説明

集合住宅用インターホンシステム

【課題】住戸機から制御装置を経由して外線発信する場合においても着信先で発信元の住戸機を特定する。
【解決手段】外線通話処理手段(制御装置CTのSIPプロキシ部23)が、何れかの住戸機Aiより送信された外線発信要求を伝送路インタフェース手段(幹線I/F部20)を通じて受け取ると、記憶手段(記憶部21)に記憶している対応関係(住戸情報管理テーブル)を参照して外線発信要求元の住戸機Aiの住戸情報(住棟番号及び住戸番号)を取得する。さらにSIPプロキシ部23は当該住戸情報を外線発信用に割り当てられている電話番号に付加して発呼する。故に外線発信の着信先(コールセンタのCTIサーバ200)においては発呼元の制御装置CTから送られてくる電話番号と住戸情報に基づいて発信元の住戸機Ai(住戸)を特定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅用インターホンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の集合住宅用インターホンシステムとして、特許文献1に記載されているものがある。この従来システムは、集合住宅の共同玄関(ロビー)に設けられるロビーインターホン装置、管理人室等に設置される制御装置(管理装置)、集合住宅の各住戸に設置される住戸機(住宅情報盤)及びインターホン子機等から構成される。
【0003】
この従来例での映像・音声通信は、住宅情報盤とロビーインターホン装置との間、住宅情報盤と管理装置との間、更にはロビーインターホン装置と管理装置との間で、同一の信号線(一対のペア線)上にIPプロトコルによるデジタル多重パケット伝送方式により行われる。さらに本従来例では、管理装置を介して各住戸の住宅情報盤から外線発信を行い、IP網に接続されているIP電話機や公衆電話回線網に接続されている固定電話機と住宅情報盤との間で通話することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−354133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、集合住宅の管理組合から当該集合住宅の管理を請け負う管理会社においては、当該集合住宅の住人による個別の問い合わせに対応するためにコールセンタを設置し、コールセンタにかかってくる電話の発信者番号から発信者(集合住宅の住人)を特定して適切な担当者が応対できるようにしたり、各住人に関する情報(過去の問い合わせ内容など)を閲覧できるようにしている。
【0006】
しかしながら、上述した従来例では相手先に通知される発信者番号は本来の発信元である住宅情報盤ではなく、実際に外線発信を行う管理装置に割り当てられた電話番号であるため、発信者の情報を取得できないといった不都合の生じる虞があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、住戸機から制御装置を経由して外線発信する場合においても着信先で発信元の住戸機を特定することができる集合住宅用インターホンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、集合住宅の共用部に設置される共用部装置と、集合住宅の各住戸に設置される住戸機と、これら複数の住戸機と共用部装置との間で音声情報や制御情報を伝送するための伝送路と、当該伝送路を介して共用部装置並びに各住戸機と接続された制御装置とを備え、各住戸機には固有の識別符号が割り当てられ、制御装置が当該識別符号に基づいて共用部装置から呼び出される住戸機を特定し、当該住戸機と共用部装置との間で伝送路を介して音声情報を伝送させることによってインターホン通話を行う集合住宅用インターホンシステムにおいて、制御装置は、伝送路を介して情報伝送を行う伝送路インタフェース手段と、集合住宅の各住戸を特定するための住戸情報と各々の住戸に設置されている住戸機の識別符号との対応関係を記憶する記憶手段と、IP網を介してデータ通信を行う通信インタフェース手段と、通信インタフェース手段によりIP網を介した呼制御を行うとともに当該呼制御で確立されたセッション上で音声情報を交換する外線通話処理手段とを具備し、外線通話処理手段は、何れかの住戸機より送信された外線発信要求を伝送路インタフェース手段を通じて受け取ると、記憶手段に記憶している前記対応関係を参照して外線発信要求元の住戸機の住戸情報を取得し、取得した当該住戸情報を外線発信用に割り当てられている電話番号に付加して発呼することを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、外線発信の着信先においては発呼元の制御装置から送られてくる電話番号と住戸情報に基づいて発信元の住戸機(住戸)を特定することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、各住戸機は、前記伝送路とは異なる別の伝送路並びにIP網を介してデータ通信を行う通信インタフェース手段と、通信インタフェース手段により前記別の伝送路並びにIP網を介した呼制御を行うとともに当該呼制御で確立されたセッション上で音声情報を交換する外線通話処理手段とを具備し、各住戸機の外線通話処理手段は、制御装置経由の外線発信が不可である場合、制御装置に割り当てられている前記電話番号に自己の住戸情報を付加して発呼することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、共用部装置と他の住戸機との通話などによって伝送路が使用できない場合においても制御装置の電話番号を使用して外線発信を行うことができるとともに、外線発信の着信先においては発呼元の住戸機から送られてくる電話番号と住戸情報に基づいて発信元の住戸機を特定することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、制御装置は、通信インタフェース手段によりIP網を介した情報伝送を行う情報伝送手段を具備し、情報伝送手段は、何れかの住戸機による外線発信要求に基づいて外線通話処理手段が呼制御を行っているときに、IP網を介して当該外線発信要求元の住戸情報の問い合わせを受け取ると、記憶手段に記憶している前記対応関係を参照して外線発信要求元の住戸機の住戸情報を取得し、取得した当該住戸情報をIP網を介して前記問い合わせの送信元に返信することを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明によれば、例えば、外線発信の着信先が公衆電話回線網に接続されている固定電話である場合や、当該着信先に対して電話番号以外の情報を付加して発呼できない場合においても、着信先からIP網を介して住戸情報の問い合わせを受けることにより、外線発信要求元の住戸情報を着信先に伝えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、住戸機から制御装置を経由して外線発信する場合においても着信先で発信元の住戸機を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1を示すシステム構成図である。
【図2】同上における住戸機のブロック図である。
【図3】同上における制御装置の一部省略したブロック図である。
【図4】同上における住戸情報管理テーブルの説明図である。
【図5】同上における外線発信時の動作を説明するためのシーケンス図である。
【図6】同上において住戸機から制御装置へ送信されるINVITEメッセージの説明図である。
【図7】同上における制御装置からコールセンタへ送信されるINVITEメッセージの説明図である。
【図8】同上における制御装置からコールセンタへ送信されるINVITEメッセージの説明図である。
【図9】実施形態2における制御装置の一部省略したブロック図である。
【図10】同上における接続情報管理テーブルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態の集合住宅用インターホンシステムは、図1に示すように集合住宅の共用玄関(ロビー)に設置された共用部装置(ロビーインターホン)LIと、集合住宅の各住戸内に設置された住戸機Ai(i=1,2,…,n)と、各住戸の外玄関に設置され且つ通話線Lcを介して住戸内に設置されている住戸機Aiと接続されたドアホン子器Bi(i=1,2,…,n)と、ロビーインターホンLIに接続された幹線Lsと、幹線Lsから分岐されて各住戸の住戸機Aiに接続される住戸線Ldi(i=1,2,…,n)と、幹線Ls並びに住戸線Ldiを介して住戸機Ai並びにロビーインターホンLIと接続された制御装置CTと、集合住宅の管理人室などに設置されて幹線Lsを介してロビーインターホンLIや各住戸機Aiとの間で音声情報などを授受する管理端末Xとを備えている。尚、本実施形態では幹線Lsと住戸線Ldiによって伝送路が構成されている。
【0017】
住戸機Aiは、図2に示すようにマイクロコンピュータを主構成要素とする住戸機制御部1と、通話用のマイクロホン2a及びスピーカ2bと、マイクロホン2aで集音した音声信号並びにスピーカ2bへ出力する音声信号を信号処理する音声処理部2cと、液晶ディスプレイなどの表示デバイスと当該表示デバイスを駆動するドライバ回路などを有する表示部3と、住戸機制御部1から受け取った映像信号を信号処理して表示部3に映像を表示させる映像処理部4と、電気的に書換可能な不揮発性の半導体メモリ(フラッシュメモリなど)からなる記憶部5と、表示デバイスに設けられたタッチパネルや押釦スイッチなどを有し種々の操作入力を受け付ける操作入力受付部6と、後述するように住戸線Ldiを介して音声情報や映像情報、制御情報を伝送(従来例で説明したデジタル多重パケット伝送)する住戸線インタフェース(I/F)部7と、LANケーブル(エンハンストカテゴリ5あるいはカテゴリ6のツイストペアケーブルなど)Lxを介してデータ通信を行う通信インタフェース手段たるネットワークインタフェース(I/F)部8と、ドアホン子器Biとの間で信号線Lcを介して音声情報や映像情報を伝送するための子器インタフェース(I/F)部9とを具備している。
【0018】
ドアホン子器Biは従来周知のものであって、図示は省略するが、来訪者を撮像する撮像手段と、マイクロホン及びスピーカと、来訪者の呼出操作を受け付ける呼出釦と、信号線Lcを介して呼出信号並びに撮像手段から出力される映像信号を送信するとともに住戸機Aiとの間で音声信号を送受信する通信手段とを具備している。すなわち、呼出釦が操作されると通信手段が信号線Lcを介して呼出信号を送信するとともに撮像手段から出力される映像信号を送信する。そして、住戸機Aiでは信号線Lcを介して送信された呼出信号及び映像信号が子器I/F部9で受信されると、住戸機制御部1が音声処理部2cを制御してスピーカ2bから呼出音を鳴動させるとともに、映像処理部4に映像信号を出力して表示部3に来訪者の映像を表示させる。呼出音を聞いた住人が操作入力受付部6の応答釦を操作すれば、住戸機制御部1が音声処理部2cに通話のための音声信号処理を開始させる。その結果、ドアホン子器Biと住戸機Aiとの間で信号線Lcを介して音声信号が送受信されることにより、来訪者と住人がドアホン子器Biと住戸機Aiを用いて通話(ドアホン通話)することができる。
【0019】
ロビーインターホンLIは従来周知のものであって、図示は省略するが、来訪者を撮像する撮像手段と、マイクロホン及びスピーカと、来訪者が訪問先の住戸の住戸番号を入力するためのテンキースイッチと、音声情報や映像情報を幹線Lsを通じてデジタル多重伝送する伝送手段などを具備している。すなわち、テンキースイッチが操作されて何れかの住戸の住戸番号の操作入力が受け付けられると、データフィールドに当該住戸番号を格納したパケットと、撮像手段で撮像した来訪者の映像(映像情報)をデータフィールドに格納したパケットが伝送手段より幹線Lsを介して制御装置CTのアドレス(プライベートなIPアドレス)宛に送信される。制御装置CTは、各住戸の住戸機Aiに割り当てられているアドレス(プライベートなIPアドレス)と当該住戸の住戸番号との対応関係を記憶しており、ロビーインターホンLIから受け取ったパケットのデータフィールドに格納されている住戸番号を前記対応関係と照合してアドレスに変換し、当該アドレスを宛先アドレスフィールドに格納し且つロビーインターホンLIからの呼出を通知するための呼出コマンドをデータフィールドに格納したパケット並びに前記映像情報をデータフィールドに格納したパケットを幹線Lsに送出する。
【0020】
前記住戸番号の住戸に設置されている住戸機Aiでは、住戸線Ldiを介して住戸機I/F部7で前記パケットを受信すると、当該パケットのデータフィールドに格納されている呼出コマンドに応じて住戸機制御部1が音声処理部2cを制御してスピーカ2bから呼出音を鳴動させるとともに、データフィールドに格納されている映像情報を映像処理部4に処理させて表示部3に来訪者の映像を表示させる。呼出音を聞いた住人が操作入力受付部6の応答釦を操作すれば、住戸機制御部1が音声処理部2cに通話のための音声信号処理を開始させる。その結果、ロビーインターホンLIと住戸機Aiとの間でデータフィールドに音声情報並びに映像情報を格納したパケットを送受信することにより、来訪者と住人がロビーインターホンLIと住戸機Aiを用いて通話することができる。
【0021】
また本実施形態の集合住宅用インターホンシステムは、制御装置CT、ロビーインターホンLI、住戸機Aiに各々プライベートなIPアドレスを付与することでLAN(IPネットワーク)を構成しており、さらに制御装置CTからルータRT1を介して外部ネットワークであるIP網NWに接続されている。
【0022】
制御装置CTは、図3に示すように伝送路(幹線Ls)を介して情報伝送を行う伝送路インタフェース手段たる幹線インタフェース(I/F)部20と、集合住宅の各住戸を特定するための住戸情報と各々の住戸に設置されている住戸機Aiの識別符号(プライベートなIPアドレス)との対応関係を表した住戸情報管理テーブルを記憶する記憶部21と、IP網NWを介してデータ通信を行う通信インタフェース手段たる外部ネットワークインタフェース(I/F)部22と、外部ネットワークI/F部22によりIP網NWを介した呼制御を行うとともに当該呼制御で確立されたセッション上で音声情報を交換する外線通話処理手段たるSIPプロキシ部23と、記憶部21に記憶されている住戸情報管理テーブルを管理する住戸情報管理部24とを具備している。但し、上述したようにロビーインターホンLI並びに各住戸機Aiとの間で音声情報や映像情報、制御情報を授受する為の処理を行う手段については、図3には図示していない。
【0023】
図4は記憶部21に記憶している住戸情報管理テーブルの一部を示すものである。本実施形態における集合住宅には5つ以上の住棟があり、棟番号が「5」の住棟における101号室、102号室、201号室、202号室の住戸番号と、各住戸に設置されている住戸機A1〜A4にそれぞれ割り当てられた「192.168.10.18」,「192.168.10.110」,「192.168.10.249」,「192.168.10.132」のIPアドレスとが対応付けられている。
【0024】
SIPプロキシ部23は、IETFから発行されているRFC3261で規定されたSIP(Session Initiation Protocol)を実装し、各住戸機Aiを代理(プロキシ)して外線発信の呼制御(シグナリング)を行うものである。但し、各住戸機Aiの住戸機制御部1にもSIPが実装されている。
【0025】
ここで、図1においては、本実施形態の集合住宅用インターホンシステムが導入されている集合住宅の管理を請け負っている管理会社のコールセンタを図示している。このコールセンタでは、顧客からの電話に応対するオペレータ用のコンピュータ端末(以下、「端末」と略す。)TNk(k=1,2,…,m)によって構成されるLANがルータRT2を介してIP網NWに接続されている。さらに当該LANには、オペレータが顧客からの電話に応対するためのIP電話端末PHkの回線交換を行う構内交換機(IP−PBX)100と、外線着信時に予め決められたルールに則って当該外線を特定のオペレータのIP電話端末PHkに接続するACD(Automatic Call Distribution)機能などを有するCTI(Computer Telephony Integration)サーバ200とが接続されている。但し、IP−PBX100やCTIサーバ200については従来周知であるから詳細な構成についての説明は省略する。
【0026】
次に、何れかの住戸機(例えば、5棟の201号室に設置されている住戸機A3)からコールセンタに外線発信する場合の動作について、図5のシーケンス図を参照しながら説明する。
【0027】
まず、住戸機A3の操作入力部6においてコールセンタに対する外線発信の操作入力が受け付けられると、SIPクライアントである住戸機制御部1が住戸線I/F部7より制御装置CTに宛ててINVITEメッセージを送信する(1)。図6は住戸機A3から制御装置CTに送信されるINVITEメッセージの内容を示している。
【0028】
制御装置CTのSIPプロキシ部23は、住戸機A3からINVITEメッセージを受け取ると、コールセンタの電話番号(例えば、0503921cccc)を含むURI(Uniform Resource Identifier)を宛先アドレスに設定したINVITEメッセージを外部ネットワークI/F部22よりIP網NWを通してコールセンタ(CTIサーバ200)に向けて送信する(2)。ここで、SIPプロキシ部23は住戸機A3から受け取ったINVITEメッセージの送信元アドレス(192.168.10.249)に対応する住戸情報(発信元の住棟番号および住戸番号を組み合わせたもの「5201」)を、記憶部21に記憶されている住戸情報管理テーブルから住戸情報管理部24を介して取得し、図7(制御装置CTから送信されるINVITEメッセージの内容)に示すように、取得した住戸情報(5201)を自らに割り当てられている電話番号(例えば、0502611zzzz)の末尾にサブアドレスとして追加したURI(0502611zzzz*5201@xxx.ne.jp)をINVITEメッセージの送信元アドレスに設定している。尚、SIPプロキシ部23は、発信元の住戸機A3に対して「発信先へのINVITEを実行中である」ことを通知する暫定応答(100Trying)を幹線I/F部20より送信させる(3)。
【0029】
コールセンタのCTIサーバ200は、制御装置CTからIP網NWを通じてINVITEメッセージを受け取ると、当該INVITEメッセージの送信元アドレスに設定されているURI(0502611zzzz*5201@xxx.ne.jp)から制御装置CTの電話番号(0502611zzzz)と発信元の住戸情報(5201)を取得する。ここで、コールセンタには管理契約を結んでいる集合住宅の各住戸に関する情報(住所や世帯主の氏名、過去の問い合わせに関する履歴など)を蓄積したデータベース(図示せず)が設置されており、CTIサーバ200は、取得した住戸情報(5201)並びに制御装置CTの電話番号に基づいて発信元の住戸に関する情報をデータベースから読み出し、何れかの担当者(例えば、発信元の集合住宅を担当する担当者)の端末(例えば、TN1)に当該情報を配信する。さらにCTIサーバ200は、IP−PBX100を経由して上記担当者のIP電話端末(例えば、PH1)へINVITEメッセージを送信する(4)とともに、制御装置CTに対して暫定応答(100Trying)を送信する(5)。
【0030】
CTIサーバ200からINVITEメッセージを受け取ったIP電話端末PH1は、呼出音を鳴動させるとともに、発信元へ呼出中であることを伝える暫定応答(180Ringing)をCTIサーバ200へ応答する(6)。この暫定応答はCTIサーバ200から制御装置CTへ転送され(7)、さらに制御装置CTから発信元の住戸機A3へ転送される(8)。このとき、担当者の端末TN1のディスプレイ画面にはCTIサーバ200から送られてきた情報(発信元の住戸に関する情報)が表示される。そして、当該情報を確認した担当者がIP電話端末PH1の受話器をオフフックすれば、IP電話端末PH1から「成功」のステータスコード(200 OK)が送信される(9)。このステータスコード(200 OK)がCTIサーバ200から制御装置CTへ転送され(10)、さらに制御装置CTから発信元の住戸機A3へ転送される(11)。そして、ステータスコード(200 OK)を受け取った後、住戸機A3の住戸機制御部1からセッション確立了解の応答(ACK)が制御装置CTからIP−PBX100経由でIP電話端末PH1に送信されることにより(12)、住戸機A3とコールセンタのIP電話端末PH1との間でセッションが確立されて通話音声の音声データが授受される(13)。
【0031】
このように本実施形態によれば、外線通話処理手段(制御装置CTのSIPプロキシ部23)が、何れかの住戸機Aiより送信された外線発信要求を伝送路インタフェース手段(幹線I/F部20)を通じて受け取ると、記憶手段(記憶部21)に記憶している対応関係(住戸情報管理テーブル)を参照して外線発信要求元の住戸機Aiの住戸情報(住棟番号及び住戸番号)を取得し、取得した当該住戸情報を外線発信用に割り当てられている電話番号に付加して発呼するので、外線発信の着信先(コールセンタのCTIサーバ200)においては発呼元の制御装置CTから送られてくる電話番号と住戸情報に基づいて発信元の住戸機Ai(住戸)を特定することができる。その結果、コールセンタにおいては適切な担当者が電話に応対できるとともに、問い合わせ元の住戸(住人)に関する情報を当該担当者に提示することができる。尚、上述の説明では住戸情報を電話番号の末尾にサブアドレスとして追加しているが、図8に示すようにINVITEメッセージの一項目(Subject)に住戸情報(room 5-201)を追加するようにしても構わない。また、本実施形態ではCTIサーバ200がIP電話端末PHkのSIPプロキシとして動作するように説明したが、CTIサーバ200の代わりにIP−PBX100をSIPプロキシとして動作させることも可能である。
【0032】
ところで、近年では集合住宅の各住戸にインターネットに接続するための設備(例えば、スイッチングハブ、LANケーブル、LANコンセント<モジュラジャック>など)を予め(建設時に)配設した所謂インターネットマンションが普及している。本実施形態における集合住宅もかかるインターネットマンションに相当し、各住戸に配設されているLANコンセントにLANケーブルを介して住戸機AiのネットワークI/F部8が接続されている。すなわち、住戸機Aiにおいては、幹線Lsや住戸線Ldiを伝送路とするLANのアドレス(プライベートなIPアドレス)の他に、幹線Ls及び住戸線Ldiを介さずにインターネット(IP網NW)に接続することを目的として構築されているLANのアドレス(プライベートなIPアドレス)が割り当てられており、住戸線I/F部7によって住戸線Ldi並びに幹線Lsを介して通信する場合は前者のアドレスが使用され、ネットワークネットワークI/F部8によってIP網NWを通じて通信する場合は後者のアドレスが使用される。
【0033】
そして、ロビーインターホンLIと他の住戸機Aiとの通話等によって幹線Lsを介した通信に十分な帯域が確保できない場合、住戸機Aiの住戸機制御部1は、制御装置CTのSIPプロキシ部23の代理ではなく、直接、SIPによるセッション確立のためのメッセージ(INVITEメッセージなど)をネットワークI/F部8よりIP網NWを通じてコールセンタのCTIサーバ200へ送信する。このとき、住戸機制御部1が発信元の電話番号として制御装置CTに割り当てられている電話番号を使用し、当該電話番号に自己の住戸情報を付加したINVITEメッセージを送信すれば、コールセンタのCTIサーバ200において発信元の住戸機Aiを特定することができる。
【0034】
(実施形態2)
本実施形態における制御装置CTのブロック図を図9に示す。この制御装置CTが実施形態1と異なる点は、HTTPサーバ部25と接続情報管理テーブルを記憶した第2の記憶部26とを具備している点にある。尚、制御装置CT以外の構成については実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して図示並びに説明を省略する。
【0035】
第2の記憶部26に記憶されている接続情報管理テーブルは、図10に示すように制御装置CTに割り当てられている複数(図示例では3つ)の電話番号と、それぞれの電話番号の使用状況との対応関係を管理するためのものである。つまり、図10においては0502611zzzzの電話番号が住棟番号5番の201号室の住戸機によって使用中(セッション確立中)であり、0502611aaaa並びに0502611bbbbの2つの電話番号が未使用(空き)であることが判る。
【0036】
HTTPサーバ部25は、IP網NWを通じて発信元の住戸機Aiの住戸情報を問い合わせるメッセージ(HTTP GET)を受け取ったときに、第2の記憶部26に記憶されている接続情報管理テーブルに紹介して当該住戸情報(住棟番号並びに住戸番号)を取得して問い合わせ元に応答するものである。
【0037】
例えば、集合住宅の管理組合あるいは管理会社が契約しているIP電話の通信事業者において、INVITEメッセージの送信元アドレス(URI)に電話番号以外の情報(サブアドレス)を付加できないシステム仕様となっている場合、実施形態1で説明したようにINVITEメッセージの送信元アドレス(URI)に住戸情報を付加して送ることはできない。
【0038】
そこで本実施形態では、コールセンタのCTIサーバ200(又はIP−PBX100)が制御装置CTからINVITEメッセージを受け取った場合、CTIサーバ200からIP網NWを通じて発信元の住戸機Aiの住戸情報を問い合わせるメッセージ(HTTP GET)を制御装置CTに送信するようにしている。そして、当該問い合わせのメッセージを受け取った制御装置CTのHTTPサーバ部25が、第2の記憶部26に記憶されている接続情報管理テーブルに紹介して取得した住戸情報(住棟番号並びに住戸番号)をCTIサーバ200に応答する。その結果、CTIサーバ200で発信元の住戸情報を取得することができる。尚、コールセンタに設置されている電話システムがIP電話に対応した電話システムではなく、加入電話網に構内交換機(PBX)が接続された電話システムである場合は、制御装置CTからINVITEメッセージにサブアドレス情報を付加したとしても、加入電話網にはサブアドレス情報が伝達されないが、本実施形態によれば、コールセンタに設置されているCTIサーバ200によってIP網NWを通じて制御装置CTから住戸情報を取得することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
A1〜A4 住戸機
LI ロビーインターホン(共用部装置)
CT 制御装置
Ls 幹線
Ld1〜Ld4 住戸線
NW IP網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の共用部に設置される共用部装置と、集合住宅の各住戸に設置される住戸機と、これら複数の住戸機と共用部装置との間で音声情報や制御情報を伝送するための伝送路と、当該伝送路を介して共用部装置並びに各住戸機と接続された制御装置とを備え、各住戸機には固有の識別符号が割り当てられ、制御装置が当該識別符号に基づいて共用部装置から呼び出される住戸機を特定し、当該住戸機と共用部装置との間で伝送路を介して音声情報を伝送させることによってインターホン通話を行う集合住宅用インターホンシステムにおいて、
制御装置は、伝送路を介して情報伝送を行う伝送路インタフェース手段と、集合住宅の各住戸を特定するための住戸情報と各々の住戸に設置されている住戸機の識別符号との対応関係を記憶する記憶手段と、IP網を介してデータ通信を行う通信インタフェース手段と、通信インタフェース手段によりIP網を介した呼制御を行うとともに当該呼制御で確立されたセッション上で音声情報を交換する外線通話処理手段とを具備し、
外線通話処理手段は、何れかの住戸機より送信された外線発信要求を伝送路インタフェース手段を通じて受け取ると、記憶手段に記憶している前記対応関係を参照して外線発信要求元の住戸機の住戸情報を取得し、取得した当該住戸情報を外線発信用に割り当てられている電話番号に付加して発呼することを特徴とする集合住宅用インターホンシステム。
【請求項2】
各住戸機は、前記伝送路とは異なる別の伝送路並びにIP網を介してデータ通信を行う通信インタフェース手段と、通信インタフェース手段により前記別の伝送路並びにIP網を介した呼制御を行うとともに当該呼制御で確立されたセッション上で音声情報を交換する外線通話処理手段とを具備し、
各住戸機の外線通話処理手段は、制御装置経由の外線発信が不可である場合、制御装置に割り当てられている前記電話番号に自己の住戸情報を付加して発呼することを特徴とする請求項1記載の集合住宅用インターホンシステム。
【請求項3】
制御装置は、通信インタフェース手段によりIP網を介した情報伝送を行う情報伝送手段を具備し、情報伝送手段は、何れかの住戸機による外線発信要求に基づいて外線通話処理手段が呼制御を行っているときに、IP網を介して当該外線発信要求元の住戸情報の問い合わせを受け取ると、記憶手段に記憶している前記対応関係を参照して外線発信要求元の住戸機の住戸情報を取得し、取得した当該住戸情報をIP網を介して前記問い合わせの送信元に返信することを特徴とする請求項1又は2記載の集合住宅用インターホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−178072(P2010−178072A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18531(P2009−18531)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】