説明

除雪機

【課題】ロック機構の機能を確保しつつ、簡単な構成でクラッチのロック機構を構成することを可能とした技術を提供する。
【解決手段】走行部13と、除雪部11と、走行部13および除雪部11を駆動する駆動部12と、操向ハンドル32と、走行部13の入切を切り換える走行クラッチと、除雪部11の入切を切り換える除雪クラッチと、を具備し、走行クラッチの走行クラッチレバー35が「入」状態で、かつ、除雪クラッチの除雪クラッチレバー39が「入」状態であれば、除雪クラッチを「入」状態に保持するロック機構50を具備する除雪機1であって、ロック機構50が、走行クラッチ用板カム53と、除雪クラッチ用板カム54と、除雪クラッチ用板カム54を掛止するばね部材55により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレータが歩行しながら操縦する除雪機の技術に関し、詳しくは、除雪機の走行クラッチおよび除雪クラッチに適用されるロック機構の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オペレータが歩行しながら操縦する小型および中型の除雪機において、操向ハンドルの左右一方(通常は左方)の近傍に走行クラッチの入切を切り換える走行クラッチレバーを配設し、また他方(通常は右方)の操向ハンドル近傍に除雪クラッチの入切を切り換える除雪クラッチレバーを配設する構成とした除雪機が公知となっている。例えば、特許文献1にその技術が開示されている。
この除雪機においては、オペレータが左側の操向ハンドルを左手で握るのと同時に走行クラッチレバーを回動して握ることができ、かつ、オペレータが右側の操向ハンドルを右手で握るのと同時に除雪クラッチレバーを回動して握ることができるため、オペレータによる走行切換および除雪切換が容易に可能となり、良好な操縦性を実現している。
また、この除雪機においては、走行中には他のレバー等も操作する必要があることを考慮して、前記走行クラッチレバーと前記除雪クラッチレバーを同時に「入」状態としたときには、除雪クラッチを保持するようにしたロック機構を具備する構成とし、ロック機構作動後には、除雪クラッチレバーから手(通常は右手)を離しても除雪しながら継続走行することを可能として、その離した手で他のレバー操作ができるように構成している。また更に、もう一方の手(通常は左手)を走行クラッチレバーから離した場合には、ロック機構を解除して走行および除雪作業を共に停止させるようにして、オペレータの手から離れた除雪機が勝手に走行および除雪作業を継続することがないようにして、安全性にも配慮が成された構成としている。
【特許文献1】特開2000−144666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このように公知技術に示される除雪機は、ロック機構により優れた操縦性および安全性を実現しているが、該ロック機構は、多数のリンク機構等を要する複雑な構成となっており、また部品点数も多くなっている。そのため、ロック機構の組立作業は時間を要する困難な作業となり、コストが増加する要因ともなっていた。
そこで本発明では、このような現状を鑑み、従来の優れた機能を確保しつつ、簡単な構成でクラッチのロック機構を構成することを可能とした技術を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、雪上走行手段と、除雪手段と、前記雪上走行手段および前記除雪手段を駆動する駆動装置と、操向ハンドルと、前記雪上走行手段の入切を切り換える走行クラッチと、前記除雪手段の入切を切り換える除雪クラッチと、を具備し、前記走行クラッチのクラッチレバーが「入」状態で、かつ、前記除雪クラッチのクラッチレバーが「入」状態であれば、前記除雪クラッチを「入」状態に保持するロック機構を具備する除雪機であって、前記ロック機構が、走行クラッチ用板カムと、除雪クラッチ用板カムと、前記除雪クラッチ用板カムを掛止するばね部材により構成されること、を特徴としたものである。
【0006】
請求項2においては、前記ロック機構が、前記走行クラッチ用板カムによりロック解除手段が構成されて、かつ、前記除雪クラッチ用板カムによりロック保持手段が構成されること、を特徴としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記走行クラッチ用板カムと、前記除雪クラッチ用板カムが、同一軸心上に並列に配置されて、それぞれ独立して回動可能に構成されること、を特徴としたものである。
【0008】
請求項4においては、前記ばね部材が、鋼線を板ばね状に折り曲げ形成して構成されること、を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、簡単な機構でロック機構を構成することができ、部品点数を削減できて、コスト低減化も図れる。
【0011】
請求項2においては、簡単な機構でロック保持手段およびロック解除手段を構成することができる。また、ロック及び解除の状態が外側から容易に認識でき、調整やメンテナンス等が容易にできる。
【0012】
請求項3においては、走行クラッチ用板カムと除雪クラッチ用板カムをできるだけ近づけて配置することが可能となり、簡単でコンパクトな機構でロック機構を構成することができる。
【0013】
請求項4においては、簡単な機構でロック機構を構成することができる。また、ばね部材を安価に製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る除雪機の全体的な構成を示した斜視図、図2は同じく除雪機の除雪部を示した部分斜視図、図3は同じく除雪機の操向ハンドル部分を示した部分後面図である。図4は同じくロック機構部の詳細を示した部分後面図、図5は同じく除雪機の操向ハンドル部分を示した部分左側面図、図6は同じくロック機構部の作動状況を示した部分左側面図、図7は同じくロック機構部の作動状況を示した部分右側面図、図8は同じくロック機構部の作動状況を示した部分左側面図、図9は同じくロック機構部の作動状況を示した部分右側面図、図10は同じくロック機構部の作動状況を示した部分左側面図、図11は同じくロック機構部の作動状況を示した部分右側面図である。
【0015】
まず、本発明の一実施例における、除雪機1の全体構成について、図1または図2を用いて説明をする。
なお、図1に示す矢印Aの方向は、除雪機1の進行方向を示すものとし、この進行方向に向かって左右を決定するものとする。
図1に示す如く、除雪機1は、機体前部に配設される除雪部11と、該除雪部11の後方に配設される駆動部12と、該駆動部12の下方に配設されるクローラ式の走行部13と、駆動部12の後方であって機体後部に配設される運転操作部14等により構成されている。
【0016】
図1または図2に示す如く、除雪部11は、ブロアハウジング16の後方に設けられる接続ブラケット46を介して、機体フレーム15の後部に取付けられる。
また、除雪部11には、機体フレーム15の前部にブロアハウジング16が連設され、該ブロアハウジング16の前方にオーガハウジング18が連設されている。該ブロアハウジング16には図示しないブロアが内設されており、該ブロアはブロア軸41の前後中途部に固設されている。オーガハウジング18には掻込オーガ19が内設されており、該掻込オーガ19の回転軸たるオーガ軸42が該オーガハウジング18の左右方向となるように軸支されている。
【0017】
ブロアハウジング16の上面において、左右中心より一側に偏心して上方へパイプ状の吐出口16aが突出して形成され、該吐出口16aの上端に投雪シュータ21の基部が旋回座20を介して水平旋回自在に嵌合されている。投雪シュータ21は、旋回座20に図示せぬ保持機構を係合させて任意位置で保持できるようにし、かつ、前記旋回座20の外周に歯部を形成し、該歯部にギアを噛合して、旋回モータによりギアを回転させて、旋回座20とともに、投雪シュータ21を旋回して投雪方向を変更できるように構成されている。なお、本実施例では投雪シュータ21の旋回手段として旋回モータを適用するようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、前記投雪シュータ21の後面に、運転操作部14まで延出されるシュータハンドル等を設け、人手により行う構成としてもよい。
【0018】
上述のように構成される除雪部11において、掻込オーガ19によってオーガハウジング18の左右略中央方向へ掻き込まれた雪は、ブロアによって上方へ跳ね飛ばされ、投雪シュータ21によってその方向がガイドされて、任意の方向へ排出できるようにしている。投雪シュータ21の上端には、回動自在に軸支されるキャップ17が設けられており、前記排出される雪の投雪距離を調節可能としている。すなわち、投雪シュータ21とキャップ17との間には、引張バネ34が設けられて上方へ回動するように付勢し、また、リンクプレート27、ワイヤ30を介して運転操作部14に設けたシュート部操作レバー36と連結され、該シュート部操作レバー36を回動することにより前記引張バネ34に抗してキャップ17を回動して、雪の投雪距離が調整されることになる。なお、キャップ17の回動手段については、手動に限定されるものではなく、モータ等により回動して、シュート部操作レバー36をスイッチにより構成することも可能である。
【0019】
駆動部12には、機体フレーム15の内側に変速装置が内設されており、該機体フレーム15の上部にエンジン22が載置されている。エンジン22の動力は前端より前方に突出した出力軸より出力され、除雪部11および走行部13に伝達される。該出力軸には出力プーリとして、走行出力プーリおよび除雪出力プーリが固設されている。除雪出力プーリと、除雪部11の入力軸であるブロア軸41の後端側に固設される図示しない除雪入力プーリとの間に図示しないベルトが巻回されて、エンジン22の動力を除雪部11に伝達するようにしている。但し、動力の伝達手段はプーリとベルトに限定するものではなく、チェーンや歯車等を用いることも可能であり限定するものではない。このようにして、除雪部11に伝達された動力は、ブロア軸41の前端側に設けられるギアボックス2を介して、さらにオーガ軸42へと伝達され、ブロアおよび掻込オーガ19が回転駆動される。
【0020】
また、走行出力プーリと走行部13の変速装置の入力軸に固設される走行入力プーリとの間にベルトが巻回され、エンジン22の動力を走行部13に伝達するようにしている。走行部13に伝達される動力は、前記変速装置において変速された後、駆動軸23に伝達され、該駆動軸23に嵌装される駆動スプロケット25・25が回転駆動される。
【0021】
走行部13には、機体フレーム15の下部に駆動スプロケット25・25が嵌装される駆動軸23が回動可能に横架支承され、機体フレーム15の後部に従動スプロケット26・26が嵌装される後車軸24が回動可能に横架支承されている。そして、駆動スプロケット25と従動スプロケット26には、無端クローラベルト31が巻回されてクローラが構成され、この左右一対のクローラによって、駆動軸23の回動駆動により走行駆動される。
【0022】
運転操作部14には、機体フレーム15の両側後部より斜め後上方に操向ハンドル32・32が突出され、平面視にて両操向ハンドル32・32間に操作ボックス33が配設されている。前記操作ボックス33には、エンジン22から走行部13への動力伝達の入切操作を行うための走行クラッチレバー35や、エンジン22から除雪部11への動力伝達の入切操作を行うための除雪クラッチレバー39や、上述の投雪シュータ21を旋回操作したり、キャップ17を上下回動したりするためのシュート部操作レバー36や、エンジン22の回転数を操作するための回転数操作レバー37や、変速装置による変速操作を行うための走行変速レバー38等が配置されている。
【0023】
走行クラッチレバー35は、操向ハンドル32を握りながら、該走行クラッチレバー35を握れるように構成され、操向ハンドル32とともに握っている場合には作動し、放した場合には停止するデッドマンスイッチとされている。該走行クラッチレバー35と除雪クラッチレバー39とは、いずれも操向ハンドル32の近傍に配設されており、走行クラッチレバー35と除雪クラッチレバー39とは、いずれもクラッチ「切」操作位置に付勢されている。さらに、走行クラッチレバー35を「入」にした状態で除雪クラッチレバー39を「入」にすると、除雪クラッチ「入」の操作位置でロックすることができる。
以上が、本発明の一実施例における、除雪機1の全体構成についての説明である。
【0024】
次に、本発明の要部である、ロック機構の構成について、図3乃至図7を用いて説明をする。
図3または図4に示す如く、ロック機構50は、第一回動軸51、第二回動軸52、継合軸部材65、走行クラッチ用板カム53、除雪クラッチ用板カム54、ばね部材55および操向ハンドル32に固設した左右の支持金具56a・56b等により構成されている。
第一回動軸51は、鋼製の軸部材であり、一端(左端)を支持金具56aにより回動自在に軸支され、また他端(右側の端部51a)を継合軸部材65に形成された孔65aに回動自在に嵌装され、左右方向に横設されている。
また、第一回動軸51は、支持金具56aによる軸支部の近傍で走行クラッチレバー35の支持プレート部35aと相対回転不能に固設されており、走行クラッチレバー35の回動に伴って(つまり、オペレータが走行クラッチレバー35を握ったりまた手を離したりすることに伴って)、第一回動軸51が回動されるように構成している。
【0025】
第二回動軸52は、鋼製の軸部材であり、一端(右端)を支持金具56bにより回動自在に軸支され、また他端(左側の端部52a)を継合軸部材65に形成された孔65aに嵌装され、左右方向に横設されている。第二回動軸52の端部52aには、第二回動軸52の軸芯と直交するように孔52bが形成されており、該孔52bには固定部材59が貫装され、該固定部材59をナットで固定することにより継合軸部材65と第二回動軸52を相対回転不能に固設するようにしている。
そして、このように構成することにより、第一回動軸51は独立して回動可能となり、また第二回動軸52は継合軸部材65と一体的に回動可能となり、第一回動軸51と第二回動軸52は、軸心を略同一としつつ互いに独立して回動可能としている。
また、第二回動軸52は、支持金具56bによる軸支部の近傍で除雪クラッチレバー39の支持プレート部39aと相対回転不能に固設されており、除雪クラッチレバー39の回動に伴って(つまり、オペレータが除雪クラッチレバー39を握ったりまた手を離したりすることに伴って)、第二回動軸52が回動されるように構成している。
【0026】
図4または図5に示す如く、走行クラッチ用板カム53は、鋼板を略楕円状に加工した板状部材であり、板面が第一回動軸51と直交するように溶接等により第一回動軸51に固設されている。
また、図6に示す如く、走行クラッチ用板カム53は、走行クラッチレバー35を放した状態(走行クラッチ「切」)において、後面に前記ばね部材55と当接する滑らかな当接面53aを形成しており、該当接面53aは後端から略上方に半径が小さくなる直線状の排除面53cと、該排除面53cの上端から前上方に接線と平行な直線状の保持面53dが形成されている。こうして、当接面53aに排除面53cと保持面53dを設けて、当接面53a(排除面53cおよび保持面53d)と第一回動軸51の軸心との距離が、第一回動軸51の回動に伴って変化するカム機構を構成している。
【0027】
また、走行クラッチ用板カム53には、走行クラッチワイヤ57の一端(ワイヤエンド57a)および走行クラッチばね60の一端を掛止するための掛止部53bが、該走行クラッチ用板カム53の表面に対して垂直方向に突設されている。掛止部53bの先端部寄りには孔が穿設されており、該孔にピン62を貫装することにより、ワイヤエンド57aが外れないような構成としている。
そして、図5に示す如く、走行クラッチばね60の他端は、ロック機構50の前下方において、伸長状態で前部ステー64aに掛止されており、走行クラッチ用板カム53が、図5における反時計回りに回動する方向に常時付勢される構成としている。
また、走行クラッチワイヤ57の他端は図示しない走行クラッチと連結されており、走行クラッチ用板カム53が、走行クラッチばね60により付勢され図5における反時計回りに回動される場合には走行クラッチを「切」として、またオペレータが走行クラッチレバー35を握ることにより、図5における時計回りに一定角度以上回動される場合には走行クラッチを「入」とするように構成している。
【0028】
また、図4または図5に示す如く、除雪クラッチ用板カム54は、鋼板を略楕円状に加工し、一部に掛止部54cを形成した板状部材であり、板面が継合軸部材65と直交するように溶接等により継合軸部材65に固設されている。そして、除雪クラッチ用板カム54には、継合軸部材65の孔65aと連通するように孔54eが形成されており、前記第一回動軸51を孔65aに貫装できるように構成している。
【0029】
図7に示す如く、除雪クラッチ用板カム54は、除雪クラッチレバー39を放した状態(除雪クラッチ「切」)において、後面に前記ばね部材55と当接する滑らかな円弧状の当接面54aを形成しており、当接面54aの斜め上部位置には半径方向に切欠を設けて半径が小さくなる掛止部54cが形成されている。こうして、当接面54aと第二回動軸52の軸心との距離が、第二回動軸52の回動に伴って変化するカム機構を構成している。
なお、前記掛止部54c及び前記保持面53dは走行クラッチレバー35及び除雪クラッチレバー39を最大握った状態において、後述するばね部材55の係合部55bが位置する部分に設けられている。
つまり、図6または図7に示す如く、排除面53cは、走行クラッチレバー35を放した状態でばね部材55の係合部55bと当接する位置から除雪クラッチレバー39を放した状態で掛止部54cに至る直前位置まで直線状に形成されている。
【0030】
また、除雪クラッチ用板カム54には、除雪クラッチワイヤ58の一端(ワイヤエンド58a)および除雪クラッチばね61の一端を掛止するための掛止部54bが、該除雪クラッチ用板カム54の表面に対して垂直方向に突設されている。掛止部54bの先端部寄りには孔が穿設されており、該孔にピン63を貫装することにより、ワイヤエンド58aが外れないような構成としている。
そして、図5に示す如く、除雪クラッチばね61の他端は、ロック機構50の前下方において、伸長状態で前部ステー64aに掛止されており、除雪クラッチ用板カム54が、図5における反時計回りに回動する方向に常時付勢される構成としている。
また、除雪クラッチワイヤ58の他端は図示しない除雪クラッチと連結されており、除雪クラッチ用板カム54が、除雪クラッチばね61により付勢され図5における反時計回りに回動される場合には除雪クラッチを「切」として、またオペレータが除雪クラッチレバー39を握ることにより図5における時計回りに一定角度以上回動される場合には除雪クラッチを「入」とするように構成している。
【0031】
図3に示す如く、ばね部材55は、鋼製の線材を略コの字型に成型した部材であり、線材の両端にはU字状に折り曲げられたボルト固定用の固定部55a・55aが形成され、左右中央の上端部における水平部分を係合部55bとしている。
そして、図3に示す如く、設置状態では、第一回動軸51及び第二回動軸52の下方、かつ、平行にその両側を操向ハンドル32に固設した補強プレート66に前記固定部55a・55aをボルト固定することにより、後面視略台形状となるような構成としている。
【0032】
さらに、図5に示す如く、ばね部材55は、左側面視において略くの字形状となるように構成されて、上端が前方(第一回動軸51及び第二回動軸52の軸心方向)へ回動するように付勢している。
つまり、図6に示す如く、ばね部材55は組み付け時の無変形状態においては、図6中に示すA位置にあり、各板カム53・54とともに組み上げられた状態では図6における時計周りの方向に傾倒された状態となっている。このとき、ばね部材55には元のA位置に戻ろうとする反時計周り方向への復元力が生じるため、ばね部材55は常に各板カム53・54と当接した状態を維持するようになっている。
このように構成することにより、ばね部材55の係合部55b(台形上底部)に押圧力が作用した場合には、ばね部材55の略ハの字を形成する左右の辺部が略均等に弾性変形するため、ばね部材55に対する左右方向以外からの押圧力には、板ばねとして機能するような構成としている。つまり、線材を用いた簡単な構成で、板ばねを構成している。
以上が、ロック機構の構成についての説明である。
【0033】
次に、ロック機構の作動状況について、図6乃至図11を用いて説明をする。
図6または図7に示す如く、走行クラッチレバー35および除雪クラッチレバー39が両方とも握られていない状態では、各ばね60・61の付勢力によって、各板カム53・54が最も前傾している状態に回動されており、走行クラッチおよび除雪クラッチがともに「切」状態となるため、除雪機1は走行停止状態で、かつ除雪部11も作動していない状態となっている。
このとき、ばね部材55は、各板カム53・54の当接面53a・54aと当接している状態であって、各板カム53・54の回動を制限することがないように構成している。該当接面53a・54aは同一半径に形成されている。
【0034】
次に、図8または図9に示す如く、前述の両クラッチ「切」状態(図6、7の状態)から、走行クラッチレバー35および除雪クラッチレバー39が両方とも握られた両クラッチ「入」状態となると、各ばね60・61の付勢力に抗して、第一回動軸51および第二回動軸52が回動し、図8における時計回りに走行クラッチ用板カム53および除雪クラッチ用板カム54が回動される。
このとき、ばね部材55は、当接面53a・54aと各軸51・52の軸心との距離に応じて傾きを変化させながら各板カム53・54に当接している。そして、走行クラッチ用板カム53の当接面53aの区間を過ぎて排除面53cの区間に入ると、除雪クラッチ用板カム54の当接面54aに比して軸心と排除面53cとの距離が小さくなるように構成されているため、ばね部材55が、一連の回動動作の途中からは、除雪クラッチ用板カム54の当接面54aとのみ当接するようになる。
【0035】
さらに、各板カム53・54が回動され、ばね部材55との当接部が当接面54aの終端部54dを乗り越えると、ばね部材55の係合部55bが掛止部54cに嵌り込むようになり、除雪クラッチ用板カム54は、ばね部材55により掛止されて、図8における反時計回り方向には回動不能となる。
このとき、オペレータが除雪クラッチレバー39から手を離すと、除雪クラッチ用板カム54には、除雪クラッチばね61による反時計回り方向に回動される付勢力が作用するが、ばね部材55は接線方向に延設されており、かつ、掛止部54cの切欠の当接部は半径方向に設けられているために除雪クラッチ用板カム54は掛止されて、回動できずに除雪クラッチの「入」状態を維持するように構成している。
尚、ばね部材55の係合部55bには、動きを良くするためや、もしくは係合部55bの摩耗を防止するために、カラーやベアリング等の回転体を設けてもよい。
【0036】
即ち、両レバー35・39を同時に握って除雪機1の走行および除雪作業を開始した後には、走行クラッチレバー35を継続して握っていれば除雪クラッチレバー39から手を離しても除雪クラッチの「入」状態が維持されるため、除雪作業を継続しつつ除雪クラッチから離した手で他のレバー操作を行うことができるように構成している。
【0037】
次に、図10または図11に示す如く、前述の両クラッチ「入」状態(図8、9の状態)から、走行クラッチレバー35からも手を離すと、走行クラッチばね60の付勢力により図10における反時計回りに走行クラッチ用板カム53だけが独立して回動される。
このとき、ばね部材55の係合部55bは、走行クラッチ用板カム53の保持面53dから排除面53cに当接し、該排除面53cにおいて半径が徐々に増大することから係合部55bは外周側へ押圧されて、図10における時計周りの方向に傾倒し、掛止部54cから徐々に押し出されていく。そして、ばね部材55が掛止部54cから完全に押し出されると、除雪クラッチ用板カム54は、ばね部材55による掛止力を失うため、除雪クラッチばね61の付勢力によって図10における反時計周り方向に回動される。よって、走行クラッチが「切」となると略同時に除雪クラッチも「切」状態となる。
【0038】
即ち、ロック機構50により、除雪クラッチレバー39から手を離した状態で、除雪クラッチの「入」状態を維持(つまり、除雪作業を維持する)しているときに、走行クラッチレバー35からも手を離したときには、走行を停止するとともに、ロック機構50が解除されて、除雪クラッチを「切」状態とする(つまり、除雪作業を停止する)ように構成して、デッドマンスイッチとして機能するようにしている。
これにより、簡単な構成のロック機構50により、除雪機1の走行時の作業性を確保しつつ、デッドマンスイッチの機能を実現して安全性を確保することができる。
以上が、ロック機構の作動状況についての説明である。
【0039】
以上の説明に示す如く、走行部13と、除雪部11と、走行部13および除雪部11を駆動する駆動部12と、操向ハンドル32と、走行部13の入切を切り換える走行クラッチと、除雪部11の入切を切り換える除雪クラッチと、を具備し、走行クラッチの走行クラッチレバー35が「入」状態で、かつ、除雪クラッチの除雪クラッチレバー39が「入」状態であれば、除雪クラッチを「入」状態に保持するロック機構50を具備する除雪機1であって、ロック機構50が、走行クラッチ用板カム53と、除雪クラッチ用板カム54と、除雪クラッチ用板カム54を掛止するばね部材55により構成されている。
これにより、簡単な機構でロック機構を構成することができるのである。また、部品点数を削減できて、コスト低減化も図れるのである。
【0040】
また、ロック機構50が、走行クラッチ用板カム53によりロック解除手段(排除面53c)が構成されて、かつ、除雪クラッチ用板カム54によりロック保持手段(掛止部54c)が構成されるようにしている。
これにより、簡単な機構でロック保持手段およびロック解除手段を構成することができるのである。また、ロック及び解除の状態が外側から容易に認識でき、調整やメンテナンス等が容易にできるのである。
【0041】
また、走行クラッチ用板カム53と、除雪クラッチ用板カム54が、第一回動軸51および第二回動軸52が形成する同一軸心上に並列に配置されて、それぞれ独立して回動可能に構成している。
これにより、走行クラッチ用板カム53と除雪クラッチ用板カム54をできるだけ近づけて配置することが可能となり、簡単でコンパクトな機構でロック機構を構成することができるのである。
【0042】
また、ばね部材55が、鋼線を板ばね状に折り曲げ形成した構成としている。
これにより、簡単な機構でロック機構を構成することができるのである。また、ばね部材を安価に製作することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例に係る除雪機の全体的な構成を示した斜視図。
【図2】同じく除雪機の除雪部を示した部分斜視図。
【図3】同じく除雪機の操向ハンドル部分を示した部分後面図。
【図4】同じくロック機構部の詳細を示した部分後面図。
【図5】同じく除雪機の操向ハンドル部分を示した部分左側面図。
【図6】同じくロック機構部の作動状況を示した部分左側面図。
【図7】同じくロック機構部の作動状況を示した部分右側面図。
【図8】同じくロック機構部の作動状況を示した部分左側面図。
【図9】同じくロック機構部の作動状況を示した部分右側面図。
【図10】同じくロック機構部の作動状況を示した部分左側面図。
【図11】同じくロック機構部の作動状況を示した部分右側面図。
【符号の説明】
【0044】
1 除雪機
11 除雪部
12 駆動部
13 走行部
32 操向ハンドル
35 走行クラッチレバー
39 除雪クラッチレバー
50 ロック機構
53 走行クラッチ用板カム
54 除雪クラッチ用板カム
55 ばね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雪上走行手段と、
除雪手段と、
前記雪上走行手段および前記除雪手段を駆動する駆動装置と、
操向ハンドルと、
前記雪上走行手段の入切を切り換える走行クラッチと、
前記除雪手段の入切を切り換える除雪クラッチと、
を具備し、
前記走行クラッチのクラッチレバーが「入」状態で、かつ、
前記除雪クラッチのクラッチレバーが「入」状態であれば、
前記除雪クラッチを「入」状態に保持するロック機構を具備する除雪機であって、
前記ロック機構が、
走行クラッチ用板カムと、
除雪クラッチ用板カムと、
前記除雪クラッチ用板カムを掛止するばね部材により構成されること、
を特徴とする除雪機。
【請求項2】
前記ロック機構が、
前記走行クラッチ用板カムによりロック解除手段が構成されて、かつ、
前記除雪クラッチ用板カムによりロック保持手段が構成されること、
を特徴とする請求項1記載の除雪機。
【請求項3】
前記走行クラッチ用板カムと、
前記除雪クラッチ用板カムが、
同一軸心上に並列に配置されて、それぞれ独立して回動可能に構成されること、
を特徴とする請求項1記載の除雪機。
【請求項4】
前記ばね部材が、
鋼線を板ばね状に折り曲げ形成して構成されること、
を特徴とする請求項1記載の除雪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−332625(P2007−332625A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164656(P2006−164656)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】