr. Op. Plant Biol. 4, 2001, pp.111-117)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、植物の生育に必須の新規標的を同定すること、またはその阻害が植物生育の低下を引き起こす新規標的を同定すること、ならびに除草剤活性のある化合物および/または生育調節化合物の同定に適した方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、この課題が除草剤を同定する方法におけるグリシンデカルボキシラーゼ複合体の使用によって達成されることを見出した。
【0006】
本明細書において使用される用語をここで定義する。
【0007】
「親和性タグ」:これは、それをコードしている核酸配列が本発明の核酸配列に直接またはリンカーを介して通常のクローニング技術によって融合され得る、ペプチドまたはポリペプチドを指す。親和性タグは、アフィニティークロマトグラフィーを用いた全細胞抽出液からの組換え標的タンパク質の単離、濃縮および/または選択的精製に役立つ。上述のリンカーは有利には(例えばトロンビンまたはXa因子のための)プロテアーゼ切断部位を含むことができ、それによって親和性タグは必要に応じて標的タンパク質から切断され得る。一般的な親和性タグの例は、「Hisタグ」(例えばQuiagen, Hildenから得られる)、「Strepタグ」、「Mycタグ」(Invitrogen, Carlsberg)、キチン結合ドメインおよびインテインから成るタグ(New England Biolabsから得られる)、マルトース結合タンパク質(pMal)(New England Biolabsから得られる)、ならびにCBDタグとして知られているもの(Novagenから得られる)である。この場合に、親和性タグは、標的タンパク質をコードする配列を有するコード核酸配列の5'または3'末端に付加され得る。
【0008】
「活性」:「活性」という用語は、基質を生成物に変換するための酵素の能力を表す。活性は、生成物の増加、基質(もしくは出発物質)の減少または特異的補因子の減少により、あるいは上述のパラメーターのうち少なくとも2つの組合せにより、活性アッセイとして知られているものにおいて、特定期間の関数として測定され得る。
【0009】
本明細書において「グリシンデカルボキシラーゼ複合体の活性」とは、NAD+のNADH+H+への還元を伴って、グリシンを二酸化炭素、アンモニウム、水、およびメチレン基(テトラヒドロ葉酸に転移される)に変換する反応を触媒する酵素の能力をさす。
【0010】
この反応は、例えば、単離されたグリシンデカルボキシラーゼ複合体を用いて、NAD+、グリシンおよびテトラヒドロ葉酸の存在下で、NADHの形成を340 nmで測光的に検出することによって測定され得る。
【0011】
本明細書において「グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの活性」とは、二酸化炭素と水の放出を伴ってグリシンと反応し、その間にアミノメチル基を形成する酵素の能力を指す。
【0012】
本明細書において「グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットLの活性」とは、グリシンデカルボキシラーゼ複合体のHサブユニットのジヒドロリポ酸補欠分子族を酸化すると同時に、NAD+をNADHおよびH+に変換し、そしてリポ酸に変換する酵素の能力を指す。
【0013】
本明細書において「グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットTの活性」とは、グリシンデカルボキシラーゼ複合体のHサブユニットに付加しているリポ酸のアミノメチル基と反応し、それによってアンモニウムイオンの同時放出を伴ってメチレン基をテトラヒドロ葉酸に転移し、かつグリシンデカルボキシラーゼ複合体のHサブユニットにジヒドロリポ酸補欠分子族を残しておく、酵素の能力を指す。
【0014】
本明細書において「グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットHの活性」とは、アミノメチル基をリポ酸補欠分子族に共有結合させ、後者をグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットTに渡す酵素の能力を指す。
【0015】
「発現カセット」:発現カセットは、プロモーターのような少なくとも1つの遺伝子制御エレメント、および有利には、ターミネーターのような更なる制御エレメントに機能しうる形で連結された本発明の核酸配列を含む。発現カセットの核酸配列は、例えば、ゲノムDNAもしくは相補的DNA配列またはRNA配列、およびそれらの半合成類似体もしくは完全合成類似体であり得る。これらの配列は、直鎖状または環状型で、染色体外またはゲノム内に挿入されて存在し得る。対象の核酸配列は、合成もしくは天然から得られ、または合成および天然DNA成分の混合物を含み、あるいは様々な生物の様々な異種遺伝子断片で構成され得る。
【0016】
人工核酸配列もまた、それらが細胞または生物においてグリシンデカルボキシラーゼ複合体の活性を有するポリペプチドの発現を可能にする限り、この状況において適切であり、そのポリペプチドは本発明の核酸配列によってコードされる。例えば、形質転換されるべき生物のコドン使用頻度に関して最適化された合成ヌクレオチド配列が作製され得る。
【0017】
すべての上述のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド単位からそれ自体公知の方法での化学合成によって、例えば、二重らせんの個々の重複する相補的ヌクレオチド単位の断片縮合によって作製される。オリゴヌクレオチドは、例えばホスホアミダイト法を用いたそれ自体公知の方法で化学的に合成され得る(Voet, Voet, 第2版、Wiley Press New York, pp. 896-897)。発現カセットを作製する場合、様々なDNA断片は、適切な読み取り方向および正しい読み枠を有するヌクレオチド配列が得られるように操作される。核酸断片は、例えば、T. Maniatis, E.F. FritschおよびJ. Sambrook, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)、T.J. Silhavy, M.L. BermanおよびL.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)ならびに Ausubel, F.M.ら、"Current Protocols in Molecular Biology", Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscience (1994)に記載されるような一般的なクローニング技術によって互いに連結される。
【0018】
「機能しうる形での連結」:機能しうる形での連結、または機能的な連結とは、コード配列が発現される際に、それぞれの調節配列もしくはそれぞれの遺伝子制御エレメントがその目的とする機能を果たすことができるような、調節配列または遺伝子制御エレメントの連続的配置を意味するものとして理解される。
【0019】
「機能的同等物」は、本明細書において、標準的な条件下で核酸配列(ここでは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7もしくは配列番号9)または核酸配列(ここでは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7もしくは配列番号9)の一部にハイブリダイズする核酸配列、および細胞もしくは生物においてグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットP、H、LまたはTの活性を有する少なくとも1つのポリペプチドの発現をもたらすことができる核酸配列を表す。
【0020】
ハイブリダイゼーションを行うために、例えば保存領域または他の領域の約10〜50 bp、好ましくは15〜45 bpの長さを持つ短いオリゴヌクレオチドを使用することが有利であり、それは当業者が精通している方法で他の関連遺伝子との比較によって決定され得る。しかし、100〜500 bpの長さを持つ本発明の核酸のより長い断片、または完全配列もまた、ハイブリダイゼーションに使用することができる。使用される核酸/オリゴヌクレオチド、断片もしくは完全配列の長さに応じて、または、いずれの種類の核酸(すなわち、DNAまたはRNA)がハイブリダイゼーションに用いられるかに応じて、これらの標準的な条件は変化しうる。こうして、例えば、DNA:DNAハイブリッドの融解温度は、同一の長さのDNA:RNAハイブリッドのそれより約10℃低い。
【0021】
標準的なハイブリダイゼーション条件は、核酸に応じて、例えば0.1〜5 x SSC(1 X SSC = 0.15 M NaCl, 15 mMクエン酸ナトリウム, pH 7.2)の濃度の水性バッファー溶液において42〜58℃の温度、または更に50%ホルムアミドの存在下において、例えば5 x SSC、50%ホルムアミドで42℃などを意味するものとして理解されるべきである。DNA:DNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、有利には、0.1 x SSCおよび約20℃〜65℃、好ましくは約30℃〜45℃の温度である。DNA:RNAハイブリッドの場合には、ハイブリダイゼーション条件は、有利には、0.1 x SSCおよび約30℃〜65℃、好ましくは約45℃〜55℃の温度である。これらの記載されたハイブリダイゼーション温度は、一例として、約100ヌクレオチドの長さおよび50%のG + C含量を持つ核酸に対してホルムアミド非存在下で計算された融解温度値である。DNAハイブリダイゼーションのための実験条件は、例えば、Sambrookらの"Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory, 1989のような関連した遺伝学の教科書に記載され、例えば、核酸の長さ、ハイブリッドの種類またはG + C含量の関数として、当業者に公知の式を用いて計算され得る。当業者はハイブリダイゼーションについての更なる情報を以下の教科書、すなわち、Ausubelら(編)、1985, "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley & Sons, New York; HamesおよびHiggins(編)、1985, "Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown(編)、1991, Essential Molecular Biology: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford中に見いだすであろう。
【0022】
機能的同等物は更にまた、特定の核酸配列(「元の核酸配列」)に対して特定の相同性または同一性を有する核酸配列、および元の核酸配列と同一の活性を有する核酸配列、更に具体的にはまた、これらの核酸配列の天然または人工的な突然変異を有する核酸配列を意味するものとして理解される。
【0023】
本発明はまた、例えば、上述の核酸配列の改変によって得られるヌクレオチド配列を含む。例えば、このような改変は、「部位特異的突然変異誘発」、「エラープローンPCR」、「DNAシャッフリング」(Nature 370, 1994, pp.389-391)または「付着伸長プロセス」(Nature Biotechnol. 16, 1998, pp.258-261)などの当業者が精通している技術によって作製され得る。このような改変の目的は、例えば、制限酵素のための更なる切断部位の挿入、配列をトランケートするためのDNAの除去、コドンを最適化するためのヌクレオチドの置換、または更なる配列の付加であり得る。改変された核酸配列によってコードされるタンパク質は、基準からはずれた核酸配列にも関わらず、望ましい機能を保持していなければならない。
【0024】
このように、機能的同等物は、本明細書に記載された配列の天然に生じる変異体および人工核酸配列(例えば、化学合成によって得られたものおよびコドン使用頻度に適応させたもの)を含み、さらにそれらに由来するアミノ酸配列をも含む。
【0025】
「遺伝子制御配列」は、原核生物または真核生物において本発明の核酸の転写に、適切な場合には翻訳にも、影響を及ぼす配列を表す。その例は、プロモーター、ターミネーターまたは「エンハンサー」配列として知られているものである。これらの制御配列に加えて、またはこれらの配列の代わりに、これらの配列の天然の調節が依然として実際の構造遺伝子の前に存在してもよく、適切な場合には、天然の調節のスイッチが切られ、標的遺伝子の発現が改変される(すなわち増加もしくは減少する)ように遺伝子操作されうる。制御配列の選択は、宿主生物または出発生物によって決まる。遺伝子制御配列は更にまた、5'非翻訳領域、イントロンまたは遺伝子の3'非コード領域を含む。制御配列は更に、相同組換えもしくは宿主生物のゲノムへの挿入を可能にするもの、またはゲノムからの除去を可能にするものも意味すると理解される。遺伝子制御配列はまた、更なるプロモーター、プロモーターエレメントまたは最小プロモーター、およびクロマチン構造に影響を及ぼす配列(例えばマトリックス結合領域(MAR))を含み、それは発現制御特性を改変し得る。従って、遺伝子制御配列は、例えば特定のストレス因子に対して組織特異的発現の付加的な依存性をもたらしうる。このようなエレメントは、例えば、水ストレス、アブシジン酸(Lam EおよびChua NH, J Biol Chem 1991; 266(26): 17131-17135)、寒冷および乾燥ストレス(Plant Cell 1994, (6): 251-264)ならびに熱ストレス(Molecular & General Genetics, 1989, 217(2-3): 246-53)について記載されている。
【0026】
2つの核酸配列またはポリペプチド配列間の「相同性」は、それぞれの場合に完全配列長にわたる核酸配列/ポリペプチド配列の同一性によって定義され、それは核酸については以下のパラメーター:
Gap Weight: 50 Length Weight: 3
Average Match: 10000 Average Mismatch: 0.000
を設定したGAPアライメント(NeedlemanおよびWunsch 1970, J. Mol. Biol. 48; 443-453)を用いたアライメントによって計算される。
【0027】
以下の文中では、同一性という用語もまた、「相同の」または「相同性」という用語と同義に用いられる。
【0028】
核酸またはアミノ酸配列の「突然変異」は、1以上のヌクレオチド残基の置換、付加、欠失、逆位または挿入を含み、それはまた、1以上のアミノ酸の置換、挿入または欠失によって標的タンパク質の対応するアミノ酸配列に変化をもたらすが、標的タンパク質の機能特性は全体的には基本的に保持される。
【0029】
「天然の遺伝子環境」は、起源生物における天然の染色体遺伝子座を意味する。ゲノムライブラリーの場合には、核酸配列の天然の遺伝子環境は、好ましくは少なくとも一部が保持される。その環境は少なくとも5'側または3'側で核酸配列と隣接し、少なくとも50 bp、好ましくは少なくとも100 bp、特に好ましくは少なくとも500 bp、非常に好ましくは少なくとも1000 bp、最も好ましくは少なくとも5000 bpの配列長を有する。
【0030】
本発明の目的のための「植物」は、植物細胞、植物組織、植物器官、または完全な植物体、例えば種子、塊茎、花、花粉、果実、苗木、根、葉、茎もしくは他の植物部位などである。更に、植物という用語は、種子、果実、苗木、挿し木、塊茎、切り枝または根茎などの繁殖材料を意味するものとして理解される。
【0031】
「反応時間」とは、酵素活性に関する重大な知見が得られ、それが、アッセイに用いるタンパク質の比活性と、使用する方法および使用する機器の感度との両方に依存するまでの、酵素活性の測定のアッセイを行うために必要とされる時間を指す。当業者は反応時間の決定に精通している。測光に基づいた除草剤活性のある化合物の同定方法の場合には、反応時間は、例えば、通常>0分から120分の間である。
【0032】
「組換えDNA」は、組換えDNA技術によって作製され得るDNA配列の組合せを表す。
【0033】
「組換えDNA技術」:DNA配列を融合するために一般的に知られている技術である(例えば、Sambrookら、1989, Cold Spring Harbor, NY, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される)。
【0034】
「複製起点」は、例えば大腸菌(E. coli)でのpBR322 oriもしくはP15A ori(Sambrookら: "Molecular Cloning. A Laboratory Manual", 第2版Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)および酵母でのARS1 ori(Nucleic Acids Research, 2000, 28(10): 2060-2068)のように、微生物および酵母における本発明の発現カセットまたはベクターの複製を確実にする。
【0035】
「リポーター遺伝子」は容易に定量できるタンパク質をコードする。形質転換効率または発現部位もしくは発現時期は、これらの遺伝子を用いて、増殖アッセイ、蛍光アッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイもしくは耐性アッセイによって、または光度測定(固有の色)もしくは酵素活性によって評価され得る。本明細書において非常に好ましいのは、「緑色蛍光タンパク質」(GFP)(Gerdes HHおよびKaether C, FEBS Lett. 1996; 389(1):44-47; Chui WLら、Curr Biol 1996, 6:325-330; Leffel SMら、Biotechniques. 23(5):912-8, 1997)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ(Giacomin, Plant Sci 1996, 116:59-72; Scikantha, J Bact 1996, 178:121; Millarら、Plant Mol Biol Rep 1992 10:324-414)、ならびにルシフェラーゼ遺伝子、通常βガラクトシダーゼまたはβグルクロニダーゼ(Jeffersonら、EMBO J. 1987, 6, 3901-3907)またはUra3遺伝子などのリポータータンパク質(Schenborn E, Groskreutz D. Mol Biotechnol. 1999; 13(1):29-44)である。
【0036】
「選択マーカー」は抗生物質または他の毒性化合物への耐性を与える。これに関して記載しうる例は、アミノグリコシド系抗生物質ネオマイシン(G 418)、カナマイシン、パロマイシンへの耐性を与えるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(Deshayes Aら、EMBO J. 4 (1985) 2731-2737)、突然変異したジヒドロプテロイン酸合成酵素をコードするsul遺伝子(Guerineau Fら、Plant Mol Biol. 1990; 15(1):127-136)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子(Gen Bank受入番号K 01193)およびゼオシンのようなブレオマイシン系抗生物質への耐性を与えるshble耐性遺伝子である。選択マーカー遺伝子の更なる例は、2-デオキシグルコース-6-リン酸(WO 98/45456)もしくはホスフィノトリシン等への耐性を与える遺伝子、または代謝拮抗物質への耐性を与えるもの、例えばdhfr遺伝子(Reiss, Plant Physiol. (Life Sci. Adv.) 13 (1994) 142-149)である。適切な他の遺伝子の例は、trpBまたはhisD(Hartman SCおよびMulligan RC, Proc Natl Acad Sci U S A. 85 (1988) 8047-8051)である。別の適切な遺伝子は、マンノースリン酸イソメラーゼ遺伝子(WO 94/20627)、ODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)遺伝子(Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory, 編におけるMcConlogue, 1987)またはアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)のデアミナーゼ(Tamura Kら、Biosci Biotechnol Biochem. 59 (1995) 2336-2338)である。
【0037】
「形質転換」は異種DNAを原核細胞または真核細胞に導入するための過程を表す。形質転換細胞という用語は、形質転換過程それ自体の産物だけでなく、形質転換によって作製されたトランスジェニック生物のすべてのトランスジェニック子孫をも表す。
【0038】
「標的/標的タンパク質」:本発明の核酸配列によってコードされるポリペプチドであり、それは従来の意味で酵素の形態、または、例えば、構造タンパク質、発生過程に関連するタンパク質、転写因子のような調節タンパク質、キナーゼ、ホスファターゼ、受容体、チャネルサブユニット、輸送タンパク質、酵素複合体に基質もしくは活性調節を与える調節サブユニットの形態を取りうる。すべての標的または作用部位は、それらの機能的存在が生存もしくは正常な発達および生育に必須であるという特性を共有する。
【0039】
「トランスジェニック」:核酸配列、本発明の核酸配列を含む発現カセットもしくはベクター、または上述の核酸配列、発現カセットもしくはベクターによって形質転換された生物に関して、トランスジェニックという用語は、標的タンパク質の核酸配列もしくは標的タンパク質の核酸配列と機能的に連結された遺伝子制御配列または上述の可能性の組合せのいずれかがそれらの天然の遺伝子環境にない、あるいは組換え法によって改変されている、遺伝子組換え法によって作製されたすべてのそれらの構築物を表す。これに関連して、その改変は、例えば、対象の核酸配列の1以上のヌクレオチド残基を突然変異させることによって達成され得る。
【0040】
以下の配列は本出願において参照される。
配列番号1は、タバコ(Nicotiana tabacuum)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体のPサブユニットの部分核酸配列である。
配列番号2は、タバコ(Nicotiana tabacuum)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体のPサブユニットの部分アミノ酸配列である。
配列番号3は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体のPサブユニットの核酸配列である。
配列番号4は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体のPサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号5は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体のLサブユニットの核酸配列である。
配列番号6は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体のLサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号7は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体のTサブユニットの核酸配列である。
配列番号8は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体のTサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号9は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体のHサブユニットの核酸配列である。
配列番号10は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体のHサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号11〜配列番号15は、プライマーである。
【0041】
ミトコンドリアでのグリシンの分解は植物において特に重要である。光合成の間、リブロース二リン酸デカルボキシラーゼ(Rubisco)のオキシゲナーゼ副反応は、2-ホスホグリコール酸の生成を引き起こし、それは光阻害を防ぐためにATPの消費を伴う光呼吸経路において代謝されなければならない。光呼吸の間にペルオキシソームで生成されるグリシンは、グリシンデカルボキシラーゼ複合体によって変換される。グリシンデカルボキシラーゼ複合体は、4つの酵素サブユニット、すなわち、サブユニットP、サブユニットH、サブユニットLおよびサブユニットTタンパク質から成る。Pサブユニットは初期段階でピリドキサルリン酸と結合することによってグリシンを活性化し、CO2の放出を伴ってそれを脱炭酸する。残存するアミノメチル基はHサブユニットのジヒドロリポ酸基に転移される。C1単位は、NH4+の放出を伴って、Tサブユニットのテトラヒドロ葉酸基に転移される。回復した還元型ジヒドロリポ酸基はLサブユニットによって、NADの還元を伴って、再酸化される。最後に、C1単位はセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼによってグリシンに転移され、セリンを生じる。
【0042】
正常な植物の生育のための光呼吸の重要性は、ミトコンドリアにグリシンデカルボキシラーゼ複合体の測定可能な活性を持たないシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の突然変異体を用いて確認された(SomervilleおよびOgren 1982, Biochemical Journal 202, pp.373以下参照)。しかし、これらの突然変異体は遺伝学的に解析されていなかったため、その影響がグリシンデカルボキシラーゼ複合体の不活性化に起因するかどうかは不明である。これらの突然変異体は高CO2濃度下でのみ生育できる。これらの濃度下では、Rubiscoのオキシゲナーゼ反応は著しく制限されるため、光呼吸が必要とされない。
【0043】
グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの特別な重要性は、ジャガイモにおけるサブユニットPのアンチセンス阻害によって研究された。これらの植物は約50%減少したグリシンデカルボキシラーゼ複合体の活性を有し、グリシン濃度の増加を示すが、この植物の生育力に顕著な影響は見られなかった(Heinekeら2001, Planta 212, pp.880以下参照、Winzerら2001, Annals of Applied Biology 138, pp.9以下参照)。更に、約50%低いHタンパク質およびGDC活性を有するオオムギ突然変異体は、認識できる生育上の問題もグリシン濃度の増加も示さない。
【0044】
驚いたことに、本発明では、グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの発現が特異的に減少した植物は、除草剤の使用によって生じた表現型に匹敵する表現型を有することが見いだされた。観察された症状は、著しい生育の遅延ならびにクロロシス(退緑・黄白化)および壊死などの損傷であった。
【0045】
真菌Cochliobolus victoriae由来の毒素ビクトリンは、GDC活性の阻害剤として記載されている。その菌に感染すると、葉組織の退色が感染部位に観察される。グリシンデカルボキシラーゼ複合体のHタンパク質は、約900ダルトンのサイズであるこの天然に存在する物質の結合部位として同定された。ビクトリンはGDC活性のin vitro阻害を引き起こす(NavarreおよびWolpert 1995, The Plant Cell 7, pp.463以下参照)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明は、除草剤を同定する方法におけるグリシンデカルボキシラーゼ複合体の使用に関し、その複合体はサブユニットP、L(E.C.1.8.1.4)、T(E.C.2.1.2.10)およびH、またはサブユニットP、L、HもしくはTから成り、好ましくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体の使用またはサブユニットPの使用に関する。
【0047】
これに関連して特に好ましいのは、
a)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPが、
i)配列番号1もしくは配列番号3に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号2もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号3と少なくとも59%の同一性を有する配列番号3の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
b)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットLが、
i)配列番号5に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号6に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号5と少なくとも69%の同一性を有する配列番号5の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
c)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットTが、
i)配列番号7に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号8に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号7と少なくとも68%の同一性を有する配列番号7の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
d)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットHが、
i)配列番号9に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号10に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号9と少なくとも64%の同一性を有する配列番号9の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、グリシンデカルボキシラーゼ複合体の使用であり、ここで、a)iii)、b)iii)、c)iii)およびd)iii)の機能的同等物は同一の機能性によって特徴づけられる、すなわち、それらはそれぞれ、グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの活性(a)iii))、またはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットLの活性(b)iii))、またはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットTの活性(c)iii))、またはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの活性(d)iii))を有する。
【0048】
更に好ましいのは、(a)iii))に定義されるグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの使用、または(b)iii))に定義されるグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットLの使用、または(c)iii))に定義されるグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットTの使用である。これに関して特に好ましいのは、(d)iii))に定義されるグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの使用である。
【0049】
核酸配列に関して、「含んでなる」または「含む」という用語は、本発明の核酸配列が3'および/または5'末端に付加的な核酸配列を持ちうることを意味し、付加的な核酸配列の長さは本発明の核酸配列の5'末端で500 bp、3'末端で500 bpを越えず、好ましくは5'末端で250 bp、3'末端で250 bpを越えず、特に好ましくは5'末端で100 bp、3'末端で100 bpを越えない。
【0050】
a)iii)に定義される本発明の配列番号3の機能的同等物は、配列番号3と少なくとも59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%または66%、できれば少なくとも67%、68%、69%、70%、71%、72%または73%、できれば少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、79%または80%、好ましくは少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%または93%、特に好ましくは少なくとも94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有する。
【0051】
a)iii)に定義される適切な機能的同等物の例はまた、下記の植物に由来するグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPをコードする植物核酸配列である:
Tritordeum(Gen Bank登録番号AF024589)
エンバク(Avena sativa)(Gen Bank登録番号U11693)
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Gen Bank登録番号AY128922)
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Gen Bank登録番号BT000446)
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Gen Bank登録番号AY091186)
Flaveria anomala(Gen Bank登録番号Z99762)
Flaveria pringlei(Gen Bank登録番号Z36879)
Flaveria pringlei(Gen Bank登録番号Z54239)
Flaveria pringlei(Gen Bank登録番号Z25857)
Flaveria trinervia(Gen Bank登録番号Z99767)
サヤエンドウ(Pisum sativum)(Gen Bank登録番号X59773)
ジャガイモ(Solanum tuberosum)(Gen Bank登録番号Z99770)および
イネ(Oryza sativa)(ジャポニカ品種群)(Gen Bank登録番号AY346327)。
【0052】
すべての上記配列は同様に本発明の対象である。
【0053】
b)iii)に定義される本発明の配列番号5の機能的同等物は、配列番号5と少なくとも69%、できれば少なくとも70%、71%、72%または73%、できれば少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、79%または80%、好ましくは少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%または93%、特に好ましくは少なくとも94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有する。
【0054】
b)iii)に定義される適切な機能的同等物の例はまた、下記の植物に由来するグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットLをコードする植物核酸配列である:
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Gen Bank登録番号AF228640)
オヒルギ(Bruguiera gymnorrhiza)(Gen Bank登録番号AB060811)
ジャガイモ(Solanum tuberosum)(Gen Bank登録番号AF295339)
トマト(Lycopersicon esculentum)(Gen Bank登録番号AF542182)
サヤエンドウ(Pisum sativum)(Gen Bank登録番号X62995)および
サヤエンドウ(Pisum sativum)(Gen Bank登録番号X63464)。
【0055】
すべての上記配列は同様に本発明の対象である。
【0056】
c)iii)に定義される本発明の配列番号7の機能的同等物は、配列番号7と少なくとも68%または69%、できれば少なくとも70%、71%、72%または73%、できれば少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、79%または80%、好ましくは少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%または93%、特に好ましくは少なくとも94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有する。
【0057】
c)iii)に定義される適切な機能的同等物の例はまた、下記の植物に由来するグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットTをコードする植物核酸配列である:
サヤエンドウ(Pisum sativum)(Gen Bank登録番号Z25861)
イネ(Oryza sativa)(ジャポニカ品種群)(Gen Bank登録番号AK059270)
Flaveria anomala(Gen Bank登録番号Z71184)または
Flaveria pringlei(Gen Bank登録番号Z25858)。
【0058】
すべての上記配列は同様に本発明の対象である。
【0059】
d)iii)に定義される本発明の配列番号9の機能的同等物は、配列番号9と少なくとも64%、65%または66%、できれば少なくとも67%、68%、69%、70%、71%、72%または73%、できれば少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、79%または80%、好ましくは少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%または93%、特に好ましくは少なくとも94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有する。
【0060】
d)iii)に定義される適切な機能的同等物の例はまた、下記の植物に由来するグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットHをコードする植物核酸配列である:
イネ(Oryza sativa)(インディカ品種群)(Gen Bank登録番号AF022731)
イネ(Oryza sativa)(ジャポニカ品種群)(Gen Bank登録番号AK058606)
イネ(Oryza sativa)(ジャポニカ品種群)(Gen Bank登録番号AK062851)
イネ(Oryza sativa)(ジャポニカ品種群)(Gen Bank登録番号AK071621)
イネ(Oryza sativa)(ジャポニカ品種群)(Gen Bank登録番号AK104840)
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Gen Bank登録番号AF385740)
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Gen Bank登録番号AY050446)
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Gen Bank登録番号AY078028)
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Gen Bank登録番号AY086345)
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Gen Bank登録番号AY089054)
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Gen Bank登録番号AY097349)
コムギ(Triticum aestivum)(Gen Bank登録番号AY123417)
Flaveria anomala(Gen Bank登録番号Z37524)
Flaveria anomala(Gen Bank登録番号Z99530)
Flaveria pringlei(Gen Bank登録番号Z25855)
Flaveria pringlei(Gen Bank登録番号Z25856)
Flaveria pringlei(Gen Bank登録番号Z37522)
Flaveria pringlei(Gen Bank登録番号Z99763)
Flaveria pringlei(Gen Bank登録番号Z99764)
Flaveria pringlei(Gen Bank登録番号Z99765)
Flaveria trinervia(Gen Bank登録番号Z37523)
Flaveria trinervia(Gen Bank登録番号Z48797)
アイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum)(Gen Bank登録番号U79768)
エンドウ(Pisum sativum)(Gen Bank登録番号J05164)
エンドウ(Pisum sativum)(Gen Bank登録番号X64726)
エンドウ(Pisum sativum)(Gen Bank登録番号X53656)および
ヤマナラシ(Populus tremuloides)(Gen Bank登録番号AY369261)。
【0061】
すべての上記配列は同様に本発明の対象である。
【0062】
特に好ましいのは、a)i)、ii)およびiii)に定義される核酸配列によってコードされるグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの使用である。
【0063】
すべての上記核酸配列は、好ましくは植物に由来する。
【0064】
更に本発明では、
a)配列番号1に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
b)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号2に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
c)配列番号1と少なくとも89%の同一性を有する配列番号1の核酸配列の機能的同等物、
を含む、グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの活性を有するポリペプチドをコードする植物核酸配列が提供される。
【0065】
上述の「〜を含むグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列」という用語は、a)、b)またはc)に定義される核酸配列を持ち、3'および/または5'末端に付加的な核酸配列を持ちうる核酸配列を意味するものとして理解され、付加的な核酸配列の長さは、本発明の核酸配列の5'末端で3500 bp、3'末端で500 bpを越えず、好ましくは5'末端で3100 bp、3'末端で250 bpを越えず、特に好ましくは5'末端で2900 bp、3'末端で100 bpを越えない。
【0066】
これらの核酸配列は同様にa)iii)に定義される適切な機能的同等物を構成する。
【0067】
上述の核酸配列によってコードされるポリペプチドも同様に特許請求される。c)に定義される機能的同等物は同一の機能性によって特徴づけられる、すなわち、それらはグリオキシソームのGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDCの酵素活性、好ましくは生物学的活性を有する。
【0068】
本発明の配列番号1の機能的同等物は、配列番号1と少なくとも89%、できれば少なくとも90%、91%、92%、93%、好ましくは少なくとも94%、95%、96%、特に好ましくは少なくとも97%、98%、99%の同一性を有する。
【0069】
以下に用いられる「本発明の核酸配列」という用語は、グリシンデカルボキシラーゼ複合体の1以上のサブユニットをコードする核酸配列あるいはグリシンデカルボキシラーゼ複合体全体をコードする核酸配列、好ましくは、
a)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPが、
i)配列番号1もしくは配列番号3に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号2もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号3と少なくとも59%の同一性を有する配列番号3の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
b)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットLが、
i)配列番号5に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号6に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号5と少なくとも69%の同一性を有する配列番号5の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
c)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットTが、
i)配列番号7に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号8に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号7と少なくとも68%の同一性を有する配列番号7の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
d)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットHが、
i)配列番号9に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号10に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号9と少なくとも64%の同一性を有する配列番号9の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、グリシンデカルボキシラーゼ複合体の1以上のサブユニットをコードする核酸配列あるいはグリシンデカルボキシラーゼ複合体全体をコードする核酸配列を意味する。
【0070】
グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPは、好ましくは、以下の核酸配列によりコードされる:
i)配列番号3に示される核酸配列を有する核酸配列を含む核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号4に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号3と少なくとも59%の同一性を有する配列番号3の核酸配列の機能的同等物。
【0071】
簡素化のため、本発明の核酸配列によってコードされるグリシンデカルボキシラーゼ複合体は、以後「GDC」という。本発明の核酸配列によってコードされるサブユニットP、L、TまたはHは、以後P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDCと記す。
【0072】
本発明の核酸の遺伝子産物は、望ましくない植物を防除するための新規除草剤の提供を可能にする、除草剤の新規標的を構成する。更に、本発明の核酸の遺伝子産物は、植物の生育を調節するための新規生育調節剤の提供を可能にする、生育調節剤の新規標的を構成する。除草剤の標的としての使用が本発明においては好ましい。
【0073】
望ましくない植物とは、最も広い意味で、望ましくない場所に生育するすべての植物を意味するものとして理解される。例えば、Sinapis、Lepidium、Galium、Stellaria、Matricaria、Anthemis、Galinsoga、Chenopodium、Urtica、Senecio、Amaranthus、Portulaca、Xanthium、Convolvulus、Ipomoea、Polygonum、Sesbania、Ambrosia、Cirsium、Carduus、Sonchus、Solanum、Rorippa、Rotala、Lindernia、Lamium、Veronica、Abutilon、Emex、Datura、Viola、Galeopsis、Papaver、Centaurea、Trifolium、Ranunculus、Taraxacum属の双子葉植物の雑草、Echinochloa、Setaria、Panicum、Digitaria、Phleum、Poa、Festuca、Eleusine、Brachiaria、Lolium、Bromus、Avena、Cyperus、Sorghum、Agropyron、Cynodon、Monochoria、Fimbristylis、Sagittaria、Eleocharis、Scirpus、Paspalum、Ischaemum、Sphenoclea、Dactyloctenium、Agrostis、Alopecurus、Apera属の単子葉植物の雑草である。
【0074】
配列番号1または上述の核酸配列の一部は、ハイブリダイゼーションプローブの作製のために使用され得る。これらのプローブの作製および実験手順は公知である。例えば、これは、PCRによる放射性または非放射性プローブの選択的作製、および適切に標識されたオリゴヌクレオチドの使用とそれに続くハイブリダイゼーション実験によって達成される。このために必要とされる技術は、例えば、T. Maniatis, E.F. FritschおよびJ. Sambrook, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)に詳述される。対象のプローブは更に、それらが、例えば他の生物における対応配列を解析するためにmRNAおよび対応するコード配列に特異的にハイブリダイズするプローブとして、更なる目的のために使用され得るように、標準的な技術(Lit. SDMまたはランダム突然変異誘発)によって改変することができる。
【0075】
上述のプローブは、他の植物種から配列番号1、配列番号3、配列番号8、配列番号7または配列番号9の機能的同等物を検出および単離し、また、配列同一性に基づいて配列番号1に属するタバコ(Nicotiana tabacuum)の完全長配列を検出および単離するために使用され得る。これに関連して、対象の配列番号1の配列の一部または全部は、対象の植物種のゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリーにおけるスクリーニングためのプローブとして、または電子データベースにおける機能的同等物の配列のコンピュータ検索において使用される。
【0076】
好ましい植物種は、既に上述した望ましくない植物である。
【0077】
本発明は更に、in vitroアッセイ系で使用するために、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCを発現させるための、
a)次の核酸配列:
i 配列番号1に示される核酸配列を有する核酸配列、もしくは、
ii 遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号2に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、もしくは、
iii 配列番号1と少なくとも89%の同一性を有する配列番号1の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列と機能しうる形で連結された遺伝子制御配列、
b)付加的な機能性エレメント、または、
c)a)およびb)の組合せ、
を含む発現カセットに関し、さらに
a)本発明の核酸配列と機能しうる形で連結された遺伝子制御配列、
b)付加的な機能性エレメント、または、
c)a)およびb)の組合せ、
を含む発現カセットの使用に関する。上述の発現カセットの両実施形態は、以下の文中では、本発明の発現カセットと呼ばれる。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明の発現カセットは、コード配列の5'末端にプロモーター、3'末端に転写終結シグナルを含み、適切な場合には、介在する本発明の核酸配列と機能しうる形で連結される更なる遺伝子制御配列を含む。
【0079】
本発明の発現カセットはまた、例えば、1つのポリヌクレオチド上の個々の核酸配列の組合せ(複数の構築物)、細胞内での複数のポリヌクレオチド上の個々の核酸配列の組合せ(同時形質転換)、または連続形質転換によってもたらされ得る類似体をも意味するものとして理解される。
【0080】
本発明の発現カセットまたは本発明の発現カセットを含むベクターのための上記a)において有利な遺伝子制御配列は、例えば、cos、tac、trp、tet、lpp、lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ-PRなどのプロモーターであるか、またはλ-PLプロモーター内にあり、それらのすべてはグラム陰性細菌株においてGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはGDCもしくはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの発現のために使用され得る。
【0081】
更なる有利な遺伝子制御配列の例は、例えば、プロモーターamyおよびSPO2に存在し(それらの両方はグラム陽性細菌株におけるP-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDCの発現に使用できる)、また酵母または真菌プロモーターAUG1、GPD-1、PX6、TEF、CUP1、PGK、GAP1、TPI、PHO5、AOX1、GAL10/CYC1、CYC1、OliC、ADH、TDH、Kex2、MFaもしくはNMT、または上述のプロモーターの組合せ(Degryseら、Yeast 1995 June 15; 11(7):629-40; RomanosらYeast 1992 June;8(6):423-88; BenitoらEur. J. Plant Pathol. 104, 207-220 (1998); CreggらBiotechnology (N Y) 1993 Aug;11(8):905-10; Luo X., Gene 1995 Sep 22;163(1):127-31: Nackenら、Gene 1996 Oct 10;175(1-2): 253-60; Turgeonら、Mol Cell Biol 1987 Sep;7(9):3297-305)、あるいは転写ターミネーターNMT、Gcy1、TrpC、AOX1、nos、PGKもしくはCYC1(Degryseら、Yeast 1995 June 15; 11(7):629-40; BrunelliらYeast 1993 Dec9(12): 1309-18; Frischら、Plant Mol. Biol. 27(2), 405-409 (1995); Scorerら、Biotechnology (N.Y.)12 (2), 181-184 (1994), Genbank登録番号Z46232; ZhaoらGenbank登録番号AF049064; Puntら、(1987) Gene 56 (1), 117-124)に存在する(それらのすべては酵母株におけるP-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはGDCもしくはP-GDCの発現に使用できる)。
【0082】
昆虫細胞における発現に適した遺伝子制御配列の例は、ポリヘドリンプロモーターおよびp10プロモーターである(Luckow, V.A.およびSummers, M.D. (1988) Bio/Techn. 6, 47-55)。
【0083】
培養細胞においてGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの発現のために有利な遺伝子制御配列は、例えばシミアンウイルス40に由来するようなポリアデニル化配列に加えて、ウイルス由来の真核生物プロモーター、例えば、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスもしくはシミアンウイルス40のプロモーターなどである。
【0084】
植物におけるP-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDCの発現のための更なる有利な遺伝子制御配列は、植物プロモーターCaMV/35S [Franckら、Cell 21(1980) 285-294]、PRP1 [Wardら、Plant. Mol. Biol. 22 (1993)]、SSU、OCS、LEB4、USP、STLS1、B33、NOS; FBPアーゼP(WO98/18940)またはユビキチンもしくはファゼオリンプロモーターに存在し、好んで使用されるプロモーターは、特に、植物プロモーターまたは植物ウイルスに由来するプロモーターである。特に好ましいのは、カリフラワーモザイクウイルス35S転写産物のプロモーターのようなウイルス由来のプロモーターである(Franckら、Cell 21 (1980), 285-294; Odellら、Nature 313 (1985), 810-812)。更なる好ましい構成的プロモーターは、例えば、アグロバクテリウムのノパリン合成酵素プロモーター、TR doubleプロモーター、アグロバクテリウムのOCS(オクトピン合成酵素)プロモーター、ユビキチンプロモーター(Holtorf Sら、Plant Mol Biol 1995, 29:637-649)、液胞ATPアーゼサブユニットのプロモーター、またはコムギ由来のプロリンリッチタンパク質のプロモーター(WO 91/13991)である。
【0085】
発現カセットはまた、遺伝子制御配列として化学誘導性プロモーターを含むことができ、それにより植物における外来遺伝子の発現が特定の時点で制御され得る。例えば、PRP1プロモーター(Wardら、Plant. Mol. Biol. 22 (1993), 361-366)、サリチル酸誘導性プロモーター(WO 95/19443)、ベンゼンスルホンアミド誘導性プロモーター(EP-A-0388186)、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Gatzら、(1992) Plant J. 2, 397404)、アブシジン酸誘導性プロモーター(EP-A 335528)、またはエタノールもしくはシクロヘキサノン誘導性プロモーター(WO 93/21334)のようなプロモーターも使用されうる。
【0086】
更に、適切なプロモーターは、例えば、葯、子房、花および花器官、葉、気孔、トリコーム、茎、維管束組織、根および種子における組織特異的または器官特異的発現をもたらすものである。上述の構成的プロモーターに加えて適切な他のプロモーターは、特に、葉特異的発現を確実にするプロモーターである。かかるプロモーターとして以下を挙げる必要がある:ジャガイモの細胞質FBPアーゼプロモーター(WO 97/05900)、rubisco (リブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ)SSU(小サブユニット)プロモーター、またはジャガイモ由来のST-LSIプロモーター(Stockhausら、EMBO J. 8 (1989), 2445-245)である。更に好ましいプロモーターは、種子および植物の胚における発現を制御するものである。種子特異的プロモーターの例は、ファゼオリンプロモーター(US 5,504,200, Bustos MMら、Plant Cell. 1989;1(9):839-53)、2Sアルブミン遺伝子のプロモーター(Joseffson LGら、J Biol Chem 1987, 262:12196-12201)、レグミンプロモーター(Shirsat Aら、Mol Gen Genet. 1989;215(2):326-331)、USP(未知の種子タンパク質)プロモーター(Baumlein Hら、Molecular & General Genetics 1991, 225(3):459-67)、ナピン遺伝子プロモーター(Stalberg Kら、L. Planta 1996, 199:515-519)、スクロース結合タンパク質プロモーター(WO 00/26388)、またはLeB4プロモーター(Baumlein Hら、Mol Gen Genet 1991, 225: 121-128; Fiedler, U.ら、Biotechnology (NY) (1995), 13 (10) 1090)である。
【0087】
遺伝子制御配列として適切な更なるプロモーターは、例えば、塊茎、貯蔵根または根に特異的なプロモーター、例えば、クラスIパタチンプロモーター(B33)、ジャガイモのカテプシンD阻害剤プロモーター、デンプン合成酵素(GBSS1)プロモーターもしくはスポラミンプロモーターなど、果実特異的プロモーター、例えば、トマト由来の果実特異的プロモーター(EP-A 409625)など、果実成熟特異的プロモーター、例えば、トマト由来の果実特異的プロモーター(WO 94/21794)など、花特異的プロモーター、例えば、フィトエンシンターゼプロモーター(WO 92/16635)またはP-rr遺伝子のプロモーター(WO98/22593)など、または色素体もしくは有色体特異的プロモーター、例えば、RNAポリメラーゼプロモーター(WO 97/06250)などであり、あるいは他にダイズ(Glycine max)のホスホリボシルピロリン酸アミドトランスフェラーゼプロモーター(Genbank登録番号U87999も参照)、またはEP-A 249676に記載されるような別の結節特異的プロモーターが有利に使用される。
【0088】
付加的な機能性エレメントb)は、限定ではなく例として、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCと直接的にもしくはリンカー(任意にプロテアーゼ切断部位を含む)を介して融合された、リポーター遺伝子、複製起点、選択マーカーおよび親和性タグとして知られるものを意味すると理解される。更なる適切な付加的な機能性エレメントは、その産物のアポプラスト、色素体、液胞、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、小胞体(ER)内への標的化を確実にする配列、または、このような機能しうる配列の欠如のために、それが形成されたコンパートメントである細胞質へのその残留を確実にする配列である(Kermode, Crit. Rev. Plant Sci. 15, 4 (1996), 285-423)。
【0089】
本発明の核酸配列および/または本発明の発現カセットを少なくとも1コピー含むベクターもまた、本発明に含まれる。
【0090】
プラスミドに加えて、ベクターは更にまた、当業者が精通しているすべての他の公知のベクター、例えば、ファージ、SV40、CMV、バキュロウイルス、アデノウイルスなどのウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、ファージミド、コスミドまたは直鎖状もしくは環状DNAなどを意味するものとして理解される。これらのベクターは宿主生物内で自律複製することができるか、または染色体上で複製されるが、染色体上での複製が好ましい。
【0091】
ベクターの更なる実施形態では、本発明の核酸構築物はまた、有利には、直鎖状DNAの形で生物に導入され、非相同組換えまたは相同組換えによって宿主生物のゲノム内に組み込まれる。この直鎖状DNAは、直鎖状にしたプラスミドで、もしくはベクターとしての核酸構築物のみで構成されていてもよいし、用いる核酸配列で構成されていてもよい。
【0092】
更なる原核生物および真核生物の発現系は、Sambrookらの"Molecular Cloning: A Laboratory Manual" 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989の16および17章に記載される。更なる有利なベクターは、Hellensら(Trends in plant science, 5, 2000)に記載される。
【0093】
本発明の発現カセットおよびそれに由来するベクターは、組換えによってGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCを産生するために、細菌、シアノバクテリア(例えばSynechocystes, Anabaena, Calothrix, Scytonema, Oscillatoria, PlectonemaおよびNostoc属)、プロテオバクテリア、例えばMagnetococcus sp. MC1、酵母、糸状菌および藻類ならびに真核性非ヒト細胞(例えば昆虫細胞)を形質転換するために使用され、適切な発現カセットの作製はその遺伝子が発現される生物に依存する。
【0094】
以下のベクターは本発明の対象である:
a)i 配列番号1に示される核酸配列を有する核酸配列、もしくは、
ii 遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号2に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、もしくは、
iii 配列番号1と少なくとも89%の同一性を有する配列番号1の核酸配列の機能的同等物、を含む核酸配列と機能しうる形で連結された遺伝子制御配列、
b)付加的な機能性エレメント、または、
c)a)およびb)の組合せ、
を含む発現カセットを含有するベクター、あるいは、
i)配列番号1に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号2に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)配列番号1と少なくとも89%の同一性を有する配列番号1の核酸配列の機能的同等物、を含むベクター。
【0095】
更に有利な実施形態では、本発明の方法に使用される核酸配列はまた、それらだけで生物内に導入されうる。
【0096】
上記の核酸配列に加えて、更なる遺伝子が生物内に導入される場合、それらすべてを一緒に単一のベクターで生物内に導入してもよいし、それぞれの各遺伝子をその都度1つのベクターで生物内に導入してもよく、異なるベクターを同時にもしくは連続して導入することが可能である。
【0097】
これに関連して、本発明の核酸、発現カセットまたはベクターの、対象の生物への導入(形質転換)は、原則的に、当業者が精通しているすべての方法によって達成され得る。
【0098】
微生物の場合には、当業者は、Sambrook, J.ら(1989) "Molecular cloning: A laboratory manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press、F.M. Ausubelら(1994) "Current protocols in molecular biology", John Wiley and Sons、D.M. GloverらDNA Cloning Vol.1, (1995), IRL Press (ISBN 019-963476-9)、Kaiserら(1994) Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Habor Laboratory PressまたはGuthrieら"Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology", Methods in Enzymology, 1994, Academic Pressによる教科書において適切な方法を見いだすであろう。糸状菌の形質転換において、好まれる方法は、第一にプロトプラストの作製およびPEGを用いた形質転換であり(Wiebeら(1997) Mycol. Res. 101 (7): 971-877; Proctorら(1997) Microbiol. 143, 2538-2591)、第二にAgrobacterium tumefaciensを用いた形質転換である(de Grootら(1998) Nat. Biotech. 16, 839-842)。
【0099】
双子葉植物の場合には、形質転換および植物組織もしくは植物細胞からの植物体の再生について記載されている方法が、一過性のまたは安定した形質転換のために利用され得る。適切な方法は、バイオリスティック法またはプロトプラスト形質転換による方法(例えば、Biotechnology, A Multi-Volume Comprehensive Treatise (H.J. Rehm, G. Reed, A.Puhler, P. Stadler編), 第2巻627-659, VCH Weinheim-New York-Basle-Cambridge のWillmitzer, L., 1993 Transgenic plants.参照)、エレクトロポレーション、乾燥胚のDNA含有溶液中でのインキュベーション、マイクロインジェクションおよびアグロバクテリウムを介した遺伝子導入である。上述の方法は、例えば、Transgenic Plants, 第1巻、Engineering and Utilization, S.D. KungおよびR.Wu編, Academic Press (1993) 128-143 のB. Jenesら、Techniques for Gene Transfer、ならびにPotrykus, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42 (1991) 205-225に記載される。
【0100】
アグロバクテリウムを用いた形質転換、および形質転換に用いられるベクターは、当業者に知られており、広く文献に記載されている(Bevanら、Nucl. Acids Res. 12 (1984) 8711)。中間ベクターは、T-DNA中の配列と相同な配列による相同組換えを用いてアグロバクテリウムのTiまたはRiプラスミド内に組み込むことができる。このプラスミドは更に、T-DNAの導入に必要とされるvir領域を含む。中間ベクターはアグロバクテリウム内では複製できない。中間ベクターは、ヘルパープラスミド(共役)を用いてAgrobacterium tumefaciensに導入される。バイナリーベクターは、大腸菌およびアグロバクテリウム内の両方で複製できる。それらは、右側および左側のT-DNA境界領域に囲まれる選択マーカー遺伝子ならびにリンカーまたはポリリンカーを含む。それらは直接アグロバクテリウム内に形質転換され得る(HolstersらMol. Gen. Genet. 163 (1978), 181-187), EP A 0 120 516; The Binary Plant Vector System Offsetdrukkerij Kanters B.V., Alblasserdam (1985),第5章のHoekema; Fraleyら、Crit. Rev. Plant. Sci., 4: 1-46およびAnらEMBO J. 4 (1985), 277-287)。
【0101】
アグロバクテリウムを用いたベクターに基づく単子葉植物の形質転換もまた記載されている(Chanら、Plant Mol. Biol. 22(1993), 491-506; Hieiら、Plant J. 6 (1994) 271-282; Dengら、Science in China 33 (1990), 28-34; Wilminkら、Plant Cell Reports 11, (1992) 76-80; Mayら、Biotechnology 13 (1995) 486-492; ConnerおよびDomisse; Int. J. Plant Sci. 153 (1992) 550-555; Ritchieら; Transgenic Res. (1993) 252-265)。単子葉植物の形質転換のための代替システムは、バイオリスティック法を用いた形質転換(WanおよびLemaux; Plant Physiol. 104 (1994), 37-48; Vasilら; Biotechnology 11 (1992), 667-674; Ritalaら、Plant Mol. Biol 24, (1994) 317-325; Spencerら、Theor. Appl. Genet. 79 (1990), 625-631)、プロトプラスト形質転換、部分的透過性細胞のエレクトロポレーション、ならびにグラスファイバーを用いたDNAの導入である。特にトウモロコシの形質転換は文献に再三記載されている(例えば、WO 95/06128; EP 0513849 A1; EP 0465875 A1; EP 0292435 A1; Frommら、Biotechnology 8 (1990), 833-844; Gordon-Kammら、Plant Cell 2 (1990), 603-618; Kozielら、Biotechnology 11(1993) 194-200; Morocら、Theor Applied Genetics 80 (190) 721-726参照)。
【0102】
成功した他の穀物種の形質転換もまた、例えばオオムギ(WanおよびLemaux、上記参照; Ritalaら、上記参照)コムギ(Nehraら、Plant J. 5(1994) 285-297)について既に記載されている。
【0103】
本発明のベクターによって形質転換されたアグロバクテリウムは同様に、Arabidopsisのような実験植物、または穀物、トウモロコシ、オートムギ、ライムギ、オオムギ、コムギ、ダイズ、イネ、ワタ、テンサイ、キャノーラ、ヒマワリ、アマ、アサ、ジャガイモ、タバコ、トマト、ニンジン、トウガラシ、アブラナ、タピオカ、キャッサバ、アロールート、タジェット、アルファルファ、レタス、ならびに様々な樹木、堅果およびブドウの木のような作物などの、植物の形質転換のための公知の方法において、例えば、傷つけた葉または葉の切片をアグロバクテリウム溶液に浸し、その後それらを適切な培地で培養することによって使用され得る。
【0104】
遺伝的に改変された植物細胞は、当業者が精通しているすべての方法によって再生され得る。このような方法は、S.D. KungおよびR. Wu, PotrykusまたはHofgenおよびWillmitzerによる上述の出版物において見いだすことができる。
【0105】
本発明の核酸配列を含む発現カセットまたは上述の発現カセットを含むベクターの上述の実施形態の1つによる形質転換によって作製されたトランスジェニック生物、およびトランスジェニック生物から発現によって得られる組換えGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDCは、本発明の対象の一部を構成する。例えば組換えタンパク質を提供するための本発明の発現カセットを含むトランスジェニック生物の使用、および/またはin vivoアッセイ系におけるこれらの生物の使用は同様に、本発明の対象の一部を構成する。
【0106】
組換え発現に好適な生物は、細菌、酵母、コケ類、藻類および真菌、ならびに真核細胞株である。
【0107】
好ましいコケ類は、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)、またはKryptogamen [Cryptogamia], 第2巻、Moose, Farne [Mosses, Ferns], 1991, Springer Verlag (ISBN 3540536515)に記載されている他のコケ類である。
【0108】
細菌の中で好ましいのは、例えば、Escherichia、Erwinia、Flavobacterium、Alcaligenes属からの細菌、または例えばSynechocystes、Anabaena、Calothrix、Scytonema、Oscillatoria、PlectonemaおよびNostoc属からのシアノバクテリアであり、特に好ましくはSynechocystisまたはAnabaenaである。
【0109】
好ましい酵母は、Candida、Saccharomyces、Schizosaccheromyces、HansenulaまたはPichiaである。
【0110】
好ましい真菌は、Aspergillus、Trichoderma、Ashbya、Neurospora、Fusarium、Beauveria、Mortierella、Saprolegnia、PythiumまたはIndian Chem Engr. Section B. Vol 37, No 1,2 (1995)に記載されている他の真菌である。
【0111】
好ましい植物は、特に、例えば、コムギ、オオムギ、ソルガム/アワ、ライムギ、ライコムギ、トウモロコシ、イネまたはオートムギなどの穀物種およびサトウキビなどの単子葉植物の作物から選択される。本発明のトランスジェニック植物は更に、特に、例えば、アブラナ、クレソン、シロイヌナズナ、キャベツ、キャノーラなどのアブラナ科; ダイズ、アルファルファ、エンドウマメ、マメ類、ピーナッツなどのマメ科;ジャガイモ、タバコ、トマト、ナス、もしくはトウガラシなどのナス科; ヒマワリ、タジェット、レタスもしくはキンセンカなどのキク科; メロン、カボチャ/スカッシュもしくはズッキーニなどのウリ科;またはアマニ、ワタ、アサ、アマ、アカトウガラシ、ニンジン、テンサイ、または様々な樹木、堅果およびブドウの木などの双子葉植物の作物から選択される。
【0112】
原理的には、例えば、C. elegansのようなトランスジェニック動物もまた、宿主生物として適切である。
【0113】
一般に公開されている、または市販されている発現系およびベクターの使用もまた好ましい。
【0114】
大腸菌で使用するために挙げる必要があるものは、一般的な、有利な、市販の融合および発現ベクターである、pGEX [Pharmacia Biotech Inc; Smith, D.B.およびJohnson, K.S. (1988) Gene 67:31-40]、pMAL(New England Biolabs, Beverly, MA)、およびpRIT5 (Pharmacia, Piscataway, NJ)(これらはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質またはプロテインAを含む)、pTrcベクター(Amannら、(1988) Gene 69:301-315)、CLONTECH(Palo Alto, CA)からの「pKK233-2」ならびにStratagene(La Jolla)からの「pET」および「pBAD」ベクター系列である。
【0115】
酵母で使用するのに有利な更なるベクターは、pYepSec1(Baldari,ら、(1987) Embo J. 6:229-234)、pMFa(KurjanおよびHerskowitz, (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultzら、(1987) Gene 54:113-123)、ならびにpYES誘導体、pGAPZ誘導体、pPICZ誘導体、および「Pichia Expression Kit」(Invitrogen Corporation, San Diego, CA)のベクターである。糸状菌で使用するためのベクターは、van den Hondel, C.A.M.J.J. & Punt, P.J. (1991)「Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi」、Applied Molecular Genetics of Fungi, J.F.Peberdyら編、p. 1-28, Cambridge University Press: Cambridgeに記載されている。
【0116】
代替方法として、昆虫細胞発現ベクターもまた、例えば組換えバキュロウイルスによって感染されるSf9、Sf21またはHi5細胞での発現のために有利に使用されうる。これらの例は、pAc系列(Smithら(1983) Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)ならびにpVL系列(LucklowおよびSummers (1989) Virology 170:31-39)のベクターである。記載されうる他のベクターは、Invitrogen(Carlsbad)からのバキュロウイルス発現系「MaxBac 2.0 Kit」および「Insect Select System」またはCLONTECH(Palo Alto, CA)からの「BacPAK Baculovirus Expression System」である。昆虫細胞は、細菌および酵母では不可能なタンパク質の翻訳後修飾をもたらすので、真核生物のタンパク質を過剰発現させるのに特に適している。当業者であれば、培養昆虫細胞の取り扱いおよびタンパク質の発現のためのそれらの感染について精通しており、公知の方法と同様に実施することができる(LuckowおよびSummers, Bio/Tech. 6, 1988, pp.47-55; GloverおよびHames(編)DNA Cloning 2, A practical Approach, Expression Systems, 第2版Oxford University Press, 1995, 205-244)。
【0117】
植物細胞または藻類細胞は、遺伝子発現のために有利に使用され得るその他の細胞である。植物発現ベクターの例は、上述のように、Becker, D.,ら(1992) "New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border", Plant Mol. Biol. 20: 1195-1197またはBevan, M.W. (1984) "Binary Agrobacterium vectors for plant transformation", Nucl. Acid. Res. 12: 8711-8721に見いだすことができる。
【0118】
更に、本発明の核酸配列は哺乳動物細胞において発現させることができる。適切な発現ベクターの例は、pCDM8およびpMT2PCであり、それらはSeed, B. (1987) Nature 329:840またはKaufmanら(1987) EMBO J. 6:187-195に記載される。これに関連して好ましく使用されるプロモーターは、例えば、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、またはシミアンウイルス40のプロモーターなどのウイルス由来のものである。更なる原核生物および真核生物の発現系は、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989の16および17章に記載される。更なる有利なベクターは、Hellensら(Trends in plant science, 5, 2000)に記載される。
【0119】
グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの活性を有するポリペプチドをコードする以下の植物核酸配列:
i. 配列番号1に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii. 遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号2に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii. 配列番号1と少なくとも89%の同一性を有する配列番号1の核酸配列の機能的同等物、
を含むトランスジェニック生物は、本発明の範囲内で特許請求される。
【0120】
GDC、またはP-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC(好ましくはP-GDC)をコードする少なくとも1つの核酸配列を含むトランスジェニック生物の上記実施形態はすべて、「本発明のトランスジェニック生物」という用語の範疇に入る。
【0121】
本発明は更に、除草剤活性のある試験化合物を同定する方法における、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの使用に関する。
【0122】
除草剤活性のある化合物を同定するための本発明の方法は、好ましくは以下のステップ:
i. グリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットを、試験化合物とグリシンデカルボキシラーゼ複合体との結合を可能にする条件下で、1種以上の試験化合物と接触させるステップ、および、
ii. 試験化合物がi)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットと結合するかどうかを検出するステップ、あるいは、
iii. 試験化合物がi)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットの活性を低減または遮断するかどうかを検出するステップ、あるいは、
iv. 試験化合物がi)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットの転写、翻訳もしくは発現を低減または遮断するかどうかを検出するステップ、
を含んでなる。
【0123】
「低減する」という用語は、試験化合物とインキュベートしていないグリシンデカルボキシラーゼ複合体またはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットの活性と比較して、少なくとも10%まで、有利には少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%まで、極めて好ましくは少なくとも80%、90%または95%までの活性の低減を意味するものとして理解され、「遮断する」という用語は、完全な、すなわち100%の活性の遮断を意味するものとして理解され、上述の低減パーセントは、10-4M以下、好ましくは10-5M以下、特に好ましくは10-6M以下、極めて好ましくは10-7M以下の阻害剤濃度で達成される。
【0124】
上述の方法では、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCを使用することが好ましい。
【0125】
上記方法のステップ(ii)に従った検出は、タンパク質とリガンドとの間の相互作用を同定する技術を用いて達成される。これに関連して、試験化合物または酵素のいずれかは、例えば、蛍光標識、放射性同位体、化学発光標識または酵素標識などの検出可能な標識を含み得る。酵素標識の例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼである。その後の検出は標識によって変わり、それは当業者に公知である。
【0126】
これに関して、5つの好ましい具体例(本発明に関連したハイスループット法(HTS)にも適している)を特に記載する必要がある。すなわち、
1. 質量の関数としての蛍光分子の平均拡散速度は、少ないサンプル量で蛍光相関分光法(FCS)によって測定される(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1994) 11753-11575)。FCSは、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDCに結合したときの試験化合物の質量の変化、またはそれに伴う拡散速度の変化、を測定することによって、タンパク質/リガンド相互作用の測定に使用することができる。本発明の方法は、蛍光分子によって標識された試験化合物の結合を直接測定するために設計される。代替方法として、本発明の方法は、蛍光分子によって標識された参照化合物が更なる試験化合物によって置換されるように設計される(「置換アッセイ」)。
【0127】
2. 蛍光偏光は、偏光を放射するように偏光によって励起される静止フルオロフォアの特性を利用する。しかし、フルオロフォアが励起状態で回転させられると、放射される蛍光の偏光はいくらか失われる。その他の点(例えば、温度、粘度、溶媒)で同一の条件下では、回転は分子サイズの関数であり、その測定値によってフルオロフォア結合残基のサイズに関する所見を得ることができる(Methods in Enzymology 246 (1995), pp. 283-300)。本発明の方法は、蛍光分子によって標識された試験化合物の、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDCへの結合を直接測定するために設計され得る。代替方法として、本発明の方法はまた、1に記載した「置換アッセイ」の形を取りうる。
【0128】
3. 蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)は、適切な条件下での2つの空間的に隣接した蛍光分子の間の放射フリーのエネルギー転移に基づく。必要条件は、供与体分子の放射スペクトルが受容体分子の励起スペクトルと重複することである。GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの蛍光標識、および結合する試験化合物を用いて、FRETにより結合を測定することが可能である(Cytometry 34, 1998, pp. 159-179)。代替方法として、本発明の方法はまた、1に記載した「置換アッセイ」の形を取りうる。特に適切なFRET技術の具体例は、Packard BioScienceから得ることができる「ホモジニアス時間分解蛍光」(Homogeneous Time Resolved Fluorescence: HTRF)である。
【0129】
4. 飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF)と組み合わせた表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)は、支持体上の分子の迅速な分析を可能にし、タンパク質/リガンド相互作用の分析のために使用され得る(Worralら、(1998) Anal. Biochem. 70:750-756)。好ましい実施形態では、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDCを適切な支持体に固定化し、試験化合物とインキュベートする。1以上の適切な洗浄ステップの後、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDCに更に結合する試験化合物を上述の方法論を用いて検出することができ、従って、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDCに結合する試験化合物を選択する。
【0130】
5. 表面プラズモン共鳴の測定は、試験化合物が前記の表面に固定化されるタンパク質と結合する際の、表面での屈折率の変化に基づく。屈折率の変化は、表面での質量濃度の定められた変化に対して、実質的にすべてのタンパク質およびポリペプチドについて同一であるので、この方法は原理的にどのようなタンパク質にも適用することができる(LindbergらSensor Actuators 4 (1983) 299-304; Malmquist Nature 361 (1993) 186-187)。測定は、例えばBiacore(Freiburg)から入手可能な表面プラズモン共鳴に基づく自動分析器を用いて、現在では1日あたり最大384サンプルの処理能力で実施され得る。本発明の方法は、試験化合物とGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDCとの結合を直接測定するために設計され得る。代替方法として、本発明の方法はまた、1に記載した「置換アッセイ」の形を取りうる。
【0131】
上述の方法1〜5によって同定された化合物は、阻害剤として適切でありうる。上述の方法によって同定されたすべての物質は、その後、本発明の方法の別の実施形態において、それらの除草剤作用について確認される。
【0132】
更に、除草剤活性成分の更なる候補を、X線構造解析によるGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの三次元構造の解明による分子モデリングによって検出する可能性が存在する。X線構造解析に必要とされるタンパク質結晶の調製、ならびに関連した測定およびその後のこれらの測定の評価、タンパク質での結合部位の検出、ならびに可能性のある阻害剤構造の予測は、当業者に公知である。原理的に、上述の方法によって同定された化合物の最適化もまた、分子モデリングによって可能である。
【0133】
ステップi)およびii)に基づく本発明の方法の好ましい実施形態は、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはGDCもしくはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの酵素活性を低減または遮断する試験化合物を選択することにあり、試験化合物とインキュベートしたGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはGDCもしくはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの活性が、試験化合物とインキュベートしていないGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはGDCもしくはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの活性と比較される。
【0134】
ステップi)およびii)に基づく方法の好ましい実施形態は、
i. GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはGDCもしくはP-GDC、特に好ましくはP-GDCを本発明のトランスジェニック生物において発現させること、またはGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはGDCもしくはP-GDC、特に好ましくはP-GDCを天然に含む生物を生育すること、
ii. ステップi)のGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはGDCもしくはP-GDCを、トランスジェニック生物もしくは非トランスジェニック生物の細胞消化物、部分的に精製した形または均一に精製した形として、試験化合物と接触させること、および、
iii. P-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはGDCもしくはP-GDCの活性を低減または遮断する化合物を選択すること、にある。
【0135】
このステップiiiでは、試験化合物とインキュベートしたGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの活性を測定するために、試験化合物とインキュベートしていないGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの活性と比較する。
【0136】
GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCを含む溶液は、その起源生物の溶解液であってもよい。あるいは、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCを含む溶液は、本発明の発現カセットで形質転換されたトランスジェニック生物の溶解液であってもよい。
【0137】
必要であれば、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCは、通常の方法によって部分的にまたは完全に精製することができる。現在のタンパク質精製技術の一般的な概説は、例えば、Ausubel, F.M.ら、 Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscience (1994); ISBN 0-87969-309-6に記載される。組換え体の調製の場合には、アフィニティータグと融合されているタンパク質は、当業者に知られているアフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。
【0138】
in vitro法のために必要とされるGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCは、このようにして、本発明のトランスジェニック生物からの異種発現を用いて、またはGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDCを含む生物、例えば植物から単離され得る。従って、例えば、グリシンデカルボキシラーゼ複合体は、例えばエンドウの葉(SarojiniおよびOliver 1983, Plant Physiology 72, pp.194以下参照)もしくはホウレンソウの葉(Douceら1977, Plant Physiology 60, pp.625)に由来する植物ミトコンドリアまたはミトコンドリアマトリックスの調製物から単離される。
【0139】
除草剤化合物を同定するために、今や、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCが試験化合物とインキュベートされる。反応時間後、試験化合物とインキュベートしたGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの酵素活性は、試験化合物とインキュベートしていないGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの酵素活性と比較して測定される。GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCが阻害される場合、本発明の阻害されないポリペプチドの活性と比較して有意な活性の低下が観察され、その結果は少なくとも10%の低下、有利には少なくとも20%低下、好ましくは少なくとも30%低下、特に好ましくは少なくとも50%低下、最大100%低下(遮断)である。μMの範囲の酵素濃度に基づいて、10-4M、好ましくは10-5M、特に好ましくは10-6Mの試験化合物の濃度で少なくとも50%の阻害が好ましい。
【0140】
GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの活性は、例えば、生成物の増加、基質(もしくは出発物質)の減少または補因子の減少もしくは増加を測定する活性アッセイによって、あるいは上述のパラメーターの少なくとも2つの組合せによって、一定期間の関数として測定され得る。
【0141】
活性アッセイに用いられる基質の量は、1〜100μg/mlの酵素に基づいて、0.5〜100 mMの範囲であり、補因子の量は0.1〜5 mMの範囲でありうる。
【0142】
GDC活性の測定のための適切な基質の例は例えばグリシンであり、適切な補因子の例はNAD+、テトラヒドロ葉酸、ピリドキサルリン酸、FADである。
【0143】
P-GDCの活性は、他のサブユニットGDC、L-GDC、H-GDCおよびT-GDCとは独立に測定され得る。これはまた、サブユニットL-GDCにも当てはまる。
【0144】
P-またはL-GDCのみを阻害する阻害剤は、例えば最初に試験化合物の存在下でGDC活性を測定することによって同定される。阻害剤の選択が成功した上で、その次に、P-GDC(またはL-GDC)活性が選択された阻害剤の存在下で確認される。
【0145】
P-GDCの適切な基質の例は、グリシン、CO2またはリポ酸であり、適切な補因子の例はピリドキサルリン酸である。
【0146】
L-GDCの適切な基質の例は、NAD+、ジヒドロリポ酸、H-タンパク質-2-ジヒドロリポ酸であり、補因子の例はFADである。
【0147】
H-GDCサブユニットの活性は、L-GDCサブユニットの活性とともに測定され得る。
【0148】
H-GDCの適切な補因子の例はリポ酸である。
【0149】
更に、P-GDC、L-GDCおよびH-GDCの活性は、1つのアッセイで同時に測定することもできる。
【0150】
T-GDCサブユニットの活性は、サブユニットP-GDC、L-GDCおよびH-GDCの活性とともにGDC全体の反応において測定され得る。T-GDCのみを阻害する阻害剤は、例えば第一に試験化合物の存在下でGDCの活性を測定し、第二に同じ試験化合物の存在下でP-GDC、L-GDCおよびH-GDCの活性を測定することによって同定される。試験化合物の存在下でのGDC活性と、同一の試験化合物の存在下でのP-GDC、L-GDCおよびH-GDCの活性とを比較して、P-GDC、L-GDCおよびH-GDCの活性が影響を受けないが、GDC活性が影響を受けることを示す場合、その試験化合物はT-GDC阻害剤である。
【0151】
適切な基質および補因子の例は上述されている。
【0152】
適宜に、例えば、蛍光、放射性同位体または化学発光標識などの検出可能な標識を含む上述の化合物の誘導体を利用してもよい。
【0153】
このように、上述の方法のステップiii)におけるGDC活性の測定は、例えば、Bourguignonら(Biochemical Journal (1988) 255, pp. 169以下参照)に記載されるように、グリシンおよびテトラヒドロ葉酸の存在下でのNAD+からNADHへの還元によって測光的に実施され得る。このアッセイはマイクロタイタープレート中で実施することができ、ハイスループットスクリーニング法に適している。
【0154】
更に、GDC触媒反応を、例えば、2,6-ジクロロフェノール-インドフェノールまたは5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)などの呈色試薬と共役させることにより活性を測定することが可能である。
【0155】
こうして、P-GDC、L-GDCおよびH-GDCの共同活性を測定するために、グリシンの変換は、2,6-ジクロロフェノール-インドフェノールの共役還元を用いて測光的に測定することができる。適切な方法は、例えば、Mooreら(1980, FEBS Letters 115, pp.54以下参照)に記載される。
【0156】
GDCのH-およびL-タンパク質の共同活性もまた、Neuburgerら(1991, Biochemical Journal 278, pp.765以下参照)に記載されるように、その5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)の還元との共役によって測光的に測定される。P-タンパク質の活性の測定は、HigaraおよびKiguchi(Journal of Biological Chemistry 1980, 255, pp.11664-11670)に記載されるように実施される。
【0157】
L-タンパク質活性は、(例えばMoranら、Plant Physiology 2002, 128, pp.300-313に記載されるように)NAD+および遊離リポ酸の存在下で測光的に検出され得る。
【0158】
ステップi)およびiii)に基づく本発明の方法の好ましい実施形態は、以下のステップ:
i. P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはP-GDCをコードする少なくとも1つの核酸配列を含み、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはP-GDCを過剰発現するトランスジェニック生物を作製するステップ、
ii. 試験化合物をi)のトランスジェニック生物および同一の遺伝子型の非トランスジェニック生物に適用するステップ、
iii. 試験化合物の適用後、トランスジェニック生物および非トランスジェニック生物の生育または生存能を測定するステップ、ならびに、
iv. トランスジェニック生物の生育と比較して、非トランスジェニック生物の生育の低下または生存能の制限をもたらす試験物質を選択するステップ、
から成る。
【0159】
これに関して、除草剤活性のある阻害剤の選択のためのステップiv)での生育の違いは、少なくとも10%、できれば20%、好ましくは30%、特に好ましくは40%、および極めて好ましくは50%に相当する。
【0160】
「トランスジェニック生物」という用語は、上述の本発明のトランスジェニック生物を意味するものとして理解される。
【0161】
GDCまたはP-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはP-GDCを過剰発現する、上述の方法に適したトランスジェニック生物はまた、別法として、その生物にもともと存在するプロモーター配列の操作によってGDCまたはP-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはP-GDCの過剰発現を引き起こすことによっても作製され得る。このような方法は当業者に知られている。
【0162】
これに関連して、トランスジェニック生物は、好ましくは、植物、藻類、例えばSynechocystes属のシアノバクテリア、または、例えばMagnetococcus sp. MC1のようなプロテオバクテリアであり、好ましくは通常の技術を用いて形質転換され得るシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、タバコ(Nicotiana Tabacum)などの植物、または本発明のポリペプチドをコードする配列が形質転換によって組み入れられている、Synechocystisなどの容易に形質転換され得るシアノバクテリアである。これらのトランスジェニック生物は、従って、本発明のポリペプチドを阻害する化合物に対して耐性の増加を示す。この生物に天然に存在する類似のGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの遺伝子が選択的に破壊されている「ノックアウト」突然変異体もまた使用されうる。
【0163】
しかし、本発明の方法の上述の実施形態はまた、生育調節作用を有する物質の同定のためにも使用される。これに関連して用いるトランスジェニック生物は植物である。生育調節活性を有する物質を同定する方法は、従って、以下のステップ:
i. P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはP-GDCをコードする核酸配列を含み、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはP-GDCを過剰発現するトランスジェニック植物を作製するステップ、
ii. 試験物質をi)のトランスジェニック植物および同一の品種の非トランスジェニック植物に適用するステップ、
iii. 試験物質の適用後、トランスジェニック植物および非トランスジェニック植物の生育または生存能を測定するステップ、ならびに、
iv. トランスジェニック植物の生育と比較して、非トランスジェニック植物の生育の変化をもたらす試験物質を選択するステップ、
を含んでなる。
【0164】
ここで、ステップiv)は、トランスジェニック生物の生育と比較して非トランスジェニック生物の生育の変化をもたらす試験化合物の選択を含む。生育の変化とは、植物の栄養成長の阻害を意味するものとして理解され、それは特に長軸方向の成長の減少として現れる。その結果、処理された植物は発育不全を示し、更に、それらの葉はより暗い色を示す。加えて、生育の変化はまた、成熟過程の経時的な変化、植物の側方分枝の生育の阻害もしくは増加、発達段階の短縮もしくは延長、立っている能力の増加、より多量の芽、花、葉、果実、種子仁、根および塊茎の生育、テンサイ、サトウキビおよび柑橘類の果実などの植物における糖度の増加、穀物もしくはダイズなどの植物のタンパク質含量の増加、またはゴムノキでのラテックス流量の促進を意味するものとしても理解される。当業者はこのような生育の変化の検出に精通している。
【0165】
また、代替方法として、GDCまたはP-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはP-GDCを過剰発現するトランスジェニック植物は、別法として、その植物にもともと存在するプロモーター配列の操作によってP-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはP-GDCの過剰発現を引き起こすことによっても作製され得る。このような方法は当業者に知られている。
【0166】
本発明の方法では、1つの本発明の方法に複数の試験化合物を使用することも可能である。試験化合物のグループが標的に影響を及ぼす場合には、その後、直接個々の試験化合物を単離することが可能であり、または例えば、それが多数の異なる化合物から成る場合、このようにして本発明の方法における異なる試験化合物の数を減少させるために、試験化合物のグループを様々なサブグループに分けることも可能である。本発明の方法は、その後、個々の試験化合物または試験化合物の関連したサブグループを用いて繰り返される。サンプルの複雑性に応じて、上述のステップは、好ましくは本発明の方法に従ったサブグループが少数の試験化合物のみを、または実際には1つの試験化合物だけを含むまで繰り返し実施される。
【0167】
除草剤活性または生育調節活性を有する阻害剤を同定するためのすべての上述の方法は、下記において「本発明の方法」と呼ばれる。「本発明の方法」は、好ましくは除草剤活性を有する阻害剤を同定するための上述の方法を意味する。
【0168】
本発明の方法によって同定されたすべての化合物は、その後、それらの除草剤活性および生育調節活性についてin vivoで検査される。除草剤活性について化合物を検査する1つの可能性は、マイクロタイタープレート中のウキクサLemna minorを使用することである。測定可能なパラメーターはクロロフィル含量および光合成速度の変化である。化合物を直接望ましくない植物に適用することも可能であり、それは例えば生育の制限によって除草剤活性を同定することが可能である。
【0169】
本発明の方法はまた、HTSとして知られるハイスループット法においても有利に実施され、それは多数の異なる化合物の同時検査を可能にする。
【0170】
本発明の1以上の核酸分子、本発明の核酸分子を含む1以上のベクター、本発明の少なくとも1つの核酸配列を含む1以上のトランスジェニック生物、または本発明の核酸配列によりコードされる1以上の(ポリ)ペプチドを含む支持体の使用は、実際面でHTSの実施に適している。使用される支持体は、固体でも液体でもよいが、好ましくは固体であり、特に好ましくはマイクロタイタープレートである。上述の支持体もまた、本発明の対象の一部を構成する。最も広く使用される技術に従って、通常、200μlの容積を有する96ウェル、384ウェルおよび1536ウェルのマイクロタイタープレートが使用される。マイクロタイタープレートに加えて、対応するマイクロタイタープレートに適合するHTSシステムの更なる構成要素、例えば多数の装置、器具、自動分注装置、ロボット、自動プレートリーダーおよびプレート洗浄機などが市販されている。
【0171】
マイクロタイタープレートに基づくHTS法に加えて、例えば、Jayaickremeら、Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 19 (1994) 161418; Chelsky, "Strategies for Screening Combinatorial Libraries", First Annual Conference of The Society for Biomolecular Screening in Philadelphia, Pa. (Nov. 710, 1995); Salmonら、Molecular Diversity 2 (1996), 5763およびUS 5,976,813に記載されるような、「フリーフォーマットアッセイ」として知られるもの、すなわちサンプル間に物理的な障壁が存在しないアッセイ系もまた使用されうる。
【0172】
本発明は更に、本発明の方法によって同定された除草剤活性のある化合物に関する。これらの化合物は、下記において「選択された化合物」と呼ばれる。それらは、1000 g/mol以下の分子量、有利には500 g/mol以下、好ましくは400 g/mol以下、特に好ましくは300 g/mol以下の分子量を有する。除草剤活性のある化合物は、1 mM以下のKi値、好ましくは1μM以下、特に好ましくは0.1μM以下、極めて好ましくは0.01μM以下のKi値を有する。
【0173】
本発明は更に、本発明の方法によって同定された生育調節活性を有する化合物に関する。これらの化合物も、下記において「選択された化合物」と呼ばれる。しかし、「選択された化合物」という用語は、好ましくは除草剤活性を有する化合物を意味する。
【0174】
当然、選択された化合物はまた、農業上有用なそれらの塩の形で存在し得る。適切な農業上有用な塩は、主に、陽イオンまたは陰イオンが本発明の方法によって同定された除草剤活性のある化合物の除草剤作用に悪影響を及ぼさない、そうした陽イオンの塩またはそうした酸の酸付加塩である。
【0175】
選択された化合物が非対称的に置換されたα炭素原子を含む場合、それらは更にまた、ラセミ化合物、エナンチオマー混合物、純エナンチオマーの形で、または、それらがキラルな置換基を有する場合にはまたジアステレオマー混合物の形でも存在しうる。
【0176】
選択された化合物は、化学的に合成された物質または微生物によって産生された物質であり得、例えば、植物、動物もしくは微生物の例えば細胞抽出物において発見され得る。反応混合物は無細胞抽出液であり得、または細胞もしくは細胞培養物を含み得る。適切な方法は当業者に公知であり、通常、例えばAlberts, Molecular Biology the cell, 第3版(1994)の例えば17章に記載されている。選択された化合物はまた、包括的な物質ライブラリーに由来しうる。
【0177】
試験化合物候補は、例えば、cDNA発現ライブラリーなどの発現ライブラリー、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、低分子の有機物質、ホルモン、PNA等であり得る(Milner, Nature Medicin 1 (1995), 879-880; Hupp, Cell. 83 (1995), 237-245; Gibbs, Cell. 79 (1994), 193-198およびそこに引用された参考文献)。
【0178】
選択された化合物は、望ましくない植物の防除のために、および/または生育調節剤として使用され得る。選択された化合物を含む除草剤組成物は、非農耕地において非常に良好な植物生育の防除をもたらす。コムギ、イネ、トウモロコシ、ダイズおよびワタなどの作物においては、それらは、作物に顕著な被害を与えることなく、広葉雑草およびイネ科雑草に対して作用する。この効果は、特に低い散布量で観察される。選択された化合物は、既に上述された有害な植物を防除するために使用することができる。
【0179】
対象の適用方法に応じて、選択された化合物、またはそれらを含む除草剤組成物はまた、更に多数の作物において望ましくない植物を除去するために使用される。適切な作物の例は、タマネギ(Allium cepa)、パイナップル(Ananas comosus)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、アスパラガス(Asparagus officinalis)、テンサイ(Beta vulgaris spec. altissima)、ビート(Beta vulgaris spec. rapa)、セイヨウアブラナ(Brassica napus var. napus)、センダイカブ(Brassica napus var. napobrassica)、アブラナ(Brassica rapa var. silvestris)、チャノキ(Camellia sinensis)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、ペカン(Carya illinoinensis)、レモン(Citrus limon)、オレンジ(Citrus sinensis)、コーヒーノキ(Coffea arabica)(ロブスタ種(Coffea canephora)、リベリカ種(Coffea liberica))、キュウリ(Cucumis sativus)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、ニンジン(Daucus carota)、アブラヤシ(Elaeis guineensis)、ワイルドストロベリー(Fragaria vesca)、ダイズ(Glycine max)、ワタ(Gossypium hirsutum)、(Gossypium arboreum, Gossypium herbaceum, Gossypium vitifolium)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)、オオムギ(Hordeum vulgare)、ホップ(Humulus lupulus)、サツマイモ(Ipomoea batatas)、シナノグルミ(Juglans regia)、ヒラマメ(Lens culinaris)、アマ(Linum usitatissimum)、トマト(Lycopersicon lycopersicum)、キャッサバ(Malus spec., Manihot esculenta)、アルファルファ(Medicago sativa)、タバコ(Musa spec., Nicotiana tabacum)(N.rustica)、オリーブ(Olea europaea)、イネ(Oryza sativa)、ライマメ(Phaseolus lunatus)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、ドイツトウヒ(Picea abies)、エンドウ(Pinus spec., Pisum sativum)、サクランボ(Prunus avium)、ハナモモ(Prunus persica)、ラフランス(Pyrus communis)、フサスグリ(Ribes sylestre)、トウゴマ(Ricinus communis)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ライムギ(Secale cereale)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、モロコシ(Sorghum bicolor)(s. vulgare)、カカオノキ(Theobroma cacao)、アカツメクサ(Trifolium pratense)、コムギ(Triticum aestivum)、マカロニコムギ(Triticum durum)、ソラマメ(Vicia faba)、ブドウ(Vitis vinifera)、トウモロコシ(Zea mays)である。
【0180】
加えて、選択された化合物はまた、組換え法を含む育種のため除草剤の作用に耐性を持つ作物においても使用される。このような作物の作製は下記において記載される。
【0181】
本発明は更に、既に上述された除草剤組成物または生育調節組成物を調製する方法に関し、それは、作物保護製品を生じるために選択された化合物を適切な助剤とともに処方することを含む。
【0182】
選択された化合物は、例えば直接スプレー可能な水溶液、粉末、懸濁液の形態で、また高濃縮の水性、油性もしくは他の懸濁液またはサスポエマルジョンまたは分散液、乳剤、乳液、油性分散液、ペースト、ダスト、塗布用物質、あるいは顆粒の形態に処方され、スプレー、噴霧、散布、塗布あるいは浴びせることによって適用され得る。使用形態は使用目的および選択された化合物の性質により変わり、いずれの場合にも、それらは選択された化合物の最良の分布の可能性を保証すべきである。除草剤組成物は、除草剤活性のある量の少なくとも1つの選択された化合物および除草剤組成物の処方に通常使用される助剤を含む。
【0183】
乳液、ペーストまたは水性もしくは油性製剤および分散性濃縮物(DC)の調製のために、選択された化合物は油もしくは溶媒に溶解または分散され、均一化のために更なる処方用助剤を添加することが可能である。しかし、選択された化合物、適宜に溶媒または油、任意に更なる助剤から液体または固体の濃縮物を調製することも可能であり、これらの濃縮物は水による希釈に適している。次のものを挙げることができ、すなわち、乳剤(EC, EW)、懸濁液(SC)、可溶性濃縮物(SL)、分散性濃縮物(DC)、ペースト、錠剤、湿潤性粉末または顆粒であり、固体の製剤については水に可溶性または分散性(湿潤性)であることが可能である。加えて、適切な粉末または顆粒または錠剤は更に、活性成分の摩耗もしくは早期放出を防ぐ固体コーティングを施されていてもよい。
【0184】
原則的に、「助剤」という用語は、以下の種類の化合物を意味するものとして理解される。すなわち、消泡剤、増粘剤、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤、乳化剤、殺菌剤および/またはチキソトロープ剤である。当業者は上述の薬剤の意味について精通している。
【0185】
SL、EWおよびECは、単に対象の成分を混合することによって調製でき、粉末は特殊な製粉機(例えばハンマーミル)で混合または粉砕することによって調製される。DC、SCおよびSEは通常、湿式粉砕によって調製され、更なる助剤または選択された化合物を含みうる有機相の添加によりSCからSEを調製することが可能である。その調製は公知である。粉末、塗布用物質およびダストは、活性物質を固形担体と混合またはともに粉砕することによって有利に調製される。顆粒、例えばコーティングされた顆粒、含浸顆粒および均質な顆粒は、選択された化合物を固形担体と結合させることによって調製される。当業者はそれらの調製に関する更なる詳細に精通しており、それらは例えば以下の文献、すなわち、US 3,060,084、EP-A 707445(濃縮液について)、Browning, "Agglomeration", Chemical Engineering, Dec. 4, 1967, 147-48, Perry's Chemical Engineer's Handbook, 第4版、McGraw-Hill, New York, 1963, 8-57ページおよび以下参照、WO 91/13546、US 4,172,714、US 4,144,050、US 3,920,442、US 5,180,587、US 5,232,701、US 5,208,030、GB 2,095,558、US 3,299,566、Klingman, Weed Control as a Science, John Wiley and Sons, Inc., New York, 1961, Hanceら、Weed Control Handbook, 第8版、Blackwell Scientific Publications, Oxford, 1989ならびにMollet, H., Grubemann, A., Formulation technology, Wiley VCH Verlag GmbH, Weinheim (Federal Republic of Germany), 2001に記載されている。
【0186】
当業者は、本発明の製剤に適した多数の不活性な液体および/または固形担体について精通しており、例えば、灯油もしくはディーゼル油などの中沸点から高沸点の鉱油留分のような液体添加剤、更にコールタール油および植物もしくは動物由来の油、脂肪族化合物、環状炭化水素および芳香族炭化水素、例えばパラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレンもしくはそれらの誘導体、アルキル化ベンゼンもしくはそれらの誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびシクロヘキサノールなどのアルコール、シクロヘキサノンなどのケトン、または極性の強い溶媒、例えばN-メチルピロリドンなどのアミンもしくは水などである。
【0187】
固形担体の例は、鉱物土類、例えばシリカ、シリカゲル、ケイ酸塩、タルク、カオリン、石灰石、石灰、チョーク、粘土、黄土、クレー、ドロマイト、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、地面合成材料など、肥料、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素など、ならびに植物由来の製品、例えば穀粉、樹皮粉、木粉および堅果殻の粉、セルロース粉末など、または他の固形担体である。
【0188】
当業者は、本発明の製剤に適した多数の界面活性物質(界面活性剤)について精通しており、こうした物質として以下を挙げることができる:芳香族スルホン酸(例えば、リグノスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、およびジブチルナフタレンスルホン酸)の、脂肪酸の、アルキルスルホン酸およびアルキルアリールスルホン酸の、アルキル硫酸、ラウリルエーテル硫酸および脂肪アルコール硫酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩、ならびに硫酸化ヘキサ-、ヘプタ-およびオクタデカノールの塩および脂肪アルコールグリコールエーテルの塩、スルホン酸化ナフタレンおよびその誘導体とホルムアルデヒドとの縮合物、ナフタレンまたはナフタレンスルホン酸とフェノールおよびホルムアルデヒドとの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化されたイソオクチル-、オクチル-もしくはノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化されたヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル、リグノ亜硫酸廃液、またはメチルセルロース。
【0189】
除草剤組成物、または選択された化合物は、出芽前または出芽後に適用することができる。選択された化合物が特定の作物によってあまり許容されない場合、選択された化合物を噴霧装置で噴霧する適用技術を使用して、選択された化合物と感受性作物の葉との接触があるにしても可能な限り少なくしつつ、その下に生育している望ましくない植物の葉または露出土壌表面に選択された化合物が達するようにしてもよい(後指定(post-directed)、レイバイ(lay-by))。
【0190】
防除対策の意図された目的、季節、標的植物および生育段階に応じて、選択された化合物の散布量は合計0.001〜3.0 kg/ha、好ましくは0.01〜1.0 kg/haになる。
【0191】
除草剤標的を提供することは更に、作用部位としてGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはGDCもしくはP-GDC、特に好ましくはP-GDCを有する除草剤(例えば、除草剤活性のある選択された化合物)によって阻害されない、またはこのような除草剤によって限られた程度にしか阻害されない、グリシンデカルボキシラーゼ複合体またはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットを同定する方法を可能にする。こうして、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCと異なるタンパク質は、下記においてGDC変異型と呼ばれ、以下の核酸配列によってコードされる。すなわち、
i)上述の方法によって同定された、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCもしくはH-GDC、好ましくはGDCもしくはP-GDC、特に好ましくはP-GDCを阻害する除草剤活性のある物質によって阻害されない、GDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列、および
ii)配列番号3と少なくとも59%の同一性を有する配列番号3の核酸配列の機能的同等物を含む核酸配列、および/または
iii)配列番号5と少なくとも69%の同一性を有する配列番号5の核酸配列の機能的同等物を含む核酸配列、および/または
iv)配列番号7と少なくとも68%の同一性を有する配列番号7の核酸配列の機能的同等物を含む核酸配列、および/または、
v)配列番号9と少なくとも64%の同一性を有する配列番号9の核酸配列の機能的同等物を含む核酸配列。
【0192】
ii)に定義される配列番号3の機能的同等物は、配列番号3と少なくとも59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%または66%、できれば少なくとも67%、68%、69%、70%、71%、72%または73%、好ましくは少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、79%または80%、好ましくは少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%または93%、特に好ましくは少なくとも94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有する。
【0193】
iii)に定義される配列番号5の機能的同等物は、配列番号5と少なくとも69%、できれば少なくとも70%、71%、72%または73%、できれば少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、79%または80%、好ましくは少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%または93%、特に好ましくは少なくとも94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有する。
【0194】
iv)に定義される配列番号7の機能的同等物は、配列番号7と少なくとも68%または69%、できれば少なくとも70%、71%、72%または73%、できれば少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、79%または80%、好ましくは少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%または93%、特に好ましくは少なくとも94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有する。
【0195】
v)に定義される配列番号9の機能的同等物は、配列番号9と少なくとも64%、65%または66%、できれば少なくとも67%、68%、69%、70%、71%、72%または73%、できれば少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、79%または80%、好ましくは少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%または93%、特に好ましくは少なくとも94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有する。
【0196】
すべての上述の核酸配列は、植物に由来するものであることが好ましい。
【0197】
好ましい実施形態では、核酸のGDC変異型をコードする核酸配列を作製するための上述の方法は、以下のステップ:
a)上述の核酸によってコードされるタンパク質の異種系または無細胞系における発現、
b)核酸の改変によるタンパク質のランダム突然変異誘発または部位特異的突然変異誘発、
c)改変された遺伝子産物と除草剤との相互作用の測定、
d)より少ない相互作用を示すタンパク質の誘導体の同定、
e)除草剤適用後の、該タンパク質の生物学的活性の検査、
f)除草剤に関して改変された生物学的活性を有する核酸配列の選択、
を含んでなる。
【0198】
上述の方法によって選択された配列は、生物に有利に導入される。従って、本発明の更なる態様は、この方法によって作製された生物である。好ましくは、その生物は植物であり、特に好ましくは上記の作物の1つである。
【0199】
これに続いて完全な植物体に再生され、完全な植物体における選択された化合物への耐性が検査される。
【0200】
植物において、選択された化合物への耐性を賦与することができる改変されたタンパク質および/または核酸はまた、上述の核酸配列から「部位特異的突然変異誘発」として知られる方法によって作製することができ、この突然変異誘発は、例えば、標的タンパク質の安定性および/または効果の、あるいは本発明の上述の阻害剤の結合および活性などの性質の、高度に標的化された改善または改変を可能にする。
【0201】
有利に使用され得る「部位特異的突然変異誘発」法の植物における例は、Zhuら(Nature Biotech., Vol.18, May 2000: 555-558)によって記載された方法である。
【0202】
更に、改変は、Speeら(Nucleic Acids Research, Vol.21, No.3, 1993: 777-78)によって記載されたdITPを用いたランダム突然変異誘発を達成するためのPCR法、またはRellosら(Protein Expr. Purif., 5, 1994 : 270-277)によって更に改良された方法によって達成することができる。
【0203】
これらの改変されたタンパク質および/または核酸を作製するための更なる可能性は、Stemmerら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 91, 1994: 10747-10751)によって記載された分子進化のためのin vitro組換え技術、またはMooreら(Nature Biotechnology Vol. 14, 1996: 458-467)によって記載されたPCRと組換え法の組合せである。
【0204】
タンパク質に突然変異を誘発する更なる方法は、GreenerらによるMethods in Molecular Biology(Vol. 57, 1996: 375-385)に記載される。微生物E. coli XL1を用いてタンパク質を改変する方法は、EP-A-0 909 821に記載される。複製の際に、この微生物は導入された核酸に突然変異を生じさせ、これによって、遺伝情報の改変を引き起こす。それらによってコードされる有利な核酸およびタンパク質は、改変された核酸または改変されたタンパク質の単離および耐性の検査によって容易に同定しうる。これらの核酸は、その結果、植物への導入後、耐性の発現を引き起こし、そのために除草剤への耐性をもたらす。
【0205】
更なる突然変異誘発ならびに選択方法は、例えば、種子または花粉のin vivo突然変異誘発ならびに本発明の阻害剤の存在下での耐性対立遺伝子の選択と、それに続く改変された耐性対立遺伝子の遺伝学的同定および分子的同定などの方法である。更に、突然変異誘発と、次第に増加させた濃度の本発明の阻害剤の存在下で培養物を増殖させることによる細胞培養下での耐性の選択である。ここでは、物理化学的な突然変異誘発処理によってもたらされる自然突然変異率の増加を利用することが可能である。上述のように、本発明に従って使用する方法において用いられる核酸によりコードされたタンパク質の内因性活性または組換え活性を有し、かつ本発明に従って同定された阻害剤に感受性のある微生物を用いて、改変された遺伝子を単離することもまた可能である。増加させた濃度の本発明の阻害剤を含む培地での微生物の培養は、本発明の標的の耐性変異株の選択および進化を可能にする。次には、突然変異頻度を突然変異誘発処理によって高めることができる。
【0206】
核酸の特異的改変方法もまた利用可能である(Zhuら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 96, 8768-8773およびBeethemら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol 96, 8774-8778)。これらの方法は、タンパク質において、阻害剤の結合に重要なアミノ酸の、機能的に類似しているが阻害剤の結合を妨げるアミノ酸による置換を可能にする。
【0207】
従って、本発明は更に、増加した活性が存在するようにその生物学的活性が改変されている遺伝子産物をコードする核酸配列の作製方法に関する。増加した活性とは、出発生物または出発遺伝子産物の活性より、少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも50%、極めて好ましくは少なくとも100%高い活性を意味するものとして理解される。更に、その生物学的活性は、本発明の物質および/または組成物が、核酸配列および/またはそれによってコードされる遺伝子産物にもはや結合しない、またはもはや正しく結合しなくなるように、改変されていてもよい。本発明の目的のために、「もはや結合しない」または「もはや正しく結合しない」とは、その物質が、出発遺伝子産物もしくは出発核酸と比較して、改変された核酸および/または遺伝子産物に、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%、極めて好ましくは少なくとも80%低く結合するか、またはまったく結合しないことを意味する。
【0208】
従って、本発明のまた更なる態様は、改変された生物学的活性を有する遺伝子産物をコードする核酸配列によって、またはGDC変異型をコードする核酸配列によって形質転換されたトランスジェニック植物に関する。形質転換方法は当業者に知られており、その例は上記に詳述されている。
【0209】
本発明の方法によって見出された物質および/またはこれらの物質を含む組成物に耐性のある遺伝子操作されたトランスジェニック植物はまた、形質転換とそれに続く本発明の核酸配列の過剰発現によって作製され得る。従って、本発明は更に、本発明の方法によって見出された物質に耐性のあるトランスジェニック植物を作製する方法に関し、そこではGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCをコードする核酸がこれらの植物において過剰発現される。同様の方法は、例えばLermantovaらPlant Physiol., 122, 2000: 75-83に記載される。
【0210】
耐性植物を作製するための本発明の上記方法は、可能なかぎり包括的で植物種に非依存的な活性を有する新規除草剤(非選択的除草剤としても知られる)の開発と併せて、非選択的除草剤に耐性のある作物の開発を可能にする。非選択的除草剤に耐性のある作物は、いくつかの場合において既に記載されている。これに関連して、本発明者らは、耐性を獲得するための複数の原理を区別している。すなわち、
a)突然変異法または組換え法により、除草剤の標的としての機能を果たすタンパク質を十分な程度にまで過剰産生させ、除草剤の標的としての機能を果たすタンパク質の大過剰ゆえに除草剤の適用後でも細胞内でこのタンパク質によって奏される機能を維持することによる、植物における耐性の発現。
【0211】
b)除草剤の標的としての機能を果たすタンパク質の改変型が導入され、新たに導入された改変タンパク質の機能が除草剤による悪影響を受けないような、植物の改変。
【0212】
c)新規タンパク質/新規RNAが導入され、その場合に、該タンパク質またはRNAやDNAなどの核酸の化学構造(その構造は低分子量物質の除草剤活性に関与する)が改変され、改変された構造のため、除草剤活性がもはや発揮され得ないような、すなわち、除草剤と標的との相互作用がもはや起こり得なくなるような、植物の改変。
【0213】
d)植物に導入される新規遺伝子による標的の機能の置換、ひいては代替経路として知られるものの作製。
【0214】
e)標的の機能が、植物に存在する別の遺伝子、またはその遺伝子産物によって引き継がれる。
【0215】
当業者は、相同な核酸を、例えば類似の配列を有する他の植物において、同定するための、例えばトランスポゾンを使用するなどの、代替方法に精通している。従って、本発明はまた、配列番号3の核酸配列内に、遺伝子コードに基づいてこれらの配列に由来する配列内に、および/または他の植物におけるそれらの派生物内に外来核酸を挿入するための、代替的な挿入突然変異導入法の使用に関する。
【0216】
トランスジェニック植物は、本発明の発現カセットの上述の実施形態の1つを用いて、同様に上述されている通常の形質転換方法によって作製される。
【0217】
組換えによって発現されるGDC変異型の発現効率は、例えばシュート分裂組織の増殖によって、または発芽試験によってin vitroで測定することができる。
【0218】
更に、種類およびレベルに関して改変されたGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの発現、ならびにGDC、P-GDC、L-GDC、T-GDCまたはH-GDC、好ましくはGDCまたはP-GDC、特に好ましくはP-GDCの阻害剤への耐性におけるその効果は、温室実験において実験植物で検査することができる。
【0219】
本発明は以下の実施例によってより詳細に説明されるが、それは限定とみなされるべきではない。
【実施例】
【0220】
実施例1
植物形質転換ベクター内のcDNAライブラリーの作製
植物を直接形質転換するために使用され得るベクター内にcDNAライブラリー(以後「バイナリーcDNAライブラリー」という)を作製するために、mRNAを様々な植物組織から単離し、TimeSaver cDNA合成キット(Amersham Pharmacia Biotech, Freiburg)を用いて二本鎖cDNAに転写した。T12-18オリゴヌクレオチドを用いて、メーカーの使用説明書に従って、cDNA第一鎖合成を行った。メーカーの使用説明書に従ったサイズ分画およびEcoRI-NotIアダプターのライゲーション、ならびにPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)による突出部のフィルインの後、cDNA集団を平均化した。このために、Kohciら、1995, Plant Journal 8, 771-776の方法を用いて、オリゴヌクレオチドN1を用いたPCRにより、表1に示す条件下でcDNAを増幅した。
【表1】

【0221】
その結果生じたPCR産物を、PCR精製キット(Qiagen, Hilden)のカラムマトリックスに結合させ、300 mM NaPバッファー、pH 7.0、0.5 mM EDTA、0.04% SDSで溶出した。DNAを沸騰水浴中で5分間変性させ、続いて60℃で24時間再生させた。50μlのDNAをヒドロキシルアパタイトカラムにアプライし、カラムを1 mlの10 mM NaPバッファー、pH 6.8で3回洗浄した。結合した一本鎖DNAを130 mM NaPバッファー、pH 6.8で溶出し、エタノールで沈殿させ、40μlの水に溶解した。その20μlを上述のような更なるPCR増幅のために使用した。更なるssDNA濃縮の後、3回目のPCR増幅を上述のように行った。
【0222】
上述のように作製したcDNA集団を取り込むための植物形質転換ベクターは、ベクターpUC18を制限酵素SbfIおよびBamHIにより切断し、そのベクター断片を精製し、続いてPfu DNAポリメラーゼにより突出部をフィルインし、T4 DNAリガーゼ(Stratagene)を用いて再ライゲーションすることによって作製した。その結果生じた構築物を以後pUC18SbfI-と呼ぶ。
【0223】
ベクターpBinARを最初にNotIで切断して、その両末端をフィルインし、そのベクターをSbfIで切断してその両末端をフィルインし、そのベクターを再ライゲーションした後で、EcoRIおよびHindIIIによって切断した。その結果生じた断片を、バイナリー植物形質転換ベクターpPZP(Hajdukiewicz, P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) Plant Mol Biol 25:989-994)の誘導体にライゲーションしたが、このベクターはアグロバクテリウムを用いた植物の形質転換を可能にし、トランスジェニック植物にカナマイシン耐性を仲介する。このようにして作製した構築物を以後pSun12/35Sと呼ぶ。
【0224】
pUC18SbfI-を、オリゴヌクレオチドV1およびV2(表2参照)ならびにPfu DNAポリメラーゼを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において鋳型として使用した。その結果生じた断片をSmaI切断したpSun12/35Sにライゲーションし、pSunblues2を生じさせた。NotIによる切断、エビ由来アルカリホスファターゼ(Roche Diagnostics, Mannheim)による脱リン酸化およびベクター断片の精製の後、pSunblues2を、平均化し同様にNotI切断したcDNA集団にライゲーションした。大腸菌Xl-1blue(Stratagene)への形質転換後、得られたクローンをマイクロタイタープレートに付着させた。バイナリーcDNAライブラリーは、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの制御下で「センス」および「アンチセンス」方向のcDNAを含み、その結果、タバコ植物への形質転換後、これらのcDNAは「共抑制」効果および「アンチセンス」効果を引き出すことができる。
【表2】

【0225】
実施例2
タバコ植物の形質転換および解析
バイナリーcDNAライブラリーの選択されたクローンをAgrobacterium tumefaciens C58C1:pGV2260(Deblaereら、Nucl. Acids. Res. 13(1984), 4777-4788)に形質転換し、ストレプトマイシン/スペクチノマイシン選択によって培養した。バイナリークローンNt002002044_S2によるタバコ植物(Nicotiana tabacum cv. Samsun NN)の形質転換のために使用される物質は、YEB培地によってOD600 = 0.8〜1.6に希釈された陽性形質転換アグロバクテリウムコロニーの一晩培養物であった。滅菌した植物の葉片(それぞれ約1 cm2)をシャーレ中でアグロバクテリウム希釈液とともに5〜10分間インキュベートした。続いて、これを暗所にて25℃で2日間、2%スクロース(2MS 培地)および0.8% Bacto agarを添加したMurashige-Skoog培地(Physiol. Plant. 15(1962), 473)上で培養した。2日後明所16時間/暗所8時間で培養を続け、週1回の周期で500 mg/l クラフォラン(セフォタキシムナトリウム)、50 mg/lカナマイシン、1 mg/l ベンジルアミノプリン(BAP)、0.2 mg/lナフチル酢酸および1.6g/lグルコースを添加したMS培地上で培養を続けた。生育しているシュートを、2%スクロース、250 mg/lクラフォランおよび0.8% Bacto agarを添加したMS培地上に移した。再生したシュートを、カナマイシンおよびクラフォランを添加した2MS培地上に移した。E_0000010590系統のトランスジェニック植物はこのような方法で作製された。
【0226】
シュートを土に移した後、温室内で2〜20週間、表現型の発現について植物を観察した。E_0000010590系統のトランスジェニック植物は表現型が類似していることが明らかになった。これらの植物は対照植物と比較して生育の遅延を示し、葉には顕著なクロロティック(退緑)領域を示した。
【0227】
トランスジェニック系統のゲノム内へのクローンcDNAの組み込みは、オリゴヌクレオチドG1およびG2(表1、実施例1参照)ならびに対象のトランスジェニック系統から調製したゲノムDNAを用いたPCRによって検出した。このために、TAKARA Taq DNAポリメラーゼをメーカーの使用説明書(MoBiTec, Gottingen)に従って使用した。バイナリーcDNAライブラリーのcDNAクローン(そのクローンはそれぞれの場合に形質転換のために使用された)は、陽性対照としてのPCR反応の鋳型として用いた。様々な制限酵素による切断後に得られた、同一のサイズを有し、適宜に、同一の切断パターンを有するPCR産物は、対応するcDNAが組み込まれたことの証拠とした。このようにして、上述の表現型を有するトランスジェニック植物において、クローンNt002002044_S2のインサートを検出した。
【0228】
実施例3
クローンの配列解析
タバコ植物へのその形質転換が上述の表現型をもたらす、クローンNt002002044_S2のcDNAインサートを配列決定した。
【0229】
Nt002002044_S2のcDNA(配列番号1)は558 bpの長さを持ち、植物グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPに対して顕著な同一性を有する138アミノ酸のポリペプチド(配列番号2)をコードする414 bpのオープンリーディングフレームを含む。
【0230】
最も高度の同一性(88.2%)は、配列番号1と、植物グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPをコードするジャガイモ(Solanum tuberosum)の核酸配列(Gen Bank登録番号Z99770)との間にあった。
【0231】
従って、配列番号1はPタンパク質のC末端部分をコードする。
【0232】
実施例4
グリシンデカルボキシラーゼ複合体の提供
グリシンデカルボキシラーゼ複合体の酵素活性は、植物ミトコンドリアの調製物またはミトコンドリアマトリックス抽出物において測定でき、それは、例えば、エンドウの葉(SarojiniおよびOliver 1983, Plant Physiology 72, pp.194以下参照)またはホウレンソウの葉(Douceら1977, Plant Physiology 60, pp.625以下参照)から単離される。
【0233】
実施例5
in vitroアッセイ系
GDC活性は測光的に測定することができる(例えば、Bourguignonら1988, Biochemical Journal 255, pp.169以下参照)。このために、リン酸カリウムバッファー(pH7.4)中のグリシンデカルボキシラーゼ複合体を、NAD+(2.5 mM)、グリシン(30 mM)、ピリドキサルリン酸(20μM)、MgCl2(0.2 mM)、EGTA(0.2 mM)およびテトラヒドロ葉酸(200μM)で処理する。反応の間に形成されるNADHを340 nmで測光的にモニターする。
【0234】
このアッセイはマイクロタイタープレート中で実施することができ、ハイスループットスクリーニングに適している。
【0235】
GDC複合体のP、LおよびHサブユニットの共同活性の検出系は、例えばMooreら(1980, FEBS Letters 115, pp.54以下参照)に記載されるように、グリシンの変換を、2,6-ジクロロフェノール-インドフェノールの共役還元と関連して測光的にモニターすることによって実施することができる。
【0236】
GDCのHおよびLタンパク質の共同活性を測定するためには、Hタンパク質に結合したリポ酸を過剰のNADHによって還元するLタンパク質によって、それらの逆方向での反応をモニターする。形成されたジヒドロリポ酸を過剰の5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)で再酸化して2-ニトロ-5-チオ安息香酸を生成させ、その吸収を(例えばNeuburgerら1991, Biochemical Journal 278, pp.765以下参照に記載されるように)412 nmで測光的にモニターする。
【0237】
Pタンパク質の活性は、HigaraおよびKiguchi(Journal of Biological Chemistry 1980, 255, pp.11664-11670)の方法によって測定することができる。ここで、1-[14C]グリシンはピリドキサルリン酸およびDTTの存在下で脱炭酸され、形成される14CO2は放射分析によって検出される。
【0238】
Lタンパク質活性は、(例えばMoranら、Plant Physiology 2002, 128, pp.300-313に記載されるように)NAD+および遊離リポ酸の存在下で、NADH形成を340 nmで測光的にモニターすることによって検出できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除草剤を同定する方法におけるグリシンデカルボキシラーゼ複合体またはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットの使用。
【請求項2】
a)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPが、
i)配列番号1もしくは配列番号3に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号2もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号3と少なくとも59%の同一性を有する配列番号3の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
b)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットLが、
i)配列番号5に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号6に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号5と少なくとも69%の同一性を有する配列番号5の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
c)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットTが、
i)配列番号7に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号8に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号7と少なくとも68%の同一性を有する配列番号7の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
d)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットHが、
i)配列番号9に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号10に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号9と少なくとも64%の同一性を有する配列番号9の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
請求項2のa)に記載のサブユニットPが使用される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
以下の核酸配列:
a)配列番号1に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
b)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号2に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
c)配列番号1と少なくとも89%の同一性を有する配列番号1の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列を含んでなる、グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの活性を有するポリペプチドをコードする植物核酸配列。
【請求項5】
請求項4に記載の核酸分子によってコードされる、グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPの活性を有するポリペプチド。
【請求項6】
a)請求項4に記載の核酸配列と機能しうる形で連結された遺伝子制御配列、または、
b)付加的な機能性エレメント、または、
c)a)およびb)の組合せ、
を含む発現カセット。
【請求項7】
請求項6に記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項8】
請求項4に記載のグリオキシソームリンゴ酸脱水素酵素の生物学的活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列、請求項6に記載の発現カセットもしくは請求項7に記載のベクターを含む、細菌、酵母、真菌、動物細胞または植物細胞から選択されるトランスジェニック生物。
【請求項9】
除草剤活性のある物質を同定する方法であって、以下のステップ:
i. グリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットを、試験化合物とグリシンデカルボキシラーゼ複合体との結合を可能にする条件下で1種以上の試験化合物と接触させるステップ、および、
ii. 試験化合物がi)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットと結合するかどうかを検出するステップ、あるいは、
iii. 試験化合物がi)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットの活性を低減または遮断するかどうかを検出するステップ、あるいは、
iv. 試験化合物がi)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットの転写、翻訳もしくは発現を低減または遮断するかどうかを検出するステップ、
を含んでなる方法。
【請求項10】
a)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPが、
i)配列番号1もしくは配列番号3に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号2もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号3と少なくとも59%の同一性を有する配列番号3の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
b)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットLが、
i)配列番号5に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号6に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号5と少なくとも69%の同一性を有する配列番号5の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
c)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットTが、
i)配列番号7に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号8に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号7と少なくとも68%の同一性を有する配列番号7の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
d)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットHが、
i)配列番号9に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号10に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号9と少なくとも64%の同一性を有する配列番号9の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
除草剤を同定する方法において請求項9のa)に記載のグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPを使用する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
グリシンデカルボキシラーゼ複合体の活性もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットの活性を低減または遮断する試験化合物を選択するが、その際、試験化合物とともにインキュベートしたグリシンデカルボキシラーゼ複合体の活性もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットの活性を、試験化合物とインキュベートしてないグリシンデカルボキシラーゼ複合体の活性もしくは試験化合物とインキュベートしてないグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットの活性と比較する、請求項9、10または11に記載の方法。
【請求項13】
i. グリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットをトランスジェニック生物において発現させること、またはグリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットをもともと含む生物を生育させること、
ii. ステップi)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットを、トランスジェニック生物もしくは非トランスジェニック生物の細胞消化物として、部分的に精製した形態で、または均一に精製した形態で、試験化合物と接触させること、および、
iii. ステップii)のグリシンデカルボキシラーゼ複合体もしくはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットの酵素活性を低減または遮断する試験化合物を選択すること、
を特徴とする、請求項9、10、11または12に記載の方法。
【請求項14】
以下のステップ:
i. グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットをコードする少なくとも1つの核酸配列を含み、グリシンデカルボキシラーゼ複合体の少なくとも1つのサブユニットを過剰発現するトランスジェニック生物を作製するステップ、
ii. 試験物質をi)のトランスジェニック生物および同一の遺伝子型の非トランスジェニック生物に適用するステップ、
iii. 試験物質の適用後、トランスジェニック生物および非トランスジェニック生物の生育または生存能を測定するステップ、ならびに、
iv. トランスジェニック生物の生育と比較して、非トランスジェニック生物の生育の低下または生存能の制限をもたらす試験物質を選択するステップ、
を含む、請求項9、10または11に記載の方法。
【請求項15】
植物、シアノバクテリアまたはプロテオバクテリアにおいて行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
生育調節活性を有する物質を同定する方法であって、以下のステップ:
i. グリシンデカルボキシラーゼ複合体の少なくとも1つのサブユニットをコードする核酸配列を含み、グリシンデカルボキシラーゼ複合体の少なくとも1つのサブユニットを過剰発現するトランスジェニック植物を作製するステップ、
ii. 試験物質をi)のトランスジェニック植物および同一の品種の非トランスジェニック植物に適用するステップ、
iii. 試験物質の適用後、トランスジェニック植物および非トランスジェニック植物の生育または生存能を測定するステップ、ならびに、
iv. トランスジェニック植物の生育と比較して、非トランスジェニック植物の生育の変化をもたらす試験物質を選択するステップ、
を含む方法。
【請求項17】
前記物質をハイスループットスクリーニング法で同定する、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項4に記載の1以上の核酸分子、請求項6に記載の1以上の発現カセット、請求項7に記載の1以上のベクター、請求項8に記載の1以上の生物、または請求項5に記載の1以上の(ポリ)ペプチドを有する支持体。
【請求項19】
前記物質を、請求項18に記載の支持体を用いたハイスループットスクリーニング法で同定する、請求項9〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項9〜15、17および19のいずれか1項に記載の方法によって同定された除草剤活性を有する化合物。
【請求項21】
請求項16、17または19のいずれか1項に記載の方法によって同定された生育調節活性を有する化合物。
【請求項22】
農薬組成物の調製のための方法であって、
a)請求項9〜15、17および19のいずれか1項に記載の方法によって除草剤活性を有する化合物を同定するステップ、または請求項16、17もしくは19のいずれか1項に記載の方法によって生育調節活性を有する化合物を同定するステップ、ならびに
b)前記化合物を適切な助剤とともに処方して、除草剤活性または生育調節活性を有する作物保護製品を得るステップ、
を含む方法。
【請求項23】
請求項20もしくは21に記載の少なくとも1つの化合物または請求項20もしくは21に記載の化合物を含む農薬組成物を植物、それらの環境および/または種子に作用させることを含む、望ましくない植物を防除するおよび/または植物の生育を調節する方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法における請求項20もしくは21に記載の化合物または請求項20もしくは21に記載の化合物を含む農薬組成物の使用。
【請求項25】
請求項20に記載の物質によって阻害されないグリシンデカルボキシラーゼ複合体またはグリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットをコードする核酸配列を作製する方法であって、前記核酸配列が、
ii)誘導され得る、配列番号3と少なくとも59%の同一性を有する核酸配列、および/または
iii)誘導され得る、配列番号5と少なくとも69%の同一性を有する核酸配列、および/または
iv)誘導され得る、配列番号7と少なくとも68%の同一性を有する核酸配列、および/または
v)誘導され得る、配列番号9と少なくとも64%の同一性を有する核酸配列、
を含むものであり、以下の工程ステップ:
a)i)の核酸配列によってコードされるタンパク質を異種系または無細胞系において発現させるステップ、
b)該核酸の改変による該タンパク質のランダム突然変異誘発または部位特異的突然変異誘発を行うステップ、
c)改変された遺伝子産物と除草剤との相互作用を測定するステップ、
d)より少ない相互作用を示す該タンパク質の誘導体を同定するステップ、
e)除草剤適用後に該タンパク質の生物学的活性を試験するステップ、および
f)除草剤に関して改変された生物学的活性を有する核酸配列を選択するステップ、
を含む方法。
【請求項26】
請求項25のf)に記載のように選択された配列を生物に導入する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項20に記載の物質に耐性のあるトランスジェニック植物を作製する方法であって、これらの植物においては、グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットまたはグリシンデカルボキシラーゼ複合体をコードする少なくとも1つの核酸配列が過剰発現され、
a)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットPが、
i)配列番号1もしくは配列番号3に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号2もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号3と少なくとも59%の同一性を有する配列番号3の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
b)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットLが、
i)配列番号5に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号6に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号5と少なくとも69%の同一性を有する配列番号5の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
c)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットTが、
i)配列番号7に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号8に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号7と少なくとも68%の同一性を有する配列番号7の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされる、および/または、
d)グリシンデカルボキシラーゼ複合体のサブユニットHが、
i)配列番号9に示される核酸配列を有する核酸配列、または、
ii)遺伝子コードの縮重のため、逆翻訳によって配列番号10に示されるアミノ酸配列から誘導され得る核酸配列、または、
iii)誘導され得る、配列番号9と少なくとも64%の同一性を有する配列番号9の核酸配列の機能的同等物、
を含む核酸配列によってコードされ、過剰発現される方法。
【請求項28】
請求項28に記載の方法によって作製されるトランスジェニック植物。

【公表番号】特表2008−500016(P2008−500016A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538847(P2006−538847)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052816
【国際公開番号】WO2005/047513
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】