説明

集塵機

【課題】フィルター方式でもサイクロン方式でもない小型化可能な新規の捕集機構を実現することで、これらの方式よりも、シンプルな構成及び低動力で高い粉塵捕集効率が得られ、しかも捕集のための部材に目詰まりなどの劣化及び廃棄の問題が実質上生じない集塵機を提供する。
【解決手段】複数の捕集ユニット1が上流から下流へと直列に組み合わさった形態の集塵機2であって、各捕集ユニット1は、ポケット部15と、ポケット部の開口面を覆う板状の立体網状体12と、立体網状体12の上面に沿って気流を導く通気空間17と、左右一方の端部に形成された通気筒部16とからなり、捕集ユニット1同士が、互いに、通気筒部16が逆側に配置されるようにして組み合わさる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密作業場における微粒粉塵の除去のほか、紛体塗装や吹付け塗装の作業場での塗料飛沫、紛体の移送や混合の作業場での飛散した紛体、作業場の紙粉、木工所の木屑等の空気中の粉塵、並びに、オイルミストや、粉塵とミストとの混合物を捕集・回収する集塵機に関する。特には、慣性力を利用した非サイクロン式の集塵機であって、小型化及び多量の粉塵の処理に適しており、かつバグフィルタを必要としないものに関する。
【背景技術】
【0002】
集塵方式には、スクラバーなどの液滴を用いるもの、静電気や各種フィルターを用いるもののほか、サイクロン方式などがある。この中でも、バグフィルターを用いる集塵機は、設置コスト及び運転コストが比較的低く設置スペースも小さくすることが可能であるといったメリットがある。そのため、小型の簡便な集塵機では、バグフィルターを用いるものが主流となっている。
【0003】
しかし、大量に排出される粉塵を捕集するとともに、有害な微細な粉塵を充分に捕集するには、バグフィルター方式が必ずしも適していない。そこで、特開2010-046612では、一種のスクラバー方式にて、低い動力にて稼働でき、かつ、狭小なスペースに設置できる微粒物質の捕集装置を提案した。また、特開2008-237951では、狭小なスペースに設置でき、かつ高効率のサイクロンによる粉塵の捕集装置を提案した。
【0004】
一方、サイクロン方式以外で、慣性力を用いて粉塵を回収する方式として、特開2009-112966では、鋳物廃砂を回収するにあたり、略垂直に配置された板に、繰り返し衝突させる方式が提案されている。また、特開2009-056360には、燃焼炉の排ガス中に含まれる粉塵を捕集するにあたり、サイクロンに導入する前に天井面に衝突させて180℃流路を変えるようにすることが提案されている。さらに、特開2011-092897には、静電作用に加えて迷路構造により繰り返し、じゃま板に衝突させることで、空気を清浄にすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-046612
【特許文献2】特開2008-237951
【特許文献3】特開2009-112966
【特許文献4】特開2009-056360
【特許文献5】特開2011-092897
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、バグフィルターを用いる集塵機は、粉塵が濾布上に堆積するにつれて吸引効率が悪化するので、ブロアーの出力を大きく設定する必要がある。また、堆積した粉塵を落とすための機構または作業が必要になる他、そのための騒音などの問題が生じる。さらには、微粉が多く含まれる場合に比較的急速に目詰まりが生じる他、比重が大きい粗粒が送られるとフィルターを損傷するおそれもある。
【0007】
なお、バグフィルターなどで濾過する方式であると、フィルターが微分などによる目詰まりにより劣化していき、廃棄する必要があったため、廃棄処分の問題から好ましくなかった。特には、粉塵にオイルミストが含まれる場合、フィルターの劣化が比較的急速に進んでしまう。
【0008】
一方、特開2010-046612のように、水などの液体を用いて捕集する方式であると、直接に多量の粉塵を効率良く分離するのには必ずしも適しておらず、予備的な分離装置を必要とする場合もある。他方、特開2008-237951に提案したサイクロン方式を用いる粉塵の捕集装置では、バグフィルター方式に比べ、設備コスト及び運転動力を必ずしも十分に低減できない。
【0009】
なお、特開2009-112966のように、粉塵を含む空気流を板に衝突させることにより比重及び径の大きい粒子を落下させる方式は、そうでない粒子の分離に適しておらず、特には、微粉や、かさ比重の小さい粉末の分離に適していない。
【0010】
本件発明者らは、上記課題に鑑み鋭意努力する中で、各種の粉塵の捕集を、一つのシンプルな構成により実現すべくさらに努力を続けた。その中で、フィルター方式でも、サイクロン方式でも、単純な衝突方式でもない全く斬新な捕集機構を考案するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の集塵機は、好ましい形態において、一方の面のみが開口面をなすポケット部と、このポケット部の開口面を覆う、気流透過性の板状の立体網状体(へちま状構造体)と、このポケット内へと向かって粉塵を含んだ空気を導く機構とからなり、慣性力と、立体網状体によるトラップ作用によりポケット内に粒子を捕集することを特徴とする。板状の立体網状体は、好ましい形態において、粗い繊維により粗い孔をほぼ均一に形成した、空隙率の高い構造からなり、かつ、このような構造が、かなりの厚みにわたって形成されたものである。板状の立体網状体は、粉塵を含んだ空気を透過させるとともに、該空気の流れを減衰させ、ポケット部中では粉塵を舞い上げるような空気流が生じるのを防止または抑制する。特には乱流が生じるのを防止または抑制する。
【発明の効果】
【0012】
圧力損失の少ないシンプルなトラップ機構により、幅広い粒径の粉塵を捕集することができ、しかも、ポケット部に比較的多量の粉塵を受け入れることができる。そのため、製造及び設置のコストだけでなく、運転及びメンテナンスのための動力、コスト及び作業量を低減することができる。また、オイルミストその他のミスト(浮遊する液滴)のみならず、ミストと粉塵の混合物も捕集可能である。さらには、そのような場合にも、捕集に用いる多孔体部材(立体網状体)に目詰まりや劣化が実質上生じないため、廃棄フィルタの処理といった問題及びコストがほとんど生じない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態の集塵機における、各捕集ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図2】一実施形態の集塵機の全体構成を示す垂直断面図である。
【図3】図2の集塵機を正面右側から見た斜視図である。
【図4】図2の集塵機の背面及び右側面を示す斜視図である。
【図5】立体網状体の網目構成の一例を示す写真(東洋クッション(株)の「ビニロック」)である。
【図6】捕集機構について説明するために、図2の垂直断面図の一部分に粉塵粒子及びその流れを模式的に示した、模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
板状の立体網状体は、上述のように気流を透過させて、粉塵が気流ととともにポケット部内へと導かれるようにするとともに、ポケット部内での気流を抑制することで、粉塵の再飛散を抑制する気流透過性の多孔体である。したがって、このような機能を発揮できるものであれば、いずれでも良い。
【0015】
板状の立体網状体は、好ましい形態において、熱可塑性樹脂や再生セルロースなどからなる捲縮したフィラメントを交絡したり、その交絡点同士を熱接着した繊維集合体である。このような繊維材料としては、ポリプレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテート、再生セルロースなどを挙げることができる。これらのフィラメントを用いて、通常の不織布と同様に、スパンボンド法や交絡法により作成した各種の立体網状体を用いることができる。板状の立体網状体は、立体編地でも良く、また場合によっては、平面の編地を重ね合わせたものでも良い。耐炎性や耐熱性などが要求される使用条件では、デミスターに用いられているような各種の金属製のものを用いることができ、例えば、スチールやアルミなどの金属のフィラメントまたは撚り線から、メリヤス網などで平面状に形成した編地を重ね合わせたものや、金属線を巻縮させた後、立体的に絡み合わせたものを用いることができる。また、場合によっては、ポリオレフィンなどの各種樹脂からなる連続気泡の発泡成形体であって、いわゆる膜部分を有せず、気流透過性に優れたものを用いることができる。この場合も、平均目開き及び厚み方向の貫通孔に関して、下記の条件を満たすならば好ましい。
【0016】
板状の立体網状体は、好ましい形態において、空隙率が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。また、好ましい形態において、厚み寸法が5〜100mmであり、小型集塵機に用いる場合、典型的には、10〜50mmである。
【0017】
板状の立体網状体は、好ましい一形態において、繊維間または局部的な孔(厚み方向でも局部的に捉えた、一つのリング部分や空隙部分)の平均目開きが0.1〜10mm、好ましくは0.3〜5mmであり、より好ましくは0.5〜3mmである。なお、ここでの目開きは、例えば長円形の孔の場合には、短径であり、また、ここでの平均は、面積で重み付けした平均値である。板状の立体網状体は、大きな貫通孔を有しないのが好ましく、好ましい形態において、厚み方向に貫通する孔(すなわち、表側から裏側が透けて見える空隙を捉えた場合の孔)の最大目開きが5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。しかし、処理対象の粉塵の粒度やその分布、及び空気中の密度などによって、好ましい目開きなどは、変化しうるので、適宜に設定することができる。
【0018】
立体網状体の厚みは、上流から下流に行くにつれて、捕集ユニットごとに変化させることができ、好ましくは、連続的に、または、数個ごとで段階的に厚みを変化させることができる。また、平均目開きについても、同様に上流から下流に向かうにつれて、連続的に、または、数個ごとで段階的に、小さくしていくことができる。
【0019】
好ましい具体例を挙げるならば、「ビニロック」や、エアコン用プレフィルタなどとして用いられる、「サランロック(商品名)」、「フィレドン(商品名)」などを用いることができる。例えば、重量平均粒径数が十〜数百μmの粉塵が多量に含まれる場合には、フィルタとしては通常用い得ない「ビニロック」または、これと同等の気流透過及び抑制作用を有するものを用いることができる。また、例えば重量平均粒径が1μm前後といった微粉末を捕集する場合に「フィレドンPS/600」(エアフィルタとして用いた場合に10μm以上の粗大粒子を捕捉するもの)またはこれと同等の気流透過及び抑制作用を有するものを用いることができる。また、上流側の数段について、「ビニロック」などを用い、下流側で「フィレドンPS/600」(日本バイリーン(株))またはその同等品を用いることもできる。このように組み合わせるならば、目開きが比較的小さい立体網状体を用いても、粉塵が立体網状体に引っ掛かることを防止しつつ、微細な粉塵について、効率的に捕集することができる。なお、目開きを変化させることなく、立体網状体を下流に行くにつれて大きくすることでも、微細な粉塵に対する捕捉効果を徐々に増大させることができる。
【0020】
一の好ましい形態において、ポケット部の深さ寸法は、立体網状体の厚み寸法の0.3〜30倍、好ましくは0.5〜20倍、より好ましくは1〜15倍、さらに好ましくは1.5〜10倍である。ポケット部の深さ寸法も、上流から下流に行くにつれて、捕集ユニットごとに変化させることができ、好ましくは、連続的に、または、数個ごとで段階的に、小さくしていく。
【0021】
捕集ユニットは、一の好ましい形態において、下部が、上下方向及び前後方向に延びる隔壁により、ポケット部と通気筒部とに左右に区切られており、ポケット部の左右方向寸法が、通気筒部の左右方向寸法の1.3〜15倍、好ましくは1.5〜10倍、より好ましくは1.8〜6倍である。このような範囲であると、上方から送られてきた気流が、立体網状体を通じてポケット部に充分に流入するとともに、スムーズに次の捕集ユニットまたは排出口へと向かって流れ出ることができる。
【0022】
なお、本発明における捕集ユニットは、いわば観念上の単位であり、一組のポケット部及び立体網状体などからなる一段の捕集部として捉えられるものであれば、いずれの形態のものでも良い。すなわち、必ずしも一つの部材や部品を意味するものではない。捕集ユニットは、以下の実施例において、一つの部材として説明するが、いうまでもなく、他の部材や筐体、他の捕集ユニットなどと一体に構成された中の一部分であっても良く、また、例えば、通気筒部とポケット部とが、別体の部材の一部などというのであっても良い。
【0023】
上流から下流へと直列に接続する捕集ユニットの数(段数)は、好ましい一形態において、5〜15、好ましくは6〜10である。下記実施例の装置を用いた試験によると、例えば8段程度で充分であると考えられた。なお、複数列の捕集ユニットが、互いに並列に設けらていても良い。
【0024】
本発明の集塵機は、オイルミストなどのミストを捕集するのにも、効果的に用いることができる。ミストの場合も、上記に説明した粉塵の場合と、全く同様の機構により、ポケット部に集めてから、回収または廃棄することができる。但し、下記の実施例で説明するような粉塵受けの容器をポケット部に配置する代わりに、雨樋管状の集液または集油機構を設けておき、集塵機本体の底部、または底面付近に設置されるタンクに集めるのであっても良い。本発明の集塵機は、ミストと粉塵との混合物についても処理可能である。該混合物の一部が、立体網状体に付着・堆積したとしても、立体網状体が粗い繊維集合体などからなるため、容易にクリーニングを行うことができる。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明による集塵機の一実施形態について、図1〜6を用いて説明する。まず、図1の分解斜視図を用いて、本実施形態の集塵機を構成する各捕集ユニット1の構成について説明する。捕集ユニット1は、全体が矩形のボックス状であり、ユニット筐体11と、板状の立体網状体12と、引出し式の粉塵受け13とからなる。
【0026】
ユニット筐体11は、図示の例で上面の全面が開口41をなしており、この開口41の左右一方端の側(図示の例で左端部)にて、上方から処理対象の空気が流入する。ユニット筐体11中には、下方にポケット部15が設けられ、このポケット部15の開口面4が上記の板状の立体網状体12により覆われている。ユニット筐体11中における、空気流入側とは逆の端部(図示の例で右端部)には、前後方向に延びる垂直の隔壁19を介して、垂直方向に下方へと気流を導く通気筒部16が設けられている。
【0027】
より詳細な例において、ポケット部15が、ユニット筐体11の前後の壁面と、一方の側壁と、隔壁19と、ユニット筐体11の底壁18とにより形成されている。ポケット部15の開口面14の箇所には、板状の立体網状体12を係止すべく、ユニット筐体11の後壁、側壁及び隔壁19から内向きフランジ14が突き出している。隔壁19の上端は、板状の立体網状体12の上面の高さとほぼ一致するように設定されている。ユニット筐体11内における、立体網状体12より上の空間は、図示の例で、左端部にて上方から流入した気流を、右方の通気筒部16へと導く「踊り場(おどりば)」状の通気空間17である。
【0028】
上方からの気流は、この左右方向の通気空間17にて、気流の向きが垂直から水平に変えられて、通気筒部16へと導かれる。気流は、部分的にポケット部15内を通る。具体例において、ユニット筐体11の前方壁に設けられた開口42から、ポケット部15内へと、引出し状の粉塵受け13が嵌め込まれる。粉塵が溜まったならば、引出し状の粉塵受け13を引き出して、粉塵を取り出して、回収による再利用、または、廃棄処理を行うことができる。なお、板状の立体網状体12の上面付近に、粗い粒子や繊維が多数引っかかって堆積して来たならば、板状の立体網状体12の表裏をひっくり返すことができる。そのためには、例えば、粉塵受け13を引き出した開口42から、手を入れて、可撓性の立体網状体12を一旦よじりつつ、表裏をひっくり返すこともできる。また、開口42の箇所をつかんで、捕集ユニット1全体を、集塵機2から引き出してから、同様の操作を行うこともできる。
【0029】
なお、図示の例では、板状の立体網状体12が、そのままで内向きフランジ14により支持されるものとして描いたが、この立体網状体12の周縁部に、断面がコの字状、またはL字状のフレームを取り付けておくことができる。これにより、立体網状体12の周縁部が、大きな製品から切断して切り出した面であっても、繊維がばらけて抜け出ることが防止される。但し、立体網状体12がポリプロピレン繊維などの容易に熱融着可能な繊維からなるものである場合、周縁部に熱融着を施しておきフレームを省くこともできる。
【0030】
次に、図2の垂直断面図を用いて、集塵機2の全体の構成について説明する。集塵機2は、筐体22によりまとめられた集塵機本体21と、この筐体22の外に設けられた吸引ブロアー3からなる。集塵機本体21の筐体22内には、複数の捕集ユニット1が組み込まれるのであり、上流から下流へと直列に組み合わされる際、互いに左右方向が逆になるように組み合わされる。すなわち、例えば、図示のように、最初の捕集ユニット1は右端部にて上方からの気流を受け入れ、左端部にて、通気筒部16の下端の開口43から気流を送り出したならば、次の捕集ユニット1内では、左右が逆になって、左端部にて上方からの気流を受け入れ右端部から下方へと送り出す。
【0031】
図示の例で、集塵機2には、上記のような捕集ユニット1が13個、直列に組み込まれている。図示のように、捕集ユニット13のポケット部15の深さは、粉塵が浮遊した空気の導入口23に近い側で大きく、下流へと向かうにつれて、段階的に小さくなっている。踊り場状の通気空間17の厚み、すなわち垂直方向寸法には大差がないが、ポケット部15の深さ、すなわち、垂直方向寸法を大きく変化させることから、捕集ユニット1の垂直方向寸法も大きく変化する。
【0032】
図示の例で、捕集ユニット1の垂直方向の列が、左右に2つあり、また、吸引ブロアー3が、筐体22の上面に設置されている。これに伴い、筐体22の左右方向中央部には、一旦、左方の列にて筐体22の底部にまで送られた空気を筐体22の上端へと送るための第1上昇筒部24が設けられる。また、筐体22の右端部には、右の列の捕集ユニット1を通過した空気を筐体22上の吸引ブロアー3へと送るための第2上昇筒部25が設けられる。
【0033】
さらには、図示の例で、筐体22の底面に沿って、気流を左右方向に送るための底面通気部26が設けられている。また、この底面通気部26に同様の板状の立体網状体12が配置される。なお、図示の具体例では、底面の隅角部が直角になるように描かれているが、ここを丸くして、流れをよりスムーズにすることもできる。また、立体網状体12を底面から少し離間して、粉塵が立体網状体12の下方に部分的に溜まるようにすることも可能である。しかし、底面の箇所ではポケット部15がないことから粉塵が捕捉される率は低いため、図示のように単に立体網状体12を敷いておくだけでも、通常、問題はない。
【0034】
図2に示す例において、集塵機本体21の側壁の上端部には、水平方向に処理対象の気体を導入する導入口23が設けられ、集塵機本体21内部の上端に設けられた導入流路43と導かれる。この導入流路43は、最上流の捕集ユニット1の内部から、導入流路用隔壁44によって隔てられており、導入流路43の下流端の下面に設けられた開口45を通じて、最上流の捕集ユニット1中へと処理対象の空気が流れ込む。
【0035】
なお、一具体例において、上記の各捕集ユニット1は、集塵機本体21の筐体22内に設けられた内向きフランジによって、左右及び後方にて支持される。すなわち、引出し式に、筐体22の前方から嵌め込むように構成することができる。
【0036】
図3〜4に示すように、集塵機本体21の筐体22には、前方に密閉扉28が備えられる。この密閉扉28は、内面がパッキング面となっており、左右の縁に沿って配置されたフック密閉金具29を用いて、密閉可能である。作業員は、密閉扉28を開けた状態で、引出し式の粉塵受け13を引き出して、粉塵を取り出すことができる。また、上述のように、必要に応じて、板状の立体網状体12をひっくり返すことができる。
【0037】
図5には、本実施形態の具体例で用いたと同一または同等の立体網状体12の外観を示す。具体例で用いた立体網状体12は、「ビニロック」(日本バイリーン(株)より購入)であり、図5に示すのは、この「ビニロック(化繊ロック)」(東洋クッション(株))の写真である。図5に示す画像は、取り扱い業者である(株)関根産業のウェブサイト(http://slsekine.exblog.jp/9576238/)で公開中の画像の一部を切り取って示したものである。図5中のスケールの目盛りは、1cmであり、緩やかに巻縮するフィラメントにより、約2〜5mm程度の目開き(細長い孔では開口の短径)の孔が形成されている。空隙率(空間率)は、約96%であり、塩化ビニル樹脂及び塩化ビニリデン樹脂からなる繊維の太さは、660〜1100dtex(600〜1000デニール)、かさ密度は約75kg/m3である。
【0038】
図6には、本実施形態の集塵機2による粉塵除去作用、及び、分級作用について、模式的に示す。導入口23から導入された空気には、各種の径の粉塵5が含まれる。粉塵5を含む上方からの気流51は、板状の立体網状体12により、著しく減速されつつポケット部15内へと導かれる。このポケット部15内でも、空気の流れが生じるが、緩やかな流れであり、乱流が、あまり生じないと考えられ、一旦ポケット部15内に入った粉塵5は、立体網状体12を再び通過して出る率が、あまり高くないと思われる。特には、径が大きいか、または比重の大きい粉塵5は、ポケット部15にトラップされやすいので、上流端に近い捕集ユニット1により捕集される。径または比重が小さくなるにつれて、トラップされずに流れ出る率が高くなるが、捕集ユニット1の通過段数が増えると徐々に、ほぼ全体が捕集される。平均粒径が1μm前後の微粉であっても、捕集ユニット1の段数が10程度になると、ほぼ全部、例えば、99%以上が捕集される。
【0039】
図示の実施例の集塵機2について、寸法構成などの具体例を示すならば下記のとおりである。
【0040】
各捕集ユニット1は、左右方向の寸法が240mm、前後方向の寸法が600mmであって、通気筒部16及び上昇筒部24,25の厚み(左右方向の寸法)がいずれも約60mmであり、踊り場状の通気空間17の厚み(垂直方向寸法)が約60mmであった。ポケット部の垂直方向寸法は、100mm(第1〜3段目)から、75mm(第4〜8段目)、そして50mm(第10〜13段目)と上流から下流に向かって段階的に小さくした。なお、試作品の壁厚は1mmであった。一方、板状の立体網状体12としては、第1〜3段目の捕集ユニット1について、上記ビニロック(商品名)の20mm厚のものを用い、第4〜10段目について30mm厚のものを、第11〜13段目について50mm厚のものを用いた(いずれも1枚のみ用いた)。また、集塵機2は、筐体22の前後及び左右方向の寸法が600mm、高さが約1.5mであり、ブロアー3の出力は100m3/分であった。
【0041】
最後に、上記の具体例の集塵機2により、実際に、粉塵捕集のテストを行った結果について、以下に説明する。
【0042】
まず、市販のベビーパウダー(ジョンソン&ジョンソン社の「ベビーパウダー」)200gを、導入口23に接続したダクトの奥に入れ、このダクト中に、エアガンを持った手を差し込んで、入口を濾布で覆うとともにエアー吹き付けによりエアを吹き付けてベビーパウダーを吹き飛ばした。このようにして、全量を集塵機2内に送り込んだところ、ブロアー3の排出口31からは、白煙が全く観察されなかった。密閉扉を開け、引出し式の粉塵受け13を引き出したところ、第7段目の捕集ユニット1より後には、白色の粉塵が全く観察されなかった。粉塵受け13の重量の増加から回収率を求めたところ、99%以上であった。なお、ここで用いたベビーパウダーは、主としてタルクの微粉末からなり、平均粒径が1μm程度であると考えられる。
【符号の説明】
【0043】
1…捕集ユニット 11…ユニット筐体 12…板状の立体網状体
13…引出し式の粉塵受け 14…内向きフランジ 15…ポケット部
16…通気筒部 17…踊り場状の通気空間 18…ユニット底板
19…隔壁 2…集塵機 21…集塵機本体
22…集塵機筐体 23…粉塵浮遊空気の導入口 24…第1上昇筒部
25…第2上昇筒部 26…底面通気部 27…密閉扉
28…フック密閉金具 29…第2上昇筒部の延在部 3…吸引ブロアー
31…浄化空気排出口 32…支持板
4…ポケット部の開口面 41…ユニット筐体の上方開口
42…ユニット筐体の下方開口 42…ユニット筐体の側方開口
43…導入流路 44…導入流路用隔壁 45…下方開口
5…粉塵 51…気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の捕集ユニット(1)が上流から下流へと直列に組み合わさった形態の集塵機(2)であって、
各捕集ユニット(1)は、
上面が開口したポケット部(15)と、
このポケット部の開口面を覆う板状の立体網状体(12)と、
立体網状体(12)の上方に形成されて立体網状体(12)に沿った方向へと気流を導く通気空間(17)と、
一方の端部に形成された、下方へ気流を導く通気筒部(16)とからなり、
一の捕集ユニット(1)と、その次の捕集ユニット(1)とは、互いに、通気筒部(16)が逆側に配置されるようにして組み合わさっていることを特徴とする集塵機。
【請求項2】
立体網状体(12)は、空隙率が80%以上、厚み寸法が5〜100mmであって、繊維間または局部的な孔の平均目開きが0.1〜10mmであり、厚み方向に貫通する孔の最大目開きが5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の集塵機。
【請求項3】
各捕集ユニット(1)の下部は、上下方向及び前後方向に延びる隔壁(19)により、ポケット部(15)と通気筒部(16)とに左右に区切られており、ポケット部(15)の左右方向寸法が、通気筒部(16)の左右方向寸法の1.5〜10倍であることを特徴とする請求項1または2に記載の集塵機。
【請求項4】
立体網状体(12)が、巻縮フィラメントの交絡または熱融着によって形成されたものであるか、または、立体編地、もしくは、平面編地の積層物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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