階段状カニューレ
ここに記載されるものは、階段状の外形を有するカニューレである。また、ここに記載されるものは、例えば動物の中枢神経系に一若しくは複数の物質を配送するためにカニューレを作製及び使用する方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年10月5日に出願された米国仮出願60/616,238、及び2005年1月4日に出願された米国仮出願60/641,551の利益を主張する。それらの両出願は、それらの全体がここに参照されて組込まれる。
【0002】
本発明は、カニューレの分野である。特に、本発明は、例えば生物学上有効な薬剤等の物質を中枢神経系に配送するカニューレに関し、並びに、それらのカニューレの作製方法及び使用方法とともにそれらのカニューレを備えたシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
カニューレは、対象の中枢神経系(CNS)へ物質を配送するために使用可能である。しかしながら、現在のカニューレの設計に伴い、注入路に沿った物質の逆流を防ぐことに注意しなければならない。
【非特許文献1】Quereshi等 (2000) Neurosurgery 46(3): 663-69.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
逆流を最小にするため、カニューレをゆっくり除去したり、カニューレを除去するときに組織への圧力の印加のような予防措置を採ったときでさえ、逆流は問題として残る。
【0005】
配送されている物質の多くの部分は、カニューレ内部の大きな表面領域へ物質が曝されることで失われる場合がある。特に、ステンレス鋼への接触は、物質の大幅な損失を引き起こす場合がある。例えば、様々なグループが、ステンレス鋼表面に接触したアデノウイルス・ベクター薬剤の相当量が失われることを実証している。Naimark等、(2003) Hum.Gene Ther 14:161-6; Tsui等、(2001) Mol. Ther. 3:122-5; Marshall等、(2000) Mol.Ther.1(5 Pt l):423-9。 非常に少ない量の物質が配送されているとき、量が少ないほど、カニューレ内での表面積と量との比率が大きくなるので、その問題は悪化する。物質が高価であるか、あるいは入手困難である状況にて、物質の少量の使用が特に望ましいとすれば、逆流及び物質の損失の両方が最小化される装置及び方法を有することは望ましいであろう。
【0006】
したがって、針路に沿った物質の逆流がなく、対象の脳へ物質を導入可能なカニューレの必要性が存在する。必要性は、また、内部表面への薬剤の損失を減少し、従って、少量の物質を有効に配送可能なカニューレの設計に関しても存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、配送される物質の逆流、及び/又は損失を、低減又は排除するカニューレの設計を提供することにより、これら及び他の問題を解決する。
【0008】
一つの態様では、本発明は、動物における目標組織へ薬剤を配送するカニューレに関する。幾つかの実施形態において、目標組織は、中枢神経系(例えば脳)である。いくつかの実施形態では、薬剤は、生物学上有効な薬剤である。
【0009】
一つの実施形態では、カニューレは、配送される物質と接触するカニューレの直径がカニューレ長に沿う各規定点で階段様式にて減少する外側階段デザインを備える。よって、一つの態様では、本発明は、外側直径、遠位端、近位端、及び近位端と遠位端との間で延在する内腔を有する階段状のカニューレを含む。階段状のカニューレは、2又はそれ以上の同軸に配置されたセグメントを備える。各セグメントは、カニューレの外径を規定する外径を有し、ここで、各セグメントの外径は異なる。
【0010】
ある複数の実施形態では、外径は階段状の輪郭を有し、一方、物質に接する内面は階段状の輪郭を有しない。
【0011】
ここに記載するいずれの実施形態においても、直径は、近位端から遠位端への方向(即ち、カニューレの近位端での階段は最大直径を有し、遠位端での階段は最小直径を有する。)にて減少することができる。外径に沿って階段の数は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はさらにそれ以上のいかなる数でもあってもよい。
【0012】
ここに記載されたいずれの実施形態でも、階段の直径は、階段から階段へ同量にて(つまり、隣接した階段間での直径の差は均一である。)増加することができる。あるいは、ここに記載されたいずれの実施形態においても、階段の直径の差は、カニューレ長に沿って階段から階段へ変化させてもよい。さらに、ここに記載するいずれの実施形態においても、階段間の距離は、同じであっても、変化させてもよい。一つの実施形態では、カニューレは、以下の例1に記載され、図3A及び/又は3Bを参照するような、構成及び寸法を有する。
【0013】
ここに記載されるカニューレは、金属、合金、ポリマー、又はそれらの組み合わせを含むいずれの材料で作製可能である。ある実施形態では、カニューレは、配送される製品と接触する非ステンレス鋼表面を有する外部ステンレス鋼を備える。例えば、カニューレの内腔の表面(配送される物質と接触する)は、ステンレス鋼を覆うポリマーのコーティングで構成されてもよい。あるいは、例えばカニューレは、カニューレの内腔を通り延在する一若しくは複数の管をさらに備えてもよい。例えば、使用にて製品がステンレス鋼よりも熔融シリカ管の内面に接触するように、カニューレの外側ステンレス鋼スリーブに覆われた熔融シリカ管をさらに備えてもよい。上述で注意したように、配送される物質に接触する表面は、階段形状を有していてもよいし、有していなくてもよい。さらに他の実施形態では、カニューレは、以下に説明する物質から図3A及び図3Bに示されるように構成される。
【0014】
ここに記載されるいずれのカニューレでも、カニューレは、2つ若しくはそれ以上の材料を備えることができる。ある実施形態では、ステンレス鋼カニューレは、配送される物質が接触する表面が石英である熔融シリカ管を囲む。他の実施形態では、外部ステンレス鋼は、配送される物質が接触する表面が熔融シリカである熔融シリカ内面を囲む。好ましい実施形態では、カニューレは、例1に記載され図3A及び図3Bに示されるような、構造、寸法を有し、及び物質で作製される。
【0015】
別の態様では、本発明は、個々に記載されたカニューレと、カニューレを通して配送される一若しくは複数の物質を備えカニューレの内腔に接続可能な貯留部とを備えたカニューレアッセンブリーを含む。一若しくは複数の物質(例えば潜在的に治療の調合物)は、また、ここでは「製品」とも呼ばれる。ある実施形態では、貯留部は注射器を備える。さらに、ここに記載するいずれのシステム又はアッセンブリーにおいて、カニューレ及び/又は貯留部は、一若しくは複数のポンプ(例えば注射器ポンプ)に連結することができる。ある実施形態では、カニューレは、カニューレの内腔を通り延在する管を介してポンプに連結可能である。ある実施形態では、ここに記載するシステムは、さらに、定位フレーム(例えば図5参照)を備える。
【0016】
これらのシステムによって配送される物質は、一若しくは複数の生物学上有効な薬剤(例えばAAVベクター、タンパク質、薬など)、染料、トレーサー、マーカー、造影剤又はそれらの組み合わせを備える。更に、システムは、身体のいずれの部分へ、最も好ましくは動物の脳へ配送するために使用される。一つの実施形態では、本発明は、減少したホールドアップボリュームを有するカニューレを提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、対象における目標領域に一若しくは複数の物質を配送する方法を含む。該方法は、対象の目標領域に、ここに記載するようなカニューレ又はカニューレアッセンブリーを位置決めするステップと、カニューレを通して目標領域へ一若しくは複数の物質を配送するステップとを備える。ある実施形態では、目標領域は、中枢神経系、例えば脳に存在する。
【0018】
本発明のこれらの及び他の実施形態は、ここの開示を考慮して、当業者に容易に発想されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、脳のような動物の目標組織へ物質(例えば潜在的に治療の薬剤を備える調合物)の配送用の新規のカニューレに関する。ここに記載されたカニューレは、物質の配送中の逆流を大きく減少し又は排除する。そのような物質は、ここでは一般に「製品」と呼ばれる。より詳細には、本発明は、針の進路に沿って製品の最小逆流にて、最小のホールドアップボリュームにて、及びカニューレの内面への製品の最小損失にて、対象の脳内の十分に規定された位置へ製品の配送を可能にする。
【0020】
本発明の一つの実施形態では、カニューレは、その長さに沿って(近位端から遠位端へ)規定された位置で階段形状にてカニューレの直径が減少する階段デザインを有している。よって、好ましい実施形態では、最小のカニューレ直径は、カニューレの最遠位部分にある。上で注目したように、この階段デザインは、針の進路に沿って製品の逆流を減少する。一つの実施形態では、カニューレの外表面は、外径を異ならせ、4つの階段を形成する5つのセグメントを備える。また、他の実施形態では、それは以下に説明する構造及び寸法を有する。カニューレの表面は、図3A及び図3Bに示される実施形態におけるように、滑らかであってもよい。
【0021】
図1は、外部ステンレス鋼を有する階段状のカニューレ2を備える例示的なシステムの概観を示す。熔融シリカ管1,3は、カニューレ2の内腔を通して延在し、カニューレ2を、注射器4のハブ及び/又は尖っていない針6を介して注射器4に連結する。注射器4は、また、コンピューター化された注射器ポンプ5に取り付けられる。カニューレは、配送される物質の逆流を低減又は排除する手段、例えば、階段状のカニューレの内腔を通して延在し配送される物質に接触する管(例えば、熔融シリカ)を含んでいる。
【0022】
図1に図示された例示的な実施形態は、合計4つの「階段」を有するカニューレ2を示す。カニューレの遠位端に最も近い階段が目標組織に最初に入るものであることは明白だろう。従って、目標組織(例えば脳)に入る階段の数は、対象の動物における目標に達するために必要とされる侵入の深さに依存するであろう。脳への配送に関し、オペレーターは、治療されている動物の大きさ、及び対象とされている脳内の位置の両方を考慮に入れて、容易に侵入の適切な深さを決定することができる。
【0023】
図1に示すように、カニューレ2の外径は、カニューレの長さに沿って、近位端から遠位端への方向において、各階段にて減少する。ここで使用されるように、近位端は、製品が投薬される注射器4に近い点を言い、遠位端は、製品配送の最後の点(例えば目標組織)に近い点を言う。
【0024】
図1では、近位端−最大の階段の境をなす2つの近位端−最大セグメントは、ほぼ同じ長さを有し、一方、4つの遠位端−最大セグメントは互いに長さを変化しかつ2つの近位端−最大セグメントから長さを変化させた例示的な実施形態を図示している。よって、階段間のセグメントの幾つか、あるいは全てが他のセグメントと同じ長さを有することができ、又は、階段間のセグメントは他のセグメントと同じ長さを有しなくてもよい、ということがわかるであろう。
【0025】
カニューレ及び/又はカニューレを備えたシステムの種々の部品に使用される材料の非限定の例が以下の表に示されている。
【0026】
【0027】
図2は、図1に示されるものに類似する例示的なシステムの概観を示す。図2に示される実施形態は、ステンレス鋼カニューレの内腔を通り延在し、カニューレ10の遠位端を越えて延在する熔融シリカ管12を有する階段状のステンレス鋼カニューレ10を備える。また、図2には、Luer(ルアー)コンプレッションフィッティング14と共に、熔融シリカ管12を覆う管(FEP)13、及び熔融シリカ管12とFEP管13との間の1インチのステンレス鋼(23ga)も示されている。Luerコンプレッションフィッティング14は、ポンプ16に交代に接続される注射器15に接続される。
【0028】
図2に示されるような実施形態を作るのに用いることができる材料の例示及びその製造元は、以下の表に示されている。
【0029】
【0030】
示されるように、ある実施形態では、管は、カニューレの内腔を通り延在する。また、配送される製品は、この管を通して配送される。上記管を含む実施形態では、管は、カニューレの遠位端と同じ高さにあってもよい。あるいは、好ましい実施形態では、管は、カニューレの遠位端から延在する。そのような実施形態では、管の延在量は、応用例により変化可能である。一般的に、管は、カニューレから約1mmから約1cmまで(又は、その間の任意の長さ)、より好ましくは約1から約50mmまで(又はその間の任意の長さ)、及びさらに好ましくは約1mmから約25mmまで(1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mm、又は25mmに限定されることなく、これらを含みその間に含まれる任意の長さ)延在するであろう。一つの好ましい実施形態では、管は、その遠位端を約10mm超えて延在する。
【0031】
各図に示されるように、カニューレを通り延在する管は、例えば配送される製品に接する管を保護するために、一若しくは複数の領域においてもう一つのコーティング又は包囲材を有していてもよい。したがって、ある実施形態では、管(例えばFEP(テフロン(登録商標))管)は、ステンレス鋼カニューレの近位端を超えて延在する熔融シリカ管部分を保護する。熔融シリカ管は、Luerコンプレッションフィッティングを含むがこれに限定されない任意の適切な手段により注射器に接続可能であり、該注射器は、注射器ポンプ(手動、電子的な、及び/又はコンピューター化された)により駆動される。注射器の大きさは、製品の適切な量を配送するためにオペレータにより選択可能であることが明らかであろう。よって、1mL、2.5mL、5mL、又はさらに大きい注射器が使用可能である。
【0032】
ある実施形態では、Luerコンプレッションフィッティングは、熔融シリカ(内側)管と、FEP(外側)管との間に、1インチのステンレス鋼23Gスペーサを備える。任意のスペーサは、Luerコンプレッションフィッティング部分にて機械的な剛性を提供し、フェルールがLoctite(登録商標)接着剤を使用して適所に接着されるとき、内側、外側管間の隙間を密閉するのを役立つ。対象へ投薬されているとき、内側、外側管間の隙間に製品が侵入するのを防止するため、上記隙間は、ふさがれなければならない。好ましくは、スペーサの近位端は、ここに記載されたシステム及びカニューレのただ一つのステンレス鋼製品接触面を表わす。もし、スペーサのその他の露出端をカバーするためにLoctite(登録商標)接着剤又は他のコーティングを塗布することにより望まれれば、上記最小のステンレス鋼製品接触面は、ステンレス鋼が完全に製品と接触しないシステムを提供するため、除去されてもよい。あるいは、スペーサは、異なる材料で構成することができるかもしれない。
【0033】
図3Aは、ここに記載されるような階段状のカニューレを作ることにおいて選択された例示的な階段を図示する。例1もまた参照すること。特に、逆流を減少した階段デザインカニューレは、矢印(上から下へ)により示された順番、つまり直径を増していく部品(20、22、24、26、28、30)を加えることにより組み立てることができる。よって、例1に記載されるように、様々な長さのセグメントは、階段デザインを形成するためにともに連結される。
【0034】
カニューレが2つ若しくはそれ以上の部分から作製されるとき、ジョイントは、カニューレから目標組織へ、又はその逆に(目標組織からカニューレへ)物質が漏れるのを許容するべきでない。従って、ジョイントは、好ましくは密閉される。ジョイントは、これらに限定されず、溶接(例えばレーザー溶接)、接着剤、シーラント、加熱(例えば、熱可塑性ポリマー用)、及びこれらの組み合わせ、を含む様々な方法で密閉することができる。密閉の種類は、カニューレを作製するために使用される材料に依存するであろうことは明白だろう。例えば、溶接はステンレス鋼カニューレ用に使用可能であり、一方、加熱は熱可塑性ポリマー用に使用可能である。
【0035】
ここに記載されるような階段デザインカニューレも、例えば、ここに記載されるような階段状のカニューレを射出成形にて形成するように、全体を単一部分にて形成可能である。
【0036】
図3B−1〜図3B−6は、ここに記載されるような例示的な階段状のカニューレの組み立てを図示する。例1に記述されるように、図3Aに示される階段状のカニューレ35は、針カバー32を除去し、カニューレの端から延在するまでカニューレ35を通り内側管部品40を挿入することにより調製される(図3B−1)。熔融シリカ管を含み、これに限定されずに、内側管部品40用にいずれの材料も使用可能である。
【0037】
他の管に関し、鋼カニューレ35の内部は、配送される製品に接する一若しくは複数の材料にて被覆可能であり、それにより、配送中、鋼カニューレへの製品の損失が低減されることは明白であろう。ステンレス鋼材料へのコーティングの様々な技術は、知られており、使用可能である。
【0038】
任意的に、接着剤は、管が針に固定されるように、管40に置かれてもよい。例えば、Loctite(登録商標)接着剤のように、いずれの適切な接着剤も使用可能である。好ましくは、接着剤の接続強度は、少なくとも約4ポンドであり、より好ましくは少なくとも約5ポンドである。
【0039】
図3Bに示される実施形態では、針カバー32は、交換されてもよいし、カニューレ35(図3B−2)を通り熔融シリカ管40にわたり延在する、予めカットされた長さの管31(例えばFEP管)であってもよい。外側管31の長さは、指示によって決定することができ、10インチから5ヤードまでの長さ(又は、その間の任意の値)範囲とすることができる。したがって、ある実施形態では、外側管は、内側管の全長を覆い、内側管を超えて延在する。あるいは、他の実施形態では、外側管31は、内側管40の長さにわたり完全には延在しない(図3B−2)。アッセンブリーへ、例えば外側管31の端部にて外側管31を固定するために、いかなる適切な接着剤も使用可能である。接着剤の接続強度は、少なくとも約5ポンドが好適である。
【0040】
図3B−3に示されるように、一つ若しくは複数のスペーサー部品47は、内側管及び/又は外側管40、31にわたり挿入されてもよい。スペーサ47は、金属、合金、ポリマー、及びそれらの組み合わせを含むいずれの物質で作製可能である。ある実施形態では、スペーサー47は、ステンレス鋼を備える。スペーサ47は、針を超えて延在しないのが好ましいが、いずれの長さにもなりえる。任意的に、アッセンブリー、例えばPVC収縮管49の長さ、の部品を密閉するのを助けるため、部品が含まれても良い。スペース及びPVC管部品の例示的な寸法に関する例1を参照。
【0041】
その結果として、アッセンブリーは、製品配送貯留部に便利に連結されることを可能にする一つ若しくは複数の部品に取り付け可能である。例えば、図3B−4に示されるように、適切に大きさが合わせられたメス型のLuerコンプレッションフィッティング50は、外側管31の長さにわたり滑動し、フェルール51は、外側管31上に配置され、好ましくは外側管31の端と同じ高さにあるように配置される。接着剤は、一若しくは複数の部品(例えば、外側管の端の外側)に、端にフェルールを取り付ける前に、及び/又は、内側管、スペーサ、外側管、及びフェルール間のジョイントを密閉するために、任意的に塗布可能である。
【0042】
フェルール51から延在する内側管40の長さは、例えば管に刻み目を入れ、かつそれ及びLuerコンプレッションフィッティング50の内側に嵌合するフェルール51を折る又は切ることにより、除去してもよい(図3B−5)。収縮管49は、ジョイントを密閉するために加熱されてもよい。最後に、メスのLuerコンプレッションフィッティング55は、オスのLuerコンプレッションフィッティング50及びフェルール51に嵌め込まれ組み立てられる。
【0043】
上で注目するように、ここに記載する階段状のカニューレは、金属、合金、ポリマー、有機繊維、無機繊維、及び/又は、それらの組み合わせに限定されないがこれらを含む、生理学上許容可能な材料の種類の中から作製可能である。好ましい実施形態では、カニューレは、ステンレス鋼(例えば316SS又は304SS)を備える。
【0044】
任意に、製品接触面(例えば管又はコーティング)は、カニューレの内腔を通り延在してもよい。金属、合金、ポリマー、有機繊維、無機繊維、及び/又は、それの組み合わせに限定されないがこれらを含む様々な材料も任意の製品接触面に用いられてもよい。好ましくは、製品接触面は、ステンレス鋼ではない。かかる実施形態では、外側のカニューレは、目標組織と生理学上互換性をもつ材料でさらに作製されねばならない。しかし、そこで、製品接触がないので、それは生物学上有効な薬剤又は製品調合物と互換性をもつ必要はない。同様に、かかる実施形態では、図に示されるFEP(テフロン(登録商標))管は、管材料が、生物学上有効な薬剤又は製品調合物と互換性を持つかどうかに対する考慮をすることなく、他の管材料と取り替えられてもよい。
【0045】
したがって、一つの実施形態では、カニューレの製品接触面は、熔融シリカ(例えば石英ガラス酸及びポリイミド・コーティング)(Polymicro、Phoenix、Arizona)を備える、又はから成る。製品接触面用の熔融シリカの使用は、製品がステンレス鋼にさらされる従来のカニューレと比較したとき、製品の損失を大幅に減少する。実際に、59±14%のアデノ系列のウイルスベクターのみが、製品で予めフラッシングされた従来の注入器から除去されたが、本発明のカニューレを備えた装置では、製品で予めフラッシングすることなく、101±6%が除去される。例2参照。
【0046】
熔融シリカ以外の材料が問題の生物学上有効な薬剤の低表面損失に関する特性を有すれば、当業者は、熔融シリカ以外の材料が本発明のカニューレにて用いられてもよいことを理解するであろう。他の材料で作られた管は、熔融シリカ管の代わりに使用可能であり、あるいは、カニューレの内腔は、同じ結果を実質的に達成する材料でコーティングされてもよい。使用される最適の材料は、生物学上有効な薬剤の性質に依存して変化可能であり、実験によって決定されてもよい。
【0047】
100μmの内径を有する熔融シリカ管のような、小さな内径(ID)を有する管の使用は、増加した表面積と体積の比によって、試料の回収を増加するよりもむしろ減じると予想されるかもしれない。恐らく驚いたことに、小さなIDの熔融シリカ管の使用は、例えばAAVベクターの、配送される製品の大きな損失をもたらさない。理論にて制限されることなく、小さいIDの管を使用して所定の配送速度(単位時間当たりに配送される製品の体積)が一定に維持されるときに起因する、増加した直線的な流量速度により、結果は、説明可能である。さらに、AAVは、熔融シリカ管の表面に関する親和力をほとんど有しないと思われ、そのことが低損失を説明可能である。
【0048】
例1にて使用される熔融シリカ管の小さなIDは、システムのホールドアップ体積の減少というさらなる長所を有する。例えば、100μmのIDを有する熔融シリカ管の4フィート長のセグメントは、15μl未満の内腔体積を有している。かかる低体積は、試料の消費を減少し、配送システムのホールドアップ体積により試料の無駄を著しく減少する。製品の無駄が低減されることは、例えば多くの組み換えのタンパク質又は遺伝子治療ベクター等、生物学上有効な薬剤が入手困難で、及び/又は高価であるときに、特に価値がある。
【0049】
図4は、ここに記載するようなカニューレと組み合わせて用いられてもよい例示的なシリンジポンプの概観を図示する。図4に示される物は、注射器サドル60、注射器クランプ62、注射器クランプ溝(リテーナ)64、クラッチレバー66、注射器ドライバー68、注射器プランジャーリテーナ70、液晶ディスプレー72、及びオン/オフ・スイッチ74である。ここに記載されたカニューレを備えたシステムに有用なシリンジポンプは、市販され、例えばMedfusion 201Oi(Medex社、Carlsbad, California)である。
【0050】
図5は、定位フレーム72に取り付けられ、ここに記載するようなカニューレ70を含むシステムの概観を図示する。カニューレ70も、例えば管74を介してシリンジポンプに取り付けられてもよい。定位フレームは、市販されており、例えばLexellの定位フレーム(Ranfac社、Avon、Mass.)。
【0051】
ここに記載されたシステムのいずれも、製品接触部分は、石英ガラス(カニューレにおける熔融シリカ管)、USPクラスVIIポリプロピレン(注射器及びLuerハブ)、シアノアクリレート(接着剤ジョイント)、及びステンレス鋼(23Gスペーサー)を備えてもよい。
【0052】
典型的には、ここに記載されたシステムは、カニューレの一部又は全長に沿って製品がステンレス鋼に接触する、以前に記載されたシステムを使用するよりも、ステンレス鋼へのはるかに少ない接触にて、脳へ製品を提供することができる。ステンレス鋼へ製品がさらされることを減じたことは、本発明の装置及びシステムに提供されたように、損失を減少する。例えば、図3B−6に示されるカニューレは、図1に示されたシステムで形成されたように、ほとんどもっぱら熔融シリカ管及びUSPクラスVIIポリプロピレン注射器を備えた製品接触面を有している。他の唯一の接触面は、熔融シリカ管の近位端と、注射器のLuerハブとの間の接着ジョイントであり、その場所では、製品は、シアノアクリレート接着剤、及びステンレス鋼スペーサの近位端の断面に接する。このシステムにおいて、鋼への暴露は、最小である。
【0053】
本発明のカニューレは、また、減少された逆流、薬剤の表面に関する減少された損失、及び減少されたホールドアップ体積を有する改善されたカニューレを提供するために、階段デザイン及び内側熔融シリカ製品接触面を組み合わせてもよい。
【0054】
本発明のカニューレは、例えば標準的なエチレンオキシドによる技術を含む既知の技術を用いて殺菌されてもよい。殺菌されたカニューレは、任意にTyvek(登録商標)ポーチに個々に包まれてもよい。
【0055】
本発明のカニューレを用いて配送可能な薬剤は、目標組織にて所望の効果を有することができるあらゆる物質を含む。例えば、治療の薬、タンパク質、プラスミド又は遺伝子治療ベクターは、対象の脳へ配送可能である。又、染料、トレーサ、撮影用の造影剤、及びマーカー、診断上又は研究用の目的のように、非治療用の薬剤も加えられてもよい。
【0056】
例えば、レトロウイルスの遺伝子治療システムは記載されている。例えば米国特許番号5,219,740; Miller 及びRosman、BioTechniques (1989) 7:980-990; Miller, A.D.、Human Gene Therapy (1990) 1:5-14; Scarpa等、Virology (1991) 180: 849-852; Burns等、Proc. Natl. Acad. Sci. アメリカ (1993) 90:8033-8037; 及びBoris-Lawrie 及びTemin、Cur.Opin. Genet. Develop. (1993) 3: 102-109、参照。多くのアデノウイルスベクターも記載されている。例えば米国特許番号6,048,551、6,306,652, Parks, R.J., Clin. Genet. (2000) 58:1-11; Tsai等、Curr. Opin. Mol. Ther. (2000) 2:515-523 参照。
【0057】
さらに、様々なアデノ系ウイルス(AAV)ベクター・システムは、遺伝子配送のために開発されている。AAVベクターは、熟練者によく知られた技術を用いて容易に構成することができる。例えば米国特許番号5,173,414及び5,139,941; 国際公開番号 WO 92/01070(1992年1月23日公開)、及びWO 93/03769(1993年3月4日公開); Lebkowski等 Molec, Cell. Biol. (1988) 8: 3988-3996; Vincent等 Vaccines 90 (1990) (Cold Spring Harbor Laboratory Press); Carter, B.J. Current Opinion in Biotechnology (1992) 3: 533-539; Muzyczka, N. Current Topics in Microbiol. and Immunol. (1992) 158:97-129; Kotin、R.M. Human Gene Thrapy (1994) 5: 793-801; Shelling and Smith, Gene Therapy (1994) 1: 165-169; 及びZhou等、J. Exp. Med. (1994) 179: 1867-1875 参照。
【0058】
本発明のカニューレは、CNSへの投薬用で伝達増強された配送(CED)システムの一部として使用可能である。例えば、米国特許番号6,309,634(その開示内容の全体が参考文献としてここに組み込まれている)は、CEDによって薬剤が中枢神経系領域に配送される遺伝子治療の方法を記載する。CEDを使用する、組み換えのベクターは、CNSの大きな領域にわたる多くの細胞に配送可能である。さらに、配送されたベクターは、効率的にCNS細胞(例えば膠細胞)の遺伝子導入を急送する。本発明のカニューレは、組み換えベクターの配送用のいずれの伝達増強配送装置とともに使用可能である。一つの実施形態では、装置は、浸透ポンプ又は注入ポンプである。浸透、注入の両ポンプは、様々なサプライヤーから市販されており、例えばAlzet社(Cupertino, California)、Hamilton社、又はAlza社(Palo Alto, California)である。
【0059】
本発明のカニューレは、CEDではなく、直接噴射又は注入の他の方法にも使用可能である。
【0060】
製品は、0.2、0.5、0.7、1.0、1.5、2.0、3.0、5.0、10又は20μl/分に限定されないがこれらを含む様々な流速で目標組織へ配送可能である。図1A及び図2Aに示された実施形態を参照して、約10〜20μl/分の流速は、このような高流速での過度の背圧のために、100μm IDを有する4フィートの熔融シリカ管を用いて達成するのが難しい。これは、伝達増強配送方法に関し重大な制限を表すものではないが、しかし、それは好ましくは比較的低流速で行なわれる。0.2μl/分未満の流速は、ポンプを遅く設定するのができないので、図1A及び図2Aに示されたシステムを使用して達成するのは困難かもしれないが、当業者は、そのような低い配送速度を達成するために異なるポンプ及び/又は注射器構成を使用可能であろう。
【0061】
目標組織へ配送されるように、流量及び製品の圧力は、配送を通して増加、減少、又は安定を維持することができる。好ましい実施形態では、流速は、安定領域へ「上昇」するよりも、配送を通して実質的に一定に保持される。
【0062】
典型的には、組み換えのベクターは、CED装置を介して以下のように配送される。本発明の改善されたカニューレは、選択された対象におけるCNS組織に挿入される。定位のマップ及び位置決め機構は、例えばASI Instruments, Warren, MIから入手可能である。また、位置決めも、選択された目標に注入具を案内するのを助けるためCT及び/又はMRI撮影により得られる解剖のマップを使用することにより導かれてもよい。
【0063】
例2〜例5は、人間、ネズミ、及び非人間霊長類の脳にhAADCを符号化した遺伝子を配送するために本発明のカニューレの使用を示す。hAADC遺伝子の配送は、パーキンソン病(PD)の治療において有用かもしれない。PDは、中脳の黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの進行性の損失、及び被殻におけるドーパミンの重度の減少により主に特徴付けられる(Hornykiewicz (1975) Nat'l Inst. Drug Abuse Res. Monogr. Ser.(3): 13-21)。AADCは、エルドーパをドーパミンに変換するドーパミン生合成経路における酵素である。ヒトAADCを符号化したcDNAのネズミ又は非人間霊長類の被殻への伝達がPDの動物モデルにおける有効なエルドーパの投与量を減少可能であり、それにより線条体のドーパミンを正常レベルに戻すということを、従来の研究は示している(Bankiewicz 等 (2000) Exp. Neurol. 164(1): 2-14; Sanchez-Pernaute 等 (2001) Mol. Ther. 4(4): 324-30)。ヒトのPD患者において、この治療は、エルドーパ要求を低下させて、薬の臨床の利益が観察される期間を拡張すると予想されるだろう。
【0064】
例2は、関連する表及び図に加えて、本発明のカニューレを用いて、霊長類の脳への遺伝子の配送に関するプロトコル及び実験結果を提供する(臨床デバイスB)。hAADC(AAV-hAACD-2)を符号化したrAAVビリオンは、4つの正常なアカゲザルの被殻へ注入され、また、AADC発現の分配は、免疫組織化学によって決定される。2つの注入プロトコルがテストされる:上昇(ramped)手順(0.2μL/分から1μL/分まで速度をゆっくりと段階状に増加)、及び1μL/分の一定の速度での非上昇注入である。第一の終了点は、注入手順の安全評価、及び注入後、5.5週での遺伝子伝達表現の評価である。
【0065】
ベクター注入後の臨床観察は、研究期間中に行動の異常性を示さない。上昇注入、又は非上昇注入のいずれかにより、大きな病理学の差は観察されない。組織病理学は、両方のグループにおいて比較可能であり、カニューレ配置及びベクター注入に応じて針経路に沿った単に最小の集中された炎症性の組織反応を示す。さらに、AADC免疫組織化学は、いずれかの注入手順による免疫染色量において著しい差異がない状態で、ベクターが被殻にあまねく分配されることを実証する。AAV2ベクターに対する血清抗体レベルは、注入後、僅かな増加を示した。
【0066】
以下の例は、本発明の実施形態を図示するためにのみ提供され、本発明を規定又は限定するものではない。
【0067】
例1
アッセンブリー及び組み合わせ手順
A.例示的なカニューレ#1
例示的な階段状のカニューレ(図3A及び図3Bに示されるような)は、以下のように生産される。
【0068】
ステンレス鋼管セグメントは、ある長さに切られ、Lasag社 Nd:YAG又はNeodinium YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ、454nm波長領域における紫外線レーザを使用して溶接される。23Gセグメントと19Gセグメントとの間の溶接は、漏れが無いことをテストされ、全ての溶接部は10ポンドの最小引張力に耐えることをテストされる。23Gセグメントと19Gセグメントとの間の溶接は、針の外側への逆流の可能性のあるあらゆる製品がカニューレの内腔へ漏れるのを防止し漏れがないようにべきである。同じ理由で、熔融シリカ管の露出した遠位端とカニューレの鋼管部分との間の接着ジョイントは、液体が入らないようにすべきである。
【0069】
針は、レーザー工程の終了後、不動態化され超音波で洗浄される。熔融シリカ管は、切断され、シアノアクリレート接着剤によりステンレスカニューレに組み立てられる。パッケージの前に、先端を保護するため、プラスチックの針カバーがカニューレの遠位端を覆って付けられ、そして、アッセンブリー全体が消毒用の予めラベルが付けられたTyvek(登録商標)ポーチ内に包装される。
【0070】
注入針サブアッセンブリー(INSA)は、管(長さ9.67インチ、23RW遮断、0.0250/0.0255のOD、0.0125/0.0140のID、0.006の壁厚)の芯セグメント20上のステンレス鋼管の連続セグメントを滑動させることにより組み立てられる。図3A。内径(ID)、外径(OD)及び管肉厚(「壁」)に関する寸法は、すべてインチで提供され、対の値X/Yは、最小及び最大の公差を表わす。
【0071】
図3Aを参照して、セグメント22(長さ8.28インチ、19RW遮断、0.0415/0.0425のOD、0.0255/0.0285のID、0.0075の壁)は、セグメント22の遠位端を超えて延在する0.390インチ(10mm)の芯を残して芯セグメント20を覆い配置される。セグメント24(長さ6.31インチ、17RW遮断、0.0575/0.0585のOD、0.0405/0.0435のID、0.008の壁)は、セグメント24の遠位端を超えて延在する1.970インチのセグメント22を残してセグメント20,22を覆い配置される。セグメント26(長さ6.31インチ、15RW遮断、0.0715/0.0725のOD、0.0595/0.0615のID、0.006の壁)は、セグメント26の遠位端を超えて延在する1.970インチのセグメント22を残してセグメント20,22、24を覆い配置される。セグメント28(長さ6.31インチ、0.086/0.087のOD、0.0735/0.0750のID、0.006の壁)は、セグメント28の遠位端を超えて延在する1.970インチのセグメント22を残してセグメント20,22、24、26を覆い配置される。セグメント30(長さ1.58インチ、0.108/0.110のOD、0.0880/0.0895のID、0.010の壁)は、セグメント30の遠位端を超えて延在する7.090インチのセグメント20を残してセグメント20,22、24、26、28を覆い配置される。
【0072】
全ての部品は、適所にレーザ溶接された。セグメント20とセグメント22との間の遠位の溶接継ぎ目は、100%気密とされ、セグメント1の内部は、閉塞(例えば、0.012インチの直径ワイヤー又はゲージ・ピンを用いて)がないことを保証するようにテストされた。全ての溶接ジョイントは、10ポンドの最小引張力に耐えなければならない。
【0073】
いったん組み立てられ、INSAは、以下のように不動態化され超音波で洗浄される:
Oakiteアルミニウム10分間洗浄され、7分間、脱イオン化された水でスプレーすすぎされ、アルコール中で超音波ですすがれ、及び空気で乾かされた。
【0074】
針カバー32(長さ9.0インチ、0.156のOD、0.104/0.108のID、0.025の壁)は、組み立てられたセグメントの近位端を超えて延在するセグメント30の0.8インチのセグメントを残して組み立てられたセグメント20,22,24,26,28,30を覆い配置される。
【0075】
INSAは、以下のように、酸及び清浄液の跡が無いように検査された:針カバー32を外し、アルコール内に浸し、針カバーを交換し、針カバー7の遠位端を通じて空気を吹き、セグメント20の近位端で液体流出を検査し、流出のすべてが清潔になるまで繰り返された。
【0076】
INSAの遠位端は、それが直線だったことを保証するために検査された。
【0077】
図3Bは、ここに記載するような例示的な注入針アッセンブリーの組み立てを示す。
図3B−1に示すように、針カバー32は、上述したようにINSA35から除去され、熔融シリカ管40の全長は、INSA35の芯23G管15に、近位端にて始まり、INSA35の遠位端を超えて約2インチ延在するまで通される。Loctite(登録商標)接着剤(Loctite(登録商標) Prism(登録商標) 4011接着剤、低粘度)は、露出した熔融シリカ管40に塗布された。次に、熔融シリカ管は、接着剤を均一に配置するようにINSAを回しながら、INSAの遠位端を超えて約1インチ残るまで引っ込められた。接着剤の接合強度は、少なくとも5ポンドである。露出した熔融シリカ管は、INSAの遠位端から延在して0.390インチ(10mm)残るように、仕上げられ、針カバー32が交換された。
【0078】
48インチ長のFEP(テフロン(登録商標))管(1/16のOD、0.030のID)が31として準備され、両端は、Loctite(登録商標)プライマー(Loctite(登録商標)7701プライマー)に漬けられ、空気乾燥される。熔融シリカ管40の近位端は、FEP管に通される。Loctite(登録商標)接着剤は、INSAの近位端に塗布される。FEP管31の遠位端は、INSAの針端の上にすぐに押される。接着剤の接着強度は、少なくとも4ポンドである。
【0079】
図3B−3に示されるように、23Gステンレス鋼スペーサー47(長さ1インチ、23のRW)は、熔融シリカ管40上に置かれる。Loctite(登録商標)接着剤は、熔融シリカ管40の外側及びスペーサー47の外側に塗布される。また、スペーサー47は、FEP管31の近位端が面一になるまで、FEP管31の近位端に挿入される。0.5インチ長のPVC収縮管49(0.125ID)のセグメントは、FEP管31の近位端上にはめられる。
【0080】
図3B−4に示されるように、その後、1/16のメスのLuerコンプレッションフィッティング50がFEP管31の近位端上にはめられる。また、フェルール51は、FEP管31の近位端上におよそ1インチ、置かれる。Loctite(登録商標)接着剤がFEP管31の外側に塗布され、フェルール51がFEP管31の近位端と面一にフェルールの近位端に位置するように押される。Loctite(登録商標)接着剤が熔融シリカ管40、スペーサー47、FEP管31、及びフェルール51間のジョイントを密閉するために塗布される。
【0081】
フェルール51を超えて近位へ延在する残りの熔融シリカ管40は、刻み目を入れられ、折られる。図3B−5に示されるように、フェルール51は、Luerコンプレッションフィッティング50(3ポンド最小引張力)にぴったりと設置され、INSA35の近位端とFEP管31との間のジョイントにわたり、熱収縮管49が熱収縮される。
【0082】
アッセンブリーは、空気漏れがテストされ、オスのLuerキャップ55がコンプレッションフィッティング50に加えられる(図3B−6)。
【0083】
その後、組み立てられたINAは、ラベル付のTyvek(登録商標)ポーチ(4x23インチ)内に包装され密閉される。そして、貯蔵又は出荷用のラベル付の箱内に収納される。
【0084】
管31は、テフロン(登録商標)FEPで作製されたが、当業者は、適切な管材料が使用可能であり、又は管はすべて省略することもできることを認識するであろう。FEP管31は、熔融シリカ管40用の保護として含まれており、非常に薄い熔融シリカ管がシステムのオペレーターに見えることの確認の助けのために含まれる。これらの機能のどちらも本質的なものではない。さらに、FEP管は製品に接触しないので、他の材料の管が生物学的適合性に対する考慮なしに使用可能である。
【0085】
ここに記述されるように生成され、完成したカニューレは、全長6.31インチ(例えば管エレメント28を備える長さ)を超え、内径0.0125〜0.0140インチ、及び外径0.086〜0.087インチである5層のステンレス鋼管を備える。このカニューレは、このセグメントに沿って実質的な剛性を有し、これは目標組織(例えば脳)に挿入されるようにカニューレの曲がりを防止する。さらに、鋼管30の6番目の層が1.58インチのセグメント上にカニューレにさらに大きな強さを加え、これは、図5に示されるように、使用中に定位フレームに取り付けられるときに、カニューレが潰れたり、変形するのを防止する。
【0086】
B.例示的なカニューレ#2
他のカニューレは、例1Aに記述されたものに類似して作製される。図6に示されるように、カニューレ80は、30ゲージ管に終わり、階段デザインで、レーザ溶接により互いに熔融された4層の304手術用鋼を備える。鋼カニューレ(針先端を含み端から端まで約24.6cm)は、鋼を超えて1cm延在することにより配送装置の先端も形成する100μmの内径の熔融シリカ82で裏張りされている。テフロン(登録商標)管84で覆われていた約1.2m(122cm)のさらなる熔融シリカ82は、Luerハブ86に接続される。熔融シリカ及びテフロン(登録商標)管の間の1インチの30ゲージ鋼スペーサー88は、密閉され、医療級シアノアクリレート接着剤でLuerハブに取り付けられる。
【0087】
例2
AADCを符号化した組み換え型のウイルスベクターの霊長類の脳への配送
ヒトAADC(AAV-hAADC-2)を符号化した組み換え型AAVベクターが準備され、以下のようにアカゲザルの被殻に配送される。
【0088】
組み換え型ベクターの製造
組み換え型AAV2は、3倍のトランスフェクション・プロトコル(Matsushita等(1998)Gene Ther. 5(7): 938-45)によって生成された。簡単に言えば、10%のウシの胎仔血清及び2mMのグルタミンを含んでいるDMEM中の一連の使い捨て培養品によって細胞・バンクを動かすHEK293から細胞の拡大後、細胞は、3つのプラスミド(pAAV-hAADC-2、pHLP 19、及びpladeno5)で同時形質移入(co-transfected)された。rAAV−hAADC−2ベクター・クローンは、上述のもの(Sanftner等 (2004) Mol. Ther. 9(3): 403-9)と同じである。プラスミドpHLP 19及びpladeno5は、米国特許5,139,941;5,622,856;6,001,650;及び6,004,797 にてより完全に記載されており、それらの開示内容は、それらの全体が参考文献として本願に組み込まれている。
【0089】
適切なトランスフェクション時間後、トランスフェクション試薬を含む媒質は、無血清媒質と取り替えられ、細胞はベクター生成を可能にするためにさらに培養される。細胞は収穫され、遠心分離によって凝縮され、AAV-hAADC-2ベクターを解離するため凍結/解凍方法によって溶解される。細胞の残骸を除去する遠心分離の後、溶解物は、Benzonase(登録商標)、塩化カルシウムにより処理され、ポリエチレングリコールで沈殿される。ベクターは、セシウム塩化物における等密度の勾配超遠心分離を2回繰り返すことによって浄化される。
AAV-hAADC-2は、凝縮され、5%のソルビトールを含む無菌のバッファーされた食塩水(PBS)でダイアフィルタ(diafiltered)される。Poloxamer 188(TM)(0.001%)が加えられ、物質は、無菌濾過(0.22μm)され、−70℃で冷凍保存される。ベクター清浄は、SDS-PAGEによって評価される。この研究で用いられる、浄化されたrAAV2ベクターは、SDS-PAGEゲルの銀染色法により、VPl、VP2、及びVP3のみを示される。滴定濃度は、ベクター・ゲノムのリアルタイムQ-PCR分析により決定される。
【0090】
外科的処置
定位の座標(被殻の解剖学的構造に基づく)を同定するために、核磁気共鳴映像法(MRI)が手術に先立って各猿に行なわれた。一つが頭側の被殻に集められた部位で、2つ目が尾部の被殻内の部位にて、各大脳半球に2つの部位が目標とされた。成体のアカゲザル(n=4)は、手術のため、ケタミン(Ketaset(登録商標)、10mg/kg、筋肉注射)及びValium(登録商標)(0.5mg/kg、静脈注射)の混合物で動けなくされ、挿管され準備された。等張性の液体は、2mL/kg/hrで静脈注射にて配送された。麻酔は、5%v/vで、全身麻酔薬(Aerane(登録商標)、Omeda PPD社、Liberty, New Jersey)にて引き起こされ、手術の間、l%−3% v/vで維持された。動物の頭は、MRI互換の定位フレームに置かれた。心電図、心拍数、酸素飽和度、及び体温が手続きの間、連続的にモニターされながら、中心温度は循環水ブランケットにて維持された。目標部位の真上の硬膜領域を露出するように、歯科用ドリルにて頭蓋骨に穴が形成された。AAV−hAADC−2は、CED(Lieberman等 (1995) J. Neurosurg. 82(6): 1021-9; Bankiewicz等 (2000) Exp. Neurol. 164(1): 2-14)によって注入された。それぞれの猿は、4つの部位(一つの半球当たり2つの部位を有し、部位当たり50μL)にわたり200μLで拡がり、計3×1011vgを受け入れた。注入カニューレは、各大脳半球における被殻に手動で案内された。また、動物は、左脳半球用に0.2μL/分(10分)、0.5μL/分(10分)、0.8μL/分(10分)、及び1μL/分(35分)の注入速度で、右脳半球用に1μL/分(50分)の一定の注入速度にて、AAV−hAADC−2(1.5×1012vg/mL)の左右相称の注入(つまり両大脳半球内の頭側及び尾部の部位へ連続して注入)を受けた。各動物の実際の定位座標は、:MR15101M 頭側被殻 AP:18、ML:±10.5、DV:20、尾部被殻AP:15,ML:±13,DV:20、R211101M 頭側被殻 AP:24、ML:±12.5、DV:20、尾部被殻 AP:21、ML:±13.5、DV:20、MR15109M 頭側被殻 AP:12、ML:±13、DV:20、尾部被殻 AP:15、ML:±12、DV:20、R23700M 頭側被殻 AP:21、ML:±13.5、DV:21、尾部被殻 AP:24、ML:±12.5、DV:20である。注入の約10分後に、カニューレは除去され、巻かれた部位は閉じられた。また、猿は麻酔からの回復のためにモニターされ、次に、継続して観察するためにケージに戻された。
【0091】
組織学と免疫組織化学
組織学の研究のため、動物は、10%中性緩衝ホルマリン(NBF)に従い心臓内の塩水注入を介して潅流する。その後、脳は、除去され、脳型枠にて頭頂ブロック(8〜10mm)にスライスされる。収穫された脳ブロックは、10%NBF定着薬への浸漬により固定される。組織ブロックは、定着後2〜3日で、濃度上昇PBS/スクロース溶液(10,20,30%)に3〜5日間にわたり移送される。脳は、イソペンタン槽にて冷凍され、ドライアイス上で冷やされ、低温保持装置で40μm厚の頭頂部分に連続的にカットされる。10番目の部分毎に、組織病理学の分析のためにヘマトキシロン及びエオシン(H&E)溶液(Richard Allen、Scientific、Kalamazoo、MI)で着色される。免疫組織化学は、AADC(Chemicon、Temecula、CA、1:1,500)特定用の第一の抗体を有する浮かない部分で実行された。部分は、細胞膜内で成長するペルオキシダーゼを消すために、30分間、3%の過酸化水素内で保温された。10%の正常なヤギ血清で非特定結合のためにブロックした後、部分は、室温で、一級抗体に一晩保温され、その後、ビオチン化された抗ウサギIgG抗体(Vector Laboratories、Burlingame、CA、1:300)、スプレプトアビジン抱合体化されたホースラディシュ・ペルオキシダーゼ(Vector Laboratories、1:300)にて、室温で、両方1時間、保温された。複合体は、3−3'−ジアミノベンジジン(DAB(Vector Laboratories))及び過酸化水素で視覚化された。部分は、Superfrost Plus(登録商標)スライド(Brain Research Laboratories, Newton, MA)に取り付けられ、乾かされ、上昇エタノール系内で脱水され、キシレン内で清掃され、Cytoseal−XYL(Richard―Allen、Scientific、Kalamazoo、MI)でマウントされる。hAADC免疫染色の前後分配は、式(n×10×40μm)により決定される。ここで、nはhAADC陽性細胞での部分数、40μmは部分の厚さ、10番目の部分毎に検査された。分配量は、連続の部分(10番目毎)にて推定され、ビデオカメラ及びStereoinvestigator(TM)の立体解析学ソフトウェア(Microbrightfield、Williston、VT)を装備したZeiss顕微鏡で63倍の拡大の下、立体解析学法に基づき設計されたOptical Fractionator-Optical Dissector でAADCに関して着色された。CEEは、各グループに関し5%未満である。結果は、平均±標準偏差として報告される。学生のt - テストは、統計的有意性を測定するために用いられた。
【0092】
リアルタイムの量的PCR
この研究にて用いられるベクターAAV−hAADC−2は、ヒトのAADC目標cDNAを含んでいる。リアルタイムQ−PCRプライマー及びプローブは、AADC遺伝子の2,3のエクソンにアニールし、ベクター・シーケンスの中にないイントロンをまたがる。それにより、ゲノムのDNAの増幅を最小化する。リアルタイムQ−PCRは、ベクター・インサートを含む線形化されたプラスミドDNAで標準化され、ベクター・ゲノムは、上述したように(Sommer等 (2003) Mol. Ther. 7(1): 122-8)、量を計られた。
【0093】
中和AAV抗体滴定濃度
血清又は血漿の中和抗体(NAb)滴定濃度は、細胞に基づいた分析にて生体外で決定された。β−ガラクトシダーゼ・リポーター遺伝子(AAV2-LacZ)を符号化した、規定数のAAV2ベクター粒子は、96−ウエルプレートにおける集合の近くのHEK−293細胞への混合物の追加の前に、37℃にて1時間、テスト血清で保温された。制御(100%)AAV2形質導入は、純粋なマウス血清(NMS)がある状態でAAV2−LacZによる形質導入の後、24時間の培養にて測定されたβ−ガラクトシダーゼ活性の量として規定された。NMS中のテスト血清のハーフログ(half-log)連続希釈は、β−ガラクトシダーゼ発現の50%以上の抑制に帰着するテスト血清の最も高い稀釈を決定するようになされた。各希釈列は、3つにてテストされた。滴定濃度を中和する十分に定義されたAAV2を備えた基準血漿は、各分析評価にて使用され、また、負の制御(NMSだけ)は、バックグラウンドの分析評価を決定するために用いられた。NAbの滴定濃度は、50%抑制レベル、例えば、1:100、1:316を一まとめにする2つの稀釈液として規定された。
【0094】
ELISA架橋
滴定濃度板(96ウエル)は、AAV2粒子でコーティングされ、次に、試験サンプル(血清または血漿)とともに保温された。板は、ビオチン化されたAAV2粒子で保温され、次に、それらはHRP結合−スプレプトアビジンにて検出された。ビオチン化されたAAV2粒子は、2つのAAV2粒子間にブリッジを形成する多価抗体によってのみ捕らえることができる。この分析評価における非常に低い非特異性のバックグラウンド信号は、希釈されていない、又は低希釈の試験品の試験を可能にし、また、分析評価は、試験サンプルにおける第一の抗体が酵素を結合した第2の抗体によって検出される古典的ELISAよりも高い感度を有する。架橋分析評価は、抗体の異なる種とクラスとの間の直接の滴定濃度比較を可能にする。分析は、AAV2(Grimm等、1998)を認識する、浄化されたマウス単クローン抗体「A20」の既知量で標準化された。この分析の量化限界は、約15ng/mLの反AAV2抗体だった。1:100のNAb滴定濃度を有するヒトのサンプルは、A20と同等な抗体の1〜10μg/mLの間に含まれていた。この分析によって反復試験を受けた65の人間サンプルに関する平均の測定間(inter-assay)の可変性は、23%だった。
【0095】
実験に基づく設計
組み換え型AAV2ベクターは、頭脳組織を効率的に形質導入するが、しかし、形質導入レベルは、高い中和抗体(NAb)滴定濃度(>1:1200)(Sanftner等 (2004) Mol. Ther. 9(3): 403-9) が存在する状態で著しく下がる。したがって、NAb滴定濃度≦1:100を有する4匹のオスのアカゲザルがAAV2注入(表1)のために選ばれた。ベクター投与のための定位座標を決定するために、MRI走査がAAV2配送に先立って行なわれた。
動物に、各大脳半球(3.0×1011vg/脳)に、2つの50μL注入(7.5×1010vg/部位)にて、1.5×1011vg/脳のAAV−hAADC−2がそれぞれに注がれた。0.2μL/分(10分)、0.5μL/分(10分)、0.8μL/分(10分)、及び1μL/分(35分)の上昇の注入速度(増加)が、左大脳半球用に用いられ、一方、50分間(非増加)、1μL/分の一定速度が右大脳半球用に用いられた。動物は、5.5週間モニターされた。このモニタ時間は、hAADC発現が比較的安定になるのに満足な期間である。第一の終了点は、免疫組織化学により決定されるようなAADC発現、並びに臨床観察及び組織病理学によって決定されるような安全評価を含んでいた。さらに、基線及び研究の終わりにて集められた血清サンプルは、中和すること及びAAVに対する全抗体の両方の存在に関してテストされた。
【0096】
【表1】
【0097】
注入装置改良及びベクター回収
ヒトの使用(「Clinical Device A」つまりCDA)のための試作型注入装置は、標準のLeksell(登録商標)の定位フレームにはまり合うように作製された、25cmのステンレス鋼カニューレを備えていた。CDAカニューレは、剛性、及び内部ホールドアップ体積の最小化を提供するため、医療等級のステンレス鋼管の4つの階段状層を備えていた。鋼CDAカニューレは、1.2mのテフロン(登録商標)管を介して注射器に接続された。1μL/分までの流速におけるベクター回収研究は、製品調剤にて表面活性剤として0.01%のPoloxamer 188が含まれるにもかかわらず、90%のベクター製品が装置に吸着していたことを示している(表2)。ベクターで装置を1時間フラッシュすることは、後の回収を改善するが、しかし、ベクターの損失は、まだおよそ40%あった。さらに、ベクター回収用のテストは、1μL/分以下の流速にて製品が異種の管材料に接する階段状のステンレス鋼カニューレの試験を含んでいた(例1A、1B)。優れたベクター回収は、AAVベクターと接する、熔融シリカTygon(登録商標)及びシリコーン管を備えるカニューレに関して観察された。鋼、テフロン(登録商標)(PTFE及びFEP)、及びポリイミドのような他の物質は、かなりの量のベクターを捕獲する。
【0098】
【表2】
【0099】
ベクター損失の多くは、低流速にてのみ観察された。例えば、テフロン(登録商標)管では、ベクター損失は、線形の流速に反比例した。ベクターの90パーセントは、1μl/分(1.2mの管を4mm/分)にて失われたが、しかし、許容可能なベクター回収(>80%)は、同じ管で、約100μL/分の流速にて得ることができた。線形の流速を最大にし、かつテフロン(登録商標)及び鋼の表面でのベクターの接触を全て除去するために、臨床装置の全コアは、内径100μmの熔融シリカにて裏打ちされた(例1B、図6)。この装置(「臨床装置B」即ちCDB)では、鋼カニューレは、剛性を提供するために熔融シリカを囲み、熔融シリカは、鋼カニューレの先端を超えて10mm延在する(図6)。針の先端近くの2つの外側の階段は、針の経路に沿った潜在的な逆流を最小にするために含まれている。さらに1.2メーターの熔融シリカは、LuerハブにCDBカニューレを接続し、単に保護を提供するためにテフロン(登録商標)管によってカバーされる。CDBは、cGMPに従い製造され組み立てられ、終末にエチレン酸化ガスによって殺菌された。
【0100】
ベクターの量的回収は、臨床前及び臨床装置による模擬の注入によって評価された。臨床前装置に関して、400μLのベクター溶液は、27ゲージ鋼管の4cm片により囲まれた熔融シリカを有する7cmのカニューレに連結されたテフロン(登録商標)管へ遠位端から出された。100μL/分にてカニューレを満たした後、回収分析用のベクター収集前に、さらに20μLのフラッシュが行われた。プログラム可能な注射器ポンプにて0.2〜1.0μL/分(上昇手順)の流速にて、4つの試料が2つの装置から集められた。
【0101】
表2に示されるように、これらの状態の下で臨床前装置からの平均ベクター回収は、63±16%(±SD)であった。臨床装置については、AAV−hAADC−2ベクターは、5×1011vg/mLに薄められ、注射器に装填され、装置に取り付けられた。充填後、臨床装置Aは、8μL/分(62.5分)で500μLのベクター溶液でフラッシュされ、一方、臨床装置Bは、4μL/分(12.5分)で50μLのベクター溶液でフラッシュされた。50μLの2つの連続した部分標本が、0.2〜1.0μL/分の流速にて各装置の3セットから集められた。各サンプルにおけるベクター濃度は、リアルタイムの量的PCR(Q−PCR)によって決定された。
【0102】
臨床装置Aに関する回収は、大量の1時間のフラッシュ後、単に60±15%であった。一方、ベクター(101±6%)の完全な回収が臨床装置Bに関して観察された。臨床装置Bから回収されたベクター・サンプルの性能は、感染性の滴定濃度(Zhen 等 (2004) Hum. Gene Ther. 15(7): 709-715)を決定することにより確認された。特定の活性(伝染性のユニット/vg)において、顕著な減少は、観察されなかった。
【0103】
免疫組織化学及び生体内でのhAADC発現の計量
hAADC発現の免疫組織化学分析は、ベクター分配が上昇注入と非上昇注入との後で異なるのか否かを臨床装置Bで決定するため、AAV−hAADC−2注入後、5.5週にて各大脳半球にて実行された。全ての猿は、被殻内でhAADC発現を示した。連続した部分は、hAADC−陽性細胞用の明視野顕微鏡にて検査された。分配の体積、及びhAADC遺伝子組み換えの陽性細胞の前、後(A−P)拡張が全ての動物に関し決定された。
【0104】
図7は、注入部位によるhAADC遺伝子組み換え用の免疫組織化学染色の断面を示している。画像は、動物MR15102M(A)、MR15109M(B)、R23700M(C)、及びR211101M(D)からの部分の全マウントである。部分は、画像の右側で右大脳半球、及び画像の左側で左大脳半球による尾部の図から配向される。すべての動物において、遺伝子組み換え発現は、被殻に集中した。hAADC発現は、図7Bに示されるような注入路による直接のラインを除き皮質領域で検出されなかった。AADC陽性細胞又はhAADC染色の強度の数の差は、右大脳半球と左大脳半球の比較において見られなかった。
【0105】
上昇注入(図8A)を受けた左大脳半球、又は非上昇注入(図8B)を受けた右大脳半球からの代表的な動物における被殻の注入部位の高拡大画像は、中間のとげ状のニューロンにおけるhAADC遺伝子組み換え発現を示す。hAADC発現に関する免疫組織化学染色は、注入された大脳半球の全て(8/8)で見られた。AAV−hAADC−2投与は、上昇注入(左大脳半球)又は非上昇注入(右大脳半球)にて、AAV−hAADC−2の類似の分配により、被殻の良好な発現及び有効範囲の結果となった。
【0106】
反hAADC抗体で染色された連続部分におけるhAADC分配の推定された体積の計量は、Stereoinvestigator(TM)立体解析学ソフトウェア(Microbrightfield、Williston、VT)にて行なわれた。分配の前後(A−P)、頭側から尾部への分配の一次元測定、及びhAADC免疫染色の体積は、4つのAAV処置された非ヒト霊長類の各大脳半球に関して別個に決定された(表3)。右又は左の大脳半球のいずれかに関する平均A−P分配及び平均体積は、それぞれ4つの大脳半球に基づいた。左大脳半球(上昇配送)に関する平均A―P分配は、9600μm±2422μm(SD)、及び平均体積は238mm3±121mm3であった。右大脳半球(非上昇配送)に関する平均A―P分配は、9606μm±2037μm、及び平均体積は284mm3±55mm3であった。対ではないStudent'sテスト(AP分配比較用のP=0.9973、及び拡張体積比較用のP=0.5187)による上昇又は非上昇間での平均体積又は平均A−P分配に、顕著な相違はなかった。非上昇注入は、カニューレ路に沿ったベクターの逆流、又は遺伝子組み換え誘導化hAADC分配の減少に帰着しなかった。逆流の欠乏は、カニューレの複数の階段デザインによるものであるかもしれない。
【0107】
【表3】
【0108】
組織病理学
H&Eで染色された連続部分の組織病理学的分析は、上昇又は非上昇配送のいずれかにて、カニューレ配置及びAAV−hAADC−2注入の効果を決定するために、全ての動物にて行われた。図9は、5倍の拡大で、代表的な動物、R21110IMからの被殻内のH&E染色部分を示す。動物R21110IMは、右大脳半球(パネルA)にて非上昇注入手順により、及び左大脳半球(パネルB)にて上昇注入手順により、AAV−hAADC−2の左右相称のCEDを受け入れた。画像は、中間の尾部の被殻レベルでのカニューレ路に隣接する領域を示す。全てのH&E染色スライドは、処理状態を認識していない、神経病理学者(Pathology Associates 社)によって調査された。いくつかの単核細胞浸潤は、穏やかな血管周囲性細胞浸潤とともに被殻で見られた。両方の被殻は、少数の浸透した血管、及び穏やかな実質組織浸潤を含んでいた。右、左大脳半球の組織病理学の様相は、注入部位での少しの炎症性の組織反応と共に、類似した。
【0109】
中和抗体の成長
AAVキャップシッドへの中和抗体(NAb)及び合計抗体滴定濃度は、ベクターの注入に先立って、及び検死のときに集められた血清サンプルに関して決定された。反AAV抗体値のわずかな上昇は、AAV−hAADC−2(表1)の左右相称の注入後に、すべての動物におけるELISA架橋により検出された。2つのNAb分析に関する結果は、表1に示されている。ELISA架橋は、反AAV2マウス単クローン抗体で標準化される。2つの結果の平均は、後処理サンプルに関し示される。また、単一の結果は、前処理サンプルに関し示される。処理前の最も高い血清中和抗体滴定濃度(1:10〜1:100)を有する動物(R23700M)は、Day 42で1:31〜1:316に増加した後処理抗体を有している。他の動物と比較したとき、この動物は、類似のhAADC遺伝子組み換え分配を有していた。このように、高滴定濃度に関連してベクター拡張の明らかな抑制はなかった。
【0110】
臨床観察
猿は、臨床的症状、食料消費、及び体重に関して毎日、評価された。手術後の日々の臨床観察は、動物がCED手順に対し耐性があり、行動変化を示さなかったことを示した。臨床的症状に関するAAV−hAADC−2処置又は体重変化はなかった。後処理期間になされた観察は、同様の外科的処置を受ける研究所に収容されたアカゲザルに一般に観察されるものに類似していた。
【0111】
結果
本発明のカニューレの実施形態は、霊長類の脳へ有効にrAAVベクターを配送する能力を評価するためにテストされた。それは、ヒトの被験者のパーキンソン病の治療のための治療のrAAVベクターの配送のためのモデルとして役立つ。ベクター配送をテストするために設計された模擬の注入は、テフロン(登録商標)又は鋼の表面にベクターの接触を好ましくは回避して、ここに記載されるようなカニューレにて、本質的に、意図した服用量の100%を配送可能であることを確証した。
【0112】
4匹の非ヒト霊長類の被殻の中へAAV−hAADC−2の定位投与は、上昇(注入速度を徐々に増加)と、非上昇(一定速度)の比較によって行なわれた。hAADC発現は、免疫組織化学により検出でき、被殻に広く分配された。遺伝子組み換え誘導化hAADCの体積の立体解析学の計量は、一方の注入手順を受け入れる大脳半球における同様の分配を実証した。更に、一定の流速は、針路に沿った過度のベクターの付着とならなかった。組織病理学の分析は、安全の問題を提案せずに、カニューレ挿入路の領域に配置されたわずかな組織炎症反応のみを明らかにした。左及び右の被殻(つまり、上昇注入と非上昇注入)間の細胞浸潤又は炎症の度合いで明白な違いはなかった。異常な臨床観察は、手術及び内被殻(intraputamenal)注入後、いずれの動物でも見られなかった。
【0113】
装置及び注入パラメーターへの追加において、いずれかの区画への有効なAAVを媒介とした遺伝子配送に関する他の重要な考慮は、反AAV抗体による潜在的な中立化である。遺伝子治療技術の効能に悪影響を及ぼす可能性を有する人間における広範囲の先在するAAV中和抗体滴定濃度がある(Blacklow等 (1968) J. Natl. Cancer Inst. 40(2): 319-27)。いかなるAAVを媒介とした遺伝子治療アプローチも、そのようなハードルを予想しなければならない。
【0114】
例えば、ヒトのAAV2中和反抗体滴定濃度が様々なレベルにて確立可能なSCIDマウスを利用するモデル・システムにおいて、1:10未満の滴定濃度は、静脈内投与後、AAVファクタIXの肝臓の形質導入に著しく悪影響を与えたことが観察された(Scallan等 (2004) American Society of Gene Therapy, Minneapolis, MN, Abstract #753 S286)。被殻へのAAV2の配送は、CNSの免疫特権状態による抗体を循環することによる中立化にそれほど従わないと仮定された。実際に、ネズミにて行なわれ、AAV2にて予め体系的に免疫にされ、線条体的(intrastriatally)に注入され実行された研究は、Nab滴定濃度が1:1200を超えたときのみ観察される形質導入における減少にて中立から重大な保護を確認した(Sanftner等 (2004) Mol. Ther. 9(3): 403-9)。
【0115】
ここに記載された実験は、交絡因子のように中和抗体を除外するために、1:1から1:100までの範囲の先在するNAb滴定濃度とともに動物を使用し、それらの滴定濃度は、被殻におけるhAADC発現に明白な影響を及ぼさない。さらに、後注入滴定濃度は、ベクター投与後にわずかだけ上昇し、それによって、現在の装置及び注入状態により、良好に目標化され、最小の破壊での遺伝子配送を確認した。これらの結果は、また、AAV2の線条体注入の繰り返しが人間の患者において実現可能かもしれないことを示唆する。
【0116】
要約では、本発明の注入装置(臨床装置B)を介して猿の被殻へのAAV−hAADC−2の非上昇注入は、よく許容された。被殻における、遺伝子組み換え(hAADC)発現及び分配は、より複雑で、より時間を消費する上昇流速条件に匹敵した。神経組織変成疾患及び他のCNS障害の遺伝子治療が拡張分野であるとすれば(Tinsley及びEriksson (2004) Acta Neurol. Scand. 109(1): 1-8)、現在の結果は、臨床装置Bの設計がこの分野に関する系統的分類法における重要な進歩を表わすことを示唆する。本発明の装置及び注入パラメーターは、PD患者へのAAV2の線条配送に、及び、また、異なる解剖学の部位をターゲットとし、様々な治療薬又は遺伝子治療薬剤を配送し、CNS臨床指示の類別を治療するために、適用可能となるであろう。
【0117】
例は、本発明を示し、かつ、それらの細部によって、本発明の請求範囲を限定しないように意図される。本発明の好ましい例示である実施形態が記載されているが、種々の変更及び修正が本発明から逸脱することなくなされること、及び、添付の請求範囲では、全ての変更及び修正が本発明の真意及び範囲に属するようにカバーするものであるということは、当業者には明らかであろう。
【0118】
全ての刊行物、特許、及び特許出願刊行物、並びに、ここに参照されたものは、その全体が参考文献としてここに編入される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、ここに記載されるような階段状のカニューレ2を備える例示的なシステムの概観である。また、内側が熔融シリカ管1,3のFEPクラスVI管3を介してカニューレ2に連結される注射器4、及び注射器ポンプ5が示される。注射器ポンプ5は、Lureコンプレッションフィッティング6を介して管3に接続される。
【図2】図2は、ここに記載するような例示的な階段状のカニューレ10を備える他の例示的なシステムの側面図である。また、注射器ポンプ16及び注射器15が示されている。注射器は、FEP(テフロン(登録商標))管13の内腔及びカニューレ10を通して延在する熔融シリカ管12を介してLureコンプレッションフィッティング14でカニューレ10に連結される。
【図3A】図3Aは、ここに記載されるような例示的な注入針サブアッセンブリー(INSA)のアッセンブリーに含まれる例示的な階段を示す側面図を示す。
【図3B−1】図3B−1は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図3B−2】図3B−2は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図3B−3】図3B−3は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図3B−4】図3B−4は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図3B−5】図3B−5は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図3B−6】図3B−6は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図4】図4は、取り付けられた注射器を有する例示的なMedfusion 201Oi注射器ポンプの概観を示す。
【図5】図5は、人間の被験者への製品の投与のための定位フレームに取り付けられた、ここに記載されるような例示的なカニューレの概観である。
【図6】図6は、ここに記載されるような他の例示的なカニューレの概観である。
【図7】図7は、パネルA−Dは、例2に記載された実験にて使用された猿からの全装着脳部分における芳香性L−アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)に関する免疫組織化学的染色の結果を図示する。脳は、注入後5.5週での、注入部位を通り頭頂部にて示されている。パネルA、B、C及びDは、例2[MRl5102M(A)、MRl5109M(B)、R23700M(C)、及びR21110IM(D)]にて分析された4つの異なる猿の脳を表わす。全ての左大脳は、上昇注入を受け入れ、全ての右大脳は、非上昇注入を受け入れた。黒の矢印は、被殻領域を示す。
【図8】図8は、パネルA及びBは、例2に記載された実験にて使用された猿の脳の、注入後5.5週での被殻内のAADCに関する免疫組織化学的染色の高拡大画像を図示する。上昇注入を受け入れた大脳からの代表的な部分は図8Aに示され、非上昇注入を受け入れた大脳からの代表的な部分は図8Bに示される。スケールバーは100μmを表す。
【図9】図9は、パネルA及びBは、例2、R211101M、5倍拡大、における実験にて使用される代表的な動物からの被殻内のヘマトキシロン及びエオシン(H&E)の染色部分を図示する。動物R211101Mは、右大脳にて非上昇注入手順を使用してAAV−hAADC−2の左右相称のCEDを受け入れ(図9A)、左大脳にて上昇注入手順を受け入れた(図9B)。画像は、カニューレ跡に隣接している領域を示し、中間の尾部の被殻レベルにて得られた。スケールバーは400μmを表わす。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年10月5日に出願された米国仮出願60/616,238、及び2005年1月4日に出願された米国仮出願60/641,551の利益を主張する。それらの両出願は、それらの全体がここに参照されて組込まれる。
【0002】
本発明は、カニューレの分野である。特に、本発明は、例えば生物学上有効な薬剤等の物質を中枢神経系に配送するカニューレに関し、並びに、それらのカニューレの作製方法及び使用方法とともにそれらのカニューレを備えたシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
カニューレは、対象の中枢神経系(CNS)へ物質を配送するために使用可能である。しかしながら、現在のカニューレの設計に伴い、注入路に沿った物質の逆流を防ぐことに注意しなければならない。
【非特許文献1】Quereshi等 (2000) Neurosurgery 46(3): 663-69.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
逆流を最小にするため、カニューレをゆっくり除去したり、カニューレを除去するときに組織への圧力の印加のような予防措置を採ったときでさえ、逆流は問題として残る。
【0005】
配送されている物質の多くの部分は、カニューレ内部の大きな表面領域へ物質が曝されることで失われる場合がある。特に、ステンレス鋼への接触は、物質の大幅な損失を引き起こす場合がある。例えば、様々なグループが、ステンレス鋼表面に接触したアデノウイルス・ベクター薬剤の相当量が失われることを実証している。Naimark等、(2003) Hum.Gene Ther 14:161-6; Tsui等、(2001) Mol. Ther. 3:122-5; Marshall等、(2000) Mol.Ther.1(5 Pt l):423-9。 非常に少ない量の物質が配送されているとき、量が少ないほど、カニューレ内での表面積と量との比率が大きくなるので、その問題は悪化する。物質が高価であるか、あるいは入手困難である状況にて、物質の少量の使用が特に望ましいとすれば、逆流及び物質の損失の両方が最小化される装置及び方法を有することは望ましいであろう。
【0006】
したがって、針路に沿った物質の逆流がなく、対象の脳へ物質を導入可能なカニューレの必要性が存在する。必要性は、また、内部表面への薬剤の損失を減少し、従って、少量の物質を有効に配送可能なカニューレの設計に関しても存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、配送される物質の逆流、及び/又は損失を、低減又は排除するカニューレの設計を提供することにより、これら及び他の問題を解決する。
【0008】
一つの態様では、本発明は、動物における目標組織へ薬剤を配送するカニューレに関する。幾つかの実施形態において、目標組織は、中枢神経系(例えば脳)である。いくつかの実施形態では、薬剤は、生物学上有効な薬剤である。
【0009】
一つの実施形態では、カニューレは、配送される物質と接触するカニューレの直径がカニューレ長に沿う各規定点で階段様式にて減少する外側階段デザインを備える。よって、一つの態様では、本発明は、外側直径、遠位端、近位端、及び近位端と遠位端との間で延在する内腔を有する階段状のカニューレを含む。階段状のカニューレは、2又はそれ以上の同軸に配置されたセグメントを備える。各セグメントは、カニューレの外径を規定する外径を有し、ここで、各セグメントの外径は異なる。
【0010】
ある複数の実施形態では、外径は階段状の輪郭を有し、一方、物質に接する内面は階段状の輪郭を有しない。
【0011】
ここに記載するいずれの実施形態においても、直径は、近位端から遠位端への方向(即ち、カニューレの近位端での階段は最大直径を有し、遠位端での階段は最小直径を有する。)にて減少することができる。外径に沿って階段の数は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はさらにそれ以上のいかなる数でもあってもよい。
【0012】
ここに記載されたいずれの実施形態でも、階段の直径は、階段から階段へ同量にて(つまり、隣接した階段間での直径の差は均一である。)増加することができる。あるいは、ここに記載されたいずれの実施形態においても、階段の直径の差は、カニューレ長に沿って階段から階段へ変化させてもよい。さらに、ここに記載するいずれの実施形態においても、階段間の距離は、同じであっても、変化させてもよい。一つの実施形態では、カニューレは、以下の例1に記載され、図3A及び/又は3Bを参照するような、構成及び寸法を有する。
【0013】
ここに記載されるカニューレは、金属、合金、ポリマー、又はそれらの組み合わせを含むいずれの材料で作製可能である。ある実施形態では、カニューレは、配送される製品と接触する非ステンレス鋼表面を有する外部ステンレス鋼を備える。例えば、カニューレの内腔の表面(配送される物質と接触する)は、ステンレス鋼を覆うポリマーのコーティングで構成されてもよい。あるいは、例えばカニューレは、カニューレの内腔を通り延在する一若しくは複数の管をさらに備えてもよい。例えば、使用にて製品がステンレス鋼よりも熔融シリカ管の内面に接触するように、カニューレの外側ステンレス鋼スリーブに覆われた熔融シリカ管をさらに備えてもよい。上述で注意したように、配送される物質に接触する表面は、階段形状を有していてもよいし、有していなくてもよい。さらに他の実施形態では、カニューレは、以下に説明する物質から図3A及び図3Bに示されるように構成される。
【0014】
ここに記載されるいずれのカニューレでも、カニューレは、2つ若しくはそれ以上の材料を備えることができる。ある実施形態では、ステンレス鋼カニューレは、配送される物質が接触する表面が石英である熔融シリカ管を囲む。他の実施形態では、外部ステンレス鋼は、配送される物質が接触する表面が熔融シリカである熔融シリカ内面を囲む。好ましい実施形態では、カニューレは、例1に記載され図3A及び図3Bに示されるような、構造、寸法を有し、及び物質で作製される。
【0015】
別の態様では、本発明は、個々に記載されたカニューレと、カニューレを通して配送される一若しくは複数の物質を備えカニューレの内腔に接続可能な貯留部とを備えたカニューレアッセンブリーを含む。一若しくは複数の物質(例えば潜在的に治療の調合物)は、また、ここでは「製品」とも呼ばれる。ある実施形態では、貯留部は注射器を備える。さらに、ここに記載するいずれのシステム又はアッセンブリーにおいて、カニューレ及び/又は貯留部は、一若しくは複数のポンプ(例えば注射器ポンプ)に連結することができる。ある実施形態では、カニューレは、カニューレの内腔を通り延在する管を介してポンプに連結可能である。ある実施形態では、ここに記載するシステムは、さらに、定位フレーム(例えば図5参照)を備える。
【0016】
これらのシステムによって配送される物質は、一若しくは複数の生物学上有効な薬剤(例えばAAVベクター、タンパク質、薬など)、染料、トレーサー、マーカー、造影剤又はそれらの組み合わせを備える。更に、システムは、身体のいずれの部分へ、最も好ましくは動物の脳へ配送するために使用される。一つの実施形態では、本発明は、減少したホールドアップボリュームを有するカニューレを提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、対象における目標領域に一若しくは複数の物質を配送する方法を含む。該方法は、対象の目標領域に、ここに記載するようなカニューレ又はカニューレアッセンブリーを位置決めするステップと、カニューレを通して目標領域へ一若しくは複数の物質を配送するステップとを備える。ある実施形態では、目標領域は、中枢神経系、例えば脳に存在する。
【0018】
本発明のこれらの及び他の実施形態は、ここの開示を考慮して、当業者に容易に発想されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、脳のような動物の目標組織へ物質(例えば潜在的に治療の薬剤を備える調合物)の配送用の新規のカニューレに関する。ここに記載されたカニューレは、物質の配送中の逆流を大きく減少し又は排除する。そのような物質は、ここでは一般に「製品」と呼ばれる。より詳細には、本発明は、針の進路に沿って製品の最小逆流にて、最小のホールドアップボリュームにて、及びカニューレの内面への製品の最小損失にて、対象の脳内の十分に規定された位置へ製品の配送を可能にする。
【0020】
本発明の一つの実施形態では、カニューレは、その長さに沿って(近位端から遠位端へ)規定された位置で階段形状にてカニューレの直径が減少する階段デザインを有している。よって、好ましい実施形態では、最小のカニューレ直径は、カニューレの最遠位部分にある。上で注目したように、この階段デザインは、針の進路に沿って製品の逆流を減少する。一つの実施形態では、カニューレの外表面は、外径を異ならせ、4つの階段を形成する5つのセグメントを備える。また、他の実施形態では、それは以下に説明する構造及び寸法を有する。カニューレの表面は、図3A及び図3Bに示される実施形態におけるように、滑らかであってもよい。
【0021】
図1は、外部ステンレス鋼を有する階段状のカニューレ2を備える例示的なシステムの概観を示す。熔融シリカ管1,3は、カニューレ2の内腔を通して延在し、カニューレ2を、注射器4のハブ及び/又は尖っていない針6を介して注射器4に連結する。注射器4は、また、コンピューター化された注射器ポンプ5に取り付けられる。カニューレは、配送される物質の逆流を低減又は排除する手段、例えば、階段状のカニューレの内腔を通して延在し配送される物質に接触する管(例えば、熔融シリカ)を含んでいる。
【0022】
図1に図示された例示的な実施形態は、合計4つの「階段」を有するカニューレ2を示す。カニューレの遠位端に最も近い階段が目標組織に最初に入るものであることは明白だろう。従って、目標組織(例えば脳)に入る階段の数は、対象の動物における目標に達するために必要とされる侵入の深さに依存するであろう。脳への配送に関し、オペレーターは、治療されている動物の大きさ、及び対象とされている脳内の位置の両方を考慮に入れて、容易に侵入の適切な深さを決定することができる。
【0023】
図1に示すように、カニューレ2の外径は、カニューレの長さに沿って、近位端から遠位端への方向において、各階段にて減少する。ここで使用されるように、近位端は、製品が投薬される注射器4に近い点を言い、遠位端は、製品配送の最後の点(例えば目標組織)に近い点を言う。
【0024】
図1では、近位端−最大の階段の境をなす2つの近位端−最大セグメントは、ほぼ同じ長さを有し、一方、4つの遠位端−最大セグメントは互いに長さを変化しかつ2つの近位端−最大セグメントから長さを変化させた例示的な実施形態を図示している。よって、階段間のセグメントの幾つか、あるいは全てが他のセグメントと同じ長さを有することができ、又は、階段間のセグメントは他のセグメントと同じ長さを有しなくてもよい、ということがわかるであろう。
【0025】
カニューレ及び/又はカニューレを備えたシステムの種々の部品に使用される材料の非限定の例が以下の表に示されている。
【0026】
【0027】
図2は、図1に示されるものに類似する例示的なシステムの概観を示す。図2に示される実施形態は、ステンレス鋼カニューレの内腔を通り延在し、カニューレ10の遠位端を越えて延在する熔融シリカ管12を有する階段状のステンレス鋼カニューレ10を備える。また、図2には、Luer(ルアー)コンプレッションフィッティング14と共に、熔融シリカ管12を覆う管(FEP)13、及び熔融シリカ管12とFEP管13との間の1インチのステンレス鋼(23ga)も示されている。Luerコンプレッションフィッティング14は、ポンプ16に交代に接続される注射器15に接続される。
【0028】
図2に示されるような実施形態を作るのに用いることができる材料の例示及びその製造元は、以下の表に示されている。
【0029】
【0030】
示されるように、ある実施形態では、管は、カニューレの内腔を通り延在する。また、配送される製品は、この管を通して配送される。上記管を含む実施形態では、管は、カニューレの遠位端と同じ高さにあってもよい。あるいは、好ましい実施形態では、管は、カニューレの遠位端から延在する。そのような実施形態では、管の延在量は、応用例により変化可能である。一般的に、管は、カニューレから約1mmから約1cmまで(又は、その間の任意の長さ)、より好ましくは約1から約50mmまで(又はその間の任意の長さ)、及びさらに好ましくは約1mmから約25mmまで(1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mm、又は25mmに限定されることなく、これらを含みその間に含まれる任意の長さ)延在するであろう。一つの好ましい実施形態では、管は、その遠位端を約10mm超えて延在する。
【0031】
各図に示されるように、カニューレを通り延在する管は、例えば配送される製品に接する管を保護するために、一若しくは複数の領域においてもう一つのコーティング又は包囲材を有していてもよい。したがって、ある実施形態では、管(例えばFEP(テフロン(登録商標))管)は、ステンレス鋼カニューレの近位端を超えて延在する熔融シリカ管部分を保護する。熔融シリカ管は、Luerコンプレッションフィッティングを含むがこれに限定されない任意の適切な手段により注射器に接続可能であり、該注射器は、注射器ポンプ(手動、電子的な、及び/又はコンピューター化された)により駆動される。注射器の大きさは、製品の適切な量を配送するためにオペレータにより選択可能であることが明らかであろう。よって、1mL、2.5mL、5mL、又はさらに大きい注射器が使用可能である。
【0032】
ある実施形態では、Luerコンプレッションフィッティングは、熔融シリカ(内側)管と、FEP(外側)管との間に、1インチのステンレス鋼23Gスペーサを備える。任意のスペーサは、Luerコンプレッションフィッティング部分にて機械的な剛性を提供し、フェルールがLoctite(登録商標)接着剤を使用して適所に接着されるとき、内側、外側管間の隙間を密閉するのを役立つ。対象へ投薬されているとき、内側、外側管間の隙間に製品が侵入するのを防止するため、上記隙間は、ふさがれなければならない。好ましくは、スペーサの近位端は、ここに記載されたシステム及びカニューレのただ一つのステンレス鋼製品接触面を表わす。もし、スペーサのその他の露出端をカバーするためにLoctite(登録商標)接着剤又は他のコーティングを塗布することにより望まれれば、上記最小のステンレス鋼製品接触面は、ステンレス鋼が完全に製品と接触しないシステムを提供するため、除去されてもよい。あるいは、スペーサは、異なる材料で構成することができるかもしれない。
【0033】
図3Aは、ここに記載されるような階段状のカニューレを作ることにおいて選択された例示的な階段を図示する。例1もまた参照すること。特に、逆流を減少した階段デザインカニューレは、矢印(上から下へ)により示された順番、つまり直径を増していく部品(20、22、24、26、28、30)を加えることにより組み立てることができる。よって、例1に記載されるように、様々な長さのセグメントは、階段デザインを形成するためにともに連結される。
【0034】
カニューレが2つ若しくはそれ以上の部分から作製されるとき、ジョイントは、カニューレから目標組織へ、又はその逆に(目標組織からカニューレへ)物質が漏れるのを許容するべきでない。従って、ジョイントは、好ましくは密閉される。ジョイントは、これらに限定されず、溶接(例えばレーザー溶接)、接着剤、シーラント、加熱(例えば、熱可塑性ポリマー用)、及びこれらの組み合わせ、を含む様々な方法で密閉することができる。密閉の種類は、カニューレを作製するために使用される材料に依存するであろうことは明白だろう。例えば、溶接はステンレス鋼カニューレ用に使用可能であり、一方、加熱は熱可塑性ポリマー用に使用可能である。
【0035】
ここに記載されるような階段デザインカニューレも、例えば、ここに記載されるような階段状のカニューレを射出成形にて形成するように、全体を単一部分にて形成可能である。
【0036】
図3B−1〜図3B−6は、ここに記載されるような例示的な階段状のカニューレの組み立てを図示する。例1に記述されるように、図3Aに示される階段状のカニューレ35は、針カバー32を除去し、カニューレの端から延在するまでカニューレ35を通り内側管部品40を挿入することにより調製される(図3B−1)。熔融シリカ管を含み、これに限定されずに、内側管部品40用にいずれの材料も使用可能である。
【0037】
他の管に関し、鋼カニューレ35の内部は、配送される製品に接する一若しくは複数の材料にて被覆可能であり、それにより、配送中、鋼カニューレへの製品の損失が低減されることは明白であろう。ステンレス鋼材料へのコーティングの様々な技術は、知られており、使用可能である。
【0038】
任意的に、接着剤は、管が針に固定されるように、管40に置かれてもよい。例えば、Loctite(登録商標)接着剤のように、いずれの適切な接着剤も使用可能である。好ましくは、接着剤の接続強度は、少なくとも約4ポンドであり、より好ましくは少なくとも約5ポンドである。
【0039】
図3Bに示される実施形態では、針カバー32は、交換されてもよいし、カニューレ35(図3B−2)を通り熔融シリカ管40にわたり延在する、予めカットされた長さの管31(例えばFEP管)であってもよい。外側管31の長さは、指示によって決定することができ、10インチから5ヤードまでの長さ(又は、その間の任意の値)範囲とすることができる。したがって、ある実施形態では、外側管は、内側管の全長を覆い、内側管を超えて延在する。あるいは、他の実施形態では、外側管31は、内側管40の長さにわたり完全には延在しない(図3B−2)。アッセンブリーへ、例えば外側管31の端部にて外側管31を固定するために、いかなる適切な接着剤も使用可能である。接着剤の接続強度は、少なくとも約5ポンドが好適である。
【0040】
図3B−3に示されるように、一つ若しくは複数のスペーサー部品47は、内側管及び/又は外側管40、31にわたり挿入されてもよい。スペーサ47は、金属、合金、ポリマー、及びそれらの組み合わせを含むいずれの物質で作製可能である。ある実施形態では、スペーサー47は、ステンレス鋼を備える。スペーサ47は、針を超えて延在しないのが好ましいが、いずれの長さにもなりえる。任意的に、アッセンブリー、例えばPVC収縮管49の長さ、の部品を密閉するのを助けるため、部品が含まれても良い。スペース及びPVC管部品の例示的な寸法に関する例1を参照。
【0041】
その結果として、アッセンブリーは、製品配送貯留部に便利に連結されることを可能にする一つ若しくは複数の部品に取り付け可能である。例えば、図3B−4に示されるように、適切に大きさが合わせられたメス型のLuerコンプレッションフィッティング50は、外側管31の長さにわたり滑動し、フェルール51は、外側管31上に配置され、好ましくは外側管31の端と同じ高さにあるように配置される。接着剤は、一若しくは複数の部品(例えば、外側管の端の外側)に、端にフェルールを取り付ける前に、及び/又は、内側管、スペーサ、外側管、及びフェルール間のジョイントを密閉するために、任意的に塗布可能である。
【0042】
フェルール51から延在する内側管40の長さは、例えば管に刻み目を入れ、かつそれ及びLuerコンプレッションフィッティング50の内側に嵌合するフェルール51を折る又は切ることにより、除去してもよい(図3B−5)。収縮管49は、ジョイントを密閉するために加熱されてもよい。最後に、メスのLuerコンプレッションフィッティング55は、オスのLuerコンプレッションフィッティング50及びフェルール51に嵌め込まれ組み立てられる。
【0043】
上で注目するように、ここに記載する階段状のカニューレは、金属、合金、ポリマー、有機繊維、無機繊維、及び/又は、それらの組み合わせに限定されないがこれらを含む、生理学上許容可能な材料の種類の中から作製可能である。好ましい実施形態では、カニューレは、ステンレス鋼(例えば316SS又は304SS)を備える。
【0044】
任意に、製品接触面(例えば管又はコーティング)は、カニューレの内腔を通り延在してもよい。金属、合金、ポリマー、有機繊維、無機繊維、及び/又は、それの組み合わせに限定されないがこれらを含む様々な材料も任意の製品接触面に用いられてもよい。好ましくは、製品接触面は、ステンレス鋼ではない。かかる実施形態では、外側のカニューレは、目標組織と生理学上互換性をもつ材料でさらに作製されねばならない。しかし、そこで、製品接触がないので、それは生物学上有効な薬剤又は製品調合物と互換性をもつ必要はない。同様に、かかる実施形態では、図に示されるFEP(テフロン(登録商標))管は、管材料が、生物学上有効な薬剤又は製品調合物と互換性を持つかどうかに対する考慮をすることなく、他の管材料と取り替えられてもよい。
【0045】
したがって、一つの実施形態では、カニューレの製品接触面は、熔融シリカ(例えば石英ガラス酸及びポリイミド・コーティング)(Polymicro、Phoenix、Arizona)を備える、又はから成る。製品接触面用の熔融シリカの使用は、製品がステンレス鋼にさらされる従来のカニューレと比較したとき、製品の損失を大幅に減少する。実際に、59±14%のアデノ系列のウイルスベクターのみが、製品で予めフラッシングされた従来の注入器から除去されたが、本発明のカニューレを備えた装置では、製品で予めフラッシングすることなく、101±6%が除去される。例2参照。
【0046】
熔融シリカ以外の材料が問題の生物学上有効な薬剤の低表面損失に関する特性を有すれば、当業者は、熔融シリカ以外の材料が本発明のカニューレにて用いられてもよいことを理解するであろう。他の材料で作られた管は、熔融シリカ管の代わりに使用可能であり、あるいは、カニューレの内腔は、同じ結果を実質的に達成する材料でコーティングされてもよい。使用される最適の材料は、生物学上有効な薬剤の性質に依存して変化可能であり、実験によって決定されてもよい。
【0047】
100μmの内径を有する熔融シリカ管のような、小さな内径(ID)を有する管の使用は、増加した表面積と体積の比によって、試料の回収を増加するよりもむしろ減じると予想されるかもしれない。恐らく驚いたことに、小さなIDの熔融シリカ管の使用は、例えばAAVベクターの、配送される製品の大きな損失をもたらさない。理論にて制限されることなく、小さいIDの管を使用して所定の配送速度(単位時間当たりに配送される製品の体積)が一定に維持されるときに起因する、増加した直線的な流量速度により、結果は、説明可能である。さらに、AAVは、熔融シリカ管の表面に関する親和力をほとんど有しないと思われ、そのことが低損失を説明可能である。
【0048】
例1にて使用される熔融シリカ管の小さなIDは、システムのホールドアップ体積の減少というさらなる長所を有する。例えば、100μmのIDを有する熔融シリカ管の4フィート長のセグメントは、15μl未満の内腔体積を有している。かかる低体積は、試料の消費を減少し、配送システムのホールドアップ体積により試料の無駄を著しく減少する。製品の無駄が低減されることは、例えば多くの組み換えのタンパク質又は遺伝子治療ベクター等、生物学上有効な薬剤が入手困難で、及び/又は高価であるときに、特に価値がある。
【0049】
図4は、ここに記載するようなカニューレと組み合わせて用いられてもよい例示的なシリンジポンプの概観を図示する。図4に示される物は、注射器サドル60、注射器クランプ62、注射器クランプ溝(リテーナ)64、クラッチレバー66、注射器ドライバー68、注射器プランジャーリテーナ70、液晶ディスプレー72、及びオン/オフ・スイッチ74である。ここに記載されたカニューレを備えたシステムに有用なシリンジポンプは、市販され、例えばMedfusion 201Oi(Medex社、Carlsbad, California)である。
【0050】
図5は、定位フレーム72に取り付けられ、ここに記載するようなカニューレ70を含むシステムの概観を図示する。カニューレ70も、例えば管74を介してシリンジポンプに取り付けられてもよい。定位フレームは、市販されており、例えばLexellの定位フレーム(Ranfac社、Avon、Mass.)。
【0051】
ここに記載されたシステムのいずれも、製品接触部分は、石英ガラス(カニューレにおける熔融シリカ管)、USPクラスVIIポリプロピレン(注射器及びLuerハブ)、シアノアクリレート(接着剤ジョイント)、及びステンレス鋼(23Gスペーサー)を備えてもよい。
【0052】
典型的には、ここに記載されたシステムは、カニューレの一部又は全長に沿って製品がステンレス鋼に接触する、以前に記載されたシステムを使用するよりも、ステンレス鋼へのはるかに少ない接触にて、脳へ製品を提供することができる。ステンレス鋼へ製品がさらされることを減じたことは、本発明の装置及びシステムに提供されたように、損失を減少する。例えば、図3B−6に示されるカニューレは、図1に示されたシステムで形成されたように、ほとんどもっぱら熔融シリカ管及びUSPクラスVIIポリプロピレン注射器を備えた製品接触面を有している。他の唯一の接触面は、熔融シリカ管の近位端と、注射器のLuerハブとの間の接着ジョイントであり、その場所では、製品は、シアノアクリレート接着剤、及びステンレス鋼スペーサの近位端の断面に接する。このシステムにおいて、鋼への暴露は、最小である。
【0053】
本発明のカニューレは、また、減少された逆流、薬剤の表面に関する減少された損失、及び減少されたホールドアップ体積を有する改善されたカニューレを提供するために、階段デザイン及び内側熔融シリカ製品接触面を組み合わせてもよい。
【0054】
本発明のカニューレは、例えば標準的なエチレンオキシドによる技術を含む既知の技術を用いて殺菌されてもよい。殺菌されたカニューレは、任意にTyvek(登録商標)ポーチに個々に包まれてもよい。
【0055】
本発明のカニューレを用いて配送可能な薬剤は、目標組織にて所望の効果を有することができるあらゆる物質を含む。例えば、治療の薬、タンパク質、プラスミド又は遺伝子治療ベクターは、対象の脳へ配送可能である。又、染料、トレーサ、撮影用の造影剤、及びマーカー、診断上又は研究用の目的のように、非治療用の薬剤も加えられてもよい。
【0056】
例えば、レトロウイルスの遺伝子治療システムは記載されている。例えば米国特許番号5,219,740; Miller 及びRosman、BioTechniques (1989) 7:980-990; Miller, A.D.、Human Gene Therapy (1990) 1:5-14; Scarpa等、Virology (1991) 180: 849-852; Burns等、Proc. Natl. Acad. Sci. アメリカ (1993) 90:8033-8037; 及びBoris-Lawrie 及びTemin、Cur.Opin. Genet. Develop. (1993) 3: 102-109、参照。多くのアデノウイルスベクターも記載されている。例えば米国特許番号6,048,551、6,306,652, Parks, R.J., Clin. Genet. (2000) 58:1-11; Tsai等、Curr. Opin. Mol. Ther. (2000) 2:515-523 参照。
【0057】
さらに、様々なアデノ系ウイルス(AAV)ベクター・システムは、遺伝子配送のために開発されている。AAVベクターは、熟練者によく知られた技術を用いて容易に構成することができる。例えば米国特許番号5,173,414及び5,139,941; 国際公開番号 WO 92/01070(1992年1月23日公開)、及びWO 93/03769(1993年3月4日公開); Lebkowski等 Molec, Cell. Biol. (1988) 8: 3988-3996; Vincent等 Vaccines 90 (1990) (Cold Spring Harbor Laboratory Press); Carter, B.J. Current Opinion in Biotechnology (1992) 3: 533-539; Muzyczka, N. Current Topics in Microbiol. and Immunol. (1992) 158:97-129; Kotin、R.M. Human Gene Thrapy (1994) 5: 793-801; Shelling and Smith, Gene Therapy (1994) 1: 165-169; 及びZhou等、J. Exp. Med. (1994) 179: 1867-1875 参照。
【0058】
本発明のカニューレは、CNSへの投薬用で伝達増強された配送(CED)システムの一部として使用可能である。例えば、米国特許番号6,309,634(その開示内容の全体が参考文献としてここに組み込まれている)は、CEDによって薬剤が中枢神経系領域に配送される遺伝子治療の方法を記載する。CEDを使用する、組み換えのベクターは、CNSの大きな領域にわたる多くの細胞に配送可能である。さらに、配送されたベクターは、効率的にCNS細胞(例えば膠細胞)の遺伝子導入を急送する。本発明のカニューレは、組み換えベクターの配送用のいずれの伝達増強配送装置とともに使用可能である。一つの実施形態では、装置は、浸透ポンプ又は注入ポンプである。浸透、注入の両ポンプは、様々なサプライヤーから市販されており、例えばAlzet社(Cupertino, California)、Hamilton社、又はAlza社(Palo Alto, California)である。
【0059】
本発明のカニューレは、CEDではなく、直接噴射又は注入の他の方法にも使用可能である。
【0060】
製品は、0.2、0.5、0.7、1.0、1.5、2.0、3.0、5.0、10又は20μl/分に限定されないがこれらを含む様々な流速で目標組織へ配送可能である。図1A及び図2Aに示された実施形態を参照して、約10〜20μl/分の流速は、このような高流速での過度の背圧のために、100μm IDを有する4フィートの熔融シリカ管を用いて達成するのが難しい。これは、伝達増強配送方法に関し重大な制限を表すものではないが、しかし、それは好ましくは比較的低流速で行なわれる。0.2μl/分未満の流速は、ポンプを遅く設定するのができないので、図1A及び図2Aに示されたシステムを使用して達成するのは困難かもしれないが、当業者は、そのような低い配送速度を達成するために異なるポンプ及び/又は注射器構成を使用可能であろう。
【0061】
目標組織へ配送されるように、流量及び製品の圧力は、配送を通して増加、減少、又は安定を維持することができる。好ましい実施形態では、流速は、安定領域へ「上昇」するよりも、配送を通して実質的に一定に保持される。
【0062】
典型的には、組み換えのベクターは、CED装置を介して以下のように配送される。本発明の改善されたカニューレは、選択された対象におけるCNS組織に挿入される。定位のマップ及び位置決め機構は、例えばASI Instruments, Warren, MIから入手可能である。また、位置決めも、選択された目標に注入具を案内するのを助けるためCT及び/又はMRI撮影により得られる解剖のマップを使用することにより導かれてもよい。
【0063】
例2〜例5は、人間、ネズミ、及び非人間霊長類の脳にhAADCを符号化した遺伝子を配送するために本発明のカニューレの使用を示す。hAADC遺伝子の配送は、パーキンソン病(PD)の治療において有用かもしれない。PDは、中脳の黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの進行性の損失、及び被殻におけるドーパミンの重度の減少により主に特徴付けられる(Hornykiewicz (1975) Nat'l Inst. Drug Abuse Res. Monogr. Ser.(3): 13-21)。AADCは、エルドーパをドーパミンに変換するドーパミン生合成経路における酵素である。ヒトAADCを符号化したcDNAのネズミ又は非人間霊長類の被殻への伝達がPDの動物モデルにおける有効なエルドーパの投与量を減少可能であり、それにより線条体のドーパミンを正常レベルに戻すということを、従来の研究は示している(Bankiewicz 等 (2000) Exp. Neurol. 164(1): 2-14; Sanchez-Pernaute 等 (2001) Mol. Ther. 4(4): 324-30)。ヒトのPD患者において、この治療は、エルドーパ要求を低下させて、薬の臨床の利益が観察される期間を拡張すると予想されるだろう。
【0064】
例2は、関連する表及び図に加えて、本発明のカニューレを用いて、霊長類の脳への遺伝子の配送に関するプロトコル及び実験結果を提供する(臨床デバイスB)。hAADC(AAV-hAACD-2)を符号化したrAAVビリオンは、4つの正常なアカゲザルの被殻へ注入され、また、AADC発現の分配は、免疫組織化学によって決定される。2つの注入プロトコルがテストされる:上昇(ramped)手順(0.2μL/分から1μL/分まで速度をゆっくりと段階状に増加)、及び1μL/分の一定の速度での非上昇注入である。第一の終了点は、注入手順の安全評価、及び注入後、5.5週での遺伝子伝達表現の評価である。
【0065】
ベクター注入後の臨床観察は、研究期間中に行動の異常性を示さない。上昇注入、又は非上昇注入のいずれかにより、大きな病理学の差は観察されない。組織病理学は、両方のグループにおいて比較可能であり、カニューレ配置及びベクター注入に応じて針経路に沿った単に最小の集中された炎症性の組織反応を示す。さらに、AADC免疫組織化学は、いずれかの注入手順による免疫染色量において著しい差異がない状態で、ベクターが被殻にあまねく分配されることを実証する。AAV2ベクターに対する血清抗体レベルは、注入後、僅かな増加を示した。
【0066】
以下の例は、本発明の実施形態を図示するためにのみ提供され、本発明を規定又は限定するものではない。
【0067】
例1
アッセンブリー及び組み合わせ手順
A.例示的なカニューレ#1
例示的な階段状のカニューレ(図3A及び図3Bに示されるような)は、以下のように生産される。
【0068】
ステンレス鋼管セグメントは、ある長さに切られ、Lasag社 Nd:YAG又はNeodinium YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ、454nm波長領域における紫外線レーザを使用して溶接される。23Gセグメントと19Gセグメントとの間の溶接は、漏れが無いことをテストされ、全ての溶接部は10ポンドの最小引張力に耐えることをテストされる。23Gセグメントと19Gセグメントとの間の溶接は、針の外側への逆流の可能性のあるあらゆる製品がカニューレの内腔へ漏れるのを防止し漏れがないようにべきである。同じ理由で、熔融シリカ管の露出した遠位端とカニューレの鋼管部分との間の接着ジョイントは、液体が入らないようにすべきである。
【0069】
針は、レーザー工程の終了後、不動態化され超音波で洗浄される。熔融シリカ管は、切断され、シアノアクリレート接着剤によりステンレスカニューレに組み立てられる。パッケージの前に、先端を保護するため、プラスチックの針カバーがカニューレの遠位端を覆って付けられ、そして、アッセンブリー全体が消毒用の予めラベルが付けられたTyvek(登録商標)ポーチ内に包装される。
【0070】
注入針サブアッセンブリー(INSA)は、管(長さ9.67インチ、23RW遮断、0.0250/0.0255のOD、0.0125/0.0140のID、0.006の壁厚)の芯セグメント20上のステンレス鋼管の連続セグメントを滑動させることにより組み立てられる。図3A。内径(ID)、外径(OD)及び管肉厚(「壁」)に関する寸法は、すべてインチで提供され、対の値X/Yは、最小及び最大の公差を表わす。
【0071】
図3Aを参照して、セグメント22(長さ8.28インチ、19RW遮断、0.0415/0.0425のOD、0.0255/0.0285のID、0.0075の壁)は、セグメント22の遠位端を超えて延在する0.390インチ(10mm)の芯を残して芯セグメント20を覆い配置される。セグメント24(長さ6.31インチ、17RW遮断、0.0575/0.0585のOD、0.0405/0.0435のID、0.008の壁)は、セグメント24の遠位端を超えて延在する1.970インチのセグメント22を残してセグメント20,22を覆い配置される。セグメント26(長さ6.31インチ、15RW遮断、0.0715/0.0725のOD、0.0595/0.0615のID、0.006の壁)は、セグメント26の遠位端を超えて延在する1.970インチのセグメント22を残してセグメント20,22、24を覆い配置される。セグメント28(長さ6.31インチ、0.086/0.087のOD、0.0735/0.0750のID、0.006の壁)は、セグメント28の遠位端を超えて延在する1.970インチのセグメント22を残してセグメント20,22、24、26を覆い配置される。セグメント30(長さ1.58インチ、0.108/0.110のOD、0.0880/0.0895のID、0.010の壁)は、セグメント30の遠位端を超えて延在する7.090インチのセグメント20を残してセグメント20,22、24、26、28を覆い配置される。
【0072】
全ての部品は、適所にレーザ溶接された。セグメント20とセグメント22との間の遠位の溶接継ぎ目は、100%気密とされ、セグメント1の内部は、閉塞(例えば、0.012インチの直径ワイヤー又はゲージ・ピンを用いて)がないことを保証するようにテストされた。全ての溶接ジョイントは、10ポンドの最小引張力に耐えなければならない。
【0073】
いったん組み立てられ、INSAは、以下のように不動態化され超音波で洗浄される:
Oakiteアルミニウム10分間洗浄され、7分間、脱イオン化された水でスプレーすすぎされ、アルコール中で超音波ですすがれ、及び空気で乾かされた。
【0074】
針カバー32(長さ9.0インチ、0.156のOD、0.104/0.108のID、0.025の壁)は、組み立てられたセグメントの近位端を超えて延在するセグメント30の0.8インチのセグメントを残して組み立てられたセグメント20,22,24,26,28,30を覆い配置される。
【0075】
INSAは、以下のように、酸及び清浄液の跡が無いように検査された:針カバー32を外し、アルコール内に浸し、針カバーを交換し、針カバー7の遠位端を通じて空気を吹き、セグメント20の近位端で液体流出を検査し、流出のすべてが清潔になるまで繰り返された。
【0076】
INSAの遠位端は、それが直線だったことを保証するために検査された。
【0077】
図3Bは、ここに記載するような例示的な注入針アッセンブリーの組み立てを示す。
図3B−1に示すように、針カバー32は、上述したようにINSA35から除去され、熔融シリカ管40の全長は、INSA35の芯23G管15に、近位端にて始まり、INSA35の遠位端を超えて約2インチ延在するまで通される。Loctite(登録商標)接着剤(Loctite(登録商標) Prism(登録商標) 4011接着剤、低粘度)は、露出した熔融シリカ管40に塗布された。次に、熔融シリカ管は、接着剤を均一に配置するようにINSAを回しながら、INSAの遠位端を超えて約1インチ残るまで引っ込められた。接着剤の接合強度は、少なくとも5ポンドである。露出した熔融シリカ管は、INSAの遠位端から延在して0.390インチ(10mm)残るように、仕上げられ、針カバー32が交換された。
【0078】
48インチ長のFEP(テフロン(登録商標))管(1/16のOD、0.030のID)が31として準備され、両端は、Loctite(登録商標)プライマー(Loctite(登録商標)7701プライマー)に漬けられ、空気乾燥される。熔融シリカ管40の近位端は、FEP管に通される。Loctite(登録商標)接着剤は、INSAの近位端に塗布される。FEP管31の遠位端は、INSAの針端の上にすぐに押される。接着剤の接着強度は、少なくとも4ポンドである。
【0079】
図3B−3に示されるように、23Gステンレス鋼スペーサー47(長さ1インチ、23のRW)は、熔融シリカ管40上に置かれる。Loctite(登録商標)接着剤は、熔融シリカ管40の外側及びスペーサー47の外側に塗布される。また、スペーサー47は、FEP管31の近位端が面一になるまで、FEP管31の近位端に挿入される。0.5インチ長のPVC収縮管49(0.125ID)のセグメントは、FEP管31の近位端上にはめられる。
【0080】
図3B−4に示されるように、その後、1/16のメスのLuerコンプレッションフィッティング50がFEP管31の近位端上にはめられる。また、フェルール51は、FEP管31の近位端上におよそ1インチ、置かれる。Loctite(登録商標)接着剤がFEP管31の外側に塗布され、フェルール51がFEP管31の近位端と面一にフェルールの近位端に位置するように押される。Loctite(登録商標)接着剤が熔融シリカ管40、スペーサー47、FEP管31、及びフェルール51間のジョイントを密閉するために塗布される。
【0081】
フェルール51を超えて近位へ延在する残りの熔融シリカ管40は、刻み目を入れられ、折られる。図3B−5に示されるように、フェルール51は、Luerコンプレッションフィッティング50(3ポンド最小引張力)にぴったりと設置され、INSA35の近位端とFEP管31との間のジョイントにわたり、熱収縮管49が熱収縮される。
【0082】
アッセンブリーは、空気漏れがテストされ、オスのLuerキャップ55がコンプレッションフィッティング50に加えられる(図3B−6)。
【0083】
その後、組み立てられたINAは、ラベル付のTyvek(登録商標)ポーチ(4x23インチ)内に包装され密閉される。そして、貯蔵又は出荷用のラベル付の箱内に収納される。
【0084】
管31は、テフロン(登録商標)FEPで作製されたが、当業者は、適切な管材料が使用可能であり、又は管はすべて省略することもできることを認識するであろう。FEP管31は、熔融シリカ管40用の保護として含まれており、非常に薄い熔融シリカ管がシステムのオペレーターに見えることの確認の助けのために含まれる。これらの機能のどちらも本質的なものではない。さらに、FEP管は製品に接触しないので、他の材料の管が生物学的適合性に対する考慮なしに使用可能である。
【0085】
ここに記述されるように生成され、完成したカニューレは、全長6.31インチ(例えば管エレメント28を備える長さ)を超え、内径0.0125〜0.0140インチ、及び外径0.086〜0.087インチである5層のステンレス鋼管を備える。このカニューレは、このセグメントに沿って実質的な剛性を有し、これは目標組織(例えば脳)に挿入されるようにカニューレの曲がりを防止する。さらに、鋼管30の6番目の層が1.58インチのセグメント上にカニューレにさらに大きな強さを加え、これは、図5に示されるように、使用中に定位フレームに取り付けられるときに、カニューレが潰れたり、変形するのを防止する。
【0086】
B.例示的なカニューレ#2
他のカニューレは、例1Aに記述されたものに類似して作製される。図6に示されるように、カニューレ80は、30ゲージ管に終わり、階段デザインで、レーザ溶接により互いに熔融された4層の304手術用鋼を備える。鋼カニューレ(針先端を含み端から端まで約24.6cm)は、鋼を超えて1cm延在することにより配送装置の先端も形成する100μmの内径の熔融シリカ82で裏張りされている。テフロン(登録商標)管84で覆われていた約1.2m(122cm)のさらなる熔融シリカ82は、Luerハブ86に接続される。熔融シリカ及びテフロン(登録商標)管の間の1インチの30ゲージ鋼スペーサー88は、密閉され、医療級シアノアクリレート接着剤でLuerハブに取り付けられる。
【0087】
例2
AADCを符号化した組み換え型のウイルスベクターの霊長類の脳への配送
ヒトAADC(AAV-hAADC-2)を符号化した組み換え型AAVベクターが準備され、以下のようにアカゲザルの被殻に配送される。
【0088】
組み換え型ベクターの製造
組み換え型AAV2は、3倍のトランスフェクション・プロトコル(Matsushita等(1998)Gene Ther. 5(7): 938-45)によって生成された。簡単に言えば、10%のウシの胎仔血清及び2mMのグルタミンを含んでいるDMEM中の一連の使い捨て培養品によって細胞・バンクを動かすHEK293から細胞の拡大後、細胞は、3つのプラスミド(pAAV-hAADC-2、pHLP 19、及びpladeno5)で同時形質移入(co-transfected)された。rAAV−hAADC−2ベクター・クローンは、上述のもの(Sanftner等 (2004) Mol. Ther. 9(3): 403-9)と同じである。プラスミドpHLP 19及びpladeno5は、米国特許5,139,941;5,622,856;6,001,650;及び6,004,797 にてより完全に記載されており、それらの開示内容は、それらの全体が参考文献として本願に組み込まれている。
【0089】
適切なトランスフェクション時間後、トランスフェクション試薬を含む媒質は、無血清媒質と取り替えられ、細胞はベクター生成を可能にするためにさらに培養される。細胞は収穫され、遠心分離によって凝縮され、AAV-hAADC-2ベクターを解離するため凍結/解凍方法によって溶解される。細胞の残骸を除去する遠心分離の後、溶解物は、Benzonase(登録商標)、塩化カルシウムにより処理され、ポリエチレングリコールで沈殿される。ベクターは、セシウム塩化物における等密度の勾配超遠心分離を2回繰り返すことによって浄化される。
AAV-hAADC-2は、凝縮され、5%のソルビトールを含む無菌のバッファーされた食塩水(PBS)でダイアフィルタ(diafiltered)される。Poloxamer 188(TM)(0.001%)が加えられ、物質は、無菌濾過(0.22μm)され、−70℃で冷凍保存される。ベクター清浄は、SDS-PAGEによって評価される。この研究で用いられる、浄化されたrAAV2ベクターは、SDS-PAGEゲルの銀染色法により、VPl、VP2、及びVP3のみを示される。滴定濃度は、ベクター・ゲノムのリアルタイムQ-PCR分析により決定される。
【0090】
外科的処置
定位の座標(被殻の解剖学的構造に基づく)を同定するために、核磁気共鳴映像法(MRI)が手術に先立って各猿に行なわれた。一つが頭側の被殻に集められた部位で、2つ目が尾部の被殻内の部位にて、各大脳半球に2つの部位が目標とされた。成体のアカゲザル(n=4)は、手術のため、ケタミン(Ketaset(登録商標)、10mg/kg、筋肉注射)及びValium(登録商標)(0.5mg/kg、静脈注射)の混合物で動けなくされ、挿管され準備された。等張性の液体は、2mL/kg/hrで静脈注射にて配送された。麻酔は、5%v/vで、全身麻酔薬(Aerane(登録商標)、Omeda PPD社、Liberty, New Jersey)にて引き起こされ、手術の間、l%−3% v/vで維持された。動物の頭は、MRI互換の定位フレームに置かれた。心電図、心拍数、酸素飽和度、及び体温が手続きの間、連続的にモニターされながら、中心温度は循環水ブランケットにて維持された。目標部位の真上の硬膜領域を露出するように、歯科用ドリルにて頭蓋骨に穴が形成された。AAV−hAADC−2は、CED(Lieberman等 (1995) J. Neurosurg. 82(6): 1021-9; Bankiewicz等 (2000) Exp. Neurol. 164(1): 2-14)によって注入された。それぞれの猿は、4つの部位(一つの半球当たり2つの部位を有し、部位当たり50μL)にわたり200μLで拡がり、計3×1011vgを受け入れた。注入カニューレは、各大脳半球における被殻に手動で案内された。また、動物は、左脳半球用に0.2μL/分(10分)、0.5μL/分(10分)、0.8μL/分(10分)、及び1μL/分(35分)の注入速度で、右脳半球用に1μL/分(50分)の一定の注入速度にて、AAV−hAADC−2(1.5×1012vg/mL)の左右相称の注入(つまり両大脳半球内の頭側及び尾部の部位へ連続して注入)を受けた。各動物の実際の定位座標は、:MR15101M 頭側被殻 AP:18、ML:±10.5、DV:20、尾部被殻AP:15,ML:±13,DV:20、R211101M 頭側被殻 AP:24、ML:±12.5、DV:20、尾部被殻 AP:21、ML:±13.5、DV:20、MR15109M 頭側被殻 AP:12、ML:±13、DV:20、尾部被殻 AP:15、ML:±12、DV:20、R23700M 頭側被殻 AP:21、ML:±13.5、DV:21、尾部被殻 AP:24、ML:±12.5、DV:20である。注入の約10分後に、カニューレは除去され、巻かれた部位は閉じられた。また、猿は麻酔からの回復のためにモニターされ、次に、継続して観察するためにケージに戻された。
【0091】
組織学と免疫組織化学
組織学の研究のため、動物は、10%中性緩衝ホルマリン(NBF)に従い心臓内の塩水注入を介して潅流する。その後、脳は、除去され、脳型枠にて頭頂ブロック(8〜10mm)にスライスされる。収穫された脳ブロックは、10%NBF定着薬への浸漬により固定される。組織ブロックは、定着後2〜3日で、濃度上昇PBS/スクロース溶液(10,20,30%)に3〜5日間にわたり移送される。脳は、イソペンタン槽にて冷凍され、ドライアイス上で冷やされ、低温保持装置で40μm厚の頭頂部分に連続的にカットされる。10番目の部分毎に、組織病理学の分析のためにヘマトキシロン及びエオシン(H&E)溶液(Richard Allen、Scientific、Kalamazoo、MI)で着色される。免疫組織化学は、AADC(Chemicon、Temecula、CA、1:1,500)特定用の第一の抗体を有する浮かない部分で実行された。部分は、細胞膜内で成長するペルオキシダーゼを消すために、30分間、3%の過酸化水素内で保温された。10%の正常なヤギ血清で非特定結合のためにブロックした後、部分は、室温で、一級抗体に一晩保温され、その後、ビオチン化された抗ウサギIgG抗体(Vector Laboratories、Burlingame、CA、1:300)、スプレプトアビジン抱合体化されたホースラディシュ・ペルオキシダーゼ(Vector Laboratories、1:300)にて、室温で、両方1時間、保温された。複合体は、3−3'−ジアミノベンジジン(DAB(Vector Laboratories))及び過酸化水素で視覚化された。部分は、Superfrost Plus(登録商標)スライド(Brain Research Laboratories, Newton, MA)に取り付けられ、乾かされ、上昇エタノール系内で脱水され、キシレン内で清掃され、Cytoseal−XYL(Richard―Allen、Scientific、Kalamazoo、MI)でマウントされる。hAADC免疫染色の前後分配は、式(n×10×40μm)により決定される。ここで、nはhAADC陽性細胞での部分数、40μmは部分の厚さ、10番目の部分毎に検査された。分配量は、連続の部分(10番目毎)にて推定され、ビデオカメラ及びStereoinvestigator(TM)の立体解析学ソフトウェア(Microbrightfield、Williston、VT)を装備したZeiss顕微鏡で63倍の拡大の下、立体解析学法に基づき設計されたOptical Fractionator-Optical Dissector でAADCに関して着色された。CEEは、各グループに関し5%未満である。結果は、平均±標準偏差として報告される。学生のt - テストは、統計的有意性を測定するために用いられた。
【0092】
リアルタイムの量的PCR
この研究にて用いられるベクターAAV−hAADC−2は、ヒトのAADC目標cDNAを含んでいる。リアルタイムQ−PCRプライマー及びプローブは、AADC遺伝子の2,3のエクソンにアニールし、ベクター・シーケンスの中にないイントロンをまたがる。それにより、ゲノムのDNAの増幅を最小化する。リアルタイムQ−PCRは、ベクター・インサートを含む線形化されたプラスミドDNAで標準化され、ベクター・ゲノムは、上述したように(Sommer等 (2003) Mol. Ther. 7(1): 122-8)、量を計られた。
【0093】
中和AAV抗体滴定濃度
血清又は血漿の中和抗体(NAb)滴定濃度は、細胞に基づいた分析にて生体外で決定された。β−ガラクトシダーゼ・リポーター遺伝子(AAV2-LacZ)を符号化した、規定数のAAV2ベクター粒子は、96−ウエルプレートにおける集合の近くのHEK−293細胞への混合物の追加の前に、37℃にて1時間、テスト血清で保温された。制御(100%)AAV2形質導入は、純粋なマウス血清(NMS)がある状態でAAV2−LacZによる形質導入の後、24時間の培養にて測定されたβ−ガラクトシダーゼ活性の量として規定された。NMS中のテスト血清のハーフログ(half-log)連続希釈は、β−ガラクトシダーゼ発現の50%以上の抑制に帰着するテスト血清の最も高い稀釈を決定するようになされた。各希釈列は、3つにてテストされた。滴定濃度を中和する十分に定義されたAAV2を備えた基準血漿は、各分析評価にて使用され、また、負の制御(NMSだけ)は、バックグラウンドの分析評価を決定するために用いられた。NAbの滴定濃度は、50%抑制レベル、例えば、1:100、1:316を一まとめにする2つの稀釈液として規定された。
【0094】
ELISA架橋
滴定濃度板(96ウエル)は、AAV2粒子でコーティングされ、次に、試験サンプル(血清または血漿)とともに保温された。板は、ビオチン化されたAAV2粒子で保温され、次に、それらはHRP結合−スプレプトアビジンにて検出された。ビオチン化されたAAV2粒子は、2つのAAV2粒子間にブリッジを形成する多価抗体によってのみ捕らえることができる。この分析評価における非常に低い非特異性のバックグラウンド信号は、希釈されていない、又は低希釈の試験品の試験を可能にし、また、分析評価は、試験サンプルにおける第一の抗体が酵素を結合した第2の抗体によって検出される古典的ELISAよりも高い感度を有する。架橋分析評価は、抗体の異なる種とクラスとの間の直接の滴定濃度比較を可能にする。分析は、AAV2(Grimm等、1998)を認識する、浄化されたマウス単クローン抗体「A20」の既知量で標準化された。この分析の量化限界は、約15ng/mLの反AAV2抗体だった。1:100のNAb滴定濃度を有するヒトのサンプルは、A20と同等な抗体の1〜10μg/mLの間に含まれていた。この分析によって反復試験を受けた65の人間サンプルに関する平均の測定間(inter-assay)の可変性は、23%だった。
【0095】
実験に基づく設計
組み換え型AAV2ベクターは、頭脳組織を効率的に形質導入するが、しかし、形質導入レベルは、高い中和抗体(NAb)滴定濃度(>1:1200)(Sanftner等 (2004) Mol. Ther. 9(3): 403-9) が存在する状態で著しく下がる。したがって、NAb滴定濃度≦1:100を有する4匹のオスのアカゲザルがAAV2注入(表1)のために選ばれた。ベクター投与のための定位座標を決定するために、MRI走査がAAV2配送に先立って行なわれた。
動物に、各大脳半球(3.0×1011vg/脳)に、2つの50μL注入(7.5×1010vg/部位)にて、1.5×1011vg/脳のAAV−hAADC−2がそれぞれに注がれた。0.2μL/分(10分)、0.5μL/分(10分)、0.8μL/分(10分)、及び1μL/分(35分)の上昇の注入速度(増加)が、左大脳半球用に用いられ、一方、50分間(非増加)、1μL/分の一定速度が右大脳半球用に用いられた。動物は、5.5週間モニターされた。このモニタ時間は、hAADC発現が比較的安定になるのに満足な期間である。第一の終了点は、免疫組織化学により決定されるようなAADC発現、並びに臨床観察及び組織病理学によって決定されるような安全評価を含んでいた。さらに、基線及び研究の終わりにて集められた血清サンプルは、中和すること及びAAVに対する全抗体の両方の存在に関してテストされた。
【0096】
【表1】
【0097】
注入装置改良及びベクター回収
ヒトの使用(「Clinical Device A」つまりCDA)のための試作型注入装置は、標準のLeksell(登録商標)の定位フレームにはまり合うように作製された、25cmのステンレス鋼カニューレを備えていた。CDAカニューレは、剛性、及び内部ホールドアップ体積の最小化を提供するため、医療等級のステンレス鋼管の4つの階段状層を備えていた。鋼CDAカニューレは、1.2mのテフロン(登録商標)管を介して注射器に接続された。1μL/分までの流速におけるベクター回収研究は、製品調剤にて表面活性剤として0.01%のPoloxamer 188が含まれるにもかかわらず、90%のベクター製品が装置に吸着していたことを示している(表2)。ベクターで装置を1時間フラッシュすることは、後の回収を改善するが、しかし、ベクターの損失は、まだおよそ40%あった。さらに、ベクター回収用のテストは、1μL/分以下の流速にて製品が異種の管材料に接する階段状のステンレス鋼カニューレの試験を含んでいた(例1A、1B)。優れたベクター回収は、AAVベクターと接する、熔融シリカTygon(登録商標)及びシリコーン管を備えるカニューレに関して観察された。鋼、テフロン(登録商標)(PTFE及びFEP)、及びポリイミドのような他の物質は、かなりの量のベクターを捕獲する。
【0098】
【表2】
【0099】
ベクター損失の多くは、低流速にてのみ観察された。例えば、テフロン(登録商標)管では、ベクター損失は、線形の流速に反比例した。ベクターの90パーセントは、1μl/分(1.2mの管を4mm/分)にて失われたが、しかし、許容可能なベクター回収(>80%)は、同じ管で、約100μL/分の流速にて得ることができた。線形の流速を最大にし、かつテフロン(登録商標)及び鋼の表面でのベクターの接触を全て除去するために、臨床装置の全コアは、内径100μmの熔融シリカにて裏打ちされた(例1B、図6)。この装置(「臨床装置B」即ちCDB)では、鋼カニューレは、剛性を提供するために熔融シリカを囲み、熔融シリカは、鋼カニューレの先端を超えて10mm延在する(図6)。針の先端近くの2つの外側の階段は、針の経路に沿った潜在的な逆流を最小にするために含まれている。さらに1.2メーターの熔融シリカは、LuerハブにCDBカニューレを接続し、単に保護を提供するためにテフロン(登録商標)管によってカバーされる。CDBは、cGMPに従い製造され組み立てられ、終末にエチレン酸化ガスによって殺菌された。
【0100】
ベクターの量的回収は、臨床前及び臨床装置による模擬の注入によって評価された。臨床前装置に関して、400μLのベクター溶液は、27ゲージ鋼管の4cm片により囲まれた熔融シリカを有する7cmのカニューレに連結されたテフロン(登録商標)管へ遠位端から出された。100μL/分にてカニューレを満たした後、回収分析用のベクター収集前に、さらに20μLのフラッシュが行われた。プログラム可能な注射器ポンプにて0.2〜1.0μL/分(上昇手順)の流速にて、4つの試料が2つの装置から集められた。
【0101】
表2に示されるように、これらの状態の下で臨床前装置からの平均ベクター回収は、63±16%(±SD)であった。臨床装置については、AAV−hAADC−2ベクターは、5×1011vg/mLに薄められ、注射器に装填され、装置に取り付けられた。充填後、臨床装置Aは、8μL/分(62.5分)で500μLのベクター溶液でフラッシュされ、一方、臨床装置Bは、4μL/分(12.5分)で50μLのベクター溶液でフラッシュされた。50μLの2つの連続した部分標本が、0.2〜1.0μL/分の流速にて各装置の3セットから集められた。各サンプルにおけるベクター濃度は、リアルタイムの量的PCR(Q−PCR)によって決定された。
【0102】
臨床装置Aに関する回収は、大量の1時間のフラッシュ後、単に60±15%であった。一方、ベクター(101±6%)の完全な回収が臨床装置Bに関して観察された。臨床装置Bから回収されたベクター・サンプルの性能は、感染性の滴定濃度(Zhen 等 (2004) Hum. Gene Ther. 15(7): 709-715)を決定することにより確認された。特定の活性(伝染性のユニット/vg)において、顕著な減少は、観察されなかった。
【0103】
免疫組織化学及び生体内でのhAADC発現の計量
hAADC発現の免疫組織化学分析は、ベクター分配が上昇注入と非上昇注入との後で異なるのか否かを臨床装置Bで決定するため、AAV−hAADC−2注入後、5.5週にて各大脳半球にて実行された。全ての猿は、被殻内でhAADC発現を示した。連続した部分は、hAADC−陽性細胞用の明視野顕微鏡にて検査された。分配の体積、及びhAADC遺伝子組み換えの陽性細胞の前、後(A−P)拡張が全ての動物に関し決定された。
【0104】
図7は、注入部位によるhAADC遺伝子組み換え用の免疫組織化学染色の断面を示している。画像は、動物MR15102M(A)、MR15109M(B)、R23700M(C)、及びR211101M(D)からの部分の全マウントである。部分は、画像の右側で右大脳半球、及び画像の左側で左大脳半球による尾部の図から配向される。すべての動物において、遺伝子組み換え発現は、被殻に集中した。hAADC発現は、図7Bに示されるような注入路による直接のラインを除き皮質領域で検出されなかった。AADC陽性細胞又はhAADC染色の強度の数の差は、右大脳半球と左大脳半球の比較において見られなかった。
【0105】
上昇注入(図8A)を受けた左大脳半球、又は非上昇注入(図8B)を受けた右大脳半球からの代表的な動物における被殻の注入部位の高拡大画像は、中間のとげ状のニューロンにおけるhAADC遺伝子組み換え発現を示す。hAADC発現に関する免疫組織化学染色は、注入された大脳半球の全て(8/8)で見られた。AAV−hAADC−2投与は、上昇注入(左大脳半球)又は非上昇注入(右大脳半球)にて、AAV−hAADC−2の類似の分配により、被殻の良好な発現及び有効範囲の結果となった。
【0106】
反hAADC抗体で染色された連続部分におけるhAADC分配の推定された体積の計量は、Stereoinvestigator(TM)立体解析学ソフトウェア(Microbrightfield、Williston、VT)にて行なわれた。分配の前後(A−P)、頭側から尾部への分配の一次元測定、及びhAADC免疫染色の体積は、4つのAAV処置された非ヒト霊長類の各大脳半球に関して別個に決定された(表3)。右又は左の大脳半球のいずれかに関する平均A−P分配及び平均体積は、それぞれ4つの大脳半球に基づいた。左大脳半球(上昇配送)に関する平均A―P分配は、9600μm±2422μm(SD)、及び平均体積は238mm3±121mm3であった。右大脳半球(非上昇配送)に関する平均A―P分配は、9606μm±2037μm、及び平均体積は284mm3±55mm3であった。対ではないStudent'sテスト(AP分配比較用のP=0.9973、及び拡張体積比較用のP=0.5187)による上昇又は非上昇間での平均体積又は平均A−P分配に、顕著な相違はなかった。非上昇注入は、カニューレ路に沿ったベクターの逆流、又は遺伝子組み換え誘導化hAADC分配の減少に帰着しなかった。逆流の欠乏は、カニューレの複数の階段デザインによるものであるかもしれない。
【0107】
【表3】
【0108】
組織病理学
H&Eで染色された連続部分の組織病理学的分析は、上昇又は非上昇配送のいずれかにて、カニューレ配置及びAAV−hAADC−2注入の効果を決定するために、全ての動物にて行われた。図9は、5倍の拡大で、代表的な動物、R21110IMからの被殻内のH&E染色部分を示す。動物R21110IMは、右大脳半球(パネルA)にて非上昇注入手順により、及び左大脳半球(パネルB)にて上昇注入手順により、AAV−hAADC−2の左右相称のCEDを受け入れた。画像は、中間の尾部の被殻レベルでのカニューレ路に隣接する領域を示す。全てのH&E染色スライドは、処理状態を認識していない、神経病理学者(Pathology Associates 社)によって調査された。いくつかの単核細胞浸潤は、穏やかな血管周囲性細胞浸潤とともに被殻で見られた。両方の被殻は、少数の浸透した血管、及び穏やかな実質組織浸潤を含んでいた。右、左大脳半球の組織病理学の様相は、注入部位での少しの炎症性の組織反応と共に、類似した。
【0109】
中和抗体の成長
AAVキャップシッドへの中和抗体(NAb)及び合計抗体滴定濃度は、ベクターの注入に先立って、及び検死のときに集められた血清サンプルに関して決定された。反AAV抗体値のわずかな上昇は、AAV−hAADC−2(表1)の左右相称の注入後に、すべての動物におけるELISA架橋により検出された。2つのNAb分析に関する結果は、表1に示されている。ELISA架橋は、反AAV2マウス単クローン抗体で標準化される。2つの結果の平均は、後処理サンプルに関し示される。また、単一の結果は、前処理サンプルに関し示される。処理前の最も高い血清中和抗体滴定濃度(1:10〜1:100)を有する動物(R23700M)は、Day 42で1:31〜1:316に増加した後処理抗体を有している。他の動物と比較したとき、この動物は、類似のhAADC遺伝子組み換え分配を有していた。このように、高滴定濃度に関連してベクター拡張の明らかな抑制はなかった。
【0110】
臨床観察
猿は、臨床的症状、食料消費、及び体重に関して毎日、評価された。手術後の日々の臨床観察は、動物がCED手順に対し耐性があり、行動変化を示さなかったことを示した。臨床的症状に関するAAV−hAADC−2処置又は体重変化はなかった。後処理期間になされた観察は、同様の外科的処置を受ける研究所に収容されたアカゲザルに一般に観察されるものに類似していた。
【0111】
結果
本発明のカニューレの実施形態は、霊長類の脳へ有効にrAAVベクターを配送する能力を評価するためにテストされた。それは、ヒトの被験者のパーキンソン病の治療のための治療のrAAVベクターの配送のためのモデルとして役立つ。ベクター配送をテストするために設計された模擬の注入は、テフロン(登録商標)又は鋼の表面にベクターの接触を好ましくは回避して、ここに記載されるようなカニューレにて、本質的に、意図した服用量の100%を配送可能であることを確証した。
【0112】
4匹の非ヒト霊長類の被殻の中へAAV−hAADC−2の定位投与は、上昇(注入速度を徐々に増加)と、非上昇(一定速度)の比較によって行なわれた。hAADC発現は、免疫組織化学により検出でき、被殻に広く分配された。遺伝子組み換え誘導化hAADCの体積の立体解析学の計量は、一方の注入手順を受け入れる大脳半球における同様の分配を実証した。更に、一定の流速は、針路に沿った過度のベクターの付着とならなかった。組織病理学の分析は、安全の問題を提案せずに、カニューレ挿入路の領域に配置されたわずかな組織炎症反応のみを明らかにした。左及び右の被殻(つまり、上昇注入と非上昇注入)間の細胞浸潤又は炎症の度合いで明白な違いはなかった。異常な臨床観察は、手術及び内被殻(intraputamenal)注入後、いずれの動物でも見られなかった。
【0113】
装置及び注入パラメーターへの追加において、いずれかの区画への有効なAAVを媒介とした遺伝子配送に関する他の重要な考慮は、反AAV抗体による潜在的な中立化である。遺伝子治療技術の効能に悪影響を及ぼす可能性を有する人間における広範囲の先在するAAV中和抗体滴定濃度がある(Blacklow等 (1968) J. Natl. Cancer Inst. 40(2): 319-27)。いかなるAAVを媒介とした遺伝子治療アプローチも、そのようなハードルを予想しなければならない。
【0114】
例えば、ヒトのAAV2中和反抗体滴定濃度が様々なレベルにて確立可能なSCIDマウスを利用するモデル・システムにおいて、1:10未満の滴定濃度は、静脈内投与後、AAVファクタIXの肝臓の形質導入に著しく悪影響を与えたことが観察された(Scallan等 (2004) American Society of Gene Therapy, Minneapolis, MN, Abstract #753 S286)。被殻へのAAV2の配送は、CNSの免疫特権状態による抗体を循環することによる中立化にそれほど従わないと仮定された。実際に、ネズミにて行なわれ、AAV2にて予め体系的に免疫にされ、線条体的(intrastriatally)に注入され実行された研究は、Nab滴定濃度が1:1200を超えたときのみ観察される形質導入における減少にて中立から重大な保護を確認した(Sanftner等 (2004) Mol. Ther. 9(3): 403-9)。
【0115】
ここに記載された実験は、交絡因子のように中和抗体を除外するために、1:1から1:100までの範囲の先在するNAb滴定濃度とともに動物を使用し、それらの滴定濃度は、被殻におけるhAADC発現に明白な影響を及ぼさない。さらに、後注入滴定濃度は、ベクター投与後にわずかだけ上昇し、それによって、現在の装置及び注入状態により、良好に目標化され、最小の破壊での遺伝子配送を確認した。これらの結果は、また、AAV2の線条体注入の繰り返しが人間の患者において実現可能かもしれないことを示唆する。
【0116】
要約では、本発明の注入装置(臨床装置B)を介して猿の被殻へのAAV−hAADC−2の非上昇注入は、よく許容された。被殻における、遺伝子組み換え(hAADC)発現及び分配は、より複雑で、より時間を消費する上昇流速条件に匹敵した。神経組織変成疾患及び他のCNS障害の遺伝子治療が拡張分野であるとすれば(Tinsley及びEriksson (2004) Acta Neurol. Scand. 109(1): 1-8)、現在の結果は、臨床装置Bの設計がこの分野に関する系統的分類法における重要な進歩を表わすことを示唆する。本発明の装置及び注入パラメーターは、PD患者へのAAV2の線条配送に、及び、また、異なる解剖学の部位をターゲットとし、様々な治療薬又は遺伝子治療薬剤を配送し、CNS臨床指示の類別を治療するために、適用可能となるであろう。
【0117】
例は、本発明を示し、かつ、それらの細部によって、本発明の請求範囲を限定しないように意図される。本発明の好ましい例示である実施形態が記載されているが、種々の変更及び修正が本発明から逸脱することなくなされること、及び、添付の請求範囲では、全ての変更及び修正が本発明の真意及び範囲に属するようにカバーするものであるということは、当業者には明らかであろう。
【0118】
全ての刊行物、特許、及び特許出願刊行物、並びに、ここに参照されたものは、その全体が参考文献としてここに編入される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、ここに記載されるような階段状のカニューレ2を備える例示的なシステムの概観である。また、内側が熔融シリカ管1,3のFEPクラスVI管3を介してカニューレ2に連結される注射器4、及び注射器ポンプ5が示される。注射器ポンプ5は、Lureコンプレッションフィッティング6を介して管3に接続される。
【図2】図2は、ここに記載するような例示的な階段状のカニューレ10を備える他の例示的なシステムの側面図である。また、注射器ポンプ16及び注射器15が示されている。注射器は、FEP(テフロン(登録商標))管13の内腔及びカニューレ10を通して延在する熔融シリカ管12を介してLureコンプレッションフィッティング14でカニューレ10に連結される。
【図3A】図3Aは、ここに記載されるような例示的な注入針サブアッセンブリー(INSA)のアッセンブリーに含まれる例示的な階段を示す側面図を示す。
【図3B−1】図3B−1は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図3B−2】図3B−2は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図3B−3】図3B−3は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図3B−4】図3B−4は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図3B−5】図3B−5は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図3B−6】図3B−6は、ここに記載されるような例示的な注入針アッセンブリー(INA)のアッセンブリーに含まれる階段を示す側面図である。
【図4】図4は、取り付けられた注射器を有する例示的なMedfusion 201Oi注射器ポンプの概観を示す。
【図5】図5は、人間の被験者への製品の投与のための定位フレームに取り付けられた、ここに記載されるような例示的なカニューレの概観である。
【図6】図6は、ここに記載されるような他の例示的なカニューレの概観である。
【図7】図7は、パネルA−Dは、例2に記載された実験にて使用された猿からの全装着脳部分における芳香性L−アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)に関する免疫組織化学的染色の結果を図示する。脳は、注入後5.5週での、注入部位を通り頭頂部にて示されている。パネルA、B、C及びDは、例2[MRl5102M(A)、MRl5109M(B)、R23700M(C)、及びR21110IM(D)]にて分析された4つの異なる猿の脳を表わす。全ての左大脳は、上昇注入を受け入れ、全ての右大脳は、非上昇注入を受け入れた。黒の矢印は、被殻領域を示す。
【図8】図8は、パネルA及びBは、例2に記載された実験にて使用された猿の脳の、注入後5.5週での被殻内のAADCに関する免疫組織化学的染色の高拡大画像を図示する。上昇注入を受け入れた大脳からの代表的な部分は図8Aに示され、非上昇注入を受け入れた大脳からの代表的な部分は図8Bに示される。スケールバーは100μmを表す。
【図9】図9は、パネルA及びBは、例2、R211101M、5倍拡大、における実験にて使用される代表的な動物からの被殻内のヘマトキシロン及びエオシン(H&E)の染色部分を図示する。動物R211101Mは、右大脳にて非上昇注入手順を使用してAAV−hAADC−2の左右相称のCEDを受け入れ(図9A)、左大脳にて上昇注入手順を受け入れた(図9B)。画像は、カニューレ跡に隣接している領域を示し、中間の尾部の被殻レベルにて得られた。スケールバーは400μmを表わす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径、遠位端、近位端、及び近位端と遠位端との間に延在する内腔を有する階段状のカニューレであって、
同軸上に配置された2以上のセグメントを備え、各セグメントは、カニューレの外径を形成する外径を有し、
各セグメントの外径は異なる、ことを特徴とする階段状カニューレ。
【請求項2】
2、3、4、5、又は6つの同軸上に配置されたセグメントを備える、請求項1記載の階段状カニューレ。
【請求項3】
セグメントの外径は、カニューレの近位端から遠位端へ減少する、請求項1又は2記載の階段状カニューレ。
【請求項4】
カニューレの内径は一定である、請求項1から3のいずれかに記載の階段状カニューレ。
【請求項5】
カニューレの内腔を通り延在する一若しくは複数の管状部品をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の階段状カニューレ。
【請求項6】
少なくとも一つの管状部品は、熔融シリカ管を備える、請求項5記載の階段状カニューレ。
【請求項7】
熔融シリカ管の周りに配置されるFEP管をさらに備えた、請求項6記載の階段状カニューレ。
【請求項8】
一若しくは複数のセグメントは、ステンレス鋼を備える、請求項1から7のいずれかに記載の階段状カニューレ。
【請求項9】
一若しくは複数のステンレス鋼セグメントの内腔は、一若しくは複数のポリマーでコーティングされている、請求項8記載の階段状カニューレ。
【請求項10】
5つのステンレス鋼セグメントを備える、請求項1から9のいずれかに記載の階段状カニューレ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のカニューレと、
上記カニューレを通して配送される一若しくは複数の物質を有し、カニューレの内腔に接続可能な貯留部と、
を備えたことを特徴とするカニューレアッセンブリー。
【請求項12】
上記貯留部は、注射器を備える、請求項11記載のカニューレアッセンブリー。
【請求項13】
上記注射器に連結可能なポンプをさらに備える、請求項11又は12記載のカニューレアッセンブリー。
【請求項14】
上記ポンプは、プログラム可能である、請求項13記載のカニューレアッセンブリー。
【請求項15】
上記貯留部は、カニューレの内腔を通り延在する管に連結可能である、請求項11から14のいずれかに記載のカニューレアッセンブリー。
【請求項16】
対象の目標領域へ一若しくは複数の物質を配送する方法であって、
請求項1から10のいずれかに記載のカニューレ、又は請求項11から15のいずれかに記載のカニューレアッセンブリーを、対象の目標領域に位置決めし、
カニューレを通して目標領域へ一若しくは複数の物質を配送する、
ことを特徴とする配送方法。
【請求項17】
上記目標領域は、中枢神経系内である、請求項16記載の配送方法。
【請求項18】
上記目標領域は、脳内である、請求項17記載の配送方法。
【請求項19】
上記物質は、生物学上有効な薬剤、染料、トレーサ、マーカー、造影剤、又はこれらの組み合わせからなるグループから選ばれる、請求項16から18のいずれかに記載の配送方法。
【請求項20】
上記生物学上有効な薬剤は、AAVベクターである、請求項19記載の配送方法。
【請求項21】
外径、遠位端、近位端、及び近位端と遠位端との間に延在する内腔を有する階段状のカニューレであって、
同軸上に配置された2以上のセグメントを備え、各セグメントは、カニューレの外径を形成する外径を有し、ここで各セグメントの外径は異なり、
カニューレの内腔を通り延在する一若しくは複数の管状部品を備える、
ことを特徴とする階段状カニューレ。
【請求項22】
外径、遠位端、近位端、及び近位端と遠位端との間に延在する内腔を有する階段状のカニューレであって、
同軸上に配置された2以上のセグメントを備え、各セグメントは、カニューレの外径を形成する外径を有し、ここで各セグメントの外径は異なり、
カニューレの内腔を通り延在する一若しくは複数の管状部品を備え、ここで、少なくとも一つの管状部品は熔融シリカを備える、
ことを特徴とする階段状カニューレ。
【請求項23】
上記内腔に位置決めされ、上記カニューレを通して目標領域に配送される物質の損失を低減する手段をさらに備える、請求項1記載の階段状カニューレ。
【請求項24】
上記手段は、熔融シリカを備える、請求項23記載の階段状カニューレ。
【請求項1】
外径、遠位端、近位端、及び近位端と遠位端との間に延在する内腔を有する階段状のカニューレであって、
同軸上に配置された2以上のセグメントを備え、各セグメントは、カニューレの外径を形成する外径を有し、
各セグメントの外径は異なる、ことを特徴とする階段状カニューレ。
【請求項2】
2、3、4、5、又は6つの同軸上に配置されたセグメントを備える、請求項1記載の階段状カニューレ。
【請求項3】
セグメントの外径は、カニューレの近位端から遠位端へ減少する、請求項1又は2記載の階段状カニューレ。
【請求項4】
カニューレの内径は一定である、請求項1から3のいずれかに記載の階段状カニューレ。
【請求項5】
カニューレの内腔を通り延在する一若しくは複数の管状部品をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の階段状カニューレ。
【請求項6】
少なくとも一つの管状部品は、熔融シリカ管を備える、請求項5記載の階段状カニューレ。
【請求項7】
熔融シリカ管の周りに配置されるFEP管をさらに備えた、請求項6記載の階段状カニューレ。
【請求項8】
一若しくは複数のセグメントは、ステンレス鋼を備える、請求項1から7のいずれかに記載の階段状カニューレ。
【請求項9】
一若しくは複数のステンレス鋼セグメントの内腔は、一若しくは複数のポリマーでコーティングされている、請求項8記載の階段状カニューレ。
【請求項10】
5つのステンレス鋼セグメントを備える、請求項1から9のいずれかに記載の階段状カニューレ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のカニューレと、
上記カニューレを通して配送される一若しくは複数の物質を有し、カニューレの内腔に接続可能な貯留部と、
を備えたことを特徴とするカニューレアッセンブリー。
【請求項12】
上記貯留部は、注射器を備える、請求項11記載のカニューレアッセンブリー。
【請求項13】
上記注射器に連結可能なポンプをさらに備える、請求項11又は12記載のカニューレアッセンブリー。
【請求項14】
上記ポンプは、プログラム可能である、請求項13記載のカニューレアッセンブリー。
【請求項15】
上記貯留部は、カニューレの内腔を通り延在する管に連結可能である、請求項11から14のいずれかに記載のカニューレアッセンブリー。
【請求項16】
対象の目標領域へ一若しくは複数の物質を配送する方法であって、
請求項1から10のいずれかに記載のカニューレ、又は請求項11から15のいずれかに記載のカニューレアッセンブリーを、対象の目標領域に位置決めし、
カニューレを通して目標領域へ一若しくは複数の物質を配送する、
ことを特徴とする配送方法。
【請求項17】
上記目標領域は、中枢神経系内である、請求項16記載の配送方法。
【請求項18】
上記目標領域は、脳内である、請求項17記載の配送方法。
【請求項19】
上記物質は、生物学上有効な薬剤、染料、トレーサ、マーカー、造影剤、又はこれらの組み合わせからなるグループから選ばれる、請求項16から18のいずれかに記載の配送方法。
【請求項20】
上記生物学上有効な薬剤は、AAVベクターである、請求項19記載の配送方法。
【請求項21】
外径、遠位端、近位端、及び近位端と遠位端との間に延在する内腔を有する階段状のカニューレであって、
同軸上に配置された2以上のセグメントを備え、各セグメントは、カニューレの外径を形成する外径を有し、ここで各セグメントの外径は異なり、
カニューレの内腔を通り延在する一若しくは複数の管状部品を備える、
ことを特徴とする階段状カニューレ。
【請求項22】
外径、遠位端、近位端、及び近位端と遠位端との間に延在する内腔を有する階段状のカニューレであって、
同軸上に配置された2以上のセグメントを備え、各セグメントは、カニューレの外径を形成する外径を有し、ここで各セグメントの外径は異なり、
カニューレの内腔を通り延在する一若しくは複数の管状部品を備え、ここで、少なくとも一つの管状部品は熔融シリカを備える、
ことを特徴とする階段状カニューレ。
【請求項23】
上記内腔に位置決めされ、上記カニューレを通して目標領域に配送される物質の損失を低減する手段をさらに備える、請求項1記載の階段状カニューレ。
【請求項24】
上記手段は、熔融シリカを備える、請求項23記載の階段状カニューレ。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2008−515554(P2008−515554A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535832(P2007−535832)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/036110
【国際公開番号】WO2006/042090
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により図面の一部または全部を不掲載とする。
【出願人】(593119583)ジェンザイム・コーポレイション (17)
【氏名又は名称原語表記】Genzyme Corporation
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/036110
【国際公開番号】WO2006/042090
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により図面の一部または全部を不掲載とする。
【出願人】(593119583)ジェンザイム・コーポレイション (17)
【氏名又は名称原語表記】Genzyme Corporation
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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