説明

雄型アセンブリ、雌型アセンブリ、及び留め具

【課題】非平面状の取付面に結合されるが、同時に破損前に高い強度を付与し、数回のサイクルにわたる留め具の反復的な嵌合及び解離に耐え、また、制限的な設計上の制約を回避することができる雄型アセンブリ、雌型アセンブリ、及び留め具を用意する。
【解決手段】雄型及び雌型アセンブリを包含する留め具。雄型及び雌型アセンブリの少なくとも一方は、非平面状の取付面に適合するように撓曲する可撓性ベースを包含する。留め具の反復的な嵌合及び解離に耐える高い強度を付与する技術を用いて、可撓性ベースがスタッド及び/又はソケットに接合される。また、ある実施形態では、スタッドを可撓性ベースに固定する機械的手段(例えば、ねじ山)が、接合技術によって不要となる。ある実施形態による雄型アセンブリは、周知の雄型アセンブリよりも強度が62%高いことが、機械試験から分かっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して取付面に固定される留め具、詳しくは非平面状の面に固定されるとともに周知の留め具よりも高い強度を付与する可撓性ベースを包含する留め具に関連する。
【背景技術】
【0002】
様々な用途において、第1及び第2物品を一緒に固定できる留め具を設けることが望ましい。物品の例は、ボート(船体など)、車両(自動車のグリル、ボンネット、荷室など)、又はデッキやパティオに設けられた風呂やプールの面を含む。他の例は、布製カバー、防水シート、ストラップ、バーを含む。ゆえに、カバーを車両のグリルに、防水シートをピックアップトラックの荷台に、カバーをボートの船体に固定するための留め具を設けることが望ましい。
【0003】
このような留め具は一般的に、ソケットとスタッドとを包含する。ソケットは、ベース部分とベースから突出する収容部分とを含む。同様に、スタッドは、ベースとベースから延出する突出部とを含む。ソケットの収容部分がスタッドの突出部を収容することでスタッドとソケットとが嵌合し、留め具の分離を防止する。ソケットは第1物品の取付面に固定され、スタッドは第2物品の取付面に固定される。ここで使用される際に、「取付面」は、留め具が物品に固定されるところである物品の面を指す。こうして、ソケットは車両のグリルに結合され、スタッドは布製カバーに結合される。スタッドがグリルに結合されてソケットが布製カバーに結合されるように留め具が逆であってもよいことを理解すべきである。参照しやすいように、本開示の背景部分では、他に記載がなければ、「留め具要素」としてスタッド及びソケットに互換的に言及する。
【0004】
留め具要素を取付面に結合するための技術の一つは、取付面に孔を穿設することと、ねじを用いて留め具要素を取付面にクランプすることとを伴う。しかしこの技術は、面に孔を穿設することにより取付面に傷を付けるという重大な短所を持っている。ゆえに、取付面に傷を付けることを回避する代替的な技術が開発されている。
【0005】
このような代替的技術の一つでは、留め具要素を取付面に固定するのに接着剤を使用する。例えば、留め具要素のベース(一般的には平面状の面を有する)が接着剤層で被覆されてから取付面に固定される。取付面が湾曲しているか、その他の非平面状である場合には、強力な接合を設けることは困難である。すなわち、結合時に、留め具要素の平面状ベースと非平面状の取付面との間に間隙が生じるのである。間隙は、留め具要素と取付面との間の接合の強度を低下させる。こうして、留め具が数回のサイクルにわたって反復的に嵌合及び解離された場合には、留め具要素が取付面から引き離されてしまう。(留め具要素を非平面状の取付面に溶接−接着ではなく−する時にも、同じ難点が見られることに注意すべきである。)
【0006】
発明者としてLloyd Demedashが挙げられている特許文献1には、非平面状の取付面に結合するための留め具が記載されている。詳しく述べると、留め具に付着されて、非平面状の取付面の湾曲に合わせて変形する「可撓性取付部材」が特許文献1に記載されている。可撓性取付部材は、留め具に画定された孔と嵌合して可撓性取付部材を留め具に固定するポストを有する。特許文献1には、(可撓性取付部材と留め具とを固定するため)ポストにより付与される力の量は、留め具を解離させる(つまりソケットをスタッドから引き抜く)のに必要な力の量より大きいと教示されている。ゆえに、特許文献1によれば、留め具が数回のサイクルにわたって反復的に嵌合及び解離された時でも、可撓性取付部材は外れない。特許文献1は、カナダ、WinnipegのFIA,Inc.に譲渡され、同社は特許文献1の実施形態を商品化したものだとされているSTICK A STUD(登録商標)を製造している。
【0007】
しかし、特許文献1に記載された留め具(及びSTICK A STUD(登録商標)製品)には、いくつかの短所が見られる。最も顕著なものとしては、STICK A STUD(登録商標)製品に実施された試験で、比較的低い引張強度を受けた時に製品が破損することが確認された。また、可撓性取付部材と留め具との間の装着方法では、望ましくない固有の設計上の制約が加えられる。すなわち、可撓性取付部材のポストにより、留め具に孔が設けられることが必要なのである。留め具にこのような孔を設けることは、必ずしも望ましいわけではない。最後に、ポストが留め具の本体から突出し、これがソケットとスタッドとの適切な嵌合を邪魔する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,797,643号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ゆえに、非平面状の取付面に結合されるが、同時に破損前に高い強度を付与し、数回のサイクルにわたる留め具の反復的な嵌合及び解離に耐え、また、制限的な設計上の制約を回避することができる雄型アセンブリ、雌型アセンブリ、及び留め具を用意することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
記載される例は、可撓性ベースに接合される剛性スタッドを包含する雄型アセンブリである、留め具のための雄型アセンブリを含む。接着剤層が可撓性ベースに設けられることにより、雄型アセンブリを取付面に固定する。取付面が非平面状である場合には、非平面状の取付面に適合するように可撓性ベースが撓曲する。スタッドを可撓性ベースに接合するのに使用される技術は、留め具の反復的な嵌合及び解離に耐える高い強度を付与する。また接合技術により、スタッドを可撓性ベースに固定するため特許文献1で設けられるようなポストの必要性がない。
【0011】
同様に、いくつかの例は、非平面状の取付面に適合するように撓曲する可撓性ベースに接合される剛性ソケットを包含する雌型アセンブリを含む。接合技術により、高い強度が得られ、ソケットを可撓性ベースに固定するための技術的手段が不要になる。可撓性ベースを備える雄型アセンブリと雌型アセンブリの両方を単一の留め具が含むことが必要なわけではなく、アセンブリの一方のみが可撓性ベースを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
雄型アセンブリに実施された機械試験では、特許文献1に記載された留め具よりも62%の強度上昇が見られる。
【0013】
添付の請求項を実施する最適の態様を含み当該技術分野の当業者を対象とする充分かつ実行可能な開示が、以下の明細書でさらに詳しく挙げられる。明細書では以下の添付図が参照され、異なる特徴に同様の参照番号を使用するのは、同様又は類似の要素を図示するためである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】留め具の雄型アセンブリの一実施形態を示す斜視図である。
【図1B】留め具の雄型アセンブリの一実施形態を示す側面図である。
【図1C】留め具の雄型アセンブリの一実施形態を示す平面図である。
【図1D】図1CのA−A線断面図である。
【図2A】図1A〜図1Dに示された雄型アセンブリによるスタッドの一実施形態を示す表側の斜視図である。
【図2B】図1A〜図1Dに示された雄型アセンブリによるスタッドの一実施形態を示す裏側の斜視図である。
【図2C】図1A〜図1Dに示された雄型アセンブリによるスタッドの一実施形態を示す側面図である。
【図2D】図1A〜図1Dに示された雄型アセンブリによるスタッドの一実施形態を示す平面図である。
【図2E】図2DのB−B線断面図である。
【図3A】留め具の雌型アセンブリの一実施形態を示す斜視図である。
【図3B】留め具の雌型アセンブリの一実施形態を示す側面図である。
【図3C】留め具の雌型アセンブリの一実施形態を示す平面図である。
【図3D】図3CのC−C線断面図である。
【図4A】図3A〜図3Dに示された雌型アセンブリによるソケットの一実施形態を示す裏側の斜視図である。
【図4B】図3A〜図3Dに示された雌型アセンブリによるソケットの一実施形態を示す表側の斜視図である。
【図4C】図3A〜図3Dに示された雌型アセンブリによるソケットの一実施形態を示す側面図である。
【図4D】図3A〜図3Dに示された雌型アセンブリによるソケットの一実施形態を示す平面図である。
【図4E】図4DのD−D線断面図である。
【図5】ある実施形態による雄型アセンブリ及び雌型アセンブリを包含する留め具の断面図である。
【図6】非平面状の取付面に固定される、ある実施形態による雄型アセンブリを図示している。
【図7】非平面状の取付面に固定される、ある実施形態による雌型アセンブリを図示している。
【図8】ある実施形態による雄型アセンブリに対して実施された試験結果を示すグラフである。
【図9】特許文献1に記載された製品に対して実施された試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のある実施形態では、留め具100(図5に図示)を形成するため相互に固定される雄型アセンブリ10と雌型アセンブリ40とが設けられる。雄型アセンブリ10は、ベース14から延出する突出部16を包含するスタッド12(図2A〜図2Eに図示)を含む。図2Cに示すように、ベース14はほぼ平面状である。図に示された実施形態において、突出部16は円周方向に連続的に延在するリング形状であるが、他の実施形態では、突出部16は他の形状であってもよく、連続的であってもなくてもよいことを理解すべきである。突出部16は側壁18により画定される。図2Eに示すように、いくつかの実施形態では側壁18は断面が略「U字形」であり(側壁18は必ずしも対称的ではないが)、U字形の側壁18の内側にポケット20を画定するため、突出部16は「中空」であり、ポケット20も円周方向に連続的に延在する。リング形状の突出部16の中央には、中央面22が位置している。中央面22は、突出面16よりも凹んでおり、その凹みは側壁18の内側の面と中央面22とで形成される。
【0016】
雌型アセンブリ40は、収容部分46とベース部分44とを包含するソケット42(図4A〜図4E図示)を含む。図に示された実施形態では、収容部分46はベース部分44よりも大きな直径を有する。収容部分46はベース部分44から延出し、側壁52により画定される。ベース部分44と収容部分46とが当接するところ(境目の部分)には、角部48が形成される。図に示された実施形態では、収容部分46及びベース部分44はともに円形であるが、他の実施形態ではそれぞれの部分44,46が他の形状でもよいことを理解すべきである。図4Cに示すように、ベース部分44は、略平面状である底面50を有する。
【0017】
図5に示すように、ソケット42の収容部分46は、スタッド12の突出部16を収容して機械的締まりばめで固定することで、スタッド12とソケット42とを嵌合させ、留め具100の分離を防止する。ある実施形態において収容部分46は、側壁52の内面に近接してリテーナ54を包含する。リテーナ54は、線材をリング状とした形状で、その外側の直径は、収容部分46の内側の面の直径よりも小さい直径で、かつ内側の直径は、スタッド12の外面の直径よりも小さい直径を持つため、スタッド12の突出部16との機械的締まりばめ(収容部分46にスタッド12が入り込み、スタッド12がリテーナ54を弾性的に拡径し、その後、リテーナ54が弾性復帰することによって係合する)が一層確実となる。リテーナ54は任意に過ぎず、必要とされるわけではないことを理解すべきである。また、リテーナ54の形状もリング状に限らず、収容部分46やベース部分44の形状に合わせて、他の形状でもよいことを理解すべきである。
【0018】
スタッド12及び/又はソケット42は、金属(ステンレス鋼を含むがこれに限定されない)、あるいは硬質又は半硬質プラスチックなど、多様な材料で形成される。金属製である場合、スタッド12及びソケット42は、その最終形状に打抜き加工される。プラスチック製である場合、スタッド12及びソケット42は射出ダイ成形される。
【0019】
ある実施形態において、スタッド12は、可撓性ベース30に結合されて雄型アセンブリ10(図1A〜図1Dに図示)を形成する。同様に、ある実施形態では、ソケット42が可撓性ベース60に結合されて雌型アセンブリ40(図3A〜図3Dに図示)を形成する。各可撓性ベース30,60は、非平面状の取付面110に適合するように撓曲する。可撓性ベース30,60の材質は、スタッド12及びソケット42よりも軟質である。こうして、図6に示すように、雄型アセンブリ10の可撓性ベース30は、非平面状(曲面状)の取付面110(ここではパイプの一部)に適合するように撓曲する。可撓性ベース30の底面32の接着剤層36が、雄型アセンブリ10を取付面110に固定する。同様に図7において、雌型アセンブリ40の可撓性ベース60は取付面110に適合するように撓曲する。可撓性ベース60の底面62の接着剤層66が、雌型アセンブリ40を取付面110に固定する。単一の留め具100が可撓性ベース30,60を備える雄型及び雌型アセンブリ10,40を含む必要はないことを理解すべきである。むしろ、留め具100が、可撓性ベースを含むアセンブリ(雄型アセンブリ10と雌型アセンブリ40のいずれか)を一つのみ備えていてもよい。
【0020】
雄型及び雌型アセンブリ10,40の製造方法について、これから説明する。参照を容易にするため、この説明では雄型アセンブリ10の製造に言及するが、雌型アセンブリ40にも同じ普遍的方法が使用されることを理解すべきである。
【0021】
最初に、スタッド12と可撓性ベース30との間の接合の強化を助けるため、接合剤又は下塗り剤による前処理をスタッド12が受ける。このような接合剤の一つは、VM&Pナフサに水分反応性材料を含む希釈溶液である。Dow−Corning Companyは、Dow−Corning Prime Coat ♯2260の名称でこのような材料を製造している。ある実施形態では、スタッド12が少なくとも15分間、接合剤で処理され、その後で余分な接合剤がスタッド12から取り除かれるか、きれいに拭き取られる。
【0022】
概して、可撓性ベース30は、シリコン、ゴム、又は何らかの可撓性プラスチックで製作される。非限定的な一実施形態では、Dow−Corning TR−70及びQ−44768のエラストマ材料の混合物で可撓性ベース30が製作され、その比率は特定の用途に応じて調節可能である。所望であれば、可撓性ベース30を形成するのに触媒が使用されてもよい。考えられる触媒の一つは、可撓性ベース30が透明であるか着色されているかに応じて異なる形で用意される有機ペルオキシドである。透明な可撓性ベース30については、触媒は、2,5ジメチル−2,5 di/t−ブチルペルオキシ/ヘキサンの化学組成を持つ液状の有機100%ペルオキシドでよい。着色の可撓性ベース30については、50%ペルオキシド粉末状のみで上記の触媒が用意される。上記触媒のいずれも、透明エラストマ用のDBPH−100として、あるいは彩色又は着色エラストマ用のDBPH−50として、Dow−Corning Companyから販売されている。代替的な触媒剤は、白金とスズの化合物を含む。触媒プロセスが完了すると、可撓性ベース30を構成する材料は弾性固体の形となる。ある実施形態では、材料はシートの形状である。所望であれば、雄型アセンブリ10を作るのに多数の層又は厚さが用いられてもよい。
【0023】
次に、可撓性ベース30を構成する材料がスタッド12に接合される。一実施形態において、接合プロセスを補助するため(金型に似た)適当な容器又はホルダが用意される。所望であれば、金型は、スタッド12を収容する「スタッド部分」と、可撓性ベース30を形成する形状である「ベース部分」と、を有する。ベース部分は、特定の形状又は大きさの可撓性ベース30を形成する輪郭を有する。例えば、図1Dに示すように、可撓性ベース30の上面は、スタッド12に対して傾斜し、外側に向かうに従って可撓性ベース30の上面と底面32との間の肉厚が薄くなっている。ゆえに、金型のベース部分はこの特定の角度を作り出す輪郭を持つ。他の実施形態において、可撓性ベース30は異なる角度を持つか、傾斜していないか、あるいはドーム形状などである。金型は、所望の形状又は大きさを持つ可撓性ベース30を作り出す。
【0024】
金型のスタッド部分の内側にスタッド12が載置され、スタッド12のベース14は金型のベース部分と対向している。可撓性ベース30を構成する材料は、金型のベース部分においてスタッド12のベース14の上に直接載置される。次に、可撓性ベース30を構成する材料の上に加熱プレートなどが載置され、プレートに圧力が印加されて材料をスタッド12へ押圧する。ある実施形態では、硬化温度はおよそ340°Fであり、プレートはおよそ2分間、所定箇所に置かれる。加熱及び圧力プロセスにより、可撓性ベース30を構成する材料が溶融する。溶融した材料は金型のベース部分へ流入し、可撓性ベース30の特定形状を形成する。スタッド12がポケット20を備えている場合には、溶融材料がポケット20へ流入して、ポケット20を満たす延出部34を形成する。こうして熱及び圧力により可撓性ベース30がスタッド12に接合されて雄型アセンブリ10が形成される。次に、雄型アセンブリ10からプレートが取り除かれ、可撓性ベース30を構成する余分な材料がトリミングされる。延出部34は、円周方向に連続的にリング形状となっており、延出部34はポケット20(側壁18の内側)に入り込んでいる。延出部34は、円形の雄型アセンブリ10の中心に位置し、可撓性ベース30から突出している。
【0025】
可撓性ベース30とスタッド12との接合により、特許文献1に記載されているように可撓性ベース30にポストを設ける必要がない。接合のすべては、熱及び圧力の印加と、所望であれば接合剤によるスタッド12の前処理によって達成される。ポケット20に嵌着する延出部34を有する実施形態では、接合強度の上昇(特にせん断強度の上昇)も得られる。せん断強度は、可撓性ベース30の表裏方向に沿う方向にスタッド12が引抜かれる場合の強度を表し、側壁18と延出部34との接合面に対してほぼ水平とも言える。
【0026】
接着剤層36が可撓性ベース30の底面32に付着されることで、雄型アセンブリ10を取付面110に固定する。接着剤は、非反応型接着剤と反応型接着剤のいずれかを包含する。使用される接着剤の種類は、基板及び/又は取付面110の大きさによって決定される。当該技術分野の当業者であれば、適当な接着剤を多く知っているだろうが、非限定的な一例は、アクリルフォームの層と接着剤の層とで構成される3M Companyから販売のVHB(登録商標)テープである。VHB(登録商標)テープには、多用途アクリル樹脂(金属、ガラス、表面エネルギーが高いか中程度のプラスチック及び塗料に接合)、変性アクリル樹脂(粉体コーティング塗料など、表面エネルギーの低いプラスチック及び塗料に接合)、又は低温で使用可能なアクリル樹脂(32°Fまで接合)を含むいくつかの種類の接着剤が用意される。VHB(登録商標)テープは、各々が異なるレベルの適合性を各々が持つ数種のフォームで用意されてもよい。所望であれば、可撓性ベース30の底面32が接合剤で前処理を受けるか、接着剤36の塗布に先立って(サンダーなどにより)機械的な変形を受けてもよい。接着剤36は、大気温度及び圧力において可撓性ベース30の底面32に押圧されるだけでよい。すなわち、接着剤36を可撓性ベース30に接合するのに、加熱プラテン及び/又は過度の圧力は必要ないのである。同様に、接着剤36を取付面110に接合するのに、加熱プラテン及び/又は極度の圧力は必要ない。(所望であれば、取付面110に直接、接着剤が塗布されてもよい。)
【0027】
製造方法についての上の説明では雄型アセンブリ10に言及したが、雌型アセンブリ40に同じ方法が使用されてもよいことを理解すべきである。図3に示す実施形態では、ベース部分44が収容部分46と当接するところである角部48をソケット42が備えている。可撓性ベース60を構成する材料が熱及び圧力の印加によって溶融する時には、材料がベース部分44の周囲、角部48、そして収容部分46の少なくとも一部分(収容部分46の外側面で、可撓性ベース60の表裏方向の寸法に対する一部分)へ流れる。可撓性ベース60とソケット42との間の表面積(すなわち、ベース部分44、角部48、そして収容部分46の少なくとも一部分の周囲)の量は、雌型アセンブリ40のせん断強度を上昇させる。せん断強度は、可撓性ベース60の表裏方向に沿う方向にソケット40が引抜かれる場合の強度を表す。
【0028】
留め具100が取付面110に固定されて使用に供される時に、留め具の「破損」点として考えられるのは三つである。すなわち、(1)接着剤36と取付面110、(2)接着剤36と可撓性ベース30の底面32、(3)スタッド12と可撓性ベース30との間である。「破損点」の語は、要素がこの点で分離するか壊れることを意味する。例えば、接着剤36と取付面110との間で留め具100が破損した場合には、接着剤36が取付面110から引き抜かれるか剥ぎ取られることを意味する。最適設計の留め具では、破損を生じさせる力は、留め具100の嵌合及び解離の力よりもはるかに大きい。言い換えると、留め具が嵌合及び解離される時には留め具が破損しないこと、特に反復的サイクル中に留め具が破損しないことが望ましい。ここで説明する留め具100の実施形態では、これらの破損点の各々で強度が向上していることが分かっている。
【0029】
詳しく述べると、STICK A STUD(登録商標)製品(特許文献1の実施形態を商品化したものとされている)と上述したある実施形態による製品(「出願人製品」)とが、強度試験において比較された。試験の一つでは、STICK A STUD(登録商標)製品と出願人製品の両方の直接引張強度試験にInstron Model 4444フォースゲージ(以下、“Instron”)が使用された。両方の製品の試験形態は同じであった。最初に、留め具の雄型アセンブリ(雌型アセンブリは試験を受けなかった)がロッドに固定された。次に、雄型アセンブリのスタッドをクランプするのに、Instronの上方クラップ留め具が使用された。図8(出願人製品の引張強度試験結果)及び図9(STICK A STUD(登録商標)製品の引張強度試験結果)に表されているように、各アセンブリがInstronに周知の距離だけ引っ張られた。各図の黒い三角形は、それぞれの製品が破損した点を指す。図8に示すように、出願人製品は、30.8ポンドの力による負荷(lbf)で破損する前に約0.3インチの距離にわたって引っ張られた。対照的に、STICK A STUD(登録商標)製品は、11.6ポンドの力による負荷(lbf)で破損する前に約0.08インチの距離しか引っ張られなかった。これらの試験結果は、出願人製品はSTICK A STUD(登録商標)製品よりも62%高い強度を呈したことを示している。
【0030】
試験結果では、二つの製品の設計の間の相違も目立っている。出願人製品では、破損点は接着剤36と取付面110との間であった。STICK A STUD(登録商標)製品では、破損点は可撓性取付部材のポストと留め具に画定された孔との間であった。雄型アセンブリ10のどの部分も取付面110に残らないように、(出願人製品でのように)接着剤36と取付面110との間の破損点が好ましい。例えば、STICK A STUD(登録商標)製品は可撓性取付部材と留め具との間で破損するため、可撓性取付部材が取付面に固定されたまま残る。取付面に固定された部品が残るとこれを取り除かなければならず、困難であるため、望ましくない。
【0031】
上記は、発明の実施形態の例示及び開示を目的として設けられたものである。当該技術分野の当業者は、上記を理解すれば、このような実施形態の代替例、変形例、同等物を容易に製造できる。したがって、本開示は限定ではなく例示を目的として提示されており、当該技術分野の当業者には容易に明らかとなる本発明の主題についての変更、変形、及び/又は追加の包含を妨げるものではないことが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0032】
10 雄型アセンブリ
12 スタッド
14 ベース
16 突出部
18 側壁
20 ポケット
22 中央面
30 可撓性ベース
32 底面
34 延出部
36 接着剤層
40 雌型アセンブリ
42 ソケット
44 ベース部分
46 収容部分
48 角部
50 底面
52 側壁
54 リテーナ
60 可撓性ベース
62 底面
66 接着剤層
100 留め具
110 取付面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
留め具のための雄型アセンブリであって、
側壁により画定される少なくとも一つの突出部と、前記側壁の内面により画定される少なくとも一つのポケットと、を包含するスタッドと、
前記スタッドに接合される可撓性ベースであって、前記スタッドの前記少なくとも一つのポケットに嵌着して接合される少なくとも一つの延出部を包含する可撓性ベースと、
を包含し、
非平面状の取付面に適合するように前記可撓性ベースが撓曲可能である、
雄型アセンブリ。
【請求項2】
前記側壁が略U字形であり、前記U字形の側壁の前記内面により前記少なくとも一つのポケットが画定される、請求項1の雄型アセンブリ。
【請求項3】
前記少なくとも一つの突出部が、前記スタッドに連続的に延在するリング形状の突出部である、請求項1の雄型アセンブリ。
【請求項4】
前記少なくとも一つの延出部が、前記可撓性ベースに連続的に延在するリング形状の延出部である、請求項3の雄型アセンブリ。
【請求項5】
シリコンとゴムの少なくとも一方を含む材料で前記可撓性ベースが構成される、請求項1の雄型アセンブリ。
【請求項6】
前記雄型アセンブリを前記取付面に固定するため前記可撓性ベースに付着される接着剤層を更に包含する、請求項1の雄型アセンブリ。
【請求項7】
前記接着剤層が接合剤とVHB(登録商標)テープの少なくとも一方を包含する、請求項6の雄型アセンブリ。
【請求項8】
前記雄型アセンブリが、破損の前に約31(lbf)までの負荷に耐える、請求項1の雄型アセンブリ。
【請求項9】
留め具のための雌型アセンブリであって、
ベース部分と、前記ベース部分から延出する収容部分と、を包含するソケットであって、前記ベース部分と前記収容部分との間に角部が画定される、ソケットと、
前記ソケットに接合される可撓性ベースであって、前記ベース部分、前記角部、及び前記収容部分の少なくとも一部分と接触する可撓性ベースと、
を包含し、
非平面状の取付面に適合するように前記可撓性ベースが撓曲可能である、
雌型アセンブリ。
【請求項10】
前記ソケットの前記ベース部分及び収容部分の各々が円形である、請求項9の雌型アセンブリ。
【請求項11】
前記可撓性ベースが、前記ベース部分、前記角部、及び前記収容部分の前記一部分と接触する、請求項9の雌型アセンブリ。
【請求項12】
前記雌型アセンブリを前記取付面に固定するため前記可撓性ベースに付着される接着剤層を更に包含する、請求項9の雌型アセンブリ。
【請求項13】
前記接着剤層が接合剤とVHB(登録商標)テープの少なくとも一方を包含する、請求項12の雌型アセンブリ。
【請求項14】
シリコンとゴムの少なくとも一方を含む材料で前記可撓性ベースが構成される、請求項9の雌型アセンブリ。
【請求項15】
スタッドと前記スタッドに接合される取付部材とを包含して、側壁により画定される少なくとも一つの突出部と前記側壁の内面により画定される少なくとも一つのポケットとを前記スタッドが包含する、雄型アセンブリであって、前記取付部材の一部分が前記スタッドの前記少なくとも一つのポケットに嵌着して接合される、雄型アセンブリと、
ソケットと前記ソケットに接合される取付部材とを包含して、前記スタッドの前記突出部を収容することで雌型アセンブリを前記雄型アセンブリに嵌合させる収容部分を前記ソケットが包含する、雌型アセンブリと、
を包含し、
非平面状の取付面に適合するように前記雄型アセンブリの前記取付部材が撓曲可能である、
留め具。
【請求項16】
前記雄型アセンブリが、破損の前に約31(lbf)までの負荷に耐える、請求項15の留め具。
【請求項17】
シリコンとゴムの少なくとも一方を含む材料で前記雄型アセンブリの前記取付部材が構成される、請求項15の留め具。
【請求項18】
前記雄型アセンブリの前記取付部材と前記雌型アセンブリの前記取付部材との少なくとも一方に付着される接着剤層を更に包含する、請求項15の留め具。
【請求項19】
非平面状の取付面に適合するように前記雌型アセンブリの前記取付部材が撓曲可能である、請求項15の留め具。
【請求項20】
前記ソケットが、ベース部分と、前記ベース部分と前記収容部分との間に画定される角部と、を更に包含し、
前記取付部材が、前記ベース部分、前記角部、及び前記収容部分の少なくとも一部分と接触する、請求項15の留め具。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−63010(P2012−63010A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178000(P2011−178000)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】