説明

除電搬送装置および搬送時の除電方法

【課題】 前工程を経た帯電体を効果的に除電して搬送する。
【解決手段】 帯電したガラス基板Mを保持して搬送する搬送ロボット2と、ガラス基板Mに帯電した電気を空気イオンによって中和して除電する軟X線照射器3とを備える。ガラス基板Mを保持する搬送ロボット2のアーム24に、接地電位に設定された金網板4を、ガラス基板Mに所定の距離を隔てて対向するように配設し、少なくともガラス基板Mと金網板4との間に空気イオンが形成されるように軟X線照射器3を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯電した製品などを搬送する際に除電を行う除電搬送装置および搬送時の除電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルやプラズマディスプレイ、半導体基板などの電子デバイスは、クリーンルーム下で製造されるが、電子デバイスに静電気が帯電すると、電子デバイスを構成する絶縁体が電気的に破壊されたり、電子デバイスを構成する回路に微粒子が付着して短絡したりする静電気障害のリスクが生じる。このため、電子デバイスの製造工程において、軟X線式除電器や放電式イオナイザなどの除電器を用いて、電子デバイスに帯電した静電気を除電する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、製造工程を経た電子デバイスをカセットに収納したり、次の工程に移送したりする搬送工程においても、電子デバイスに帯電した静電気の除電が行われている。例えば、図10、11に示すように、製造設備100の出口側に移載室110が設けられ、この移載室110の天井側には、清浄空気を流出するファン120が配設されている。さらに、ファン120による気流の上流側に放電式イオナイザ130が配設され、下流側には搬送ロボット140が配設されている。そして、放電式イオナイザ130によって空気イオンを発生させた状態で、搬送ロボット140によって製造設備100側からガラス基板(電子デバイス)Mを保持し、ガラス基板Mをカセット150側に移送してカセット150に収納する。この移送中において、ガラス基板Mに帯電した静電気が空気イオンによって中和され、除電されるものである。
【特許文献1】特開2006−221998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガラス基板Mの帯電面近傍に空気イオンが存在している厚みである除電空間厚さがある程度厚い場合(例えば10cm以上の場合)、除電器による除電効果(除電速度)は、帯電面近傍のイオン濃度と電界強度に大きく依存する。すなわち、イオン濃度が高く、電界強度が強いほど高い除電効果が得られる。これに対して、上記のような搬送工程における除電方法では、ガラス基板Mの周辺に存在する接地部材は、接地導体で構成された移載室110の天井や壁およびカセット150である。そして、移載室110の天井とガラス基板Mとの距離D1が大きい(例えば2m以上)ため、帯電面近傍の電界強度は弱く、高い除電効果が得られない。また、ガラス基板Mを製造設備100側から保持する際や、ガラス基板Mをカセット150に収納する際には、ガラス基板Mと壁との距離D2やガラス基板Mとカセット150との距離D3が狭まるが、非常に短時間であるためガラス基板Mを十分に除電することが困難である。さらに、ガラス基板Mの帯電面(水平面)に対して、移載室110の壁面は垂直に位置し、カセット150は横方向(同一水平面上)に位置し、対向していない。このため、ガラス基板Mを移載室110の壁やカセット150に長時間接近させたとしても、ガラス基板Mの帯電面の全面にわたって均一かつ強い電界を形成することができず、帯電面の全面を効果的に除電することは困難である。
【0005】
図12は、上記のような除電方法で除電した場合(変化曲線L1)と、除電を行わない場合(変化曲線L2)とにおけるガラス基板Mの電位の変化の一例を表したものである。図中符号P1は、製造設備100においてガラス基板Mがリフトアップされる直前の時点を示し、符号P2はリフトアップされた時点を示し、符号P3は搬送中を示し、符号P4はガラス基板Mをカセット150に収納した時点(搬送ロボット140がガラス基板Mを離した時点)を示す。この図に示すように、上記のような除電方法では、ガラス基板Mの除電に長時間を要するとともに、完全には除電することができず、効果的(効率的)な除電ができないことがわかる。この結果、除電不足のままガラス基板Mを搬出などすると、静電気障害のリスクが高くなる。一方、十分な除電を行うために、除電器を多く設置すると設備コストの増大を招き、除電時間を長くすると生産性の低下を招くことになる。
【0006】
そこでこの発明は、帯電体を効果的に除電して搬送することが可能な除電搬送装置および搬送時の除電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、帯電した帯電体を保持して搬送する搬送ロボットと、前記帯電体に帯電した電気を空気イオンによって中和して除電する除電器とを備える除電搬送装置であって、前記帯電体を保持する前記搬送ロボットの保持部に、所定の電位に制御された導電部材が、前記帯電体を保持した際に所定の距離を隔てて前記帯電体に対向するように配設され、少なくとも前記帯電体と前記導電部材との間に前記空気イオンが位置するように(形成、供給されるように)前記除電器が配設されていることを特徴とする。
【0008】
搬送ロボットの保持部で帯電体を保持すると、帯電体に所定の距離を隔てて導電部材が対向し、除電器によって帯電体と導電部材との間に空気イオンが位置される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の除電搬送装置において、前記導電部材と前記帯電体との距離が1〜20cmに設定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の除電搬送装置において、前記導電部材の電位が接地電位に設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の除電搬送装置において、前記導電部材が、対向する前記帯電体の面と全面において均等に対向するように形成、配設されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の除電搬送装置において、前記搬送ロボットの保持部に追従するように前記除電器が配設されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、帯電した帯電体を搬送ロボットで搬送する際に、前記帯電体を除電する搬送時の除電方法であって、前記帯電体を保持する前記搬送ロボットの保持部に、所定の電位に制御された導電部材を、前記帯電体を保持した際に所定の距離を隔てて前記帯電体に対向するように配設し、少なくとも前記帯電体と前記導電部材との間に前記空気イオンを位置させて除電することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および6に記載の発明によれば、搬送ロボットの保持部で帯電体が保持された状態では、所定の距離を隔てて帯電体と導電部材とが対向し、その間に空気イオンが位置される。このため、帯電体が搬送ロボットで保持された状態では、強くかつ安定した電界が帯電体と導電部材と間に(帯電体の周辺に)形成され、このような良好な電界下において空気イオンによる除電が効果的かつ安定的に行われる。この結果、帯電体を効果的に除電して搬送することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、導電部材と帯電体との距離が1〜20cmに設定されているため、より強くかつ安定した電界を形成して帯電体を効果的に除電することが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、導電部材の電位が接地電位に設定されているため、例えば、接地された搬送ロボットを介して導電部材を接地することで、導電部材の電位を容易かつ安定的に制御することが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、導電部材が対向する帯電体の全面において均等に対向するように形成、配設されているため、帯電体の全面周辺において均等かつ安定した電界が形成され、帯電体の全面を均等かつ効果的に除電することが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、搬送ロボットの保持部に追従するように除電器が配設されているため、帯電体と導電部材との間に空気イオンを常に良好かつ安定して位置させて、帯電体を効果的に除電することが可能となる。さらに、帯電体の搬送中に空気イオンを位置させて(形成、供給して)除電することで、搬送と除電とを同時に行うことが可能となる。つまり、時間的に効率的な搬送、除電が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る除電搬送装置1を示す概略構成図である。この除電搬送装置1は、製造設備100で製造されたフラットパネルディプレイ基板であるガラス基板(帯電体)Mを除電しながらカセット150側に移送(搬送)してカセット150に収納する装置であり、主として、搬送ロボット2と軟X線照射器(除電器)3とを備えている。ここで、上記の図10、11で説明した構成と同等の構成については、同一の符号を付して説明する。また、移載室110は、温度調整されたクリーンルーム内に設けられ、ファンフィルタユニット120からの清浄空気が垂直流で供給され、不図示のリターンチャンバまたはリターンダクトを経て循環されるようになっている。
【0021】
搬送ロボット2は、帯電したガラス基板Mを保持して搬送するロボットであり、移載室110内の製造設備100の出口側とカセット150との間に設置され、この実施の形態では、床面に接地、固定されている。この搬送ロボット2は、最下位に位置する基部21と、基部21の上位に位置する第1のリンク22と、第1のリンク22の上位に位置する第2のリンク23と、最上位に位置する2つのアーム(保持部)24とを備えている。第1のリンク22は、基部21に対して回動(垂直軸を中心とする回転)、揺動(水平軸を中心とする揺動)自在で、第2のリンク23は、第1のリンク22に対して揺動自在となっている。2つのアーム24は、図2、3に示すように、平板棒状で平行に配設され、第2のリンク23に対して揺動自在で、2つのアーム24で形成される面、つまり2つのアーム24を包含する平面が常に水平に位置するように制御されている。これにより、製造設備100の出口側でリフトアップされたガラス基板Mをアーム24で保持し、ガラス基板Mの板面を水平に維持した状態でカセット150側に移送して、カセット150に収納できるようになっている。
【0022】
アーム24には、導電性の金網板(導電部材)4が配設されている。この金網板4は、金網状の平板で、2つのアーム24で形成される面と平行に、2つのアーム24を貫通するように配設されている。また、金網板4の板面の大きさ(面積)は、ガラス基板Mと同寸法に設定され、アーム24でガラス基板Mを保持した状態で、対向するガラス基板Mの板面全面と対向するように配設されている。さらに、各アーム24の上面側には、上方に突出した支持凸部24aが長手方向に沿って2つ形成され、ガラス基板Mを保持(載置)した状態でガラス基板Mと金網板4との距離(隙間)Hが3cmになるように、支持凸部24aの高さが設定されている。これにより、ガラス基板Mを保持した状態で、金網板4がガラス基板Mの板面全面と対向し、かつその間隔が全面において均一となる。つまり、金網板4がガラス基板Mの板面全面において均等に対向する。
【0023】
ここで、ガラス基板Mと金網板4との距離Hが3cmに設定されているが、これは除電効果およびガラス基板Mの収納性を考慮したものである。すなわち、カセット150内のガラス基板Mの収納間隔として許容される距離であって、後述する軟X線照射器3による空気イオンがガラス基板Mと金網板4との隙間全体に形成される距離として、1〜4cmが適切と考えられ、この実施の形態では3cmに設定している。このように、この実施の形態では、距離Hが3cmに設定されているが、距離Hを1〜20cmとすると良好な除電効果が得られることが確認されており、この範囲において、ガラス基板Mの大きさや収納間隔などを考慮して距離Hを設定すればよい。
【0024】
また、金網板4の電位は接地電位に設定(制御)されている。つまり、金網板4は搬送ロボット2を介して接地されている。このように、この実施の形態では、金網板4の電位を接地電位としているが、接地電位以外の電位、例えばガラス基板Mの電位と同等程度の電位に制御するようにしてもよい。つまり、後述するように、ガラス基板Mの周辺に強く安定した電界が形成されるように金網板4の電位が制御されていればよい。
【0025】
軟X線照射器3は、ガラス基板Mに帯電した静電気を空気イオンによって中和して除電する除電器である。すなわち、この実施の形態では、波長が0.5〜2Åの軟エックス線を空気中に照射することで、空気中の分子を分解して、空気イオンを発生させる。そして、ガラス基板Mに帯電した静電気の極性と反対極性の空気イオンが静電気と結びついて、静電気を中和、除電するものである。この軟X線照射器3は、搬送ロボット2の第2のリンク23の上端部に配設され、搬送ロボット2のアーム24に追従するようになっている。つまり、リンク22、23の回動、揺動によるアーム24の移動に伴って、軟X線照射器3もリンク22、23に従って移動し、アーム24と軟X線照射器3との相対位置関係が常に一定となる。
【0026】
さらに、アーム24で保持されたガラス基板Mの上面および下面の全面周辺に軟X線が照射されるように、軟X線照射器3が配設されている。つまり、ガラス基板Mの上面側およびガラス基板Mと金網板4との間に空気イオンが形成される(位置する)ように軟X線照射器3が配設されている。このように軟X線照射器3が配設されていることによって、アーム24の移動中、つまりガラス基板Mの搬送中において常に、ガラス基板Mの上下面周辺に空気イオンが良好かつ安定して形成されるようになっている。ここで、軟X線照射器3の照射中心軸がガラス基板Mの下面と金網板4との間に位置するように、軟X線照射器3を配設するのが望ましい。これにより、最も除電効果が高いガラス基板Mと金網板4との間の全空間にわたって、より均等に空気イオンを形成することができるからである。
【0027】
次に、このような構成の除電搬送装置1の動作および除電搬送装置1による搬送時の除電方法について説明する。ここで、ガラス基板Mを保持する前から軟X線照射器3を稼働して軟X線を照射し続けた場合(ケース1)と、ガラス基板Mを保持した直後に軟X線照射器3を稼働して軟X線を照射し続けた場合(ケース2)とについて説明する。また、ガラス基板Mは、製造設備100内の製造工程(前工程)で処理され、搬送ローラ101によって製造設備100の出口側に搬送され、リフトピン102によってリフトアップされるものとする。
【0028】
ケース1では、まず、軟X線照射器3が稼働している状態で、リフトアップされたガラス基板Mを搬送ロボット2のアーム24で保持する。次に、リンク22、23が駆動して、ガラス基板Mの板面を水平に維持した状態でガラス基板Mをカセット150側に移送する。続いて、ガラス基板Mをカセット150に収納して、アーム24をガラス基板Mから離脱する。一方、この移送中において、軟X線照射器3で形成された空気イオンによって、ガラス基板Mに帯電した静電気が中和され、除電される。
【0029】
ケース2では、まず、リフトアップされたガラス基板Mを搬送ロボット2のアーム24で保持し、その直後、軟X線照射器3を稼働する。その後は、ケース1と同様に、ガラス基板Mをカセット150側に移送してカセット150に収納する。そして、軟X線照射器3の稼働後において、軟X線照射器3によってガラス基板Mが除電される。
【0030】
以上のように、この除電搬送装置1および除電方法によれば、アーム24でガラス基板Mを保持した状態では、接地電位に設定された金網板4とガラス基板Mとが対向し、その間に空気イオンが形成される。このため、ガラス基板Mと金網板4との間に(ガラス基板Mの周辺に)強くかつ安定した電界が形成され、このような良好な電界下において空気イオンによる除電が効果的かつ安定的に行われる。しかも、金網板4がガラス基板Mの板面全面において均等に対向するため、ガラス基板Mの全面周辺において均等かつ安定した電界が形成され、ガラス基板Mの全面を均等かつ効果的に除電することが可能となる。
【0031】
さらに、上記のように、ガラス基板Mの搬送中において常に、ガラス基板Mの上下面周辺に空気イオンが良好かつ安定して形成されるため、ガラス基板Mを常に効果的に除電することが可能となる。また、上記のようにして搬送中に除電を行うことで、搬送と除電とを同時に行って、時間的に効率的な搬送、除電が可能となる。そして、これらの結果、製造工程を経たガラス基板Mを効果的、効率的に除電して搬送することが可能となる。
【0032】
図4は、この除電搬送装置1で除電した場合のガラス基板Mの電位の変化の一例を表したものであり、図中曲線L3はケース1の場合を示し、曲線L4はケース2の場合を示し、曲線L2は除電を行わない場合を示している。また、符号P1は、ガラス基板Mがリフトアップされる直前の時点を示し、符号P2はリフトアップされた時点を示し、符号P3は搬送中を示し、符号P4はガラス基板Mをカセット150に収納した時点(アーム24がガラス基板Mから離脱した時点)を示す。
【0033】
この図に示すように、ケース1および2のいずれの場合も、従来の除電方法(図12の曲線L1)に比べて、ガラス基板Mが著しく効果的に除電されていることが認められる。すなわち、ケース1の場合(曲線L3)には、ガラス基板Mの最高電位が0.2〜0.3kV程度であり、保持から約2秒で完全に除電されている。また、ケース2の場合(曲線L4)には、ガラス基板Mの最高電位が1kV程度であり、保持から約3秒で完全に除電されている。また、アーム24がガラス基板Mから離脱するP4時おいて、アーム24とガラス基板Mの接触部(ハンドパット)との間で新たな帯電が生じるが、従来の除電方法では、この帯電を除電することができなかった。これに対し、ケース1および2ともに、このような帯電も完全に除電されていることが確認された。
【0034】
(実施の形態2)
図5は、この実施の形態に係る除電搬送装置11を示す概略構成図である。この実施の形態では、軟X線照射器3の配設位置が実施の形態1と異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付して説明する。
【0035】
軟X線照射器3は、製造設備100の出口側と搬送ロボット2との間に設置、固定されている。すなわち、製造設備100の出口側と搬送ロボット2との間に、垂直に延びる設置ポール5が設置され、この設置ポール5の上端部に、照射口が上方を向くように軟X線照射器3が取り付けられている。また、搬送ロボット2のアーム24でガラス基板Mを移載室110内に搬入(移送)した状態で、図6に示すように、軟X線照射器3からの軟X線がガラス基板Mと金網板4の全面周辺に照射されるように、軟X線照射器3の設置高さおよび位置が設定されている。このような軟X線照射器3の設置によって、軟X線がガラス基板Mの板面に対して下方から垂直に照射され、金網板4の網目を介して、ガラス基板Mと金網板4との間に軟X線が照射されて、空気イオンが形成されるようになっている。
【0036】
次に、このような構成の除電搬送装置11の動作および除電搬送装置11による搬送時の除電方法について説明する。まず、軟X線照射器3が稼働している状態で、搬送ロボット2のアーム24でガラス基板Mを保持して、ガラス基板Mを軟X線照射器3の直上まで移送する。そして、この位置状態を一定時間維持することでガラス基板Mを除電し、その後、ガラス基板Mをカセット150側に移送して、カセット150に収納する。
【0037】
この除電搬送装置11および除電方法によれば、アーム24でガラス基板Mを保持した状態では、金網板4とガラス基板Mとが対向しているため、実施の形態1と同様に、ガラス基板Mの全面を均等かつ効果的に除電することが可能となる。また、軟X線をガラス基板M(金網板4)の板面に対して垂直に照射するため、ガラス基板Mの全面周辺にわたってより均等に軟X線が照射されて、より均等に空気イオンが形成される。この結果、ガラス基板Mの板面積が大きい場合であっても、全面にわたって均等かつ効果的に除電することが可能となる。
【0038】
図7は、この除電搬送装置11で除電した場合のガラス基板Mの電位の変化曲線L5の一例を表したものである。この図に示すように、ガラス基板Mが軟X線照射器3の直上に位置するまでは除電が行われないため、ガラス基板Mの電位が高いが、軟X線照射器3の直上に位置した直後から電位が急激に下がり、短時間で除電されていることが認められる。
【0039】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、実施の形態1では、ガラス基板Mの上面側およびガラス基板Mと金網板4との間に軟X線を照射して空気イオンを形成しているが、他の空間で形成した空気イオンをガラス基板Mの上面側およびガラス基板Mと金網板4との間に供給するようにしてもよい。さらに、上記の実施の形態では、除電器として軟X線照射器3を使用しているが、コロナ放電式のイオナイザなどその他の除電器であってもよい。
【0040】
また、搬送ロボット2のアーム24をスライド式にしてもよい。すなわち、図8、9に示すように、アーム24を第1のアーム241と第2のアーム242とから構成し、第1のアーム241を第2のリンク23に配設し、第2のアーム242を第1のアーム241に対してスライド自在に配設する。また、金網板4は第1のアーム241に配設する。そして、ガラス基板Mを保持してカセット150側に移送する間は、第2のアーム242を第1のアーム241に重ねた状態とする。一方、ガラス基板Mをカセット150に収納する際には、第2のアーム242を前方にスライドさせて、第2のアーム242とガラス基板Mのみをカセット150内に位置させる。これにより、ガラス基板Mの全面周辺にわたってより均等に軟X線が照射されるように、ガラス基板Mと金網板4との距離Hを広く確保しても、第1のアーム241はカセット150内に位置しないため、ガラス基板Mの収納間隔を許容範囲に抑えることが可能となる。つまり、高い除電効果を確保した上で、ガラス基板Mの収納間隔を狭くすることが可能となる。
【0041】
さらに、搬送ロボット2のアーム24にガラス基板Mを載置することでガラス基板Mを保持しているが、吸引などによってガラス基板Mを保持し、アーム24の下方にガラス基板Mが位置するようにしてもよい。この際、実施の形態2において、軟X線照射器3をアーム24の上方に設置して、ファンフィルタユニット120による気流に従って軟X線がガラス基板Mに向かうようにしてもよい。また、搬送ロボット2は走行可能なものであってもよく、ガラス基板M以外の電子デバイス(帯電体)、例えば半導体基板などの除電、搬送にも適用できることは勿論である。さらに、導電部材は、金網板4に限らず、帯電体の形状や除電器の種類などに応じて、棒体で構成されたものや、平板に複数のパンチ孔が形成されたもの、あるいは平板状や凹凸を有する変形板状のものなどであってもよい。なお、リフトピン102と金網板4とが干渉する場合には、製造設備100側でガラス基板Mの端縁を保持してリフトアップしたり、干渉しないように金網板4を分割してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、この発明に係る除電搬送装置および搬送時の除電方法は、帯電体を効果的に除電して搬送できる装置および方法として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施の形態1に係る除電搬送装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の除電搬送装置の搬送ロボットのアーム周辺を示す拡大平面図である。
【図3】図2のY−Y断面図である。
【図4】図1の除電搬送装置で除電した場合のガラス基板の電位の変化の一例を表した図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る除電搬送装置を示す概略構成図である。
【図6】図5のZ−Z方向から見た概略平面図である。
【図7】図5の除電搬送装置で除電した場合のガラス基板の電位の変化の一例を表した図である。
【図8】この発明の実施の形態における搬送ロボットのアームの変形例を示す図である。
【図9】図8のアームの第2のアームが前方にスライドした状態を示す図である。
【図10】従来の搬送時の除電方法を示す概略構成図である。
【図11】図10のX−X方向から見た概略平面図である。
【図12】図10の除電方法で除電した場合のガラス基板の電位の変化の一例を表した図である。
【符号の説明】
【0044】
1、11 除電搬送装置
2 搬送ロボット
24 アーム(保持部)
3 軟X線照射器(除電器)
4 金網板(導電部材)
5 設置ポール
100 製造設備
110 移載室
120 ファンフィルタユニット
150 カセット
M ガラス基板(帯電体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した帯電体を保持して搬送する搬送ロボットと、前記帯電体に帯電した電気を空気イオンによって中和して除電する除電器とを備える除電搬送装置であって、
前記帯電体を保持する前記搬送ロボットの保持部に、所定の電位に制御された導電部材が、前記帯電体を保持した際に所定の距離を隔てて前記帯電体に対向するように配設され、
少なくとも前記帯電体と前記導電部材との間に前記空気イオンが位置するように前記除電器が配設されていることを特徴とする除電搬送装置。
【請求項2】
前記導電部材と前記帯電体との距離が1〜20cmに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の除電搬送装置。
【請求項3】
前記導電部材の電位が接地電位に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の除電搬送装置。
【請求項4】
前記導電部材が、対向する前記帯電体の面と全面において均等に対向するように形成、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の除電搬送装置。
【請求項5】
前記搬送ロボットの保持部に追従するように前記除電器が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の除電搬送装置。
【請求項6】
帯電した帯電体を搬送ロボットで搬送する際に、前記帯電体を除電する搬送時の除電方法であって、
前記帯電体を保持する前記搬送ロボットの保持部に、所定の電位に制御された導電部材を、前記帯電体を保持した際に所定の距離を隔てて前記帯電体に対向するように配設し、
少なくとも前記帯電体と前記導電部材との間に前記空気イオンを位置させて除電することを特徴とする搬送時の除電方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−277181(P2008−277181A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120828(P2007−120828)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【出願人】(502266320)株式会社フューチャービジョン (73)
【Fターム(参考)】