説明

階段昇降機および階段昇降機用監視装置

【課題】階段に沿って備え付けられるレール上を昇降動作する椅子を用いた階段昇降機を利用している人の生活状況や安否の確認機能、あるいは不具合の状況の検出機能並びに送信機能を付加した階段昇降機を提供する。
【解決手段】レール26の下側と上側とにそれぞれマグネット45、46を取付けておき、椅子35がレール26に沿って昇降動作する際に、駆動ユニット30に取付けられているセンサ47がそのことを検出し、送信ユニット50によって例えば電話回線を介して外部のサーバー57に検出信号を送信し、サーバー57は受信した検出信号から異常の判断を行ない、異常と判断された場合にはインターネット通信網58や携帯電話用パケット通信網61を介してパソコン59や携帯電話機63にそのことを通報する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は階段昇降機および階段昇降機用監視装置に係り、とくに階段の昇降方向に沿ってレールを取付けるとともに、このレールに沿って駆動ユニットによって支持体を昇降方向に移動させるようにした階段昇降機および階段昇降機用監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2階建以上の低層の家屋や建物において、階層間を移動するために、従来より階段が広く利用されている。階段は、通常の運動能力を有する健康な人であれば、不便を感ずることなく昇降できる。しかるに高齢者や、足腰等の運動機能に障害がある場合、或いは車椅子を使用する人では、階段の昇り降りに不安を感じたり、あるいはまた困難を伴うことがある。また高齢者の場合には、階段からの転落事故が発生し易い。
【0003】
そこで、例えば特開2007−22684号公報や、特開2008−201520号公報に開示されているように、階段昇降機が提案されている。階段昇降機は、階段の側壁の部分に沿ってレールを取付けるようにし、このレールに沿って移動する駆動ユニットに椅子を取付け、駆動ユニットとともに椅子を昇降させるようにし、これによって椅子に座っている人を階層間で移動させるものである。
【0004】
このような階段昇降機によって、高齢者や障害者であっても容易かつ安全に階層間の移動をすることができる。ところが従来の階段昇降機は単に階層間の移動のみの機能しか有しておらず、一人で住んでいる高齢者や車椅子利用者の移動がどのような状況にあるかを遠隔地からモニタすることができなかった。またこのような階段昇降機が故障した場合に、そのことをサービス会社や管理会社に対して通報する機能を有しておらず、利用する人がそのような通報を行なわなければならないという不便があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−22684号公報
【特許文献2】特開2008−201520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の課題は、階層間での人の移動に供される階段昇降機が、利用者の生活状況あるいは安否の状況を遠隔地から知り得るようにした階段昇降機および階段昇降機用監視装置を提供することである。
【0007】
本願発明の別の課題は、真直ぐな階段に取付けられる真直ぐなレールを用いた階段昇降機や、湾曲する階段に取付けられる湾曲するレールを用いた階段昇降機の何れにおいても、利用者の生活状況や安否確認を行ない得るようにした階段昇降機および階段昇降機用監視装置を提供することである。
【0008】
本願発明のさらに別の課題は、故障等の不具合やトラブルが発生した場合に、そのことを外部の管理会社やサービス会社に対して通報できるようにした階段昇降機および階段昇降機用監視装置を提供することである。
【0009】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想、およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の主要な発明は、階段の昇降方向に沿って取付けられるレールと、
該レール上を移動する駆動ユニットと、
前記駆動ユニットによって前記レール上を昇降方向に移動される支持体と、
前記レールの所定位置に取付けられる被検出子と、
前記駆動ユニットに取付けられ、前記被検出子の前を通過すると該被検出子を検出するとともに検出信号を送信する検出信号送信手段と、
前記検出信号送信手段からの検出信号を受信するとともに、外部のサーバーに対して送信信号を送信する送信ユニットと、
を具備する階段昇降機に関するものである。
【0011】
ここで、前記支持体が椅子であってよい。また前記支持体が車椅子をその上に載置する受け部材であってよい。また前記支持体が自力歩行によって階段を昇降する使用者の身体の一部を支持する支持部材であってよい。
【0012】
また、前記レールが真直ぐな階段に取付けられる真直ぐなレールであって、該レールの下端の出発/到着位置と上端の出発/到着位置とにそれぞれ被検出子が取付けられてよい。また前記レールの下端側の部分が回動動作によってはね上げ式になっており、該レールのはね上げ位置のすぐ上の部位にはね上げ点通過を検出するセンサを兼ねた被検出手段が取付けられてよい。また前記レールが湾曲する階段に取付けられる湾曲するレールであって、該レールの下端の出発/到着位置と上端の出発/到達位置とにそれぞれ被検出子が取付けられてよい。
【0013】
また、前記被検出子がマグネットであってよい。また前記検出信号送信手段がコイルを有し、前記マグネットから成る前記被検出子の前を通過すると電磁誘導によって誘起される起電力によって検出動作が行なわれてよい。また前記検出信号送信手段が感磁性リードスイッチを有し、前記マグネットから成る前記被検出子の前を通過すると前記感磁性リードスイッチが切換えられて検出動作が行なわれてよい。また前記検出信号送信手段が無線で検出信号を送信するとともに、該検出信号が前記送信ユニットの受信部で受信されてよい。また前記送信ユニットが固定電話回線を介して外部のサーバーに接続されてよい。また前記送信ユニットがパケット方式のデジタルデータ送信機であって、データ通信ネットワークを介して外部のサーバーに信号を送信してよい。
【0014】
また、前記レールの下端の被検出子の検出信号と前記レールの上端の被検出子の検出信号とを所定の時間内に正順または逆順に検出した場合に正常と判断し、そうでない場合に異常と判断してよい。また前記レールの下端の被検出子の検出信号と前記レールの上端の被検出子の検出信号とからこの昇降機の使用回数を演算するとともに、使用回数が所定の値に達しない場合に異常と判断してよい。また前記レールの下端の被検出子の検出信号と前記はね上げ位置のすぐ上の中間の被検出子の検出信号と前記レールの上端の被検出子の検出信号とを所定の時間内に正順または逆順で検出した場合に正常と判断し、そうでない場合に異常と判断してよい。また前記レールの下端の被検出子の検出信号と前記はね上げ位置のすぐ上の中間の被検出子の検出信号と前記レールの上端の被検出子の検出信号とからこの昇降機の使用回数を演算するとともに、使用回数が所定の値に達しない場合に異常と判断してよい。
【0015】
階段昇降機用監視装置に関する主要な発明は、階段の昇降方向に沿ってレールを取付け、該レールによって駆動ユニットを移動させ、前記駆動ユニットによって支持体を前記レール上を昇降方向に移動させるようにした階段昇降機に用いられるシステムであって、
前記レールの所定の位置に取付けられる被検出子と、
前記駆動ユニットに取付けられ、前記被検出子の前を通過すると該検出子を検出するとともに検出信号を送信する検出信号送信手段と、
前記検出信号送信手段からの検出信号を受信するとともに、外部のサーバーに対して送信信号を送信する送信ユニットと、
前記送信ユニットから送られる信号を受信して所定の判断を行なうサーバーと、
を具備する階段昇降機用監視装置に関するものである。
【0016】
ここで、階段昇降機の使用状況または使用者の利用状況を監視するようにしてよい。また階段昇降機の異常を監視するようにしてよい。
【発明の効果】
【0017】
本願の主要な発明は、階段の昇降方向に沿って取付けられるレールと、
該レール上を移動する駆動ユニットと、
前記駆動ユニットによって前記レール上を昇降方向に移動される支持体と、
前記レールの所定位置に取付けられる被検出子と、
前記駆動ユニットに取付けられ、前記被検出子の前を通過すると該被検出子を検出するとともに検出信号を送信する検出信号送信手段と、
前記検出信号送信手段からの検出信号を受信するとともに、外部のサーバーに対して送信信号を送信する送信ユニットと、
を具備する階段昇降機に関するものである。
【0018】
従って、このような階段昇降機によると、検出信号送信手段によって、レールに沿って駆動ユニットに取付けられた支持体が昇降動作する際にそのことを検出して信号が発生されることになり、このような信号が送信ユニットに送信される。従って送信ユニットから外部に対して、階段昇降機の利用状況に関する信号が発せられるようになり、このような信号を受信し、これによって利用者の生活状態、安否、あるいはまた昇降機の不具合等を確認することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】真直ぐな階段に取付けられる真直ぐなレールの外観斜視図である。
【図2】真直ぐなレールに取付けられる駆動ユニットの斜視図である。
【図3】同駆動ユニットの正面図である。
【図4】同駆動ユニットの平面図である。
【図5】真直ぐなレールに沿って昇降動作する椅子の側面図である。
【図6】同椅子の正面図である。
【図7】湾曲する階段に取付けられる湾曲するレールの取付けを示す斜視図(A)および正面図(B)である。
【図8】同湾曲するレールに沿って移動する駆動ユニットの側面図である。
【図9】湾曲するレールに対するマグネットの取付けを示す断面図である。
【図10】湾曲するレールに沿って昇降する椅子の背面図である。
【図11】同椅子の側面図である。
【図12】階段昇降機に設けられたセンサの検出信号の送信のための通信システムのブロック図である。
【図13】サーバーによる異常判断の動作を示すフローチャートである。
【図14】サーバーによる別の異常判断の動作を示すフローチャートである。
【図15】振動等による異常を検出する動作を示すフローチャートである。
【図16】階段昇降機に設けられたセンサの検出信号の送信のための変形例の通信システムのブロック図である。
【図17】はね上げ式の真直ぐなレールの構成を示す側面図である。
【図18】はね上げ式の真直ぐなレールに応用される異常判断の動作を示すフローチャートである。
【図19】支持体として車椅子を用いる階段昇降機の正面図である。
【図20】同階段昇降機の要部側面図である。
【図21】支持体として支持ハンドルを用いる階段昇降機における支持ハンドルの取付けを示す分解斜視図である。
【図22】支持ハンドルを用いた階段昇降機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。図1は、真直ぐな階段(図5および図6参照)に取付けられる真直ぐなレール1を示しており、このようなレール11が取付けブラケット12を介して真直ぐな階段10の幅方向の一側部の壁面に近接して取付けられる。そしてこのレール11に沿って図2〜図4に示す駆動ユニット13が移動するようになっている。駆動ユニット13はその内部に蓄電池とドライブモータを備え、このドライブモータによって駆動ロール14を駆動し、これによって駆動ユニット13をレール11に沿って昇降動作させる。なお駆動ユニット13は上記駆動ロール14とともに保持ロール15を備えており、これらのロール14、15によってレール11を押さえ込むようにしてこのレール11に沿って昇降動作するようになっている。
【0021】
図5および図6は、上記のような駆動ユニット13に取付けられてこの駆動ユニット13とともにレール11に沿って昇降動作される椅子16を示している。椅子16はフートレスト17を備え、このフートレスト17の部分が上記駆動ユニット13の取付け座18(図2、図3参照)に固着されるようになっている。そしてフートレスト12の上部に座板19が取付けられるとともに、座板19の背面側の部分にフレーム20を介して背もたれ21が取付けられている。図5はこのような椅子16を側面から見た状態を、図6は、このような椅子16を正面から見た状態をそれぞれ示している。
【0022】
図1に示すような真直ぐなレール11に取付けられる駆動ユニット13は、この駆動ユニット13内のドライブモータによって駆動ロール14を駆動することにより、レール11に沿って昇降動作される。従ってこのような駆動ユニット13に取付けられている椅子16もまた上記真直ぐなレール11に沿って昇降動作されることになる。
【0023】
湾曲する階段25に階段昇降機を取付ける場合には、図7および図8に示すような湾曲するレール26が階段25に取付けられる。湾曲するレール26は、湾曲する階段25の一側部に、取付けブラケット27を介して取付けられる。そしてこのレール26に沿って図8に示す駆動ユニット30が昇降動作されるようになっている。駆動ユニット30はとくに図8に示すように、パイプから成る湾曲するレール26の上面に対して圧接するように駆動ロール31を備えており、この駆動ロール31に対して側方に位置するように両側から保持ロール32でレール26を挟むようになっている。そして上下駆動ロール31をドライブモータ33(図10参照)によって駆動することにより、駆動ユニット30が湾曲するレール26上を移動するようになっている。なおドライブモータ33は、駆動ユニット30に組込まれた蓄電池34によって回動駆動される。
【0024】
駆動ユニット30には図10および図11に示す椅子35が取付けられる。椅子35は駆動ユニット30に対してサポートロッド36で取付けられるようになっており、フレーム37の上部に座板38が取付けられるとともに、座板38の前端側には下方に延出されるようにフートレスト39が取付けられる。また座板38の後部には直立して背もたれ40が取付けられる。
【0025】
図7に示すような湾曲するレール26に取付けられる椅子35は、この椅子35の下部のドライブモータ33(図10参照)を駆動することによって駆動ロール31により駆動ユニット30と一緒に湾曲するレール26上を移動する。これによって湾曲するレール26上を椅子35が昇降動作することになる。
【0026】
次にこのような真直ぐなレール11を用いる昇降機あるいは湾曲するレール26を用いる昇降機における、その利用状況あるいは不具合の状況を外部に対して送信するための送信のシステムについて図12によって説明する。図12に示すように、湾曲するレール26の下部と上部とにはそれぞれ被検出子を構成するマグネット45、46が取付けられる。これに対して椅子35の駆動ユニット30には、センサ47が取付けられる。センサ47はマグネット45、46の磁束によって電磁誘導で起電力を生ずるコイル、あるいはマグネット45、46の磁束によって切換え動作が行われる感磁性リードスイッチから構成されている。またセンサ47は送信回路48を備えており、そのアンテナ49を介してセンサ47で検出した検出信号を無線で送信するようになっている。なおここでは、湾曲する階段に取付けられる階段昇降機を例に説明しているが、真直ぐな階段に取付けられる階段昇降機でも同様の構成になる。
【0027】
そしてこのようなセンサ47に対応して、この昇降機が設置される家屋の内部には送信ユニット50が取付けられる。送信ユニット50が上記センサ47の信号を無線で受信するアンテナ51を備えている。また送信ユニット50は、モジュラージャック52を介して固定電話回線56に接続されるようになっている。
【0028】
上記固定電話回線56にはサーバー57が接続されており、送信ユニット50とサーバー57とが相互に通信を行なうようになっている。上記サーバー57はインターネット通信網58を介してパソコン59に接続されている。さらにサーバー57はインターネット通信網58に接続されるゲートウェイ60を介して携帯電話用パケット通信網61に接続される。上記携帯電話用パケット通信網61は、基地局アンテナ62を介して携帯電話機63と無線で信号の授受を行なう。
【0029】
以上のような構成において、レール26に沿って椅子35が1階から2階に上昇する場合には、出発時に下側のマグネット45をセンサ47が検出し、2階に到達した場合には上側のマグネット46をセンサ47が検出する。椅子35が2階から1階に下降する場合には、上記とは逆の検出動作を行なう。これらの検出信号は、送信回路48およびアンテナ49を介して、無線で送信ユニット50に送信される。送信ユニット50は、固定電話回線によって送信できる信号形態を生成するとともに、その情報信号をNTTの固定電話回線56を通してサーバー57に送信する。なお送信ユニット50には、予めサーバー57の電話番号が登録されており、信号の送信時に自動発呼して送信ユニット50とサーバー57との間で回線を成立させる。
【0030】
サーバー57は、階段昇降機が設置されている各家庭から送られてくる信号に応じて異常あるいは故障の判断を行なうとともに、故障や異常がある場合、あるいはまた安否につき懸念を生ずるような場合には、そのことをインターネット通信網58を介してパソコン59に送信する。ここでパソコン59は、階段昇降機を利用する人の安否その他の状況を監視する立場にあるヘルパーや、階段昇降機の管理会社、警備会社、あるいはまた縁故者であってよい。
【0031】
また上記サーバー57からの異常あるいは不具合に関する情報は、インターネット通信網58および携帯電話用パケット通信網61を介して携帯電話機63に伝達される。ここで携帯電話機63は、上記階段昇降機を使用する人の介護あるいは生活を補助するヘルパー、医療機関、監視会社、管理会社、警備会社、あるいはまた階段昇降機の利用者の遠隔地に住む親戚等であってよい。
【0032】
図13はとくにサーバー57の動作であって、警報信号を送信する動作を示している。すなわち、サーバー57は、階段昇降機を設置しているところからの信号を受信した場合には、タイマーのセットを行なうとともに、次の信号があった場合には先の信号との間の時間間隔の演算を行なう。そして所定の時間内であれば正常と判断するとともに、所定の時間を超えている場合には異常と判断する。正常と判断された場合にはタイマーをリセットし、これに対して異常と判断された場合には警報信号を送信する。この警報信号が、上記のパソコン59や携帯電話機63に送信される。
【0033】
ここでは、下層階のマグネット45と上層階のマグネット46の検出される時間間隔を計測し、これに応じて正常か異常かの判断を行なうものである。何らかの理由によって昇降機が円滑に昇降動作を行なわなかった場合や、駆動ユニット30に組込まれている蓄電池34の出力が低下している場合には、警報信号が送信されることになる。蓄電池34が放電すると、駆動ユニット30の昇降速度が低下し、このために蓄電池34の再充電を行なうか、交換する必要が生ずる。このような再充電あるいは交換時期を予め予期して突然の蓄電池34の放電を防止できる。
【0034】
図14は、まずカウンタのリセットが行なわれた後に検出信号が受信されると、カウンタに1を加算し、このような動作を所定の時間、例えば24時間繰返し、ここで信号が受信された回数をカウンタによってカウントする。そしてカウント値が所定の値nを超えたかどうかで正常か異常かの判別を行なう。カウンタの積算値がnを超えた場合には正常と判断し、カウンタの積算値がnを超えない場合は異常と判断する。そして異常の場合には警報動作が行なわれる。
【0035】
このような動作は、階段昇降機の所定時間内の利用回数をカウントし、これによって正常か異常かの判別を行なうものであって、とくにこの階段昇降機を備える家に居住する一人暮らしの高齢者の生活状況あるいは安否の状況を判断するのに有効である。例えば24時間に1回も階段昇降機を利用しない場合には、その家に住む高齢者に何らかの異常があった可能性が懸念されるために、サーバー57は、所定の時間内におけるカウンタ値が異常に低い場合に異常と判断し、警報信号をパソコン59や携帯電話機63に送信することによって、一人暮らしの高齢者の生活状況のモニタを行なうことが可能になる。
【0036】
図15は、検出信号が異常に多数回発生された場合に、そのことを検出するものである。ここでは信号が受信されるとカウンタに1を加算し、この動作を所定の時間、例えば10分間繰返す。そして10分間に所定の回数、例えば30回検出動作が行なわれ場合に異常と判断して警報動作を行なうものである。なお30回以下の場合には、正常と判断する。何れの場合においてもここでカウンタのリセットが行なわれる。
【0037】
このような動作は、この階段昇降機の椅子16、35が故障によって振動したり、激しく揺すられた場合や、子供がいたずらをしている場合等のような異常や不適切な使用が行なわれた場合に、そのことを検出し、これによって外部に対して警報信号を送信するようにしたものである。従ってパソコン59あるいは携帯電話機63によって警報信号を受けた場合に、それに対する対応を適正に採ることが可能になる。
【0038】
次に変形例のシステム構成を図16によって説明する。この変形例は、図12における固定電話回線56に代えて、データ通信ネットワーク66を利用するようにしたシステムである。駆動ユニット30内に組込まれた送信回路48と無線で信号の授受を行なう送信ユニット64は、データ通信ネットワーク66に対応するデータ信号を作成して送信する送信機から構成されている。そして送信ユニット64は、比較的近距離に配置されている基地局65と無線で信号の授受を行なう。基地局65は、データ通信ネットワーク66の端末を構成している。なおデータ通信ネットワーク66は、iモード等のデータ通信を行なう携帯電話用通信網と共用されることが可能である。そしてデータ通信ネットワーク66がインターネット通信網58に接続される。そして上記インターネット通信網58に対して、サーバー57やパソコン59が接続される。さらにインターネット通信網58はゲートウェイ60を介して携帯電話用パケット通信網61に接続されている。この携帯電話用パケット通信網61は、基地局62を介して携帯電話機63に接続される。
【0039】
従って、階段昇降機の駆動ユニット30の昇降動作に伴うセンサ47の検出信号が、送信回路48から送信ユニット64に無線で送信され、この送信ユニット64から基地局65を介してデータ通信ネットワーク66およびインターネット通信網58を介してサーバー57に送信される。そしてサーバー57は、ここで上記送信ユニット64からの信号を解析するとともに、異常があると判断した場合には、インターネット通信網58によってパソコン59にメールを送信する。さらにサーバー57は、インターネット通信網58および携帯電話用パケット通信網61を介して携帯電話機63に所定のメールを送信する。従ってこれにより、ヘルパー、階段昇降機の管理会社、警備会社、あるいは縁故者は、パソコン59によって上記の情報を入手することが可能である。またヘルパー、医療機関、監視会社、管理会社、警備会社、遠隔地の親戚等は、携帯電話機63によって異常を把握することが可能になる。
【0040】
なお図16に示すシステムにおいては、椅子35の下側の駆動ユニット30の部分に送信回路48を備えるセンサー47が設けられ、これに対してこの階段昇降機が設置されている家屋の壁の部分に送信ユニット64が設けられているが、このような構成に代えて、送信ユニット64と送信回路48を有するセンサ47とを一体化し、椅子35の下側の駆動ユニット30の部分に送信ユニット64を組込むようにしてもよい。これによって家屋内での無線による信号の送信が必要でなくなる。
【0041】
また上記実施の形態においては、駆動ユニット13、30の駆動によって椅子16、35が昇降動作するようにしており、上記駆動ユニット13、30に取付けられているセンサ47がレール11、26上のマグネット45、46を検出し、これによって検出信号を発生するようにしている。このような検出信号の発生に加えて、図5に示すように例えば椅子16のアームレストの部分に押釦22を取付けておき、この押釦22が押された場合に、異常を知らせる信号を発生させるようにしてよい。このような構成によると、押釦22の押圧に伴う異常の信号が、送信回路48から送信ユニット50、64に伝達されて外部に対して対応する信号が送信されることになる。従ってこの場合には、椅子16、35を使用して昇降動作する人が危険を感知した場合に、そのことを使用者の押釦22の操作によって警報動作が行なわれることになる。
【0042】
また上記実施の形態は、何れも屋内の階段10、25に設置されたレール11、26に取付けられる階段昇降機に関するものであるが、本願発明に係る階段昇降機は、必ずしも屋内に設置される階段昇降機に限られることなく、屋外に設置されるようにしてもよい。この場合は屋外の階段にレールを取付け、このレールによって椅子を昇降動作させることになる。
【0043】
図17および図18は変形例の階段昇降機のレール11を示している。一般に真直ぐな階段10に取付けられる真直ぐなレール11の下端側の部分は、階段10のすぐ下の通路の部分に出張るようになるために(図17A参照)、階段10の前方の通路を通るときに妨げになる。そこで椅子16が上昇した場合には、レールの下端側の部分のはね上げレール67をはね上げるようにしている(図17B参照)。すなわち上端側の真直ぐなレール11と下端側のはね上げレール67とを分離し、はね上げレール67をはね上げ機構68によってはね上げるようにしている。このはね上げ機構68による先端側のはね上げレール67のはね上げ動作は、椅子16がはね上げ点通過検出マグネット69を通過した状態で、図17Bに示すようにして行なう。
【0044】
このようなレール11、67の場合には、下側のマグネット45と上側のマグネット46の他にさらに中間位置にはね上げ点通過検出マグネット69が存在することになるために、これら3つのマグネット45、46、69を用いて異常の判断を行なうことが可能になる。
【0045】
例えば図18は、出発位置のマグネット45の検出に連動して送信ユニット50、64を介してサーバー57が信号を受信した場合にタイマーをセットし、その後はね上げ点通過検出マグネット69による中間位置の信号があるかどうかの判断を行ない、中間位置の信号を受信したらさらにマグネット46による到着信号を受信したかどうかの判断を行なう。そしてこれら3つの信号を受信した場合に、その所要時間をカウントし、その所要時間が所定時間内の場合に正常と判断し、その時間を超えた場合に異常と判断する。そして異常と判断した場合にはサーバー57が警報信号を送信することになる。このような警報信号は、サーバー57からパソコン59や携帯電話機63に送信される。またこのようなはね上げレール67を有する階段昇降機においても、3つのマグネット45、46、69を用いて図14と同様の判断動作を行なって利用者の安否確認をすることが可能である。
【0046】
次に車椅子の使用者が利用する階段昇降機について図19および図20により説明する。ここでは、上下一対のレール71、72が階段に沿って配される。なおレール71、72は、真直ぐなレールから構成されているが、屈曲する湾曲したレールであってもよい。そしてこのようなレール71、72と係合するように直立するフレーム73が設けられており、このフレーム73の背面側の部分に駆動ユニット74が取付けられている。駆動ユニット74は図示を省略したドライブモータによって駆動される駆動ロール75を備え、この駆動ロール75が上側のレール71の下面に係合し、これによって駆動ユニット74をレール71、72に沿って昇降動作させるようにしている。そしてフレーム73には、その全体形状がL字状をなす受け部材76が支持される。受け部材76の下端側の水平な部分は、車椅子を受入れるためのものであって、その中に車椅子を引込んで昇降動作するようにしている。また受け部材76の上端側には前方に突出するように押え77が取付けられており、この押え77によって受け部材76上に引込まれた車椅子が脱落するのを防止するようにしている。
【0047】
このような階段昇降機は、その支持体が受け部材76によって構成され、椅子が引込まれる車椅子によって兼用されるようになっている。すなわち、車椅子を使用する人は、車椅子のままでこの階段昇降機の受け部材76内に乗って受け部材76とともにレール71、72に沿って階層間を移動することになる。そしてこの階段昇降機には、図12または図16のシステムが適用されている。すなわち本願発明は、このような形態の車椅子を椅子として利用する階段昇降機にも適用されるものである。
【0048】
次に支持ハンドル80を用いた階段昇降機について図21および図22により説明する。ここでは、階段昇降機には椅子が取付けられておらず、その代わりに支持ハンドル80を駆動ユニット13に取付けるようにしている。駆動ユニット13の前面側の取付け座18の部分に、支持ハンドル80を取付けるようにしている。支持ハンドル80は、上端の両側に一対の取手81を備え、これらの取手81が支軸82を介して回転調整部83に固着されている。回転調整部83は支持ハンドル80の回転位置を調整した状態で、取付け板84によって駆動ユニット13の取付け座18の部分に固定されるようになっている。
【0049】
図22はこのような支持ハンドル80を階段昇降機に取付けた状態を示しており、ここでは真直ぐなレール11に沿って昇降動作する駆動ユニット13の前面側の取付け座18に支持ハンドル80が取付けられるようになっている。このような階段昇降機は、自力歩行が可能な使用者が、階段10の昇降の際に、両手を支持ハンドル80の取手81の部分を握りながら、この支持ハンドル80によって使用者の体重の一部を支えるようにして階段10の昇降を行なうものである。なお駆動ユニット13は、速度調整機を備えており、使用者の利用し易い速度に調整できるようにしている。従って、自力歩行によって階段10を昇降する高齢者等が、転倒することなく安全に昇降動作を行なうことが可能になり、とくに階段での転落事故の防止につながることになる。そしてこのような階段昇降機においても、図12または図16のシステムが適用される。すなわち本願発明は、このような支持ハンドル80を備えた階段昇降機にも適用されるものである。
【0050】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば送信ユニット50からサーバー57への検出信号の伝送は、必ずしもNTTの固定電話回線56を用いるシステムに限定されることなく、その他各種の無線あるいは有線の通信手段を用いることができ、携帯電話用の通信網や、インターネット通信網、NTTの光ファイバー通信網、ケーブルテレビ通信網、電力用銅線ケーブルを用いた通信網等による信号の伝送を行なうことが可能である。また階段昇降機の移動をレール11、26の下側と上側にそれぞれ取付けられているマグネット45、46で検出するようにしているが、マグネット以外の被検出子、例えば光電式の検出装置や、マイクロスイッチ等の接触型の被検出子に置換えるようにしてもよい。またサーバー57による異常の判断は、図13に示すような所定時間内における信号の受信の有無や、図14に示すような所定時間内における受信の回数以外の各種の異常の判断が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本願発明は、階段に沿って取付けられるレール11、26に沿って椅子16、35を昇降動作させるようにした階段昇降機を利用して、利用者の生活状況や安否の確認を行なうようにし、あるいはまたこの昇降機の不具合等を検出し、これを外部に対して送信することができるようにした階段昇降機に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 階段(真直ぐ)
11 真直ぐなレール
12 取付けブラケット
13 駆動ユニット
14 駆動ロール
15 保持ロール
16 椅子
17 フートレスト
18 取付け座
19 座板
20 フレーム
21 背もたれ
22 押釦
25 階段(湾曲)
26 湾曲するレール
27 取付けブラケット
30 駆動ユニット
31 駆動ロール
32 保持ロール
33 ドライブモータ
34 蓄電池
35 椅子
36 サポートロッド
37 フレーム
38 座板
39 フートレスト
40 背もたれ
44 アーム
45 マグネット(被検出子)、下側
46 マグネット(被検出子)、上側
47 センサ(コイル)
48 送信回路
49 アンテナ
50 送信ユニット
51 アンテナ
52 モジュラージャック
56 固定電話回線
57 サーバー
58 インターネット通信網
59 パソコン
60 ゲートウェイ
61 携帯電話用パケット通信網
62 基地局アンテナ
63 携帯電話機
64 送信ユニット
65 基地局
66 データ通信ネットワーク
67 はね上げレール
68 はね上げ機構
69 はね上げ点通過検出マグネット
71、72 レール
73 フレーム
74 駆動ユニット
75 駆動ロール
76 受け部材
77 押え
80 支持ハンドル
81 取手
82 支軸
83 回転調整部
84 取付け板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の昇降方向に沿って取付けられるレールと、
該レール上を移動する駆動ユニットと、
前記駆動ユニットによって前記レール上を昇降方向に移動される支持体と、
前記レールの所定位置に取付けられる被検出子と、
前記駆動ユニットに取付けられ、前記被検出子の前を通過すると該被検出子を検出するとともに検出信号を送信する検出信号送信手段と、
前記検出信号送信手段からの検出信号を受信するとともに、外部のサーバーに対して送信信号を送信する送信ユニットと、
を具備する階段昇降機。
【請求項2】
前記支持体が椅子である請求項1に記載の階段昇降機。
【請求項3】
前記支持体が車椅子をその上に載置する受け部材である請求項1に記載の階段昇降機。
【請求項4】
前記支持体が自力歩行によって階段を昇降する使用者の身体の一部を支持する支持部材である請求項1に記載の階段昇降機。
【請求項5】
前記レールが真直ぐな階段に取付けられる真直ぐなレールであって、該レールの下端の出発/到着位置と上端の出発/到着位置とにそれぞれ被検出子が取付けられる請求項1記載の階段昇降機。
【請求項6】
前記レールの下端側の部分が回動動作によってはね上げ式になっており、該レールのはね上げ位置のすぐ上の部位にはね上げ点通過を検出するセンサを兼ねた被検出手段が取付けられる請求項5記載の階段昇降機。
【請求項7】
前記レールが湾曲する階段に取付けられる湾曲するレールであって、該レールの下端の出発/到着位置と上端の出発/到達位置とにそれぞれ被検出子が取付けられる請求項1記載の階段昇降機。
【請求項8】
前記被検出子がマグネットである請求項1〜7の何れかに記載の階段昇降機。
【請求項9】
前記検出信号送信手段がコイルを有し、前記マグネットから成る前記被検出子の前を通過すると電磁誘導によって誘起される起電力によって検出動作が行なわれる請求項8記載の階段昇降機。
【請求項10】
前記検出信号送信手段が感磁性リードスイッチを有し、前記マグネットから成る前記被検出子の前を通過すると前記感磁性リードスイッチが切換えられて検出動作が行なわれる請求項8記載の階段昇降機。
【請求項11】
前記検出信号送信手段が無線で検出信号を送信するとともに、該検出信号が前記送信ユニットの受信部で受信される請求項1記載の階段昇降機。
【請求項12】
前記送信ユニットが固定電話回線を介して外部のサーバーに接続されている請求項1記載の階段昇降機。
【請求項13】
前記送信ユニットがパケット方式のデジタルデータ通信機であって、データ通信ネットワークを介して外部のサーバーに信号を送信する請求項1記載の階段昇降機。
【請求項14】
前記レールの下端の被検出子の検出信号と前記レールの上端の被検出子の検出信号とを所定の時間内に正順または逆順に検出した場合に正常と判断し、そうでない場合に異常と判断する請求項5または請求項7記載の階段昇降機。
【請求項15】
前記レールの下端の被検出子の検出信号と前記レールの上端の被検出子の検出信号とからこの昇降機の使用回数を演算するとともに、使用回数が所定の値に達しない場合に異常と判断する請求項5または請求項7記載の階段昇降機。
【請求項16】
前記レールの下端の被検出子の検出信号と前記はね上げ位置のすぐ上の中間の被検出子の検出信号と前記レールの上端の被検出子の検出信号とを所定の時間内に正順または逆順で検出した場合に正常と判断し、そうでない場合に異常と判断する請求項6記載の階段昇降機。
【請求項17】
前記レールの下端の被検出子の検出信号と前記はね上げ位置のすぐ上の中間の被検出子の検出信号と前記レールの上端の被検出子の検出信号とからこの昇降機の使用回数を演算するとともに、使用回数が所定の値に達しない場合に異常と判断する請求項6記載の階段昇降機。
【請求項18】
階段の昇降方向に沿ってレールを取付け、該レールによって駆動ユニットを移動させ、前記駆動ユニットによって支持体を前記レール上を昇降方向に移動させるようにした階段昇降機に用いられるシステムであって、
前記レールの所定の位置に取付けられる被検出子と、
前記駆動ユニットに取付けられ、前記被検出子の前を通過すると該検出子を検出するとともに検出信号を送信する検出信号送信手段と、
前記検出信号送信手段からの検出信号を受信するとともに、外部のサーバーに対して送信信号を送信する送信ユニットと、
前記送信ユニットから送られる信号を受信して所定の判断を行なうサーバーと、
を具備する階段昇降機用監視装置。
【請求項19】
階段昇降機の使用状況または使用者の利用状況を監視する請求項18に記載の階段昇降機用監視装置。
【請求項20】
階段昇降機の異常を監視する請求項18に記載の階段昇降機用監視装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2012−184062(P2012−184062A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47552(P2011−47552)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.iモード
【出願人】(511058198)ティッセンクルップ・アクセス・ジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】