説明

隠蔽試験紙及び補修用着色塗料の色調確認方法

【課題】 調色工程に要する時間を削減することができる、隠蔽試験紙及びそれを用いた色調確認方法を提供する。
【解決手段】 補修用着色塗料の調色工程において用いられる隠蔽試験紙であって、グレー部分及びシルバー部分を有し、上記グレー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率は、上記シルバー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率の0.8〜1.2倍である隠蔽試験紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠蔽試験紙及び補修用着色塗料の色調確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体等の外観の意匠性が重要となる製品は、顔料を含むベース塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜を有することが一般的である。自動車外板等の、このような複層塗膜面に発生した損傷の補修は、通常、損傷部位を中心にその周辺までサンディングし、パテ付けした後、プライマーサーフェーサー塗装を行い、損傷部位ではない部分の塗色と同一色調となるように色合わせした補修用ベース塗料を塗布し、さらに補修用クリヤー塗料を塗布することによって行われる。
【0003】
このような補修用ベース塗料は、損傷部分ではない、補修を施さない部分の塗色と同一色調を有し、かつ、上述のようなプライマーサーフェーサー塗膜等の下地を隠蔽し、補修を施さない部分と視覚的に違和感のない補修塗膜を形成できるものである必要がある。
【0004】
しかしながら、補修時の自動車車体等は新車時とは使用による退色等によって色調が変化しており、補修する者が塗料の色調を調節しながら所望の色を有する補修用ベース塗料を調整する必要がある。このような補修用ベース塗料の調色においては、塗色チェックのために試験紙上に塗装を行い、実際に塗装が行われた場合の塗膜における色調のチェックを行う必要がある。
【0005】
このような色調は、一般に白グレー隠蔽試験紙、JIS K 5600−4−1に規定の隠蔽率試験紙(白黒隠蔽試験紙)等と呼ばれる隠蔽試験紙に補修用ベース塗料を必要に応じて複数回塗り重ねながらチェックする方法が用いられている(特許文献1参照)。これは、隠蔽試験紙上に下地を完全に隠蔽した塗膜を形成して、塗料によって塗膜を形成した場合の塗色を確実に再現するために行われるものである。
【0006】
塗膜の色をチェックする場合に、注意しなければならないのは色のスケによる下地の影響を生じさせないことである。すなわち、薄膜の場合は、下地の色が完全に隠蔽されないために、下地の色が透けて見えてしまい、現実の塗装を行った場合の色を的確に再現できない。下地が完全に隠蔽されれば所望の塗色を完全に再現することができるから、上述したような隠蔽試験紙によって下地の模様が完全に隠蔽された時点をもって試験用塗膜として、これによってどれぐらい塗り重ねれば、どの程度隠蔽できるか等の色調を確認するものである。
【0007】
しかしながら、このような色調確認において補修用ベース塗料を複数回塗り重ねる必要があるため、塗り重ねた回数だけ乾燥工程を複数回行うこととなり、色調確認に要する時間が長くなるという問題があった。特に、近年は環境負荷を低減する目的から、塗料の水性化が図られている。このような水性塗料を用いて上述の調色方法を行うと、従来の溶剤系塗料よりも乾燥に時間を要するために、さらに工程時間が長くなるという問題がある。
【0008】
更に、フリップフロップ性を有する複層塗膜は、観察方向によって明るさを含めた色調が変化するため、下地が完全に隠蔽されたか否かの判断が困難であり、かつ、隠蔽性が低い塗色の場合、下地が完全に隠蔽できるようになる膜厚を得るための重ね塗りの回数も多くなってしまうという問題もある。
【特許文献1】特表2000−510043号公報(実施例1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、調色工程に要する時間を削減することができる、隠蔽試験紙及びそれを用いた色調確認方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、補修用着色塗料の調色工程において用いられる隠蔽試験紙であって、グレー部分及びシルバー部分を有し、上記グレー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率は、上記シルバー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率の0.8〜1.2倍であることを特徴とする隠蔽試験紙である。
【0011】
上記シルバー部分は、フリップフロップ性を有することが好ましい。
上記グレー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率及びシルバー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率は、15%以下であることが好ましい。
上記隠蔽試験紙はグレー部分とシルバー部分とが、市松模様を形成していることが好ましい。
上記隠蔽試験紙は、表面に耐水処理を施されていることが好ましい。
【0012】
本発明は、隠蔽試験紙を使用した補修用着色塗料の色調確認方法であり、上述した隠蔽試験紙に補修用着色塗料を一回又は複数回塗り重ねし、隠蔽試験紙上のグレー部分とシルバー部分とが区別できなくなった時点での塗色によって色調を確認する工程からなる補修用着色塗料の色調確認方法でもある。
【0013】
上記補修用着色塗料の色調確認方法において、上記補修用着色塗料は、フリップフロップ性を有する塗膜を形成することができる塗料であることが好ましい。
上記補修用着色塗料は、水性塗料であってもよい。
上記補修用着色塗料は、自動車および二輪車の車体又は部品用のものであることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の隠蔽試験紙は、グレー部分及びシルバー部分を有し、上記グレー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率は、上記シルバー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率の0.8〜1.2倍である。上記特性を有する隠蔽試験紙を用いることにより、調色工程に要する時間を削減することができるため、より簡易に補修塗装を行うことができるものである。
【0015】
従来、隠蔽試験紙として用いられてきたものは、JIS K 5600−4−の隠蔽率試験紙やこれに倣った図1及び2に示したような白グレー隠蔽試験紙及び白黒隠蔽試験紙と呼ばれる無彩色で構成された隠蔽試験紙である。ここで、無彩色とは、白色、黒色又は白及び黒を混合して得られる色のことである。従来の調色方法では、下地となる、上記無彩色で構成された隠蔽試験紙の模様を完全に隠蔽することができるような塗膜を形成し、これを塗膜の色として補修を施さない部分の塗膜表面の色と比較してきた。このような無彩色で塗りわけられた隠蔽試験紙を用いると、隠蔽試験紙の白部と黒部、又は、白部とグレー部の色差が非常に大きいものであることから、下地が完全に隠蔽された極めて隠蔽度が高い状態になるまで厚く塗装しなければならなかった。
【0016】
フリップフロップ性を有する複層塗膜は、スカシ方向等の斜め方向から観察した際のスケに注意する必要があったため、このような方向からの光も隠蔽するためには、塗膜を厚く塗装する必要があった。更に、フリップフロップ性を有する淡彩色塗膜の場合には、このスケ対策が重要である。
【0017】
本発明の隠蔽試験紙を使用するとこのような問題が解決され、正面方向であってもスカシ方向であっても色の違いがなく、かつ、従来の白黒隠蔽試験紙や白グレー隠蔽試験紙で観測される下地を完全に隠蔽する膜厚よりも薄膜で、実際に補修した時と同様の色調を得ることができ、効率よく色調を確認することができる。このため、調色工程における補修用塗料の塗り重ね回数が低減され、調色工程の簡潔化が容易になる。
【0018】
上記グレー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率、及び、上記シルバー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率について、以下に説明する。上記グレー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率とは、図4に示したとおり、上記表面を105度の角度で測定した波長400〜700nmにおける最高反射率をいい、上記105度の角度とは、上記表面に対して45度の角度の入射光の正反射光の方向を0度として105度の反射光の方向をいう。
上記105度最高反射率は、例えば、型式MA61B(X−rite社製)等の測色計によって測定し決定することができる。
【0019】
上記シルバー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率とは、上記グレー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率と同様にして測定した値をいう。
【0020】
本発明において、上記グレー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率は、上記シルバー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率の0.8〜1.2倍である。上記グレー部分の表面の105度最高反射率を上記範囲とすることにより、調色工程における補修用塗料の塗り重ね回数が低減され、調色工程の簡潔化が容易になる。
【0021】
上記値が0.8未満であると、グレー部分上の塗膜が暗い色に見え、下地を完全に隠蔽するまでの塗り重ね回数が増えてしまうという問題を生じる。上記値が1.2を超えると、グレー部分上の塗膜が明るい色に見え、下地を完全に隠蔽するまでの塗り重ね回数が増えてしまうという問題が生じる。上記値は0.9〜1.1であることがより好ましい。
【0022】
グレー部分及びシルバー部分の105度最高反射率は、15%以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、同一色調にする対象となる、補修を施さない部分の塗膜がフリップフロップ性を有する場合にも好適に対応することができる。上記グレー部分及びシルバー部分の105度最高反射率は、4〜9%であることがより好ましい。さらに、この補修を施さない部分の塗膜が淡彩色であることが好ましい。ここで、上記淡彩色とは、45度における反射率が15%以上を示すものをいう。
【0023】
上記隠蔽試験紙において、上記シルバー部分は、フリップフロップ性を有することが好ましい。フリップフロップ性を有することにより、同一色調にする対象となる、補修を施さない部分に光輝性顔料を含有する塗膜が含まれている場合に好適に対応できるため好ましい。上記フリップフロップ性とは、塗膜を正面方向から見たときとスカシ方向から見たときで異なる明度を有している性能をいう。
【0024】
また、上記グレー部分及びシルバー部分の45度反射率は、グレー部分で4〜9%、シルバー部分で15〜35%の範囲であることが好ましい。この範囲とすることにより、この補修を施さない部分の塗膜が淡彩色である場合に、より好適に対応することができる。
【0025】
上記補修を施さない部分の塗膜表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率は、10%以下であることが好ましい。10%を超えると、塗り重ね回数を削減する効果が小さくなるおそれがある。上記105度最高反射率は、8%以下であることがより好ましい。
【0026】
上記グレー部分およびシルバー部分の色相は特に限定されず、後述の色調確認方法を実施するうえで、その確認の障害とならない程度に色相を有していてもよいが、無彩色であることが好ましい。また、上記グレー部分およびシルバー部分の60度光沢値は、例えば、10以上である。本発明の隠蔽試験紙は、上記条件を満たすグレー部分及びシルバー部分を有するものであれば特に限定されず、その模様は特に限定されない。例えば、図3に示したように、市松模様を挙げることができる。市松模様とする場合、色差計等の使用を考慮して3cm角程度とすることが好ましい。上記模様としては、上記市松模様に限定されるものではなく、例えば、ストライプ等、グレー部分とシルバー部分とが隣接して並んでいるものを挙げることができる。
【0027】
本発明の隠蔽試験紙は、紙等の基材上に上記条件を満たす色を印刷することによって製造することができる。上記紙の種類としては特に限定されず、例えば、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工印刷用紙等を挙げることができる。上記紙の厚さは、取り扱いの容易さから、例えば、0.4〜1.0mmである。このような印刷方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法によって行うことができる。また、水性塗料の色調確認に使用する場合には、紙の膨潤やソリ等を避けるために、耐水処理を施すことが好ましい。耐水処理方法は特に限定されず、耐水コート処理や加圧処理等、公知の方法によって行うことができる。
【0028】
また、本発明は、上述した隠蔽試験紙に補修用着色塗料を一回又は複数回塗布し、隠蔽試験紙上のグレー部とシルバー部とが区別できなくなった時点での塗色によって、塗布膜厚と、隠蔽度合いや色相の把握、所望の塗色かどうか等の色調を確認する工程からなる補修用着色塗料の色調確認方法でもある。上記隠蔽試験紙は、上述の利点を有するため、本発明の色調確認方法は、少ない塗り重ね回数で所望の補修用着色塗料を調色することができる。
【0029】
具体的には、まず、上述した隠蔽試験紙に対して補修用着色塗料を一回塗布し、指触乾燥させた後、下地である隠蔽試験紙上のグレー部とシルバー部とが区別できるかどうかを目視または測色計等を用いて確認する。塗布する方法および膜厚は特に限定されず、例えば、スプレー塗布等、実際に補修作業を行う場合と同一の塗布方法を用いて、乾燥膜厚2〜5μm程度である。この時点で隠蔽試験紙のグレー部分とシルバー部分とが区別できなければ、さらに補修用クリヤー塗料を所定膜厚となるように塗布し、同一色調にするための対象となる補修を施さない塗膜と比較して、色調の確認を行う。この時点で隠蔽試験紙のグレー部分とシルバー部分とが区別できていれば、さらに、補修用着色塗料をもう一回塗布して、一回目と同様にして隠蔽試験紙上のグレー部分とシルバー部分とが区別できなくなるまでこの工程を繰り返す。区別できなくなった時点で、上記一回目での工程と同様に、さらに補修用クリヤー塗料を所定膜厚となるように塗布し、同一色調にするための対象となる補修を施さない塗膜と比較して、色調の確認を行う。
【0030】
上述した隠蔽試験紙は、フリップフロップ性を得られるような塗料の色調確認において特に好適に使用することができるものである。また、上述した隠蔽試験紙を用いると、例えば、補修を施さない部分と補修部分との色調を合わせることが困難である淡彩メタリック色の場合でも下地が完全に隠蔽する膜厚より薄膜で色調確認を行うことができる。そのため、上記補修用着色塗料は、フリップフロップ性を有する塗膜を形成することができるものであることが好ましい。
【0031】
フリップフロップ性を有する塗膜を形成できる補修用着色塗料としては、光輝性顔料を含んでいる。上記光輝性顔料としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム等の金属又は合金等の無着色又は着色された金属製光輝材及びその混合物等を挙げることができる。更に、干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料等もこのなかに含まれるものとする。さらに、当業者によってよく知られる着色顔料等を含んでいてもよい。
【0032】
上記補修用着色塗料は特に限定されず種々のものを用いることができ、比較的低温で硬化するもの、及び、室温で硬化するもの等であることが好ましい。また、上記補修用着色塗料は、溶剤系塗料であっても、水性塗料であってもよい。特に、上述した隠蔽試験紙は、調色工程における補修用着色塗料の塗り重ね回数を低減できるものであるため、補修用着色塗料が水性塗料であっても、要する時間を短くすることができる。
このような補修料着色塗料としては、具体的には、自動車および二輪車の車体または部品用のものを挙げることができる。
【0033】
上記補修を施さない部分がクリヤー塗膜を有する場合、補修部分も補修用着色塗料により補修着色塗膜を形成した後、補修用クリヤー塗膜を形成することが好ましい。したがって、隠蔽試験紙を用いた調色工程においても、補修用着色塗料を塗布した後、さらに補修用クリヤー塗料を塗布して最終的な色調の確認を行うことができる。
上記補修用クリヤー塗料は、例えば、補修を施さない部分のクリヤー塗膜を形成するのに使用したクリヤー塗料と同様のもの、比較的低温で硬化するもの、及び、室温で硬化するもの等を挙げることができる。
【0034】
さらに、上記隠蔽試験紙によって色調確認された補修用着色塗料を用いて、補修を行うことができる。例えば、同一色調にする対象となる塗膜がベース塗膜およびクリヤー塗膜を含んでいる複層塗膜を有する自動車車体、自動車用部品等である場合、補修部分にプライマーサーフェーサーを塗布した後、補修用着色塗料及び補修用クリヤー塗料を塗布することが好ましい。ここで、上記プライマーサーフェーサーの塗色が、波長400〜700nmにおいて、上記複層塗膜の105度最高反射率に対して0.8〜1.2倍となる105度最高反射率を有する無彩色に調整することが好ましい。プライマーサーフェーサーの塗色をこのように調整することにより、下地を完全に隠蔽するまで補修用着色塗料を厚く塗装する必要がなくなり、さらに補修用着色塗料の使用量を減少させ、かつ作業時間を短縮することができ、補修工程におけるコストを削減することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の隠蔽試験紙により、調色工程及び補修塗装工程に要する時間を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味し、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0037】
製造例1
150×200mm、厚さが0.5mmのアート紙に対して、型式MA61B(X−rite社製測色計)を用いて測定した結果が、無彩色のグレー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率が5%、45度反射率が17%となり、かつ、無彩色のシルバー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率が5%、45度反射率が4%となるようにグレー部分とシルバー部分とが3cm角の市松模様に印刷し、図3に示した模様を有する隠蔽試験紙を作成した。なお、各数値は表1に示す。
なお、105度最高反射率は、測定用光源の色温度wp約3000ケルビンに設定し、数学的処理によって設定光源をD65光源、視野を10度とし、コンピュータ解析によって得られた数値データから決定した。
比較対象として、市販の白グレー隠蔽試験紙及びJIS K 5600−4−1に規定の隠蔽率試験紙を使用して、白部、グレー部及び黒部の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率及び45度反射率を、型式MA61Bを用いて測定した。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1
製造例1で得られた隠蔽試験紙に塗色がトヨタ1CO(シルバー色)のnaxオーデベース(日本ペイント社製水性ベース塗料、塗料設計段階において、下地を完全に隠蔽する膜厚、かつ、上層にクリヤー塗膜を形成した複層塗膜での400〜700nmにおける105度最高反射率及び45度反射率は6%及び25%であった。)を、1回の塗布が乾燥膜厚2〜3μmとなるようにスプレー塗布し、得られた塗膜に対して45度の角度の入射光の正反射光の方向を0度として105度の反射光の方向から目視観察して、グレー部分とシルバー部分とで色の差を確認した。色の差がある場合は、さらにnaxオーデベース塗料を塗り重ねて塗布し、色の差がなくなるまで繰り返した。要した塗布回数を表2に示す。比較対象として上記白グレー隠蔽試験紙及び白黒隠蔽試験紙を用いて同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0040】
実施例2〜4
塗色をトヨタ1C0に代えて、表2に示す通りの各色としたこと以外は、実施例1と同様にして、グレー部分とシルバー部分とで目視にて色の差がなくなるまでに要した塗布回数の評価を行った。さらに比較対象として上記白グレー隠蔽試験紙及び白黒隠蔽試験紙を用いて同様の評価を行った。結果を表2に示す。
なお、使用した各色は、それら塗料の設計段階において、完全隠蔽膜厚における塗膜の105度及び45度の最高反射率が予め決定しており、その数値を表2に示す。
使用した各塗色の正式名称は、下記の通りである。
1C0:トヨタシルバー(シルバー色)
1E7:トヨタシルバーマイカ(シルバーマイカ色)
1F2:トヨタプレミアムシルバー(シルバー色)
1D2:トヨタグレーM(グレーシルバー色)
【0041】
【表2】

【0042】
本発明の隠蔽試験紙を用いることにより、少ない塗り重ね回数で調色にかかる工程を短縮を決定することができた。すなわち、本発明の隠蔽試験紙により、調色工程の時間のロスを低減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により、調色工程に要する時間を削減することができる。したがって、水性補修用塗料も好適に使用することができ、環境負荷を低減しつつ、簡潔に調色工程及び補修塗装工程を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】白グレー隠蔽試験紙の概略図である。
【図2】白黒隠蔽試験紙の概略図である。
【図3】本発明の隠蔽試験紙の一例である。
【図4】色相観測方向を示す概略図である。
【符号の説明】
【0045】
1 光源
2 正反射光
3 正面方向
4 スカシ方向
5 塗板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補修用着色塗料の調色工程において用いられる隠蔽試験紙であって、
グレー部分及びシルバー部分を有し、
前記グレー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率は、前記シルバー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率の0.8〜1.2倍である
ことを特徴とする隠蔽試験紙。
【請求項2】
シルバー部分は、フリップフロップ性を有する請求項1記載の隠蔽試験紙。
【請求項3】
グレー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率及びシルバー部分の表面の波長400〜700nmにおける105度最高反射率は、15%以下である請求項1又は2記載の隠蔽試験紙。
【請求項4】
グレー部分とシルバー部分とが、市松模様を形成している請求項1、2又は3記載の隠蔽試験紙。
【請求項5】
表面に耐水処理を施した請求項1,2,3又は4記載の隠蔽試験紙。
【請求項6】
隠蔽試験紙を使用した補修用着色塗料の色調確認方法であり、
請求項1,2,3,4又は5記載の隠蔽試験紙に補修用着色塗料を一回又は複数回塗り重ねし、隠蔽試験紙上のグレー部分とシルバー部分とが区別できなくなった時点での塗色によって色調を確認する工程からなる補修用着色塗料の色調確認方法。
【請求項7】
補修用着色塗料は、フリップフロップ性を有する塗膜を形成することができる塗料である請求項6記載の補修用着色塗料の色調確認方法。
【請求項8】
補修用着色塗料は、水性塗料である請求項6又は7記載の補修用着色塗料の色調確認方法。
【請求項9】
補修用着色塗料は、自動車および二輪車の車体又は部品用のものである請求項6、7又は8記載の補修用着色塗料の色調確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−307477(P2008−307477A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157693(P2007−157693)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】