説明

集積紙幣挟持移送装置

【課題】集積紙幣を良好に移送することができる集積紙幣挟持移送装置の提供。
【解決手段】一の側方から送り込まれた紙幣を上下方向に集積させる一時集積部51と、一時集積部51の他の側方に設けられ、前記一の側方から送り込まれた紙幣を立位姿勢の整位面82に当接させて整位する整位部83と、一時集積部51に集積されている集積紙幣Sを上下から挟持して前記他の側方へ引き出す挟持部121と、を備え、挟持部121には、前記他の側方への移動で整位部83に当接して該整位部83を前記他の側方に揺動させる押圧部131が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積紙幣挟持移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類結束装置において、一時集積部に整列集積された紙幣を、その短手整位機構側からクランプ部を差し込んでクランプし、このクランプ部を引き戻すことによって、集積紙幣を短手整位機構に当てて、その押圧力により短手整位機構を付勢手段に抗して整位方向とは逆方向に倒し、このようにして、集積紙幣を一時集積部から抜き取るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−197509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の紙葉類結束装置によれば、集積紙幣をクランプした状態のクランプ部を引き戻す際に、短手整位機構を集積紙幣の押圧力によって倒す仕組みであるため、押圧力によっては整列させた集積紙幣の集積姿が乱れてしまったり、さらに腰の弱い紙幣の場合には、短手整位機構との接触により、紙幣の一部が折れ曲がったり、切れたり、傷付いてしまったりする可能性がある。
【0005】
本発明は、集積紙幣を良好に移送することができる集積紙幣挟持移送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、一の側方から送り込まれた紙幣を上下方向に集積させる一時集積部と、該一時集積部の他の側方に設けられ、前記一の側方から送り込まれた紙幣を立位姿勢の整位面に当接させて整位する整位部と、前記一時集積部に集積されている集積紙幣を上下から挟持して前記他の側方へ引き出す挟持部と、を備えた集積紙幣挟持移送装置であって、前記挟持部には、前記他の側方への移動で前記整位部に当接して該整位部を前記他の側方に揺動させる押圧部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記挟持部は、上下方向一側の挟持部材が上下方向他側に移動して該上下方向他側の挟持部材に近接することにより前記集積紙幣を上下から挟持することになり、前記押圧部は、前記上下方向一側の挟持部材に一体移動可能に設けられ、前記整位部には、前記挟持時に前記上下方向一側の挟持部材が前記上下方向他側へ移動すると前記押圧部の前記他の側方側に位置する当接部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記一時集積部は、昇降可能な昇降台を有し該昇降台が下端位置にあるとき前記挟持部により前記集積紙幣が引き出されることになり、前記整位部を前記整位面が立位姿勢にある状態で揺動不可にロックするとともに前記昇降台の前記下端位置への移動で該昇降台に当接してロックが解除されるロック部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明において、前記整位部は、前記整位面の下部側に揺動中心を有しており、前記整位部を、前記整位面が立位姿勢となるように揺動付勢する付勢手段が設けられ、前記挟持部は、前記集積紙幣を前記一時集積部から引き出して移送する際に、揺動状態の前記整位部によって前記集積紙幣が下方から支持される支持範囲内で前記他の側方に移動した後、鉛直方向上方に移動することを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記支持範囲内に前記挟持部が位置する状態で、前記挟持部から前記一時集積部側に不正にはみ出した紙幣の有無を監視する監視手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項4または5に係る発明において、前記集積紙幣を結束する結束部が、前記挟持部の前記鉛直方向上方の移動の移動先に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、一時集積部に一の側方から送り込まれた紙幣を、他の側方にある整位部の立位姿勢の整位面に当接させて整位しながら、上下方向に集積させた後、この集積紙幣を挟持部が上下から挟持して一時集積部から他の側方へ引き出すと、このときの挟持部の他の側方への移動で、挟持部に設けられた押圧部が、整位部に当接して整位部を他の側方に揺動させることになる。よって、集積紙幣で整位部を押圧して揺動させる場合と比べて、集積紙幣の集積姿の乱れを抑制でき、腰の弱い紙幣であっても折れや損傷等を抑制できる。したがって、集積紙幣を良好に移送することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、一時集積部の集積紙幣を挟持するために挟持部が上下方向一側の挟持部材を上下方向他側に移動させると、この上下方向一側の挟持部材に設けられた押圧部も一体に移動して、整位部の当接部を他の側方側に位置させる状態となる。そして、挟持部が挟持した集積紙幣を引き出すために他の側方へ移動すると、押圧部が当接部に当接して整位部を揺動させて集積紙幣に対し退避させることになる。このように集積紙幣の挟持のために上下方向他側に移動する上下方向一側の挟持部材に一体移動可能に押圧部を設けるため、押圧部を移動させるための専用の機構が不要となる。したがって、構造の簡素化および低コスト化が図れる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、ロック部により、整位部を整位面が立位姿勢にある状態で揺動不可にロックすると、一時集積部に送り込まれた紙幣を立位姿勢の整位面に当接させて整位しながら上下方向に集積させる際に、整位部が固定されており、不安定となることがない。よって、集積紙幣を良好に整位できることになる。また、集積紙幣を一時集積部から引き出すに際して、昇降台が下端位置に下がると、この昇降台に当接してロック部のロックが解除され、整位部が揺動可能となり、この状態で、挟持部が集積紙幣を一時集積部から引き出すと、挟持部に設けられた押圧部が、整位部に当接して整位部を他の側方に揺動させることになる。よって、ロック部のロック部を解除するための専用の機構が不要となり、構造の簡素化および低コスト化が図れる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、挟持部が集積紙幣を一時集積部から引き出すと、押圧部による押圧で整位部が付勢手段の付勢力に抗して整位面の下部側を中心に揺動することになり、その後、付勢手段の付勢力で揺動状態の整位部が集積紙幣を下方から支持する。よって、より安定して集積紙幣を引き出して移送することができる。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、付勢手段の付勢力で揺動状態の整位部が集積紙幣を下方から支持する支持範囲内に挟持部が位置した状態、つまり、集積紙幣が整位部で下方から支持され姿勢が安定した状態で、一時集積部側に不正にはみ出した紙幣の有無を監視手段で監視するため、適正に監視を行うことができる。したがって、動作保証の信頼性を高めることができる。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、集積紙幣を下方から支持している整位部が邪魔にならない挟持部の鉛直方向上方に、集積紙幣を結束する結束部が配設されているため、挟持部の結束部への移動ルートを単純化でき、構造の簡素化および低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る集積紙幣挟持移送装置を含む出納機を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る集積紙幣挟持移送装置を含む紙幣処理装置を概略的に示す側断面図である。
【図3】同紙幣処理装置の側断面図であって、入金処理ルートを太線で示すものである。
【図4】同紙幣処理装置の側断面図であって、収納処理ルートを太線で示すものである。
【図5】同紙幣処理装置の側断面図であって、返却処理ルートを太線で示すものである。
【図6】同紙幣処理装置の側断面図であって、バラ出金処理ルートを太線で示すものである。
【図7】同紙幣処理装置の側断面図であって、束出金処理ルートを太線で示すものである。
【図8】同紙幣処理装置の側断面図であって、自己精査処理の往路ルートを太線で示すものである。
【図9】同紙幣処理装置の側断面図であって、自己精査処理の復路ルートを太線で示すものである。
【図10】同紙幣処理装置の側断面図であって、ローカル整理処理の往路ルートを太線で示すものである。
【図11】同紙幣処理装置の側断面図であって、ローカル整理処理の復路ルートを太線で示すものである。
【図12】本発明の一実施形態に係る集積紙幣挟持移送装置の一時集積部を示す斜視図であって、(a)は昇降台が上端位置にある状態を、(b)は昇降台が下端位置にある状態をそれぞれ示すものである。
【図13】同集積紙幣挟持移送装置を示す斜視図である。
【図14】同集積紙幣挟持移送装置の部分斜視図である。
【図15】同集積紙幣挟持移送装置を示す側面図であって、紙幣の集積途中の状態を示すものである。
【図16】同集積紙幣挟持移送装置を示す側面図であって、昇降台の下端位置への下降後の状態を示すものである。
【図17】同集積紙幣挟持移送装置を示す側面図であって、挟持部の一時集積部への進入時の状態を示すものである。
【図18】同集積紙幣挟持移送装置を示す側面図であって、挟持部による集積紙幣の挟持時の状態を示すものである。
【図19】同集積紙幣挟持移送装置を示す側面図であって、挟持部による集積紙幣の引き出し途中の状態を示すものである。
【図20】同集積紙幣挟持移送装置を示す側面図であって、挟持部による集積紙幣の引き出し完了時の状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る集積紙幣挟持移送装置を含む紙幣処理装置を図面を参照して以下に説明する。図1は、紙幣および硬貨等を取り扱う出納機を示している。この出納機は、銀行等の金融機関の店舗に設置されて店舗全体の貨幣処理を管理するものである。出納機は、例えば、大口顧客に対する係員による入金、出金等の取引処理、係員による渉外先への持ち出し金の出金処理や、渉外先からの持ち帰り金の入金処理、さらには、営業終了後の金融機関店舗全体での入出金状況の締め上げ管理等を行うものである。
【0020】
出納機は、紙幣についての入出金処理等を行う本実施形態に係る紙幣処理装置11と、紙幣の特に新券についての出金処理等を行う新券処理装置12と、硬貨についての入出金処理等を行う硬貨処理装置13とが左右に並設されて構成されており、硬貨処理装置13の上部に、操作者によって操作入力がなされる操作部14と、操作者に対して表示を行う表示部15とが設けられている。
【0021】
次に、本実施形態に係る紙幣処理装置11の全体構成を図2を参照して説明する。以下の説明における前後左右は、操作者側を前、操作者とは反対側を後、操作者から見て左右を左右とする。
【0022】
紙幣処理装置11は、その前面側の上部に、機外からバラ紙幣が投入されるとともに機内から出金用のバラ紙幣が繰り出される入出金部21が設けられている。入出金部21は、その底部を構成する載置板22が後下がりに傾斜した姿勢で昇降可能に設けられており、その奥側の支承面23が載置板22と直交するように後上がりに傾斜して設けられている。入出金部21には、紙幣が長さ方向を左右方向に沿わせた姿勢で載置板22上に集積されることになり、紙幣は載置板22の傾斜により後端縁が支承面23に当接する。入出金部21の上部の後側には、載置板22上に集積されたバラ紙幣を上端のものから一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて機内へ繰り出すとともに機内からの紙幣を入出金部21に繰り出す繰出部21aが設けられている。なお、紙幣処理装置11内では、紙幣が、長さ方向を左右方向に沿わせた姿勢で搬送されることになる。
【0023】
入出金部21の下側には、紙幣処理装置11の前面位置に、受け付け不可と判定された入金リジェクト紙幣が機内から繰り出される入金リジェクト部26が設けられている。入出金部21および入金リジェクト部26の後側には、出金不可と判定された出金リジェクト紙幣を収納する出金リジェクト部27が設けられており、出金リジェクト部27の後方の下部には紙幣を識別する識別部28が設けられている。
【0024】
また、出金リジェクト部27の後方の上部には紙幣を整列させながら水平姿勢で鉛直方向に所定の結束枚数集積させる整列部30が設けられており、この整列部30の後方には、整列部30から集積紙幣を水平状態のまま後方に引き出し鉛直上方に上昇搬送する移送部33が設けられている。
【0025】
整列部30の上方には、移送部33で上昇搬送され上部位置から水平状態のまま前方に送り出された集積紙幣を結束テープで結束して小束紙幣とする結束部31が設けられている。この結束部31は、移送部33から前方に送り出された集積紙幣を上下から挟持しつつ、結束テープを周囲に巻き回して接着・切断することにより小束紙幣を作成する。
【0026】
結束部31の前方には、結束部31で上記のように結束された後、水平状態のまま前方に送り出された小束紙幣を鉛直状に姿勢変更し水平方向に複数束集積して、機外に取り出し可能とする束出金部32が設けられている。
【0027】
また、紙幣処理装置11の下部には、奥側から順に、入金確定後の所定の単一金種のバラ紙幣を上下に集積させた状態で収納する金種カセット35、同様の金種カセット36、同様の金種カセット37、入金確定後のバラ紙幣を上下に集積させた状態で収納する混合カセット38、および入金された入金確定前のバラ紙幣を上下に集積させた状態で一時貯留するプールカセット39が上下左右の位置を合わせて水平直線状のカセット配列方向に配列されている。このカセット配列方向は、紙幣処理装置11の前後方向に沿っている。
【0028】
金種カセット35の上部には、その内部に紙幣を繰り出すとともに内部の紙幣を上端のものから一枚ずつ分離して繰り出す繰出部35aが設けられており、金種カセット36の上部にも同様の繰出部36aが、金種カセット37の上部にも同様の繰出部37aが、混合カセット38の上部にも同様の繰出部38aが、プールカセット39の上部にも同様の繰出部39aが、それぞれ設けられている。
【0029】
紙幣処理装置11の内部には、紙幣を搬送する紙幣搬送路41が各部を適宜繋ぐように設けられている。紙幣搬送路41は、繰出部21aから後上がりに延出した後、後下がりに延出し、さらに鉛直下方に延出し、その後、前側に一端延出した後、下側にて後側に折り返し、後方に延出し、途中上側に凸状に屈曲して識別部28を通って下方に若干延出する搬送路41Aと、搬送路41Aに連続して下側に若干延出した後に前方に延出し前端から下方に若干延出する搬送路41Bと、搬送路41Bに連続するようにプールカセット39に設けられた搬送路41Cとを有している。
【0030】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Bの途中から分岐する搬送路41Dと、搬送路41Dに連続するように金種カセット35に設けられた搬送路41Eと、搬送路41Bの搬送路41Dよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Fと、搬送路41Fに連続するように金種カセット36に設けられた搬送路41Gと、搬送路41Bの搬送路41Fよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Hと、搬送路41Hに連続するように金種カセット37に設けられた搬送路41Iと、搬送路41Bの搬送路41Hよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Jと、搬送路41Jに連続するように混合カセット38に設けられた搬送路41Kと、搬送路41Bの搬送路41Jよりもプールカセット39側から分岐して上方に延出する搬送路41Lと、搬送路41Lに繋がって屈曲し後方に延出して搬送路41Aの入出金部21と識別部28との間に繋がる搬送路41Mとを有している。
【0031】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Bの搬送路41Jの分岐位置と搬送路41Lの分岐位置との間位置から分岐して上方に延出する搬送路41Nと、搬送路41Nに繋がって上方に延出し搬送路41Mの途中位置に繋がる搬送路41Oと、搬送路41Mにおける搬送路41Oの接続位置と搬送路41Aへの接続位置との間位置から分岐して入金リジェクト部26に繋がる搬送路41Pと、搬送路41Aにおける搬送路41Mの接続位置と入出金部21との間位置から分岐し前方に延出して搬送路41Pの途中位置に繋がる搬送路41Qと、搬送路41Pにおける搬送路41Qの接続位置と入金リジェクト部26との間位置から上方に分岐し後上がりに延出して出金リジェクト部27に繋がる搬送路41Rとを有している。
【0032】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Aにおける入出金部21と搬送路41Qの分岐位置との間位置と、搬送路41Mの接続位置と識別部28との間位置とを繋ぐ搬送路41Sと、搬送路41Aにおける搬送路41Sの接続位置と入出金部21との間位置から後方に分岐して整列部30に繋がる搬送路41Tとを有している。搬送路41Sには、紙幣の表裏を反転させる表裏反転部43が設けられている。
【0033】
ここで、上記した搬送路41A〜41Mは正逆両方向に紙幣を搬送可能となっており、搬送路41N〜41Tは一方向にのみ紙幣を搬送可能となっている。
【0034】
図3の太線は、機外から入出金部21に投入されたバラ紙幣を搬送しつつ識別計数する入金処理のルートを示している。つまり、入出金部21の載置板22上にバラ紙幣が載置されて、操作部14に入金処理を行う旨の入力操作がなされると、繰出部21aが入出金部21の載置板22上の紙幣を上端のものから順に一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41Aで搬送することになる。搬送路41Aでの搬送中に識別部28が紙幣を識別計数することになり、識別部28で受け入れ可能と判定した紙幣(取り扱い可能な金種の紙幣)を、図3に太実線で示すように、搬送路41B,41Cでプールカセット39に搬送する一方、識別部28で受け入れ不可と判定した紙幣を、図3に太破線で示すように、搬送路41Bから搬送路41N,41O,41M,41Pで入金リジェクト部26に搬送する。これにより、受け入れ可能な紙幣をプールカセット39に一時貯留し、受け入れ不可な紙幣を入金リジェクト部26に放出する。
【0035】
図4の太線は、入金処理にてプールカセット39に一時貯留した紙幣を、操作部14への承認操作が入力されたことを条件に、確定して、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものに収納する収納処理のルートを示している。つまり、プールカセット39の紙幣を上端のものから繰出部39aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、図4に太実線で示すように、搬送路41C,41B,41L,41M,41Aで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、搬送路41B,41D〜41Kの対応するものによって金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものに搬送する。これにより、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものに紙幣を収納する。なお、収納処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図4に太破線で示すように、搬送路41B,41N,41O,41M,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0036】
図5の太線は、入金処理にてプールカセット39に一時貯留した紙幣を、操作部14へのキャンセル操作が入力されたことを条件に、入出金部21に繰り出す返却処理のルートを示している。つまり、プールカセット39の紙幣を上端のものから繰出部39aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41C,41B,41Aによって入出金部21に搬送する。これにより、入出金部21に紙幣を返却する。
【0037】
図6の太線は、操作部14へ入力されたバラ出金操作に基づいて、金種カセット35、金種カセット36および金種カセット37の指定された金種のものから紙幣を出金するバラ紙幣出金処理のルートを示している。つまり、バラ出金処理では、図6に太実線で示すように、金種カセット35〜37の指定された金種のものに収納されている紙幣を上端のものから繰出部35a〜37aの対応するものが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41D〜41Iの対応するものと、搬送路41B,41Aとで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路41Aで入出金部21に、表裏反転が必要なものは搬送路41Sを介して表裏反転部43で表裏反転させた後、搬送路41Aで入出金部21に、それぞれ搬送する。これにより、出金操作に基づくバラ紙幣を入出金部21に繰り出す。なお、出金処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図6に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0038】
図7の太線は、操作部14へ入力された束出金操作に基づいて、金種カセット35、金種カセット36および金種カセット37の指定された金種のものからの紙幣を結束して出金する束出金処理のルートを示している。つまり、束出金処理では、図7に太実線で示すように、金種カセット35〜37のうち指定された金種のものに収納されている紙幣を上端のものから繰出部35a〜37aの対応するものが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41D〜41Iの対応するものと、搬送路41B,41Aとで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路41A,41Tで整列部30に、表裏反転が必要なものは搬送路41Sを介して表裏反転部43で表裏反転させた後、搬送路41A,41Tで整列部30に、それぞれ搬送する。これにより、指定された単一金種の紙幣を結束単位枚数だけ整列部30に繰り出す。そして、整列部30の集積紙幣を、移送部33で結束部31に搬送し、結束部31で結束を行い、束出金部32に繰り出す。このような処理を指定された金種毎に指定された束数分行うことになる。なお、束出金処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図7に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0039】
図8の太線は、操作部14へ入力された自己精査処理操作に基づいて、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものの紙幣を自己精査する自己精査処理の往路ルートを示している。つまり、自己精査処理では、図8に太実線で示すように、金種カセット35〜37および混合カセット38のうちの設定された一つに収納されている紙幣を上端のものから繰出部35a〜38aの対応するものが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41D〜41Kの対応するものと、搬送路41B,41Aとで識別部28に搬送し、識別部28で識別計数しつつ、搬送路41M,41L,41B,41Cを介してプールカセット39に搬送する。そして、金種カセット35〜37および混合カセット38のうちの設定された一つに収納されていた紙幣をすべて繰り出す。なお、この搬送中、識別部28で重送等と識別した紙幣については、図8に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0040】
図9の太線は、上記した自己精査処理の復路ルートを示している。上記したようにプールカセット39に一旦移した紙幣を、図9に太実線で示すように、搬送路41C,41B,41L,41M,41Aによって、識別部28に搬送し、識別部28で識別計数するとともに、識別部28の識別結果に基づいて、搬送路41B,41D〜41Kの対応するものを介して、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応する金種のものに収納する。なお、この搬送中、識別部28で重送等と識別した紙幣については、図9に太破線で示すように、搬送路41B,41N,41O,41M,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0041】
以上により、識別部28の計数結果と、金種カセット35〜37および混合カセット38の自己精査処理を行ったものに収納された紙幣の枚数とが一致することになり、このような自己精査処理を、金種カセット35〜37および混合カセット38のうちの設定されたものについて、それぞれ個別に行うことになる。なお、金種カセット35〜37および混合カセット38にそれぞれ収納された紙幣の合計枚数がプールカセット39の最大収納枚数以下であった場合には、上記の自己精査処理をそれぞれ個別に行う必要はなく、すべて一括して行うこともできる。
【0042】
図10の太線は、機外から入出金部21に投入されたバラ紙幣を搬送しつつ識別計数するローカル整理処理の往路ルートを示している。つまり、入出金部21の載置板22上にバラ紙幣が載置されて、操作部14にローカル整理処理を行う旨の入力操作が金種指定とともになされると、繰出部21aが入出金部21の載置板22上の紙幣を上端のものから順に一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、図10に太実線で示すように、搬送路41Aで搬送することになる。搬送路41Aでの搬送中に識別部28が紙幣を識別計数することになり、識別部28で指定金種と判定した紙幣を、搬送路41B,41Cでプールカセット39に搬送する一方、識別部28で指定金種以外と判定した紙幣を、図10に太破線で示すように、搬送路41Bから搬送路41N,41O,41M,41Pで入金リジェクト部26に搬送する。これにより、指定金種の紙幣をプールカセット39に一時貯留し、指定金種以外の紙幣を入金リジェクト部26に放出する。
【0043】
図11の太線は、ローカル整理処理の復路ルートを示している。上記したようにプールカセット39に一旦収納した紙幣を、上端のものから繰出部39aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、図11の太線で示すように、搬送路41C,41B,41Aで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路41A,41Tで整列部30に、表裏反転が必要なものは搬送路41Sを介して表裏反転部43で表裏反転させた後、搬送路41A,41Tで整列部30に、それぞれ搬送する。このようにして、指定された単一金種の紙幣を結束単位枚数だけ整列部30に繰り出す。そして、整列部30の集積紙幣を、移送部33で結束部31に搬送し、結束部31で結束を行い、束出金部32に繰り出す。このような処理を結束単位枚数が整列部30に集積される限り繰り返す。なお、結束単位枚数に満たない、端数紙幣が整列部30に集積された場合にも、これを結束し端数紙幣であることを示す識別をつけて束出金部32に繰り出す。なお、ローカル整理処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図11に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41Pによって入金リジェクト部26に搬送し、入金リジェクト部26に放出する。
【0044】
上部にある入出金部21、入金リジェクト部26、出金リジェクト部27、識別部28、整列部30、移送部33、結束部31、束出金部32、表裏反転部43および搬送路41A,41M,41O〜41Tは、本体45内に配置されており、その下部にある、搬送路41B,41D,41F,41H,41J,41L,41Nが、本体45から紙幣処理装置11の前後方向に沿って前面側に引き出し可能な引出体46内に配置されている。さらに、搬送路41Eは、引出体46に対し着脱可能な金種カセット35内に、搬送路41Gは同様の金種カセット36内に、搬送路41Iは同様の金種カセット37内に、搬送路41Kは同様の混合カセット38内に、搬送路41Cは同様のプールカセット39内に、それぞれ配置されている。
【0045】
引出体46は、金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39が着脱可能に装填される収納部47と、この収納部47の上方に開閉可能に設けられた搬送部48とを有している。搬送部48は、金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39に対して紙幣を搬送する。搬送部48には、上記した搬送路41B,41D,41F,41H,41J,41L,41Nが設けられている。
【0046】
次に、本実施形態に係る集積紙幣挟持移送装置50について説明する。集積紙幣挟持移送装置50は、上記した整列部30と移送部33とからなっている。
【0047】
整列部30は、搬送路41Tから水平後方に放出されたバラ紙幣、つまり一の側方である前方から送り込まれたバラ紙幣を上下方向に集積させる、図12に示す一時集積部51を有している。
【0048】
一時集積部51は、左右に左右方向に直交して立設される壁部52,53と、これら壁部52,53間に配置され、前方から略水平に送り込まれた紙幣を上側で案内して後下がりに移動させる天井部54と、壁部52,53間に配置されて、送り込まれた紙幣を載置させる昇降可能な昇降台55と、一方の壁部52の外側にあって昇降台55を昇降させる昇降機構56とを有している。
【0049】
昇降機構56は、前後方向に回転軸61を配置して設けられた電動の駆動モータ62と、駆動モータ62の回転軸61に固定されたギア63と、このギア63に平行をなして噛み合うギア64と、このギア64と同軸に配置された支持軸65と、支持軸65とギア64との間に介装されたトルクリミッタ66と、支持軸65に固定されたギア67とを有している。
【0050】
また、昇降機構56は、ギア67の壁部52側に上下方向に沿って設けられたガイドレール70と、このガイドレール70に上下に摺動可能となるように支持されてギア67に噛み合うラックギア72と、ラックギア72が上端位置に位置することを検知する上端位置センサ73と、ラックギア72が下端位置に位置することを検知する下端位置センサ74とを有している。
【0051】
昇降台55は、バラ紙幣を載置させる上側の載置面77が同一の水平面に配置されており、壁部52から前側の一部が突出してラックギア72に連結されている。昇降台55は前側半分が左右方向に連続する基板部78となっており、後側半分が、左右方向に間隔をあけて基板部78から後方に延出する複数具体的には4カ所の延出板部79となっている。すべての延出板部79の基板部78とは反対側の端部には基板部78とは反対側に突出する突起80がそれぞれ形成されている。
【0052】
例えば、図12(a)に示すように上端位置センサ73によりラックギア72が検知された状態、つまり昇降台55が上端に位置する状態から、昇降機構56が駆動モータ62の正転により、ギア63、ギア64、トルクリミッタ66および支持軸65を介してギア67を一方向に回転させると、ギア67に噛み合うラックギア72がガイドレール70に沿って下降し、ラックギア72と一体に昇降台55が下降する。そして、図12(b)に示すように下端位置センサ74によりラックギア72が検知された状態、つまり昇降台55が下端に位置する状態となると、駆動モータ62が停止される。
【0053】
逆に、図12(b)に示すように下端位置センサ74によりラックギア72が検知された状態、つまり昇降台55が下端に位置する状態から、昇降機構56が駆動モータ62の逆転により、ギア63、ギア64、トルクリミッタ66および支持軸65を介してギア67を逆方向に回転させると、ギア67に噛み合うラックギア72がガイドレール70に沿って上昇し、ラックギア72と一体に昇降台55が上昇する。そして、図12(a)に示すように上端位置センサ73によりラックギア72が検知された状態、つまり昇降台55が上端に位置する状態となると、駆動モータ62が停止される。
【0054】
整列部30は、一時集積部51への紙幣の送り込み方向上流側である前記一の側方に対し、送り込み方向下流側である他の側方に、一時集積部51に前記一の側方から送り込まれた紙幣を、前後方向に直交する立位姿勢の整位面82に当接させて整位する整位部83が設けられている。この整位部83は、図13に示すように、一時集積部51の下部位置で左右方向に沿って設けられた支持軸84と、この支持軸84に回動可能となるように支持された整位部材85とからなっている。
【0055】
図14に示すように、整位部材85の支持軸84の端部にはレバー86が固定されており、このレバー86がスプリング(付勢手段)87で引っ張られることによって整位部材85が立位姿勢となるとレバー86が図示略のストッパに当接し停止する。よって、スプリング87は、整位部83を、整位面82が立位姿勢となるように揺動付勢する。レバー86の近傍には、整位面82が立位姿勢にあるか否かをレバー86を介して検出するレバーセンサ88が設けられている。
【0056】
図13に示すように、整位面82を立位姿勢とした状態で、整位部材85は、左右方向に連続して支持軸84に連結される連結部90と、左右方向に間隔をあけて連結部90から鉛直上方に延出する複数具体的には4カ所の整位板部91と、各整位板部91のそれぞれの連結部90とは反対側から後上がりに斜めに突出する傾斜板部92と、左右方向一端側の整位板部91の隣り合う整位板部91側の端縁部から後方に突出する直交板部93と、直交板部93から前記隣り合う整位板部91側に整位板部91と平行に突出する当接板部(当接部)94と、当接板部94の下端から後下がりに傾斜して突出する突出板部95とからなっている。
【0057】
整位部83は、上記したように4カ所の整位板部91が鉛直方向に沿う立位姿勢にあるとき、これら整位板部91の同一平面に配置された一時集積部51側の面が上記した整位面82となっており、整位板部91は、整位面82を立位姿勢とすると自らも立位姿勢となる。このように整位面82を含む整位板部91が鉛直方向に沿う立位姿勢から、整位面82の下部側に設けられた支持軸84を揺動中心として、バラ紙幣が一時集積部51へ送り込まれる前記一の側方に対し反対の前記他の側方(つまり後方)に上部が開くように揺動可能となっている。また、整位板部91が前後方向に直交して鉛直方向に沿う立位姿勢にあるとき、当接板部94も前後方向に直交して鉛直方向に沿う立位姿勢となる。
【0058】
整位板部91の中間部には、それぞれスリット96が形成されている。4カ所の整位板部91は左右方向の位置を昇降台55の4カ所の延出板部79と一致させており、整位板部91が立位姿勢にあるとき、各スリット96に一対一で延出板部79の突起80が入り込む。スリット96は、昇降台55の上端位置から下端位置までの移動を可能な長さに形成されている。また、整位部83は、整位板部91が立位姿勢にあるとき、連結部90の端部から前上がりに延出するロック片97を有している。
【0059】
このロック片97の前方には、図14に示すように、整位板部91が立位姿勢にある状態でロック片97に係合することで整位部83を揺動不可にロックするロック部101が設けられている。このロック部101は、ロック片97に係合するロックレバー102と、ロックレバー102をロック片97に係合する方向に付勢するスプリング103とを有している。
【0060】
ロックレバー102は、左右方向に沿う回動軸104を中心に回動可能であって、回動軸104から後上がりに延出するとともに先端にロック片97に係合する鉤部105が形成された係合延出部106と、回動軸104から前方に延出する作動延出部107とを有している。
【0061】
ロックレバー102が鉤部105をロック片97に係合させた状態で、鉤部105はロック片97の後側に位置しており、よって、ロック片97を含む整位部83の後方への揺動を規制する。また、ロックレバー102は、このとき、作動延出部107を前上がりに傾斜させている。
【0062】
この状態から、昇降台55が下端位置へ移動すると、ロックレバー102は、昇降台55に作動延出部107が当接して押し下げられ、その結果、係合延出部106の鉤部105をロック片97の延出方向先方に移動させることになる。よって、ロックレバー102は、ロック片97を含む整位部83へのロックを解除して後方への揺動が可能な状態とする。
【0063】
また、ロックレバー102は、ロックが解除された整位部83が後方に揺動した後、昇降台55が上昇すると、スプリング103の付勢力でロック片97をロック可能な位置まで回動することになり、この状態で揺動していた整位部83がスプリング87の付勢力で整位板部91を立位姿勢とするように戻ると、鉤部105がその傾斜する先端面で整位部83のロック片97に当接し、スプリング87の付勢力で押し上げられた後、鉤部105をロック片97が越えるとスプリング103の付勢力で戻されてロック片97に係合し、鉤部105が整位部83を揺動不可にロックする。
【0064】
図13に示すように、立位姿勢にある整位板部91の一時集積部51とは反対側の上下には、上側の図示略の発光素子および下側の受光素子112からなる光学式のセンサ(監視手段)113が設けられている。センサ113は、発光素子および受光素子113の組を、左右方向に複数組具体的には2組有している。
【0065】
上記した束出金処理およびローカル整理処理において小束紙幣を出金するに当たって、ロック部101は、整位部83をロックしその揺動を規制する待機状態となっており、また、図12に示す昇降機構56は、上端位置センサ73でラックギア72が検知される上端位置に昇降台55を位置させる待機状態となっていて、この待機状態で、一時集積部51に搬送路41Tからバラ紙幣を受け入れる。そして、一時集積部51に送り込まれたバラ紙幣は、図15に示すように、整位部83の立位姿勢にある整位面82に当接し、この整位面82側の端部位置を合わせるように整位されながら、昇降台55の載置面77上に下から上に順に集積されていくことになる。そして、図示略の制御部は、図12に示す昇降機構56を制御して、搬送路41Tから一時集積部51に送り込まれ集積された集積紙幣の量に応じて昇降台55を下降させることになる。
【0066】
そして、搬送路41Tから一時集積部51への所定枚数のバラ紙幣の送り込みが終了すると、制御部は、図12に示す昇降機構56を制御して、下端位置センサ74でラックギア72が検知される下端位置まで昇降台55を下降させる。これにより、図14に示す昇降台55がロック部101の作動延出部107に当接してこれを下方に押圧し、図16に示すようにロック部101による整位部83のロックを解除する。その結果、整位部83は図14に示すスプリング87の付勢力で整位板部91が立位姿勢となる状態に保持されるものの、搬送路41Tとは反対側に揺動可能な状態になる。
【0067】
図13に示すように、移送部33は、一時集積部51へのバラ紙幣の送り込み方向上流側である前記一の側方に対し、送り込み方向下流側である前記他の側方にあり、該他の側方から、一時集積部51に進入して、一時集積部51に集積されている集積紙幣を上下から挟持して前記他の側方へ引き出す挟持部121を有している。
【0068】
挟持部121は、上側の挟持部材122と、下側の挟持部材123とからなっている。下側の挟持部材123は、図示略の移送駆動機構の駆動により、一時集積部51の後側にて前後方向に移動し、一時集積部51とは反対の水平移動後端位置にて鉛直方向に移動する。上側の挟持部材122は下側の挟持部材123に図示略の挟持駆動機構を介して連結されており、挟持駆動機構の駆動により下側の挟持部材123に対し離間および近接するように昇降する。
【0069】
上側の挟持部材122には、水平配置されて一時集積部51の方向に突出する挟持板部126が高さを合わせ左右方向に間隔をあけて2カ所設けられており、下側の挟持部材123にも水平配置されて一時集積部51の方向に突出する挟持板部127が高さを合わせ左右方向に間隔をあけて2カ所設けられている。
【0070】
共に左右方向一側にある上側の挟持板部126および下側の挟持板部127は、互いに水平方向の位置を一致させており、共に左右方向他側にある上側の挟持板部126および下側の挟持板部127も、互いに水平方向の位置を一致させている。上側の挟持板部126は、整位部83の隣り合う整位板部91間の隙間から一時集積部51に対し前記他の側方から入出するとともにこの隙間内で昇降することになり、下側の挟持板部127は、昇降台55の延出板部79間の隙間で一時集積部51内に下方から進入するとともに整位部83の隣り合う整位板部91間の隙間を昇降してこの隙間から前記他の側方に抜け出す。なお、挟持部121は、図16に示すように下側の挟持板部127の上面を下端位置にある昇降台55の載置面77よりも下側に位置させ、上側の挟持板部126を下側の挟持板部127に対し最も離間させた状態が待機状態となっている。
【0071】
そして、下側の挟持部材123には、下側の挟持板部127の基端側の下方位置にピン(押圧部)131が一体に移動するように設けられている。このピン131は、左右方向の位置を整位部83の当接板部94および突出板部95に常に一致させており、挟持部121が待機状態にあるときに、上端位置を整位部83の突出板部95の下端位置よりも下側に位置させている。
【0072】
上記したように、束出金処理およびローカル整理処理において小束紙幣を出金するに当たって、一時集積部51に所定枚数のバラ紙幣が送り込まれて昇降台55上に集積紙幣SSが集積されると、図示略の制御部は、図16に示すように、下端位置まで昇降台55を下降させることになり、よって、昇降台55がロック部101による整位部83のロックを解除する。その結果、整位部83はスプリング87の付勢力で整位板部91が立位姿勢となる状態に保持されるものの揺動可能な状態になる。
【0073】
この状態で、制御部は、搬送路41Tとは反対側の水平移動後端位置で待機状態にあった挟持部121を、図17に示すように一時集積部51側にその水平移動前端位置まで水平移動させる。すると、上側の挟持板部126が集積紙幣SSの上側で整位部83の整位板部91間の隙間を介して一時集積部51内に進入することになり、下側の挟持板部127が昇降台55の下方に位置する。このとき、ピン131がその中心を整位部83の突出板部95の下端位置よりも前側に位置させることになり、具体的にはその後端位置を、当接板部94の前端位置に一致させる。
【0074】
次に、制御部は、図18に示すように、挟持部121の下側の挟持部材123を上昇させるとともに上側の挟持部材122を下降させる。すると、下側の挟持板部127が、昇降台55の隣り合う延出板部79間を通過して一時集積部51内に入り、隣り合う整位板部91間で上昇する一方、上側の挟持板部126が隣り合う整位板部91間で下降する。これにより、下側の挟持板部127と上側の挟持板部126とで集積紙幣SSを上下から挟持することになる。また、このとき、下側の挟持部材123に一体移動可能に設けられたピン131は当接板部94に上下方向の位置を合わせてその一時集積部51側に当接することになる。
【0075】
言い換えれば、挟持部121は、上下方向一側である下側の挟持部材123が上下方向他側である上側に移動して上下方向他側である上側の挟持部材122に近接することにより集積紙幣SSを上下から挟持することになり、ピン131は、上下方向一側である下側の挟持部材123に一体移動可能に設けられている。また、整位部83には、挟持時に上下方向一側である下側の挟持部材123が上下方向他側である上側へ移動するとピン131の前記他の側方側に位置する当接板部94が設けられている。
【0076】
上記のように昇降台55が下端位置にあり挟持部121で集積紙幣SSを上下から挟持した状態のまま、制御部は、図19に示すように、挟持部121を水平後方(前記他の側方)に移動させて、集積紙幣SSを一時集積部51から引き出すことになる。すると、その初期から、挟持部121のピン131が整位部83の当接板部94を押圧して整位部83を後方に向け揺動させることになる。つまり、挟持部121のピン131は、挟持部121の前記他の側方への移動で整位部83に当接して整位部83を前記他の側方に揺動させる。
【0077】
挟持部121の水平後方への移動の進行にともなって、整位部83は揺動角度が大きくなり、最終的には、ピン131の下端位置と当接板部94の上端位置とが高さ方向の位置を一致させるまで揺動し、その後、ピン131が当接板部94から離れると、整位部83はスプリング87の付勢力で整位板部91が立位姿勢となる状態に戻る方向に揺動する。すると、整位板部91が、下側の隣り合う挟持板部127の隙間を介して、挟持部121に挟持された集積紙幣SSの下面に当接する。
【0078】
そして、さらに挟持部121が移動すると、整位板部91が、挟持部121よりも前側に突出する集積紙幣SSの下面に下方から当接してこれを下方から支持する。そして、制御部は、図20に示すように、挟持部121が水平後方への移動の水平移動後端位置まで移動するとその水平移動を停止させる。挟持部121が、この水平移動後端位置に位置したときも、整位部83は、整位板部91が、挟持部121よりも前側に突出する集積紙幣SSの下面に下方から当接してこれを下方から支持する状態を維持する。つまり、挟持部121は、集積紙幣SSを一時集積部51から引き出して移送する際に、揺動状態の整位部83によって集積紙幣SSが下方から支持される支持範囲内で前記他の側方に移動する。
【0079】
挟持部121が、この水平移動後端位置に位置すると、制御部は、上下の発光素子および受光素子112からなる光学式のセンサ113で、挟持部121から一時集積部51側に不正にはみ出した紙幣の有無を検出させる。つまり、センサ113は、挟持部121から一時集積部51側に不正にはみ出した紙幣があるとこの紙幣で発光素子の発光が遮断されて受光素子112で受光できない状態となり、受光素子112の不受光を検知すると挟持部121から一時集積部51側に不正にはみ出した紙幣があると判定する。他方、挟持部121から一時集積部51側に不正にはみ出した紙幣がなければ発光素子の発光が受光素子112で受光できない状態となることはなく、受光素子112の受光を検知すると挟持部121から一時集積部51側に不正にはみ出した紙幣がないと判定する。つまり、センサ113は、上記した支持範囲内に挟持部121が位置する状態で、挟持部121から一時集積部51側に不正にはみ出した紙幣の有無を監視する。センサ113の検出結果により挟持部121から一時集積部51側に不正にはみ出した紙幣があると判定すると、制御部は、図示略の報知部によってアラームを発生させて挟持部121のそれ以降の移動を停止させる。
【0080】
挟持部121から一時集積部51側に不正にはみ出した紙幣がないと判定すると、制御部は、次に、挟持部121を水平移動後端位置からそのまま鉛直方向上方に上端位置まで移動させる。挟持部121は、上端位置に位置すると、この鉛直方向上方の移動の移動先に配設された結束部31に、集積紙幣SSを受け渡す。すると、結束部31は受け取った集積紙幣SSに結束テープを巻き回して結束する結束処理を行う。結束部31に集積紙幣SSを受け渡すと、制御部は、挟持部121を待機状態に戻す。
【0081】
なお、挟持部121の水平移動後端位置に向けての移動中、挟持部121の集積紙幣SSが昇降台55よりも後方に移動するタイミングで、制御部は、昇降台55を待機状態に戻すように上昇させることになり、その結果、ロック部101のロックレバー102がスプリング103の付勢力でロック片97をロック可能な位置まで回動することになる。この状態で、挟持部121が水平移動後端位置で上昇し、集積紙幣SSを上昇させると、集積紙幣SSに押圧されて揺動状態にあった整位部83がスプリング87の付勢力で整位板部91を立位姿勢とするように戻る。すると、鉤部105がその傾斜する先端面で整位部83のロック片97に当接し、スプリング87の付勢力で押し上げられた後、鉤部105をロック片97が越えるとスプリング103の付勢力で戻されてロック片97に係合し、整位部83を揺動不可にロックする。
【0082】
以上に述べた本実施形態の集積紙幣挟持移送装置50によれば、一時集積部51に一の側方から送り込まれた紙幣を、他の側方にある整位部83の立位姿勢の整位面82に当接させて整位しながら、上下方向に集積させた後、この集積紙幣SSを挟持部121が上下から挟持して一時集積部51から他の側方へ引き出すと、このときの挟持部121の他の側方への移動で、挟持部121に設けられたピン131が、整位部83に当接して該整位部83を他の側方に揺動させることになる。よって、集積紙幣SSで整位部83を押圧して揺動させる場合と比べて、集積紙幣SSの集積姿の乱れを抑制でき、腰の弱い紙幣であっても折れや損傷等を抑制できる。したがって、集積紙幣SSを良好に移送することができる。
【0083】
また、一時集積部51の集積紙幣SSを挟持するために挟持部121が上下方向一側(下側)の挟持部材123を上下方向他側(上側)に移動させると、この上下方向一側の挟持部材123に設けられたピン131も一体に移動して、整位部83の当接板部94を他の側方側に位置させる状態となる。そして、挟持部121が挟持した集積紙幣SSを引き出すために他の側方へ移動すると、ピン131が当接板部94に当接して整位部83を揺動させて集積紙幣SSに対し退避させることになる。このように集積紙幣SSの挟持のために上下方向他側に移動する上下方向一側の挟持部材123に一体移動可能にピン131を設けるため、ピン131を移動させるための専用の機構が不要となる。したがって、構造の簡素化および低コスト化が図れる。なお、以上においては、挟持部121の上下方向一側である上側の挟持部材122が、上下方向他側である下側に移動して該上下方向他側である下側の挟持部材123に近接することにより集積紙幣SSを上下から挟持することにもなるため、ピン131を、上下方向一側である上側の挟持部材122に一体移動可能に設け、整位部83に、挟持時に上下方向一側である上側の挟持部材122が上下方向他側である下側へと移動するとピン131の前記他の側方側に位置する当接板部を設けても、整位部83を上記と同様に揺動させることが可能となる。
【0084】
また、ロック部101により、整位部83を整位面82が立位姿勢にある状態で揺動不可にロックすると、一時集積部51に送り込まれた紙幣を立位姿勢の整位面82に当接させて整位しながら上下方向に集積させる際に、整位部83が固定されており、不安定となることがない。よって、集積紙幣SSを良好に整位できることになる。また、集積紙幣SSを一時集積部51から引き出すに際して、昇降台55が下端位置に下がると、この昇降台55に当接してロック部101のロックが解除され、整位部83が揺動可能となり、この状態で、挟持部121が集積紙幣SSを一時集積部51から引き出すと、挟持部121に設けられたピン131が、整位部83に当接して整位部83を他の側方に揺動させることになる。よって、ロック部101のロック部101を解除するための専用の機構が不要となり、構造の簡素化および低コスト化が図れる。
【0085】
また、挟持部121が集積紙幣SSを一時集積部51から引き出すと、ピン131による押圧で整位部83がスプリング87の付勢力に抗して整位面82の下部側を中心に揺動することになり、その後、スプリング87の付勢力で揺動状態の整位部83が集積紙幣SSを下方から支持する。よって、より安定して集積紙幣SSを引き出して移送することができる。
【0086】
また、スプリング87の付勢力で揺動状態の整位部83が集積紙幣SSを下方から支持する支持範囲内に挟持部121が位置した状態、つまり、集積紙幣SSが整位部83で下方から支持され姿勢が安定した状態で、一時集積部51側に不正にはみ出した紙幣の有無をセンサ113で監視するため、適正に監視を行うことができる。したがって、動作保証の信頼性を高めることができる。
【0087】
また、集積紙幣SSを下方から支持している整位部83が邪魔にならない挟持部121の鉛直方向上方に、集積紙幣SSを結束する結束部31が配設されているため、挟持部121の結束部31への移動ルートを単純化でき、構造の簡素化および低コスト化が図れる。
【符号の説明】
【0088】
31 結束部
50 集積紙幣挟持移送装置
51 一時集積部
55 昇降台
82 整位面
83 整位部
87 スプリング(付勢手段)
94 当接板部(当接部)
101 ロック部
113 センサ(監視手段)
121 挟持部
122,123 挟持部材
131 ピン(押圧部)
SS 集積紙幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の側方から送り込まれた紙幣を上下方向に集積させる一時集積部と、
該一時集積部の他の側方に設けられ、前記一の側方から送り込まれた紙幣を立位姿勢の整位面に当接させて整位する整位部と、
前記一時集積部に集積されている集積紙幣を上下から挟持して前記他の側方へ引き出す挟持部と、
を備えた集積紙幣挟持移送装置であって、
前記挟持部には、前記他の側方への移動で前記整位部に当接して該整位部を前記他の側方に揺動させる押圧部が設けられていることを特徴とする集積紙幣挟持移送装置。
【請求項2】
前記挟持部は、上下方向一側の挟持部材が上下方向他側に移動して該上下方向他側の挟持部材に近接することにより前記集積紙幣を上下から挟持することになり、
前記押圧部は、前記上下方向一側の挟持部材に一体移動可能に設けられ、
前記整位部には、前記挟持時に前記上下方向一側の挟持部材が前記上下方向他側へ移動すると前記押圧部の前記他の側方側に位置する当接部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の集積紙幣挟持移送装置。
【請求項3】
前記一時集積部は、昇降可能な昇降台を有し該昇降台が下端位置にあるとき前記挟持部により前記集積紙幣が引き出されることになり、
前記整位部を前記整位面が立位姿勢にある状態で揺動不可にロックするとともに前記昇降台の前記下端位置への移動で該昇降台に当接してロックが解除されるロック部が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の集積紙幣挟持移送装置。
【請求項4】
前記整位部は、前記整位面の下部側に揺動中心を有しており、
前記整位部を、前記整位面が立位姿勢となるように揺動付勢する付勢手段が設けられ、
前記挟持部は、前記集積紙幣を前記一時集積部から引き出して移送する際に、揺動状態の前記整位部によって前記集積紙幣が下方から支持される支持範囲内で前記他の側方に移動した後、鉛直方向上方に移動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の集積紙幣挟持移送装置。
【請求項5】
前記支持範囲内に前記挟持部が位置する状態で、前記挟持部から前記一時集積部側に不正にはみ出した紙幣の有無を監視する監視手段を備えていることを特徴とする請求項4記載の集積紙幣挟持移送装置。
【請求項6】
前記集積紙幣を結束する結束部が、前記挟持部の前記鉛直方向上方の移動の移動先に配設されていることを特徴とする請求項4または5記載の集積紙幣挟持移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−3972(P2013−3972A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136481(P2011−136481)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(500265501)ローレル精機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】