説明

集合住宅

【課題】各住戸に車庫を配置しながら、人と自動車との流れを分離できるようにする。
【解決手段】一本の道路106aと当該一本の道路106aに同一方向から連結する二本の道路106bとに囲まれた宅地104に広場領域108と当該広場領域108を介して対面する建築領域107a〜107dとを造成し、隣接配置される複数戸の住戸109を有する単一棟の住戸棟105a〜105dを各建築領域107a〜107dに建設し、住戸棟105a〜105dが有する各住戸109には、当該住戸棟105a〜105dが建設されている建築領域107a〜107dが接している道路106bからの自動車の出し入れを許容する車庫と、広場領域108からの人の出入を許容する玄関と、住戸109内で車庫と玄関とを連絡させる連絡通路とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一戸が二層以上に構成された集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
我国では、集合住宅として、アパート(木造、軽量鉄骨造)やマンション(RC造)等が比較的古くから一般化している。集合住宅としては、一戸の住戸が二層以上に構成されたものも良く見られる。このような形態の集合住宅は、タウンハウス(あるいはテラスハウス)やメゾネットマンションと呼ばれている。タウンハウスは、木造あるいは軽量鉄骨造であることからアパートの範疇に入るものとして把握され、伝統的には二層構造であるものを意味する。その構造上、長屋の現代的解釈であるとも考えられる。メゾネットマンションは、RC造であることからマンションの範疇に入るものとして把握され、それ故に三層構造であるものを意味する。
【0003】
これに対して、近年、三層構造のタウンハウスが一般化してきている。典型的なタウンハウスは、一階に車庫やバスルーム、二階にLDK(リビングダイニングキッチン)、三階に複数のベッドルームが配置された木造又は軽量鉄骨造の三階建てであって、数戸の住戸を横方向に隣接させて一棟をなす建築スタイルを採用する。このようなタウンハウスは、木造又は軽量鉄骨造であることとも相俟って、例えばマンション等に比べるとより一戸建てに近い感覚を人に与える。各住戸に車庫が組み込まれていることも、一戸建て感を増長させている。しかも、例えば特許文献1に開示されているように、隣接する住戸間の壁を別個独立に構成し、二つの壁の間に空間部を介在させた構成を採用した場合には、各住戸が構造的にも一戸建てに近くなる。特許文献1にも、各住戸に与えられる別個独立した壁構造の効果として、隣接する住戸間の振動、騒音を低減する上で有利となり、タウンハウスを構成する一戸の住戸を建て替えるような場合にも有利になることが謳われている(段落0005、0011、0013等参照)。このように考えると、タウンハウスの商品価値は、概ね、各住戸に車庫が組み込まれている方が高まるものと考えられる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−276170号公報
【特許文献2】特開2001−317220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前述した典型的なタウンハウス、つまり、一階に車庫やバスルーム、二階にLDK(リビングダイニングキッチン)、三階に複数のベッドルームが配置された間取りを採用した場合、どうしても車庫と玄関とが同一面側に配置され、場合によっては車庫の奥に玄関が配置されているような例も見受けられ、結果的に、人と車との流れを分離し難いという問題が生ずる。この問題は、タウンハウスが長屋の現代的解釈であると仮定した場合、旧来の長屋が持っていたコミュニティ機能を阻害してしまう方向に働く。
【0006】
もっとも、コミュニティ機能を阻害する方向性は、隣近所の付き合いが希薄となりがちな現代にあっては、むしろ好ましい方向性であるとの見解もあろう。しかしながら、その反面で、タウンハウスの顧客層を考えると、比較的に年齢が若く小さな子供を持つ層が多い。とするなら、例えば子供を媒介とする近所付き合いが発生し易いであろうし、それが煩わしいというよりはむしろ好ましいと受け取ってもらえそうである。また、コミュニティ機能を橋渡しする領域として車が入り込まない広場のような安全な空間があるのであれば、タウンハウスの顧客層である小さな子供を持つ親に対する訴求力が強まる。このようなことから、タウンハウスの場合、むしろ積極的にコミュニティ機能を発揮し得るように計画した方が、より商品価値が高まることが予想される。
【0007】
特許文献2には、正にそのような安全な広場を配置したタウンハウスが開示されている。しかしながら、特許文献2に記載されているタウンハウスは、侵入防止壁で囲まれた閉鎖空間内にタウンハウスと広場とを配置し、侵入防止壁の外に駐車場を配置した構成を採用している。このため、よくよく考えてみれば、閉鎖空間内に居住棟と庭園(広場)とを配置し、駐車場をそのような閉鎖空間から追いやった典型的なマンションのアナロジーであることに気が付く。とりわけ、車庫が各住戸に組み込まれていない点は、一戸建てに近いというタウンハウスの商品価値を削ぐものであると云えよう。
【0008】
本発明の目的は、各住戸に車庫を配置しながら、人と自動車との流れを分離できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の集合住宅は、少なくとも一本の道路と当該一本の道路に同一方向から連結する二本の道路とに囲まれた宅地と、前記宅地に造成され、前記二本の道路にそれぞれ接する少なくとも二区画の建築領域と、前記宅地において前記少なくとも二区画の建築領域の間に造成され、前記一本の道路に接する広場領域と、隣接配置される少なくとも二戸の住戸を有して単一の棟をなし、前記二区画の建築領域にそれぞれ建設された少なくとも二棟の住戸棟と、前記住戸棟が有する前記二戸の住戸にそれぞれ設けられ、当該住戸棟が建設されている前記建築領域が接している前記道路からの自動車の出し入れを許容する車庫と、前記住戸棟が有する前記二戸の住戸にそれぞれ設けられ、前記広場領域からの人の出入を許容する玄関と、前記住戸内で前記車庫と前記玄関とを連絡させる連絡通路と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の集合住宅によれば、車庫は道路側、玄関は車庫と反対の広場領域側に配置されているので、各住戸に車庫を配置しながら、人と自動車との流れを分離することができる。また、広場領域を設けることで、集合住宅における各住戸の居住者に、コミュニティ機能、子供の安全な遊び場、潤いの空間等、様々な恩恵を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の一形態を図1ないし図18に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施一形態を示す集合住宅全体の平面図である。集合住宅101は、公道102に接する用地103を宅地104とし、この宅地104に四つの住戸棟105a,105b,105c,105dが建設されて構成されている。したがって、本実施の形態において、集合住宅101の語は、一面においては、宅地104をも含む概念として用いている。別の一面において、集合住宅101の語は、個々の住戸棟105a,105b,105c,105dのそれぞれを指す概念として観念しても良い。つまり、本実施の形態において、集合住宅101の語は、宅地104という土地及びその定着物である個々の住戸棟105a,105b,105c,105dを一体として見る概念と、土地に対する定着物である個々の住戸棟105a,105b,105c,105dのそれぞれのみを見る概念との両者を含む柔軟性を有している。
【0013】
用地103のうち、宅地104でない部分は、私道106とされている。宅地104は私道106で四辺を囲まれている。
【0014】
説明の便宜上、私道106を構成する各部を、公道に接する一本の道路106a、この一本の道路106aに同一方向から連結する二本の道路106b、及びこれらの二本の道路106bの端部を連結するもう一本の道路106cと呼ぶ。道路106cは、二本の道路106bにおける一本の道路106aへの連結端と反対側の端部を連結している。
【0015】
宅地104は、二本の道路106aにそれぞれ二区画ずつ接するように造成された四区画の建築領域107a,107b,107c,107dと、それらの建築領域107a及び107bと建築領域107c及び107dとの間に造成された広場領域108とに区分されている。
【0016】
つまり、広場領域108を介して対面する二区画の建築領域107a及び107cは、一本の道路106aと二本の道路106bのそれぞれとに接し、広場領域108を介して対面する別の二区画の建築領域107b及び107dは、もう一本の道路106cと二本の道路106bのそれぞれとに接している。そして、住戸棟105aは建築領域107aに、住戸棟105bは建築領域107bに、住戸棟105cは建築領域107cに、そして住戸棟105dは建築領域107dに、それぞれ建設されている。
【0017】
また、広場領域108は、一本の道路106aともう一本の道路106cとに接し、それらの一本の道路106aともう一本の道路106cとを連結している。広場領域108には、様々な植栽や添景物が設置されて作庭されている。また、広場領域108には、子供が遊ぶことができる空間が確保されている。
【0018】
建築領域107aに建設された住戸棟105aは五戸の住戸109を含んでおり、図1中、建築領域107aの左側には住戸109一戸分の領域が開けられて外来者用の駐車場110として利用されている。また、建築領域107cに建設された住戸棟105cは六戸の住戸109を含んでおり、図1中、そのうちの最も左側の住戸109は管理棟109mとして用いられている。そして、建築領域107b及び107dに建設された住戸棟105b及び105dは、いずれも六戸の住戸109を含んでいる。
【0019】
公道102と一本の道路106aとの間には、正面門111が設置されている。正面門111には、扉が設けられていない。私道106は、図1に矢印で示すように、時計回りに一方通行と決められており、その入口には入場門112が設置され、その出口には退出門113が設置されている。これらの入場門112及び退出門113は、いずれもリモコン(図示せず)で開閉自在な扉を有している。そして、一本の道路106aと広場領域108との間には門扉114が取り付けられ、もう一本の道路106cと広場領域108との間には別の門扉115が取り付けられている。これらの門扉114及び門扉115には、錠が取り付けられており、外部からの侵入を阻止している。錠は、物理的な鍵によって開閉するものであっても、暗証番号やセキュリティカード等によって開閉する電子ロックキーであっても、あるいはその他の形式のものであっても良い。また、門扉114及び門扉115は、外部と広場領域108とを視覚的に完全に遮蔽しない形態、例えば複数本のバーが所定間隔で連結された形態や格子形状に形成されている。もっとも、門扉114及び門扉115の別の実施の形態としては、外部と広場領域108とを視覚的に完全に遮蔽する形態のものであっても良い。
【0020】
図2は、集合住宅101用の宅地104を造成する前の用地103の一例を示す平面図である。図2を参照することで、公道102に接する用地103の形状等が良く分かる。一例として、用地103は、40m×85m程度の広さ、つまり、3400平米(約1000坪強)程度の広さを有している。
【0021】
図3は、図2に示す用地103を集合住宅101用の宅地104として造成した状態を示す平面図である。図3に示すように、私道106の領域と宅地104の領域とを分けて造成する。一例として、私道106は、6m道路程度の広さに造成されている。公道102と用地103との接する部分には正面門111を設置し、公道102から私道106への侵入を可能にする。そして、宅地104を更に造成し、四区画の建築領域107a,107b,107c,107dと広場領域108とに分ける。こうして、住戸棟105a,105b,105c,105d等を建築する下準備が整う。
【0022】
図4は、住戸109の一階部分の平面図である。図4に示す住戸109は、建築領域107cに建設された住戸棟105cのうち、二つの住戸109に挟まれた一戸である。住戸109は、その一階部分に、車庫116と玄関117とを有している。車庫116は、二本の道路106bのうち、当該住戸109が含まれる住戸棟105cが建設されている建築領域107cに接する方の道路106bに面している。したがって、車庫116は、道路106bからの自動車Aの出し入れを許容する。このような車庫116の入口には、車庫扉118が取り付けられている。また、玄関117は、広場領域108に面している。したがって、玄関117は、広場領域108からの人の出入りを許容する。このような玄関117には、玄関扉119を開閉して出入りする。玄関扉119を開けて玄関117に入ると、住戸109の一階の床面に上がることができ、この床面からは、図示しない階段によって二階に昇り降りすることができる。
【0023】
また、個々の住戸109は、車庫116と玄関117とを連絡通路120で結んでいる。連絡通路120は、直角に屈曲した形状となり、車庫116と玄関117とが真直ぐに見通せてしまうことを抑制している。また、車庫116と連絡通路120との間には、扉121が取り付けられており、住戸109における玄関117の側の領域と車庫116とを分離している。連絡通路120は、住戸109の内部空間ではない外部空間として配されているが、住戸109の二階部分の真下に位置付けられているため、完全な戸外空間というわけでもない半戸外空間として構成されている。
【0024】
一例として、個々の住戸109は、10.0m×5.5m程度の縦横長さを有する高さ9〜10m程度の直方体マスとして構成されている。車庫116は、間口が5.2m程度で5.0〜5.5m程度の奥行きを有している。したがって、車庫116には2台の自動車Aを収容することができる。車庫116は、奥行きを5.0m程度とした場合には中型車と小型車とを一台ずつ、奥行きを5.5m程度とした場合には大型車と中型車とを一台ずつ、余裕をもって収容できる。
【0025】
ここで、個々の住戸109同士の連結構造について説明する。図4に示すように、個々の住戸109は、四隅及びその他の必要な箇所に複数本の柱122を有している。これらの柱122は、住戸109の構造強度を維持する上で重要な役割を果たしている。そして、個々の住戸109が有している隣接する二本の柱122の間には側壁123が構築されている。そこで、隣接する二戸の住戸109に着目すると、それぞれの住戸109が有している二つの側壁123の間には空間部124が開けられている。
【0026】
図5は、隣接する二戸の住戸109における柱122の連結構造を示す平面図である。図4に示すように、個々の住戸109の四隅に立設されている柱122は、隣接する二戸の住戸109では空間部124を介して対面している。こうして対面している二本の柱122は、それらの柱122の間に配置されてそれらの柱122に凹凸嵌合する補強部材125で補強され、構造強度を増している。つまり、柱122にはその長さ方向に沿ってほぞ穴126が切られ、補強部材125にはその長さ方向に沿ってほぞ穴126に嵌合する二筋のほぞ127が形成されている。したがって、補強部材125は、二本の柱122のほぞ穴126にそれぞれほぞ127を嵌合させた状態で二本の柱122を繋ぐことができ、これによって、二本の柱122を補強してその構造強度を増すことができる。
【0027】
図6は、隣接する二戸の住戸109における柱122の連結構造を示す斜視図である。補強部材125は、長さ1m程度に構成されている。これに対して、一本の柱122は、一例ではあるが、5m程度の長さとなっている。そこで、柱122の長さが5mであるとすると、1mの長さの補強部材125を五本用意し、これを継いで使用する。つまり、図6に示すように、補強部材125は、既に立設されている二本の柱122の間にその上方から押し込まれる。そして、次の補強部材125もそれらの柱122の間にその上方から押し込まれる。これを繰り返すことにより、長さ5mの二本の柱122の間に五本の補強部材125が押し込まれ、各補強部材125が継がれた状態となる。
【0028】
図7は、隣接する二戸の住戸109における柱122の連結構造の変形例を示す平面図である。図5及び図6に例示した補強部材125は、その相対向する二面の中央部分にほぞ127が形成されている。このため、補強部材125は、その断面形状が十字形状をしている。これに対して、図7に例示するように、相対向する二面の端部にほぞ127が形成されている補強部材125を用いても良い。このような補強部材125は、その断面形状がT字形状となる。
【0029】
ここで、図5ないし図7に示す補強部材125は、一例として、角材や軽量鉄骨材等のように剛性が高い部材によって形成されている。これにより、個々の住戸109がリジットに連結され、それぞれの住戸109の構造強度を高めることができる。別の一例として、補強部材125は、樹脂やゴム、あるいは一部に樹脂やゴムを含む部材等のような柔軟性を有する部材によって形成されていても良い。この場合、補強部材125がない場合に比べれば個々の住戸109の構造強度を高めることができながら、音や振動の伝達を抑制することができる。つまり、一方の住戸109でピアノを弾く等で大きな音が生じたり、あるいは子供が暴れる等で振動が発生したりしたとしても、それらの音や振動が補強部材125で連結されている隣家に伝わりにくくなる。
【0030】
図8は、熱交換システムを示す模式図である。本実施の形態の集合住宅101は、空間部124内の空気を調整する空調部としての熱交換システム201を備えている。熱交換システム201は、外気を地熱と熱交換して排気筒202より空間部124に導くシステムである。このような熱交換システム201は、概略、くり石層203と、戸外の空気をくり石層203に送り込む送風構造204と、くり石層203からの空気を重力方向に送りながら地中の地熱と熱交換させるための地中パイプ205と、熱交換された空気を個々の住戸109に配送するための配送構造206とから構成されている。
【0031】
図9は、熱交換システム201の縦断側面図である。くり石層203は、図8に示すように、広場領域108に埋設されている。埋設深さは、一例として、地上から400〜800mm程度である。くり石層203の上部は、くり石層203の内部の地熱を戸外の温度から遮断するための断熱シート207で覆われ、その上に土層208が配されている。土層208は、断熱シート207の上にコンクリート層(図示せず)を設けておき、その上に配しても良い。くり石層203の下部には、防湿シート209が敷設されている。防湿シート209は、くり石層203の内部の水分が地中に移動することを許容しながら、地中の水分がくり石層203の内部に上昇することを防止する目的で敷設されている。
【0032】
送風構造204は、戸外の空気を空気取込ファン210で取り込み、取り込んだ空気を導管211を介してくり石層203の内部に送り込む構造のものである。空気取込ファン210は、集合住宅の入口に配された管理棟109mに設けられた制御装置212によって駆動制御される。制御装置212は、例えば集積回路によって所定のプロセスを実行するように構築されたシーケンサ構成のものである。
【0033】
図10は、熱交換システム201が有している地中パイプ205の構造を示す縦断側面図である。地中パイプ205は、外周パイプ213と内周パイプ214との二重構造をなし、複数本設けられている。内周パイプ214は、後述する配送構造206を構成する配送パイプ215に連絡しており、外周パイプ213はその配送パイプ215の部分まで延出して設けられている。このような複数本の地中パイプ205は、くり石層203の中間領域から更に地中深く埋設されている。そして、くり石層203に埋設されている領域では、外周パイプ213に複数個の空気取入孔216が設けられている。そこで、これらの空気取入孔216を介して、送風構造204によってくり石層203に送り込まれた戸外の空気を外周パイプ213と内周パイプ214との間の隙間領域に導き入れることができるように構成されている。
【0034】
このような外周パイプ213と内周パイプ214との間の隙間領域には、螺旋状に形成されたフィン217が配置されている。フィン217は、例えば外周パイプ213の内周側に形成され、外周パイプ213と内周パイプ214との間を仕切る。したがって、外周パイプ213と内周パイプ214との間の隙間領域は、螺旋状の空間となり、この空間が熱交換通路218となる。内周パイプ214の下端は開放され、外周パイプ213よりも短く形成されている。外周パイプ213の下端は閉鎖され、地下水等が外周パイプ213の内部に入り込まないように構成されている。そこで、外周パイプ213と内周パイプ214との間に形成された熱交換通路218は、外周パイプ213よりも短く形成された内周パイプ214に連絡することになる。
【0035】
地中パイプ205は、一例としてポリエチレン、別の一例として防錆処理が施された金属等によって製造される。フィン217も同様又は類似の材料から製造される。
【0036】
このような構造上、送風構造204によってくり石層203に送り込まれた戸外の空気は、空気取入孔216を介して外周パイプ213と内周パイプ214との間に導き入れられ、熱交換通路218を下降する。この際、熱交換通路218は螺旋状に形成されているので、空気も螺旋状に渦を巻きながらゆっくりと下降し、その過程で、外周パイプ213及びフィン217から下降する空気に効率よく地熱が伝導される。そこで、夏季には、熱くなった戸外の空気が熱交換通路218を下降する過程で冷まされ、冬季には、冷たくなった戸外の空気が熱交換通路218を下降する過程で暖められる。また、夏季には、地熱によってフィン217の表面が比較的低温に保たれているので、戸外からの高温多湿の空気がフィン217に衝突すると空気中の水分がフィン217に付着し、熱交換通路218を通過する過程で空気が除湿される。冬季には、地熱によってフィン217の表面が比較的高温に保たれて予め水分が付着した状態となっているので、戸外からの乾燥した空気がフィン217に衝突すると予めフィン217に付着している水分が空気に供給され、熱交換通路218を通過する過程で空気が加湿される。更に、通常は結露によってフィン217に水分が付着しているため、戸外から導入された空気に含まれている不純物がフィン217に吸着し、熱交換通路218を通過する過程で空気が清浄化される。こうして、熱交換通路218を通過する過程で、空気の温度、湿度が調整され、空気中の不純物が清浄化される。
【0037】
配送構造206は、地中パイプ205で熱交換されて調整された空気を個々の住戸109に配送する構造を備えている。熱交換通路218を通過して調整された空気は、内周パイプ214を通って配送パイプ215に供給される。ここで、図8に示すように、配送パイプ215は複数に分岐し、各分岐先は、隣接する住戸109の間に形成されている空間部124に配置されている排気筒202に連絡している。そして、排気筒202に至る手前の部分には、個々の排気筒202に対応させて吸引ファン219が配置されている。吸引ファン219は、配送パイプ215及び地中パイプ205の内部の空気を引き込み、排気筒202の方向に通気させる。したがって、熱交換通路218を通過して調整された空気は、吸引ファン219によって内周パイプ214から配送パイプ215に引き込まれ、配送パイプ215から分岐して排気筒202より排出される。このような吸引ファン219は、空気取込ファン210と同様に、集合住宅の入口に配された管理棟109mに設けられた制御装置212によって駆動制御される。
【0038】
図11は、図8におけるA−A線断面図である。個々の住戸109は、隣接する住戸109とは別個独立した基礎128を備えている。基礎128は、図11に示すようにL字形状に形成され、隣接する住戸109の基礎128との間をスペーサ129によって定められて地中に埋設されている。図11に示すように、隣接する住戸109の間では、屋根130の高さが交互に違えられており、高さが低い方の屋根130は隣接する住戸109に接するまで延出している。そこで、隣接する二戸の住戸109の間に形成される空間部124は、個々の住戸109の側壁123と、高さが低い方の屋根130と、二本の柱122の間に配置されてこれらの柱122を繋ぐ補強部材125とによって、密閉空間とされている。この意味で、当該屋根130及び補強部材125は、空間部124を開けて対面する二つの側壁123の上部と両側部とを閉鎖する閉鎖部としての役割を果たしている。
【0039】
図11に示すように、個々の住戸109は、一階空間109aと二階空間109bと三階空間109cと屋根裏空間109dとを有している。また、地面と一階空間109aとの間は軒下空間109gaとなり、一階空間109aと二階空間109bとの間は一階天井裏空間109abとなり、二階空間109bと三階空間109cとの間は二階天井裏空間109bcとなっている。そして、個々の住戸109は、空間部124の内部の調整された空気を住戸109の内部空間、より詳細には一階空間109aと二階空間109bと三階空間109cとに導入するための複数個の導入口131と、屋根裏空間109dに導入するための連通口132とを有している。一つの導入口131は、空間部124と軒下空間109gaとを連通する位置に配置され、この導入口131から導入された空気は図示しない構造によって一階空間109aに導かれる。別の導入口131は、空間部124と一階天井裏空間109abとを連通する位置に配置され、この導入口131から導入された空気は図示しない構造によって二階空間109bに導かれる。そして、更に別の導入口131は、空間部124と二階天井裏空間109bcとを連通する位置に配置され、この導入口131から導入された空気は図示しない構造によって三階空間109cに導かれる。
【0040】
また、個々の導入口131には、導入口131から空間部124の内部の空気を住戸109の内部に引き込む空調ファン133が取り付けられ、連通口132には、連通口132を介して空間部124と屋根裏空間109dとの間で相互の空気の流れを選択的に生じさせる屋根裏ファン134が取り付けられている。空調ファン133には、空間部124に対面する位置に温度センサ301と湿度センサ302とが組み込まれている(図16参照)。屋根裏ファン134には、空間部124に対面する位置と屋根裏空間109dに対面する位置とに、温度センサ301と湿度センサ302とが組み込まれている(図16参照)。そこで、空調ファン133に組み込まれた温度センサ301及び湿度センサ302、並びに屋根裏ファン134に組み込まれた一組の温度センサ301及び湿度センサ302は、空間部124の内部の温度及び湿度に応じた出力値を出力する。また、屋根裏ファン134に組み込まれた別の一組の温度センサ301及び湿度センサ302は、屋根裏空間109dの温度及び湿度に応じた出力値を出力する。
【0041】
更に、屋根130には、屋根裏空間109dの内部の空気を外部に排出する排出口135を備えた排出ダクト136が取り付けられている。
【0042】
図12は、側壁123に取り付けられる波うち板の一部を切り取って示す斜視図である。図11に示すように、隣接する個々の住戸109の相対面する側壁123には、熱伝導性に優れた波うち板137が取り付けられている。波うち板137は、その波うちの分だけ、表面積を増大させる構造のものである。このような波うち板137は、側壁123の略全面に渡り配置されている。
【0043】
図13は、車庫116の排気構造を示す平面図である。車庫116には、車庫116の内部の空気を排気ファン138で引き込んで外部に排気する排気部139が設けられている。排気部139は、二台の自動車Aの収納位置の直下に位置させて車庫116の地面に凹状に形成された二つの排気ガス排出用の排気ガス吸入口140と、これらの二つの排気ガス吸入口140を車庫116の地面の下で連絡させる第1の連絡通路141と、一方の排気ガス吸入口140と基礎128とを車庫116の地面の下で連絡させる第2の連絡通路142とを備える。そして、第2の連絡通路142内で基礎128に排気ファン138を取り付け、この排気ファン138の排気側に取り付けた配管143で排気ガスを戸外に導く構成である。配管143は、基礎128の一部を貫通し、この基礎128と隣接する住戸109の基礎128との間から立ち上げられて空間部124に一部が配置され、再び地中に埋設されて住戸109の戸外に設けられた排気口144に連通している。排気口144は、宅地104内で車庫116の入口脇に配置されている。したがって、排気部139は、車庫116の内部で発生した排気ガスを排気ガス吸入口140から吸引して第1の連絡通路141及び第2の連絡通路142を介して排気ファン138に引き込み、配管143を介して排気口144から戸外に排気することができる。
【0044】
図13に一部を省略して示すように、二つの排気ガス吸入口140は、網目状に複数の穴が開けられた鉄蓋145で開閉自在に覆われている。また、排気口144も同様構造の鉄蓋146で開閉自在に覆われている。
【0045】
図14は、車庫116の排気構造を示す縦断正面図である。図14を参照することで、第1の連絡通路141による二つの排気ガス吸入口140の連絡構造と、第2の連絡通路142による一方の排気ガス吸入口140と基礎128との連絡構造が良く分かる。また、図14には、配管143の一部が立ち上がって空間部124に配置されている様子も示されている。
【0046】
図15は、車庫116の排気構造を示す縦断側面図である。道路106bには、宅地104との境界部分に排水溝147が設けられており、複数個の排水溝蓋148で覆われている。車庫116の内部の排気ガスが配管143を介して導かれ戸外に排出する排気口144は、排水溝147に連通し、排気口144に入り込んだ雨等を排水溝147に流すことができるようになっている。
【0047】
ここで、車庫116の内部には、排気ガスの濃度を検出する排気ガスセンサ303が配備されている(図16参照)。排気ガスセンサ303は、車庫116の内部で発生した排気ガスの濃度に応じた出力値を出力する。そこで、排気部139は、排気ガスセンサ303の出力値に基づき検出される車庫116の内部で発生した排気ガスの濃度に応じて排気ファン138を駆動制御し、排気ガスを戸外に逃がす。
【0048】
図16は、制御系のブロック図である。本実施の形態の集合住宅101は、個々の住戸109に対応させて、空調ファン133、屋根裏ファン134及び排気ファン138が有しているファンモータMを駆動制御する制御部304を配備している。そこで、制御部304には、空調ファン133及び屋根裏ファン134に取り付けられている温度センサ301及び湿度センサ302と、車庫116に配備されている排気ガスセンサ303とが接続され、これらの温度センサ301、湿度センサ302及び排気ガスセンサ303の出力値を取り込めるようになっている。制御部304は、例えば集積回路によって所定のプロセスを実行するように構築されたシーケンサ構成のものである。
【0049】
このような構成において、集合住宅101の個々の住戸109に居住する居住者等が自動車Aで出かける場合、玄関117から出たら連絡通路120を通って扉121を開け、車庫116に行く。そして、車庫扉118を開けて車庫116から自動車Aを出し、時計回りに定められている一方通行路である私道106を通り、退出門113をリモコン(図示せず)で開けて正面門111から公道102に出る。これに対して、自動車Aで外出していた居住者が個々の住戸109に帰宅する場合には、正面門111から私道106に入り、入場門112をリモコンで開けて自宅である住戸109前に行き、車庫扉118を開けて車庫116に車を納める。そして、車庫116から扉121を開けて連絡通路120に入り、玄関117から自宅である住戸109に入る。また、自動車Aに乗ってきた外来者は、正面門111から私道106に入り、駐車場110に駐車することができる。このような自動車Aの通行は、専ら私道106を使用して行なわれる。
【0050】
一方、歩行者である居住者やその来訪者等は、正面門111から私道106を通り、門扉114を開けて広場領域108に入る。そして、目的とする住戸109に、その玄関117から入ることができる。広場領域108は、自動車Aが入り込めない領域である。したがって、本実施の形態の集合住宅101によれば、各住戸109に車庫116を配置しながら、人と自動車Aとの流れを完全に分離することができる。これにより、歩行者の安全性を確保することができるばかりでなく、集合住宅101における各住戸109の居住者に対して、コミュニティ機能、子供の安全な遊び場、潤いの空間等、様々な恩恵を提供することができる。
【0051】
また、個々の住戸109における玄関117と車庫116との間の移動は、連絡通路120によって行なわれる。連絡通路120は、前述したように、直角に屈曲した形状となっていることから、車庫116と玄関117とが真直ぐに見通せてしまうことが抑制される。これにより、奥ゆかしさが演出される。しかも、連絡通路120は、住戸109の内部空間ではない外部空間として配されているが、住戸109の二階部分の真下に位置付けられているため、完全な戸外空間というわけでもない半戸外空間として構成されている。このため、連絡通路120は曖昧さを演出し、露地空間的な使い方をすることも可能である。その上、車庫116から扉121を開けると連絡通路120に出るわけであるが、連絡通路120は住戸109の二階部分の真下に位置付けられているために光が届きにくく、その反面、扉121を開けた向こう側には光に溢れる広場領域108が広がっているため、明暗の妙を演出することができる。このように、連絡通路120は、広場領域108を介して二棟の住戸棟105a及び105c又は105b及び105dが対面しているという本実施の形態の集合住宅101の構成と相俟って、10m×5.5m程度の狭小マスでは通常得難い多種多様なシーンの演出に一役買うことができる。
【0052】
また、本実施の形態の集合住宅101では、全ての住戸棟105a,105b,105c,105dにおいて、隣接する二戸の住戸109がそれぞれの側壁123を有しており、しかもそれぞれの側壁123の間に空間部124が配置されている。この意味で、隣接する二戸の住戸109の独立性が確保されている。このため、隣接する住戸109の間での振動、騒音を低減することができ、そればかりか、一戸の住戸109のみの建て替えも可能となっている。その反面、隣接する二戸の住戸109の間の設けられた空間部124は、それらの二戸の住戸109が完全に別個独立しているわけではなく、基本的には一棟の住戸棟105a,105b,105c,105dとして構成されていることから、密閉空間となる。このため、密閉空間となった空間部124内で空気が停滞しがちとなり、空気が流れないことによる各種の不都合が発生しがちである。例えば、高湿環境となった場合にカビが発生したり各部が急速に傷んだりすることや、空間部124内の空気が冷えたり熱くなったりした場合にこれに隣接する住戸109の壁面が冷やされたり加熱されたりしてしまう等の事態の発生が予想される。これに対して、本実施の形態では、熱交換システム201によって地熱と熱交換されて調整された清浄な空気を排気筒202から空間部124に導き入れることができる。このため、空間部124の内部に留まる空気が調整、つまり調温及び調湿され、密閉空間となった空間部124内で空気が停滞することによる上記不都合を解消することができる。
【0053】
しかも、制御部304によってファンモータMを駆動制御し、空調ファン133を作動させることで、調温及び調湿による調整された清浄な空気を住戸109に導くこともできる。つまり、軒下空間109gaから一階空間109aに、一階天井裏空間109abから二階空間109bに、そして二階天井裏空間109bcから三階空間109cに、それぞれ調整された清浄な空気を導き入れることができる。この場合、本実施の形態の場合、空間部124を構成する隣接する二棟の住戸109の側壁123には、導電性に優れた波うち板137が取り付けられているので、側壁123の熱容量が大きい。このため、温度調整された空気が排気筒202から空間部124に供給されると、波うち板137の温度はその温度調整された空気の温度に近付こうとする。すると、波うち板137に挟まれた空間部124の温度も、排気筒202から供給される調整された空気の温度に近付く。このようなことから、住戸109内に、より快適に調整された清浄な空気を導き入れることが可能となる。
【0054】
また、夏季などは、屋根裏空間109dの内部の温度や湿度が相当に高くなる。このような場合、制御部304によってファンモータMを駆動制御し、屋根裏ファン134を作動させる。この際、空間部124内の空気を屋根裏空間109dに導き入れることができる方向で屋根裏ファン134を作動させる。これにより、高温多湿となった屋根裏空間109dの内部に溜まる空気が排出ダクト136を介して戸外に排出され、屋根裏空間109dの温度を下げることができる。この際、制御部304は、屋根裏空間109dの側に対面させて屋根裏ファン134に取り付けられた温度センサ301及び湿度センサ302の出力値を参照し、屋根裏ファン134用のファンモータMの駆動制御を行うことができる。一例として、屋根裏空間109dの内部の温度や湿度に対応して変動するそれらの温度センサ301及び湿度センサ302の出力値がある規定値を超えた場合に、屋根裏空間109dの内部に溜まる空気が排出ダクト136を介して戸外に排出されるように屋根裏ファン134を作動させる。
【0055】
これに対して、冬季などは、空間部124の内部の空気を暖めることができるように、制御部304が各部を制御する。つまり、制御部304は、空間部124に対面するよう空調ファン133に設けられている温度センサ301及び湿度センサ302の出力値を参照し、空間部124の内部温度や内部湿度が低下した場合、ファンモータMを駆動制御し、屋根裏空間109d内の空気を引き込んで空間部124に供給できる方向で屋根裏ファン134を作動させる。これにより、冬季でもある程度は高温多湿になっている屋根裏空間109dの内部の空気を空間部124に導き入れ、空間部124の内部温度や内部湿度を上昇させることができる。そして、この場合、前述した波うち板137の効果で側壁123の熱容量が大きくなることから、空間部124の内部温度の調整効果が優れたものとなる。
【0056】
しかも、本実施の形態の集合住宅101では、車庫116が個々の住戸109に設けられている。そして、車庫116に収容された自動車Aの排気ガスは、排気ガスセンサ303の出力値がある規定値を超えることによって制御部304が排気ファン138用のファンモータMを起動させることで、排気部139によって排気ガス吸入口140から取り込まれ、第1の連絡通路141、第2の連絡通路142及び配管143を介して排気口144より戸外に排気される。この過程で、配管143の一部は空間部124に露出配置されていることから、配管143の内部を通る熱い排気ガスによって露出している配管143の周辺温度が上昇する。ある程度の暖気運転時間経過後や自動車Aで帰宅後の場合等には、自動車Aのエンジンやマフラー(いずれも図示せず)の熱も排気ガス吸入口140から取り込まれるため、より一層、空間部124に露出した配管143の周辺温度が上昇する。このため、空間部124では、空間部124内に露出している配管143の周辺の温度上昇した空気が熱膨張によって軽くなり、上昇を始める。これに伴い、空間部124の上方に位置する冷たい空気が下降し、空間部124内で空気の対流が発生する。これにより、空間部124内の空気が一層暖められる。
【0057】
そして、個々の住戸109に居住する居住者の生活パターンを考えると、自動車Aがより多く使われるのは、朝の出勤時間と、夕方から夜にかけての帰宅時間であることが予想される。とりわけ、朝の出勤時間には暖機運転される可能性があるであろうし、帰宅時間にはエンジンやマフラーが温まっているために自動車Aが熱源として機能する。このようなことを考えると、気温が低下している朝と夕方から夜にかけての時間に集中して空間部124内に露出している配管143の周辺温度が高まると推定される。とするなら、そのような居住者が寒さを感じ易い時間に空間部124内で空気の対流が発生し、空間部124内の空気が暖められる。
【0058】
以上説明したように、冬季には、屋根裏空間109d内のある程度は高温多湿になっている空気を空間部124に導き入れ、空間部124の内部温度や内部湿度を上昇させることができる。また、自動車Aが使用される場合には、空間部124内に露出している配管143の周辺温度が上昇することによる空間部124内での空気の対流の発生が期待できる。このようなことから、空間部124内の空気を暖めることができる。その結果、第一に、空間部124内の空気が暖まることによってこれと接する室内空間の壁面を暖めることができ、それ自体で室内を暖める効果を期待することができるばかりでなく、例えば別の暖房手法との併用によって室内の保温効果をも期待することができる。第二に、制御部304によってファンモータMを駆動制御し、空調ファン133を作動させることで、暖められた空間部124内の空気を室内に導くこともできる。
【0059】
なお、夏季には、空間部124内に露出している配管143の周辺温度が上昇した場合、制御部304によってファンモータMを駆動制御し、空間部124内の空気を屋根裏空間109dに導き入れることができる方向で屋根裏ファン134を作動させれば良い。これにより、空間部124内の暖められた空気が屋根裏空間109dに引き込まれ、排出ダクト136を介して速やかに戸外に排出される。
【0060】
図17は、集合住宅用の用地の別の二例を示す模式図である。図17中、Aと表記されている土地とBと表記されている土地とを集合住宅101用の用地103として確保できたと想定する。一例として、Aと表記されている用地103は、間口が50mで奥行きが35m程度の広さ、つまり、1750平米(約530坪弱)の広さを有している。また、Bと表記されている用地103は、間口が50mで奥行きも50m程度の広さ、つまり、2500平米(約750坪強)の広さを有している。
【0061】
図18は、図17に示す二例の用地103(A及びB)を集合住宅101用の宅地104として造成し、建築領域107に住戸棟105を建築した状態を示す平面図である。Aの用地103には、コの字形状に私道106が造成され、その中に宅地104が造成されている。宅地104には、東西に延びて両端が造成された私道106に接する広場領域108が造成され、この広場領域108を介して二棟の住戸棟105が建造されている。これらの二棟の住戸棟105は、六戸の住戸109を擁している。これに対して、Bの用地103には、私道106が造成されず、全てが宅地104として利用されている。宅地104には、東西に延びる広場領域108が二つ造成され、これらの広場領域108を介して三棟の住戸棟105が建造されている。各住戸棟105は、八戸の住戸109を擁している。また、二つの広場領域108の入口には、いずれも門扉114が配されている。
【0062】
このように、本実施の形態の集合住宅101は、様々な広さ及び形状の用地103を利用して建造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施一形態を示す集合住宅全体の平面図である。
【図2】集合住宅用の宅地を造成する前の用地の一例を示す平面図である。
【図3】図2に示す用地を集合住宅用の宅地として造成した状態を示す平面図である。
【図4】住戸の一階部分の平面図である。
【図5】隣接する二戸の住戸における柱の連結構造を示す平面図である。
【図6】その斜視図である。
【図7】その変形例を示す平面図である。
【図8】熱交換システムを示す模式図である。
【図9】熱交換システムの縦断側面図である。
【図10】熱交換システムが有している地中パイプの構造を示す縦断側面図である。
【図11】図8におけるA−A線断面図である。
【図12】側壁に取り付けられる波うち板の一部を切り取って示す斜視図である。
【図13】車庫の排気構造を示す平面図である。
【図14】その縦断正面図である。
【図15】その縦断側面図である。
【図16】制御系のブロック図である。
【図17】集合住宅用の用地の別の二例を示す模式図である。
【図18】図17に示す二例の用地を集合住宅用の宅地として造成し、建築領域に住戸棟を建築した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0064】
104 宅地
105(105a,105b,105c,105d) 住戸棟
106a 一本の道路
106b 二本の道路
106c もう一本の道路
107(107a,107b,107c,107d) 建築領域
108 広場領域
109 住戸
109d 屋根裏空間
114,115 門扉
116 車庫
117 玄関
120 連絡通路
122 柱
123 側壁
124 空間部
125 補強部材(閉鎖部)
128 基礎
130 屋根(閉鎖部)
132 連通口
134 屋根裏ファン
135 排出口
137 波うち板
138 排気ファン
139 排気部
143 配管
303 排気ガスセンサ
304 制御部
A 自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一本の道路と当該一本の道路に同一方向から連結する二本の道路とに囲まれた宅地と、
前記宅地に造成され、前記二本の道路にそれぞれ接する少なくとも二区画の建築領域と、
前記宅地において前記少なくとも二区画の建築領域の間に造成され、前記一本の道路に接する広場領域と、
隣接配置される少なくとも二戸の住戸を有して単一の棟をなし、前記二区画の建築領域にそれぞれ建設された少なくとも二棟の住戸棟と、
前記住戸棟が有する前記二戸の住戸にそれぞれ設けられ、当該住戸棟が建設されている前記建築領域が接している前記道路からの自動車の出し入れを許容する車庫と、
前記住戸棟が有する前記二戸の住戸にそれぞれ設けられ、前記広場領域からの人の出入を許容する玄関と、
前記住戸内で前記車庫と前記玄関とを連絡させる連絡通路と、
を備える集合住宅。
【請求項2】
前記二本の道路における前記一本の道路への連結端と反対側の端部は、もう一本の道路で連結されており、
前記広場領域は前記もう一本の道路に接している、
請求項1記載の集合住宅。
【請求項3】
前記一本の道路と前記広場領域との間を開閉する門扉を備える、請求項1又は2記載の集合住宅。
【請求項4】
前記もう一本の道路と前記広場領域との間を開閉する門扉を備える、請求項2又は3記載の集合住宅。
【請求項5】
前記二戸の住戸の隣接境界に設けられる当該二戸の住戸それぞれ用の基礎と、
前記基礎からそれぞれ立設されて空間部を開けて対面する前記二戸の住戸の側壁と、
前記空間部を開けて対面する前記二つの側壁の上部と両側部とを閉鎖する閉鎖部と、
を備える請求項1ないし4のいずれか一記載の集合住宅。
【請求項6】
前記基礎は、隣接する前記二戸の住戸それぞれに独立して設けられている、請求項5記載の集合住宅。
【請求項7】
前記二つの側壁の両側部を閉鎖する閉鎖部は、隣接する前記二戸の住戸の相対向する柱に対して凹凸嵌合する補強部材によって構成されている、請求項5又は6記載の集合住宅。
【請求項8】
前記空間部に一部が配置される配管を介して前記車庫内の空気を排気ファンで引き込んで外部に排気する排気部と、
前記車庫内に配備された排気ガスの濃度を検出する排気ガスセンサと、
前記排気ガスセンサの出力値が規定値を超えた場合に前記排気ファンを起動させる制御部と、
を備える請求項5ないし7のいずれか一記載の集合住宅。
【請求項9】
前記空間部と前記住戸の屋根裏空間とを連通する連通口と、
前記連通口を介して前記空間部と前記屋根裏空間との間で相互の空気の流れを選択的に生じさせる屋根裏ファンと、
前記屋根裏空間内の空気を外部に排出する排出口と、
を備える、請求項5ないし8のいずれか一記載の集合住宅。
【請求項10】
前記空間部を開けて対面する前記二戸の住戸の側壁には、熱伝導性を有する波うち板が取り付けられている、請求項5ないし9のいずれか一記載の集合住宅。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2007−255000(P2007−255000A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78697(P2006−78697)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(598157720)株式会社エムビーエス (8)
【Fターム(参考)】