説明

除菌・消臭方法および除菌・消臭装置

【課題】安価な装置を使用するにも拘わらず、安全にかつ効率よく室内を除菌・消臭することができる除菌・消臭方法を提供する。
【解決手段】所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含みpHが3.0〜7.0に調整された薬液(22)を調製する。薬液を空気に接触(Y2)させて、空気中に次亜塩素酸を蒸散させる。このとき、薬液は液相に維持した状態にして、すなわち霧状にしないようにして空気に接触させる。そして、得られた次亜塩素酸を含んだ空気を所定のエリアに送風(Y3)して該エリアを除菌・消臭する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション、住宅等の居住施設、病院、老人ホーム、保育施設等の公共施設、または食品工場、地下街等の所定のエリアに殺菌作用と消臭作用を有する物質を含んだ空気を供給して、該エリアを除菌および消臭する除菌・消臭方法、および除菌・消臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手術室や、術後の患者を収容する病室においては、免疫力の低下している患者が感染症に感染しないように室内が除菌される。このような除菌方法としては、例えば消毒用アルコールを霧吹きによって直接室内で噴霧して除菌するようなシンプルな方法もあるし、オゾンガス法、紫外線照射法等の、比較的高価な装置を使用して除菌する方法もある。オゾンガス法は、密閉された無人の室内にオゾンガス発生装置によりオゾンガスを供給する方法である。オゾンガスの強力な酸化作用によって室内の空気中に漂っている細菌や、家具、器具等に付着している細菌が除菌されことになる。紫外線照射法は、紫外線照射装置によって室内の家具や器具に紫外線を照射する方法である。紫外線の殺菌作用によって紫外線が照射された部分が除菌されることになる。しかしながら、これらの除菌方法には問題が認められる。例えば、消毒用アルコールを霧吹きによって吹き付ける方法においては、消毒用アルコールの噴霧直後は除菌効果が得られるが、密閉した室内に蒸発したアルコールが滞留していると、アルコール自体が細菌やカビの栄養になってしまって、かえって細菌やカビが増殖してしまうという問題がある。従って、比較的空気の入れ換えが頻繁な救急車の車内の除菌等には適しているが、手術室や病室の除菌に適しているとは必ずしも言えない。オゾンガス法においては、オゾンガスは酸化作用が強力なので、部屋を無人にした後に供給するようにしなければならないので不便であるし、強力な酸化作用によって部屋内の器具が腐食してしまうという重大な問題もある。紫外線照射法においては、紫外線が直接人体に照射されないように留意する必要があるし、紫外線が照射されない陰の部分は除菌されないので、十分な除菌効果が得られないという問題もある。
【0003】
そこで、細菌やカビの栄養になることのない、次亜塩素酸を含んだ薬液を霧状に噴霧して室内に供給して、屋内を除菌する色々な除菌方法が特許文献1〜3において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−129061号公報
【特許文献2】特開2001−276842号公報
【特許文献3】特開2004−141429号公報
【0005】
特許文献1には、所定のpH4.0〜7.5に調整された次亜塩素酸ナトリウム水溶液からなる薬液を、超音波振動装置を使用して霧状にして、これを空気と攪拌して室内に供給する除菌方法が記載されている。特許文献1に記載の方法によると、薬液には殺菌力の強い次亜塩素酸が5〜200ppm含まれているので、霧状にされた薬液が空気と共に攪拌されて室内に供給されると、室内を効率よく除菌することができる。特許文献2には、塩素イオンを含む水を霧状に噴霧して除菌対象物に噴霧するとき、霧状に噴霧された水に紫外線を照射して次亜塩素酸を生成させ、除菌対象物に次亜塩素酸を含む霧状の水が到達するようにする除菌方法が記載されている。特許文献2によると、単純に次亜塩素酸を含む薬液を噴霧すると、噴霧時に薬液中の次亜塩素酸が所定の割合だけ分解されてしまう問題があるように記載されている。これは、本発明の説明において明らかにされているように、次亜塩素酸が空気中に蒸散される現象について、次亜塩素酸が分解されていると解釈されてしまったようである。いずれにしても、特許文献2に記載の方法によると、噴霧された水に紫外線を照射して次亜塩素酸を生成するので、すなわち噴霧時には分解されてしまう次亜塩素酸は含まれないので、次亜塩素酸が分解されずに除菌に有効に利用されることになる。特許文献3には、亜塩素酸と次亜塩素酸を含む薬液を高圧にして、高圧にされた空気と共にノズルから噴出して、0.2〜25μmの霧状にして空気中に放出する除菌方法が記載されている。特許文献3に記載の方法によれば、亜塩素酸や次亜塩素酸は殺菌力が強いので、これらを含む薬液が霧状にされて空気中に放出されると、室内の空気が効率的に除菌されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に記載の方法によれば、次亜塩素酸を含む霧状の薬液を空気中に噴霧するので、空気を除菌することができるし、このような薬液を除菌対象物に噴霧すると除菌対象物を効率よく除菌することができる。さらには、次亜塩素酸は有機物を分解することもできるので、部屋内を消臭する効果も認められる。そして、次亜塩素酸は人体に対する影響が十分に小さいので、有人の部屋に供給することも可能である。しかしながら、これらの方法には、解決すべき問題も見受けられる。まず、それぞれの方法について個別の問題を説明し、次いで特許文献1〜3に共通する問題点について説明する。
【0007】
(個別の問題)
特許文献1に記載の方法においては、薬液を霧状にする超音波振動装置が格別に必要になるという問題がある。例えば、病院や老人ホームのように除菌すべき室内が広い場合、大量の薬液を霧状に噴霧する必要があるが、このような大量の薬液を霧状にするには多数の超音波振動装置、または大型の超音波振動装置が必要になってしまう。また、このような薬液中の次亜塩素酸は、有効塩素濃度が5〜200ppmと比較的低濃度であるので、十分な除菌効果を得るためには薬液を大量に霧状にする必要がある。そうするとコスト高になってしまう。特許文献2に記載の方法においては、塩素イオンを含み霧状にされた水に紫外線を照射して次亜塩素酸を生成させているが、このような方法で生成される次亜塩素酸は一般的に濃度は高くないし、生成効率も高くない。そうすると、十分な除菌効果を得ようとすると大型の装置が必要になってコスト高になる。特許文献3に記載の方法においては、薬液を高圧にすると共に高圧の空気と共に薬液をノズルから噴射するので、コンプレッサーと加圧ポンプが格別に必要になる。そうすると装置が大型化してしまう。また、適切に薬液が噴霧されるようにするために、コンプレッサーと加圧ポンプの運転を調整する必要があり、高度な制御と調整が必要でありコスト高になってしまう。
【0008】
(共通の問題)
特許文献1、または3に記載の方法においては、次亜塩素酸を含んだ薬液を霧状にして空気に攪拌し、水分を含んだ状態で部屋の隅々まで到達するようにしている。また、特許文献2に記載の方法においては、霧状の水に次亜塩素酸を生成させたもの、すなわち次亜塩素酸を含んだ薬液を直接除菌対象物に噴霧するようにしている。このように、いずれの方法においても水分を含んだ状態で次亜塩素酸を除菌対象に接触させることを予定している。このように水分を含んだ状態で次亜塩素酸を除菌対象に接触させる点について、これらの文献には明確に理由が記載されていないが、次亜塩素酸に関する従来の知見または推測に基づいてなされているように考えられる。すなわち、次亜塩素酸は水分子がある水中でのみ殺菌力を有するとの知見である。もしくは、次亜塩素酸が蒸発すると下記式のように一酸化二塩素に変化してしまい、十分な殺菌効果が得られなくなってしまうのではないかとの推測である。
2HOCl=ClO+HO (式1)
従って、特許文献1〜3においては、次亜塩素酸が単体で空気中に拡散する可能性とその状態における次亜塩素酸の殺菌力については顧みられていない。このため、特許文献1〜3のそれぞれに記載の方法においては、次亜塩素酸を含んだ薬液を霧状に噴霧して空気に攪拌しているが、新たな問題が生じる。すなわち、このような薬液には次亜塩素酸の生成時に必要な塩化ナトリウムが不純物として含まれていたり、薬液のpHを調整する塩酸が所定の割合で含まれている。そうすると、不純物の塩化ナトリウムや塩酸も霧状にされて噴霧されるので、室内の金属類が錆びてしまったり、室内を汚染してしまう。さらには、次亜塩素酸が自己分解して生成される塩素酸ナトリウム(NaClO)等の毒性の強い物質が薬液中に含まれている場合には、これらが噴霧されて危険でもある。このように、特許文献1〜3のそれぞれの方法によっては、次亜塩素酸のみを室内に供給することができないので、問題が生じてしまう。
【0009】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであって、具体的には、安価な装置を使用するにも拘わらず、広い室内であっても効率よく除菌・消臭効果を有する物質を室内の空気に攪拌することができ、人体に対する影響がほとんどなく、従って室内に人がいても実施することができ、そして塩化ナトリウム、塩酸等の金属類を錆びさせたり室内を汚染する物質や、塩素酸ナトリウム等の毒性の強い物質を外部に排出することがなく、安全に除菌・消臭することができる室内の除菌・消臭方法、および除菌・消臭装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含みpHが3.0〜7.0に調整された薬液を空気に接触させて、空気中に次亜塩素酸を蒸散させる。このとき、薬液は液相に維持した状態にして、すなわち霧状にしないようにして空気に接触させる。そして、得られた次亜塩素酸を含んだ空気を所定のエリアに送風して該エリアを除菌・消臭するように構成する。このようにすると、塩化ナトリウムや塩酸、他の不純物がエリア内を汚染することがない。また、除菌・消臭装置の発明においては、薬液が液相に維持された状態で空気に接触されるように所定の構造を備えた除菌・消臭装置として構成する。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含みpHが3.0〜7.0に調整された薬液を空気に接触させるとき、該薬液が液相に維持された状態で接触させて、前記空気中に次亜塩素酸を蒸散させ、得られた次亜塩素酸を含んだ空気を所定のエリアに送風して該エリアを除菌・消臭するように構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の除菌・消臭方法において、前記薬液を前記空気に接触させるとき、前記薬液は直列に接続された複数槽の薬液槽を所定時間滞留させながら流下させ、前記空気は前記薬液の流れと反対方向から前記薬液槽の液面と平行に吹き付けるように構成される。
そして、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の除菌・消臭方法において、前記薬液を前記空気に接触させるとき、前記空気は所定の風速で水平方向に送風し、前記薬液は直径50μm以上の液滴にして前記空気中を落下させるように構成され、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の除菌・消臭方法において、前記薬液と接触させた空気は、所定の網でフィルタリングして、前記空気に含まれる前記液滴を除去した後に前記エリアに放出するように構成される。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の除菌・消臭方法において、前記薬液を前記空気に接触させるとき、複数本の芯材と該芯材を覆う布またはスポンジからなり垂直に立てられた複数本の棒状を呈する薬液流下体の上部に前記薬液を供給して、前記薬液を前記薬液流下体に沿って流下させ、前記空気は前記薬液流下体に吹き付けるように構成される。
さらには、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかの項に記載の除菌・消臭方法において、前記薬液を前記空気に接触させて得られた前記次亜塩素酸を含んだ空気を、空調機、加湿器または空気清浄機の送風口に供給して、前記次亜塩素酸を含んだ空気と前記送風口から送風される空気がブレンドされて送風されるように構成される。
【0012】
請求項7に記載の発明は、外部から空気を取り込む吸入口と外部に空気を送風する送風口が設けられた所定の薬剤蒸散室と、前記薬剤蒸散室内に設けられている直列に接続された複数槽の薬液槽と、前記吸入口または前記送風口に設けられている送風機とから構成され、前記吸入口と前記送風口は、それぞれ前記複数槽の薬液槽の最下流の槽と最上流の槽の近傍に設けられ、前記送風機が駆動され、そして前記最上流の槽に所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含みpHが3.0〜7.0に調整された薬液が供給されると、前記薬液は前記複数槽の薬液槽を所定の滞留時間を経て順次下流側に流れ、前記吸入口から吸入された空気は、前記薬液の流れと反対の方向に流れて前記複数槽の薬液槽の液面と接触して、前記送風口から外部に送風されるように構成される。
請求項8に記載の発明は、外部から空気を取り込む吸入口と外部に空気を送風する送風口が設けられた所定の薬剤蒸散室と、前記薬剤蒸散室内の所定の高さに設けられ薬液を液滴にして落下させるノズルと、前記薬剤蒸散室内に設けられ前記液滴を受ける受液プレートと、前記吸入口または前記送風口に設けられている送風機とから構成され、前記送風機が駆動され、そして所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含みpHが3.0〜7.0に調整された薬液が前記ノズルに供給されると、前記薬液は直径50μm以上の液滴になって前記吸入口から吸入された空気中を落下して、前記受液プレートに落下し、前記液滴と接触した前記空気が前記送風口から外部に送風されるように構成される。
そして、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の除菌・消臭装置において、前記薬剤蒸散室内には前記ノズルの下流に所定の網が設けられ、前記液滴と接触した前記空気が前記網によってフィルタリングされ、前記空気中に含まれる前記液滴が除去された後に前記エリアに放出されるように構成される。
また、請求項10に記載の発明は、外部から空気を取り込む吸入口と外部に空気を送風する送風口が設けられた所定の薬剤蒸散室と、前記薬剤蒸散室内に設けられ薬液を流下させる所定の形状の薬液流下体と、前記薬剤蒸散室内に設けられ前記薬液流下体を流下する薬液を受ける受液プレートと、前記吸入口または前記送風口に設けられている送風機とから構成され、前記薬液流下体は、複数本の芯材と該芯材を覆う布またはスポンジとから垂直に立てられた複数本の棒状を呈するように形成され、前記送風機が駆動され、そして所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含みpHが3.0〜7.0に調整された薬液が前記薬液流下体の上部に供給されると、前記薬液は前記薬液流下体に沿って流下して、前記吸入口から吸入された空気は、前記薬液流下体を流下する前記薬液と接触して、前記送風口から外部に送風されるように構成される。
さらには、請求項11に記載の発明は、請求項7〜10のいずれかの項に記載の除菌・消臭装置において、前記送風口は、空調機、加湿器または空気清浄機の送風口近傍に設けられるように構成される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によると、所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含む薬液を空気に接触させるとき、該薬液が液相に維持された状態で接触させるので、空気中に塩化ナトリウム、塩酸、塩素酸ナトリウム等の不純物は拡散しない。そして、薬液はpHが3.0〜7.0に調整されているので、薬液中には、分子状態の、すなわちイオン状態でない次亜塩素酸が所定の濃度で存在することになる。従って次亜塩素酸は効率よく蒸散されることになる。そうすると、実質的に次亜塩素酸だけが空気中に蒸散することになる。このようにして得られた次亜塩素酸を含んだ空気を所定のエリアに送風して該エリアを除菌・消臭するので、次のような効果が得られる。まず、病院・学校等の広い室内、または地下鉄のホーム、地下街等の一部が開放された空間のような所定のエリアであっても効率よく除菌・消臭することができる。そして、次亜塩素酸は人体に対する影響がほとんどないので、人がいるエリアに対しても除菌・消臭が可能である。さらには、塩化ナトリウム、塩酸等の金属類を錆びさせたり室内を汚染する物質や、塩素酸ナトリウム等の毒性の強い物質を外部に排出することがないので安全に除菌・消臭をすることができる。
【0014】
他の発明によると、薬液を前記空気に接触させるとき、薬液は直列に接続された複数槽の薬液槽を所定時間滞留させながら流下させ、空気は薬液の流れと反対方向から薬液槽の液面と平行に吹き付けるようにするので、シンプルな方法で空気に次亜塩素酸を蒸散させることができる。従って安価に除菌・消臭することができる。また、薬液を空気に接触させるとき、空気は所定の風速で水平方向に送風し、薬液は直径50μm以上の液滴にして空気中を落下させる発明によると、薬液の液相の表面積を大きくすることができるので、さらに効率よく次亜塩素酸を空気に蒸散させることができる。そして、液滴の直径は50μm以上なので、すなわち薬液が霧状にされないので、液滴が空気中で消失してしまって不純物が空気中に拡散してしまうこともない。すなわち、次亜塩素酸の蒸散の効率は十分に高く、安全性も確保されている。また、この薬液と接触させた空気を、所定の網でフィルタリングして、空気に含まれる液滴を除去した後にエリアに放出する発明によると、液滴は完全に除去されるのでさらに安全性が確保されることになる。他の発明によると、薬液を空気に接触させるとき、複数本の芯材と該芯材を覆う布またはスポンジからなり垂直に立てられた複数本の棒状を呈する薬液流下体の上部に薬液を供給して、薬液を薬液流下体に沿って流下させ、空気は薬液流下体に吹き付けるので、シンプルな構造の薬液流下体を使用するだけで、効率よく次亜塩素酸を空気中に蒸散することができる。従って、除菌・消臭方法を安価に実施することが可能になる。さらには、他の発明においては、これらの方法において、薬液を空気に接触させて得られた次亜塩素酸を含んだ空気を、空調機、加湿器または空気清浄機の送風口に供給して、次亜塩素酸を含んだ空気と送風口から送風される空気がブレンドされて送風されるように構成されている。このようにすると、空調機、加湿器または空気清浄機から送風される空気によって、部屋の隅々にまで除菌・消臭効果を有する次亜塩素酸を供給することができるので、効率よく除菌・消臭することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る除菌・消臭装置を模式的に示す図で、その(ア)は、第1の実施の形態に係る除菌・消臭装置を、その(イ)は第2の実施の形態に係る除菌・消臭装置を、それぞれ示す側面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る除菌・消臭装置を模式的に示す図で、その(ア)は、第3の実施の形態に係る除菌・消臭装置を、その(イ)は第4の実施の形態に係る除菌・消臭装置を、それぞれ示す側面断面図である。
【図3】本発明の第5の実施の形態に係る除菌・消臭装置を模式的に示す側面断面図である。
【図4】空気と液面において接触している薬液中の次亜塩素酸の蒸散速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明においては、所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含み、pHが3.0〜7.0に調整された薬液を空気に接触させて、空気中に次亜塩素酸を蒸散させる。このとき、薬液を液相状態に維持して、すなわち霧状にしないで空気に接触させ、空気中に次亜塩素酸以外の不純物が拡散することを防止する。そして得られた次亜塩素酸を含む空気を除菌・消臭したい所定のエリア、すなわち一般家庭屋内、手術室、病室等のような密閉された部屋や、地下街、地下鉄のホーム、店舗等の一部開放された半開放空間に送風する。このように、本発明は、薬液を液相状態に維持した状態で空気に接触させる点に特徴がある。以下、本発明の色々な実施の形態を説明する。
【0017】
本発明の第1の実施の形態に係る除菌・消臭装置1aは、所定の筐体5と、所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含んだ薬液が入れられる第1〜3の薬液槽7〜9と、薬液を供給する薬液供給槽13と、使用後の薬液を貯める廃液槽14とから構成されている。筐体5は密閉した扁平な箱状を呈しており、外部から空気を吸入する吸入口2と、外部に次亜塩素酸を含んだ空気を送風する送風口3とが設けられている。筐体5は次亜塩素酸によって腐食されないように材料が選定されているが、特に送風口3近傍は腐食されやすいので、塩化ビニル等の耐腐食性材料から形成されている。吸入口2には筐体5内に空気を吸入する送風機すなわちファン11が設けられている。従って、ファン11を駆動すると、矢印Y1で示されているように吸入口2から空気が筐体5内に吸入される。次いで、空気は矢印Y2で示されているように第1〜3の薬液槽7〜9に入れられた薬液の液面と接しながら流れ、送風口3から矢印Y3で示されているように外部に送風される。従って、筐体5内において薬液中の次亜塩素酸が空気中に蒸散するので、筐体5内は薬剤が蒸散する薬剤蒸散室15になっている。薬剤蒸散室15の底面と壁面の所定部分とからなる下方部分は、異なる高さの第1、2の仕切壁17、18によって3個の部分に分割されている。これらの各部分が第1〜3の薬液槽7〜9になっている。筐体5の第1の薬液槽7側の側壁には、薬液供給槽13から薬液を供給する薬液供給管19が設けられ、薬液供給管19には流量調整弁21が設けられている。従って、流量調整弁21を開くと薬液が第1の薬液槽7に供給される。ところで、第2の仕切壁18の高さは第1の仕切壁17の高さより低い。そして、筐体5の第3の薬液槽9側の側壁には、第2の仕切壁18の高さより低い位置に薬液を排出する薬液排出口20が明けられている。従って、第1〜3の薬液槽7〜9が薬液で満たされるとき、各薬液槽7〜9の液面は、第1の薬液槽7、第2の薬液槽8、第3の薬液槽9の順番で低くなる。このような状態において、第1の薬液槽7に薬液が供給されると、第1の薬液槽7中の薬液は第1の仕切壁17を越えて第2の薬液槽8へ流れ、第2の薬液槽8中の薬液は第2の仕切壁18を越えて第3の薬液槽9へ流れることになる。つまり、第1の薬液槽7は最上流の槽、第3の薬液槽9は最下流の槽になっている。そして、第1、2の仕切壁17、18はこのような薬液の流れをコントロールする堰としての作用を奏する。薬液排出口20は廃液槽14に接続されているので、排出された薬液は廃液槽14に貯められる。
【0018】
本実施の第1の形態に係る除菌・消臭装置1aの作用を説明する。最初に薬液を調製する。薬液は、純度の高い次亜塩素酸水から調製するようにしてもよいが、本発明の方法によると、金属イオン、塩酸等の不純物は除菌・消臭対象のエリアに放出されないので、薬液に含まれる不純物に関しては格別に考慮する必要はない。従って、塩化ナトリウム水溶液を電気分解して次亜塩素酸を含む薬液を生成してもよい。本実施の形態においては、安価に入手できる次亜塩素酸ナトリウム水溶液から調製する。所定の濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に希塩酸を所定量だけ添加して、pH3.0〜7.0、好ましくはpH4.0〜6.5に調整する。薬液の有効塩素濃度が高いほど次亜塩素酸の蒸散効果が高くなるので、除菌・消臭の効果は高い。しかしながら、送風する空気中の次亜塩素酸の濃度に関しては、除菌・殺菌対象のエリアの広さに応じて必要とされる濃度が変わるので、薬液の有効塩素濃度は調整する必要がある。従って、必要に応じて水道水で希釈する。ただし、第1の実施の形態においては空気は薬液の液面と接触するので、すなわち接触面積はそれほど広くないので、薬液の次亜塩素酸の有効塩素濃度は10mg/L以上あることが好ましい。所定の有効塩素濃度に希釈して、薬液を調製する。得られた薬液22を薬液供給槽13に入れる。
【0019】
流量調整弁21を所定量だけ開き、薬液22を所定の流速で第1の薬液槽7に供給する。供給された薬液によって第1の薬液槽7は第1の仕切壁17の高さまで満たされる。次いで、薬液は第1の仕切壁17からあふれて第2の薬液槽8に流れる。流入する薬液によって第2の薬液槽8が第2の仕切壁18の高さまで満たされると、第2の仕切壁18からあふれて第3の薬液槽9に流れる。そして、流入する薬液によって第3の薬液槽9が薬液排出口20の高さまで満たされると、薬液は薬液排出口20から廃液槽14に排出される。引き続き第1の薬液槽7に薬液を供給すると、薬液は所定時間第1の薬液槽7を滞留した後に第2の薬液槽8に流れ、第2の薬液槽8を所定時間滞留した後に第3の薬液槽9に流れ、所定時間滞留後に廃液槽14に排出される。薬液の供給開始に先だってファン11を駆動する。あるいは、薬液の供給開始後、所定時間経過後にファン11を駆動する。ファン11によって外部の空気が吸入口2から吸入される。空気は薬剤蒸散室15内を矢印Y2で示されている方向に流れる。すなわち、空気は薬液の流れと反対方向に流れ、第3の薬液槽9、第2の薬液槽8、第1の薬液槽7の順番で各液面に接触する。そうすると、空気中に次亜塩素酸が蒸散され、空気中の次亜塩素酸の濃度が徐々に高くなる。所定の濃度の次亜塩素酸を含んだ空気が送風口3から外部のエリアに送風される。空気に含まれている次亜塩素酸によってエリアが除菌・消臭される。ところで、第1〜3の薬液槽7〜9を流れる薬液は、次亜塩素酸が蒸散するので、下流に流れるに従って次亜塩素酸の有効塩素濃度が低くなる。従って、十分に次亜塩素酸が蒸散して、次亜塩素酸の有効塩素濃度が低下した後に薬液は廃液槽14に排出される。
【0020】
次に図1の(イ)によって、第2の実施の形態に係る除菌・消臭装置1bについて説明する。前実施の形態に係る除菌・消臭装置1aと同様の構成部品・構成部材については同じ参照番号を付して詳しく説明はしない。第2の実施の形態に係る除菌・消臭装置1bにおいては、薬液槽23が1槽のみから構成され、薬剤蒸散室15の下方部分全体に形成されている。そして、筐体5の所定の部分には所定のくり抜き24が明けられている。このくり抜き24には、薬液22が入れられた薬液供給タンク25が、その縮径された開口部27が下方になるようにして差し込まれている。この開口部27は、薬液槽23に入れられた薬液中に所定長さだけ沈むように薬液供給タンク25の位置が調整されている。従って、薬液槽23の薬液が減って液面が低下して開口部27が露出すると、薬液が自動的に薬液供給タンク25から薬液槽23に供給され、薬液槽23の液面が上昇することになる。本実施の形態においては、薬液排出口20には手動で開閉する弁28が設けられている。
【0021】
第2の実施の形態に係る除菌・消臭装置1bは、バッチ的に運転することもできるし連続的に運転することもできる。バッチ的に運転する場合は次のようにする。薬液槽23に所定の量の薬液を入れ、ファン11を駆動する。そうすると、吸入口2から吸入された空気は薬剤蒸散室15内で薬液の液面に接触しながら流れ、次亜塩素酸は蒸散する。蒸散した次亜塩素酸を含んだ空気が、送風口3から送風される。所定時間、例えば数時間運転すると薬液中の次亜塩素酸の有効塩素濃度が低下する。そうすると、弁28を開いて薬液を所定量だけ廃液槽14に排出し、弁28を閉じる。薬液槽23の液面が低下するので、薬液が自動的に薬液供給タンク25から供給される。薬液槽23の液面が回復する。薬液槽23の薬液は、次亜塩素酸が所定の有効塩素濃度に上がる。再び次亜塩素酸が空気中に蒸散する。このように実施されるので、薬液供給タンク25から供給される薬液は、薬液槽23内の濃度の薄い薬液で希釈されることになる。従って、薬液供給タンク25に入れる薬液22は、次亜塩素酸の有効塩素濃度を高くするとよい。第2の実施の形態に係る除菌・消臭装置1bを連続的に運転する場合は、次のようにする。薬液供給タンク25をその開口部27が薬液槽23の底面に触れる程度に下げる。そして、薬液槽23の薬液が均一に拡がる程度の低い液位にする。そうすると、薬液槽23の薬液の液量が少ないので、次亜塩素酸の蒸散によって薬液中の有効塩素濃度の減少は早まる。弁28をわずかに開いておく。そうすると、次亜塩素酸が十分に蒸散して有効塩素濃度が十分に低下した薬液が少しずつ廃液槽14に排出されることになる。そうすると薬液供給タンク25から同量宛薬液が供給される。
【0022】
図2の(ア)によって、第3の実施の形態に係る除菌・消臭装置1cについて説明する。第1、2の実施の形態に係る除菌・消臭装置1a、1bと同様の構成部品・構成部材については同じ参照番号を付して説明を省略する。第3の実施の形態に係る除菌・消臭装置1cは、筐体5の内部、すなわち薬剤蒸散室15に薬液を所定の径の液滴状にして落下させる液滴発生装置32が設けられている。液滴発生装置32は、薬液を所定量だけ貯めると共に落下する液滴を受ける受液プレート33と、受液プレート33に貯められている薬液と薬液供給層13から供給される薬液をブレンドして所定の薬液管34に圧送するポンプ36と、薬液管34から圧送された薬液を所定の直径の液滴にして水平方向に放出する水平ノズル37、37、…と、水平ノズル37、37、…の後方に垂直に立てられていると共にその下端部が受液プレートに入れられている所定の目の網39、39とから構成されている。そして、受液プレート33は、弁28が設けられている薬液排出口20を介して廃液槽14に接続されている。本実施の形態においては、筐体5内に空気を吸入する吸入口2と、外部に空気を送風する送風口3は、それぞれ筐体5の向かい合う側壁に設けられている。そして、薬剤蒸散室15内の空気が、水平ノズル37、37、…から放出される液滴の方向と反対向きに流れるように構成されている。
【0023】
第3の実施の形態に係る除菌・消臭装置1cの作用を説明する。ファン11を駆動して、外部の空気を吸入し薬剤蒸散室15内を矢印Y2に示されているように流す。流量調整弁21を所定量だけ開いて少量ずつ薬液が薬液供給槽13から供給されるようにして、ポンプ36を駆動する。そうすると受液プレート33から供給される薬液と薬液供給槽13から供給される薬液がブレンドされて薬液管34に圧送される。圧送された薬液は水平ノズル37、37、…から直径50μm以上の液滴にされ、空気の流れと反対方向に放出される。液滴にされ表面積が大きくなっているので、空気中に効率よく次亜塩素酸が蒸散する。また、液滴の直径は50μm以上であるので、薬液は液相に維持されており、空気中に完全に拡散することはない。放出された液滴は0.5〜2秒程度で受液プレート33に落下する。このとき液滴の一部が空気中に残存していても、網39によって捕捉されて受液プレート33に集められるので、送風口3から送風される空気には不純物は含まれない。本実施の形態においては、次亜塩素酸の蒸散はとても効率が高いので、水平ノズル37、37、…から放出する薬液は、次亜塩素酸の有効塩素濃度が5mg/Lであってもある程度効果が得られる。このように蒸散の効率が高いので、受液プレート33に貯められる薬液の有効塩素濃度は非常に低くなる。有効塩素濃度が低下した薬液は適宜廃液槽14に排出する。薬液供給層13から供給される薬液は、受液プレート33から供給される薬液とブレンドされて希釈されるので、有効塩素濃度を予め高くしておくとよい。
【0024】
図2の(イ)によって、本発明の第4の実施の形態に係る除菌・消臭装置1dを説明する。第3の実施の形態に係る除菌・消臭装置1cと同様の構成部品・構成部材については同じ参照番号を付して説明はしない。第4の実施の形態に係る除菌・消臭装置1dは、第3の実施の形態に係る除菌・消臭装置1cとノズルだけが異なっている。すなわち、薬液を液滴にするノズルは、薬剤蒸散室15の上部に1個だけ設けられ、下方に液滴を放出する下方噴射ノズル41になっている。このように、液滴は高所から噴射されるので空中を比較的長い距離落下する。従って、液滴の直径は大きくても十分に蒸散の効率は高い。さらに、液滴は下方に噴出されるので、強制的に受液プレートに落下されることになる。そうすると、下方噴射ノズル41から噴射されてから短時間で受液プレートに到達するので、液滴が空気中で消失してしまうことがない。次亜塩素酸以外の不純物が空気中に拡散する可能性が極めて低くなる。
【0025】
図3によって、本発明の第5の実施の形態に係る除菌・消臭装置1eを説明する。第3の実施の形態に係る除菌・消臭装置1cと同様の構成部品・構成部材については同じ参照番号を付して説明しない。第5の実施の形態に係る除菌・消臭装置1eは、第3の実施の形態に係る除菌・消臭装置1cに設けられていた液滴発生装置32の代わりに、薬液流下装置42が設けられている。薬液流下装置42は、薬液を垂直に流下させる所定の形状の薬液流下体44と、薬液流下体44が入れられて薬液流下体44から流下する薬液を受ける受液プレート33と、受液プレート33に貯められている薬液と薬液供給層13から供給される薬液をブレンドして薬液管34を経由して薬液を薬液流下体44の上部に供給するポンプ36とから構成されている。薬液流下体44は、垂直に立てられた複数本の棒状の芯材45、45、…と、芯材45、45、…に巻き付けられている布、スポンジ等の被覆46、46、…とから構成されている。これらの被覆46、46、…は吸水性を有するので、薬液は薬液流下体44をゆっくりと流下することになる。従って、薬剤蒸散室15内の空気は薬液流下体44を流下する薬液に効率よく接触して、薬液中の次亜塩素酸が蒸散されることになる。受液プレート33に貯められた薬液は、次亜塩素酸の有効塩素濃度が低くなっているので適宜弁28を開いて薬液を廃液槽14に排出する。
【実施例1】
【0026】
エチルアルコール水と次亜塩素酸水のそれぞれの除菌効果を調べる以下の実験を行った。
3個の所定の容器A1〜A3のそれぞれにビーカーa1〜a3を入れ、各ビーカーa1〜a3に以下の溶液を入れた。
ビーカーa1:100mLの水道水
ビーカーa2:100mLのエチルアルコール水 濃度100mg/L
ビーカーa3:100mLの次亜塩素酸水 有効塩素濃度50mg/L
所定の排水処理場でカビを含んだ汚泥を採取して、これを希釈し、3枚の顕微鏡用スライドグラスのそれぞれに2滴ずつ垂らして風乾させた。各スライドグラスには曇りガラス状を呈するわずかに茶色の乾燥泥が形成された。この3枚のスライドグラスを、それぞれ各ビーカーa1〜a3の上に置き、容器A1〜A3に蓋をした。2日後、スライドグラスの乾燥泥の変化を調べたところ、表1のようになった。
【0027】
【表1】

【0028】
この実験によって、次亜塩素酸水から除菌効果を有する物質が蒸散して、乾燥泥が除菌されたことが明らかになった。後の実験でも明らかなように除菌効果を有する物質は次亜塩素酸と考えるべきであり、蒸散した次亜塩素酸によって除菌されることが確認できた。また、エチルアルコール水は、乾燥泥が活性化していたことから、細菌やカビの栄養になっていることが推測された。そこで、引き続き容器A3を18日間放置してスライドグラスを観察したところ、スライドグラス全体にカビが繁殖していた。このことから、エチルアルコール水は細菌やカビの栄養になることが確認でき、除菌用の薬液としては適していないことが判明した。
【実施例2】
【0029】
次亜塩素酸の有効塩素濃度の違いによる除菌効果の違いを調べる以下の実験を行った。
所定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に所定量の希塩酸を添加して、有効塩素濃度が200mg/LでpH6.5の薬液を調製した。
5個の所定の容器B1〜B5のそれぞれにビーカーb1〜b5を入れ、各ビーカーb1〜b5に以下の溶液を100mLずつ入れた。
ビーカーb1:薬液を有効塩素濃度10mg/Lに希釈した溶液。
ビーカーb2:薬液を有効塩素濃度30mg/Lに希釈した溶液。
ビーカーb3:薬液を有効塩素濃度80mg/Lに希釈した溶液。
ビーカーb4:希釈しない薬液。有効塩素濃度200mg/L。
ビーカーb5:水道水。
所定の排水処理場で採取された汚泥を希釈して、5枚の顕微鏡用スライドグラスのそれぞれに2滴ずつ垂らし、風乾させた。各スライドグラスには曇りガラス状を呈するわずかに茶色の乾燥泥が形成された。この5枚のスライドグラスを、それぞれ各ビーカーb1〜b5の上に置き、容器B1〜B5に蓋をした。3日後、スライドグラスの乾燥泥の変化を調べたところ、表2のようになった。なお、容器B1内のスライドグラスの脱色の割合は、目視によって判断されたおおよその数値である。
【0030】
【表2】

【0031】
有効塩素濃度が30mg/L以上の薬液であれば、確実に次亜塩素酸は空気中に蒸散されて、ほぼ100%除菌できることが確認できた。また有効塩素濃度が10mg/Lであっても、空気中に次亜塩素酸が蒸散されて十分な除菌効果が得られることが確認できた。
【実施例3】
【0032】
次亜塩素酸を含む薬液から蒸散された次亜塩素酸について消臭効果を調べる実験を行った。
消臭の対象を腐敗した活性汚泥とした。腐敗した活性汚泥からは腐卵臭を有する硫化水素(HS)が発生する。このような硫化水素を発生する汚泥に次亜塩素酸水を添加すると、次の2式の反応によって腐卵臭が発生しなくなることが知られている。
S → S → SO2− (2式)
この反応が気相においても起こるか否か、すなわち次亜塩素酸を含む薬液から蒸散した次亜塩素酸が、硫化水素と反応して腐卵臭を消臭できるか否かを実験した。
所定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に所定量の希塩酸を添加してpH6.5とし、薬液を得た。2個のシャーレc1、c2を用意して、希釈によって所定の有効塩素濃度にされた次の薬液を、それぞれ15mLずつ入れた。
シャーレc1:有効塩素濃度300mg/Lの薬液
シャーレc2:有効塩素濃度3000mg/Lの薬液
これらのシャーレc1、c2に蓋をして、それぞれ20Lの容器C1、C2に入れ、容器C1、C2には内部の空気を攪拌するエアーポンプを入れ、容器C1、C2の上部を蓋で覆って密封した。
容量が1Lの所定の容器CzにSS6760mg/Lの活性汚泥を300mL入れて密封し、5日間放置して容器Cz内に硫化水素を発生させた。
容器C1、C2の蓋を外し、容器Cz内の硫化水素を含んだ気体を所定量だけ容器C1、C2に入れた後、シャーレc1、c2の蓋を取り、容器C1、C2の蓋を閉じた。1分後容器C1、C2の蓋を開けて臭気を確認し蓋を閉じた。2分後にも容器C1、C2の蓋を開けて臭気を確認して蓋を閉じた。以下の結果が得られた。
容器C1:1分後には腐卵臭がわずかに残っていたが、2分後には腐卵臭は全て消えた。
容器C2:1分後に腐卵臭は全て消え、わずかに塩素臭がした。2分後も腐卵臭はしなかった。
この実験により、蒸散した次亜塩素酸によって極めて短時間に硫化水素が分解されることが分かった。また、蒸散した次亜塩素酸に消臭効果があることが分かった。
【実施例4】
【0033】
次亜塩素酸ナトリウム水溶液と希塩酸とから調製された薬液から、次亜塩素酸ナトリウムでなく、次亜塩素酸が蒸散されることを確認する実験を行った。
所定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に所定量の希塩酸を添加してpH6.5、有効塩素濃度200mg/Lの薬液を得た。2個のビーカーD1、D2のそれぞれに薬液を100mLずつ入れて、ビーカーD2だけを樹脂製シートでラップした。これらのビーカーD1、D2を共にエアコンの風が当たる場所に置き放置した。6日後にビーカーD1、D2内の薬液は以下のようになった。
ビーカーD1:残留塩素濃度2mg/L、pH7.8、減少した液量は21mL
ビーカーD2:残留塩素濃度200mg/L、pH6.5、減少した液量は0mL
この実験により、上部が開放されていないビーカーD2内では次亜塩素酸が他の物質に変化していないことが確認できた。従って、ビーカーD1における残留塩素濃度の減少は、薬液から次亜塩素酸が蒸散することによって生じたものと推測される。液量の減少は水の蒸発によるものと考えられる。
次亜塩素酸ナトリウムと塩酸から以下の3式によって次亜塩素酸が生成される。
NaOCl+HCl=HOCl+NaCl (3式)
ここで、次亜塩素酸水の酸平衡定数は10−7.5であるので、実験に使用された薬液のpHが6.5であることを考えると、薬液中に存在する次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)と次亜塩素酸(HOCl)の割合は次のようになる。
次亜塩素酸(HOCl):91%
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl):9%
もし、空気中に蒸散したのが次亜塩素酸ナトリウムであるとすると、次亜塩素酸ナトリウムの割合が減少するので、3式の反応が右辺から左辺に向かう方向に進行する。そうすると塩酸(HCl)の濃度が高くなるのでpHが低くなる。しかしながら、実験によるとpHはわずかにアルカリ側に変化している。このことから空気中に蒸散したのは次亜塩素酸(HOCl)であって、3式の反応が左辺から右辺に向かう方向に進行していたことが分かる。
以上より、薬液から蒸散したのは次亜塩素酸であることが明らかになった。なお、蒸散した次亜塩素酸は、室内の湿度に応じて空気中では無水次亜塩素酸(ClO)に変化している可能性もある。
【実施例5】
【0034】
次亜塩素酸ナトリウム水溶液に希塩酸が添加されて調製された薬液から、塩酸(HCl)が蒸散する可能性について調べるため、単体としての希塩酸から塩酸が蒸散するか否かを実験した。
pH2.0の希塩酸をビーカーに所定量入れて風通しのよい場所に置き、3日間放置した。3日後にpHを測定したところ、pHは2.0であって変化していなかった。
pHが2.0と酸性の強い状態においても、塩酸が蒸散しないことが確認できた。pHが高いと塩酸は蒸散し難くなるので、この実験によりpHが3.0以上であれば塩酸が蒸散する可能性はほとんどないことが分かる。これにより、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に希塩酸が添加されてpH3.0〜7.0に調整された薬液からも希塩酸が蒸散する可能性はほとんどないと考えられる。
【実施例6】
【0035】
高濃度の有効塩素濃度の薬液から次亜塩素酸が蒸散されることを確認する実験を行った。この実験においては、薬液から塩素ガス(Cl)あるいはその水和物(Cl・HO)が蒸散する可能性について調べることも目的としている。
所定の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に8.5%の塩酸を加えて2種類の薬液f1、f2を調製した。
薬液f1:次亜塩素酸ナトリウムと塩酸が、それぞれ同じモル数になるように薬液を調製した。有効塩素濃度3000mg/L、pH5.22になった。
薬液f2:次亜塩素酸ナトリウムに対して塩酸が2倍のモル数になるように薬液を調製した。有効塩素濃度3000mg/L、pH1.84になった。
薬液f1、f2のそれぞれを100mLずつ採り、それぞれビーカーF1、F2に入れた。ビーカーF1、F2をエアコンの送風口近傍に置き、開口した状態で放置した。2日後、および5日後にpHと残留塩素濃度を調べたところ、表3のようになった。
【0036】
【表3】

【0037】
ビーカーF1、F2は共に、2日後に大半の次亜塩素酸が蒸散しており、5日にはほとんど次亜塩素酸が蒸散して、ビーカーF2においては残留塩素濃度な0mg/Lになっていた。次亜塩素酸が高濃度で含まれている薬液であっても、問題なく次亜塩素酸が蒸散されることが確認できた。なお、ビーカーF1においてpHが上昇してアルカリ側に変化したのは、実施例4と同様の理由による現象であると考えられる。この実験からも、次亜塩素酸ナトリウムは蒸散せず、次亜塩素酸が蒸散したことが明らかになった。
【0038】
ビーカーF2の変化の結果から、塩素ガス(Cl)あるいはその水和物(Cl・HO)が蒸散した可能性について検討する。
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)に対して2倍のモル比の希塩酸(HCl)を添加しているので、4式のような反応式を書くことができる。
NaOCl+2HCl=Cl+HO+NaCl (4式)
これを3式を考慮して書き換えると、5式のように反応式を書くこともできる。
HOCl+HCl=Cl+HO (5式)
これらの4、5式は、左辺から右辺、右辺から左辺のいずれの方向にも反応が進行する可能性があることを示す式である。
ビーカーF2の変化を検討すると、もし塩素ガス、あるいはその水和物が蒸散したと仮定すると、薬液中の塩酸(HCl)は消費されてしまうので、pHは中性に近づくはずである。しかしながら、ビーカーF2のpHは、ほとんど変化せずに酸性の状態に維持されたので、この仮定は誤りであることが分かる。すなわち、薬液から塩素ガス、あるいはその水和物は蒸散しなかったことが明らかになった。
【実施例7】
【0039】
本実施の第3、4の形態に係る除菌・消臭装置1c、1dにおいては薬液を液滴にして空気中を落下させる。液滴にされた薬液が空気中で蒸発・消失しないで受液プレートに到達できる条件、すなわち薬液が液相に維持された状態で空気に接触できる条件を確認する実験を行った。なお、条件として薬滴の直径のみに着目した。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液と希塩酸とから、有効塩素濃度220mg/L、pH6.5の薬液を調製し、市販の手動式霧吹き、すなわちハンドスプレーに入れた。ハンドスプレーによって薬液を液滴にして、20cmの距離だけ離間したスライドグラスに吹き付けた。このスライドグラスは倍率40倍の顕微鏡にセットされている。吹き付けた直後、すなわち0.5秒以内に1回、10秒後に1回、それぞれ40倍に拡大されたスライドグラスの写真を撮った。ハンドスプレーから噴出された液滴の直径は60〜140μmであり、0.5秒以内に撮影した写真から観察された液滴の大きさと個数は表4のようになった。
【0040】
【表4】

【0041】
ここで、スライドグラスに付着している液滴は半球になっていると仮定して、本来の液滴の直径を計算した。10秒後に撮影された写真から観察された液滴は、表4に示されている液滴の直径よりも若干小さくなっていたが個数は変化していなかった。なお、直径25μm前後の液滴も数個観察されたが、10秒後には一部が蒸発・消失していた。本実施の第3、4の形態に係る除菌・消臭装置1c、1dにおいては、液滴は0.5秒〜数秒程度で落下する。従って、空気中で蒸発・消失しないための液滴の直径は50μm以上であると考えられる。
【実施例8】
【0042】
本実施の第2の形態に係る除菌・消臭装置1bの、次亜塩素酸を蒸散する能力を推定する実験を行った。
210mm×140mm×75mmの箱型樹脂容器に、外部から空気を吸入する吸入口と、外部に空気を送風する送風口とを明け、吸入口に電力が13Wのファンを取り付けた。次亜塩素酸ナトリウム水溶液と希塩酸とから、有効塩素濃度220mg/L、pH6.5の薬液を調製し、箱型樹脂容器の内部に1.2L入れた。ファンを駆動すると、薬液の液面がわずかに波打つのが確認された。ファンを駆動した状態で、所定時間経過毎に有効塩素濃度の変化を比色法によって測定した。測定結果は図4のグラフに示されている。この実験によって、次亜塩素酸が7時間でほぼ半減していることが分かる。また、24時間経過すると次亜塩素酸の90%が蒸散することが分かる。なお、薬液中の水は24時間で約300mLが蒸発した。
同様の装置を使用して、薬液の量を少なくして実験した。すなわち、同じ有効塩素濃度の薬液を300mLだけ箱型樹脂容器に入れ、ファンを駆動した。薬液中の次亜塩素酸の90%が蒸散するのに要した時間は5時間であった。薬液の液量を少なくして液面を低下させると薬液中の次亜塩素酸の蒸散の速度が速くなることが確認できた。薬液量を少なくして運転すると薬液中の次亜塩素酸の有効塩素濃度は早期に低下してしまうが、これを早期に排出して新しい薬液を供給することもできるので、そうすると蒸散する次亜塩素酸は、常に十分な量を確保することができる。
【実施例9】
【0043】
薬液が液滴にされて空気中を落下する場合の、次亜塩素酸の蒸散の効率を調べる実験を行った。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液と希塩酸とから薬液h1、h2を調製し、市販の手動霧吹き、すなわちハンドスプレーH1、H2に入れた。薬液h1、h2は以下のようにした。
薬液h1:有効塩素濃度3000mg/L、pH6.5
薬液h2:有効塩素濃度300mg/L、pH6.5
ハンドスプレーH1、H2のそれぞれから、1mの高さから下方に向けて薬液h1、h2を液滴にして落下させた。そして、落下した液滴をそれぞれビーカーHH1、HH2に貯めた。このとき、液滴のほとんどは0.5秒以内で落下することが観察された。ビーカーHH1、HH2にそれぞれ5mL貯まったところで、比色法によって有効塩素濃度を測定した。測定結果を表5に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
実験の結果より、薬液を液滴にして空気中を落下させると、薬液中の次亜塩素酸の約60〜70%が蒸散し、蒸散の効率が高いことが分かる。また、蒸散する次亜塩素酸の割合は薬液の有効塩素濃度によって大きく変化しないことも分かる。このことから、薬液の次亜塩素酸の有効塩素濃度を変えると、時間当たりの蒸散量を容易に調整することができると推測される。すなわち、除菌・消臭装置の能力を調整することができる。
【0046】
本実施の形態に係る除菌・消臭装置は色々な変形が可能である。例えば、第1、2の実施の形態においては薬液槽に何も設けられていないが、薬液槽に水車状を呈する攪拌装置を設けることもできる。つまり、回転する複数枚の攪拌羽根が薬液中と空中を交互に出入りしながら薬液と空気を攪拌する、水車状の攪拌装置である。このようにすると、薬液が所定の直径の液滴になると共に、空気が薬液中に強制的に押し込まれるので、空気と薬液が効率よく接触することができ蒸散効率が高くなる。また、エアーポンプを設けて空気を直接薬液中に吹き込むようにしてもよい。そうすると、薬液中で気泡となった空気に、効率よく次亜塩素酸が蒸散することになる。いずれの方法によっても、薬液は液相に維持された状態で空気に接触するので、空気には次亜塩素酸以外の不純物が混入することはない。
【符号の説明】
【0047】
1a、1b、1c、1d,1e 除菌・消臭装置
2 吸入口 3 送風口
5 筐体 7 第1の薬液槽
8 第2の薬液槽 9 第3の薬液槽
11 ファン 13 薬液供給槽
14 廃液槽 15 薬剤蒸散室
17 第1の仕切壁 18 第2の仕切壁
22 薬液 23 薬液槽
25 薬液供給タンク 32 液滴発生装置
33 受液プレート 36 ポンプ
37 水平ノズル 39 網
41 下方噴射ノズル 42 薬液流下装置
44 薬液流下体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含みpHが3.0〜7.0に調整された薬液を空気に接触させるとき、該薬液が液相に維持された状態で接触させて、前記空気中に次亜塩素酸を蒸散させ、得られた次亜塩素酸を含んだ空気を所定のエリアに送風して該エリアを除菌・消臭することを特徴とする除菌・消臭方法。
【請求項2】
請求項1に記載の除菌・消臭方法において、前記薬液を前記空気に接触させるとき、前記薬液は直列に接続された複数槽の薬液槽を所定時間滞留させながら流下させ、前記空気は前記薬液の流れと反対方向から前記薬液槽の液面と平行に吹き付けるようにして実施することを特徴とする除菌・消臭方法。
【請求項3】
請求項1に記載の除菌・消臭方法において、前記薬液を前記空気に接触させるとき、前記空気は所定の風速で水平方向に送風し、前記薬液は直径50μm以上の液滴にして前記空気中を落下させるようにして実施することを特徴とする除菌・消臭方法。
【請求項4】
請求項3に記載の除菌・消臭方法において、前記薬液と接触させた空気は、所定の網でフィルタリングして、前記空気に含まれる前記液滴を除去した後に前記エリアに放出することを特徴とする除菌・消臭方法。
【請求項5】
請求項1に記載の除菌・消臭方法において、前記薬液を前記空気に接触させるとき、複数本の芯材と該芯材を覆う布またはスポンジからなり垂直に立てられた複数本の棒状を呈する薬液流下体の上部に前記薬液を供給して、前記薬液を前記薬液流下体に沿って流下させ、前記空気は前記薬液流下体に吹き付けるようにして実施することを特徴とする除菌・消臭方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項に記載の除菌・消臭方法において、前記薬液を前記空気に接触させて得られた前記次亜塩素酸を含んだ空気を、空調機、加湿器または空気清浄機の送風口に供給して、前記次亜塩素酸を含んだ空気と前記送風口から送風される空気がブレンドされて送風されるようにすることを特徴とする除菌・消臭方法。
【請求項7】
外部から空気を取り込む吸入口と外部に空気を送風する送風口が設けられた所定の薬剤蒸散室と、前記薬剤蒸散室内に設けられている直列に接続された複数槽の薬液槽と、前記吸入口または前記送風口に設けられている送風機とから構成され、
前記吸入口と前記送風口は、それぞれ前記複数槽の薬液槽の最下流の槽と最上流の槽の近傍に設けられ、
前記送風機が駆動され、そして前記最上流の槽に所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含みpHが3.0〜7.0に調整された薬液が供給されると、前記薬液は前記複数槽の薬液槽を所定の滞留時間を経て順次下流側に流れ、前記吸入口から吸入された空気は、前記薬液の流れと反対の方向に流れて前記複数槽の薬液槽の液面と接触して、前記送風口から外部に送風されることを特徴とする除菌・消臭装置。
【請求項8】
外部から空気を取り込む吸入口と外部に空気を送風する送風口が設けられた所定の薬剤蒸散室と、前記薬剤蒸散室内の所定の高さに設けられ薬液を液滴にして落下させるノズルと、前記薬剤蒸散室内に設けられ前記液滴を受ける受液プレートと、前記吸入口または前記送風口に設けられている送風機とから構成され、
前記送風機が駆動され、そして所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含みpHが3.0〜7.0に調整された薬液が前記ノズルに供給されると、前記薬液は直径50μm以上の液滴になって前記吸入口から吸入された空気中を落下して、前記受液プレートに落下し、前記液滴と接触した前記空気が前記送風口から外部に送風されることを特徴とする除菌・消臭装置。
【請求項9】
請求項8に記載の除菌・消臭装置において、前記薬剤蒸散室内には前記ノズルの下流に所定の網が設けられ、前記液滴と接触した前記空気が前記網によってフィルタリングされ、前記空気中に含まれる前記液滴が除去された後に前記エリアに放出されるようになっていることを特徴とする除菌・消臭装置。
【請求項10】
外部から空気を取り込む吸入口と外部に空気を送風する送風口が設けられた所定の薬剤蒸散室と、前記薬剤蒸散室内に設けられ薬液を流下させる所定の形状の薬液流下体と、前記薬剤蒸散室内に設けられ前記薬液流下体を流下する薬液を受ける受液プレートと、前記吸入口または前記送風口に設けられている送風機とから構成され、
前記薬液流下体は、複数本の芯材と該芯材を覆う布またはスポンジとから垂直に立てられた複数本の棒状を呈するように形成され、
前記送風機が駆動され、そして所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸を含みpHが3.0〜7.0に調整された薬液が前記薬液流下体の上部に供給されると、前記薬液は前記薬液流下体に沿って流下して、前記吸入口から吸入された空気は、前記薬液流下体を流下する前記薬液と接触して、前記送風口から外部に送風されることを特徴とする除菌・消臭装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかの項に記載の除菌・消臭装置において、前記送風口は、空調機、加湿器または空気清浄機の送風口近傍に設けられていることを特徴とする除菌・消臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−50702(P2011−50702A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205176(P2009−205176)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【特許番号】特許第4588104号(P4588104)
【特許公報発行日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(503456430)イーエス・テクノロジー株式会社 (10)
【Fターム(参考)】