説明

陰イオン交換置換クロマトグラフィー方法および陰イオン交換置換クロマトグラフィー方法における置換剤化合物として用いられる陰イオン性有機化合物

置換クロマトグラフィー方法は、1以上の分離される成分を含む混合物を、陰イオン交換材料を含む固定相にロードする工程;一般式Cen(Ar)を有するポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物を含む混合物を固定相にアプライすることによって、固定相から1以上の成分の少なくとも1つを置換する工程であって、式中、Cenは、中心となる結合または基であり、Arは、芳香族核であり、wは、2からCen上の部位の最大数であり、そしてArは、複数のAnによって置換され、式中各Anは、独立して、スルホナート、カルボキシレート、ホスホナート、ホスファート、スルファートとして定義され;そしてArは複数のGによってさらに置換され、Gは独立して、H、C〜Cアルキル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシとして定義される工程を含む。加えて、この方法に有用なポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物の一群を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重有機陰イオン塩(多重陰イオン(multiple anions))を含む組成物、および、陰イオン交換置換クロマトグラフィー精製における置換剤として当該組成物を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーの置換モードは、Tswettによって1906年に最初に見出され、彼は、オーバーロードした溶出クロマトグラフィーの条件下で試料の置換が生じたことに着目した。1943年には、Tiseliusが、クロマトグラフィーの幅広い対象が、3つの異なった「モード」−前端モード、溶出モード、および置換モード−に基づいて構成され得ることを提唱した。それ以来、ほとんどの開発および応用(特に分析クロマトグラフィーにおける)は、溶出クロマトグラフィーの分野で行われた。実際に、現在では、特に限定がなければ「クロマトグラフィー」との用語は、一般に、溶出モードのクロマトグラフィーをいう。
【0003】
溶出モードおよび置換モードは、理論上および実用上の両方において容易に識別される。溶出クロマトグラフィーでは、精製される試料の溶液が、一般的にはカラム内で固定相にアプライされる。移動相は、試料が不可逆的に吸着されるのでもなく全く吸着されないのでもなく、むしろ可逆的に結合するように選択される。移動相が固定相上に流されると、移動相と固定相との間に平衡が生じ、それによって、固定相に対する親和性に依存して、試料は、元の試料内に存在し得る他の成分との相対的な親和性を反映した速さで、カラムに沿って流れる。標準的な溶出クロマトグラフィーについて特に注目に値するのは、溶出溶媒最前部(あるいは定組成溶出におけるゼロカラム容量)が常に、試料に先行してカラムから出ることである。
【0004】
定組成溶出クロマトグラフィーの改変および拡張が、段階勾配クロマトグラフィーで見られ、段階勾配クロマトグラフィーでは、様々な組成の一連の溶離剤が固定相を通過する。例えば、イオン交換クロマトグラフィーにおいて、移動相の塩濃度および/またはpHの段階的な変更が、分離中の分析物の溶出または脱着に用いられる。
【0005】
置換クロマトグラフィーは、カラムから混合物の成分を取り出すために置換剤化合物を用いる。置換剤化合物は、通常、固定相に対して、分離される混合物中のどの成分よりも、ずっと高い親和性を有する。これは溶出クロマトグラフィーとは対極にあり、溶出クロマトグラフィーでは、溶離剤が、固定相に対して、分離される成分よりも低い親和性を有する。置換クロマトグラフィーと溶出クロマトグラフィーまたは脱着クロマトグラフィーとを識別する鍵となる操作上の特徴は、置換剤化合物の使用である。置換クロマトグラフィーでは、まずカラムが、分離される成分の全てが固定相に対して比較的高い親和性を有する条件下で、キャリア溶媒によって平衡化される。ある量の供給混合物(大量かつ非常に希薄であり得る)がこのカラムにロードされて、供給混合物中の個々の成分が固定相に吸着する。すなわち、供給混合物の成分が固定相上に分配および吸着されて、その場にとどまる。これらの全ての成分が置換によって分離されるのであれば、キャリア溶媒は、カラムから試料を全く含まずに出てくる。供給混合物の成分はこの時固定相に存在し、そしてカラム上の各成分の位置は、初期条件下の固定相に対するその相対的な親和性と相関している。原則として、何らかの成分の分子が、より低い親和性を有する何らかの異なる成分の分子と、固定相上の所定の部位で置き換わる。結果として、最終的に、個々の成分は、親和性の最も高いものから最も低いものまで順番にカラム上に配置される。
【0006】
供給混合物の一部の成分(例えば、固定相に対する著しい親和性を有さない成分)がキャリア溶媒と共にカラムを通り抜けることを可能にすることは、時に好都合である;この場合、保持された供給成分のみが置換クロマトグラフィーによって分離される。
【0007】
試料がカラムにロードされたら、適切な溶媒中に置換剤化合物を含む溶液をカラム内に導入し、固定相を通過させる。置換剤化合物は、固定相に対して供給混合物のどの成分よりも高い親和性を有するように選択される。置換剤および移動相が適切に選択されれば、個々の成分は、吸着親和性が高くなる順に、高濃度の比較的純粋な物質の隣接ゾーンとしてカラムから出ていく。精製された個々の成分のゾーンに続いて、置換剤がカラムから出てくる。置換クロマトグラムは、置換剤化合物が試料に続くこと、そして供給物成分が、高濃度の比較的純粋な物質の隣接ゾーンとしてカラムから出ていくことによって、溶出クロマトグラムと容易に区別される。
【0008】
置換クロマトグラフィーは、プロセススケールクロマトグラフィーのための特に有利な特徴をいくつか有する。第1に、置換クロマトグラフィーは、一段階で生成物の分離および濃縮を達成することができる。比較して、定組成溶出クロマトグラフィーは、分離の間に著しい生成物の希釈を生じる。第2に、置換方法は、平衡等温線の非線形区域で作用するため、高いカラムローディングが可能である。これは、溶出クロマトグラフィーよりもずっと良好なカラムの利用を可能にする。第3に、カラムの展開および成分分離に必要とされる溶媒は、比較する溶出方法よりも少ない。第4に、代表的な溶出クロマトグラフィーにおいて満足な分離を得るためには比較的多くの分離要素が求められるのに対し、置換クロマトグラフィーは、分離要素の少ない混合物からの成分濃縮および精製をすることができる。
【0009】
これらすべての利点によって、置換クロマトグラフィーは広く活用されると思われ得た。しかしながら、置換クロマトグラフィーには問題点が残存している。このような問題点の1つは、毎使用後に固定相を廃棄するのは経済的でないため、カラムを再生させる必要があることである。もう1つの問題点は、比較的単純な化合物であって、合成が容易でおよび/または手頃な(経済的な)値段で市販可能な適切な置換剤化合物を得ることである。これらの2つの問題点は、溶出クロマトグラフィーに対する置換クロマトグラフィーの重大な欠点を示している。
【0010】
再生に関して、置換方法は、固定相に対して非常に高い親和性を有する置換剤化合物を用いるため、カラムの再生および再平衡化に要する時間が溶出クロマトグラフィーと比較して長くなり得る。その上、多くの場合、再生の間に比較的多量の溶媒が必要である。これらの問題点は、事実上、置換クロマトグラフィーの利点を溶出クロマトグラフィーよりも減少させている。
【0011】
2つ目の問題点である、比較的容易に合成することができ、および/または手頃な(経済的な)値段で市販可能な有用な置換剤化合物を得ることは、固定相に対して高い親和性も有するが、再生する間にカラムから比較的容易に除去もできる置換剤化合物が必要であることに起因する。先行技術によって提供されているこのような化合物は、これらの2つの重要な基準の一方または双方を満たしていない。様々な化合物が、低分子量の置換剤として提供されているが、これらは合成および精製が非常に難しく、そして手頃な値段では市販されていないか、または全く市販されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
置換クロマトグラフィーがクロマトグラフィー技術の主流となるために、効果的な置換剤が必要であるという重大な満たされていない課題が残っている。効果的な置換剤とは、その合成および精製が簡単で、大量生産しやすく、および/または市販可能であり、そして、固定相を置換クロマトグラフィー方法で引き続き再利用できるように、固定相の効率的な再生を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
今回、負に荷電した特定の低分子量の有機化合物が、置換クロマトグラフィー方法における置換剤化合物として非常に効率的に機能し得ることがわかった。したがって、本発明は、置換クロマトグラフィー方法と陰イオン性置換剤化合物群との双方に関する。本発明における陰イオン性置換剤化合物は、置換クロマトグラフィー方法において置換剤化合物として用いられた後に固定相から効率的に除去され得、引き続いての置換クロマトグラフィー方法における固定相の再生および再利用を可能とする。さらに、これらの陰イオン性置換剤化合物は、比較的簡単で安価な合成方法によって、良好な収率で、そして高い純度で、作製され得る。したがって、本発明は、先行技術の置換クロマトグラフィー方法における上記の課題に対処する。
【0014】
1つの実施態様では、本発明は、有機置換剤化合物としての芳香族ポリ陰イオン性化合物を含む。1つの実施態様では、芳香族ポリ陰イオン性化合物は、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物を含む。1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物は、低分子量を有する。1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物は、置換クロマトグラフィー方法のための新規な置換剤化合物であるだけでなく、それら自体が新規の化合物である。
【0015】
1つの実施態様では、本発明は、本明細書に記載された置換剤化合物の1以上を含む置換剤組成物に関する。
【0016】
1つの実施態様では、本発明は一般式:
Cen(Ar)
を有するポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物に関し、
式中、
Cenは、結合、アルケニル基、アルキニル基、ベンゼン環、ビフェニレン、ナフチレン、または
【0017】
【化1】

【0018】
または
【0019】
【化2】

【0020】
であって、
式中:
Rは、独立して、−H、C〜Cアルキル、またはC〜Cヒドロキシアルキルであり;
Zは、独立して、−H、ハロゲン、−OH、−OR、−NRCHCH(OH)CHOH、−NR、−N[CHCH(OH)CHOH]、−NRC(CHOH)、−NRCH(CHOH)、または−N(R)(ポリ(アルキレンオキシド)であり;
wは、2からCen上の置換可能位置の最大数であり;そして
Arは、(a)、(b)および/または(c)であり;そして、以下の(a)、(b)および(c)の式中:
Anは、独立して、スルホナート、カルボキシレート、ホスホナート、ホスフィナート、ホスファート、ホスファートモノエステルまたはジエステル、スルファート、スルファートモノエステル;またはボロナートであり;
Gは、独立して、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜C10アリール、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、シアノ、−NH、−NRH、−NR、−NHC(O)R、−CHO、−C(O)Rであり;そして
(a)、(b)および(c)は:
(a)Ar=
【0021】
【化3】

【0022】
(a)の式中:
x=1〜3
y=2〜4
x+y=5であり;および/または
(b)Ar=
【0023】
【化4】

【0024】
または
【0025】
【化5】

【0026】
(b)のいずれの式中においても:
x=1〜3
y=4〜6
x+y=7であり;および/または
(c)Ar=
【0027】
【化6】

【0028】
(c)の式中:
x=1〜3
y=1〜3
x+y=4である。
【0029】
1つの実施態様では、任意の2以上のAr基は、Cenへの結合に加えて、互いに結合し得る。このような実施態様では、Gは、もう一方のAr基への結合を構成する。
【0030】
1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物は、Cenに結合するAr基として(a)、(b)または(c)のうちの2以上の組み合わせを含む。上で定義したように、各An、各G、各Rおよび各Zは、所定の任意の化合物において他の全てのAn、G、RおよびZから独立して選択され得る。様々なCenおよびAr部分から延びる線または結合は、それが結合される各ArとCenとの間の結合を表す。
【0031】
1つの実施態様では、本発明は、置換クロマトグラフィー方法に関し、この方法は:
少なくとも1つの分離される成分を含む混合物を適切な固定相にロードする工程;
一般式Cen(Ar)を有するポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物を含む陰イオン性置換剤化合物を含む混合物を固定相にアプライすることによって、固定相から該少なくとも1の成分を置換する工程であって、式中、Cen、Ar、wおよびその置換基、および他の変数が、上述のポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物について上記定義の通りである工程、を含む。
【0032】
したがって、本発明は、置換クロマトグラフィーのための陰イオン性置換剤化合物、組成物および方法を提供する。これにより、その合成および精製が簡単で、そして大量生産しやすく、固定相を効率的に再利用し得るように固定相の効率的な再生を可能にする、効果的な陰イオン性置換剤化合物の必要性に対処する。
【0033】
本明細書に記載された方法の工程および組成物は、置換クロマトグラフィー方法を、例えば、実際に使用する場合に、実施するための完全なシステムまたは方法フローを形成するものではないことが理解される。本発明は、当該分野で現在用いられる合成有機物、置換クロマトグラフィー技術および装置と併せて実施することが可能なものであり、そして、本発明を理解するために必要な、一般に実施するのに十分なだけの材料、装置および方法の工程が包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本明細書において用いられる場合、「ハロ」とは、ハロゲンを含む基を意味し、例えばクロロ、ブロモ、フルオロまたはヨードが挙げられる。
【0035】
本明細書において用いられる場合、「アルキル」および「アルキレン」とは、適宜1または2の水素原子を除去することによってアルカン分子から得られた炭素および水素原子でなる基を意味する。「アルキル」および「アルキレン」は、直鎖、環状、または分岐の部分を有する、飽和の一価および二価の炭化水素基を含み得る。「アルキル」基または「アルキレン」基は、アルキル基が少なくとも2つの炭素原子を含む場合、任意の炭素−炭素間の二重または三重結合を含み得る。当該アルキル基において、環状部分には少なくとも3つの炭素原子が必要とされることが理解される。本発明において、アルキル基およびアルキレン基は、任意の数の炭素原子を含み得る。本発明の1つの実施態様では、約20以下の炭素原子が用いられ得る。例えば、1つの実施態様では、本発明において、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素のアルキル基が用いられ得る。もちろん、本発明では、より長いまたは分岐したアルキル基が用いられ得る。アルキレン基は、例えば、そうでなければアルキル基である2つの基から環が形成される実施態様において、用いられ得る。
【0036】
本明細書において用いられる場合、「アリール」とは、未置換または置換の芳香族構造を意味し、例えば、フェニル、ナフチル、フルオレニル、フェナントリルなどが挙げられる。アリール基は、置換される場合、本明細書で定義されるハロ基、アルキル基、別のアリール基またはアラルキル基によって置換され得る。
【0037】
本明細書において用いられる場合、「アラルキル」とは、アルキル基の水素原子がアリール基に置換された基を意味する。「アリール」は、上記定義の通りである。本発明において、アラルキル基は任意の数の炭素原子を含み得る。本発明の1つの実施態様では、アラルキル基は、約20以下の炭素原子を含む。例えば、1つの実施態様では、本発明において、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素のアラルキル基が用いられ得る。もちろん、本発明において、さらに炭素原子の多いアラルキル基が用いられ得る。
【0038】
本明細書に示したいずれの数値も、任意の低い方の数値と任意の高い方の数値との間で少なくとも2単位の間隔があれば、1単位の増分でその低い方の数値からその高い方の数値までの全ての数値を含む。一例として、成分の量、または、プロセス変数(例えば、温度、圧力、時間など)の数値が、例えば1から90まで、好ましくは20から80まで、さらに好ましくは30から70までであると述べられている場合、15から85、22から68、43から51、30から32などのような数値が、本明細書において明示的に列挙されていると意図される。1より小さい数値については、1単位は、適宜0.0001、0.001、0.01または0.1であると見なされる。これらは、具体的に意図した単なる例にすぎず、列挙した最小値と最大値との間の数値の全ての可能な組み合わせが、同様に本出願において明示的に述べられていると見なされる。
【0039】
(芳香族陰イオン性置換剤化合物)
1つの実施態様において、本発明は一般式:
Cen(Ar)
を有するポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物に関し、
式中、
Cenは、結合、アルケニル基、アルキニル基、ベンゼン環、ビフェニレン、ナフチレン、または
【0040】
【化7】

【0041】
または
【0042】
【化8】

【0043】
であって、
式中:
Rは、独立して、−H、C〜Cアルキル、またはC〜Cヒドロキシアルキルであり;
Zは、独立して、−H、ハロゲン、−OH、−OR、−NRCHCH(OH)CHOH、−NR、−N[CHCH(OH)CHOH]、−NRC(CHOH)、−NRCH(CHOH)、または−N(R)(ポリ(アルキレンオキシド)であり;
wは、2からCen上の置換可能位置の最大数であり;そして
Arは、(a)、(b)および/または(c)であり;そして、以下の(a)、(b)および(c)の式中:
Anは、独立して、スルホナート、カルボキシレート、ホスホナート、ホスフィナート、ホスファート、ホスファートモノエステルまたはジエステル、スルファート、スルファートモノエステル;またはボロナートであり;
Gは、独立して、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜C10アリール、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、シアノ、−NH、−NRH、−NR、−NHC(O)R、−CHO、−C(O)Rであり;そして
(a)、(b)および(c)は:
(a)Ar=
【0044】
【化9】

【0045】
(a)の式中:
x=1〜3
y=2〜4
x+y=5であり;および/または
(b)Ar=
【0046】
【化10】

【0047】
または
【0048】
【化11】

【0049】
(b)のいずれの式中においても:
x=1〜3
y=4〜6
x+y=7であり;および/または
(c)Ar=
【0050】
【化12】

【0051】
(c)の式中:
x=1〜3
y=1〜3
x+y=4である。
【0052】
1つの実施態様では、任意の2以上のAr基は、Cenへの結合に加えて、互いに結合し得る。このような実施態様においては、Gは、もう一方のAr基への結合を構成する。
【0053】
1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物は、Cenに結合するAr基として(a)、(b)または(c)のうちの2以上の組み合わせを含む。上で定義したように、各An、各G、各Rおよび各Zは、所定の任意の化合物において他の全てのAn、G、RおよびZから独立して選択され得る。様々なCenおよびAr部分から延びる線または結合は、それが結合される各ArとCenとの間の結合を表す。
【0054】
本発明によれば、ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物は、芳香族ポリ陰イオンとして知られている化合物のクラスに属し、それは、酸または塩または芳香族ポリ陰イオン性化合物であり得、該化合物は、複数の陰イオン性部分を備える2以上の芳香族核を有する。本発明のポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物は、通常解離されると複数の負に荷電した基(ポリアニオン)を形成するポリ酸である。本開示において、構造は、通常それぞれの酸性型で示される。理解されるように、本発明のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物が用いられるpHの範囲では、これらの化合物はある程度まで陰イオン型へと解離される。すなわち、一般的に、スルホナートのような比較的強酸性の基は、通常完全に解離されるのに対し、カルボキシレートのようなさほど強酸性ではない基は、完全には解離されないことがある。当該分野で公知のように、所定のpHにおける解離の程度は、化合物のpKに依存する。化合物の酸性型は、均一性と便宜のために本明細書に示すものであり、そしてそのような化合物が必ずしも酸性型であることを意図するものではない。
【0055】
1つの実施態様では、本発明によれば、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物は、複数の負に荷電した原子を含む。1つの実施態様では、陰イオン性有機化合物は、1種類より多くの陰イオン性部分を含み得る。1つの実施態様では、陰イオン性部分は、1以上のカルボキシレート、スルホナート、ホスホナート、スルファートおよびホスファートであり得、通常Anで表される。芳香族陰イオン性化合物の所定の任意の実施態様において、いずれか1つのこれらのAn部分が複数存在し得るか、またはいずれか2以上のこれらのAn部分の各々1以上の混合物が存在し得る。多くの実施態様において、所定の芳香族陰イオン性化合物中の陰イオン性部分Anは全て同一であるが、別の実施態様においては、2以上のこのような陰イオン性部分Anの混合物または組み合わせがある。したがって、例えば、スルホナート基とカルボキシレート基との組み合わせがあり得る。
【0056】
1つの実施態様では、本発明によれば、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物は、複数の芳香族核に複数の陰イオン性部分を備える。すなわち、多重芳香族核がある実施態様では、複数の芳香族核は、各々複数の陰イオン性部分を備える。1つの実施態様では、1以上の芳香族核は、陰イオン性部分を備えない。例えば、ある実施態様においては、芳香族核は、複数の陰イオン性部分を備える芳香族核が結合された中心の連結基である。
【0057】
1つの実施態様では、陰イオン性有機化合物は、複数の芳香族核を含み、複数の芳香族核の各々に複数の陰イオン性基が全く同じに分配される。すなわち、多重芳香族核がある実施態様において、複数の芳香族核は置換されており、陰イオン性部分は各芳香族核の同じ位置で結合している。例えば、2つのベンゼン核(フェニル基)はそれぞれ、各環の1位で陰イオン性有機化合物の残余基(remainder)と結合し得、そして2つのスルホナート基は、3位および5位で各環と結合する。
【0058】
1つの実施態様では、陰イオン性有機化合物は、複数の芳香族核を含み、複数の芳香族核の各々に複数の陰イオン性基が全く同じに分配され、そして陰イオン性有機化合物は、全体として少なくとも1本の対称軸を示す。すなわち、多重芳香族核がある実施態様において、複数の芳香族核は置換されており、陰イオン性部分は各芳香族核の同じ位置で結合しており、そしてその分子は全体として少なくとも1本の対称軸を示す。例えば、2つのベンゼン核はそれぞれ、各環の1位でもう一方と結合し得、そして2つのスルホナート基は、3位および5位で各環と結合する。この分子は左右対称であり、分子の各側はもう一方の鏡像である。
【0059】
1つの実施態様では、芳香族核Arは、置換または未置換であり得、上述の基に加えて、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[c]チオフェン、インドール、ベンゾイミダゾール、シンノリン、キナゾリン、ナフチリジン、ピリド[3,4−b]−ピリジン、ピリド[3,2−b]−ピリジン、ピリド[4,3−b]−ピリジン、キノリン、イソキノリン、フェノチアジン、アクリジン、ベンゾイソオキサゾール、アントラニル、ならびにアントラセンおよびフェナントレンのようなポリ芳香族基を含む、様々な複素環式芳香族が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
置換される場合、芳香族核Arは上記定義のような任意のG基と置換され得、An置換基も存在することと一致し得る。
【0061】
1つの実施態様では、陰イオン性有機化合物は水溶性である。水に可溶である場合、これらの化合物は、多くの場合、均一のパターンで広がる複数の負電荷を有する有用な特性を示す。
【0062】
1つの実施態様では、本発明は、有機置換剤化合物としての芳香族ポリ陰イオン性化合物を含む。1つの実施態様では、芳香族ポリ陰イオン性化合物は、本明細書により詳細に記載されるようなポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物を含む。1つの実施態様では、芳香族ポリ陰イオン性化合物は低分子量を有する。1つの実施態様では、芳香族ポリ陰イオン性化合物は、置換クロマトグラフィー方法のための新規な置換剤化合物であるだけでなく、それら自体が新規の化合物である。
【0063】
以下において、上記定義のような一般式Cen(Ar)を有する化合物の様々な例を提供する。これらの例は、限定を意図するものではなく、むしろ本発明の可能な実施態様のいくつかを例示するために提供される。
【0064】
1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物は、以下の一般式(I)を有する:
【0065】
【化13】

【0066】
(I)の式中、各An、各G、各xおよび各yは、上記定義から独立して選択され得る。1つの実施態様では、各分子(I)において、各Anは、各Ar核上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のAnは、他のAn基とは異なる。1つの実施態様では、各分子(I)において、各xの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のxの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のxの値は、他のxの値とは異なる。1つの実施態様では、各分子(I)において、各Gは、各Ar核上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のGは、他のGとは異なる。1つの実施態様では、各分子(I)において、各yの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のyの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のyの値は、他のyの値とは異なる。1つの実施態様では、An基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、G基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、分子は、全体として少なくとも1本の対称軸を有する。
【0067】
1つの実施態様では、一般構造(I)を有する芳香族ポリ陰イオン性化合物は、一般式(I−A)を有する以下の芳香族ポリ陰イオン性化合物のような化合物であり、この化合物は、便宜的にAD1(陰イオン性置換剤1)と称し得る:
【0068】
【化14】

【0069】
この化合物(I)の実施態様では、Anは、全ての場合でスルホナートであり、xは、全ての場合で1であり、そしてスルホナートは、各芳香族核の4位(パラ)にある。化合物(I−A)の合成を、実施例1に記載し、そして置換クロマトグラフィー手順における化合物(I−A)の使用を、実施例3に記載する。
【0070】
1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物は、以下の一般構造(II)を有する:
【0071】
【化15】

【0072】
(II)の式中、各An、各G、各R、各xおよび各yは、上記定義から独立して選択され得る。1つの実施態様では、各分子(II)において、各Anは、各Ar核上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のAnは、他のAn基とは異なる。1つの実施態様では、各分子(II)において、各xの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のxの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のxの値は、他のxの値とは異なる。1つの実施態様では、各分子(II)において、各Gは、各Ar核上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のGは、他のGとは異なる。1つの実施態様では、各分子(II)において、各yの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のyの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のyの値は、他のyの値とは異なる。1つの実施態様では、各分子(II)において、各Rは、各N上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のRは、他のN上の他のRとは異なる。1つの実施態様では、An基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、G基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、分子は、全体として少なくとも1本の対称軸を有する。
【0073】
1つの実施態様では、一般構造(II)を有する芳香族ポリ陰イオン性化合物は、一般式(II−A)を有する以下の芳香族ポリ陰イオン性化合物のような化合物であり、この化合物は、便宜的にAD2と称し得、そして以下の構造を有する:
【0074】
【化16】

【0075】
(II−A)において、xは各フェニル基において2であり、各フェニル基において2つのAn基は異なり、1つのAnはスルホナートを表し、そして1つのAnはカルボキシレートを表し、そして2つのAn基はフェニル基上の3位および5位(メタ)にある。
【0076】
1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物は、以下の一般構造(III)を有する:
【0077】
【化17】

【0078】
(III)の式中、各An、各G、各R、各xおよび各yは、上記定義から独立して選択され得る。1つの実施態様では、各分子(III)において、各Anは、各Ar核上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のAnは、他のAn基とは異なる。1つの実施態様では、各分子(III)において、各xの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のxの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のxの値は、他のxの値とは異なる。1つの実施態様では、各分子(III)において、各Gは、各Ar核上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のGは、他のGとは異なる。1つの実施態様では、各分子(III)において、各yの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のyの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のyの値は、他のyの値とは異なる。1つの実施態様では、各分子(III)において、各Rは、各N上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のRは、他のN上の他のRとは異なる。1つの実施態様では、An基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、G基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、分子は、全体として少なくとも1本の対称軸を有する。
【0079】
1つの実施態様では、一般構造(III)を有する芳香族ポリ陰イオン性化合物は、一般式(III−A)を有する以下の芳香族ポリ陰イオン性化合物のような化合物であり、以下の構造を有する:
【0080】
【化18】

【0081】
1つの実施態様では、一般構造(III)を有する芳香族ポリ陰イオン性化合物は、一般式(III−B)を有する以下の芳香族ポリ陰イオン性化合物のような化合物であり、この化合物は、AD−4と称し得、そして以下の構造を有する:
【0082】
【化19】

【0083】
1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物は、以下の一般構造(IV)を有する:
【0084】
【化20】

【0085】
(IV)の式中、各An、各G、各xおよび各yは、上記定義から独立して選択され得る。1つの実施態様では、各分子(IV)において、各Anは、各Ar核上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のAnは、他のAn基とは異なる。1つの実施態様では、各分子(IV)において、各xの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のxの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のxの値は、他のxの値とは異なる。1つの実施態様では、各分子(IV)において、各Gは、各Ar核上で同一であり、もう1つの実施態様では、1以上のGは、他のGとは異なる。1つの実施態様では、各分子(IV)において、各yの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のyの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のyの値は、他のyの値とは異なる。1つの実施態様では、An基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、G基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、分子は、全体として少なくとも1本の対称軸を有する。
【0086】
1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物(IV)は、以下の(IV−A)または(IV−B)の2つの構造のうち1つを有し、それぞれ、便宜的にAD5およびAD6と称し得る。
【0087】
【化21】

【0088】
【化22】

【0089】
もう1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物(IV)は、以下の構造(IV−C)を有する:
【0090】
【化23】

【0091】
(IV−A)、(IV−B)および(IV−C)の全てにおいて、置換基は、構造(IV)について上で示された定義を有する。1つの実施態様では、構造(IV−C)を有する化合物は、図3に示す1以上の例示的な化合物、またはその異性体もしくはその同属種である。化合物の同属種は、一般構造(IV)を有する化合物に関して上述の化合物内に含まれる、例えば、アルキル基、アルコキシ基およびハロゲンが挙げられる。したがって、図3に示す特定の化合物に加えて、一般構造(IV)の範囲内の他の任意の化合物が、この定義内に含まれる。なお、上記の化合物(IV−B)またはAD−6は、図3の構造(I)に該当する。
【0092】
1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物は、以下の一般構造(V)を有する:
【0093】
【化24】

【0094】
(V)の式中、各An、各G、各xおよび各yは、上記定義から独立して選択され得る。1つの実施態様では、各分子(V)において、各Anは、各Ar核上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のAnは、他のAn基とは異なる。1つの実施態様では、各分子(V)において、各xの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のxの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のxの値は、他のxの値とは異なる。1つの実施態様では、各分子(V)において、各Gは、各Ar核上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のGは、他のGとは異なる。1つの実施態様では、各分子(V)において、各yの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のyの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のyの値は、他のyの値とは異なる。1つの実施態様では、An基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、G基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、分子は、全体として少なくとも1本の対称軸を有する。
【0095】
1つの実施態様では、一般構造(V)を有する芳香族ポリ陰イオン性化合物は、一般式(V−A)を有する以下の芳香族ポリ陰イオン性化合物のような化合物であり、この化合物は、便宜的にAD3と称し得、そして以下の構造を有する:
【0096】
【化25】

【0097】
1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性化合物は、以下の一般構造(VI)を有する:
【0098】
【化26】

【0099】
(VI)の式中、各An、各G、各xおよび各yは、上記定義から独立して選択され得る。1つの実施態様では、各分子(VI)において、各Anは、各Ar核上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のAnは、他のAn基とは異なる。1つの実施態様では、各分子(VI)において、各xの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のxの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のxの値は、他のxの値とは異なる。1つの実施態様では、各分子(VI)において、各Gは、各Ar核上で同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のGは、他のGとは異なる。1つの実施態様では、各分子(VI)において、各yの値は、各Ar核上で他の各Ar核上のyの値と同一であり、そしてもう1つの実施態様では、1以上のyの値は、他のyの値とは異なる。1つの実施態様では、An基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、G基は、Ar核上に左右対称に配置される。1つの実施態様では、分子は、全体として少なくとも1本の対称軸を有する。
【0100】
1つの実施態様では、一般構造(VI)を有する芳香族ポリ陰イオン性化合物は、一般式(VI−A)を有する以下の芳香族ポリ陰イオン性化合物のような化合物であって、この化合物は、便宜的にAD7と称し得、そして以下の構造を有する:
【0101】
【化27】

【0102】
1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物は、シスまたはトランススチルベン誘導体である。この実施態様では、Cen(上記定義の通り)は、>C=C<であり、そしてエテニル基は、シスまたはトランスのいずれかの立体配置である。この実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物は、一般式(VII)を有し、そしてArがフェニルであって、そして該化合物がトランスである場合、ここに示されるように、置換剤化合物は、一般式(VII−A)を有する:
【0103】
【化28】

【0104】
【化29】

【0105】
したがって、例えば、この実施態様では、置換剤化合物は、以下の例示的な構造式(VII−B)または(VII−C)のうち1つを有し得る:
【0106】
【化30】

【0107】
【化31】

【0108】
1つの実施態様では、ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物は、以下の構造式(VII−D)を有する化合物である:
【0109】
【化32】

【0110】
構造VII−Dを有する実施態様は、Cenの一例であり、上記定義の通りである場合、Cenは>C=C<であり、エテニル基はシスの立体配置であり、そして2つのフェニルAr基は互いに結合する。この実施態様では、yは1であり、そしてGは1つのAr基からもう1つのAr基までの結合を構成する。
【0111】
1つの実施態様では、上記の式のいずれかのポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物は、その構造中に、紫外/可視吸光分析法による、蛍光による、または当業者に公知の任意の他の方法による検出を容易にする付加置換基を含む。このような置換基はまた、陰イオン交換クロマトグラフィーに対する化合物の親和性に影響を与え得、固定相への結合の強さをより小さくするか、またはより大きくする。ある場合には、置換クロマトグラフィーによって精製される化合物を検出する標準手段を妨げる置換基を有さないことが、有利となる。この後者の場合の一例は、式Iの置換剤化合物が280nm(特定の生体高分子(タンパク質、オリゴペプチド、抗体など)が特徴的に吸収する波長)の紫外光を吸収しないことである。検出能を高めるための適切な誘導体化剤は当業者に公知であり、当業者によって適切に選択され得る。
【0112】
1つの実施態様では、本発明の置換剤化合物における1以上の置換基は、1以上の電磁的または放射性検出方法によって検出可能な基であり得る。このような電磁的方法としては、例えば、紫外/可視分光光度法、および蛍光分光光度法が挙げられる。適切な放射性検出方法は当該分野で公知である。適切な置換基およびこのような基を検出するための適切な方法は、このような方法での使用について当業者に公知である。
【0113】
適切な例示となる陰イオン性置換剤化合物としては、例えば、置換剤化合物の例を示すために提供される以下の具体例が挙げられる。これらの例は限定を意図するものではなく、むしろ本発明の様々な実施態様における陰イオン性置換剤化合物を示す具体例を提供することを意図する。
【0114】
本発明の1つの実施態様によれば、適切な固定相は陰イオン交換樹脂である。適切な陰イオン交換樹脂は当該分野で公知であり、そして一般に、陰イオンが引き付けられる陽イオン性部分(例えば、二級、三級または四級アンモニウム基)を有するように誘導体化された、メタクリレート、シリカ、ポリスチレン、またはポリスチレン−ジビニルベンゼンのような樹脂が挙げられる。適切な陰イオン交換材料は、分離される材料のタイプに基づいて当業者によって選択され得る。1つの実施態様では、本発明での使用に適切な陰イオン交換樹脂としては、例えば、Mono Q、Source 15Q、Q SEPHAROSE(登録商標)PPおよびQ SEPHAROSE(登録商標)FF(Amersham Biosciences);TOYOPEARL(登録商標)Super Q−5PW、DEAE−650、TSK−GEL Super Q−5PW、およびSuper Q−650M(Tosoh Biosep);Unosphere Q、Macroprep High Q(Bio-Rad);PL−SAX(Polymer Labs);SHOWDEX(登録商標)IEC QA−825およびIEC DEAE−825(昭和電工);Q−8HRおよびDEAE−15HR(Waters);およびFRACTOGEL(登録商標)TMAEおよびDEAE(EMD Chem.)が挙げられる。当該分野で公知の他の適切な陰イオン交換樹脂も、同様に用い得る。
【0115】
樹脂は、一般に多量の陰イオンローディング緩衝液で平衡化される。
【0116】
置換クロマトグラフィー方法
1つの実施態様では、本発明は、置換クロマトグラフィー方法に関し、この方法は:
少なくとも1つの分離される成分を含む混合物を、適切な固定相にロードする工程;
1以上の芳香族核上に複数の陰イオン性基を含む陰イオン性置換剤化合物を含む混合物を該固定相にアプライすることによって、該固定相から該少なくとも1つの成分を置換する工程、を含む。
【0117】
上記の背景技術の項で述べたように、置換クロマトグラフィー方法は、一般的に当業者に公知である。したがって、当業者が本発明を理解するために、以下の実施例の記載以外に、このような方法について本明細書に詳細に記載する必要はない。
【0118】
本発明の1つの実施態様によれば、置換クロマトグラフィー方法は、DNA、RNA、核酸、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、タンパク質およびポリペプチドの分離および精製に用いることができる。本明細書において用いられる場合、DNAとは、任意の供与源(天然または組換え体)から得られるデオキシリボ核酸である。本明細書において用いられる場合、RNAとは、任意の供与源(天然または組換え体)から得られるリボ核酸であり、RNA、mRNA、cRNA、tRNA、nRNA、rRNAおよび他の任意の公知のRNA、または、後に調製されまたは見出されるRNAを含むが、これらに限定されない。本明細書において用いられる場合、ヌクレオチドとは、RNAおよびDNAとして核酸を形成するヌクレオチド鎖の単量体またはその構造単位である、ヌクレオチドである。ヌクレオチドは、複素環式核酸塩基、五炭糖(リボースまたはデオキシリボース)、およびリン酸基またはポリリン酸基からなる。オリゴヌクレオチドは、2以上のヌクレオチド(約50までのヌクレオチド)を含み、そしてRNA分子またはDNA分子よりも著しく小さい。オリゴヌクレオチドは、多くの場合、DNAまたはRNAに対するプローブとして用いられ、そしてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法で用いられ得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のターゲットRNAとハイブリダイズしてターゲットRNAの機能に影響を及ぼすように設計されそして用いられる。ワトソン−クリック塩基対ハイブリダイゼーションによって特定のmRNAと相補的であるアンチセンス配列の使用は、mRNAの発現を阻害し、そしてそれによって、DNAからタンパク質への遺伝情報の転写(transfer)をブロックする結果となり得る。アンチセンス分子は、タンパク質を構成するアミノ酸に翻訳される前に、例えばmRNAと相互作用するように設計される。このように、疾患に関連するタンパク質は、その形成を防ぐことができる。これらのオリゴヌクレオチド分子は、それらがターゲットRNAとワトソン−クリック相補体であるために、アンチセンスと称される。
【0119】
1つの実施態様では、本発明は、アデニン、チミン、ウラシル、グアニン、シトシンのような核酸塩基、および一般的なプリン類およびピリミジン類の分離および単離に用いることができる。1つの実施態様では、本発明は、アデノシン、ウリジン、グアノシン、シチジン、デオキシアデノシン、チミジン、デオキシグアノシンおよびデオキシシチジンのようなヌクレオシドの分離に用いることができる。1つの実施態様では、本発明は、ヌクレオチドの分離および単離に用いることができ、ヌクレオチドとしては、例えば、AMP、UMP、GMP、CMP、ADP、UDP、GDP、CDP、ATP、UTP、GTP、CTP、cAMP、およびcGMPが挙げられる。1つの実施態様では、本発明は、デオキシヌクレオチドの分離および単離に用いることができ、デオキシヌクレオチドとしては、dAMP、dTMP、dUMP、dGMP、dCMP、dADP、dTDP、dUDP、dGDP、dCDP、dATP、dTTP、dUTP、dGTP、およびdCTPが挙げられる。1つの実施態様では、本発明は、DNA、RNA、LNA、PNA、mRNA、ncRNA、miRNA、rRNA、siRNA、tRNA、およびmtDNAのような核酸の分離および単離に用いることができる。
【0120】
本明細書で用いられる場合、タンパク質は、約5kDa(キロダルトン)よりも大きな分子量を有するポリアミノ酸であると広く定義され、そしてポリペプチドは、約5kDaよりも小さな分子量を有するポリアミノ酸である。当業者に理解されるように、タンパク質とポリペプチドとの相違点は、1より多い次数である。一般に、タンパク質は三次構造を示すのに対し、ポリペプチドは一般には示さない。
【0121】
1つの実施態様では、本発明は、タンパク質およびポリペプチドのような成分をこのような成分を含む混合物から分離するために特に適用可能である。1つの実施態様では、混合物中の1以上の成分は、1以上のポリペプチド、1以上のタンパク質、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む。すなわち、本発明の方法は、タンパク質の混合物、ポリペプチドの混合物、およびタンパク質とポリペプチドとの両方の混合物の分離に適用可能である。1つの実施態様では、1以上のタンパク質は、約5kD以上の分子量を含む。1つの実施態様では、混合物は、2以上のタンパク質、2以上のポリペプチド、またはそれらの混合物を含む。
【0122】
1つの実施態様では、混合物からのタンパク質および/またはポリペプチドが、当該タンパク質および/またはポリペプチドが実質的に富化されている画分、および/または当該タンパク質および/またはポリペプチドが他のタンパク質および/またはポリペプチド成分から実質的に分離されている画分において、固定相から置換される。すなわち、1つの実施態様では、目的とするタンパク質またはポリペプチドを含む混合物が固定相にアプライされ、当該タンパク質またはポリペプチドが固定相から置換されて1以上の画分中に収集されると、当該タンパク質および/またはポリペプチドは、当該画分中にいずれかまたは両方が富化された(すなわちより高濃度な)形態で得られるか、または元の混合物中の他の異なるタンパク質および/またはポリペプチド成分から実質的に分離されて得られる。したがって、明らかに、混合物は、分離される2以上の成分を含み得る。後に述べるように、いくつかの実施態様では、本発明の置換クロマトグラフィーに供される混合物は、様々な異なる供与源からの多くの異なる材料の組み合わせを含み得、そして本発明の方法は、それらの様々な成分を分離するためにこのような複雑な混合物に有用に適用され得る。
【0123】
別の実施態様では、本発明は、少なくとも1つの成分(例えば、DNA、RNA、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、医薬品、医薬品中間体など)および少なくとも1つの不純物を含む混合物に適用可能である。本実施態様では、本発明の方法は、所望の成分が混合されているかもしれない1以上の不純物から成分を精製するために用いられ得る。このような不純物の除去は、(1)目的のまたは所望の成分が置換された後の固定相上への固定化または保持による(例えば、固定相がフィルターの働きをする場合)か、または(2)固定相から洗い出すまたは固定相から溶出させることによる(不純物が「従来の」溶出クロマトグラフィーにさらに類似する手段で除去される場合)かのいずれかであり得る。本実施態様では、不純物がカラム上に固定化されたかまたはカラムから除去されたら、本明細書に記載されるように、置換クロマトグラフィーによって、所望の成分がカラムから取り出され得る。
【0124】
本発明は、広範囲にわたる様々な成分(上述のDNA、RNA、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、それらの混合物およびそれらと混合された不純物だけでなく、他の多くの成分を含む)に適用可能である。
【0125】
1つの実施態様では、混合物は、1以上の天然または組換えの抗体、またはこのような抗体のいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様では、混合物は、1以上の天然または組換えの酵素、またはこのような酵素のいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様では、混合物は、診断使用のための1以上の天然または組換えのタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様では、混合物は、ヒトまたは動物の治療的使用のための1以上の天然または組換えのタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様では、混合物は、1以上の天然または組換えの動物またはヒトの血漿に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様では、混合物は、1以上の天然または組換えの植物性材料に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様では、混合物は、動物またはヒトの乳または組換え動物から得られた乳の1以上に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様では、混合物は、1以上の天然または組換えの鳥卵に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様では、混合物は、1以上の天然または組換えの細菌、酵母、真菌、ウイルスまたは昆虫に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様では、混合物は、1以上の天然または組換えの哺乳類の細胞培養物または動物組織に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。
【0126】
1つの実施態様では、混合物は、1以上の有機化合物、医薬品または医薬品中間体、またはそれらのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様では、上記1以上の有機化合物、医薬品または医薬品中間体の1以上が、キラルである。1つの実施態様では、混合物は、上記のいずれかの混合物または組み合わせ、例えば、抗体および酵素の混合物、または植物性材料および鳥卵から得られたタンパク質および/またはポリペプチドの混合物、または本発明の方法が適用可能であり得る上記の例示の成分のいずれかのあらゆる混合物を含み得る。
【0127】
1つの実施態様では、本発明の方法は、固定相から出てくる陰イオン性置換剤化合物を検出する工程をさらに含み、検出工程は、紫外/可視吸光分析法、蛍光発光分析法、質量分析法、pH、電気伝導度、および1以上の電気化学的方法の1以上による。上記の方法は、置換剤化合物の検出のために最も一般的に適用可能な方法であるが、当該分野で公知の他の適切な方法を用いてもよい。このような検出は、上述のような、1以上の検出可能な置換基の検出であってもよい。
【0128】
1つの実施態様では、固定相から置換される成分の検出に用いられる方法は、目的の特定の成分に基づいて適切に決定され得る。したがって、例えば、タンパク質およびポリペプチドは、それらの紫外/可視吸収スペクトルまたは特定吸収波長に基づいて、または可視化剤でそれらを誘導体化することによって決定され得る。同様に、医薬品および医薬品中間体は、それらの紫外/可視吸収スペクトルまたは特定吸収波長に基づいて決定され得る。
【0129】
1つの実施態様では、本発明の方法は、固定相の再生の1以上の工程をさらに含む。1つの実施態様では、再生工程は、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類塩、有機酸、アルキルスルホン酸、四級アンモニウム水酸化物、四級アンモニウム塩、アルキルアミンの1以上の溶液で固定相を処理する工程を含み得、この溶液は適切なpH緩衝剤をさらに含み得る。他の適切な再生工程が、必要に応じて適宜追加され得、この工程は、精製水による単なる洗浄工程を含む。1つの実施態様では、再生は、水との有機共存溶媒の使用を含む。
【0130】
以下の実施例に、例示となる合成手順を提供し、それによって、これらの例示となる陰イオン性置換剤化合物が合成され得る。本発明の範囲内の他の適切な陰イオン性置換剤化合物は、当業者に公知の方法および/または当業者に理解されるように上記から応用した方法で合成され得る。
【0131】
1つの実施態様では、置換剤組成物は、付加されたデキストラン硫酸を含まず、そして1つの実施態様では、置換剤組成物は、任意の供与源からのデキストラン硫酸を実質的に含まない。1つの実施態様では、置換剤化合物は、硫酸化炭水化物を含まない。
【0132】
1つの実施態様では、本発明の置換剤化合物は、その分子内にエーテル基を含まない。1つの実施態様では、本発明の置換剤化合物は、ポリ陰イオン性基を含むが、隣接するポリ陰イオン性基がエーテル含有部分によって連結されていない。1つの実施態様では、本発明の置換剤化合物は、樹状ポリエーテルを含まない。
【0133】
1つの実施態様では、本発明の置換剤化合物および置換剤組成物は、アゾ基含有化合物(アゾ基は−N=N−である)を実質的に含まない。1つの実施態様では、本発明の置換剤化合物および置換剤組成物は、アントラキノン含有化合物を実質的に含まない。1つの実施態様では、置換剤組成物は、インジゴテトラスルホナートを実質的に含まない。
【0134】
1つの実施態様では、本発明は、ポリスルホン化ポリ芳香族化合物を作製するための方法に関する。1つの実施態様では、この方法は、硫酸溶液を提供する工程;およびポリ芳香族化合物を硫酸溶液に直接添加する工程を含む。この方法は、単離および精製が必要な中間体を形成することなく、ポリスルホン化ポリ芳香族化合物を直接形成するという利点を有する。
【0135】
1つの実施態様において、この方法は、溶液からポリスルホン化ポリ芳香族化合物を回収する工程をさらに含む。以下の実施例1では、化合物の回収方法の一例を提供する。
【0136】
1つの実施態様では、硫酸は、濃硫酸である。1つの実施態様では、ポリ芳香族化合物を硫酸に添加する場合、硫酸は、約70℃〜約140℃の温度である。
【0137】
この方法の1つの実施態様では、ポリ芳香族化合物は、テトラフェニルエチレンである。この実施態様における1つの合成では、ポリスルホン酸ポリ芳香族化合物は、化合物(I−A)であり、この化合物は本明細書ではAD−1とも称する。
【0138】
この合成方法は、本明細書ではテトラフェニルエチレンに関して記載されそして化合物(I−A)を形成しているが、該方法は、この生成物作製のための使用に限られるものではなく、むしろ同様のポリスルホン酸ポリ芳香族化合物を作製するために有用であると考えられる。
【実施例】
【0139】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を示すために含まれている。以下の実施例で開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが発明者らによって見出された技術を示し、したがって、その実施のために好ましい態様を構成すると考えられることが、当業者に理解される。しかしながら、本明細書の開示を考慮すれば、当業者には、開示されている具体的な実施態様において多くの変更が可能であり、そして、添付の請求の範囲によってのみ限定される発明の趣旨および範囲から外れることなく、同じまたは類似する結果がさらに得られることが理解される。
【0140】
実施例1 − AD−1の合成:
テフロン(登録商標)コートされたサーモカップルを取り付けた1000mLの3首丸底フラスコに、500mLの濃硫酸および磁気攪拌子を投入する。このフラスコを乾燥窒素でパージしながら、粉添加漏斗に35gのテトラフェニルエチレンを投入する。粉添加漏斗を丸底フラスコの上に配置し、そしてそのフラスコを、わずかに陽圧(superambient pressure)下で乾燥窒素の雰囲気下で密封する。硫酸を、攪拌しながら約115℃に加熱し、次いで、テトラフェニルエチレンを、約1時間にわたって少しずつ硫酸に添加する。テトラフェニルエチレンは、先に添加したものが液体反応混合物中に溶解した後にのみ添加する。添加が完了すると、暗色の反応混合物を、115℃で1時間保持し、次いで、室温まで冷却させる。冷却した反応混合物を、添加漏斗に移し、そして約5℃に冷却した約5リットルのエタノールを含まないエチルエーテルに約4時間にわたって滴下によって添加して、オフホワイトの固形物として生成物を析出させる。この添加が完了したら、攪拌を止め、そして該固形生成物を沈降させる。約4.5リットルの上清を注意深くデカントし、そして残った溶媒で該生成物をスラリーにし、次いで、乾燥窒素下で焼結ガラスフリット上に収集し、新たなエーテル(エタノールを含まない)で2回洗浄し、そして乾燥窒素の気流下で乾燥させる。微細な、易流動性(free-flowing)のオフホワイトの粉末として約64gのAD1を回収し、これは、HPLCで99.5%の純度である。エーテル洗浄の後、生成物に微量の硫酸が残っている場合には、生成物を水に溶解し、そして全ての硫酸が硫酸バリウムとして除去されるまで炭酸バリウムで処理してもよい。次いでろ過およびエバポレーションにより、陰イオン交換媒体での置換剤化合物としての使用に適した、純粋なテトラスルホン酸が得られる。
【0141】
実施例2 − AD−2の合成:
AD−2の合成は、以下の2工程の手順で実施され得る。
【0142】
工程1: 2−クロロ−4,6−ビス(3−カルボキシ−4−ヒドロキシ−5−スルホアニリノ)−1,3,5−トリアジン二ナトリウム塩(f.w.=621.85)の合成:
23gの蒸留水および56gの氷(蒸留水から調製)を、フラスコに入れ、そして磁気攪拌する。次の反応のpHおよび温度を、ガラスpHプローブおよび温度プローブを用いてモニターする。100mgのTriton−X100界面活性剤を、攪拌している混合物に添加し、続いて、1.90gのシアヌル酸トリクロリド(Aldrich)(10.3ミリモル、f.w.=184.4)を一気に加える。この反応の初期では、必要であれば外部冷却によって温度を0〜5℃の範囲に維持し、そして必要に応じて少量の固形LiOH・HOを加えてpHを3.5〜4.0の範囲に維持する。少量の固形5−アミノ−3−スルホサリチル酸(4.80g、20.6ミリモル、Aldrich)を、攪拌している反応混合物に、2時間にわたって少量ずつ添加する。温度およびpHは、上記のように維持する。次いで、反応混合物を、再び上記の温度およびpHを維持しながらさらに4時間攪拌する。この反応混合物をゆっくりと室温まで温める。この時点で、pHは3.6で安定し、そしてほとんど変化が見られない。混合物を、室温で終夜(18時間)攪拌し、その間、酸または塩基を添加することなくpHは3.5になり得る。この時点および反応系列の間中、反応の進行を陰イオン交換HPLCにより追跡して、モノアニリノ生成物が消費されること、およびトリスアニリノ生成物(メラミン)が形成されないことを確実にする。十分な量の2MのHClを滴下によって添加してpHを1.5に下げ、次いで反応溶液をろ過する。ろ液に、飽和NaCl溶液(塩水)を室温で攪拌しながら滴下によって添加し、生成物を溶液から完全に晶出させる(約20mLの塩水)。反応混合物をろ過し、そして固形生成物を95%のエタノールで繰り返し洗浄し、次いで真空下で乾燥させる。この手順によって、5.58gの所望の生成物(収率87%)が得られ、これはHPLCによって約96%の純度であることが示される。
【0143】
工程2: 2−(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−4,6−ビス(3−カルボキシ−4−ヒドロキシ−5−スルホアニリノ)−1,3,5−トリアジンナトリウム塩(AD2、f.w.=684.55)
15.75gのトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(Aldrich)(130ミリモル、f.w.=121.1)、および4.04gの2−クロロ−4,6−ビス(3−カルボキシ−4−ヒドロキシ−5−スルホアニリノ)−1,3,5−トリアジン二ナトリウム塩(上で調製)(6.5ミリモル、f.w.=621.85)を、試薬グレードの乾燥ジメチルスルホキシド40mL中に懸濁する。混合物を攪拌しながら、窒素雰囲気下で24時間110℃に加熱する。反応混合物を室温まで冷却し、終夜放置する。出発アミンの結晶を溶液から結晶化させ、そしてろ過によって取り除く。ろ液に蒸留水60mLを添加し、次いで6MのHClをpHが約1.5になるまで滴下によって添加し、そして最後に、飽和NaCl溶液(塩水)を室温で滴下によって添加し、生成物を溶液から晶出させる(約30mLの塩水)。この反応混合物を室温で約1時間攪拌し、次いでろ過する。固形生成物を95%のエタノールで繰り返し洗浄し、次いで真空下で乾燥させて、3.66gの所望の生成物(収率82%)を得、これはHPLCによって約96%の純度である。
【0144】
実施例3 − タンパク質混合物の置換クロマトグラフィー
破過実験。ローディング緩衝液中のウシβ−ラクトグロブリンAの5mM溶液、およびローディング緩衝液中のウシβ−ラクトグロブリンBの5mM溶液を用いて、0.1〜0.5mL/分の間の様々な流速で破過実験を行う。ローディング緩衝液は、25mMのBHEP(1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン)から調製し、そしてHClでpH=7.7に調整する。再現可能な結果は、流速0.18mL/分で得られる。カラム飽和容量は、ウシβ−ラクトグロブリンBについては459mg(108.2mg/mL)であり、そしてウシβ−ラクトグロブリンAについては463mg(109.2mg/mL)である。これらの実験には、ボトルから直接とり出した未精製のラクトグロブリン(Sigma)を用いる。
【0145】
カラム調製。カラム(Tosoh Super Q−5PW、6.0×150mm)を、メソッドA(下記)を用いて洗浄および再生し、次いで、塩化ナトリウム緩衝液(2.0M NaCl+25mM BHEP、HClでpH=7.7)中で塩化物形態として保存する。カラムのアウトプットは、280nmおよび312nmでモニターされた紫外/可視フロー検出器、電気伝導度フローセルおよびpHフローセルを通過させる。カラムを流速0.18mL/分のローディング緩衝液(上記参照)で平衡化する。3つ全てのシグナル(UV吸収、電気伝導度、pH)が安定した平坦なベースラインを形成すると(約24分、1CV)、置換実験をすぐに開始する。
【0146】
置換実験。ウシβ−ラクトグロブリンB(12.6mg/mL、Sigma#L8005)の溶液およびウシβ−ラクトグロブリンA(13.4mg/mL、Sigma#L7880)の溶液を、ローディング緩衝液(上記参照)中で調製する。タンパク質の濃度を、BCA−CopperおよびBradfordアッセイを用いて決定する。これらの2つのシトクロム溶液を等容量で混合し、20.0mLの試料ループにロードし、次いで洗浄され適切に平衡化された陰イオン交換カラム(上記参照)に0.36mL/分の定流速で57分間、送液する。このループをインプット流路外から切り換え、そしてローディング緩衝液を0.36mL/分で12分間カラムに送液する。最後に、ローディング緩衝液中の5.0mMのAD1置換剤溶液を0.18mL/分でカラムに送液し、そしてカラムのアウトプットを紫外/可視フロー検出器(10μLフローセル、280、312、380nmでモニター)を経由してフラクションコレクターへと通過させる。画分を1.00分毎に収集する;先の経験に基づいて、タンパク質を含まない初期の画分を廃棄する。電気伝導度フローセルおよびpHフローセル(上記参照)は、置換実験の経過をモニターするために、通常は紫外/可視検出器の後ろのアウトプット経路にある;しかしながら、画分を収集する場合は、これらの2つのセルは、置換ピーク間の移行の幅を広げないように流路外に切り換える。一旦収集すると、画分を、後のHPLC分析のために密封し冷蔵する。置換実験は周囲温度(22℃)で実施する。この置換トレースを、図1に示す。
【0147】
ラクトグロブリンのHPLC分析。HPLC画分分析の詳細を以下に示す。
カラム:
内寸4.6×200mmのステンレススチールカラム
PolyLC(Columbia、MD)製
PolyWAX LP、弱陰イオン交換シリカベースマトリックス
粒子径5μm、細孔径300オングストローム
緩衝溶媒:
HPLCグレード蒸留水
溶出緩衝液:
A−50mM N(CHCHOH)、HClでpH=7.8、溶媒は10/90(v/v)のアセトニトリル/水
B−0.50M NaCl+50mM N(CHCHOH)、HClでpH=7.8、溶媒は10/90(v/v)のアセトニトリル/水
溶出緩衝液を、0.2μmフィルターを通して濾過して粒子を除去する。
流速:
定流速は1.0mL/分である。
勾配方法:
0〜2分 100%A、定組成
2〜52分 100%Aから100%B、線形勾配
52〜56分 100%B、定組成
UV検出器の波長:
312nmおよび380nm−AD1のみ
280nm−タンパク質+AD1
試料調製:
10μLの画分試料および140μLの希釈緩衝液を混合し、この混合物50μLをカラムに注入する。正確な希釈係数は重量によって決定される。
【0148】
この分析下で、各Sigmaラクトグロブリンは、1つの主要ピーク、1つの主要イソフォームピーク、いくつかの(3〜4)小さなイソフォームピーク、および不純物タンパク質によるいくつかの(4〜5)小さなピークを示した。ボトルからの、ウシβ−ラクトグロブリンBの純度は約95%であり(タンパク質不純物に基づく)、そしてウシβ−ラクトグロブリンAの純度は約97%である。β−ラクトグロブリンAとは異なって、β−ラクトグロブリンBは、顕著なレベルの無機塩類および緩衝液を含んだ。151の収集した試料の全てをこのように分析し、280nmからのデータを、図2および以下の表に示す。カラムからの全タンパク質の回収率は97%である。
【0149】
精製タンパク質: ラクトB ラクトA
試料プール: 12〜61 77〜137
HPLC純度: >99.9% >99.9%
回収量: 103.2mg 112.0mg
回収率%: 84.6% 86.2%
回収率%: 81.9% 83.6%
AD1測定値: ND(<0.5ppm) 1.3ppm
AD1推定値: <50ppb 1.1ppm
ND=検出せず
*プールされた画分における濃縮または透析前
1.主要ピーク
2.全タンパク質
【0150】
カラム洗浄および再生プロトコール。ほとんどの陰イオン交換マトリックスに対するAD1の強い結合のために、発明者らは、ほとんどのマトリックスについて塩化ナトリウムよりも臭化ナトリウムがより有用であることを見出した。時には、コハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムが用いられる。
【0151】
メソッドA:洗浄+再生(再生効率99%)
(流量は全て0.64mL/分である)
2.0M NaBr 133分 20CV
+ 0.1M グリシン(HBrでpH=2.5)
80/20(v/v)水/アセトニトリル
0.1M トリエタノールアミン(HBrでpH=7.8) 17分 2.5CV
0.1M NaOH 30分 4.5CV
0.1M トリエタノールアミン(HBrでpH=7.8) 17分 2.5CV
2.0M NaCl + 25mM BHEP(pH=7.7) 34分 5CV
【0152】
メソッドB:洗浄+再生(再生効率100%)
(流量は全て0.64mL/分である)
2.0M (CHNBr 100分 15CV
+ 0.1M グリシン(HBrでpH=2.5)
80/20(v/v)水/アセトニトリル
0.1M トリエタノールアミン(HBrでpH=7.8) 17分 2.5CV
0.1M (CHNOH 30分 4.5CV
0.1M トリエタノールアミン(HBrでpH=7.8) 17分 2.5CV
2.0M NaCl + 25mM BHEP(pH=7.7) 34分 5CV
【0153】
実施例4:ポリ陰イオン性ビフェニル化合物の合成
本明細書で開示した置換剤化合物は、上に示した一般構造(IV−C)を有するポリ陰イオン性ビフェニル化合物を含む。このようなポリ陰イオン性ビフェニル化合物の具体例を、図3に示す。
【0154】
以下の開示は、図3に例示したポリ陰イオン性ビフェニル化合物のうち少なくともいくつかの合成の詳細を提供する。これらの例示したポリ陰イオン性ビフェニル化合物の他の多くのイソフォームおよび同属種が、必要に応じて適用される同様の方法によって合成可能であることは、当業者に認識される。本明細書に記載されるように、一般構造(IV−C)を有する全てのポリ陰イオン性ビフェニル化合物は、置換剤化合物としての有用性を有する。
【0155】
図3に示すように、例示的な化合物はA〜Mの文字によって表され、その文字は、1つの芳香族環上に表示される。以下では、化合物を、これらのA〜Mの文字で適宜表す。上記のように、図3の化合物Iは、上に示した構造(IV−B)に対応する。
【0156】
出発ビフェニル化合物を、まずはそれらの化学名によって、次いで、参照を容易にするための呼称a〜m(得られるポリ陰イオン性ビフェニル化合物A〜Mに対応する)によって、以下に示す。
【0157】
出発ビフェニル化合物a〜mは、以下の表1に示す出発材料から公知の方法によって合成され得る。
【0158】
ポリ陰イオン性ビフェニル化合物の各々は、以下に記載した方法によって調製され得、そして以下の表2に要約される。
【0159】
【表1】

【0160】
【表2】

【0161】
表1および表2における上記の方法(例えば、ビフェニル化合物を調製するためのメソッド1〜4、および、ポリ陰イオン性ビフェニル化合物を調製するためのメソッド5a〜5c)を、以下に記載する。当業者に認められるように、以下の合成は、所望の生成物を得るために必要に応じて変更され得る。
【0162】
メソッド1: 4,4’−ジメチルビフェニル−3,3’−ジカルボン酸(b)(fw=270.28)
28.02gのNaOH溶液(50%水溶液、350ミリモル、fw=40.01)、90.0gの蒸留水、および0.42gの5%Pd/C触媒を、250mLの3首丸底フラスコに入れ、次いで磁気攪拌しながら40℃に5分間温める。2.11gのホルミルヒドラジン(35ミリモル、fw=60.06)を添加し、そして混合物をさらに10分間、40℃で攪拌する。次いで、21.51gの5−ブロモ−o−トルイル酸(100ミリモル、fw=215.05)を、15分間にわたって少量ずつ添加すると、激しいNの発生および緩やかな発熱を生じる(約60℃)。反応混合物を85℃に加熱し、そしてこの温度で3時間維持する。
【0163】
触媒を除去するために、温かい反応混合物をろ紙に通す。ろ液を90℃に加熱し、次いで濃塩酸水溶液(37%)を滴下によって慎重に添加し、混合物のpHを1.0よりも低くする。酸を加えると、熱溶液から白色の生成物が結晶し始める。熱混合物(約70〜80℃)を、ガラスフィルターを通して迅速にろ過し、希塩酸水溶液(周囲温度)で洗浄し、次いで蒸留水(周囲温度)で洗浄する。フィルターを通して空気を吸引することによって生成物を乾燥させる。単離収量は、白色結晶質粉末で約11.62グラム(86%)である。
【0164】
メソッド2: 4,4’−ジフルオロビフェニル(m)(fw=190.19)
60.02gのNaOH溶液(50%水溶液、750ミリモル、fw=40.01)、77.08gの(CHOH溶液(37%水溶液、313ミリモル、fw=91.12)、および1.60gの5%Pd/C触媒を、500mLの3首丸底フラスコに入れ、次いで、磁気的にまたは機械的に激しく攪拌しながら40℃に5分間温める。15.80gのホルミルヒドラジン(263ミリモル、fw=60.06)を添加し、そして混合物をさらに10分間40℃で攪拌する。次いで、75.0gの1,2−ジメトキシエタン(DME)および131.3gの4−ブロモフルオロベンゼン(750ミリモル、fw=174.96)の混合物を、添加漏斗を用いて15分間にわたって添加する。緩やかな発熱(約65℃)に伴って、激しいNの発生が認められる。反応混合物を75℃に加熱し、そしてこの温度で3時間維持する。同様の化合物では、反応混合物を通常85℃に加熱するが、不必要な昇華による生成物の損失を低減させるために、ここでは75℃が用いられる。低沸騰のテトラヒドロフランが、時にDMEの代わりに用いられる。
【0165】
濃塩酸を用いて残留塩基を中和し、次いで触媒を、温かい反応混合物をろ紙に通すことによって除去し、続いてジエチルエーテルで洗浄する。上の有機層を、分液漏斗を用いて下の水層から分離する。水層を、250mLのジエチルエーテルを用いて1度抽出し;上の有機層を分離して、先の有機層と合わせる。合わせた有機層を、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、そしてろ過して固形物から分離し、固形物をエーテルでさらに洗浄する。有機層を、減圧下でロータリーエバポレーターに入れ;最初にエーテルを、続いてDMEを除去する。無色の油の形態は、美しい白色結晶へと変化する。全てではないが大部分のDMEを減圧下で除去する。なぜなら、そうでなければ昇華によって非常に多くの生成物が失われるからである。残液を、白色結晶から慎重に排出させ、続いて冷n−ペンタン(−20℃)で洗浄する。排出液を、等量のn−ペンタンと合わせ、そして−20℃で終夜冷却して、そこから純粋な結晶である第2の収穫物を得る。生成物は、ガラスフィルターを通して暫時空気を吸引することによって乾燥させる;生成物の過度の損失を避けるため、この工程は必要以上に長く実施しない。単離収量は、白色結晶質粉末で約54.92g(77%)である。最終生成物は、ほとんどの用途に十分足りる純度(>99%)である。必要であれば、生成物は、温n−ヘキサンから昇華または再結晶させることができる。
【0166】
メソッド3: 4,4’−ジメチルビフェニル−3−カルボン酸(e)(fw=226.27)
28.54gの炭酸テトラメチルアンモニウム溶液(27%水溶液、37ミリモル、fw=208.30)、24.0gの蒸留水、および30.0gのPEG−2000を、100mLの3首丸底フラスコに入れ、次いで、磁気攪拌しながら50℃に加熱する。この系を脱気し、N雰囲気下に置く。23mgの酢酸パラジウム(0.10ミリモル、fw=224.50)を、攪拌している混合物に添加する。数分後、パラジウム化合物が完全に溶解し、そしてこの系を再び脱気し、そして温度を30℃に下げる。2.15gの5−ブロモ−o−トルイル酸(10ミリモル、fw=215.05、微粉末)を、攪拌している混合物に一気に添加し、次いで、この系を脱気する。数分間のうちに溶解が完了する。最後に、1.64gの4−トリルボロン酸(12ミリモル、fw=135.96、微粉末)を、攪拌している混合物に添加し、再び脱気する。反応混合物を、30℃で1時間維持し、次いで50℃に上昇させて、ブロモトルイル酸を完全に反応させる(>99.5%転換、AIX HPLCで測定)。反応物添加後の加熱時間の合計は、約1.5時間である。
【0167】
析出したパラジウムを除去するために、温かい反応混合物を、Whatmanろ紙#5上のセライトベッドに通してろ過し、次いで、セライトを、周囲温度にて85mLの2.5%炭酸テトラメチルアンモニウム溶液で洗浄する。反応混合物および洗浄液を合わせて90℃に加熱し、次いで濃塩酸水溶液(37%)を滴下によって慎重に添加し、混合物のpHを1.0よりも低くする。酸を加えると、相当な量のCOを放出し、次いで熱溶液から白色の生成物が結晶し始める。熱混合物(約80℃)を、ガラスフィルターを通して迅速にろ過し、希塩酸水溶液(周囲温度)で洗浄し、次いで50/50のアセトニトリル/水(周囲温度)で洗浄し、そして最後に、フィルターを通して空気を吸引することによって乾燥させる。単離収量は、白色結晶質粉末で2.07グラム(91%)である。
【0168】
メソッド4: 4−メチル−4’−ヒドロキシビフェニル(j)(fw=184.24)
2.34gの無水炭酸ナトリウム(22ミリモル、fw=105.99)、1.73gの4−ブロモフェノール(10ミリモル、fw=173.01)、35mLの蒸留水および35mLのアセトンを、100mLの3首丸底フラスコに入れ、次いで磁気攪拌しながら35℃に加熱する。11mgの酢酸パラジウム(0.049ミリモル、fw=224.50)を、攪拌している混合物に添加する。数分後、パラジウム化合物が完全に溶解し、そして1.77gのp−トリルボロン酸(13ミリモル、fw=135.96)を攪拌している混合物に一気に添加する。この系を脱気し、そしてN雰囲気下に置く。反応混合物を、35℃で1時間維持する。
【0169】
濃塩酸水溶液を滴下によって添加して残留塩基(炭酸塩)を中和し、次いで減圧下でアセトンを除去する。生成物を、残留触媒の一部とともにろ過によって取り出す。固形物を、50mLのジエチルエーテルに溶解し、そして無水硫酸マグネシウムで乾燥させる。固形物をろ過によって取り出し、そしてエーテルを減圧下で除去し、1.61gの粗生成物を生じる。この粗生成物を、熱エタノール−水(50/50 w/w)または熱n−ヘキサンから再結晶させ、1.22gの白色結晶(66%)を得る。
【0170】
メソッド5a: 3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル−5,5’−ジスルホン酸(D)(fw=434.35)
精製した4,4’−ジヒドロキシビフェニル−3,3’−ジカルボン酸を、110℃のオーブンで数時間乾燥させて残留水分を除去し、次いで13.72g(50ミリモル、fw=274.23)を、53.4gの30%発煙HSO(既知濃度の新たなボトル、200ミリモルSO、fw(SO3)=80.06)が入った100mLの1首フラスコに一気に添加する。フラスコを、SOを反応混合物に戻すための効率的なコンデンサーおよび良好にテフロン(登録商標)コートされた磁気攪拌器に取り付ける。湿った空気を入らせないために、反応はわずかに陽圧にした乾燥N雰囲気下で実施される。粘性の混合物を約30分間周囲温度で攪拌し、固形物が硫酸溶媒中に均一に分散していることを確実にする。フラスコを70℃に維持した油浴に部分的に浸漬し、次いで必要な時間(通常は約24時間)攪拌する。数分から数時間のうちに反応は明らかになり、そして攪拌は低粘度の均一な媒体中でより効率的になる。反応混合物をAIX HPLCを用いてモニターし、モノスルホン化中間体の出現、次いで完全な消失を観察し得る。油浴を除去した後、反応混合物を周囲温度まで冷却し、次いで14.8gの蒸留水を攪拌している混合物に滴下によって慎重に添加する。この水の添加は非常に発熱を伴うので、水の添加速度、または時々外部からの冷却によって制御する。水の添加が完了するまで、反応混合物の温度を、70〜85℃の間で維持する。反応生成物は、純粋な硫酸にはかなり可溶であるが、75%の硫酸にはそれほど可溶ではない。反応混合物を、攪拌しながら室温まで冷却する。数時間(時に終夜)後、白色生成物が溶液から結晶し、多くの場合固形塊を形成する。冷却している混合物に生成物の種結晶を添加すると、結晶化は加速される。全ての4,4’−ジヒドロキシビフェニルを高温で空気から保護し、不必要な酸化を防ぐ。反応混合物を4℃に数時間冷却し、次いで110mLの冷プロピオニトリルを攪拌しながら添加する;時に、プロピオニトリルの代わりにアセトニトリルを用いる。この混合物は、結晶化をさらに促進し、そしてろ過による酸の除去を容易にする。4℃で数時間置いた後、混合物をガラスフィルターを用いてろ過し、乾燥空気または乾燥Nをフィルターに終夜通過させることによって乾燥させ、二水和物の白色結晶として22.5gの純粋なジスルホン酸化生成物(96%)を得る。
【0171】
メソッド5b: 3−カルボキシ−4−ヒドロキシ−4’−メチルビフェニル−3’,5,5’−トリスルホン酸(F)(fw=468.43)
5aと同じ手順を、11.42gの乾燥4−ヒドロキシ−4’−メチルビフェニル−3−カルボン酸(50ミリモル、fw=228.25)および80.1gの30%発煙硫酸(300ミリモル、fw=80.06)に用いて、30℃で24時間攪拌し、次いで70℃でさらに24時間攪拌しながら加熱する。22.2gの蒸留水および145mLのプロピオニトリルを用いて結晶化させる。トリスルホン化生成物の収量は、二水和物の白色結晶として21.2g(84%)である。
【0172】
メソッド5c: 4,4’−ジフルオロビフェニル−3,3’,5,5’−テトラスルホン酸(K)(fw=510.44)
5aと同じ手順を、9.51gの乾燥4,4’−ジフルオロビフェニル(50ミリモル、fw=190.19)および106.8gの30%発煙硫酸(400ミリモル、fw=80.06)に用いて、30℃で24時間攪拌し、次いで110℃でさらに72時間攪拌しながら加熱する。29.6gの蒸留水および185mLのプロピオニトリルを用いて結晶化させる。テトラスルホン化生成物の収量は、一水和物の白色結晶として17.2g(65%)である。
【0173】
当業者に理解されるように、同様のおよび類似したメソッドが、図3に示す化合物の調製に用いられ得、その全てが、上に示した一般式(IV−C)によって記載される。
【0174】
本明細書に記載されたおよび本願で請求された全ての組成物および方法は、本明細書の開示を考慮しおよび当業者の知識に基づいて、過度の実験を要することなく、当業者によって作製および実施され得る。本発明の組成物および方法は、特定の好ましい実施態様に関して記載されているが、発明の概念、趣旨、および範囲から外れることなく、本明細書に記載された組成物および/または方法および当該方法の工程もしくは工程の順序に変更が適用され得ることは、当業者に明らかである。より具体的には、本明細書に記載された薬剤の代わりに、化学的または生理学的に関連するある種の薬剤を用いて、同じまたは類似の結果が得られるであろうことは明らかである。当業者に明らかなこのような類似の代用物および改変は全て、添付の請求の範囲に定義される、本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内にあると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の実施態様における、ウシβ−ラクトグロブリンAとウシβ−ラクトグロブリンBとの混合物の置換クロマトグラフィーの間の、種々の波長における紫外/可視HPLC検出器のアウトプットを表すグラフである。
【図2】本発明の実施態様における、ウシβ−ラクトグロブリンAとウシβ−ラクトグロブリンBとの混合物の置換クロマトグラフィーの間に収集された画分の濃度を表すグラフである。
【図3】本発明の実施態様における複数の化合物の構造式を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換クロマトグラフィー方法であって、
1以上の分離される成分を含む混合物を、陰イオン交換材料を含む固定相にロードする工程;
一般式:
Cen(Ar)
を有するポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物を含む混合物を該固定相にアプライすることによって、該固定相から該1以上の成分の少なくとも1つを置換する工程であって、
式中、
Cenは、結合、アルケニル基、アルキニル基、ベンゼン環、ビフェニレン、ナフチレン、または
【化1】

または
【化2】

であって、
式中:
Rは、独立して、−H、C〜Cアルキル、またはC〜Cヒドロキシアルキルであり;
Zは、独立して、−H、ハロゲン、−OH、−OR、−NRCHCH(OH)CHOH、−NR、−N[CHCH(OH)CHOH]、−NRC(CHOH)、−NRCH(CHOH)、または−N(R)(ポリ(アルキレンオキシド)であり;
wは、2からCen上の置換可能位置の最大数であり;そして
Arは(a)、(b)および/または(c)であり;そして、以下の(a)、(b)および(c)の式中:
Anは、独立して、スルホナート、カルボキシレート、ホスホナート、ホスフィナート、ホスファート、ホスファートモノエステルまたはジエステル、スルファート、スルファートモノエステル;またはボロナートであり;
Gは、独立して、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜C10アリール、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、シアノ、−NH、−NRH、−NR、−NHC(O)R、−CHO、−C(O)Rであり;そして
(a)、(b)および(c)は:
(a)Ar=
【化3】

(a)の式中:
x=1〜3
y=2〜4
x+y=5であり;および/または
(b)Ar=
【化4】

または
【化5】

(b)のいずれの式中においても:
x=1〜3
y=4〜6
x+y=7であり;および/または
(c)Ar=
【化6】

(c)の式中:
x=1〜3
y=1〜3
x+y=4である、工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記1以上の成分が、1以上のポリペプチド、1以上のタンパク質、1以上の天然または組換えのオリゴヌクレオチド、1以上の天然または組換えのDNA、1以上の天然または組換えのRNA、またはそれらのいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物の成分が、該成分が実質的に富化されている画分、および/または該成分が該混合物の他の成分から実質的に分離されている画分において、前記固定相から置換される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物が、少なくとも2つの分離される成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物が、少なくとも1つの前記成分および少なくとも1つの不純物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記固定相から出てくる前記成分および前記置換剤化合物の1以上を検出する工程をさらに含み、該検出工程が、紫外/可視吸光分析法、蛍光発光分析法、質量分析法、pH、電気伝導度、および1以上の電気化学的方法の1以上による、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記固定相を再生する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記再生工程が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類塩、有機酸、アルキルスルホン酸、四級アンモニウム水酸化物、四級アンモニウム塩、アルキルアミンの1以上の溶液で前記固定相を処理する工程を含み、該溶液が適切なpH緩衝剤をさらに含み得る、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記再生工程が、水と有機共存溶媒とを含む溶液で前記固定相を処理する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物が、式(I):
【化7】

を有する、請求項1に記載の方法であって、
(I)の式中、各An、各G、各xおよび各yは独立して選択され得、そして請求項1に記載のように定義される、方法。
【請求項11】
前記ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物が、式(I−A):
【化8】

を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物が、式(II):
【化9】

を有する、請求項1に記載の方法であって、
(II)の式中、各An、各G、各R、各xおよび各yは独立して選択され得、そして請求項1に記載のように定義される、方法。
【請求項13】
前記ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物が、式(II−A):
【化10】

を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物が、式(III):
【化11】

を有する、請求項1に記載の方法であって、
(III)の式中、各An、各G、各R、各xおよび各yは独立して選択され得、そして請求項1に記載のように定義される、方法。
【請求項15】
前記置換剤化合物が、式(III−A):
【化12】

を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物が、式(IV):
【化13】

を有する、請求項1に記載の方法であって、
(IV)の式中、各An、各G、各xおよび各yは独立して選択され得、そして請求項1に記載のように定義される、方法。
【請求項17】
前記置換剤化合物が、式(IV−A):
【化14】

を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記置換剤化合物が、式(IV−B):
【化15】

を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物が、式(IV−C):
【化16】

を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物が、式(V):
【化17】

を有する、請求項1に記載の方法であって、
(V)の式中、各An、各G、各xおよび各yは独立して選択され得、そして請求項1に記載のように定義される、方法。
【請求項21】
前記置換剤化合物が、式(V−A):
【化18】

を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物が、式(VI):
【化19】

を有する、請求項1に記載の方法であって、
(VI)の式中、各An、各G、各xおよび各yは独立して選択され得、そして請求項1に記載のように定義される、方法。
【請求項23】
前記置換剤化合物が、式(VI−A):
【化20】

を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記置換剤化合物が、式(VII)または式(VII−A):
【化21】

【化22】

を有する、請求項1に記載の方法であって、
(VII)および(VII−A)の式中、各An、各G、各xおよび各yは独立して選択され得、そして請求項1に記載のように定義される、方法。
【請求項25】
前記置換剤化合物が、式(VII−B):
【化23】

を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記置換剤化合物が、式(VII−C):
【化24】

を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記置換剤化合物が、式(VII−D):
【化25】

を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの抗体、またはこのような抗体のいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの酵素、またはこのような酵素のいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記混合物が、診断に使用するための1以上の天然または組換えのタンパク質および/またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記混合物が、ヒトまたは動物の治療的使用のための1以上の天然または組換えタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの動物またはヒトの血漿に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの植物性材料に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記混合物が、動物またはヒトの乳または組換え動物から得られた乳の1以上に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの鳥卵に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの細菌、酵母、真菌、ウイルスまたは昆虫に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの哺乳類の細胞培養物または動物組織に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはこのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記混合物が、1以上の有機化合物、医薬品または医薬品中間体、またはそれらのいずれか2以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記1以上の有機化合物、医薬品または医薬品中間体の1以上が、キラルである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
一般式:
Cen(Ar)
を有する、ポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物であって、
式中、
Cenは、結合、アルケニル基、アルキニル基、ベンゼン環、ビフェニレン、ナフチレン、または
【化26】

または
【化27】

であって、
式中:
Rは、独立して、−H、C〜Cアルキル、またはC〜Cヒドロキシアルキルであり;
Zは、独立して、−H、ハロゲン、−OH、−OR、−NRCHCH(OH)CHOH、−NR、−N[CHCH(OH)CHOH]、−NRC(CHOH)、−NRCH(CHOH)、または−N(R)(ポリ(アルキレンオキシド)であり;
wは、2からCen上の置換可能位置の最大数であり;そして
Arは(a)、(b)および/または(c)であり;そして、以下の(a)、(b)および(c)の式中:
Anは、独立して、スルホナート、カルボキシレート、ホスホナート、ホスフィナート、ホスファート、ホスファートモノエステルまたはジエステル、スルファート、スルファートモノエステル;またはボロナートであり;
Gは、独立して、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜C10アリール、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、シアノ、−NH、−NRH、−NR、−NHC(O)R、−CHO、−C(O)Rであり;そして
(a)、(b)および(c)は:
(a)Ar=
【化28】

(a)の式中:
x=1〜3
y=2〜4
x+y=5であり;および/または
(b)Ar=
【化29】

または
【化30】

(b)のいずれの式中においても:
x=1〜3
y=4〜6
x+y=7であり;および/または
(c)Ar=
【化31】

(c)の式中:
x=1〜3
y=1〜3
x+y=4である、
化合物。
【請求項41】
式(I)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項42】
式(I−A)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項43】
式(II)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項44】
式(II−A)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項45】
式(III)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項46】
式(III−A)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項47】
式(III−B)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項48】
式(IV)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項49】
式(IV−A)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項50】
式(IV−C)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項51】
式(V)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項52】
式(V−A)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項53】
式(V−B)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項54】
式(VI)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項55】
式(VII)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項56】
式(VII−A)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項57】
式(VII−B)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項58】
式(VII−C)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項59】
式(VII−D)を有する、請求項40に記載のポリ芳香族ポリ陰イオン性置換剤化合物。
【請求項60】
ポリスルホン化ポリ芳香族化合物を作製するための方法であって:
硫酸溶液を提供する工程;
ポリ芳香族化合物を該硫酸溶液に直接添加する工程;および
該溶液から該ポリスルホン化ポリ芳香族化合物を回収する工程
を含む、方法。
【請求項61】
前記ポリ芳香族化合物が、テトラフェニルエチレンである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記ポリスルホン化ポリ芳香族化合物が、化合物(I−A)である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記置換剤化合物が、以下の式(III−B):
【化32】

を有する、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−518627(P2009−518627A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543470(P2008−543470)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/045872
【国際公開番号】WO2007/064809
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(507374789)サッチェム,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】