説明

集塵装置

【課題】電気集塵装置において半導電電極板を用いた時、空気を導入するための空間を設けるためにスペーサなどで電極板どうしをブリッジするように接触する構造では電場の低下が広範囲で起こり、集塵性能が大幅に低下する。
【解決手段】粉塵反発電極板2と集塵電極板3を交互に積層したものをフレーム12で固定した集塵部4を備える集塵装置において、粉塵反発電極板2および集塵電極板3の少なくともどちらか一方が半導電性もしくは絶縁性を有する材料で構成されると同時に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電電極板であり、かつ粉塵反発電極板2と集塵電極板3とがフレームの外側に設けられた碍子13でつながっていることを特徴とする集塵装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄の分野において空気中の粒子状浮遊物質を除去する集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中に存在する粒子状浮遊物質、すなわち粉塵は喘息などの疾病の原因として知られており従来から除去の対象となる物質であったが、近年の研究において粒子径2.5マイクロメートル以下の粉塵(いわゆるPM2.5)が肺ガンなどの疾病を誘起する可能性があるとの報告があり、捕集技術の更なる向上が求められている。その中で電気集塵技術を用いた集塵装置は粒子径がマイクロメートル以下の小粒径の粉塵を捕集することに優れており、また低圧損な特性を持つことから注目を集め、更なる性能向上が求められている。
【0003】
従来、この種の集塵装置として、放電によって粉塵を帯電する荷電部を前段に設け、その後段に、電極を積層し、交互に異なる電圧を印加して電場を形成して帯電した粉塵を捕集する集塵部を設けたものが知られている。この構成を応用した例として、特許文献1には集塵部において一方の電圧が印加される電極を絶縁体である樹脂製のフィルムで被覆した集塵装置が示されている。以下、その集塵装置について図18を参照しながら説明する。図18に示すように、荷電部101は線状の荷電部放電電極102と荷電部対向電極板103とからなり、また、荷電部101の下流側には電圧印加電極板105と集塵電極板106とを一定の間隔を開けて交互に積層した集塵部104を設けている。また、図には示していないが電圧印加電極板105は絶縁体である樹脂フィルムで被覆されている。通常、荷電部101においては荷電部放電電極102と荷電部対向電極板103との間に5〜15kV、また、集塵部104の電圧印加電極板105と集塵電極板106との間に2〜6kVの電位差を与えるように高圧電源107によってそれぞれの電極に所定の電圧が印加されている。
【0004】
上記構成において、荷電部101では荷電部放電電極102と荷電部対向電極板103との間で不平等な電場が作られており、この時線状の形状を有する荷電部放電電極102近傍には非常に強い電場が作られている。そのため空気イオンといった空気中に当初から僅かに含まれる電荷保有物質が加速されて空気分子と衝突を起こし、空気分子から電子が分離する。分離した電子もまた加速されて空気分子と衝突を起こし、空気分子から電子が分離する。電子との衝突によって空気分子から電子が分離する現象を電離と呼ぶ。
【0005】
また、電離を繰り返すことによって多数の電子が空気分子から分離する現象を電子なだれと呼ぶが、この電子なだれによって電子が分離したプラス極性の空気イオンや、分離した電子と結合してマイナス極性の空気イオンが作られる。そして荷電部放電電極102と異なる極性の空気イオンは荷電部放電電極102に電荷を吸収されて空気分子に戻り、逆に同じ極性の空気イオンは電場によって荷電部放電電極102から反発する方向の力を受け、荷電部対向電極板103の方向へと拡散移動する。このように電離や電子なだれを起こすことで荷電部放電電極102近傍の空気を空気イオンにする放電現象をコロナ放電というが、コロナ放電によって作られ、主に荷電部放電電極102と同じ極性の空気イオンが荷電部101を通過する粉塵に付着することで粉塵が帯電する。帯電した粉塵は送風の流れにそって集塵部104に導入され、電圧印加電極板105と集塵電極板106の間で作られる電場の力を受けて主に集塵電極板106に付着して取り除かれ、清浄な空気が集塵部104の後方から吹出される。電圧印加電極板は絶縁性の樹脂フィルムで覆われているため、集塵電極板と接触しても短絡を起こさず、同時に集塵電極板との間で起こりうる火花放電(以下スパーク)を防止する構造となっている。
【0006】
また、従来の集塵装置の他の例として特許文献2に記載されるような集塵装置が知られている。実用新案文献2記載の集塵装置について図19、図20および図21を用いて説明する。ちなみに図20は図19におけるコレクタ電極板107のA−Bの断面を示す図となっている。図19および図20に示すように集塵装置の集塵部を構成するコレクタ電極板107は中央部分に導電面108を備えた絶縁性の電極基板109の表面に半導電層110が設けられている。また、電極基板109をくぼませることで得たスペーサ突起111が複数設けられている。コレクタ電極板107は図21に示すようにスペーサ突起111の先端とコレクタ電極板107の裏面が接触することである一定の空間を開けながら積層され、積層ごとに交互に異なる電圧をコレクタ電極107に設けられた導電面108に印加することで空間に電場を設け、粉塵を捕集する仕組みになっている。そして半導電層110の上には電圧が印加された導電層108から電荷が与えられ、広がるように分布する。このため積層したコレクタ電極板107の間に設けられる電場の領域が広がって高い集塵性能が得られる。また同時に半導電層110は半導電性を有することから電荷の急激な移動が起こらない。すなわち異なる電圧が印加されたコレクタ電極板107との間で発生しうるスパークを防止することが可能となっている。
【特許文献1】特許第3261167号公報
【特許文献2】特許第2662553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されるような集塵装置においては絶縁性の樹脂フィルムで被覆することで電圧印加電極板の絶縁性を確保しているため、確実に絶縁性とするためにはしっかりした被覆が必要となり、高度な加工技術を要する。また、電圧印加電極板は通常金属板を用いることが多いが、剛性を得るためには板厚を大きくする必要があり、それに伴い集塵部の重量が増加して取扱い性を損なう。
【0008】
また、特許文献2に記載されるようなコレクタ電極板107を積層した集塵部104の課題について図21を用いて説明する。図21に示すように空気中の粉塵を除去するためには積層したコレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113との間に空気を通過させる構造とする必要がある。そのためスペーサ突起111を数多く用いてコレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113と間に空間を設ける必要がある。すなわち数多くのスペーサ突起111によってコレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113とが多数の箇所で接触することになる。
【0009】
また、粉塵を捕集するためにコレクタコレクタ電極板A112に数kVの高電圧を印加し、コレクタ電極板B113をアースに接続して0kVとすることでコレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113との間に電場を設けるが、それぞれのコレクタ電極板に設けられた半導電層110にスペーサが接触することによって半導電層110の上に分布した電荷が逃げる。
【0010】
例えば高電圧が印加されたコレクタ電極板A112の半導電層110の表面電位が低下してしまう。逆にコレクタ電極板B113の半導電層110の表面電位は上昇し、コレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113の間に設けられた電場が弱まって集塵性能が低下する。スペーサ突起111の絶縁性が高い場合は電荷の逃げる度合いは少なくて済むが、粉塵を捕集してスペーサ突起111表面の電気抵抗が少しでも低下すると電荷の逃げる度合いは非常に大きくなり、コレクタ電極板A112の半導電層110の表面電位は大きく低下する。半導電層110は導電体と比べて電気抵抗値が非常に高いため、コレクタ電極板A112の半導電層110における表面電位の低下とコレクタ電極板B113の半導電層110における表面電位の上昇はスペーサの接触箇所とそれぞれのコレクタ電極板の中央部に設けられた導電面108とを結んだ線上で広範囲に起こる。すなわちそれぞれのコレクタ電極板の間に設けられた電場の強度はスペーサの接触箇所でゼロとなり、接触箇所から導電面108へ近づくに従って徐々に大きくなる。
【0011】
したがってコレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113とがスペーサ突起111で接触することによって電場の低下が広範囲で起こり、集塵性能の低下が顕著に現れる。この課題を解決するためにはコレクタ電極板どうしが出来る限り接触しない構造とすることが必要となる。
【0012】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、容易に作成可能でかつ軽量、また電極板の間で起こるスパークを防止するとともに高い集塵性能を得ることが可能な集塵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の集塵装置は上記目的を達成するために、粉塵反発電極板と集塵電極板を交互に積層したものをフレームで固定した集塵部を備える集塵装置において、粉塵反発電極板および集塵電極板の少なくともどちらか一方が半導電性もしくは絶縁性を有する材料で構成されると同時に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有し、かつ粉塵反発電極板と集塵電極板とがフレームの外側に設けられた碍子でつながっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容易に作成可能でかつ軽量、また電極板の間で起こるスパークを防止するとともに高い集塵性能を得ることが可能な集塵装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の集塵装置は上記目的を達成するために、粉塵反発電極板と集塵電極板を交互に積層したものをフレームで固定した集塵部を備える集塵装置において、粉塵反発電極板および集塵電極板の少なくともどちらか一方が半導電性もしくは絶縁性を有する材料で構成されると同時に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電電極板であり、かつ粉塵反発電極板と集塵電極板とがフレームの外側に設けられた碍子でつながっていることを特徴とするものである。
【0016】
帯電した粉塵(以下帯電粉塵)を導入するために粉塵反発電極板と集塵電極板は空間を空けながら対向して設けられており、また、帯電粉塵を捕集するために粉塵反発電極板と集塵電極板との間には電場が設けられている。具体的には粉塵反発電極板から集塵電極板へと粉塵が移動するようにそれぞれの電極板には異なる電圧が印加される。例えば帯電粉塵がプラスの極性に帯電している場合、粉塵反発電極には+6kV、集塵電極板には0kVがそれぞれ印加され、帯電粉塵がマイナスの極性に帯電している場合、粉塵反発電極板には−6kV、集塵電極板には0kVがそれぞれ印加されるという具合である。従来の粉塵反発電極板と集塵電極板は金属板のような導電体がよく用いられ、高圧電源の端子を接続してそれぞれの電極板に異なる電圧を印加すればそれぞれの電極板全体に所定の電圧が印加され、電場が設けられる。
【0017】
しかしながら例えば粉塵が電極板の上にスパークの基点となるような尖った形状で堆積したした場合にはそれぞれの電極板の間に火花を伴う放電、すなわちスパークが起こりうる。これはそれぞれの電極板が導電体であり、高圧電源の端子から供給された電荷が電極板を急速に移動することが可能なためであり、スパークが発生した時には大量の電荷が急激に流れている。
【0018】
本発明においては粉塵反発電極板および集塵電極板の少なくともどちらか一方が導電体以外の材料で構成されると同時に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有するため、高圧電源の端子から電極板の表面に一様に電荷が供給され、粉塵反発電極板と集塵電極板との間に電位差すなわち電場が設けられる。それと同時に粉塵が電極板の上にスパークの基点となるような尖った形状で堆積しても電極板を構成する材料が導電体ではなく、かつ表面抵抗率が10の7〜11乗Ω/□とある程度高い値となっているため急激な電荷移動を防いでスパークを防止することが可能となる。
【0019】
また、空間を設けるために粉塵反発電極板と集塵電極板とがスペーサによってブリッジするように接触させるとその接触部分で電荷の移動が起こり、接触部分を中心に表面電位の低下が起こり、電場が弱まる。このような理由で集塵性能の低下が生じることになるが、本発明においては粉塵反発電極板と集塵電極板とがフレームの外側に設けられた碍子のみでつながっている、すなわちフレームの外側に設けられた碍子によって粉塵反発電極板と集塵電極板それぞれの表面が一切接触せず、一定の空間を開けながら保持されている。そのためスペーサがブリッジを形成するようにそれぞれの電極板の表面に接触することで起こる表面電位の低下が起こらず、電場は一定に保持される。このため高い集塵性能を得ることが可能となっている。
【0020】
スペーサを用いずに粉塵反発電極板と集塵電極板との間に空間を設ける具体的な方法として請求項3に記載するように粉塵反発電極板および集塵電極板それぞれに貫通孔を設け、導電性のシャフトを挿入しながら粉塵反発電極板と導電性の円筒状スペーサ、集塵極板と導電性の円筒状スペーサの順で設けることが挙げられる。シャフトを粉塵反発電極板と円筒状スペーサ、集塵極板と円筒状スペーサの順で挿入し、粉塵反発電極板と集塵電極板とが交互に積層された構造を作る。
【0021】
この時粉塵反発電極板と集塵電極板とが接触しては電圧を印加することができないため、例えばシャフトおよび円筒状スペーサと接触しないように円筒状スペーサの外径よりも大きい貫通孔を粉塵反発電極板に設ける。このままでは粉塵反発電極板を支持できないため、別のシャフトを用いて同様の順番でシャフトを挿入し、電極板を支持する。この時は粉塵反発電極板の貫通孔をシャフトの径と同じにし、逆に集塵電極板に円筒状スペーサの外径よりも大きい貫通孔を設ける。このままではそれぞれの電極板をしっかりと固定できないため、それぞれの電極板を支持するシャフトは2本以上、計4本以上が望ましい。そして碍子を用いてそれぞれの電極板を支持するシャフトを接続して固定する。このような構造とすることで粉塵反発電極板および集塵電極板の表面どうしが一切接触することなく、空間を設けながらそれぞれの電極板を支持固定することが可能となる。
【0022】
また、半導電電極板が絶縁性基板の表面に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層を設けたものであることを特徴とするものである。粉塵反発電極板および集塵電極板の間に電場を設けるにはそれぞれの電極板表面の間で電位差を生じさせればよい。すなわち表面のみに電荷を与えればよいため、電極板の支持基材として絶縁性基板を用い、その表面に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層を設けることで容易に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する電極板を形成することが可能となる。絶縁性基板の材質としては樹脂やセラミック、もしくはガラス繊維シートをエポキシ樹脂などで固めた積層シートなどが挙げられる。
【0023】
また、10の7〜11乗Ω・cmの体積抵抗率を有する樹脂フィルムを絶縁性基板の表面に設けたものを半導電電極板とすることを特徴とするものである。10の7〜11乗Ω・cmの体積抵抗率を有するフィルムの材質の例として、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン、もしくは可塑剤を添加した塩化ビニルや塩化ビニリデンなどが挙げられる。またはナイロンやポリエーテルエステルアミドといった吸水性の高いアミド結合を有するポリマーや、ポリフッ化ビニリデン、もしくは塩化ビニルや塩化ビニリデンなどといった半導電性を有する樹脂とポリプロピレンやポリエステル、ポリスチレンなどの絶縁性樹脂とをブレンドして共重合させたコポリマー樹脂が挙げられる。また別の例としては、ゼオライトなどのシラノール基を有する無機成分や、酸化スズ、酸化亜鉛などの金属酸化物といった半導電性を有する材料を前述した絶縁性樹脂に混ぜてフィルムに成型したものが挙げられる。このような樹脂フィルムは内部に電荷を僅かに通す性質を持ち、10の7〜11乗Ω・cmの体積抵抗率を有するようになる。接着や溶着などの方法でこのような樹脂フィルムを絶縁性基板の表面に設けることによって、絶縁性基板の表面に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層を設けることが容易に可能となる。
【0024】
また、塗布面が10の7〜11乗Ω/□となる半導電塗料を絶縁性基板の表面に塗布し、乾燥して半導電層を設けたものを半導電電極板とすることを特徴とするものである。具体的な例としてポリビニルアルコールやポリアクリル酸ナトリウム、アミロースといった吸水性ポリマーを含有する塗料を絶縁性基板の表面に塗布して乾燥することで10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電性膜を得る方法が挙げられる。吸水性ポリマーは空気中の水分を吸収しやすい性質を有しており、空気中の水分を吸収することで電気を僅かに通す性質を有するようになる。吸水性ポリマーを含有する塗料を絶縁性基板の表面に塗布して乾燥することで、10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層が得られる。
【0025】
また、半導電塗料が半導電性材料および半導電性材料を塗布面に固着させるバインダ成分を含むことを特徴とするものである。前述したような吸水性ポリマーの場合、半導電性材料がポリマーであるため、溶媒で溶解して溶液とし、それを塗布して乾燥するだけで絶縁性基板の表面にある程度強固な半導電層を設けることが可能であるが、半導電性材料が粉体である場合には粉体を固着させる何らかの手段が必要であり、また、それとは別に半導電層自体の機械的強度をより高めたい場合がある。そのような場合の有効な手段として溶媒に溶解可能な樹脂、例えば熱可塑性ポリエステル樹脂やポリオール樹脂などをバインダ成分として用い、溶媒に溶かして半導電性材料と混合したものを半導電塗料として用いることで、粉体状の半導電性材料を半導電層の中に固着し、また半導電層の機械的強度を向上させることが可能となる。
【0026】
また、半導電性材料がイオン導電性ポリマーであることを特徴とするものである。イオン導電性ポリマーの例として4級アンモニウム塩を分子構造中に有するポリマーが挙げられる。4級アンモニウム塩は中心のアンモニア原子に4つのアルキル基が結合しており、全体としてプラスの電荷を有している。そこに塩素イオンなどの陰イオンがイオン結合した構造となっているためイオン導電性を有することから僅かに電荷を通す性質を有する。また、イオン導電性を有する4級アンモニウム塩をあらかじめその分子中に有しているために湿度の影響を受けにくく、低湿度の時でも電荷を僅かに通す特性を確保することができるという特徴を有する。イオン導電性ポリマーを形成するには分子構造中に4級アンモニウム塩と不飽和炭素結合を有する単量体を重合する方法があるが、分子構造中に4級アンモニウム塩と不飽和炭素結合とを有する単量体としてジメチルアミノメタアクリレートのクロライド塩などが挙げられる。ジメチルアミノメタアクリレートのクロライド塩の水溶液をアルコールに溶かし、成膜性を確保するために低分子量であるメチルメタアクリレートを加えた後にアゾビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤を加えて重合反応させることで4級アンモニウム塩を含むポリマー溶液を得ることができる。また、アクリル酸のようなカルボキシル基と不飽和炭素結合とを分子中に有する単量体を重合して得たポリマーの溶液を加えることで塗布面への接着性を確保することが可能となる。また、塗布面に形成される塗布膜は分子量が大きいポリマーからなるため非水溶性を示す。このようにして作成した半導電塗料を塗布乾燥して形成する半導電層は低湿度時でも電荷を僅かに通し、また、塗布面からはがれることがなく耐水性をも有するという特徴を有する。このようなイオン導電性ポリマーを絶縁性基板の表面に塗布して乾燥することで10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有し、また、湿度の影響を受けにくい半導電層を容易に形成することが可能となる。
【0027】
また、半導電性材料が半導電性の金属酸化物であることを特徴とするものである。吸水性ポリマーを含有する半導電層は湿度の高低によって表面抵抗率が変動しやすい。湿度の影響を受けにくい半導電層を設ける方法として半導電性を有する金属酸化物を半導電性材料として用いる方法が挙げられる。酸化亜鉛やチタン酸カリウムといった半導電性を有する金属酸化物を半導電性材料に用いることで、10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有し、かつ湿度の影響を受けにくい半導電層が得られる。
【0028】
また、金属酸化物が酸化スズ、もしくはアンチモンをドープした酸化スズであることを特徴とするものである。酸化スズは印加電圧の大小による抵抗値の変化が小さい。これは酸化スズの導電メカニズムが結晶格子中の酸素欠陥に起因しているためである。また、酸化スズは酸やアルカリに溶解しにくい性質を有する。そのため酸化スズを半導電性材料として用いることで化学的かつ電気的に安定な半導電層を得ることが可能となる。また、酸化スズにアンチモンをドープすることでN型の半導体構造が得られる。そのためアンチモンをドープしない場合に比べて導電性がよくなり、より少ない量で半導電層としての半導電性を得ることが可能となる。
【0029】
また、半導電性材料が酸化スズもしくはアンチモンをドープした酸化スズをそれよりも大きい粒子径を有する担持体粒子に添着したものであることを特徴とするものである。酸化スズによって得られた半導電層が半導電性を有するためには半導電層の中で酸化スズの粒子どうしが接触してつながる必要があるが、酸化スズの粒子単体でそれを実現するためには高価な酸化スズ粒子が大量に必要となり高いコストを要することとなる。酸化スズどうしが接触していれば同等の半導電性が得られる。そのため、酸化チタンなどの化学的に安定な材料で作った大き目の担持体粒子の表面に、より小さい粒子である酸化スズを添着することによって、少量の酸化スズで半導電性を得ることが可能となる。
【0030】
また、担持体粒子が針形状であることを特徴とするものである。前述したとおり半導電性を得るためには酸化スズどうしが接触する必要がある。ここで球状に比べて針形状の粒子の方が、粒子どうしが重なって接触しやすくなる。そのため針状の酸化チタン粒子など針形状を有する材料を担持体粒子としてその表面に、より小さい粒子である酸化スズを添着することによって、より少量の酸化スズで半導電性を得ることが可能となる。
【0031】
また、バインダ成分を樹脂とし、分子架橋剤を添加した半導電塗料を用いることを特徴とする。バインダ成分に熱可塑性ポリエステル樹脂や塩ビ樹脂、ポリオール樹脂といった樹脂を用いる場合、塗料としての形態を成すために溶媒に対する溶解性が高い、すなわち分子量の比較的小さな状態の樹脂が使用される。低分子の樹脂は油や界面活性剤に溶解しやすく、例えば空気中の油粒子や界面活性剤粒子を捕集した場合、表面に付着した油粒子や界面活性剤粒子が半導電層中の樹脂を溶解し、結果として半導電層の劣化を引き起こす。ここでポリイソシアネートなどの高分子架橋剤を半導電塗料に添加することで樹脂中のOH基が架橋され、樹脂が高分子化する。そのため油や界面活性剤に対して樹脂が溶解しない、化学的に安定な半導電層を得ることが可能となる。
【0032】
また、半導電塗料をスクリーン印刷法で絶縁性基板に塗布して半導電層を設けることを特徴とするものである。機械的強度と化学的安定性を有する半導電層を得るためにはある程度の厚みを必要とする。スクリーン印刷法で半導電層を得ることで、10〜50μmほどのある程度厚い半導電層を得ることが可能である。また、請求項20に記載するような絶縁性基板の端部に半導電層を設けないようにすることも、スクリーン次第で自在なパターンを印刷できるスクリーン印刷法であれば容易に実現することが可能である。
【0033】
半導電層の端部とは絶縁性基板に塗布した際のきわの部分を指す。すなわち絶縁性基板の端面まで塗布すれば半導電層の端部は半導電電極板それ自体の端部を意味する。ここで電圧および電極板どうしの間隔次第では高電圧が印加される電極板の半導電層の端部からもう一方の電極板の半導電層に向かってコロナ放電が発生する。このコロナ放電の大きさによっては大量のオゾンが発生し、また、半導電層の表面電位の低下を引き起こす。このコロナ放電を積極的に利用する方法も別途考案しているが、集塵装置の捕集部としての性能安定化とオゾン抑制だけを考えると半導電層の端部で発生するコロナ放電は抑制したほうがよい。抑制する具体的な方法としては、請求項18に記載するように粉塵反発電極板および集塵電極板のうち、高電圧が印加される側の電極板に設けられた半導電層の端部を、もう一方の電極板の半導電層で挟まない位置に設ける方法が挙げられる。たとえば粉塵反発電極板に高電圧を、集塵電極板に0kVを印加するという条件において、集塵電極板の半導電層の端部を集塵装置の中側に設け、粉塵反発電極板の半導電層の端部をできるだけ外側に位置させることで粉塵反発電極板の半導電層の端部を集塵電極板の半導電層で挟まない構造とすることができる。このようにすることで高電圧が印加される粉塵反発電極板の半導電層の端部から見て0Vが印加される集塵電極板の半導電層が近傍に無い構造となり、高電圧が印加される粉塵反発電極板の半導電層の端部から発生しうるコロナ放電を抑制することが可能となる。
【0034】
また、コロナ放電を抑制する他の方法としては、請求項19に記載するように粉塵反発電極板および集塵電極板のうち、少なくとも高電圧が印加される側における電極板の半導電層の端部を絶縁体で被覆する方法が挙げられる。高電圧が印加される側の電極板における半導電層の端部を絶縁性フィルムやコーキング剤などの絶縁体で被覆することで空気と接触しない構造とする。また、集塵装置の外部に接地されて0Vとなっている物体、特に導電体が存在する場合、その物体に向かって発生するコロナ放電を抑制するためには、請求項20に記載するように、粉塵反発電極板および集塵電極板のうち、少なくとも高電圧が印加される側の電極板において、絶縁性基板の端部に半導電層を設けない構造とすることが有効である。このようにすることで高電圧が印加される電極板の半導電層の端部が集塵装置の外部に対して露出しない構造とすることが可能となる。
【0035】
また、半導電電極板に貫通孔を設けることを特徴とするものである。集塵部において粉塵反発電極板と集塵電極板は交互に積層される構造であるため、粉塵反発電極板と集塵電極板の間に一様な電場を設けるためには半導電電極板の表と裏の電荷が同様の分布を有する必要がある。半導電電極板に貫通孔を設けることで、貫通孔の壁面を通じて半導電電極板の表と裏の表面にともに一様な電荷を与えることが可能となり、粉塵反発電極板と集塵電極板の間に一様な電場を容易に設けることが可能となる。
【0036】
また、貫通孔の壁面に導電性を持たせることを特徴とする。貫通孔の壁面に導電性を持たせることで半導電電極板の表と裏の表面に与えられる電荷の分布をより確実に同じにすることが可能となる。
【0037】
また、絶縁性基板が樹脂材料にガラス短繊維およびマイカを充填して押出し成型後に加熱積層プレスを施した樹脂板であることを特徴とするものである。スペーサなどで表面どうしをブリッジさせずにそれぞれの電極板を支持固定するためには電極板が大きく撓んだりせず、また、初めから大きな反りがない必要がある。そのためには電極板自体が高い強度および平面性を有することが必要となる。樹脂材料にガラス短繊維およびマイカを充填して押出し成型後に加熱積層プレスを施すことで高い強度と高い平面性を有する樹脂板が得られ、このような樹脂板を電極板に用いることで電極板の撓みや反りを抑制することが可能となる。
【0038】
また、粉塵反発電極板および集塵電極板をともに半導電電極板とし、半導電電極板における半導電層の表面もしくは絶縁性基板の表面に積層方向から見て重ならないように導電パターンを設け、粉塵反発電極板および集塵電極板の導電パターンにそれぞれ異なる電圧を印加することを特徴とするものである。電荷は高圧電源の端子から供給されるが、端子から近い位置ほど速やかに電荷が供給される。半導電電極板に導電パターンを設け、高圧電源によって導電パターンに電圧を印加することで半導電層の上に電荷を速やかに一様に分布させることが可能となる。一様に分布した電荷によって粉塵反発電極板および集塵電極板の間に設けられた空間に一様な電場を設けることが可能となり、集塵性能をより高めることが可能となる。
【0039】
また、導電パターンを魚の骨状に設けることを特徴とするものである。具体的には1本の導電パターンを設け、それと直交するように魚の骨状に導電パターンを複数本設けることで魚の骨状に導電パターンを形成する。導電パターンが魚の骨状にそれぞれの電極板の表面全体を網羅するように設けられているため、通じて粉塵反発電極板および集塵電極板の表面それぞれに一様な電荷を速やかに供給することが可能となり、集塵性能をより高めることが可能となる。また、それぞれの電極板に設けられた導電パターンどうしによるスパークを防止するためには一定以上の空間絶縁距離を確保する必要がある。そのために粉塵反発電極板および集塵電極板それぞれに設けられた魚の骨状の導電パターンは積層方向から見て重ならないように設けられている。
【0040】
また、粉塵反発電極板および集塵電極板それぞれに設けられた導電パターンどうしの距離が15mm以上であることを特徴とするものである。一般的に空気の絶縁耐圧は1kV/mmである。スパークの発生条件は粉塵反発電極板および集塵電極板の電位差によって異なるが、電位差としてよく用いられる6〜10kVの条件において、空間絶縁距離が15mm以上であればスパークがほぼ発生しないことから、粉塵反発電極板および集塵電極板それぞれに設けられた導電パターンどうしの距離を15mm以上とすることによってスパークを防止することが可能となる。
【0041】
また、集塵部の上流側に粉塵を帯電する荷電部を設けることを特徴とするものである。例えばコロナ放電によって加速されたイオンを粉塵に付着させて帯電粉塵とする荷電部を集塵部の上流側に設けることで、集塵部の電場による高い粉塵捕集作用を得ることが可能となる。荷電部の具体的な構造としては請求項28に記載するように荷電部の放電電極として針状電極を用い、前記針状電極を通風方向に対して水平に設け、針状電極を挟むように荷電部対向電極板を通風方向に対して水平に設けたものが挙げられる。針状電極に高電圧を印加し、荷電部対向電極板に0kVを印加することで針状電極近傍に不平等電場が形成される。そして針状電極の先端近傍でコロナ放電が発生し、針状電極の先端近傍から加速されたイオンが放出され、荷電部対向電極板に向かって拡散する。ここでイオン拡散領域は針状電極の先端から荷電部対向電極板に向かって放物線を描くように広範囲に形成される。針状電極は通風方向に対して水平に設けられているため、広範囲に設けられたイオン拡散領域を空気中の粉塵が通過することが可能となり、粉塵を確実に帯電させることが可能となる。そのため集塵装置の集塵性能をより高いものにすることが可能となる。
【0042】
また、針状電極が両端の尖った両端針状電極であることを特徴とするものである。針状電極の両端を尖らせて両方の先端を荷電部対向電極板で挟むことにより、イオン拡散領域は2倍になる。そのため粉塵をより確実に帯電させることが可能となり、集塵装置の集塵性能をより高いものにすることが可能となる。
【0043】
また、針状電極と高圧電源との間に抵抗器を設けることを特徴とするものである。針状電極に物理的な力が加わって損傷し、荷電部対向電極板との距離が小さくなってしまった場合に、針状電極と荷電部対向電極板との間でスパークが発生する可能性がある。針状電極と高圧電源との間に抵抗器を設けることで、針状電極と荷電部対向電極板との距離が小さくなった場合に針先から流れる放電電流が大きくなると同時に抵抗器による電圧降下が上昇し、針状電極の電圧が低下する。このため針状電極と荷電部対向電極板との距離が小さくなった場合でも針状電極と荷電部対向電極板との間で起こりうるスパークを防止することが可能となる。この時、抵抗器に接続する針状電極の針先個数が多くなった場合ははじめから電圧降下が大きくなってしまい、結果として針状電極の放電電流を大幅が低下して高い集塵性能を確保できなくなる。請求項31に記載したように抵抗器に接続する針状電極の先端個数1個以上6個以下とすることで針状電極から一定以上の放電電流を得、高い集塵性能を確保することが可能となる。
【0044】
また、抵抗器の抵抗値が20MΩ以上200MΩ以下であることを特徴とするものである。高圧電源と針状電極との間に設ける抵抗器の値が大きすぎる場合は針状電極の電圧降下が大きくなりすぎてしまい、結果として針状電極の放電電流を大幅が低下して高い集塵性能を確保できなくなる。抵抗器の抵抗値を20MΩ以上200MΩ以下とすることで針状電極から一定以上の放電電流を得、高い集塵性能を確保することが可能となる。
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。ちなみにこれら実施の形態は一例を示すものであり、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではない。
【0046】
(実施の形態1)
集塵装置において、10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層1を設けた粉塵反発電極板2および集塵電極板3を交互に積層した集塵部4の斜視図を図1に、正面図を図2に示す。ちなみに図2ではフレーム12を箱状の形状のものとして示してあるが、図をわかりやすくするために図1では碍子13を設ける両側の部分のみを記載している。
【0047】
図1および図2に示すように粉塵反発電極板2および集塵電極板3は通電貫通孔5および空間形成貫通孔6が設けられており、図3に示すような円筒状スペーサ7を挟みながらシャフト8を挿入することによって間隔を開けながら固定されている。円筒状スペーサ7およびシャフト8は金属など導電性を有する材料で構成されており、高圧電源9を接続することによって粉塵反発電極板2および集塵電極板3それぞれに設けられた半導電層1に異なる電圧、例えば粉塵反発電極板の半導電層1に−8kV、集塵電極板の半導電層1に0kVを印加することが可能となっている。そのため粉塵反発電極板2および集塵電極板3の間に設けられた空間10には電場が形成されている。空気は通風方向11が示す向きで集塵部4に導入され、空気中の例えばマイナスに帯電された帯電粉塵が空間10を通過する。そして帯電粉塵は空間10に設けられた電場からクーロン力を受けて集塵電極板3に付着し、捕集される。ここで繰り返しになるが粉塵反発電極板2および集塵電極板3は、表面に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層1が設けられたいわゆる半導電電極板となっている。表面が導電性である場合、表面の電荷移動が自由かつ急激に起こるためスパークが発生するが、表面が半導電性であるため電荷の移動が急激に起こらない。そのためスパークを防止することができる。また、フレーム12の外側に設けられた碍子13で粉塵反発電極板2を支えることによって粉塵反発電極板2と集塵電極板3の表面どうしが接触しない構造となっている。すなわち表面が接触して起こる表面電位の低下が発生せず、空間10には一様かつ強度の高い電場が常に形成されているためスパークを防止しながら、かつ高い集塵性能を得ることが可能となっている。
【0048】
ここで代表的に粉塵反発電極板2の構造について図4および図5を用いて説明する。ちなみに集塵電極板3の構造は粉塵反発電極板2とほぼ同じ構造であり、大きな違いは通電貫通孔5および空間形成貫通孔6の位置が異なるのみである。図4に示すように粉塵反発電極板2は絶縁性基板14の表面に半導電層1が設けられており、同時に通電貫通孔5および空間形成貫通孔6とが設けられている。通電貫通孔5はシャフト8がちょうど入りかつ円筒状スペーサ7と接触する大きさとなっており、円筒状スペーサ7との接触箇所によって固定および通電がなされている。また、空間形成貫通孔6は集塵電極板3を固定し通電する円筒状スペーサ7との空間距離が目安として15mm以上となるような大きさとなっている。例えば円筒状スペーサ7の外径が14mmであれば空間形成貫通孔6の径は44mm以上となっており、集塵電極板3との電位差が−10kV程度であれば集塵電極板3を固定する円筒状スペーサ7との間でスパークを発生しない構造となっている。また、絶縁性基板14の表面に半導電層1を設ける方法としては、塗布面が10の7〜11乗Ω/□となる半導電塗料を塗布して乾燥する、もしくは10の7〜11乗Ω・cmの体積抵抗率を有するフィルムを絶縁性基板の表面に貼るなどの方法が挙げられる。円筒状スペーサ7は高圧電源9と接続されたシャフト8と接触しており、通電貫通孔5の周囲の円筒状スペーサ7との接触部分から印加電圧に相当する電荷が半導電層1に供給される。半導電層1は10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有するため、印加電圧に相当する電荷を一様に分布させながらも、急激な電荷の移動を抑制する働きを持っている。そのため大きな粉塵が付着するなどある箇所でスパークの基点となるような状態が形成されたとしても電荷が急激に移動しないためスパークの発生を防止することができる。すなわち印加電圧に相当する電荷を分布させて空間10に一様な電場を形成して高い集塵性能を得ながらスパークを防止することが可能となっている。また、図5には粉塵反発電極板に小さな電荷均一化貫通孔15を複数設けたものを示す。電荷均一化貫通孔15の壁面は表面抵抗率が10の7〜11乗Ω/□といった半導電性か、もしくは10の1〜4乗Ω/□といった導電性を有しており、粉塵反発電極板2の表裏に設けられた半導電層1における電荷の分布を同一状態にする働きを有する。仮に円筒状スペーサ7と通電貫通孔5との接触が悪くなった部分が生じても他の部分の接触が十分であればその部分を通じて表裏の半導電層1の電荷分布を同一にし、空間10において一様な電場を得ることが可能となる。
【0049】
なお、粉塵反発電極板2および集塵電極板3として、絶縁性基板14の表面に半導電層1を設けた半導電電極板を用いる構成で説明を行ったが、もともと表面が10の7〜11乗Ω/□となる材料で構成された半導電電極板を粉塵反発電極板2および集塵電極板3として用いた場合でも同様にスパークを防止しながら高い集塵性能を得ることが可能である。
【0050】
(実施の形態2)
半導電性材料、樹脂、溶剤からなるスクリーン印刷用インキを樹脂製の絶縁性基板14にスクリーン印刷法で塗布し乾燥させて得た半導電層1による検証結果を以下に示す。ここでインク中の半導電性材料として球状および針形状を有するアンチモンドープ酸化スズ添着酸化チタンを、また、樹脂として熱可塑性ポリエステル樹脂を用いた。また、半導電層を作成するにあたり、バインダ成分である熱可塑性ポリエステル樹脂を高分子化してバインダとしての強度を確保するために印刷する直前にポリイソシアネート系の分子架橋剤を一定の比率でインキに添加している。スクリーン印刷法で得られた半導電層1の厚みは約10μmであった。半導電性材料の形状と半導電層の表面抵抗率の関係について検討結果を表1に示す。球状の半導電性材料は粒子径約0.3μm、針形状の半導電性材料は太さ約0.2μm、長さ約3μmである。球状および針形状それぞれの半導電材料をもちいて作成した半導電層の表面抵抗率を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示すように、10の9〜10乗Ω/□の表面抵抗率を得るのに半導電層1中における半導電材料の重量比率は球状のもので60%、針形状のもので22%となった。この結果から、球状よりも針形状の方がより少ない量で半導電性が得られることがわかった。これは針形状の方が、粒子どうしが重なって接触しやすいことによるものである。
【0053】
次に表面抵抗率と表面電位の関係を調べた。図6に示すように、絶縁性基板14の上に90mm角の半導電層1を設け、一つの角と高圧電源9の端子を接触させて−3kVを印加した。そして予め半導電層1の中央部分17に設けておいた非接触式の表面電位計16(モンローエレクトロニクス製MODEL279)によって半導電層1の表面電位を測定し、−3kVに到達するまでの時間を計測した。その結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
この結果から、表面抵抗率が10の11乗Ω/□以下であれば30秒以内で−3kVに到達するが、それ以上になると−3kVに到達するのに100秒以上必要であることがわかった。すなわち高圧電源から供給される電圧まで速やかに昇圧できる迅速なレスポンスを得るためには半導電層1の表面抵抗率を10の11乗Ω/□以下とする必要があることがわかった。
【0056】
次に、図7に示すように直径50mmの内筒電極18、内径70mmのリング状の外筒電極19を半導電層1の上に置き、内筒電極18を接地して0Vとし、また外筒電極19に1〜8kVの電圧を印加した。そして両電極に流れる電流を計測して表面抵抗率を算出した。ちなみに半導電層1の作成に用いた半導電性材料は針形状のアンチモンドープ酸化スズ添着酸化チタン、そして比較用として粒子径約0.2μmのアルミニウムドープ酸化亜鉛の2種類、表面抵抗率は1kV印加時にそれぞれ約10の12、10および7乗Ω/□の3種類計6種類の半導電層1で試験を行った。結果を表3に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
表3に示すとおり、アンチモンドープ酸化スズ添着酸化チタンを用いた半導電層1は1、4および8kVと電圧を変化させても表面抵抗率の大幅な変化は見られない。しかしながら、1kVにおける表面抵抗率が5×10の7乗Ω/□のサンプルにおいては一回だけスパークが発生した。その後表面を観察したところ状態の変化は見られなかったが、スパーク防止および安全確保の観点から表面抵抗率は10の7乗Ω/□以下ではスパークが起こる可能性があり、粉塵反発電極板と集塵電極板とが接触する異常時には電流が流れて発熱することなどを考慮して少なくとも10の7乗Ω/□以上が望ましいという結果となった。しかしアルミニウムドープ酸化亜鉛を用いた半導電層1においては1、4、8kVと電圧を大きくするにつれて表面抵抗率が低下し、1kVにおいて表面抵抗率が10の8乗および10乗Ω/□のサンプルにおいてはスパークが発生し、その後通電状態となった。試験後に表面を観察すると一筋の焦げが発生しており、絶縁性基板14が炭化して導通したことを確認した。このように半導電性材料によっては電圧が高くなるにつれて表面抵抗率が導通方向に変化するものもあることがわかり、またアンチモンドープ酸化スズ添着酸化チタンであればそのような変化が大幅に起こらず、安定して所定の表面抵抗率が得られることがわかった。
【0059】
また、ポリイソシアネート系の分子架橋剤の効果を調べるために界面活性剤と鉱物油を混合した水溶性油に1ヶ月浸漬したところ、分子架橋剤を添加して作成した半導電層1は外観、表面抵抗率ともに変化が無かったが、分子架橋剤を添加せずに作成した半導電層1は白色である半導電性材料の脱落を示す色落ちが発生し、また、表面抵抗率も当初の10の8乗Ω/□が10の12乗Ω/□以上に上昇した。この結果から分子架橋剤を添加することにより樹脂の劣化を防ぎ、半導電性材料の固着性能を高めることができることがわかった。
【0060】
(実施の形態3)
粉塵反発電極板2および集塵電極板3として絶縁性基板14の表面に半導電層1を設けた半導電電極板を用い、粉塵反発電極板の半導電層の端部20を集塵電極板3の半導電層1で挟まない位置に設けた電極板の一組の積層図を図8に、また、粉塵反発電極板の半導電層の端部20を絶縁シート21で被覆した粉塵反発電極板を図9に示す。ちなみに粉塵反発電極板2に高電圧を、また、集塵電極板3に0Vを印加するという条件で実施の形態を示している。図8に示すとおり粉塵反発電極板の半導電層の端部20は集塵電極板3の半導電層1によって囲まれない位置に設けてあるため粉塵反発電極板の半導電層の端部20から集塵電極板3の半導電層1に向かってコロナ放電が起きない構造となっている。同時に粉塵反発電極板の半導電層の端部20はスクリーン印刷法によって絶縁性基板の端部まで設けないように塗布されている。こうすることにより集塵装置の外部に向けて粉塵反発電極板の半導電層の端部20が露わにならず、集塵装置の外部に接地された物体が存在してもそれに向けてコロナ放電が起きないような構造となっている。
【0061】
また、図9に示すように粉塵反発電極板の半導電層の端部20は絶縁シート21で被覆されて空気と直接接触しないため、粉塵反発電極板の半導電層の端部20からコロナ放電が起きない構造となっている。絶縁シート21としては絶縁性を有する樹脂のフィルムやテープなどを用いることができる。また、絶縁シート21ではなくシリコーンコーキング剤を塗ってコーキングするなどの手段でも、粉塵反発電極板の半導電層の端部20が絶縁体で被覆されれば同様の効果を得ることが可能である。
【0062】
(実施の形態4)
魚の骨状の導電パターン22を設け、かつ表面に半導電層1を有する粉塵反発電極板2を図10に、また、魚の骨状の導電パターン22を設け、かつ表面に半導電層1を有する集塵電極板3を図11に示す。図10および図11に示すように通電貫通孔5の周囲の円筒状スペーサ7と接触する部分にも導電パターン22が設けられており、円筒状スペーサ7からの電荷の供給をより確実にする構造となっている。導電パターン22を設けることによって表面の半導電層1に電荷をより均一かつ速やかに供給することが可能となる。導電パターン22は絶縁性基板14の表面もしくは半導電層1の表面のどちらに設けても同様の効果を得ることが可能である。導電パターン22を設ける方法としては以下のようなものが挙げられる。表面に銅などによる導電膜を設け、更にその上にレジストと呼ばれる感光剤を塗布した絶縁性基板14に導電パターンが印刷された透明フィルムを重ねて紫外線を当てて露光した後に現像剤に浸して光の当たった部分に設けられた感光剤を除去し、その後エッチング剤に浸漬して除去された感光剤の下にある導電膜を溶解することで光の当たらなかった部分のみに導電パターン22を得る方法、または、スクリーン印刷によって絶縁性基板14もしくは半導電層1の上に銀やカーボンなどからなる導電インクを印刷し乾燥することで導電パターンを得る方法などである。粉塵反発電極板2および集塵電極板3に設けられた導電パターン22どうしは、積層時には積層方向から見て重ならない位置に設けられている。これは導電パターンどうしには異なる電圧が印加されており、かつ導電性であるためある程度の空間距離を取ってスパークを防止するためである。目安として10kV程度の電位差において15mm以上の空間距離を取る。こうすることで異なる電圧が印加された導電パターンどうしのスパークを防止することが可能である。
【0063】
(実施の形態5)
両端の尖った針状電極23を水平に設け、針状電極23を挟むように荷電部対向電極板24を通風方向11に対して水平に設けた荷電部25を図12および図13に示す。ここで荷電部25は集塵部4と似た構造であるが、針状電極23は通電貫通孔5を有する放電基板26に固定されており、放電基板26は円筒状スペーサ7を挟みながらシャフト8によって固定され、碍子13によってフレーム12に支持されている。荷電部対向電極板24も同様に円筒状スペーサ7を挟みながらシャフト8によって固定されており、放電基板26と荷電部対向電極板24とは碍子13によって絶縁された構造となっている。このような構造において針状電極23と荷電部対向電極板24との間に高い電位差を与えると針状電極23の先端で放電が起こり、先端付近でイオンが発生する。そして針状電極23は荷電部対向電極板24の、特に針状電極の先端が向いた方向の位置へ向けて広く拡散するようにイオンを加速させる。そのため通風方向11から導入される空気中の粉塵に対して加速したイオンが接触する確率が高くなり、結果として粉塵を確実に帯電させることが可能となる。ここでこの荷電部25と集塵部4との集塵装置における配置を図14に示す。図11に示すように荷電部25の下流側に集塵部4は配置され、荷電部25で確実に帯電された粉塵が集塵部4によって捕集されるため集塵性能が高まる。ここで放電基板26の一例を図15に示す。図15に示す放電基板26は絶縁性基板14の上に針状電極23が複数設けられた構造となっており、通電貫通孔5の周囲と針状電極23とを接続するように導電パターン22が設けられている。そして高圧電源9が接続されたシャフト8と接触した円筒状スペーサ7と導電パターン22とが接触することで針状電極23に例えば−10kVの高電圧を印加する構造となっている。荷電部対向電極板24は金属など導電性を有する材料で構成され、高圧電源9に接続することで例えば0kVの電圧が印加されている。ここで放電基板26の導電パターン22において、針状電極23と通電貫通孔5との導通路の途中で抵抗器27が設けられている。抵抗器27を設けることで例えば針状電極23が例えば曲ってスパークが生じるほどに荷電部対向電極板24に近づいてしまっても放電電流が増えて電圧降下が大きくなる作用によって針状電極23の電圧が低下し、結果としてスパークが始まる距離、いわゆるスパーク距離を小さくすることが可能となる。その結果安全性を高めたり、また、針状電極23と荷電部対向電極板24との距離を小さく設定することで粉塵を帯電させる性能を高めることが可能となる。
【0064】
ここで抵抗器27は1個当たりに対して針状電極23の先端の数が6個以下となるように設けることが望ましい。針状電極23の接続数が多くなりすぎると1個あたりの抵抗器27を通過する放電電流が大きくなり電圧降下が過度に大きくなる。電圧降下が過度に大きくなると針状電極23の先端で起こる放電の度合いが小さくなり、発生し加速するイオンの量が小さくなる。その結果集塵性能が低下するためである。また、抵抗器27の抵抗値は20MΩから200MΩの範囲であることが望ましい。これは20MΩ未満であると抵抗器がない場合と比較してスパーク距離がそれほど小さくならないこと、また200MΩよりも大きいと少しの放電電流で大きな電圧降下が生じてしまい、結果として針状電極で発生する放電が小さくなり、イオンの量が小さくなって高い集塵性能を得られないからである。ここで図16に示す実験装置を組み、スパーク距離の変化を検証した。すなわち荷電部対向電極板24として金属板28を設置し、その上に金属板28に対して垂直となるように針状電極23を設け、針状電極23に−8kV、金属板28に0kVの電圧を印加しながら針状電極23の先端を金属板28に近づけていった。この時、針状電極23と高圧電源9との間に直列で任意の抵抗値を有する抵抗器27を接続した。そしてスパークが発生する距離すなわちスパーク距離および針状電極23の先端と金属板28との距離が15mmの時の放電電流を電流計29によって測定した。結果を表1に示す。
【0065】
【表4】

【0066】
抵抗器27を接続しないで高圧電源9と針状電極23を直接接続した場合、スパーク距離は5.0mmで放電電流は20.4μAあった。それに対して10MΩではスパーク距離が4.0mmで放電電流が17.2μA、20MΩではスパーク距離が3.0mmで放電電流が15.0μA、40MΩではスパーク距離が2.0mmで放電電流が14.0μA、50MΩではスパーク距離が1.2mmで放電電流が13.6μA、100MΩではスパーク距離が0.8mmで放電電流が11.5μA、200MΩではスパーク距離が0.6mmで放電電流が8.7μA、300MΩではスパーク距離が0.5mmで放電電流が7.0μAであった。このように抵抗器27の抵抗値を大きくすればスパーク距離が小さくなるが、その反面放電電流も低下する。これは抵抗器27の抵抗値が高いほど針状電極23が抵抗器27によって電圧降下を起こす度合いが大きくなることを示している。本検証においては10MΩではスパーク距離がそれほど小さくならず、また300MΩ以上では放電電流が小さくなりすぎてしまう結果となった。スパーク距離を最小限にしながら必要最低限の放電電流を得るためには抵抗器27の抵抗値を最適な範囲にする必要がある。本検証によって20MΩから200MΩが抵抗値の最適な範囲であり、更に言えばスパーク距離を1mm前後まで小さくしながら1/2以上の放電電流を得たい場合は50MΩ以上100MΩ以下が最適な範囲であることがわかった。
【0067】
また、1個の抵抗器27に対して針状電極23の先端をいくつ接続すればスパーク距離を小さくしながら必要最低限の放電電流を確保できるかを把握するために、図17に示すように抵抗器が50MΩの抵抗器27に先端が1個、2個、4個、6個、8個、および10個となるように針状電極23を接続した装置を作成し、検証を行った。針状電極23に−8kV、金属板28に0kVを印加した状態で針状電極23の先端1個のみを金属板28に近づけた時のスパーク距離と、針状電極23の先端と金属板28との距離が15mmの時における針状電極23の先端1個あたりの放電電流とを測定した。結果を表2に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
抵抗器27に接続する先端が1個ではスパーク距離1.2mmで放電電流13.6μA、先端が2個ではスパーク距離1.2mmで放電電流11.1μA、先端が4個ではスパーク距離1.2mmで放電電流9.3μA、先端が6個ではスパーク距離1.2mmで放電電流7.3μA、先端が8個ではスパーク距離1.2mmで放電電流6.0μA、先端が10個ではスパーク距離1.2mmで放電電流5.0μAとなった。接続する先端の数を変えてもスパーク距離はほとんど変化しないが、針状電極23と金属板28との距離が15mmの時の放電電流は接続する先端が多くなればなるほど先端1個あたりの放電電流が小さくなる。接続する先端が多くなればなるほど抵抗器27を流れる電流が大きくなって電圧降下が大きくなり、針状電極23の電圧が低下したためである。ここで接続する先端が1個の場合と比べて6個以下であれば1/2以上の放電電流を確保することが可能であるが、8個接続した場合では1個接続した場合の1/2未満となってしまい、高い放電電流を確保できない。すなわち抵抗器1個当たりに接続する針状電極の先端数は6個以下とすることが望ましいことがわかった。
【0070】
なお、本発明の針状電極23は先端が放電を起こすだけの十分細い形状を有するものであることを意味し、例えば胴回りの径が0.5mm以下であるなど先端が十分に細くて放電可能な形状であれば必ずしも先端を鋭利にする必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の集塵装置は、高い集塵性能を得ながら集塵部および荷電部ともにスパークを防止することが可能であるため、高い集塵性能と安全性が同時に求められる集塵装置、例えば工場のオイルミスト集塵機や家庭用空気清浄機、または給気型換気扇などに搭載する集塵デバイスとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態1に記載の集塵部を示す斜視構成図
【図2】同集塵部を示す正面構成図
【図3】同円筒状スペーサを示す構成図
【図4】同粉塵反発電極板を示す構成図
【図5】同電荷均一化貫通孔を設けた粉塵反発電極板を示す構成図
【図6】実施の形態2に記載の検証に用いた実験装置を示す図
【図7】同検証に用いた実験装置を示す図
【図8】実施の形態3に記載の粉塵反発電極板と集塵電極板の一組を示す構成図
【図9】同絶縁シートで半導電層の端部を被覆した粉塵反発電極板を示す構成図
【図10】実施の形態4に記載の粉塵反発電極板を示す構成図
【図11】同集塵電極板を示す構成図
【図12】実施の形態5に記載の荷電部を示す斜視構成図
【図13】同荷電部を示す正面構成図
【図14】同放電基板を示す構成図
【図15】同集塵装置の荷電部および集塵部の配列を示す図
【図16】同検証に用いた実験装置を示す図
【図17】同検証に用いた実験装置を示す図
【図18】特許文献1に記載の集塵部を示す構成図
【図19】特許文献2に記載のコレクタ電極板を示す構成図
【図20】同コレクタ電極板の図14におけるA−B断面を示す図
【図21】同コレクタ電極板を積層して形成する集塵部を示す図
【符号の説明】
【0073】
1 半導電層
2 粉塵反発電極板
3 集塵電極板
4 集塵部
5 通電貫通孔
6 空間形成貫通孔
7 円筒状スペーサ
8 シャフト
9 高圧電源
10 空間
11 通風方向
12 フレーム
13 碍子
14 絶縁性基板
15 電荷均一化貫通孔
16 表面電位計
17 中央部分
18 内筒電極
19 外筒電極
20 粉塵反発電極板の半導電層の端部
21 絶縁シート
22 導電パターン
23 針状電極
24 荷電部対向電極板
25 荷電部
26 放電基板
27 抵抗器
28 金属板
29 電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵反発電極板と集塵電極板を交互に積層したものをフレームで固定した集塵部を備える集塵装置において、粉塵反発電極板および集塵電極板の少なくともどちらか一方が半導電性もしくは絶縁性を有する材料で構成されると同時に10の7〜10乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電電極板であり、かつ粉塵反発電極板と集塵電極板とがフレームの外側に設けられた碍子でつながっていることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
粉塵反発電極板と集塵電極板を交互に積層したものをフレームで固定した集塵部を備える集塵装置において、粉塵反発電極板および集塵電極板の少なくともどちらか一方が半導電性もしくは絶縁性を有する材料で構成されると同時に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電電極板であり、かつ粉塵反発電極板と集塵電極板とがフレームの外側に設けられた碍子でつながっていることを特徴とする集塵装置。
【請求項3】
粉塵反発電極板および集塵電極板それぞれに貫通孔を設け、導電性のシャフトを挿入しながら粉塵反発電極板と導電性の円筒状スペーサ、集塵極板と導電性の円筒状スペーサの順で設けることを特徴とする請求項1または2記載の集塵装置。
【請求項4】
半導電電極板が絶縁性基板の表面に10の7〜10乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層を設けたものであることを特徴とする請求項1または3記載の集塵装置。
【請求項5】
半導電電極板が絶縁性基板の表面に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層を設けたものであることを特徴とする請求項2または3記載の集塵装置。
【請求項6】
10の7〜10乗Ω・cmの体積抵抗率を有する樹脂フィルムを絶縁性基板の表面に設けたものを半導電電極板とすることを特徴とする請求項4記載の集塵装置。
【請求項7】
10の7〜11乗Ω・cmの体積抵抗率を有する樹脂フィルムを絶縁性基板の表面に設けたものを半導電電極板とすることを特徴とする請求項5記載の集塵装置。
【請求項8】
塗布面が10の7〜10乗Ω/□となる半導電塗料を絶縁性基板の表面に塗布し、乾燥して半導電層を設けたものを半導電電極板とすることを特徴とする請求項4記載の集塵装置。
【請求項9】
塗布面が10の7〜11乗Ω/□となる半導電塗料を絶縁性基板の表面に塗布し、乾燥して半導電層を設けたものを半導電電極板とすることを特徴とする請求項5記載の集塵装置。
【請求項10】
半導電塗料が半導電性材料および半導電性材料を塗布面に固着させるバインダ成分を含むことを特徴とする請求項8または9記載の集塵装置。
【請求項11】
半導電性材料がイオン導電性ポリマーであることを特徴とする請求項10記載の集塵装置。
【請求項12】
半導電性材料が半導電性の金属酸化物であることを特徴とする請求項10記載の集塵装置。
【請求項13】
金属酸化物が酸化スズ、もしくはアンチモンをドープした酸化スズであることを特徴とする請求項12記載の集塵装置。
【請求項14】
半導電性材料が酸化スズもしくはアンチモンをドープした酸化スズをそれよりも大きい粒子径を有する担持体粒子に添着したものであることを特徴とする請求項10記載の集塵装置。
【請求項15】
担持体粒子が針形状であることを特徴とする請求項14記載の集塵装置。
【請求項16】
バインダ成分を樹脂とし、分子架橋剤を添加した半導電塗料を用いることを特徴とする請求項10乃至15いずれかに記載の集塵装置。
【請求項17】
半導電塗料をスクリーン印刷法で絶縁性基板に塗布して半導電層を設けることを特徴とする請求項8乃至16いずれかに記載の集塵装置。
【請求項18】
粉塵反発電極板および集塵電極板のうち、高電圧が印加される側の電極板に設けられた半導電層の端部を、もう一方の電極板の半導電層で挟まない位置に設けることを特徴とする請求項1乃至17いずれかに記載の集塵装置。
【請求項19】
粉塵反発電極板および集塵電極板のうち、少なくとも高電圧が印加される側における電極板の半導電層の端部を絶縁体で被覆することを特徴とする請求項1乃至18いずれかに記載の集塵装置。
【請求項20】
粉塵反発電極板および集塵電極板のうち、少なくとも高電圧が印加される側の電極板において、絶縁性基板の端部に半導電層を設けないことを特徴とする請求項1乃至19いずれかに記載の集塵装置。
【請求項21】
半導電電極板に貫通孔を設けることを特徴とする請求項1乃至20いずれかに記載の集塵装置。
【請求項22】
貫通孔の壁面に導電性を持たせることを特徴とする請求項21記載の集塵装置。
【請求項23】
絶縁性基板が樹脂材料にガラス短繊維およびマイカを充填して押出し成型後に加熱積層プレスを施した樹脂板であることを特徴とする請求項4乃至22いずれかに記載の集塵装置。
【請求項24】
粉塵反発電極板および集塵電極板をともに半導電電極板とし、半導電電極板における半導電層の表面もしくは絶縁性基板の表面に積層方向から見て重ならないように導電パターンを設け、粉塵反発電極板および集塵電極板の導電パターンにそれぞれ異なる電圧を印加することを特徴とする請求項1乃至23いずれかに記載の集塵装置。
【請求項25】
導電パターンを魚の骨状に設けることを特徴とする請求項24記載の集塵装置。
【請求項26】
粉塵反発電極板および集塵電極板それぞれに設けられた導電パターンどうしの距離が15mm以上であることを特徴とする請求項24または25記載の集塵装置。
【請求項27】
集塵部の上流側に粉塵を帯電する荷電部を設けることを特徴とする請求項1乃至26いずれかに記載の集塵装置。
【請求項28】
荷電部の放電電極として針状電極を用い、前記針状電極を通風方向に対して水平に設け、針状電極を挟むように荷電部対向電極板を通風方向に対して水平に設けることを特徴とする請求項27記載の集塵装置。
【請求項29】
針状電極が両端の尖った両端針状電極であることを特徴とする請求項28記載の集塵装置。
【請求項30】
針状電極と高圧電源との間に抵抗器を設けることを特徴とする請求項28または29記載の集塵装置。
【請求項31】
抵抗器に接続する針状電極の先端個数1個以上6個以下とすることを特徴とする請求項30記載の集塵装置。
【請求項32】
抵抗器の抵抗値が20MΩ以上200MΩ以下であることを特徴とする請求項30または31記載の集塵装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2010−29839(P2010−29839A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503(P2009−503)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】