説明

雑穀類乾燥具材の製造方法

【課題】 本発明は、熱湯を注いで作るインスタント食品として復元することの困難な雑穀類乾燥具材について、簡単な調理で極めて短時間で喫食可能であり、且つ雑穀類の粒食感と弾力感を有する、雑穀類乾燥具材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、雑穀類乾燥具材を製造するにあたり、雑穀類について、雑穀類が水分を吸水できる態様にて、湯戻ししたときの吸水倍率が4.4〜6.0倍になるように加熱処理し、次いで必要に応じて緩慢凍結処理した後、乾燥処理することを特徴とする、雑穀類乾燥具材の製造方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポタージュスープ,コンソメスープ,野菜スープなどの和・洋・中華系に代表される液状食品に用いるための雑穀類乾燥具材の製造方法に関し、詳しくは湯を注いだときの復元性に優れた雑穀類乾燥具材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雑穀類乾燥具材は、ポタージュスープや和・洋・中華系コンソメスープなど多くの料理で使用できる食材で、栄養面から訴求効果が期待でき、さらにインスタント食品への応用も期待される。
インスタント食品においては、調理ディレクションの一部である「待ち時間」は、インスタント食品の商品価値を決める重要な要素の一つであり、3分以内、さらに望ましくは1分以内に復元する乾燥具材が求められている。
【0003】
しかしながら、雑穀類の主な構成成分である澱粉質は、熱湯に触れると瞬時に膨潤し、乾燥具材の内部への水の流れを阻害することから復元性(湯戻り)が悪い。
例えば、焙煎機を用いて加圧処理を施したパフ米などは、空洞感のあるスナック様の食感で、弾力のある穀類本来の食感品質を得ることはできない。
また、ドラムドライヤーにて乾燥しインスタント食品向けに調整された雑穀類乾燥具材は、薄くプレスされることから、厚みや弾力といった雑穀類本来の食べごたえは得られない。
【0004】
袋詰めした後に加熱加圧殺菌を施すレトルト製法において、レトルト処理を施された雑穀類素材は、水分を過剰に吸水してしまい、雑穀類本来の弾力のある食感が得られないという問題がある。
これを改善するための方法としては、無菌米飯同様に麦具材を別容器に充填し、レトルト処理を施す方法が挙げられる(特許文献1参照)。
しかしながら、当該レトルト処理麦具材は、品質は良好であるものの、液状食品用個袋と穀類用個袋とを別々に開封しほぐし入れなければならないという煩雑な形態の上に、電子レンジでの調理を必要とするため、喫食環境が限られ、その上製造コストが高いといった難点が存在する。
【0005】
熱湯を注ぐ調理ディレクションを前提とした乾燥具材分野においては、「3%程度の低アミロース含量の米粒麦」もしくは「15質量%以下の低アミロース含量の米」に着目して用いる方法が挙げられる(特許文献2、3参照)。
しかしながら、これらの方法では、使用品種が低アミロース性の穀類に限定されるため、アミロース含量が23〜28%程度である通常の大麦(押麦)を含む、雑穀類全般を使用することはできない。
さらに、これに加えて、当該方法から得られる「低アミロース含量の米粒麦」の復元に要する時間は熱湯注湯後15分、「低アミロース含量の米」については熱湯注湯後5分を要し、いずれもインスタント食品に求められる待ち時間としては不十分なレベルである。
【0006】
また、上記特許文献3においては、澱粉や増粘多糖類などを添加することで、「米」の食感が改良することについて述べられているが、より復元性の悪い雑穀類の食感改良については触れられていない。
【0007】
この他、「米の復元性」について述べたものが知られている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。
しかしながら、米より復元しにくい性質をもつ「大麦(押麦)」をはじめとした雑穀類を上記文献に記載の方法で調製した場合、注湯後1分という極めて短時間に復元させるには不十分と認められる。例えば、大麦(押麦)を当該条件で調整すると、復元には10分程度時間を有してしまう。
【0008】
【特許文献1】特開2006−187242号公報
【特許文献2】特開平11−313626号公報
【特許文献3】特開2006−55024号公報
【特許文献4】特許第2554010号公報
【特許文献5】特開昭61−209558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、熱湯を注いで作るインスタント食品として復元することの困難な雑穀類乾燥具材について、速やかに、1分以内に復元することのできる雑穀類乾燥具材の製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、雑穀類の粒食感と弾力感を有する、雑穀類乾燥具材の製造方法を提供することを目的とするものである。
さらに、本発明は、酵素処理を行うことなく、簡単な調理で極めて短時間で喫食可能な雑穀類乾燥具材の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記従来の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、雑穀類乾燥具材を製造するにあたり、雑穀類が水分を吸水できる態様にて、湯戻ししたときの吸水倍率が4.4〜6.0倍になるように加熱処理し、次いで必要に応じて緩慢凍結処理した後、乾燥処理することにより、注湯後1分程度という短時間で雑穀類乾燥具材の復元が可能になることを見出した。
さらに、本発明者は、雑穀類乾燥具材に増粘多糖類あるいはゼラチンを含ませて加熱処理した後に乾燥処理を施すことで、注湯後に、より本来の雑穀類の食感に近い弾力感を再現できることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
即ち、請求項1に係る本発明は、雑穀類乾燥具材を製造するにあたり、雑穀類について、雑穀類が水分を吸水できる態様にて、湯戻ししたときの吸水倍率が4.4〜6.0倍になるように加熱処理し、次いで必要に応じて緩慢凍結処理した後、乾燥処理することを特徴とする、雑穀類乾燥具材の製造方法を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、湯又は加温されたスープを注ぐだけで1分以内に復元する、請求項1に記載の方法を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、雑穀類について、雑穀類が水分を吸水できる態様にて、加熱開始後15分で95℃に達温させ、95℃以上の熱湯中で加熱開始から合計100分間以上加熱処理することにより、湯戻ししたときの吸水倍率が4.4〜6.0倍になるように調整する、請求項1又は2に記載の方法を提供するものである。
請求項4に係る本発明は、増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる少なくとも1種類以上の増粘物質を溶解した水に、雑穀類を浸漬しながら加熱処理する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法を提供するものである。
請求項5に係る本発明は、増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる少なくとも1種類以上の増粘物質を0.05〜1.0質量%溶解した水に、雑穀類を浸漬しながら加熱処理する、請求項4に記載の方法を提供するものである。
請求項6に係る本発明は、緩慢凍結処理前の雑穀類の水分含量が84〜89質量%になるように、加熱処理により調整する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法を提供するものである。
請求項7に係る本発明は、乾燥処理後の雑穀類の水分含量が0.3〜10.0質量%になるように、乾燥処理により調整する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法を提供するものである。
請求項8に係る本発明は、前記雑穀類が大麦である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
請求項9に係る本発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造される雑穀類乾燥具材を提供するものである。
請求項10に係る本発明は、請求項9に記載の雑穀類乾燥具材を用いた、即席のスープ、ソース、リゾット、粥、雑炊又は茶漬を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱湯を注いで作るインスタント食品として復元することの困難な雑穀類乾燥具材について、レトルト製法で得られる雑穀類具材のように柔らかくなり過ぎることなく、雑穀類具材における粒食感を残したまま、注湯後1分以内に復元可能な雑穀類乾燥具材が提供される。
また、本発明によれば、寒天をはじめとした増粘物質を溶解した増粘物質溶解溶液を用いて調製した雑穀類乾燥具材は、さらに弾力感が増し、雑穀類の粒食感と弾力感を有する、より好ましい食感の雑穀類乾燥具材が提供される。
次に、本発明によれば、酵素処理を行うことなく、簡単な調理で極めて短時間で喫食可能な雑穀類乾燥具材が提供される。
しかも、本発明の方法は、雑穀類乾燥具材について、アミロース含量をもとに選択された品種に限定されない。
さらに、本発明によれば、前記雑穀類乾燥具材の製造方法で得られる雑穀類乾燥具材を用いた、即席のスープ,ソース,リゾット,粥,雑炊および茶漬が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、雑穀類乾燥具材の製造方法に関し、雑穀類乾燥具材を製造するにあたり、雑穀類について、雑穀類が水分を吸水できる態様にて、湯戻ししたときの吸水倍率が4.4〜6.0倍になるように加熱処理し、次いで必要に応じて緩慢凍結処理した後、乾燥処理することを特徴とするものである。
本発明の雑穀類乾燥具材の製造方法から得られる雑穀類乾燥具材は、湯あるいは加温されたスープを注ぐだけで、極めて短時間で湯戻しすることが可能であり、湯戻しした後は、湯戻し前に比べて4.4〜6.0倍に吸水するものとなる。コンソメスープ製品系では4.4〜6.0倍であり、クリームポタージュ製品系においては5.0〜6.0倍に吸水するように加熱処理することが好ましい。
【0014】
本発明における雑穀類乾燥具材を湯戻しした際に前記範囲に吸水倍率を調整するためには、雑穀類乾燥具材の製造方法において、雑穀類について、雑穀類が水分を吸水できる態様にて加熱処理を施すことにより、調整することができる。
【0015】
なお、本発明における吸水倍率とは、以下の数式1で表される関係式で定義される。
【0016】
【数1】

【0017】
本発明における吸水倍率の測定は、次の手順により行われる。
まず、試料として本発明から製造される「雑穀類乾燥具材」5gを容器に量り取り、熱湯200mlを注ぎ均一に湯が浸るよう注ぎ軽くかき混ぜ、1分経過後に、目開き1000μm(16メッシュ)の標準篩いにあける。十分に湯きりをするために、篩を10回程度上下に振り、さらに篩の裏面を布で軽く抑えることで、余分な水分を取り除く。
その後、湯きり後の雑穀類の質量を測定し、「湯戻し後の雑穀類の質量」とする。これらの値は数回測定して平均値を計算し、上記の数式1にて「吸水倍率」を算出する。
【0018】
本発明において、雑穀類乾燥具材が「復元する」とは、湯、加温されたスープなどを注ぎ湯戻しした後に、該乾燥具材が喫食可能な状態になることをいう。
【0019】
本発明の方法により製造される雑穀類乾燥具材を湯戻しした際の復元に要する時間は、湯又は加温されたスープを注いだ後、請求項2に記載したように、1分以内である。これはインスタント食品における調理時の待ち時間として求められる条件に適合する。
【0020】
本発明の方法により製造される雑穀類乾燥具材は、湯戻しの優れた復元性に加えて、喫食時に雑穀類具材が具備する粒食感を有する。なお、レトルト製法で得られる雑穀類具材のように柔らかくなり過ぎることはない。
【0021】
本発明の方法において原料として用いる雑穀類は、穀類のうち、米及び小麦を除いたものであればよく、特にその種類は限定されないが、具体的には、例えば、大麦(押麦)、丸麦、パール麦、米粒麦などの「麦類」の他、そば麦、はと麦、ライ麦、燕麦、玉蜀黍、蜀黍、ワイルドライス、アマランサスを用いることができる。
本発明において雑穀類は、前記した如き雑穀類を単独で、もしくは2種類以上を混合して用いることができる。雑穀類としては、請求項8に記載したように、特に大麦(押麦)を用いることが好ましい。
【0022】
本発明においては、雑穀類について、雑穀類が水分を吸水できる態様にて、湯戻ししたときの吸水倍率が4.4〜6.0倍になるように加熱処理し、次いで必要に応じて緩慢凍結処理した後、乾燥処理する。
即ち、本発明における雑穀類乾燥具材の製造工程は、基本的には「加熱処理工程」、必要に応じて行う「緩慢凍結処理工程」および「乾燥処理工程」からなる。
【0023】
加熱処理を行うにあたり、予め原料である雑穀類は軽く水洗いし、加熱が可能な容器に入れておく。
本発明においては、この加熱処理は、雑穀類が水分を吸水できる態様にて行うことが必要である。
雑穀類が水分を吸水できる態様にて行う加熱処理の具体的な方法としては、煮る、蒸す、炊く、などの方法が挙げられる。
従って、軽く水洗いされた後の雑穀類は、加熱処理に先立ち、一般的には水などに浸漬処理されるが、蒸す場合などのように必ずしも浸漬処理を必須とするものではない。
本発明の方法では、軽く水洗いされた後の雑穀類を水に浸漬処理し、浸漬処理状態にある雑穀類と水を容器ごとそのまま火にかけて、ボイル加温することが最も好ましいが、これに限定されるものではない。
浸漬処理を行う場合、雑穀類は、8〜15質量倍の水に24時間以内、好ましくは8〜15質量倍の水に30分〜2時間、さらに好ましくは10〜12質量倍の水に30分間程度浸漬すればよい。
【0024】
なお、当該浸漬処理において、原料の雑穀類を浸漬する水としては、請求項4に記載したように、増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる少なくとも1種類以上の増粘物質を溶解した水を用いることができる。
このように増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる少なくとも1種類以上の増粘物質を溶解した水を用いることにより、製造される乾燥雑穀具材に、さらに「弾力感」を付与することが可能となり、より好ましい食感を有する雑穀類乾燥具材の製造が可能となる。
増粘多糖類としては、例えば寒天、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。
本発明では、これら増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる増粘物質を単独で、若しくは2種類以上を混合して用いることができる。
【0025】
当該浸漬処理において、原料の雑穀類を浸漬する水として、増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる少なくとも1種類以上の増粘物質を溶解した水を用いる場合、そのような増粘物質を水に溶解させる濃度は、請求項5に記載したように、0.05〜1.0質量%、好ましくは0.1〜0.6質量%である。
ここで増粘物質を水に溶解させる濃度が、0.05質量%未満であると、増粘物質を用いる意味がなく、湯戻しした後の弾力感を増加させることができない。一方、増粘物質を水に溶解させる濃度が、1.0質量%を超えると、粘度が高くなり過ぎて煮え難くなり、しかも焦げやすくなるため好ましくない。
【0026】
このように雑穀類について、雑穀類が水分を吸収できる態様にて、湯戻ししたときの吸水倍率が4.4〜6.0倍になるように加熱処理が行われる。
具体的には、請求項3に記載したように、雑穀類について、雑穀類が水分を吸水できる態様にて、加熱開始後15分で95℃に達温させ、95℃以上の熱湯中で加熱開始から合計100分間以上、好ましくは95℃〜100℃の熱湯中で加熱開始から合計120〜220分間加熱処理することにより、湯戻ししたときの吸水倍率が4.4〜6.0倍になるように調整される。基本的には、加熱処理時間を増やすことにより、湯戻ししたときの吸水倍率を高くすることができる。但し、加熱処理時間を徒に長くしても、それに見合うだけの吸水倍率の向上がみられず不経済なばかりか、柔らかくなり過ぎて食感が好ましくなくなると共に、沈み外観が悪くなるため、最大220分間程度とすることが望ましい。
【0027】
前記したように、本発明の方法では、軽く水洗いされた後の雑穀類を水に浸漬処理し、浸漬処理状態にある雑穀類と水を容器ごとそのまま火にかけて、ボイル加温することが好ましいが、請求項4、5に記載のように、増粘物質含有溶液を用いて浸漬処理を行った場合においても、前記浸漬処理状態にあった雑穀類と水を容器ごとそのまま火にかけて、ボイル加熱することが好ましい。
【0028】
ここで浸漬処理状態にある雑穀類と水を容器ごとそのまま火にかけてボイル加熱する場合、詳しくは、中火にかけ15分程度で95℃に達温するよう火加減を一定に調整し、その後は前記所定の時間に達するまで95℃以上に維持されるよう弱火で加熱し続けるとよい。なお、途中で煮汁が減少した場合は、熱湯を継ぎ足し、雑穀類を焦がさないようにする。
【0029】
前記加熱処理を施した後の雑穀類は、次の工程(必要に応じて行う緩慢凍結処理と、乾燥工程)を施す前に、ザルなどにあけ、流水にてぬめりを除いた後、水を切っておくことが望ましい。
【0030】
なお、前記のような条件で加熱処理が施された後、緩慢凍結処理前(この緩慢凍結処理を行わない場合には、乾燥処理前)の雑穀類の水分含量は、80〜90質量%、好ましくは請求項6に記載したように、84〜89質量%になる。このように、加熱処理後の雑穀類が充分に吸水することで、湯戻し時の通水性が向上すると考えられる。
【0031】
次に、前記加熱処理が施された雑穀類に乾燥処理を施す前に、「緩慢凍結処理」を施すことが望ましい。
本発明において緩慢凍結処理の温度は、−15〜−1℃で6時間以上、好ましくは−15〜−1℃で6〜72時間、より好ましくは−15〜−5℃で6〜72時間行うとよい。本発明においては、乾燥処理に先立ち緩慢凍結処理を行うことにより、雑穀類に含有される水分が膨張及び氷結晶化し、充分に吸水することで、湯戻し時の通水性が向上すると考えられる。
【0032】
本発明における緩慢凍結処理を行う装置として具体的には、凍結庫、冷凍庫、フリーザー、ディープフリーザーなどのような装置を挙げることができる。
緩慢凍結処理を行う具体的な手順としては、例えば、前記の流水でぬめりをとって水を切った雑穀類を、トレーに厚さ1〜2cm、好ましくは2cm程度に盛り、表面をポリ袋などで覆い、凍結庫で緩慢凍結させることが望ましい。
【0033】
このように必要に応じて緩慢凍結処理が施された雑穀類について、本発明の最後の工程である「乾燥処理」が施される。
この乾燥処理を行うことにより、乾燥処理後の雑穀類の水分含量は、請求項7に記載したように0.3〜10.0質量%、好ましくは0.3〜4質量%になるように調整する。
ここで乾燥処理後の雑穀類の水分含量が0.3質量%未満であると、酸化による保存劣化が起こりやすくなるため好ましくない。一方、乾燥処理後の雑穀類の水分含量が10質量%を超えると、保存劣化の進行による褐変化が著しくなるため好ましくない。
【0034】
本発明における乾燥処理の乾燥方法としては、真空凍結乾燥法、減圧加熱乾燥法、熱風乾燥法などが挙げられ、どのような方法でも行うことができる。本発明における乾燥処理を行う装置としては、乾燥処理が実行できる装置であれば、どのような装置でも使用することができるが、例えば、凍結乾燥機(協和真空技術社製 RLE-103型)を用いることができる。
本発明における、乾燥処理は、40〜80℃で16〜38時間、好ましくは50〜60℃付近で17〜24時間程度行うことで、目的とする雑穀類乾燥具材を製造することができる。
このようして製造される雑穀類乾燥具材を提供するのが、請求項9記載の発明である。
即ち、請求項9に係る本発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造される雑穀類乾燥具材である。
【0035】
このようにして製造される雑穀類乾燥具材は、レトルト製法で得られる雑穀類のように柔らかくなり過ぎることなく、雑穀類具材の粒食感を残したまま、前記記載の範囲のような極めて短時間で湯戻しすることが可能となる。
【0036】
本発明における雑穀類乾燥具材は、上記の如く、インスタント食品の乾燥具材としての品質が飛躍的に向上したものと認められ、熱湯を注ぐ調理方法を前提としたインスタント食品への使用が可能となる。具体的には、スープ、ソース、リゾット、粥、雑炊および茶漬などへの使用が可能となる。
請求項10記載の発明はそのようなインスタント食品に関するものであり、請求項9に記載の雑穀類乾燥具材を用いた、即席のスープ、ソース、リゾット、粥、雑炊又は茶漬を提供するものである。
【実施例】
【0037】
以下に本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0038】
試験例1
1)雑穀類乾燥具材の調製
雑穀類乾燥具材を次のようにして調製した。
まず、原料大麦(押麦)250gを水で軽く洗い、加熱可能な容器中で12倍質量の水(3L)に30分浸漬した。
次いで、この容器ごと中火にかけ15分程度で95℃に達温するよう火加減を調整し、その後は弱火で95℃以上になるように加熱し、加熱開始から合計50分(試料1),60分(試料2),70分(試料3),80分(試料4),90分(試料5),100分(試料6),120分(試料7),140分(試料8),160分(試料9),180分(試料10),200分(試料11)もしくは220分(試料12)経過後に、ザルにあけ回収した。なお、途中煮汁が減少した場合は熱湯を継ぎ足すことで焦がさないように調整した。
ザルに回収された上記各所定時間のボイル加熱処理が施された大麦は、流水にさらすことでぬめりを除き、その後、水を切り、凍結乾燥用トレーに厚さ約2cm程度に盛った。
トレーに盛った大麦は、表面をポリ袋で覆い、−15℃に調整された凍結庫内で20時間の緩慢凍結処理を施した。
次いで、該トレーを凍結乾燥機(協和真空技術社製 RLE-103型)に移し、60℃で17時間定置乾燥させた。
乾燥処理が施された乾燥大麦は軽くほぐし、上記で示したように試料1〜12とし、以下の分析を行った。
【0039】
2)ボイル加熱処理時間と湯戻し後の吸水倍率
上記工程で得られたボイル加熱処理時間の異なる試料1〜12を用い、「1分間の湯戻しをした後の各吸水倍率」を測定した。測定結果を表1に示す。
なお、吸水倍率の測定は以下のように行った。まず、上記工程から得られた乾燥大麦試料を各5gずつ容器に量り取り、熱湯200mlを注ぎ均一に湯が浸るよう注ぎ軽くかき混ぜ、1分経過後に、目開き1000μm(16メッシュ)の標準篩いにあけた。十分に湯きりをするために、篩を10回程度上下に振り、さらに篩の裏面を布で軽く抑えることで、余分な水分を取り除いた。
その後、湯きり後の雑穀類の質量を測定し、「湯戻し後の雑穀類の質量」とした。これらの値は数回測定して平均値を計算し、前記の数式1にて「吸水倍率」を算出した。
【0040】
表1に示すように、ボイル加熱処理を長時間施された試料ほど、湯戻し後の吸水倍率が高くなることが示された。
なお、ボイル加熱処理200分(試料11)及び220分(試料12)の間には、湯戻し後の最大吸水倍率に差が見られなかった。
【0041】
【表1】

【0042】
3)官能評価
上記試料のうちボイル加熱処理50分(試料1)、100分(試料6)、120分(試料7)および220分(試料12)を施した試料を用いて、即席の粉末スープを作成して、官能評価を行なった。
上記各試料5gおよび即席のスープ粉末(製品の調理方法に従った規定量)を容器に入れ、湯を注ぎ軽く混ぜてスープを作成し、注湯後1分後に官能評価を実施した。なお、本試験例で用いた即席スープ粉末は、コンソメスープ製品系粉末としては「クノール(登録商標)カップスープ」チキンコンソメ(クノール食品(株)製)を用い、クリームポタージュスープ製品系粉末としては「クノール(登録商標)カップスープ」野菜とベーコン(クノール食品(株)製)を用いた。注湯後、1分後に官能評価を実施した。
官能評価は、官能評価専門パネル4名が5段階評価で行い、1分間の湯戻し後の乾燥大麦を、スープの具材に用いた場合の食感として、以下の5段階の基準で評価した。なお、本試験例における「復元する」とは、喫食可能な状態になることをいう。結果を表2に示す。
【0043】
〔官能評価基準〕
1:復元していない
2:ほぼ復元しているが若干硬め
3:復元しているが僅かに芯残りが感じられる
4:復元し、良好な食感
5:吸水がすすみ許容上限
【0044】
なお、各試料のボイル加熱処理後における水分含量、および乾燥具材化した後に1分間の湯戻しした後の吸水倍率の結果も、表2に記載した。
【0045】
【表2】

【0046】
表2の官能評価結果が示すように、上記乾燥大麦試料をコンソメスープ製品系の具材として用いた場合、100分〜220分のボイル加熱処理を施した乾燥大麦(試料6,7および12)を用いた場合において、1分の湯戻しで良好な復元が可能であることが示された。
従って、本発明で製造される乾燥大麦を1分間程度で復元が可能なコンソメスープ製品系の具材として用いる場合、1分後の湯戻し後の吸収倍率が4.4〜6.0となるものを用いることが好ましいことが示された。
【0047】
また、クリームポタージュ製品系の具材として用いた場合、120〜220分のボイル加熱処理を施した乾燥大麦(試料7および12)を用いた場合において、1分の湯戻しで良好な復元が可能であることが示された。
従って、本発明で製造される乾燥大麦を1分間程度で復元が可能なクリームポタージュ製品系の具材として用いる場合、1分後の湯戻し後の吸収倍率が5.0〜6.0となるものを用いることが好ましいことが示された。
【0048】
なお、常法に従って手作りで原料の大麦を調理する場合においては、50分間のボイル調理を行うことで、大麦は喫食が可能となる。
しかしながら、表2における試料1が示すように、本発明のボイル加熱処理工程を50分間しか行わなかった場合、コンソメスープ製品系およびクリームポタージュ製品系ともに、1分間の湯戻しで試料の乾燥大麦を復元することができなかった。この時の吸水倍率は3.0を示した。
【0049】
以上から、乾燥大麦の1分間の湯戻し後の吸水倍率を、4.4〜6.0、好ましく5.0〜6.0に調整するためには、ボイル加熱処理を合計100〜220分間、好ましくは120〜220分間施すことにより、注湯後1分程度で復元可能な大麦乾燥具材としての設計が可能となることが示された。
【0050】
実施例1
1)雑穀類乾燥具材の調製
試験例1とほぼ同様の方法により、雑穀類乾燥具材を次のようにして調製した。
まず、原料大麦(押麦)250gを水で軽く洗い、加熱可能な容器中で12倍質量の水(3L)に30分浸漬した。
次いで、この容器ごと中火にかけ15分程度で95℃に達温するよう火加減を調整し、その後は弱火で95℃以上になるように加熱し、加熱開始から合計50分(比較製造品1)もしくは220分(本発明実施品1)経過後に、ザルにあけ回収した。なお、途中煮汁が減少した場合は熱湯を継ぎ足すことで焦がさないように調整した。
ザルに回収された上記各所定時間のボイル加熱処理が施された大麦は、流水にさらすことでぬめりを除き、その後、水をきり、凍結乾燥用トレーに厚さ約2cm程度に盛った。
トレーに盛った大麦は、表面をポリ袋で覆い、−15℃に調整された凍結庫内で20時間の緩慢凍結処理を施した。
次いで、該トレーを凍結乾燥機(協和真空技術社製 RLE-103型)に移し、60℃で17時間定置乾燥させた。
乾燥処理が施された乾燥大麦は軽くほぐし、上記で示したように本発明実施品1および比較製造品1とし、官能評価を行った。
【0051】
2)官能評価
上記本発明実施品1および比較製造品1を用いて、即席の粉末スープを作成して、官能評価を行なった。
上記試料5gおよび即席のスープ粉末(製品の調理方法に従った規定量)を容器に入れ、湯を注ぎ軽く混ぜてスープを作成し、注湯後1分後に官能評価を実施した。なお、本試験例で用いた即席スープ粉末は、クリームポタージュスープ製品系粉末である「クノール(登録商標)カップスープ」野菜とベーコン(クノール食品(株)製)を用いた。
官能評価は、官能評価専門パネル5名が実施し、復元性、食感に関して具体的な状態を記載した。結果を表3に示す。
【0052】
表3が示すように、本発明実施品1は、「1分間の湯戻しで復元が可能」であり、「芯残りもない」という好ましい評価が得られた。
それに対して、比較製造品1は、「1分間の湯戻しで復元が不可能」であり、「硬く」、「食感の好ましさに欠ける」という評価がなされた。
【0053】
実施例2
1)雑穀類乾燥具材の調製
雑穀類乾燥具材を次のようにして調製した。
まず、原料大麦(押麦)250gを水で軽く洗い、加熱可能な容器中で12倍質量の0.3%寒天溶解溶液(3L)に30分浸漬した。なお寒天は、伊那食品工業(株)製, S-6, ゼリー強度630±20g、を用いた。
次いで、この容器ごと中火にかけ15分程度で95℃に達温するよう火加減を調整し、その後は弱火で95℃以上になるように加熱し、加熱開始から合計220分経過後に、ザルにあけ回収した。なお、途中煮汁が減少した場合は熱湯を継ぎ足すことで焦がさないように調整した。
ザルに回収された上記所定時間のボイル加熱処理が施された大麦は、流水にさらすことでぬめりを除き、その後水をきり、凍結乾燥用トレーに厚さ約2cm程度に盛った。
トレーに盛った大麦は、表面をポリ袋で覆い、−15℃に調整された凍結庫内で20時間の緩慢凍結処理を施した。
次いで、該トレーを凍結乾燥機(協和真空技術社製 RLE-103型)に移し、60℃で17時間定置乾燥させた。
乾燥処理が施された乾燥大麦は軽くほぐし、本発明実施品2とし、官能評価を行なった。
【0054】
2)官能評価
上記の本発明実施品2を用いて、即席の粉末スープを作成して、官能評価を行なった。
上記試料5gおよび即席のスープ粉末(製品の調理方法に従った規定量)を容器に入れ、湯を注ぎ軽く混ぜてスープを作成し、注湯後1分後に官能評価を実施した。なお、本試験例で用いた即席スープ粉末は、クリームポタージュスープ製品系粉末である「クノール(登録商標)カップスープ」野菜とベーコン(クノール(株)製)を用いた。
官能評価は、官能評価専門パネル5名が実施し、復元性、食感に関して具体的な状態を記載した。結果を表3に示す。
【0055】
表3が示すように、本発明実施品2は、「1分間の湯戻しで復元が可能」であり、「芯残りもなく」、「極めて弾力感があり」、「食感も好ましい」という表3の中で最も好ましい評価が得られた。
【0056】
比較例1
1)レトルト処理雑穀類具材の調製
雑穀類乾燥具材を次のようにして調製した。
まず、原料大麦(押麦)250gを水で軽く洗い、加熱可能な容器中で12倍質量の水(3L)に30分浸漬した。
次いで、この容器ごと中火にかけ15分程度で95℃に達温するよう火加減を調整し、その後は弱火で95℃以上になるように加熱し、加熱開始から合計50分経過後に、ザルにあけ回収した。なお、途中煮汁が減少した場合は熱湯を継ぎ足すことで焦がさないように調整した。
ザルに回収された上記所定時間のボイル加熱処理が施された大麦は、流水にさらすことでぬめりを除き、その後水をきった。
次いで、レトルトパウチに、上記ボイル加熱処理が施された大麦60gおよび水10mlを充填しシーリング密封したものを、圧力0.196Mpa、121℃、25分間のレトルト加熱処理を施し、比較製造品2とした。
【0057】
2)市販品
無菌米飯同様に別容器に充填しレトルト処理を施した麦具材の市販品を比較市販品1(低GI設計 大麦のスープ(サッポロビール(株)製))とした。
また、ドラムドライヤーにて乾燥された麦具材の市販品を比較市販品2(INSTANT BARLEY Gersten flocken8044(Markrobiotik社製))とした。
【0058】
3)官能評価
上記の比較製造品2、比較市販品1および比較市販品2を用いて、即席の粉末スープを作成し、官能評価を行なった。
上記試料5gおよび即席のスープ粉末(製品の調理方法に従った規定量)を容器に入れ、湯を注ぎ軽く混ぜてスープを作成し、注湯後1分後に官能評価を実施した。なお、本試験例で用いた即席スープ粉末は、クリームポタージュスープ製品系粉末である「クノール(登録商標)カップスープ」野菜とベーコン(クノール食品(株)製)を用いた。
官能評価は、官能評価専門パネル5名が実施し、復元性、食感に関して具体的な状態を記載した。結果を表3に示す。
【0059】
表3が示すように、比較製造品2のレトルト処理麦具材は、柔らか過ぎ、弾力感がなく、食感の好ましさに欠けるという評価がなされた。
また、比較市販品1の麦具材は、「芯残りがなく」、「弾力感があり」、「食感が好ましく」、優れた官能評価の結果が得られたが、「調理方法にやや煩雑な操作が必要」と認められた。
なお、比較市販品2の麦具材は、「芯残りはない」ものの、「食感の好ましさに欠ける」欠点が認められた。
【0060】
【表3】

【0061】
以上の結果より、本発明実施品2は、比較市販品1である、無菌米飯同様に別容器に充填しレトルト処理を施した麦具材と極めて近い食感が得られることが示され、さらに1分間の湯戻しをするだけという簡単な調理法により、大麦本来の良好な食感を具備した大麦乾燥具材を提供することが可能となった。
【0062】
実施例3
1)雑穀類乾燥具材の調製
実施例2とほぼ同様の方法により、雑穀類乾燥具材を次のようにして調製した。
まず、原料大麦(押麦)250gを水で軽く洗い、加熱可能な容器中で12倍質量の0.3%のゼラチン溶解液(本発明実施品3)、0.3%の寒天および0.3%のラクトースを溶解した溶液(本発明実施品4,5)もしくは水(本発明実施品6〜8)3Lに30分浸漬した。なおゼラチンは、新田ゼラチン(株)製, ゼラチンGBL-100、および寒天は、伊那食品工業(株)製, S-6, ゼリー強度630±20g、を用いた。
次いで、この容器ごと中火にかけ15分程度で95℃に達温するよう火加減を調整し、その後は弱火で95℃以上になるように加熱し、加熱開始から合計160分(本発明実施品3,6)、200分(本発明実施品4,7)もしくは220分(本発明実施品5,8)経過後に、ザルにあけ回収した。なお、途中煮汁が減少した場合は熱湯を継ぎ足すことで焦がさないように調整した。
ザルに回収された上記各所定時間のボイル加熱処理が施された大麦は、流水にさらすことでぬめりを除き、その後、水をきり、凍結乾燥用トレーに厚さ約2cm程度に盛った。
トレーに盛った大麦は、表面をポリ袋で覆い、−15℃に調整された凍結庫内で20時間の緩慢凍結処理を施した。
次いで、該トレーを凍結乾燥機(協和真空技術社製 RLE-103型)に移し、60℃で17時間定置乾燥させた。
乾燥処理が施された乾燥大麦は軽くほぐし、上記で示したように本発明実施品3〜8とし、水分含量の測定を行った。
【0063】
2)水分含量の測定
上記工程で得られた本発明実施品3〜8を用い、乾燥後水分含量の測定を行った。水分含量の測定は、前記乾燥大麦を減圧乾燥機(ヤマト科学(株)製, Vacuum Drying Oven)を用いて70℃5時間処理し、減圧乾燥機に入れる前後の質量差を計測することにより、乾燥大麦中に含有されていた水分含量を測定した。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
表4が示すように、本発明実施品3〜8の大麦乾燥具材は、乾燥後に1.1〜9.4質量%の水分含有量を示した。
なお、本発明実施品3〜8において、増粘物質の有無による乾燥後水分含量の顕著な差は見られなかった。
【0066】
実施例4
1)雑穀類乾燥具材の調製
雑穀類乾燥具材を次のようにして調製した。
まず、原料のパール麦(本発明実施品9〜12及び比較製造品3)もしくは米粒麦(本発明実施品13〜16及び比較製造品4)250gを水で軽く洗い、各々加熱可能な容器中で12倍質量の水(3L)に30分浸漬した。
次いで、この容器ごと中火にかけ15分程度で95℃に達温するよう火加減を調整し、その後は弱火で95℃以上になるように加熱し、加熱開始から合計50分(比較製造品3,4)、100分(本発明実施品9,13)、120分(本発明実施品10,14)、160分(本発明実施品11,15)もしくは220分(本発明実施品12,16)経過後に、ザルにあけ回収した。なお、途中煮汁が減少した場合は熱湯を継ぎ足すことで焦がさないように調整した。
ザルに回収された上記各所定時間のボイル加熱処理が施されたパール麦もしくは米粒麦は、流水にさらすことでぬめりを除き、その後、水をきり、凍結乾燥用トレーに厚さ約2cm程度に盛った。
トレーに盛った大麦は、表面をポリ袋で覆い、−15℃に調整された凍結庫内で20時間の緩慢凍結処理を施した。
次いで、該トレーを凍結乾燥機(協和真空技術社製 RLE-103型)に移し、60℃で17時間定置乾燥させた。
乾燥処理が施されたパール麦もしくは米粒麦は軽くほぐし、上記で示したように本発明実施品9〜16及び比較製造品3,4とし、1分間の湯戻しをした後の吸水倍率の測定および官能評価を行った。
【0067】
2)湯戻し後の吸水倍率の測定および官能評価
上記で得られた本発明実施品9〜16及び比較製造品3,4を用いて、試験例1と同様の方法にて、「1分間の湯戻しをした後の各吸水倍率」の測定を行った。結果を表5に示す。
3)官能評価
上記で得られた本発明実施品9〜16及び比較製造品3,4を用いて、即席の粉末スープを作成して、官能評価を行なった。
上記試料5gおよび即席のスープ粉末(製品の調理方法に従った規定量)を容器に入れ、湯を注ぎ軽く混ぜてスープを作成し、注湯後1分後に官能評価を実施した。なお、本試験例で用いた即席スープ粉末は、コンソメスープ製品系粉末である「クノール(登録商標)カップスープ」チキンコンソメ(クノール食品(株)製)を用いた。
官能評価は、試験例1と同様に、官能評価専門パネル4名が5段階評価で行い、1分間の湯戻し後の乾燥大麦を、スープの具材に用いた場合の食感として、前記した5段階の基準で評価した。なお、本試験例における「復元する」とは、喫食可能な状態になることをいう。結果を表5に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
これらのことより、ボイル加熱処理を合計100分〜220分を行った本発明実施品である乾燥パール麦および乾燥米粒麦は、湯戻し1分後に4.5〜6.0倍の吸水倍率を示し、注湯後の復元性が極めて高いことが示された。
また、本発明実施品である乾燥パール麦および乾燥米粒麦は、即席スープの具材として1分間の湯戻しにより復元した場合にも、良好な食感が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、熱湯を注いで作るインスタント食品として復元することの困難な雑穀類乾燥具材について、1分程度の湯戻しで復元可能な雑穀類乾燥具材の製造方法を提供することができる。
本発明によって得られた雑穀類乾燥具材は、スープをはじめとした加工食品のうきみの品質を飛躍的に向上させることができ、即席のスープ、ソース、リゾット、粥、雑炊および茶漬を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雑穀類乾燥具材を製造するにあたり、雑穀類について、雑穀類が水分を吸水できる態様にて、湯戻ししたときの吸水倍率が4.4〜6.0倍になるように加熱処理し、次いで必要に応じて緩慢凍結処理した後、乾燥処理することを特徴とする、雑穀類乾燥具材の製造方法。
【請求項2】
湯又は加温されたスープを注ぐだけで1分以内に復元する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
雑穀類について、雑穀類が水分を吸水できる態様にて、加熱開始後15分で95℃に達温させ、95℃以上の熱湯中で加熱開始から合計100分間以上加熱処理することにより、湯戻ししたときの吸水倍率が4.4〜6.0倍になるように調整する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる少なくとも1種類以上の増粘物質を溶解した水に、雑穀類を浸漬しながら加熱処理する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる少なくとも1種類以上の増粘物質を0.05〜1.0質量%溶解した水に、雑穀類を浸漬しながら加熱処理する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
緩慢凍結処理前の雑穀類の水分含量が84〜89質量%になるように、加熱処理により調整する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
乾燥処理後の雑穀類の水分含量が0.3〜10.0質量%になるように、乾燥処理により調整する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記雑穀類が大麦である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造される雑穀類乾燥具材。
【請求項10】
請求項9に記載の雑穀類乾燥具材を用いた、即席のスープ、ソース、リゾット、粥、雑炊又は茶漬。

【公開番号】特開2008−161174(P2008−161174A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−655(P2007−655)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(591101504)クノール食品株式会社 (29)
【Fターム(参考)】