説明

集光性多発色団を用いてポリヌクレオチドを検出及び分析するための方法並びに組成物

標的ポリヌクレオチドについてサンプルをアッセイするための方法、組成物及び製品を提供する。標的ポリヌクレオチドの含有が疑われるサンプルを、ポリカチオン多発色団、及び該標的ポリヌクレオチドに対して相補的なセンサポリヌクレオチドと接触させる。センサポリヌクレオチドは、励起された多発色団からのエネルギーを受容し、前記標的ポリヌクレオチドの存在下で発光を増大するシグナル伝達発色団を含む。本方法は、マルチプレックス形式で用いることができる。かかる方法を実施するための試薬を含むキットもまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中のポリヌクレオチドを検出及び分析するための方法、物、並びに組成物に関する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明に至るまでの研究は、米国国立衛生研究所から付与された助成金番号GM62958-01、米国国立科学財団から付与された助成金番号DMR-0097611及び米国海軍研究事務所から付与された助成金番号N00014-98-1-0759の下で実施した。米国政府は本発明に関して一定限度の権利を持つものとする。
【背景技術】
【0003】
リアルタイムで感度の高いDNA配列検出を可能にする方法は、科学的及び経済的に重要である1,2,3。それらの用途としては、医学的診断、遺伝子突然変異の同定、遺伝子送達のモニタリング及び特定のゲノム技術が挙げられる4。臭化エチジウム及びチアゾールオレンジなどのカチオン有機色素は、2本鎖DNA(dsDNA)の溝内に挿入されると発光し、直接DNAハイブリダイゼーションプローブとして機能するものの、配列特異性に欠けている5,6。鎖特異的アッセイ用のエネルギー/電子移動発色団対が存在するが、これらは2つの核酸の化学標識、又は同一改変鎖の二重修飾(例えば、分子ビーコン)を必要とする7,8。2箇所のDNA部位を標識するのは困難であるため、収率が低くなり、コストが嵩み、さらに一方だけが標識された不純物が生じたりして、結果的に検出感度が低下する9
【0004】
サンプル中の特定のポリヌクレオチドを検出及び分析するための方法、並びにかかる方法に有用な組成物及び製品が当分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出及びアッセイするための方法、組成物並びに製品を提供する。
【0006】
標的ポリヌクレオチドの含有が疑われるサンプルを、ポリカチオン多発色団、及び該標的ポリヌクレオチドに対して相補的なセンサポリヌクレオチドと接触させる。センサポリヌクレオチドは、アニオン骨格(典型的な糖リン酸骨格など)を含み、シグナル伝達発色団(signaling chromophore)と共役している。サンプル中に標的ポリヌクレオチドが存在する場合、シグナル伝達発色団は、励起されたポリカチオン多発色団からエネルギーをより効率的に獲得し、その量が増大した検出可能な光又はシグナルを発することができる。標的ポリヌクレオチドは、サンプル中に存在する形で分析してもよいし、あるいは分析に先立って、又は分析と同時に増幅してもよい。
【0007】
アニオンセンサは標的の不在下でカチオン多発色団と結合することができるが、標的ポリヌクレオチドが結合して二本鎖複合体を形成した際には、非相補性配列の混合物から発せられるシグナルと比較してそのシグナルが増大することが見いだされた。このシグナルの増大は、サンプル中の標的ポリヌクレオチドについてアッセイするための検出方法において有用となりうる。
【0008】
本発明の方法を実施する際に有用な試薬を含む溶液を、かかる試薬を含有するキットとして提供する。また、多発色団及びセンサポリヌクレオチドから形成されるセンサ複合体(sensing complex)又は検出複合体、並びに標的ポリヌクレオチドをさらに含むシグナル伝達複合体を提供する。該方法は、複数の異なるセンサポリヌクレオチドを使用して複数の異なる標的ポリヌクレオチドをアッセイするマルチプレックス環境で使用することができる。該方法は、任意により表面上で、例えば表面に会合させたポリカチオン多発色団を用いて実施することができる(つまり、該表面をセンサとすることができる)。また、該方法を均一フォーマットで提供することもできる。本明細書中に記載した方法及び物は、ポリヌクレオチドを検出するための他の技術に代わるものとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
DNA及びRNAセンサ(「ジーン・チップ」及び「DNAチップ」を含む)に関する現在の技術は、1本鎖DNAへの蛍光タグ(発光団(lumophore))の共有結合に依存しており、サンプル又はサンプル成分の標識に頼らざるを得ないが、サンプル間の標識反応効率のばらつきを原因とする問題を回避できないため、複雑な相互校正が必要となる。他の系は多重標識プローブ(例えば分子ビーコン、Taqman(登録商標)、Scorpion(登録商標)プローブ、Eclipse(登録商標)プローブ)に基づいているが、この場合、正確に設計された配列に発光団と消光団(quencher)を多数付加する必要がある。
【0010】
本発明の方法は、サンプルを、水性溶液中で少なくとも2つの成分:(a)例えば,水溶性の、共役ポリマー、半導体量子ドット又は樹脂状構造などのポリカチオン集光性発光多発色団系;及び(b)発光シグナル伝達発色団と共役させたセンサオリゴヌクレオチド(オリゴ−Cと称する)、と接触させることを含む。シグナル伝達発色団特有の光波長を有する発光は、溶液中の該センサポリヌクレオチドと相補的な塩基配列を有する標的ポリヌクレオチドの存在を示唆している。それぞれに異なる塩基配列及び異なるシグナル伝達発色団を有する多数のセンサポリヌクレオチド(オリゴ−C、オリゴ−Cなど)を使用することで、それぞれ特異的な塩基配列を有する多数のポリヌクレオチドを別個に検出することができる。センサポリヌクレオチドからポリヌクレオチド特異的色素へエネルギーを移動することにより選択性を改善するため、ポリヌクレオチド特異的色素などの第3の成分を導入してもよい。
【0011】
集光性発色団及びシグナル伝達発色団(C)は、これら2つの種の発色団の吸収バンドのオーバーラップが最小となるように、またこれら2つの種の発光スペクトルが異なる波長を持つように、選択する。水溶液中で調製する場合、集光性発光多発色団系は正に帯電している(例えば、正電荷共役高分子電解質である)。負に荷電したセンサポリヌクレオチドと正に荷電した集光性発光多発色団系との間の近接性は静電気引力により満たされる。集光発色団の吸収バンドにおける波長による突然の照射に曝露された場合、例えばForsterエネルギー移動機構を介して、シグナル伝達発色団から発光が生じる。センサポリヌクレオチドの塩基配列に対して相補的な配列を有する標的ポリヌクレオチド、例えば一本鎖DNA(ssDNA)などを添加した場合、ssDNAはセンサポリヌクレオチドとハイブリダイズし、DNA鎖に沿って負電荷の密度が増大する10,11。これらの状況では、厳密な静電力を考慮すると、センサポリヌクレオチドと正に荷電した集光性多発色団系との相互作用が好ましいと考えられ、効率的なエネルギー移動とシグナル伝達発色団からの強い発光がもたらされる。センサポリヌクレオチドの塩基配列に対して相補的ではない配列を有するssDNAを添加した場合、塩基対のハイブリダイゼーションは起こらず、集光性多発色団とセンサポリヌクレオチドとの間の静電による複合体形成は非相補性ssDNAとの競合によりスクリーニングされる。従って、集光性多発色団系とオリゴ−Cとの間の平均距離は非相補的配列の存在下では広すぎるため、シグナル伝達発色団へのエネルギー移動はあまり効率的ではない。シグナル伝達オリゴ−Cの発光は、非相補性鎖が存在する場合よりもその相補的な標的の存在下において強力である。この全体的なスキームは、試験溶液中の特異的な塩基配列を有する標的ポリヌクレオチドの存在のためのセンサを提供する。それぞれが異なる塩基配列と異なるシグナル伝達発色団を有する多数のセンサポリヌクレオチドを用いることにより、多数の標的を別々に検出することができる。
【0012】
前記の方法に加えて、本発明は、少なくとも2つの成分、すなわち(a)カチオン多発色団、及び(b)シグナル伝達発色団に共役させたアニオンポリヌクレオチドを含む「センサポリヌクレオチド」(オリゴ−C)、を含む、主に水性の溶液を提供する。
【0013】
実施例中で示すように、共役ポリマーなどの水溶性多発色団により提供される光増幅を利用してセンサポリヌクレオチドへのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出することができる。該増幅は、より分子量の高い水溶性共役ポリマー又は他の構造を本明細書中に記載のポリカチオン多発色団として使用することによって増進できる。本発明は、蛍光検出方法の容易さを利用する均一フォーマットで提供することができる。本発明を使用すれば増幅された標的ポリヌクレオチドを検出することができるし、又は本発明が大きなシグナルの増幅であることから、ポリヌクレオチドを増幅する必要の無い独立したアッセイとして使用することができる。
【0014】
ジーン・チップ技術とは異なり、本発明は、分析に先立ってサンプル中に含有されているか又はサンプルから得たポリヌクレオチドに発光団又は発色団を共有結合させることにより分析しようとする各サンプルを最初に標識することは必ずしも必要ではない。それらの結合方法では結合効率を再現することが本質的に困難であるため、サンプル間の相互校正が必要となる。
【0015】
本明細書中に記載した発明は、サンプルを標的ポリヌクレオチドについて調べることのできるアッセイであれば、そのいずれにとっても有用である。典型的なアッセイではサンプル中の標的ポリヌクレオチドの存在若しくはその相対量を決定することを必要とするので、該アッセイは定量的なものであっても半定量的なものであってもよい。
【0016】
本発明の方法は、その全てをマルチプレックス・フォーマットで実施することができる。複数の異なるセンサポリヌクレオチドを使用することにより、各センサポリヌクレオチドに共役させた異なるシグナル伝達発色団を利用してサンプル中の対応する異なる標的ポリヌクレオチドを検出することができる。対応する異なる標的ポリヌクレオチドについてアッセイするために同時に使用しうる2、3、4、5、10、15、20、25、50、100、200、400個又はそれ以上の異なるセンサポリヌクレオチドを用いるマルチプレックス方法を提供する。
【0017】
前記方法は基板上並びに溶液中で実施することができるが、溶液フォーマットは拡散するためにより迅速であると予想される。従って、前記アッセイを、例えば基板上のアレイフォーマット(これをセンサとすることができる)で実施することができる。これはアッセイ成分(例えば、センサポリヌクレオチド、ポリカチオン多発色団、若しくはその両方)を基板上に固定するか又は別の方法で組み込むことにより達成できる。これらの基板は、ガラス、シリコン、紙、プラスチックの表面、又は光電子変換器として用いられる光電子半導体(例えば、限定するものではないが、インジウム添加窒化ガリウム又は高分子ポリアニリンなど)の表面であってもよい。所与のセンサポリヌクレオチドの位置は、公知の位置であってもアレイフォーマットで決定しうる位置であってもよく、また該アレイフォーマットはマイクロアドレスを指定可能なもの(microaddressable)であってもナノアドレスを指定可能なもの(nanoaddressable)であってもよい。1つの変形において、増幅産物を含み得る1以上のサンプルを基板に結合させ、その基板を1以上の標識したセンサポリヌクレオチド及びポリカチオン多発色団と接触させる。
【0018】
本発明をさらに詳しく記載する前に、本発明は記載されている特定の方法論、道具、解決策又は装置に限定されないことを理解されたい。何故なら、かかる方法、道具、解決方策又は装置は、当然変更しうるからである。また、本明細書中で使用する用語は、単に特定の実施形態を記載することを目的としたものであって、本発明の範囲を限定するものではないことも理解されたい。
【0019】
単数形「a」、「an」及び「the」を使用する場合、文中で特に明確に指定しない限り、複数形の表現が含まれているものとする。従って、例えば「標的ポリヌクレオチド(a target polynucleotide)」という表現には複数の標的ポリヌクレオチドが含まれ、「シグナル伝達発色団(a signaling chromophore)」という表現には複数のかかる発色団が含まれ、また「センサポリヌクレオチド(a sensor polynucleotide)」という表現には複数のセンサポリヌクレオチドが含まれ、他についても同様である。さらに、「2つの(two)」、「3つの(three)」などの具体的な複数形の表現を使用する場合には、文中で特に明確に指定しない限り、多数の同一物を指すものと解釈する。
【0020】
「接続(connected)」、「付加(attached)」及び「連結(linked)」などの用語は本明細書中では同義的に使用されるものとし、また文中で特に明確に指示しない限り、直接的並びに間接的な接続、付加、連結又は共役を包含するものとする。ある数値範囲が示された場合、示された該範囲の上限値と下限値の間にある各整数、及びそれら各々の分数もまた、かかる数値間の各下位範囲と共に具体的に開示されるものと理解されたい。どんな範囲の上限値及び下限値であっても、それらを別個に該範囲内に含めること、又は該範囲から除外することが可能であり、これらの限界値の一方を含む範囲、いずれも含まない範囲、又は両方を含む範囲もまた本発明に包含されるものとする。議論されている数値が固有の限界値を有する場合、例えばある成分が0〜100%の濃度で存在しうる場合、又は水溶液のpHが1〜14まで変動しうる場合、それらの固有の限界値は具体的に開示されているものとする。ある数値が明示された場合、示された数値とほぼ同数又は同量の数値もまた、それらの数値を根拠とする範囲として本発明の範囲に含まれるものと理解されたい。ある組み合わせが開示された場合、その組み合わせの要素からなる下位の組み合わせ各々もまた、具体的に開示され、かつ本発明の範囲に含まれるものとする。逆に、異なる要素又は要素集団が開示された場合、それらの組み合わせもまた開示されるものとする。複数の代替物を有するある発明のいずれかの要素が開示された場合、各代替物が別々に、又は他の代替物とのいずれかの組み合わせで除外されている該発明の実施例もまた、本明細書中に開示されるものとする。ある発明の2つ以上の要素がかかる除外を受ける可能性があり、かかる除外を受けた要素の全ての組み合わせが本明細書中に開示されるものとする。
【0021】
特に定義しない限り、又は文中で特に明確に指定しない限り、本明細書中で使用する全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野において通常の知識を有する者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に記載した方法及び材料と類似又は同等のものはいずれも本発明を実施又は試験する際に使用できるが、好適な方法及び材料は本明細書中に記載されている。
【0022】
本明細書中で言及した全ての刊行物は、それらを参照するきっかけとなった特定の材料及び方法論を開示しかつ記載することを目的として、参照により本明細書に含めるものとする。本明細書中で議論されている刊行物は、本出願の出願日に先立ってそれらを開示するためだけに提供されたものである。本明細書の如何なる内容も、本発明が、それらが先行発明であるという理由で、かかる開示に先行する資格を持たないことを認めたものと解釈されるべきではない。
【0023】
定義
本発明を説明するにあたって次の用語を使用するが、これらは以下の通りに定義されるものとする。
【0024】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」及び「核酸分子」という用語は、本明細書中ではある長さを有するヌクレオチドのポリマー形態を指すために同義的に使用されるものとし、また該用語にはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、その類似体、又はそれらの混合物が含まれるものとする。これらの用語は分子の1次構造のみを指す。従って、前記用語には、3本鎖、2本鎖及び1本鎖のデオキシリボ核酸(「DNA」)、並びに3本鎖、2本鎖及び1本鎖のリボ核酸(「RNA」)が含まれる。また、例えばアルキル化及び/又はキャッピングにより修飾された形態のポリヌクレオチド、及び非修飾形態のポリヌクレオチドも含まれる。
【0025】
修飾されているか否かに関わらず、センサポリヌクレオチドはアニオン性であり、標的ポリヌクレオチオドの存在下でカチオン多発色団と相互作用することができる。標的ポリヌクレオチドは、原則的には、電荷を有していてもよいし又は有していなくてもよいが、典型的にはアニオン性であり、例えばRNA又はDNAであると予測される。
【0026】
より詳しく述べると、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」及び「核酸分子」という用語には、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む)、例えばスプライシングを受けたか又は受けていないtRNA、rRNA、hRNA、及びmRNAを含むポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む)、プリン又はピリミジン塩基のN−又はC−配糖体である他のタイプのポリヌクレオチド、リン酸又は他のポリアニオン骨格を含む他のポリマー、並びに他の合成配列特異的核酸ポリマー(ただし、該ポリマーは、DNA及びRNA中に見出されるような塩基対の形成と塩基のスタッキングを可能にする立体配置をとる核酸塩基を含有するものとする)が含まれる。用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」及び「核酸分子」に関しては、長さの区別を意図しておらず、これらの用語は本明細書中で互換的に用いられる。これらの用語は分子の一次構造のみに関する。従って、これらの用語には、例えば3’−デオキシ−2’,5’−DNA、オリゴデオキシリボヌクレオチドN3’P5’ホスホルアミデート、2’−O−アルキル−置換RNA、2本鎖及び1本鎖DNA、2本鎖及び1本鎖RNA、並びに例えばDNAとRNAとのハイブリッドを含むそれらのハイブリッドが含まれ、さらに公知のタイプの修飾物、例えば標識によるもの、アルキル化によるもの、「キャップ」によるもの、1つ以上のヌクレオチドがその類似体で置換されたもの、ヌクレオチド間修飾物、例えば負に帯電した連結によるもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、例えばタンパク質(ヌクレアーゼなどの酵素、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシンなどを含む)などの付属部分を含有するもの、インターカレート剤(例えばアクリジン、ソラレンなど)によるもの、キレート(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属などのキレート)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された連結によるもの(例えば、αアノマー核酸など)、並びに非修飾形態のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドも含まれる。
【0027】
本明細書中で使用する場合、「ヌクレオシド」及び「ヌクレオチド」という用語には、公知のプリン及びピリミジン塩基だけでなく他の修飾された複素環式塩基も含有する部分が含まれることが理解されよう。かかる修飾物としては、メチル化プリン若しくはピリミジン、アシル化プリン若しくはピリミジン、又は他の複素環が挙げられる。また、修飾されたヌクレオシド又はヌクレオチドとしては、その糖部分が修飾されたもの、例えば1つ以上のヒドロキシル基がハロゲン、脂肪族基と置き換えられているか、又はエーテル、アミンなどとして機能化されているものも挙げることができる。「ヌクレオチド単位」という用語は、ヌクレオシド及びヌクレオチドを包含するものとする。
【0028】
さらに、ヌクレオチド単位に対する修飾としては、それぞれに相補的なピリミジン又はプリンとの水素結合を形成するプリン若しくはピリミジン塩基上の官能基の再配置、付加、置換又は別の方法による変更が挙げられる。その結果得られる修飾ヌクレオチド単位は、任意で、同様に修飾した他のヌクレオチド単位(ただしA、T、C、G又はU以外)と塩基対を形成していてもよい。ポリヌクレオチドの機能を妨げない脱塩基部位が含まれていてもよいが、好ましくは、ポリヌクレオチドは脱塩基部位を含まない。ポリヌクレオチド中の一部又は全ての残基は、任意で、1つ以上の方法で修飾することができる。
【0029】
標準的なA−T及びG−C塩基対は、チミジンのN3−H及びC4−オキシとそれぞれアデノシンのN1−及びC6−NH2との間、並びにシチジンのC2−オキシ、N3及びC4−NH2とそれぞれグアノシンのC2−NH2、N’−H及びC6−オキシとの間に水素結合が形成されうる条件下で形成される。従って、例えば、グアノシン(2−アミノ−6−オキシ−9−β−D−リボフラノシル−プリン)を修飾することにより、イソグアノシン(2−オキシ−6−アミノ−9−β−D−リボフラノシル−プリン)を形成してもよい。かかる修飾により、もはやシトシンとの標準的な塩基対を効果的に形成することのないヌクレオシド塩基が生成する。しかし、シトシン(1−β−D−リボフラノシル−2−オキシ−4−アミノ−ピリミジン)を修飾することによりイソシトシン(l−β−D−リボフラノシル−2−アミノ−4−オキシ−ピリミジン)を形成すれば、グアノシンとの塩基対を効果的に形成することはないがイソグアノシンとの塩基対を形成する修飾ヌクレオチドが生成する。イソシトシンはSigma Chemical Co.(St. Louis, MO)から入手可能であり、イソシチジンはSwitzeret al. (1993) Biochemistry 32:10489-10496及びその文中で引用された参考文献に記載の方法により調製してもよく、2’−デオキシ−5−メチル−イソシチジンはToret al. (1993) J. Am. Chem. Soc. 115:4461-4467及びその文中で引用された参考文献に記載の方法により調製してもよく、またイソグアニン・ヌクレオチドはSwitzeret al. (1993) 上掲、及びMantschet al. (1993) Biochem. 14:5593-5601に記載の方法を利用して、又はCollinsらに発行された米国特許第5,780,610号に記載の方法により調製してもよい。他の非天然塩基対は、2,6−ジアミノピリミジン及びその相補体(1−メチルピラゾロ−[4,3]ピリミジン−5,7−(4H,6H)−ジオン)の合成についてPiccirilli et al. (1990) Nature 343:33-37に記載された方法により合成してもよい。固有の塩基対を形成する他のかかる修飾ヌクレオチド単位、例えばLeach et al. (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:3675-3683及びSwitzer et al. 上掲、に記載されたものが知られている。
【0030】
「示差結合」又は「示差ハイブリダイゼーション」とは、あるポリヌクレオチド又はPNAがサンプル中のその相補配列に結合する傾向が、該サンプル中の非相補的ポリマーに結合する傾向に比べて高いことを指す。
【0031】
ハイブリダイゼーション条件としては、典型的には約1M未満、より通常は約500mM未満、好ましくは約200mM未満の塩濃度が挙げられる。ペプチド核酸とポリアニオンポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの場合、該ハイブリダイゼーションは殆ど又は全く塩を含有しない溶液中で行うことができる。ハイブリダイゼーション温度は最低で5℃とすることができるが、典型的には22℃より高く、より典型的には約30℃より高く、好ましくは約37℃を上回る温度とする。断片が長くなるにつれて、特異的ハイブリダイゼーションのためにより高いハイブリダイゼーション温度が必要となる場合がある。他の要因が塩基組成及び相補鎖の長さ、有機溶媒の存在及び塩基ミスマッチ形成の程度を含むハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える場合があり、また使用するパラメータの組み合わせはいずれか1つのみの絶対基準よりも重要である。所定のアッセイ形式のための好適なハイブリダイゼーション条件は、当業者であれば決定することができ、調整可能なパラメータの例としては、限定するものではないが、アッセイ成分の濃度、使用する塩とその濃度、イオン強度、温度、緩衝液の種類及び濃度、溶液のpH、バックグラウンド結合を減らすためのブロッキング試薬(反復配列又はブロッキングタンパク質溶液など)の存在及び濃度、洗浄液の種類及び濃度、ポリヌクレオチドの相対濃度を高めるポリマーなどの分子、金属イオン及びそれらの濃度、キレート剤及びそれらの濃度、並びに当分野で公知の他の条件が含まれる。
【0032】
本明細書中でいう「マルチプレックス」とは、多数の被分析物を同時にアッセイしうるアッセイ又は他の分析方法を指す。
【0033】
「任意の」又は「任意で」とは、続いて記載される事象又は状況が生じても生じなくてもよいこと、またその記載には該事象又は状況が生じる場合と生じない場合とが含まれることを意味する。
【0034】
サンプル
標的ポリヌクレオチドを含んでいるか又は含んでいることが疑われるサンプルの一部は、直接的又は間接的に生物(例えば細胞、組織又は体液)から取得できるポリヌクレオチド、並びに生物が残した物(例えばウイルス、マイコプラズマ及び化石)から取得できるポリヌクレオチド、を含む生体材料のうちのいずれかをその供給源とすることができる。サンプルは、その全部又は一部を合成手段により調製した標的ポリヌクレオチドを含んでいてもよい。典型的には、サンプルは、主に水性の媒体として取得するか、又は該媒体中に分散させる。サンプルの非限定的な例としては、血液、尿、精液、乳、痰、粘液、口腔内の採取物、膣内の採取物、直腸内の採取物、吸引物、針生検、例えば外科手術又は検視解剖により得られた組織切片、血漿、血清、髄液、リンパ液、皮膚、気道、腸管、及び尿生殖路の外分泌物、涙、唾液、腫瘍、器官、in vitro細胞培養成分のサンプル(細胞培養培地における細胞増殖の結果得られた条件培地、ウイルスに感染したと推定される細胞、組換え細胞、及び細胞成分を含むがこれらに限定されない)、並びにポリヌクレオチド配列を含む組換えライブラリが挙げられる。サンプルは、本明細書に記載されるように、基板上に提示されてもよい。基板は、サンプルを含むスライド、例えば蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)に使用されるものなどでありうる。
【0035】
サンプルは、標的ポリヌクレオチド又はその代用物を含有することが知られている陽性対照サンプルとすることができる。また、標的ポリヌクレオチドを含有することは期待されていないが、該標的ポリヌクレオチド又は偽陽性を呈しうる別の成分を(1つ以上の試薬の汚染を介して)含有することが疑われており、かつ所与のアッセイで使用された試薬の標的ポリヌクレオチドによる汚染が無いことを確認したり、所与のセットのアッセイ条件が偽陽性(サンプル中に標的ポリヌクレオチドが存在しない場合でも陽性のシグナル)を呈するか否かを決定したりするために試験される陰性対照サンプルを使用することもできる。
【0036】
サンプルを希釈、溶解、懸濁、抽出又は別の方法で処理することにより、存在する標的ポリヌクレオチドを可溶化及び/若しくは精製するか、又は該標的ポリヌクレオチドが増幅スキームで使用する試薬若しくは検出試薬に接近しやすくすることができる。サンプルが細胞を含有している場合、該細胞を溶解又は透過処理することにより該細胞内のポリヌクレオチドを放出させることができる。ワンステップ透過処理用緩衝液を使用して細胞を溶解すれば、溶解直後にさらに別の工程(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)を実施することができる。
【0037】
標的ポリヌクレオチド及び該標的ポリヌクレオチドから生成された増幅産物
標的ポリヌクレオチドは1本鎖、2本鎖、又はより高次のものであってよく、直鎖状又は環状であってもよい。1本鎖標的ポリヌクレオチドの例としては、mRNA、rRNA、tRNA、hnRNA、ssRNA又はssDNAウイルスゲノムが挙げられるが、これらのポリヌクレオチドは内部に相補配列及び重要な二次構造を含有していてもよい。2本鎖標的ポリヌクレオチドの例としては、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、dsRNA又はdsDNAウイルスゲノム、プラスミド、ファージ、及びウイロイドが挙げられる。標的ポリヌクレオチドは合成により調製することができるし、又は生物源から精製することができる。標的ポリヌクレオチドを精製することにより、サンプルの1つ以上の望ましくない成分を取り除くか若しくは減らしてもよいし、又は該標的ポリヌクレオチドを濃縮してもよい。逆に、標的ポリヌクレオチドが特定のアッセイにとって濃縮されすぎている場合には、該標的ポリヌクレオチドを希釈してもよい。
【0038】
サンプルの収集と任意の核酸抽出を行った後、標的ポリヌクレオチドを含むサンプルの核酸部分を1つ以上の調製反応に供することができる。これらの調製反応としては、in vitro転写(IVT)、標識、断片化、増幅及び他の反応が挙げられる。検出及び/又は増幅に先立って、mRNAを最初に逆転写酵素とプライマーで処理することにより、cDNAを作製することができる。この処理は、精製mRNAを用いてin vitroで、又はin situで(例えばスライドに貼り付けられた細胞又は組織内で)行うことができる。核酸増幅によって標的ポリヌクレオチドなどの対象配列のコピー数が増える。様々な増幅方法が使用に適しており、例えば限定されるものではないが、好適な増幅反応としては、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、自律的配列複製(3SR)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、Qβレプリカーゼの使用、逆転写、ニックトランスレーションなどが挙げられる。
【0039】
標的ポリヌクレオチドが1本鎖である場合、最初の増幅サイクルで該標的ポリヌクレオチドに対して相補的なプライマー伸張産物が形成される。標的ポリヌクレオチドが1本鎖RNAである場合、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼを最初の増幅で使用することによりRNAをDNAへと逆転写し、追加の増幅サイクルを実施することにより、プライマー伸張産物を複製することができる。PCR用のプライマーは、当然、増幅しうる断片を生成するそれらの対応する鋳型内の領域にハイブリダイズするよう設計されていなければならない。従って、各プライマーは、その3’ヌクレオチドが、使用した該プライマーの3’ヌクレオチドの3’側に位置するその相補的鋳型鎖中のヌクレオチドとの対を形成することによって、PCRにおいて該相補的鋳型鎖を複製するようにハイブリダイズしなければならない。
【0040】
典型的には、標的ポリヌクレオチドの1つ以上の鎖をプライマー及び適切な活性を有するポリメラーゼと接触させて該プライマーを伸張し、また同時に該標的ポリヌクレオチドを複製し、それによって相補的ポリヌクレオチドの全長又はその小部分を生成することにより、標的ポリヌクレオチドを増幅する。標的ポリヌクレオチドを複製しうるポリメラーゼ活性を有する酵素(例えばDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、1種以上のポリメラーゼ活性を有する酵素)はいずれも使用可能であり、また該酵素は熱不安定性なもの又は熱安定性なものとすることができる。酵素の混合物を使用することもできる。酵素の例としては、DNAポリメラーゼ(DNAポリメラーゼI(「Pol I」)、Pol Iのクレノウ断片、T4、T7、Sequenase(登録商標)T7、Sequenase(登録商標)バージョン2.0 T7、Tub、Taq、Tth、Pfx、Pfu、Tsp、Tfl、Tli及びパイロコッカスsp.(Pyrococcus sp)のGB-D DNAポリメラーゼなど)、RNAポリメラーゼ(大腸菌(E. coli)、SP6、T3及びT7 RNAポリメラーゼなど)、並びに逆転写酵素(AMV、M-MuLV、MMLV、RNアーゼH-MMLV(SuperScript(登録商標))、SuperScript(登録商標) II、ThermoScript(登録商標)、HIV-1、及びRAV2逆転写酵素など)が挙げられる。これらの酵素は全て市販されている。多数の特異性を備えたポリメラーゼの例としては、RAV2及びTli(エキソ)ポリメラーゼが挙げられる。熱安定性ポリメラーゼの例としては、Tub、Taq、Tth、Pfx、Pfu、Tsp、Tfl、Tli及びパイロコッカスsp.(Pyrococcus sp.)のGB-D DNAポリメラーゼが挙げられる。
pH、緩衝液、イオン強度、1種以上の塩の存在及び濃度、ヌクレオチド及びマグネシウム及び/又は他の金属イオン(例えばマンガン)などの反応物質及び補因子の存在及び濃度、任意の共溶媒、温度、ポリメラーゼ連鎖反応を含む増幅スキームのための熱サイクルプロフィールを含む適切な反応条件は、標的ポリヌクレオチドの増幅が可能となるように選択するが、その一部は使用するポリメラーゼ及びサンプルの性質に左右される可能性がある。共溶媒としては、ホルムアミド(典型的には約2〜約10%)、グリセロール(典型的には約5〜約10%)、及びDMSO(典型的には約0.9〜約10%)が挙げられる。増幅スキームにおいて技術を駆使することにより、増幅中に生成する偽陽性の物質又は人工物の生成を最小限に抑えてもよい。これらの技術としては、「タッチダウン」PCR、ホットスタート技術、nestedプライマーの使用、又はデザイニングPCRプライマーが挙げられるが、これらはプライマー−ダイマーが形成されるとステムループ構造を形成するので、増幅されない。PCRを促進するための技術、例えば、サンプル内をより大きく対流させることが可能であって、かつサンプルを急速に加熱及び冷却するための赤外線加熱工程を含む遠心PCRを使用することができる。1回以上の増幅サイクルを実施することができる。あるプライマーを過剰に使用するとPCRで該プライマーの伸張産物を過剰に生成することができるが、好ましくは、過剰に生産された該プライマー伸張産物は検出しようとする増幅産物である。複数の異なるプライマーを使用することにより、サンプル中の異なる標的ポリヌクレオチド又は特定の標的ポリヌクレオチドの異なる領域を増幅してもよい。
【0041】
増幅された標的ポリヌクレオチドを増幅後の処理に供してもよい。例えば、場合によっては、ハイブリダイゼーション前に標的ポリヌクレオチドを断片化しておくことで、より容易に接近しうるセグメントを提供することが望ましいだろう。核酸の断片化は、実施しようとするアッセイに役立つサイズの断片を生成する方法により実施可能であり、また適切な物理的、化学的及び酵素的方法が当分野で公知である。
【0042】
増幅反応は、ある増幅サイクルの少なくとも一過程中にセンサポリヌクレオチドが増幅産物にハイブリダイズしうる条件下で実施することができる。アッセイをこのように実施する場合、増幅スキーム中のかかるハイブリダイゼーション時に生じるシグナル伝達発色団からの発光の変化を観察することにより、このハイブリダイゼーション事象のリアルタイム検出を行うことができる。
【0043】
ポリカチオン多発色団
集光性多発色団系は、それらが多数の発色団を含むという理由で効率的な光吸収材であることが証明されている。具体例としては、限定するものではないが、共役ポリマー、共役分子の集合体、飽和ポリマーに付加された発光色素、半導体量子ドット及び樹枝状構造が挙げられる。例えば、共役ポリマー上の各繰り返し単位は発色団の1つと考えることができるし、量子ドットは多くの原子で構成されており、飽和ポリマーはその側鎖上の多くの発光色素分子により機能化しうるし、また多くの共有結合された個々の発色団を含有するデンドリマーを合成することができる。ポリマービーズ又は表面などの固形支持体上への発色団集合体の付加を、集光目的で利用することもできる。
【0044】
集光性多発色団系は、近接する発光種(例えば、「シグナル伝達発色団」)へエネルギーを効率的に移動することができる。エネルギー移動の機構としては、例えば、共鳴エネルギー移動(Forster型(又は蛍光)共鳴エネルギー移動、すなわちFRET)、量子電荷交換(Dexter型エネルギー移動)などが挙げられる。しかし通常は、これらのエネルギー移動機構はその移動距離が比較的短い。つまり、効率的なエネルギー移動のためには、集光性多発色団系がシグナル伝達発色団に密接していることが必要とされる。効率的なエネルギー移動のための条件下では、集光性多発色団系中の個々の発色団の数が多いとシグナル伝達発色団からの発光が増幅される。つまり、シグナル伝達発色団からの発光は、入射光(「ポンプ光」)が集光性多発色団系により吸収される波長を持つ場合のほうが、該シグナル伝達発色団がポンプ光により直接励起される場合よりも強い。
【0045】
共役ポリマー(CP)は非局在化した電子構造を特徴とし、化学及び生物標的に対する高反応性の光レポーターとして使用することができる12,13。効果的な共役の長さはポリマー鎖の長さよりも実質的に短いため、その骨格には密接し合う多数の共役セグメントが含まれている。従って、共役ポリマーは集光にとって効率的であり、また該共役ポリマーによりFroster型エネルギー移動を介した光増幅が可能となる14
【0046】
カチオン高分子電解質とDNAとの間の自発的なポリマー間複合体形成反応については既に記載されており、また該反応は協同静電気力によるところが大きい15,16,17。芳香族ポリマー単位とDNA塩基との間の疎水性相互作用もまた最近になって認められた18,19。高分子電解質/DNA相互作用の自由エネルギーは、pH、イオン強度、及び温度などの溶液の可変要素と併せて使用する参加化学種の構造によって制御される20。これらの相互作用の強さ及び特異性は、最近になって、プラスミドDNAの三次構造を認識するように調整された21
【0047】
本発明で使用する多発色団はポリカチオン性であり、センサポリヌクレオチドと静電気的に相互作用しうる。光を吸収しかつセンサポリヌクレオチド上のシグナル伝達発色団にエネルギーを移動しうるポリカチオン多発色団はいずれも、前記の方法に使用することができる。使用しうる多発色団の例としては、多数の発色団を実行可能な様式で組み入れた共役ポリマー、飽和ポリマー又はデンドリマー、及び半導体ナノ結晶(SCNC)が挙げられる。共役ポリマー、飽和ポリマー及びデンドリマーを調製することにより複数のカチオン種を組み入れることができるし、又はこれらを合成後に誘導体化してポリカチオン性とすることができる。半導体ナノ結晶は、その表面にカチオン種を加えることでポリカチオン性とすることができる。
【0048】
好適な実施形態では、共役ポリマーをポリカチオン多発色団として使用する。その具体例を、カチオン水溶性共役ポリマーがヨウ化物対アニオンを有するポリ((9,9−ビス(6’−N,N,N−トリメチルアンモニウム)−ヘキシル)−フルオレンフェニレン)である構造1(以後はポリマー1と記す)22に示す。このポリマーの粒径は、該ポリマーが光を吸収しかつ接近したシグナル伝達発色団へエネルギーを移動しうる限りは重要ではない。「n」の典型的な値は2〜約100,000の範囲内にある。この特有の分子構造は重要ではなく、適度な発光量子効率を有する水溶性カチオン共役ポリマーであればいずれも使用することができる。
【化1】

【0049】
水溶性共役オリゴマーをポリカチオン多発色団として使用することもできる。ヨウ化物対イオンを有する、かかる水溶性でカチオン性の発光共役オリゴマーの1例(本明細書中ではオリゴマー2と記す)を以下に示す。
【化2】

【0050】
より小さいオリゴマー2は高分子量ポリマーに特徴的な大きなシグナル増幅を示さないが、かかる小分子は、ポリマーに見られる固有の多分散性及びバッチ間変動のせいで判別しにくい構造物性相関を解明する際に役に立つ。さらに、水性媒体中では2などのオリゴマーはそれらのポリマー対応物より溶けやすく、また疎水性相互作用は、2の場合はポリマー構造の場合ほど重要ではないと予想される。従って、オリゴマーの集合体は特定の用途に用いるのに望ましいだろう。有機溶媒、例えば水混和性有機溶媒(エタノールなど)を添加することにより、バックグラウンドのC発光を低減させうる。有機溶媒の存在は、疎水性相互作用を低減し、バックグラウンドのC発光を低減しうる。
【0051】
センサポリヌクレオチド
アッセイしようとする標的ポリヌクレオチドに対して相補的であり、かつ所定の配列を有するアニオン性のセンサポリヌクレオチドを提供する。センサポリヌクレオチドは分岐状、多重結合型又は環状でありうるが、典型的には直鎖状であり、また非天然塩基を含有しうる。所望の塩基配列を有するセンサポリヌクレオチドを調製することができる。シグナル伝達発色団をセンサポリヌクレオチドに付加するための化学的手法は当技術分野で周知である23。発色団に共役させた構造を含む特定のセンサポリヌクレオチド構造は、商業的供給源を利用して特注するか、又は化学的に合成することができる。
【0052】
シグナル伝達発色団
本明細書中に記載した本発明に有用な発色団としては、適切な溶液中のポリカチオン多発色団からのエネルギーを吸収し、かつ発光しうる全ての物質が挙げられる。マルチプレックス式アッセイの場合、検出可能な程度に異なる発光スペクトルを有する複数の異なるシグナル伝達発色団を使用することができる。発色団は、発光団であっても、又は蛍光団であってもよい。典型的な蛍光団としては、蛍光色素、半導体ナノ結晶、ランタニド・キレート、及びポリヌクレオチド特異的色素が挙げられる。
【0053】
蛍光色素の例としては、フルオレセイン、6-FAM、ローダミン、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、カルボキシローダミン、カルボキシローダミン6G、カルボキシロードル(carboxyrhodol)、カルボキシローダミン110、カスケードブルー、カスケードイエロー、クマリン、Cy2(登録商標)、Cy3(登録商標)、Cy3.5(登録商標)、Cy5(登録商標)、Cy5.5(登録商標)、Cy-クロム、フィコエリトリン、PerCP(ペリオジニンクロロフィル−プロテイン)、PerCP-Cy5.5、JOE(6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン)、NED、ROX(5−(及び−6)−カルボキシ−X−ローダミン)、HEX、ルシファーイエロー、マリナブルー、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)430、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)660、Alexa Fluor(登録商標)680、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸、BODIPY(登録商標)FL、BODIPY(登録商標)FL-Br2、BODIPY(登録商標)530/550、BODIPY(登録商標)558/568、BODIPY(登録商標)564/570、BODIPY(登録商標)576/589、BODIPY(登録商標)581/591、BODIPY(登録商標)630/650、BODIPY(登録商標)650/665、BODIPY(登録商標)R6G、BODIPY(登録商標)TMR、BODIPY(登録商標)TR、それらの共役体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ランタニド・キレートの例としては、ユウロピウム・キレート、テルビウム・キレート、及びサマリウム・キレートが挙げられる。
【0054】
多種多様な蛍光半導体ナノ結晶(SCNC)が当分野で公知であり、半導体ナノ結晶を生成及び利用する方法は、1999年5月27日に公開されたPCT公報第WO 99/26299号(発明者はBawendiら)、1999年11月23日にWeissらに発行された米国特許第5,990,479号、及びBruchez et al., Science 281:2013, 1998に記載されている。明確な発光波長ピークを有する非常に幅の狭い発光バンドを呈する半導体ナノ結晶を得ることができるため、多数の異なるSCNCを同一アッセイにおいてシグナル伝達発色団として(任意で他の非SCNC型のシグナル伝達発色団と組み合わせて)用いることが可能となる。
【0055】
ポリヌクレオチド特異的色素の例としては、アクリジンオレンジ、アクリジンホモ二量体、アクチノマイシンD、7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD)、9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン(ACMA)、BOBOTM-1ヨージド(462/481)、BOBOTM-3ヨージド(570/602)、BO-PROTM-1ヨージド(462/481)、BO-PROTM-3ヨージド(575/599)、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール,ジヒドロクロリド(DAPI)、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール,ジヒドロクロリド(DAPI)、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール,ジラクテート(DAPI,ジラクテート)、ジヒドロエチジウム(ヒドロエチジン)、ジヒドロエチジウム(ヒドロエチジン)、ジヒドロエチジウム(ヒドロエチジン)、エチジウムブロマイド、エチジウムジアジドクロリド、エチジウムホモ二量体-1(EthD-1)、エチジウムホモ二量体-2(EthD-2)、エチジウムモノアジドブロマイド(EMA)、ヘキシジウムヨージド、ヘキスト33258、ヘキスト33342、ヘキスト34580、ヘキストS769121、ヒドロキシスチルバミジン、メタンスルホネート、JOJOTM-1ヨージド(529/545)、JO-PROTM-1ヨージド(530/546)、LOLOTM-1ヨージド(565/579)、LO-PROTM-1ヨージド(567/580)、NeuroTraceTM435/455、NeuroTraceTM500/525、NeuroTraceTM515/535、NeuroTraceTM530/615、NeuroTraceTM640/660、OliGreen、PicoGreen(登録商標)ssDNA, PicoGreen(登録商標)dsDNA、POPOTM-1ヨージド(434/456)、POPOTM-3ヨージド(534/570)、PO-PROTM-1ヨージド(435/455)、PO-PROTM-3ヨージド(539/567)、ヨウ化プロピジウム、RiboGreen(登録商標)、SlowFade(登録商標)、SlowFade(登録商標)Light、SYBR(登録商標)Green I、SYBR(登録商標)Green II、SYBR(登録商標)Gold,、SYBR(登録商標)101、SYBR(登録商標)102、SYBR(登録商標)103、SYBR(登録商標)DX、TO-PRO(登録商標)-1、TO-PRO(登録商標)-3、TO-PRO(登録商標)-5、TOTO(登録商標)-1、TOTO(登録商標)-3、YO-PRO(登録商標)-1(オキサゾールイエロー)、YO-PRO(登録商標)-3, YOYO(登録商標)-1、YOYO(登録商標)-3、TO, SYTOX(登録商標)Blue、SYTOX(登録商標)Green、SYTOX(登録商標)Orange、SYTO(登録商標)9、SYTO(登録商標)BC、SYTO(登録商標)40、SYTO(登録商標)41、SYTO(登録商標)42、SYTO(登録商標)43、SYTO(登録商標)44、SYTO(登録商標)45、SYTO(登録商標)Blue、 SYTO(登録商標)11、SYTO(登録商標)12、SYTO(登録商標)13、SYTO(登録商標)14、SYTO(登録商標)15、SYTO(登録商標)16, SYTO(登録商標)20, SYTO(登録商標)21、SYTO(登録商標)22、SYTO(登録商標)23、SYTO(登録商標)24、SYTO(登録商標)25、SYTO(登録商標)Green、SYTO(登録商標)80、SYTO(登録商標)81、SYTO(登録商標)82、SYTO(登録商標)83、SYTO(登録商標)84、SYTO(登録商標)85、SYTO(登録商標)Orange、SYTO(登録商標)17、SYTO(登録商標)59、SYTO(登録商標)60、SYTO(登録商標)61、SYTO(登録商標)62、SYTO(登録商標)63、SYTO(登録商標)64、SYTO(登録商標)Red、ネトロプシン、ジスタマイシン、アクリジンオレンジ、3,4-ベンゾピレン、チアゾールオレンジ、TOMEHE、ダウノマイシン、アクリジン、ペンチル-TOTAB、及びブチル-TOTINが挙げられる。不斉シアニン色素は、ポリヌクレオチド特異的色素として用いることができる。目的の他の色素としては、Geierstanger, B.H. and Wemmer, D.E., Annu. Rev. Vioshys. Biomol. Struct. 1995, 24, 463-493;Larson, C.J. and Verdine, G.L., Bioorganic Chemistry: Nucleic Acids, Hecht, S.M., Ed., Oxford University Press: New York, 1996; pp 324-346;及びGlumoff, T. and Goldman, A. Nucleic Acids in Chemistry and Biology, 2nd ed., Blackburn, G.M. and Gait, M.J., Eds., Oxford University Press: Oxford, 1996, pp375-441により記載されているものが挙げられる。ポリヌクレオチド特異的色素は、挿入色素であってもよく、二本鎖ポリヌクレオチドに特異的でありうる。他の色素及び蛍光は、www.probes.com(Molecular Probes, Inc.)に記載されている。
【0056】
「緑色蛍光タンパク質」という用語は、天然のイクオレア(Aequorea)緑色蛍光タンパク質と、変更された励起及び発光最大値並びに異なる形状の励起及び発光スペクトルを含む、変更された蛍光特性を示すことが確認されている変異型(Delagrave, S. et al. (1995) Bio/Technology 13:151-154; Heim, R. et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:12501-12504; Heim, R. et al. (1995) Nature 373:663-664)の両方を指す。Delgraveらは、励起スペクトルが赤方偏移しているクローン化オワンクラゲ(Aequorea victoria)GFPの変異体を単離した(Bio/Technology 13:151-154 (1995))。Heim, R.らは、青色蛍光を有する変異体(Tyr66がHisに変異している)を報告した(Proc. Natl. Acad. Sci. (1994) USA 91:12501-12504)。
【0057】
1つの変形において、第2のシグナル伝達発色団であって、別のアッセイ成分及び/又は基板に直接又は間接的に結合しているものを、最初のシグナル伝達発色団からのエネルギーを受容するために用い得る。特定の用途においては、これにより、有意なさらなる選択性が提供されうる。例えば、ポリヌクレオチド特異的色素は、最初のシグナル伝達発色団又は第2のシグナル伝達発色団として用いることができ、また二本鎖配列に特異的でありうる。次にエネルギーは、標的に選択的な全体のフォーマットにおいて、励起されたカチオン多発色団から最初のシグナル伝達発色団へ移動し、これが次に第2のシグナル伝達発色団にエネルギーを移動させる。シグナル伝達発色団のカスケードは、原則的に、適合可能な吸収及び発光プロファイルを有する任意の数のシグナル伝達発色団の使用にまで拡張することができる。この変形の一実施形態において、二本鎖ポリヌクレオチドに特異的な挿入色素を第2シグナル伝達発色団として用いて、第2シグナル伝達発色団にエネルギーを移動可能な最初のシグナル伝達発色団をセンサポリヌクレオチドに共役させる。挿入色素は、センサポリヌクレオチドと標的ヌクレオチドがハイブリダイズした後に検出複合体に利用される(recruit)付加的な選択要件をもたらす。標的の存在下において、二本鎖が形成され、色素が利用され、そして多発色団の励起によって第2シグナル伝達発色団からのシグナル伝達が起こる。
【0058】
基板
本明細書に記載の方法は、種々の形式のいずれかで基板上で行うことができる。基板は、多様な材料、生物学的材料、非生物学的材料、有機材料、無機材料、又はこれらのいずれかの組み合わせを含みうる。例えば、基板は、重合したラングミュアー・ブロジェット膜、機能性ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO2、SiN4、修飾シリコン、又は多種多様なゲル若しくはポリマー((ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチドコグリコリド)、ポリ酸無水物、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセタート)、ポリシロキサン、高分子シリカ、ラテックス、デキストランポリマー、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、アガロース、ポリ(アクリルアミド)、若しくはそれらの組み合わせ)のうちのいずれか1つであってよい。導電性ポリマー及び光伝導性材料を使用することができる。
【0059】
基板は、シリカベースの基板(例えばガラス、石英など)などの平面結晶基板、又は例えば半導体及びマイクロプロセッサ産業で使用される結晶基板(例えばシリコン、ガリウムヒ素、インジウム添加GaNなど)とすることが可能であり、半導体ナノ結晶がこれに含まれる。
【0060】
基板は、光ダイオード、光半導体チップ若しくは光薄膜半導体などの光電センサ、又はバイオ素子の形態をとりうる。基板上の個々のセンサポリヌクレオチドの位置は、そのアドレスを指定可能なものとすることができる。これは高密度フォーマットで行うことが可能であり、またその位置はマイクロアドレスが指定可能なもの、又はナノアドレスが指定可能なものとすることができる。
【0061】
シリカ・エーロゲルを基板として使用することも可能であり、これは当分野で公知の方法により調製することができる。エーロゲル基板を自立基板として、又は別の基板材料用の表面塗料として使用してもよい。
【0062】
基板はどんな形態もとりうるが、典型的にはプレート、スライド、ビーズ、ペレット、ディスク、粒子、ミクロ粒子、ナノ粒子、より糸、沈殿物、任意で多孔質のゲル、シート、チューブ、球体、容器、毛管、パッド、薄片、フィルム、チップ、マルチウェルプレート又は皿、光ファイバーなどである。基板は、硬質又は半硬質の形態をとることもできる。基板はセンサポリヌクレオチド又は他のアッセイ成分が配置された凸又は凹領域を含んでいてもよい。基板の表面を周知技術を用いてエッチング処理することにより、所望の表面特徴、例えば溝、V溝、メサ構造などを提供することができる。
【0063】
基板上の表面は、基板と同一の材料で構成するか又は別の材料から作製することが可能であり、また該表面を化学的若しくは物理的手段により基板上に結合することができる。このように結合された表面は、多種多様な材料、例えばポリマー、プラスチック、樹脂、多糖、シリカ又はシリカベースの材料、カーボン、金属、無機ガラス、膜のうちのいずれか、又は前記基板材料のうちのいずれかで構成されていてもよい。表面を任意で透明にすることができるし、また該表面にシリカ表面で見られるような表面Si−OH機能を持たせることもできる。
【0064】
基板及び/又はその任意の表面は、使用する合成及び/又は検出方法にとって適切な光学特性を提供するように選択する。基板及び/又は表面を透明にすることで、複数の方向から当てた光に基板を曝露することができる。反射「鏡」構造を備えた基板及び/又は表面を提供することにより光の回収率を高めてもよい。
【0065】
基板及び/又はその表面は、通常、使用時に曝露される条件に対して耐性であるか又は耐性となるよう処理されており、該基板及び/又はその表面を任意で処理することによりかかる条件に曝露した後の耐性材料を除去することができる。
【0066】
センサポリヌクレオチドは、適切な方法、例えば米国特許第5,143,854号、PCT公報第WO 92/10092号、1990年12月6日に出願された米国特許出願第07/624,120号(既に放棄されている)、Fodor et al., Science, 251: 767-777 (1991)、及びPCT公報第WO 90/15070号に記載された方法により、基板上で組み立てるか又は基板に付加することができる。力学的合成方法を利用してこれらのアレイを合成するための技術は、例えばPCT公報第WO 93/09668号及び米国特許第5,384,261号に記載されている。
【0067】
さらに別の技術としては、PCT出願第PCT/US93/04145号に記載されているようなビーズを用いる技術、及び米国特許第5,288,514号に記載されているようなピンを用いる方法が挙げられる。
【0068】
センサポリヌクレオチドを基板へ付加する際に適用しうる追加的フローチャネル法(additional flow channel)又はスポット法は、1992年12月20日に出願された米国特許出願第07/980,523号及び米国特許第5,384,261号に記載されている。試薬は、(1)所定の領域上の定められたチャネル内を流れることにより、又は(2)所定の領域上に「スポット」することにより、基板へと送達される。親水性又は疎水性の被膜(溶媒の性質によって決まる)などの保護被膜を、時には他の領域ではこの反応液による加湿を容易にする材料と共に、保護しようとする基板の一部に対して使用することができる。このようにして、流動溶液がその指定された流路の外に流れ出すのをさらに防ぐ。
【0069】
典型的なディスペンサーとしては、任意でロボット制御されているマイクロピペット、インクジェットプリンタ、一連のチューブ、多岐管、数多くのピペットなどが挙げられ、これらにより種々の試薬を連続して、又は同時に、反応領域へ送達することができる。
【0070】
発色団の励起及び検出
ポリカチオン多発色団を励起することが可能であって、かつ検出しようとする発光波長よりも短い波長を提供する道具は、いずれも励起のために使用することができる。好ましくは、励起源はシグナル伝達発色団を直接的には有意に励起しない。励起源は、適切なフィルタを備えた重水素ランプなどの広帯域UV光源、キセノンランプ又は重水素ランプなどの白色光源が所望の波長を取り出すための単色光分光器を通過した後の出力、持続波(cw)気体レーザー、固体ダイオードレーザー、又はいずれかのパルスレーザーであってもよい。シグナル伝達発色団からの発光はいずれかの適切な装置又は技術を介して検出することが可能であり、多くの適切なアプローチが当分野で公知である。例えば、蛍光光度計又は分光光度計を使用することにより、多発色団を励起した場合に試験サンプルがシグナル伝達発色団に特徴的な波長の光を放出するか否かを検出してもよい。
【0071】
キット
本発明の方法を実施する際に有用な試薬を含むキットもまた提供する。ある実施形態では、キットには、対象の標的ポリヌクレオチドに対して相補的な1本鎖センサポリヌクレオチドとポリカチオン多発色団が含まれている。センサポリヌクレオチドはシグナル伝達発色団と共役している。サンプル中に標的ポリヌクレオチドが存在する場合、センサポリヌクレオチドは該標的とハイブリダイズし、シグナル伝達発色団からのエネルギーの発光の増大が生じ、これを検出することができる。
【0072】
キットの成分は、ハウジング(housing)により維持することができる。キットを使用して本発明の方法を実施するための使用説明書は、ハウジングと共に提供することができるし、又は何らかの固定媒体中に提供することができる。使用説明書をハウジングの内側又は外側に配置したり、またハウジングを形成している表面の内部又は外部に印刷したりすることにより、該使用説明書を読みやすくしてもよい。キットは、対応する異なる標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズしうる複数の1つ以上の異なるセンサポリヌクレオチドを含有するマルチプレックス形式であってもよい。
【0073】
以下の実施例は、当業者に本発明の作製方法及び用途についての十分な説明を提供するために記載されているのであって、本発明とみなされるものの範囲を制限するものではない。使用する数字(例えば量、温度など)の精度を裏付けるための努力が為されてはいるが、多少の実験誤差及び偏差は考慮すべきである。特に指示しない限り、部は重量部、温度はセ氏度、及び圧力は大気圧前後であり、また全ての材料は市販されているものとする。
【実施例1】
【0074】
FRETスキームの同定
集光性多発色団系からシグナル伝達発色団へのエネルギー移動を用いたハイブリダイゼーション試験を、カチオン水溶性共役ポリマーであるポリ((9,9−ビス(6’−N,N,N−トリメチルアンモニウム)−ヘキシル)−フルオレンフェニレン)、ヨウ化物対アニオンを有するポリマー1を用いて実証した。センサポリヌクレオチド配列は5’-GTAAATGGTGTTAGGGTTGC-3’であり、これは炭素菌(バチルス・アントラシス)胞子被胞プラスミドpX02に対応し、その5’位にフルオレセインを有し、オリゴ−Cの一例を形成する24。ポリマー及びシグナル伝達発色団の吸収及び発光スペクトルを図1に示す。データは、DNAとフルオレセインの吸収の間に、ポリマー1の励起のための光学ウィンドウが存在することを示している。ポリマー1の直接励起により、図1に示すようにフルオレセインへのエネルギー移動(ET)が生じる。また、ポリマー1の発光とフルオレセインの吸収のオーバーラップを選択して、FRETが起こるようにした25。ETの程度は、組み込まれたアクセプタとドナーの発光比により評価しうる。
【実施例2】
【0075】
標的ポリヌクレオチド存在下でのFRETの実演
オリゴ−CプローブのハイブリダイゼーションはET比に変化をもたらす。センサポリヌクレオチド([オリゴ−C]=2.1×10−8M)を、等モル量の相補的な20塩基対の配列5’-CATCTGTAAATCCAAGAGTAGCAACCCTAACACCATTTAC-3’を含む40塩基対の鎖、及び全く同じやり方で非相補的な40塩基の鎖(5’-AAAATATTGTGTATCAAAATGTAAATGGTGTTAGGGTTGC-3’)の存在下で、そのTm(58.4℃)より2℃より低い温度でアニーリングさせた。得られる蛍光の直接比較によって、ハイブリダイズしたDNAについてはET比が6倍大きいことが明らかになった。図2を参照されたい。また、これらの光学的差異は、10mmolクエン酸ナトリウム及び100mmol塩化ナトリウムバッファーの存在下でも観察された。バッファーイオンのスクリーンは、ハイブリダイゼーションを促進するがCPと逆の電荷の蛍光クエンチャーとの静電気相互作用を弱める相補的なDNA鎖に対する電荷に似ている26。標準的なPMTを備えたキセノンランプ蛍光光度計を用いて、ハイブリダイズしたDNAは、ハイブリダイズしていないNDAよりも、[センサポリヌクレオチド]=2.8×10−9Mで3倍を超える高いET比を示した。
【実施例3】
【0076】
エネルギー移動の最適化
ポリマー1とオリゴ−Cとの比率を変えることにより、エネルギー移動を最適化した。濃度[オリゴ−C]=2.1×10−8Mでは、ポリマーの初期の添加により直ちにET比が上昇した。ポリマー1の量がオリゴ−Cを大きく上回る場合には低下が観察された。ET比の最大値は、ポリマー鎖とオリゴ−Cとの比において1:1付近に相当する。ポリマー濃度が高い場合には、全ての鎖がオリゴ−Cと緊密に複合体形成するものではなく、ドナーの発光はシグナル伝達発色団よりも早く上昇する。[ポリマー1]/[オリゴ−C]が1未満である場合は全てのセンサポリヌクレオチオド鎖が独立したポリマー鎖と効率的に複合体を形成するとは限らないので、かかる相関は予想されていた。逆に、[ポリマー1]/[オリゴ−C]が1より大きい場合でも、ポリマー1(ドナー)が利用しうる光子全てをオリゴ−C(アクセプタ)に移動できるわけではない。ポリマーとオリゴ−Cとの反復単位が約100に達した場合には、リポーター発色団(reporting chromophore)の光ルミネセンスはこれ以上増大せず、このことは、アクセプタの飽和を示している。この比における統合された蛍光発光は、ポリマー1の不在下で直接プローブを励起(480nm)して得られるものよりも約4倍高く、これはシグナル増幅のさらなる証拠を示すものである。
【実施例4】
【0077】
改善された選択性のための、多発色団からセンサポリヌクレオチドを介したポリヌクレオチド色素へのFRET移動
オリゴ−Cプローブ(5’-Fl-ATCTTGACTATGTGGGTGCT-3’)のハイブリダイゼーションは2つの異なるセンサ発色団にET比の相違をもたらす。センサポリヌクレオチド([オリゴ−C]=1×10−8M)を、等モル量の相補的な20塩基対の配列(5’-AGCACCCACATAGTCAAGAT-3’)を含む20塩基対の鎖、及び全く同じやり方で非相補的な20塩基対の鎖(5’-CGTATCACTGGACTGATTGG-3’)の存在下で、そのTm(58.5℃)より2℃より低い温度でアニーリングさせた。2つのDNA混合物をリン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウムバッファー溶液(50mM,pH=7.40)中でエチジウムブロマイド([EB]=1.1×10−6M)と室温で混合したところ、ハイブリダイズしたDNA対の二本鎖構造内にEBの挿入が起こった。ポリマー1水溶液([1]=1.6×10−7M)の添加とそれに続く1の励起(380nm)によって、1からセンサポリヌクレオチドへのエネルギー移動と、続いてセンサポリヌクレオチドからEBへのエネルギー移動が生じた。得られる蛍光の比較によって、センサ溶液はハイブリダイズしたDNAの存在下においては挿入色素EBからの発光を示すにすぎないことが明らかとなった。図3を参照されたい。この結果は、本発明のDNA配列センサが、ポリカチオン多発色団の励起時にポリヌクレオチド特異的色素からの発光を検出することにより、センサポリヌクレオチドと相補的な特異的な塩基配列を有する標的一本鎖DNAの存在を検出しうることを実証している。本実施例で使用する発色団は、多発色団と2つのシグナル伝達発色団のエネルギーにおいて適当なオーバーラップが存在するため選択した。
【実施例5】
【0078】
多発色団系からのFRETを用いたポリヌクレオチド色素の光学増幅の実証
1の溶液中の1、センサポリヌクレオチド及びポリヌクレオチド特異的色素(エチジウムブロマイド、EB)の励起によって、EBの発光強度が、センサポリヌクレオチド上にシグナル伝達発色団を有しない同じ二本鎖DNA配列に含まれるEBの直接励起(500nm)よりも約8倍高かった。ポリマー1の不在下におけるシグナル伝達オリゴ−Cの直接励起(480nm)は、挿入されたEBの約4倍の感度しか示さなかった。従って、本実施例は、ポリカチオン多発色団(共役ポリマー1)から診断EBリポーターへのFRETによるシグナル増幅の証拠が示された。図4を参照されたい。
【実施例6】
【0079】
ポリヌクレオチド色素へのFRET移動
1及びシグナル伝達発色団としてエチジウムブロマイド(EB)を用いた実験を行って、1からEBへの直接エネルギー移動が二本鎖DNAの存在下でみとめられうることを実証した。シグナル伝達発色団を有しないセンサポリヌクレオチド(5’- ATCTTGACTATGTGGGTGCT-3’)([オリゴ]=1×10−8M)を、等モル量の相補的な20塩基対の配列(5’-AGCACCCACATAGTCAAGAT-3’)を含む20塩基対の鎖、及び全く同じやり方で非相補的な20塩基対の鎖(5’-CGTATCACTGGACTGATTGG-3’)の存在下で、そのTm(58.5℃)より2℃より低い温度でアニーリングさせた。2つのDNA混合物をリン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウムバッファー溶液(50mM,pH=7.40)中でエチジウムブロマイド([EB]=1.1×10−6M)と室温で混合したところ、ハイブリダイズしたDNA対の二本鎖構造内にEBの挿入が起こった。ポリマー1水溶液([1]=1.6×10−7M)の添加とそれに続く1の励起(380nm)によって、ハイブリダイズしたDNA又は二本鎖DNAの場合にのみ1から挿入されたEBへのエネルギー移動が生じた。ハイブリダイズした配列についてのみEBからの発光がポリマー1の励起時に検出された。図5を参照されたい。
【0080】
好適な実施形態を引用して本発明を詳細に記載してきたが、当業者であれば、本明細書中の教示内容を考慮すれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく一定の変更及び修正を行いうることが分かるだろう。従って、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限される。
【0081】
参照
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【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、ポリマー1及びフルオレセイン共役センサポリヌクレオチドの吸収スペクトル(a(点線)とc(破線))及び発光スペクトル(b(四角)とd(丸))を表す。ポリマー1及びセンサポリヌクレオチドは、それぞれ380及び480nmで励起した。ポリマー1とセンサポリヌクレオチドのエネルギー移動複合体は380nmで励起し、黒色で示した(e、実線)。
【図2】図2は、10mmolクエン酸ナトリウム及び100mmol塩化ナトリウムバッファー(pH=8)中のハイブリダイズした(実線)及びハイブリダイズしていない(点線)センサポリヌクレオチドを含むセンサ系の発光スペクトルを表す。スペクトルはポリマー1の発光に関して正規化した。
【図3】図3は、多発色団(ポリマー1)の励起から生じるハイブリダイズした(実線)及びハイブリダイズしていない(点線)センサポリヌクレオチドを含むセンサ系の発光スペクトル、ならびにセンサポリヌクレオチドへのエネルギー移動とそれに続くポリヌクレオチド特異的色素(エチジウムブロマイド)へのエネルギー移動を表す。リン酸カリウム−水酸化ナトリウムバッファー溶液(50mM,pH7.40)中で測定を行った。実施例4を参照されたい。
【図4】図4は、ハイブリダイズした(実線)センサポリヌクレオチドを含むセンサ系におけるポリヌクレオチド特異的色素(エチジウムブロマイド、EB)の発光スペクトルの増幅を表す。増幅された発光シグナルは、多発色団(ポリマー1)の励起、センサポリヌクレオチドへのエネルギー移動とそれに続くEBへのエネルギー移動の結果である。二本鎖DNAにおける直接EB発光(点線)、センサポリヌクレオチド励起から生じる発光と、それに続くEBへのエネルギー移動(破線)は、ポリカチオン多発色団により提供されるシグナルの増大を実証する。リン酸カリウム−水酸化ナトリウムバッファー溶液(50mM,pH7.40)中で測定を行った。実施例5を参照されたい。
【図5】図5は、リン酸カリウム−水酸化ナトリウムバッファー溶液(50mM,pH7.40)中での、EB、ならびにハイブリダイズした(実線)及びハイブリダイズしていない(点線)センサポリヌクレオチドの両方の存在下におけるポリマー1の励起時のEBの発光スペクトルを表す。実施例6を参照されたい。発光は、ハイブリダイズした二本鎖DNAの場合のみであり、ポリカチオン多発色団から挿入されたEBへのエネルギー移動の結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッセイ方法であって、以下:
標的ポリヌクレオチドの含有が疑われるサンプルを提供すること、
励起されるとエネルギーをシグナル伝達発色団へ移動する能力のあるポリカチオン多発色団を提供すること、
1本鎖でかつ前記標的ポリヌクレオチドに対して相補的であり、前記シグナル伝達発色団と共役しているアニオンセンサポリヌクレオチドであって、前記多発色団と相互作用し、標的ポリヌクレオチドの不在下で多発色団が励起されるとシグナル伝達発色団から光が放出され、標的ポリヌクレオチドの存在下で前記多発色団が励起されるとシグナル伝達発色団から放出される光の量が多い、該センサポリヌクレオチドを提供すること、
前記標的ポリヌクレオチドが存在する場合にはこれに前記センサポリヌクレオチドがハイブリダイズしうる条件下で、前記サンプルを溶液中で前記センサポリヌクレオチド及び前記多発色団と接触させること、
前記溶液に、前記多発色団を励起しうる光源を当てること、及び
前記シグナル伝達発色団から放出される光がサンプルの存在下で増大するか否かを検出すること、
を含む上記アッセイ方法。
【請求項2】
前記多発色団が、飽和ポリマー、共役ポリマー、共役分子の集合体、デンドリマー、及び半導体ナノ結晶からなる群より選択される構造を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記多発色団が飽和ポリマーを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記多発色団がデンドリマーを含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記多発色団が半導体ナノ結晶を含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記多発色団が共役分子を含む、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記共役ポリマーが、下記構造:
【化1】

を有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記多発色団が共役分子の集合体である、請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記集合体が、下記構造:
【化2】

を有する分子を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルを、前記センサポリヌクレオチドと前記多発色団との間の疎水性相互作用を低下させるのに十分な量の有機溶媒の存在下で、前記センサポリヌクレオチド及び前記多発色団と接触させる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルを、対応する異なる配列を有する複数の異なるセンサポリヌクレオチドであって、対応する異なるシグナル伝達発色団を含む該異なるセンサポリヌクレオチドと接触させるが、ただしそれらの異なるセンサポリヌクレオチドは各々が対応する異なる標的ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズできるものとする、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記シグナル伝達発色団が蛍光団である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記蛍光団が、半導体ナノ結晶、蛍光色素、及びランタニド・キレートから選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記蛍光団が半導体ナノ結晶である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記蛍光団が蛍光色素である、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記蛍光色素がフルオレセインである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記蛍光団がランタニド・キレートである、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記標的ポリヌクレオチドがDNAである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記標的ポリヌクレオチドがRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記サンプルが1本鎖の標的ポリヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記サンプルが2本鎖の標的ポリヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記標的ポリヌクレオチドが増幅反応により提供される、請求項1記載の方法。
【請求項23】
シグナル伝達発色団、及び
シグナル伝達発色団に接近した場合に励起されるとエネルギーを該シグナル伝達発色団へ移動することができるポリカチオン多発色団であって、該多発色団が励起されると検出対象のポリヌクレオチドの存在下においてシグナル伝達発色団から生じるエネルギーの量が大きい、該ポリカチオン多発色団、
を含むポリヌクレオチド検出溶液。
【請求項24】
1本鎖でかつ標的ポリヌクレオチドに対して相補的なセンサポリヌクレオチド、
シグナル伝達発色団、
シグナル伝達発色団に接近した場合に励起されるとエネルギーを該シグナル伝達発色団へ移動することができるポリカチオン多発色団であって、前記センサポリヌクレオチドは該多発色団と相互作用し、そして標的ポリヌクレオチドの存在下で該多発色団が励起されるとシグナル伝達発色団から放出される検出可能な光の量が多い、該ポリカチオン多発色団、及び
キットの試薬を保持するためのハウジング、
を含む、サンプルを標的ポリヌクレオチドについてアッセイするためのキット。
【請求項25】
前記シグナル伝達発色団から放出された閾値を上回る光が、前記サンプル中に前記標的ポリヌクレオチドが存在することを示唆する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記シグナル伝達発色団から放出された光の量を定量し、これを利用して前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドの量を決定する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記蛍光団が緑色蛍光タンパク質である、請求項12記載の方法。
【請求項28】
前記標的ポリヌクレオチドを増幅しない、請求項1記載の方法。
【請求項29】
基板上で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項30】
前記基板が、ミクロ粒子、チップ、スライド、マルチウェルプレート、光ファイバー、任意で多孔質のゲルマトリックス、光ダイオード、及び光電子装置からなる群より選択される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記基板がスライドである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記基板が光電子装置である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記基板が任意で多孔質のゲルマトリックスである、請求項30記載の方法。
【請求項34】
前記基板がゾル−ゲルである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記基板がナノアドレスを指定可能なものである、請求項30記載の方法。
【請求項36】
前記基板がマイクロアドレスを指定可能なものである、請求項30記載の方法。
【請求項37】
前記基板が、対応する異なる配列を有する多数の異なるセンサポリヌクレオチドと結合し、該異なるセンサポリヌクレオチドは各々が対応する異なる標的ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズしうる、請求項30記載の方法。
【請求項38】
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)の実施を含む、請求項1記載の方法。
【請求項39】
増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応を含む、請求項22記載の方法。
【請求項40】
サンプルを、溶液中で、センサポリヌクレオチド、多発色団、並びに標的の存在下でシグナル伝達発色団からエネルギーを吸収し発光する能力のある第2のシグナル伝達発色団と接触させることをさらに含み、シグナル伝達発色団から放出された光がサンプルの存在下で増大したか否かを検出することが、第2のシグナル伝達発色団から放出された光がサンプルの存在下で増大したか否かを検出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項41】
第2のシグナル伝達発色団がポリヌクレオチド特異的色素である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
請求項1記載の方法により形成されるシグナル伝達複合体。
【請求項43】
第2のシグナル伝達発色団をさらに含む、請求項42記載の複合体。
【請求項44】
標的の存在下でシグナル伝達発色団からエネルギーを吸収し発光する能力のある第2のシグナル伝達発色団をさらに含む、請求項23記載のポリヌクレオチド検出溶液。
【請求項45】
第2のシグナル伝達発色団がポリヌクレオチド特異的色素である、請求項44記載のポリヌクレオチド検出溶液。
【請求項46】
請求項29記載の方法により形成される基板に結合した複合体。
【請求項47】
第2のシグナル伝達発色団をさらに含む、請求項46記載の基板に結合した複合体。
【請求項48】
標的の存在下でシグナル伝達発色団からエネルギーを吸収し発光する能力のある第2のシグナル伝達発色団をさらに含む、請求項24記載のキット。
【請求項49】
第2のシグナル伝達発色団がポリヌクレオチド特異的色素である、請求項48記載のキット。
【請求項50】
標的ポリヌクレオチドについてサンプルをアッセイするためのキットの構成要素の使用方法を記載した説明書を、前記ハウジング内にさらに含む、請求項24記載のキット。
【請求項51】
1本鎖でかつ標的ポリヌクレオチドに対して相補的な、シグナル伝達発色団と共役したセンサポリヌクレオチド、及び
シグナル伝達発色団に接近した場合に励起されるとエネルギーを該シグナル伝達発色団へ移動することができるポリカチオン多発色団であって、標的ポリヌクレオチドの不在下で多発色団が励起されるとシグナル伝達発色団から光が放出され、標的ポリヌクレオチドの存在下で前記多発色団が励起されるとシグナル伝達発色団から放出される光の量が多い、該ポリカチオン多発色団、
を含む、検出複合体。
【請求項52】
1本鎖でかつ標的ポリヌクレオチドに対して相補的なセンサポリヌクレオチドをさらに含む、請求項23記載のポリヌクレオチオド検出溶液。
【請求項53】
シグナル伝達発色団が、標的の存在下でシグナル伝達発色団からエネルギーを吸収し発光する能力のあるポリヌクレオチド特異的色素である、請求項23記載のポリヌクレオチド検出溶液。
【請求項54】
シグナル伝達発色団が、標的の存在下で多発色団からエネルギーを吸収可能であり、かつセンサポリヌクレオチドと共役した第2のシグナル伝達発色団にエネルギーを移動可能であり、それが光を放出するポリヌクレオチド特異的色素である、請求項23記載のポリヌクレオチド検出溶液。
【請求項55】
飽和ポリマーが発光色素と結合されている、請求項3記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッセイ方法であって、以下:
標的ポリヌクレオチドの含有が疑われるサンプルを提供すること、
励起されるとエネルギーをシグナル伝達発色団へ移動する能力のあるポリカチオン多発色団を提供すること、
前記標的ポリヌクレオチドに対して相補的であり、前記シグナル伝達発色団と共役しているアニオンセンサポリヌクレオチドであって、前記多発色団と相互作用することができ、前記多発色団が励起されるとシグナル伝達発色団から光が放出され、標的ポリヌクレオチドの存在下で前記多発色団が励起されると、非相補的なポリヌクレオチドの存在下と比較してシグナル伝達発色団から放出される光の量が多い、該センサポリヌクレオチドを提供すること、
前記標的ポリヌクレオチドが存在する場合にはこれに前記センサポリヌクレオチドがハイブリダイズしうる条件下で、前記サンプルを溶液中で前記センサポリヌクレオチド及び前記多発色団と接触させること、
光源を用いて前記多発色団を励起すること、及び
前記シグナル伝達発色団から光が放出されるか否かを検出すること、
を含む上記アッセイ方法。
【請求項2】
前記多発色団がデンドリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記多発色団が半導体ナノ結晶を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記多発色団が共役分子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記共役ポリマーが、下記構造:
【化1】

を有する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記多発色団が共役分子の集合体である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記集合体が、下記構造:
【化2】

を有する分子を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルを、前記センサポリヌクレオチドと前記多発色団との間の疎水性相互作用を低下させるのに十分な量の有機溶媒の存在下で、前記センサポリヌクレオチド及び前記多発色団と接触させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
基板上で実施する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルを、対応する異なる配列を有する複数の異なるセンサポリヌクレオチドであって、対応する異なるシグナル伝達発色団を含む該異なるセンサポリヌクレオチドと接触させるが、ただしそれらの異なるセンサポリヌクレオチドは各々が対応する異なる標的ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズできるものとする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
放出された光の量を定量し、これを利用して前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドの量を決定する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
サンプルを、センサポリヌクレオチド、多発色団、並びに標的の存在下でシグナル伝達発色団からエネルギーを吸収し発光する能力のある第2のシグナル伝達発色団を含む溶液中で接触させることをさらに含み、シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出することが、第2のシグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出することを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
第2のシグナル伝達発色団がポリヌクレオチド特異的色素である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記多発色団を励起するとシグナル伝達発色団又は第2のシグナル伝達発色団から放出される光の量が、シグナル伝達発色団の直接励起により得られる量よりも多い、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
シグナル伝達発色団、及び
デンドリマー及び共役ポリマーから選択される分子を含み、シグナル伝達発色団に接近した場合に励起されるとエネルギーを該シグナル伝達発色団へ移動することができるポリカチオン多発色団であって、該多発色団が励起されると検出対象の標的ポリヌクレオチドの存在下においてシグナル伝達発色団から生じるエネルギーの量が大きい、該ポリカチオン多発色団、
を含むポリヌクレオチド検出溶液。
【請求項16】
標的ポリヌクレオチドに対して相補的なセンサポリヌクレオチドをさらに含む、請求項15記載のポリヌクレオチオド検出溶液。
【請求項17】
ポリヌクレオチド特異的色素を含む、請求項15又は16記載のポリヌクレオチド検出溶液。
【請求項18】
標的の存在下でシグナル伝達発色団からエネルギーを吸収し発光する能力のある第2のシグナル伝達発色団をさらに含む、請求項15〜17のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド検出溶液。
【請求項19】
標的ポリヌクレオチドに対して相補的なセンサポリヌクレオチド、
シグナル伝達発色団、
シグナル伝達発色団に接近した場合に励起されるとエネルギーを該シグナル伝達発色団へ移動することができるポリカチオン多発色団であって、前記センサポリヌクレオチドは該多発色団と相互作用し、そして標的ポリヌクレオチドの存在下で該多発色団が励起されると、非相補的なポリヌクレオチドの存在下よりもシグナル伝達発色団から放出される検出可能な光の量が多い、該ポリカチオン多発色団、及び
キットの試薬を保持するためのハウジング、
を含む、サンプルを標的ポリヌクレオチドについてアッセイするためのキット。
【請求項20】
標的の存在下でシグナル伝達発色団からエネルギーを吸収し発光する能力のある第2のシグナル伝達発色団をさらに含む、請求項19記載のキット。
【請求項21】
ポリヌクレオチド特異的色素を含む請求項19又は20記載のキット。
【請求項22】
標的ポリヌクレオチドに対して相補的な、シグナル伝達発色団と共役したセンサポリヌクレオチド、及び
シグナル伝達発色団に接近した場合に励起されるとエネルギーを該シグナル伝達発色団へ移動することができるポリカチオン多発色団であって、標的ポリヌクレオチドの不在下で多発色団が励起されるとシグナル伝達発色団から光が放出され、標的ポリヌクレオチドの存在下で前記多発色団が励起されると、非相補的なポリヌクレオチドの存在下よりもシグナル伝達発色団から放出される光の量が多い、該ポリカチオン多発色団、
を含む、検出複合体。
【請求項23】
基板上に形成される、請求項22記載の複合体。
【請求項24】
第2のシグナル伝達発色団をさらに含む、請求項22又は23記載の複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−510389(P2006−510389A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570933(P2004−570933)
【出願日】平成15年8月26日(2003.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/026989
【国際公開番号】WO2004/092324
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(398051143)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (21)
【Fターム(参考)】