説明

陶器切削工具およびその運転方法

【課題】 リム切断作業を短時間で終了させると同時に作業者による切削面の仕上りのばらつきをなくし、さらに、作業姿勢を頻繁に変えることなく効率的に切削作業ができる陶器切削工具を提供すること。
【解決手段】 陶器を切断する円盤状回転刃と、この円盤状回転刃の回転駆動装置とを備えたカッターと、前記カッターを保持するフレーム部と、前記フレーム部を設置面に対して平行に支持する複数の脚部とを備えた陶器切削工具であって、前記円盤状回転刃は前記フレーム部より下方で前記設置面に対して平行に位置するように取り付けられ、前記カッターは前記円盤状回転刃の一部分を覆う円盤状回転刃保護カバーを備え、この円盤状回転刃保護カバーが前記円盤状回転刃を覆う面積が可変するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレブースの既設の和風便器を取外す際に用いる陶器切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は特願2000−237969号において、多層階の建築物に設置されている和風便器を設置階からだけの作業で取り外し、他衛生設備を施工する工法を提案している。本工法においては既設の床下陶器及び配管を再利用するため、和風便器の便鉢部上部およびリム部を除去する必要がある。従来その除去方法として次のような方法が行われていた。まず和風便器にケガキ線記入後、前立てを例えば一般的なディスクグラインダーなどの乾式切削工具で切断する。次に、リムを記入されたケガキ線に沿って縦横方向に細断しながらリム下約70mm位置を略水平に全周切断する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の切断作業は切削工具を作業者が手に持って行うため、作業効率が悪く、また作業者によってリム下切削寸法にバラツキが発生する。さらに、切削は乾式のため粉塵を伴うが、切削作業者は両手で切削工具を保持している為、もう一人の作業者がその粉塵を掃除機などの吸引装置を操作して吸引することとなり2人作業となっていた。
また、一般的なカッターのダイヤモンドホイールカバーはカッター本体に固定された状態でダイヤモンドホイールの平面視円周角度の約180°をカバーしている。そのため便器のリム全周を切断するには常にダイヤモンドホイールの露出している側を被切削面に向ける必要があり、作業姿勢が一定せず切断面の仕上がりにばらつきが生じ易く時間もかかっていた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、リム切断作業を短時間で終了させると同時に作業者による切削面の仕上りのばらつきをなくし、粉塵回収まで一人作業が可能とし、さらに、作業姿勢を頻繁に変えることなく効率的に切削作業ができる陶器切削工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明の陶器切削工具では、陶器を切断する円盤状回転刃と、この円盤状回転刃の回転駆動装置とを備えたカッターと、前記カッターを保持するフレーム部と、前記フレーム部を支持する複数の脚部とを備えた陶器切削工具であって、前記円盤状回転刃は前記フレーム部より下方に位置するように取り付けられ、前記カッターは前記円盤状回転刃の一部分を覆う円盤状回転刃保護カバーを備え、この円盤状回転刃保護カバーが前記円盤状回転刃を覆う面積を可変としたことを特徴とする。
また、好ましくは前記円盤状回転刃保護カバーは陶器切削時に前記円盤状回転刃保護カバーが前記陶器内壁に接触すると、その反力を利用してカバーの平面視円周角度を小さくして円盤状回転刃の露出部が増やすようにすることを特徴とする。
このことにより、例えば通常は円盤状回転刃保護カバーの平面視円周角度の180°をカバーしているが切削時に同カバーが便器内壁に接触するとその反力を利用してカバーの平面視円周角度を小さくして円盤状回転刃の露出部が増やすようにすることにより作業姿勢を頻繁に変えることなく効率的に切削作業ができる。この時露出した円盤状回転刃は便器内部に入り込んでいるので平面視カバーから露出していないため安全性も損なわず作業が可能となる。
さらに、カッターの円盤状回転刃の刃面を設置面と略平行にすることにより、和風便器を設置面に対して平行に連続して切削していくことができ、作業者による切削面の仕上がりばらつきが解消できる。また、和風便器の切削部のR(アール)が小さい部分においても円盤状回転刃をスムースに移動させて切削していくことができ作業効率が向上する。
【0005】
また、本発明の好ましい態様においては、前記フレーム部と前記円盤状回転刃との間に遮蔽板を設けるようにする。遮蔽板を設けることにより、被切断物の破片の飛散を抑えることができ、同時に発生する粉塵の拡散抑制効果もあるため、作業者の安全性や衛生性を確保することができ、また切断後の清掃作業も効率的になる。
【0006】
また、本発明の好ましい態様においては、前記遮蔽板は透明であるようにする。遮蔽板を透明とすることで、作業者が切削状況を常時確認することが可能となり、切削速度などの調節が容易となり安全に作業を行うことができる。
【0007】
さらに、本発明の好ましい態様においては、前記遮蔽板に切削粉塵吸引口を設けるようにする。そうすることにより、切断時の粉塵排出作業が容易に行えるようになる。
【0008】
また、別の本発明として、請求項6に記載の陶器切削工具の運転方法であって、前記切削粉塵吸引口から粉塵を吸引しながら切削を行うことを特徴とする陶器切削工具の運転方法を提供する。遮蔽板に設けた切削粉塵吸引口に、例えば市販の掃除機などの吸引装置を接続し、吸引しながら切断作業を行うことにより、粉塵拡散を防止することができ、切断作業時において作業者の吸塵装置着用が不要になる。
【0009】
本発明の好ましい態様においては、前記陶器切削工具の脚部と接触する設置面に敷板を介設するようにする。陶器切削工具の脚部が移動する設置面上に設置面の凹凸を吸収する敷板を使用すれば、例えば床タイル目地などの凹凸を平滑にすることができ、脚部がスムーズに移動できるようになる。
【0010】
また本発明においては、陶器を切断する円盤状回転刃と、この円盤状回転刃の回転駆動装置とを備えたカッターと、前記カッターを保持するフレーム部と、前記フレーム部を前記設置面に対して略平行に支持する複数の脚部と、前記カッターに前記円盤状回転刃を覆う面積を可変とした円盤状回転刃保護カバーとを備えた陶器切削工具を、前記複数の脚部を前記設置面に接触させて前記設置面上に載置し、前記円盤状回転刃を和風便器の内面に切り込ませ、前記陶器切削工具を和風便器の長手方向へ移動させることを特徴とする和風便器切削工法を提供する。
本発明に係る和風便器切削工法によれば、設置階からだけで和風便器から他の衛生設備への施工を短期間で行うことができ、リム下面切断作業を短時間で終了させると同時に作業者による切削面の仕上がりのばらつきをなくすことができる。さらに、作業姿勢を頻繁に変えることなく効率的に切削作業ができる
【発明の効果】
【0011】
本発明の陶器切削工具によれば、設置階からだけで和風便器から他の衛生設備への施工を短期間で行うができ、リム下面切断作業を短時事間で終了させると同時に作業者による切削面の仕上りのばらつきをなくし、切削時の発塵飛散抑制と粉塵回収まで一人作業が可能となる。さらに、円盤状回転刃の露出部が増やすようにすることにより作業姿勢を頻繁に変えることなく効率的に切削作業ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照して本発明の一実施態様を説明する。図1は本発明に係る陶器切削工具及び和風便器との取り合いを示す正面図であり、図2は同平面図、図3はダイヤモンドホイール保護カバーを説明する図である。まず図1において、フレーム1は床面FLに対して略平行に位置しその両端に脚部2がフレーム1に対して垂直に固定されている。脚部2はP視で示すように、脚部2に長穴3を形成し、ボルト・ナットにより上下方向に調節可能にフレーム1に固定している。脚部2の床面FLとの接触面の端部2aは上方に5°程度の角度を設けた傾斜面2bとし床面FLと引っ掛かりを防止するようにしている。カッターは円盤状回転刃のダイヤモンドホイール7とこのダイヤモンドホイール7を回転駆動する電動機4とで構成し、電動機4はフレーム1の下面に取り付けられた電動機4の固定プレート5に垂直に固定され、ダイヤモンドホイール7は電動機4の先端軸に取り付けられている。
【0013】
ダイヤモンドホイール保護カバー6は電動機4の先端にフレーム1に平行に電動機4の先端軸カバー8に固定されている。電動機4の先端軸カバー8は直径50mmと細く、直径6インチのダイヤモンドホイール7でも和風便器12の外周に貼り付けているアスファルト9まで切り込むことができる。
【0014】
固定プレート5の下方には透明の遮蔽板10が取り付けられており、その平面積は平面視におけるフレーム1の平面積と略同程度としている。
【0015】
図2に示す平面図において、陶器切削工具Aは和風便器12の長手方向に対して直角に配置し、フレーム1上に固定された取っ手13を掴んでまずダイヤモンドホイール7を和風便器12の内側面に切り込ませ、次ぎに図の矢印に示す切削方向に動作させる。上記の動作により和風便器12の片面切削後180°平面回転させ、もう一方の片面を切削することで全周カットが可能となる。遮蔽板10には切削粉塵吸引口14が穿設されており、この切削粉塵吸引口14に掃除機等の吸引装置を接続して切削粉塵を吸引している。この切削粉塵吸引口14の形状は正面視テーパー状の円筒形状にすれば、市販の掃除機等の集塵機との接続の汎用性が増す。
【0016】
図3において、ダイヤモンドホイール保護カバー6は4分円形状の第1保護カバー6aと第2保護カバー6bから構成し、電動機4の先端軸芯15を同芯として先端軸カバー8の外周に配置する。可動範囲は第1保護カバー6aは可動範囲A、第2保護カバー6bは可動範囲Bであり、電動機4の先端軸芯15を同芯に配置されたバネ16の力で図3のように広げられダイヤモンドホイール7の1/2面積を被覆する。切削時、第1保護カバー6a、第2保護カバー6bのいずれかが和風便器12内壁に接触するとその反力で順次接触していない側の保護カバー側へ可動範囲の中で先端軸芯15を中心に回転する。よって、固定式のカバーの場合はダイヤモンドホイールの露出範囲が180°程度で固定されているため和風便器12の内壁全周を切削するには切削工具自体を切削したい方向へその都度移動させる必要がある。第1保護カバー6a、第2保護カバー6bの場合は通常カバーに隠された部分が露出するのでダイヤモンドホイール7の露出範囲が最大で270°となるため切削工具自体の方向転換の回数が少なくなり切削時間が短縮される。また露出したダイヤモンドホイール7は和風便器12の内部に位置するため平面視露出しているダイヤモンドホイール7の面積は180°固定カバーと同等であり安全性も損なわない。
【0017】
本発明において、透明の遮蔽板10は内部状況が確認できるとともに電動機4の排風による和風便器12のボール鉢内の粉塵巻き上げを抑制する作用も有る。掃除機などの吸引装置を切削粉塵接続口14に取付けることで透明の遮蔽板10下面と和風便器12のリム上面との隙間から和風便器12のボール鉢内に空気が流入し、粉塵の飛散抑制もできる。
【0018】
和風便器12の外周に接着されたアスファルト9まで完全に切断されていない場合は、カッターナイフ等で切断しリム下70mmまで完全に除去する必要があるが、上記構成において、ダイヤモンドホイール7の直径を150mm以上にすれば和風便器12の外周のアスファルト9まで一度に切断することが可能になる。
【0019】
さらに上記構成において、敷板11は機能上滑りがよくて床面にキズを付けにくい材質のものが好適に用いられ、例えば樹脂板などが良い。
【0020】
さらに上記構成において、脚部2の固定にワンタッチ締め付けボルト、たとえばクランプノブ等を使用すると高さ調節が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る陶器切削工具及び和風便器との取り合いを示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】ダイヤモンドホイール保護カバーを説明する平面図と正面図である。
【符号の説明】
【0022】
A…陶器切削工具
1…フレーム
2…脚部
3…長穴
4…電動機
5…固定プレート
6…ダイヤモンドホイール保護カバー
6a…第1保護カバー
6b…第2保護カバー
7…ダイヤモンドホイール
8…電動機の先端軸カバー
9…アスファルト
10…遮蔽板
11…敷板
12…和風便器
13…取っ手
14…切削粉塵吸引口
15…電動機の先端軸芯
16…バネ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
陶器を切断する円盤状回転刃と、この円盤状回転刃の回転駆動装置とを備えたカッターと、
前記カッターを保持するフレーム部と、前記フレーム部を設置面に対して平行に支持する複数の脚部とを備えた陶器切削工具であって、前記円盤状回転刃は前記フレーム部より下方で前記設置面に対して平行に位置するように取り付けられ、前記カッターは前記円盤状回転刃の一部分を覆う円盤状回転刃保護カバーを備え、この円盤状回転刃保護カバーが前記円盤状回転刃を覆う面積を可変としたことを特徴とする陶器切削工具。
【請求項2】
前記円盤状回転刃保護カバーは陶器切削時に前記円盤状回転刃保護カバーが前記陶器内壁に接触すると、その反力を利用してカバーの平面視円周角度を小さくして円盤状回転刃の露出部が増やすようにすることを特徴とする請求項1記載の陶器切削工具。
【請求項3】
前記フレーム部と前記円盤状回転刃との間に遮蔽板を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の陶器切削工具。
【請求項4】
前記遮蔽板は透明であることを特徴とする請求項3に記載の陶器切削工具。
【請求項5】
前記遮蔽板に切削粉塵吸引口を設けたことを特徴とする請求項3または4に記載の陶器切削工具。
【請求項6】
前記切削粉塵吸引口から粉塵を吸引しながら切削を行うことを特徴とする請求項5に記載の陶器切削工具の運転方法。
【請求項7】
前記脚部と接触する設置面に敷板を介設し、前記陶器切削工具を前記敷板上で移動させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の陶器切削工具の運転方法。
【請求項8】
陶器を切断する円盤状回転刃と、この円盤状回転刃の回転駆動装置とを備えたカッターと、
前記カッターを保持するフレーム部と、前記フレーム部を前記設置面に対して平行に支持する複数の脚部と、前記カッターに前記円盤状回転刃を覆う面積を可変とした円盤状回転刃保護カバーとを備えた陶器切削工具を、前記複数の脚部を前記設置面に接触させて前記設置面上に載置し、前記円盤状回転刃を和風便器の内面に切り込ませ、前記陶器切削工具を和風便器の長手方向へ移動させることを特徴とする和風便器切削工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−123557(P2006−123557A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354466(P2005−354466)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【分割の表示】特願2001−283405(P2001−283405)の分割
【原出願日】平成13年9月18日(2001.9.18)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】