説明

階間部等における上側外壁面材下端部の固定構造

【課題】固定を容易にすることができる階間部等における上側外壁面材下端部の固定構造を提供する。
【解決手段】下階側の外壁パネル1の外壁面材5の上端部にベース板としての水受け板6が取り付けられ、上側の外壁面材9の下端部に固定板10が取り付けられ、水受け板6の正面側に保持金物11が取り付けられている。保持金物11は、水受け板6との間に固定板10を差し込む上向き開放の差し込み部12を形成する差し込み板部11bを備え、該差し込み部12に固定板10が差し込まれて上側の外壁面材9の下端部が固定されている。差し込み板部11bの上端部には、屋内側から屋外側に向けて斜め上方に傾斜する誘導板部11cが連設されているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階間部等における上側外壁面材下端部の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建物の階間部において、下階側の外壁パネルの外壁面材の上側に配置される外壁面材の下端部、例えば、上階側の外壁パネルの外壁面材の下端部や、下階側の外壁パネルの外壁面材と上階側外壁面材との間に配置される外壁面材の下端部を固定する構造として、下階側の外壁パネルの外壁面材の上端部背面側に、該外壁面材よりも上方に突出する水受け板が取り付けられると共に、上側の外壁面材の下端部背面側に、該外壁面材よりも下方に突出する固定板が取り付けられ、水受け板の正面側に固定板を沿わせた状態にし、屋外側から上下の外壁面材間の横目地を通じてビスを打って水受け板と固定板とを締結し、上側の外壁面材の下端部を固定するようにしたものは、従来より提供されている。
【特許文献1】特開2005−256510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような固定構造では、現場において屋外側からビス打ちを行わなければならず、固定に手間を要するという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、固定を容易にすることができる、階間部等における上側外壁面材下端部の固定構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、下階側の外壁パネルの外壁面材の上端部背面側に、該外壁面材よりも上方に突出するベース板が取り付けられると共に、
上側の外壁面材の下端部背面側に、該外壁面材よりも下方に突出する固定板が取り付けられ、
ベース板の正面側に固定板を沿わせた状態に保持する金物がベース板の正面側に取り付けられ、
該保持金物は、ベース板との間に固定板を差し込む上向き開放の差し込み部を形成する差し込み板部を備え、該差し込み部に固定板が差し込まれ、該差し込みによって、固定板がベース板の正面側に沿わされた状態に保持されており、その保持作用によって上側の外壁面材の下端部が固定されていることを特徴とする階間部における上側外壁面材下端部の固定構造によって解決される(第1発明)。
【0006】
この構造では、上側の外壁面材の固定板を、下階側外壁パネルの外壁面材のベース板の正面側の差し込み部に差し込むだけで、上側外壁面材の下端部は、ベース板と保持金物とによって固定され、上側外壁面材下端部の固定を容易にすることができる。
【0007】
第1発明において、前記保持金物における差し込み板部の上端部に、上下の外壁面材間の横目地空間部内において屋内側から屋外側に向けて斜め上方に傾斜する差し込み誘導板部が連設され、固定板を該誘導板部に誘導させて差し込み部に差し込むことができるようになされているとよい(第2発明)。この場合は、固定板を、該誘導板部に誘導させて差し込み部に容易に差し込むことができ、作業をより一層容易にすることができる。
【0008】
第2発明において、前記誘導板部の先端部に垂下板部が連設され、該垂下板部の下端部が下側の外壁面材の上端面に当接することによって誘導板部の先端側が支えられるようになされているとよい(第3発明)。この場合は、固定板の差し込み過程において、その下端部が誘導板の上面部に当接しても、垂下板部が誘導板を支え、誘導板にしっかりとした誘導作用を行わせることができる。
【0009】
第2,第3発明において、上下の外壁面材間に、乾式の横目地材が、前記保持金物の誘導板部と上側外壁面材の下端面との間の奥拡がり空間部を掛止空間部として取り付けられているとよい(第4発明)。この場合は、上下の外壁面材間の横目地空間部内において屋内側から屋外側に向けて斜め上方に傾斜する誘導板部の傾斜を固定板の誘導と乾式横目地材の取付けに併用するものであり、固定板の誘導と乾式横目地材の取付けを、簡素の構造によって実現することができる。
【0010】
また、本発明は、下側の外壁面材の上端部背面側に、該外壁面材よりも上方に突出するベース板が取り付けられると共に、
上側の外壁面材の下端部背面側に、該外壁面材よりも下方に突出する固定板が取り付けられ、
ベース板の正面側に固定板を沿わせた状態に保持する金物がベース板の正面側に取り付けられ、
該保持金物は、ベース板との間に固定板を差し込む上向き開放の差し込み部を形成する差し込み板部を備え、該差し込み部に固定板が差し込まれ、該差し込みによって、固定板がベース板の正面側に沿わされた状態に保持されており、その保持作用によって上側の外壁面材の下端部が固定されていることを特徴とする上側外壁面材下端部の固定構造によっても同様に解決される(第5発明)。
【0011】
即ち、第5発明は、下側の外壁面材は下階側の外壁パネルの外壁面材でなくてもよいし、階間部における上外壁面材の下端部の固定に限らない。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のとおりのものであるから、階間部等における上側外壁面材下端部の固定を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図3に示す第1実施形態の固定構造は、階間部において階上側の外壁パネルの外壁面材の下端部を固定する場合のもので、1は下階側外壁パネル、2は上階側外壁パネル、3は鋼製胴差、4は階間の水切り板である。なお、1aは、下階側外壁パネル1の鋼製フレームである。
【0015】
下階側外壁パネル1は、その外壁面材5(以下、「下側外壁面材」という。)の上端部背面側に、該外壁面材5よりも上方に突出する金属板などによるベース板としての水受け板6が取り付けられ、該水受け板6は、階間の水切り板4の下端部の背面側に配置され、水切り板4の正面側を流下する水を受け、該水を横目地7から屋外側に誘導する機能をもたされているもので、図示しないが、水受け板6と下側外壁面材5との間にはエプトシーラー(商品名)等による止水材が挟み込まれて止水されている。なお、8は止め金物で、水切り板4の下端部を保持するものである。
【0016】
上階側外壁パネル2は、その外壁面材9(以下、「上側外壁面材」という。)の下端部背面側に、該外壁面材9よりも下方に突出する金属板等による固定板10が取り付けられ、下側外壁面材5の下端部の固定は、固定板10を水受け板6の正面側に沿わせた状態に保持することによって行われる。
【0017】
この固定のため、図3に示すように、水受け板6の正面側に、ピース物からなる保持金物11が取り付けられている。この保持金物11は、水受け板6への取付け部である取付け板部11aの上端部に、水受け板6に対して取付け板部よりも屋外側に偏心して上方に延びる差し込み板部11bが連設されたもので、該差し込み板部11bと水受け板6との間に、固定板10を差し込むための上方に開放された差し込み部12が形成され、該差し込み部12に固定板10が差し込まれると、上側外壁面材9の下端部は、屋内外方向における所定の位置に位置決め状態に保持固定されるようになされている。
【0018】
また、本実施形態では、保持金物11における差し込み板部11bの上端部に、上下の外壁面材5,9間の横目地空間部7内において屋内側から屋外側に向けて斜め上方に傾斜する差し込み誘導板部11cが連設され、固定板10を該誘導板部11cに誘導させて差し込み部12に差し込むことができるようになされている。
【0019】
更に、誘導板部11cの先端部には垂下板部11dが連設され、該垂下板部11dの下端部が下側外壁面材5の上端面に当接することによって誘導板部11cの先端側が支えられるようになされている。
【0020】
施工は、図2(ロ)に示すように、下階側の外壁パネル1の建方を行った後、上階側の外壁パネル2の建方を行っていく過程において、上側外壁面材9の固定板10を下側外壁面材5の差し込み部12に上から下へと差し込んでいくというようにして行う。
【0021】
この建方の過程において、固定板10は、差し込み部12の直上に位置させる必要はなく、図1(イ)に示すように、差し込み部12に対して屋外側に偏心していても、誘導板部11cの上方に位置してさえいれば、固定板10は、下降過程でにおいて、誘導板部11cの上面傾斜面に当接して差し込み部12の側に滑っていき、図1(ロ)に示すように、差し込み部12内に差し込まれる。
【0022】
また、固定板10の下端部が誘導板部11cの上面傾斜面に当接して誘導板部11cが下方に押されても、該誘導板部11cは垂下板部11dに支えられ、下方に変形してしまうことはなく、誘導板部11cにしっかりとした誘導を行わせることができる。
【0023】
しかる後、図1(ハ)に示すように、上下の外壁面材5,9間の横目地空間部7内に乾式の横目地材13を取り付ける。横目地材13は、横目地7の屋外側開口部をカバーする部分13aと、上側外壁面材9の下端面と保持金物11の誘導板部11cとの間を通じて奥方に差し込まれる部分13bとを備えたものからなっていて、差し込まれる部分13bの先端部には引掛け部13cが備えられ、該引掛け部13cが、保持金物11の誘導板部11cと上側外壁面材9の下端面との間の奥拡がり空間部14を掛止空間部とし、該掛止空間部14内に嵌め込まれて掛止状態に取り付けられる。
【0024】
このように上記の固定構造によれば、下階側の外壁パネル1の建方後の、上階側の外壁パネル2の建方の過程において、該外壁パネル2の外壁面材9の下端部から下方に突出している固定板10を、下階側外壁パネル1の水受け板6の正面側に保持金物11によって形成した差し込み部12に差し込んでいくだけで、上側外壁面材9の下端部を固定することができ、固定を施工容易に行うことができる。
【0025】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、上階側外壁パネル2の外壁面材9を上側外壁面材とした場合を示したが、下階側外壁パネルの外壁面材と上階側外壁パネルの外壁面材との間に階間の外壁面材を設置する場合は、階間の外壁面材の下端部の固定に適用することも可能である。また、第5発明は、階間に限らず、上下に隣り合って配置される上下の外壁面材における上側外壁面材の下端部の固定に広く適用することができるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態の固定構造を示すもので、図(イ)〜図(ハ)は、施工の手順を順次に示す要部拡大側面図である。
【図2】図(イ)は固定状態に断面側面図、図(ロ)は固定のための施工方法を示す断面側面図である。
【図3】水受け板(ベース板)と固定板を分離状態にして示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1…下階側外壁パネル
5…下側外壁面材
6…水受け板(ベース板)
7…横目地
9…上側外壁面材
10…固定板
11…保持金物
11b…差し込み板部
11c…誘導板部
11d…垂下板部
12…差し込み部
13…横目地材
14…掛止空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階側の外壁パネルの外壁面材の上端部背面側に、該外壁面材よりも上方に突出するベース板が取り付けられると共に、
上側の外壁面材の下端部背面側に、該外壁面材よりも下方に突出する固定板が取り付けられ、
ベース板の正面側に固定板を沿わせた状態に保持する金物がベース板の正面側に取り付けられ、
該保持金物は、ベース板との間に固定板を差し込む上向き開放の差し込み部を形成する差し込み板部を備え、該差し込み部に固定板が差し込まれ、該差し込みによって、固定板がベース板の正面側に沿わされた状態に保持されており、その保持作用によって上側の外壁面材の下端部が固定されていることを特徴とする階間部における上側外壁面材下端部の固定構造。
【請求項2】
前記保持金物における差し込み板部の上端部に、上下の外壁面材間の横目地空間部内において屋内側から屋外側に向けて斜め上方に傾斜する差し込み誘導板部が連設され、固定板を該誘導板部に誘導させて差し込み部に差し込むことができるようになされている請求項1に記載の階間部における上側外壁面材下端部の固定構造。
【請求項3】
前記誘導板部の先端部に垂下板部が連設され、該垂下板部の下端部が下側の外壁面材の上端面に当接することによって誘導板部の先端側が支えられるようになされている請求項2に記載の階間部における上側外壁面材下端部の固定構造。
【請求項4】
上下の外壁面材間に、乾式の横目地材が、前記保持金物の誘導板部と上側外壁面材の下端面との間の奥拡がり空間部を掛止空間部として取り付けられている請求項2又は3に記載の階間部における上側外壁面材下端部の固定構造。
【請求項5】
下側の外壁面材の上端部背面側に、該外壁面材よりも上方に突出するベース板が取り付けられると共に、
上側の外壁面材の下端部背面側に、該外壁面材よりも下方に突出する固定板が取り付けられ、
ベース板の正面側に固定板を沿わせた状態に保持する金物がベース板の正面側に取り付けられ、
該保持金物は、ベース板との間に固定板を差し込む上向き開放の差し込み部を形成する差し込み板部を備え、該差し込み部に固定板が差し込まれ、該差し込みによって、固定板がベース板の正面側に沿わされた状態に保持されており、その保持作用によって上側の外壁面材の下端部が固定されていることを特徴とする上側外壁面材下端部の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−133188(P2010−133188A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312059(P2008−312059)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】