説明

階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構

【課題】 海岸等に築造される緩傾斜護岸堤上を人が歩行しても藻類によってスリップすることなく安全に歩行できるようにする。
【解決手段】 本発明は多数の護岸ブロック2,2…を階段状に築造して成る階段式緩傾斜護岸堤1において、藻類が付着し易い箇所における各護岸ブロック2,2…上面に複数の条状突起4,4…を所定間隔を有して横方向に並設し、更に、該条状突起4,4…間に砂5,5…を充填して堆積させたことを特徴とする階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構に関するものであり、特に、歩行者が滑って転倒し易い危険箇所に砂を捕捉できる機能を有し、海岸、河川、湖沼等の護岸堤に適用される階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海岸、河川、湖沼等における緩傾斜護岸堤は、一般に複数のコンクリート製の護岸ブロックを階段状に築造して形成されている。或いはコンクリートを階段状に現場打設して築造されている。このような緩傾斜護岸堤においては、水際付近の護岸ブロック表面に藻類などが付着し滑り易くなる。このため、該藻類等が付着した階段状の護岸ブロックや現場打設コンクリート堤上を人が歩行すると、足を滑らせて転倒する等の危険がある。
【0003】
そこで、上記危険を防止する対策として特許文献1記載の水ぬれ面のすべり防止機構が提案されている。この特許文献1記載のすべり防止機構はブロック表面に縁を形成し、その中に可撓性の棒状体を多数並設せしめ、且つ、各棒状体の間隙部に細粒物を充填して成るものである。
【特許文献1】第2599266号特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の発明は以下に示す問題点がある。
a:棒状体は可撓性を有する物質であり、細粒物が該棒状体間に存在していない場合にその上を人が歩行したときには、すべる危険があり、且つ、該棒状体上に人の荷重が負荷されたとき該棒状体の物質が撓み、人はバランスを崩して転倒するという危険性がある。
b:棒状体が波浪の影響によって飛散してしまった場合には、この対策工としての効果を発揮することはできない。
c:表面に多数の棒状体を設置するため、施工期間が長くなる。
d:細粒物が堆積していない場合には、棒状体が階段上表面で非常に目立ち景観を損なう。
【0005】
そこで、上記特許文献1記載の発明の有する欠陥に鑑み、海岸等に築造されている緩傾斜護岸堤において、砂を効率良く捕捉し、藻類の付着する箇所をなくするとともに、捕捉した砂がブロック表面を移動することによってブロック上に付着した藻類をそぎ落とすことができ、確実にすべり止め効果を発揮できる階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構を提案するために解決せられるべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は該課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案せられたものであり、請求項1記載の発明は、多数の護岸ブロックを階段状に築造して成る階段式緩傾斜護岸堤において、藻類が付着し易い箇所における各護岸ブロック上面に複数の条状突起を所定間隔を有して横方向に並設し、更に、該条状突起間に砂を充填して堆積させた階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構を提供するものである。
【0007】
この構成によれば、階段状に築造された各緩傾斜護岸堤表面に設けられている条状突起は、之等条状突起間に充填された砂を良く捕捉してその流出を防止しているので、歩行者は緩傾斜護岸堤上において前記砂面を歩行することになる。
【0008】
又、請求項2記載の発明は、多数の護岸ブロックを階段状に築造して成る階段式緩傾斜護岸堤において、藻類が付着し易い箇所における各護岸ブロック上面に複数の条状突起を所定間隔を有して横方向に並設し、更に、各条状ブロック間に、砂を堆積でき、且つ、人の歩行に支障がない程度の凹凸や間隙を有する不織布、織布、マット等を敷設し、該不織布、織布、マット等の上面に砂を充填して堆積させた階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構を提供するものである。
【0009】
この構成によれば、階段状に築造された各緩傾斜護岸堤表面に設けられている各条状突起間に敷設された不織布、織布、マット等は、之等不織布、織布、マット等上に充填された砂をより極めて効率良く捕捉して流出を防止し、依って、歩行者は常に砂面を歩行することが可能となる。
【0010】
更に又、請求項3記載の発明は上記条状突起はゴム、プラスチック、コンクリート、木材、鉄等から成る階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構を提供するものである。
【0011】
この構成によれば、上記条状突起がゴム、プラスチック、コンクリート、木材、鉄等の何れの部材によっても形成でき、作業性が良い。
【0012】
又、請求項4記載の発明は上記条状突起の断面形状は多角形、半円形、平行四辺形を有して、遡上した浮遊砂を捕捉するとともに、沖側へ砂の流出を抑止できるように形成された階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構を提供するものである。
【0013】
この構成によれば、上記条状突起の各断面形状を採択することにより、遡上する砂を捕捉するとともに、各条状突起間に堆積している砂が沖側へ流出するのを抑制する。
【0014】
更に又、請求項5記載の発明は上記条状突起は藻類やぬめりが付着しないように加工されて成る階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構を提供するものである。
【0015】
この構成によれば、上記条状突起は防藻塗料による塗装或いは光触媒コーティング加工、コーラル吹付によって表面加工が施される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明は、階段状に築造された各緩傾斜護岸堤表面に設けられている条状突起が、之等各条状突起間に堆積している砂を捕捉して各条状突起間からの流出を防止しているから、歩行者が該緩傾斜護岸堤上を歩行するとき、常に前記砂面を歩行することになり、依って、スリップして転倒する等の危険が阻止される。更に、前記条状突起間に堆積している砂は、該条状突起間において該緩傾斜護岸ブロックの表面を移動して該緩傾斜護岸ブロック上面に付着している藻類やぬめりをそぎ落とす等の効果を奏する。斯くして、歩行者は極めて安全に該緩傾斜護岸堤上を歩行することが可能となる。
【0017】
請求項2記載の発明は、各緩傾斜護岸堤表面に設けられている各条状突起間に敷設された不織布、織布、マット等によりこの上面に充填されている砂を良く捕捉してその流出を防止するので、各傾斜護岸堤表面には常時砂が堆積されており、依って、歩行者はこの砂面を歩行することになり、スリップして転倒する等の危険はなく、極めて安全に歩行することが可能となる。
【0018】
請求項3記載の発明は、条状突起がゴム、プラスチック、コンクリート、木材、鉄等の何れの材料によっても形成することができるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加え、特に緩傾斜護岸堤に本発明を構築する際の作業性が良好となる。
【0019】
請求項4記載の発明は、上記条状突起の断面形状を多角形、半円形、平行四辺形等の何れかに形成することにより、海岸、河川等において遡上した浮遊砂が該条状突起間に捕捉され、且つ、該条状突起間に堆積している砂の沖側への流出を抑止する。斯くして、請求項1、2又は3記載の発明における砂の捕捉及び流出防止効果を一層助成することができる。
【0020】
請求項5記載の発明は上記条状突起は防藻塗料によって塗装され、或いは光触媒コーティング又はコーラル吹付等によって加工されているので、上記請求項1、2、3又は4記載の発明の効果に加え、歩行者が該条状突起上を歩行してもスリップすることなく一層安全に緩傾斜護岸堤上を歩行することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は海岸等に築造されている緩傾斜護岸堤上を人が歩行しても藻類等によってスリップすることなく安全に歩行できるようにすると云う目的を達成するために、多数の護岸ブロックを階段状に築造して成る階段式緩傾斜護岸堤において、藻類が付着し易い箇所における各護岸ブロック上面に複数の条状突起を所定間隔を有して横方向に並設し、更に、該条状突起間に砂を充填して堆積させたことを特徴とする階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構を提供することによって実現した。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図7に従って説明する。図1は緩傾斜護岸堤1を示す平面図である。該緩傾斜護岸堤1は海岸、河川、湖沼等に築造されており、且つ、一般に多数のコンクリート製の護岸ブロック2,2…を階段状に築造して構成される。又は、現場打設コンクリート階段方式にて築造される。このような緩傾斜護岸堤1においては、水際付近の護岸ブロック2,2…表面又は前記現場打設コンクリート階段方式にて築造した護岸堤表面に、藻類やぬめり等が付着して滑り易くなる。
【0023】
このため、該藻類等が付着した護岸ブロック2,2…等上を人が歩行するとき、足を滑らせて転倒し、又は怪我することもある。そこで、図1の下半分の左右側部には人が進入しないように多数の自然石3,3…を所定高さに積み重ねて人の非進入箇所W,Wとし、そして、該人の非進入箇所W,W間に人の進入通路Zを設けて、人の非進入箇所Wと人の進入通路Zとを区分している。勿論、人の非進入箇所W及び人の進入通路Zのレイアウトは任意に決定されるものとする。
【0024】
而して、前記人の進入通路Zは海岸等の水際付近であり、従って、海水に侵水されて藻類が付着し、人が歩行するとき、滑り易く危険箇所となる。そこで、この危険箇所即ち、人の進入通路Zにおける緩傾斜護岸堤1の各護岸ブロック2,2…上面に横方向に条状突起4,4…を所定間隔Lを有して並設している。前記所定間隔Lは人の足が入る程度であることを可とする。
【0025】
而して、各前後の条状突起4,4…間には砂5,5…が充填される。そこで、該充填された砂5,5…は前後の条状突起4,4…間に捕捉されて堆積し、該条状突起4,4…から沖側へ流出することが阻止される。
【0026】
図2は前記階段状に築造された緩傾斜護岸堤1の一部切欠平面図であり、図3は図2のA−A線断面図である。図2及び図3は護岸ブロック2,2…を3段階に築造されており、而も、該護岸ブロック2,2…には夫々前端部から後端部間に所定間隔Lを有して横方向(水平方向)に5条の条状突起4を略平行に設けている。
【0027】
尚、上記Lの間隔は人の足が入る程度に形成されるを可とする。然るときは、条状突起4,4…間に充填される砂5,5…の捕捉を確実にするとともに、該条状突起4,4…間の砂5,5…上を人が歩行するに適することになる。勿論、このような構成に限定せられるべきではない。
【0028】
又、図示は省略するが、前記条状突起4,4…間には夫々人の歩行に支障がない程度の凹凸や間隙を有する不織布、織布、マット等を前記砂5,5…を充填する前に敷設し、そして、之等不織布、織布、マット等の上面に前記砂5,5…を充填する。然るときは該砂5,5…は上記条状突起間に捕捉されるが、前記不織布等を敷設することにより該砂5,5…は更に該不織布等によっても捕捉堆積されるとともに、人が歩行するとき、足のすべりが阻止され、安全に該緩傾斜護岸堤1上を歩行することが可能となる。
【0029】
又、藻類が該緩傾斜護岸堤1に付着しようとしても、前記砂5,5…が前記条状突起4,4…間における海水の流動に追随して移動することにより、該藻類はそぎ落とされることになり、依って、前記人の進入通路Z上を人が歩行しても該藻類に起因するスリップ等によって転倒することなく、安全に歩行することが可能となる。
【0030】
又、前記条状突起4はこの上を人が直接歩行する際に、前記付着する藻類等によってすべらないように防藻塗料或いは光触媒コーティング又はコーラル吹付加工等が施されている。但し、之等の加工に限定せられるべきではない。
【0031】
更に又、該条状突起4はゴム、プラスチック、コンクリート、木材、鉄等の材料によって任意に形成される。従って、既設の緩傾斜護岸堤1に之等の何れかを採択して構成すれば、作業性が極めて良好となる。
【0032】
又、該条状突起4の断面形状を多角形、半円形、平行四辺形等に形成することにより、海水の流動によって遡上する浮遊砂を捕捉するとともに、沖側へ砂を流出されることを抑止することもできる。
【0033】
次に、図4乃至図7に従って護岸ブロック2の具体例を説明する。図4は該護岸ブロック2の正面図、図5は図4の側面図、図6は図4の平面図である。図7は該護岸ブロック2上に砂5,5…を充填した状態を示す一部切欠側面図である。
【0034】
而して、該護岸ブロック2は前面左右を前方へ突出する如く湾曲して形成されており、従って、該護岸ブロック2上に設けられる前記条状突起4,4…のうち前端部の条状突起4は前記護岸ブロック2の前端部の形状に合わせて湾曲して形成してある。又、後方の条状突起4,4は直線状に形成され、夫々所定間隔Lを有して設けられている。
【0035】
而して、該護岸ブロック2は図5に示すように後方(図5において右側)下半部を突設して控部6を有し、該控部6上に之に連設される上方の護岸ブロック2の前方部が図7の鎖線で示すように載置されて階段状に之等護岸ブロック2,2…が築造され、緩傾斜護岸堤1が形成されるのである。
【0036】
尚、図中符号7はフックである。該フック7は隣接の護岸ブロック2と針金等にて結合するときに用いられる。
【0037】
次に、前記護岸ブロック2上面に前記条状突起4,4…を形成するための一実施例を図7に従って説明する。図7においては該条状突起4,4…は3条が現われている。左側、即ち、護岸ブロック2の前端部(図6において手前側、図7において左側)は前述したように湾曲して形成されており、且つ、前端部の該条状突起4も該護岸ブロック2の前端部
の形状に合わせて形成されているため、前端部の条状突起4を護岸ブロック2に固定するためのボルト様の固定具8は図7において二本が図示されているが、該前端部の条状突起4は勿論1条である。
【0038】
而して、図7に示すように、該条状突起4及び該条状突起4を固定すべき箇所における護岸ブロック2に夫々前記ボルト様の固定具8の挿入孔が開穿され、該ボルト様の固定具8を該条状突起4の上面から挿入して該固定具8の下部を護岸ブロック2に設けた固定具8の挿入孔に挿入し、硬化剤を注入して該固定具8を護岸ブロック2に固定すると同時に該条状突起4を該護岸ブロック2上面に固定する。然る後、該条状突起4,4…間に砂5,5…が充填されて安全歩行に供せられるのである。但し、該条状突起4の固定手段は之に限定せられるべきではない。
【0039】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を海岸に適用した一実施例を示し、その平面図。
【図2】本発明の緩傾斜護岸堤を示す一部切欠平面図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】本発明の護岸ブロックの正面図。
【図5】図4の右側面図。
【図6】図4の平面図。
【図7】図4の護岸ブロックに条状突起を設け、その間に砂を充填した状態を示す一部切欠右側面図。
【符号の説明】
【0041】
1 緩傾斜護岸堤
2 護岸ブロック
3 自然石
4 条状突起
5 砂
6 控部
7 フック
8 固定具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の護岸ブロックを階段状に築造して成る階段式緩傾斜護岸堤において、藻類が付着し易い箇所における各護岸ブロック上面に複数の条状突起を所定間隔を有して横方向に並設し、更に、該条状突起間に砂を充填して堆積させたことを特徴とする階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構。
【請求項2】
多数の護岸ブロックを階段状に築造して成る階段式緩傾斜護岸堤において、藻類が付着し易い箇所における各護岸ブロック上面に複数の条状突起を所定間隔を有して横方向に並設し、更に、各条状ブロック間に、砂を堆積でき、且つ、人の歩行に支障がない程度の凹凸や間隙を有する不織布、織布、マット等を敷設し、該不織布、織布、マット等の上面に砂を充填して堆積させたことを特徴とする階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構。
【請求項3】
上記条状突起はゴム、プラスチック、コンクリート、木材、鉄等から成る請求項1又は2記載の階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構。
【請求項4】
上記条状突起の断面形状は多角形、半円形、平行四辺形を有して、遡上した浮遊砂を捕捉するとともに、沖側へ砂の流出を抑止できるように形成されたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構。
【請求項5】
上記条状突起は藻類やぬめりが付着しないように加工されて成ることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の階段式緩傾斜護岸堤におけるすべり防止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−156854(P2008−156854A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345082(P2006−345082)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(594140993)
【Fターム(参考)】