雑音予測復号器及び雑音予測復号化方法
【課題】
解決しようとする課題は、パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号器を用いた磁気記録チャネルにおいて、媒体雑音に起因する有色性雑音が発生した場合、パスによって雑音分散が異なるため、誤ったパスの選択による性能劣化があり、また、復号器の回路規模が大きく、計算量が多い問題である。
【解決手段】
ビタビ復号器のブランチメトリック演算を逐次演算により算出する平均期待値及びトレーニングあるいは、逐次演算による雑音分散値から算出した期待値との予測誤差値を用いてブランチメトリック演算を行なう。
解決しようとする課題は、パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号器を用いた磁気記録チャネルにおいて、媒体雑音に起因する有色性雑音が発生した場合、パスによって雑音分散が異なるため、誤ったパスの選択による性能劣化があり、また、復号器の回路規模が大きく、計算量が多い問題である。
【解決手段】
ビタビ復号器のブランチメトリック演算を逐次演算により算出する平均期待値及びトレーニングあるいは、逐次演算による雑音分散値から算出した期待値との予測誤差値を用いてブランチメトリック演算を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードディスク装置(HDD)、光ディスク装置におけるディジタル信号処理に係り、特にデータ復号でのディジタル信号処理量を削減するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)、HD−DVD(High Difinition Digital Versatile Disk),DVD−RAMなどの光ディスク装置において、媒体から再生した信号をディジタル信号処理により“0”及び“1”の2値情報に復号する。この処理方式として、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式による復号方法が知られている。
【0003】
図6は従来のPRMLの構成ブロック図を示す図である。2値の記録データ“0”、“1”からパーシャルレスポンス等化器、最尤復号器によるデータ復号を示している。
【0004】
PRML6は、記録データをパーシャルレスポンス方式による等化を行なうパーシャルレスポンス等化器2、ビタビ復号による最尤復号を行なう最尤復号器7で構成し、復号データ“0”、“1”を得る。
【0005】
パーシャルレスポンス等化器2は記録媒体に記録された入力記録データ“0”、“1”を電気信号に変換(通常再生と呼ぶ、以下では再生と表現)する記録/再生部21と既知の符号間干渉を与えるパーシャルレスポンス等化による波形等化を行ない、記録データを識別可能な等化波形に整形する波形等化器22で構成する。波形等化器22の入力信号には熱雑音などの白色雑音が重畳される。パーシャルレスポンス等化器2出力の等化波形は最尤復号器(ビタビ復号器)7に入力される。以下ではパーシャルレスポンス等化器出力を再生信号と記述する。
【0006】
最尤復号器7はビタビ復号器を前提にした構成である。BM演算器71、期待値レジスタ72、MPU73、ACS34、パスメトリックメモリ35、パスメモリ36で構成する。期待値レジスタ72にはMPU73で生成する期待値xijを保持し、演算処理に応じてBM演算器71に入力される。ビタビ復号器の動作の説明の前に前提となる図7、図8、図9で動作を説明する。
【0007】
図7はパーシャルレスポンスPR(1,1)の等化波形を示す図である。パーシャルレスポンスは異なる時刻のシンボルの波形が干渉しあう事を許容・前提にして等化を行なう方式であり、帯域を効率的に使用できる方式として知られている。PR(1,1)の他PR(1,2,1)、PR(1,0,−1)の方式がある。ここではPR(1,1)の説明を行なう。
【0008】
PR(1,1)はあるサンプリング時刻で再生されるべき信号が、次のサンプリング時刻の信号に干渉を与える方式であり、「0、0、0、1、1、0、0、0」の記録データは図7の波形に等化される。
【0009】
図8はパーシャルレスポンスPR(1,1)の状態遷移を示す図である。状態S0はデータが“0”、状態S1はデータが“1”となる状態をそれぞれ示す。前状態はパーシャルレスポンス等化器2入力の前時点の記録データの状態を示している。現状態は現時点のデータの状態が“0”の場合と“1”の場合を示し、再生信号は各々の前状態、現状態に対応するパーシャルレスポンス等化器出力を示している。
【0010】
例えば前状態がS0で現状態が“0”の場合のS0⇒S0に遷移する場合の復号器入力は“−1”、S0⇒S1に遷移する場合の復号器入力は“0”を示している。
【0011】
図9は最尤復号器(ビタビ復号器)のトレリス線図を示す図である。図8で示すPR(1,1)の状態遷移を基にしたビタビ復号器のトレリス線図である。S0、S1に対する前状態、現状態及び再生信号を示している。ここで、lijはブランチメトリック、y(k−1)、ykは再生信号であり、iは時刻k−1の状態、jは時刻kの状態を示す。
【0012】
ここで、xijは最尤復号器7への入力の期待値であり、MPU73で生成してMB演算器71に入力する。図8で述べた理想状態遷移結果が期待値となる。σ2はパーシャルレスポンス等化器2の入力信号に重畳される雑音の分散値である。
【0013】
上述した図7、図8、図9の動作を基に図6の最尤復号器(ビタビ復号器)7について説明する。前述した各部BM演算器71、ACS34、パスメモリ35、パスメトリックメモリ36、MPU73の機能を演算手順に沿って述べる。
1)BM演算器71:状態S(k−1)から状態Skに遷移するブランチメトリック(Branch Metric)として以下の演算を行なう。
【0014】
ブランチメトリックは式1で表される、σ2が白色雑音の分散値で一定の場合、式1を規格化し、規格化ブランチメトリックは式2となる。これより時刻kの再生信号ykに対し、ブランチメトリックは式3となる。
【0015】
【数1】
【0016】
【数2】
【0017】
【数3】
2)ACS34:式3で算出したブランチメトリックに(k−1)時刻のS0、S1の状態m(k−1)(S0)、m(k−1)(S1)を加算した式4の演算を行なう。
【0018】
【数4】
次に、時刻kにおける状態S0、S1に接続するブランチメトリックを比較し、小さいブランチメトリックを選択する。すなわち、式5で選択したブランチメトリックmk(S0)、mk(S1)をパスメトリックとして更新しパスメトリックメモリに保持する。また、パスの選択結果はパスメモリに送る。
【0019】
【数5】
即ち、ビタビ復号方法は連続して再生される再生波形を時刻毎に式3、式4、式5の手順により、最も確からしい遷移パスを選択しながら復号する。遷移パスは、パーシャルレスポンス等化された信号と期待値とのブランチメトリックを基にユークリッド距離(複数のパスがマージするまでの距離)を算出することで求めることが出来る。
【0020】
図10はビタビ復号器のパス選択原理を示す図である。上述した手順によるS0、S1のパス選択を図で示している。ここで、マージ(merge)とはある時刻において選択したパスの遷移元が同じ状態であることを示し、それ以前のパスが確定する。詳細説明は省略する。
【0021】
上述したように従来のPRMLではパーシャルレスポンス等化器の雑音は白色雑音を仮定して計算量を削減していた。しかし、近年、垂直磁気記録方式の採用により記録データ依存の媒体雑音が支配的になり、磁気記録チャネルにおける媒体雑音に起因する有色雑音が記録再生チャネルにおいて支配的になっている。
【0022】
図11は磁気記録チャネルにおける媒体雑音の発生を示す図である。記録磁化遷移点の変動によるジッタとその等化波形を示している。図11の本来破線で再生される信号がジッタによる雑音が付加された実線で示す信号となる。
【0023】
図12は本発明対象の磁化遷移ジッタの影響を受けるブランチのある場合のトレリス線図である。磁化遷移ジッタの影響を受けない“0”から“0”への遷移l00、と“1”から“1”への遷移l11に対し“0”から“1”への遷移l01と“1”から“0”への遷移l10は磁化遷移ジッタの影響を受ける。
【0024】
図13は磁気記録チャネルにおけるPR(1,1)等化波形分布を示す図である。(1)の白色雑音のみ存在する場合の等化波形(−1、0、1)の分布に対し、(2)は、白色雑音に加えジッタによる有色雑音が含まれる場合の等化波形(−1、0、1)の分布を示している。白色雑音のみの場合はデータパターンに対し一様の雑音が印加されるに対し、有色雑音がある場合は磁化遷移ジッタにより等化波形“0”において雑音量が大きくなる。このため、白色雑音に加え、有色雑音が在る場合は、データパターンに依存して、パスごとに雑音分散が異なるため式2を用いた場合、正しい復号が出来なくなる問題がある。
【0025】
このような課題に対し、非特許文献1では、自己回帰(AR:Auto−Regressive)モデルを用いた雑音予測復号化方法を開発している。非特許文献2では、期待値の平均値及びブランチメトリックの分散を用いた方法を提案している。
【0026】
しかしながら、非特許文献1では各ブランチメトリック計算において、過去(既復号)の雑音量から現在の推定雑音量を計算するために膨大な計算量を要し、高速処理及び省回路化が困難となる。
【0027】
一方、非特許文献2では各ブランチメトリック計算において、それぞれ異なる分散値を用いる。この場合、ブランチメトリック演算には分散値を加味した式1を用いる必要がある。この場合式1分散値σ2の演算は乗除演算を行うため、高速演算が難しく回路規模増大の要因となる。
【0028】
特許文献1ではPRMLにおいて、入力信号の変動に対応して各期待値を隣あう各期待値中央値などで設定して変化させる技術が開示されているが、期待値に対する誤差を予測し期待値と誤差の予測値からブランチメトリックを演算する技術はなんら記載されていない。
【特許文献1】特開平10−261272号公報
【非特許文献1】A.Kavcis.et.al、“The Viterbi Algolithm and Markov Noise Memory”、IEEE Trans.on Info.Theory、VOl.46、NO1.2000.
【非特許文献2】林他、“磁気記録システムにおけるジッタ性雑音を考慮したビタビ復号法の一検討”、信学技報、MR2002−2、June 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
解決しようとする課題はPRMLを用いた磁気記録チャネルにおいて、媒体雑音に起因する有色性雑音が発生した場合、パスによって雑音分散が異なるため、誤ったパスの選択による性能劣化があり、また、PRMLの回路規模が大きく、計算量が多い問題である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
第1の発明は、パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号器である。
【0031】
前記雑音予測復号器は、パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生する期待値発生手段と、前記出力信号と前記期待値の誤差の予測値を発生する誤差予測値発生手段と、 前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なう手段と、を備える。
【0032】
第2の発明は、第1の発明記載の前記誤差予測値発生手段は、前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生する手段と、前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を発生する手段とで構成する。
【0033】
第3の発明は、第1の発明記載の前記雑音予測復号器に、さらに前記ビタビ復号での逐次演算により平均期待値と雑音分散値を発生する手段と、前記発生した平均期待値を前記期待値として発生する手段と、前記発生した雑音分散値から前記誤差予測値を発生する手段と、を備える。
【0034】
第4の発明は、パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号化方法である。、
前記雑音予測復号化方法は、パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生し、
前記出力信号と前記期待値の誤差の誤差予測値を発生し、前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なう
第5の発明は、第4の発明記載の前記雑音予測復号化方法において、前記発生する誤差予測値は前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生し、前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を判定し、 前記所定の誤り以下の誤差予測値により前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なう。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、媒体雑音に起因する有色性雑音を持つチャネルにおいて、正しいパス選択を行うことができ、性能改善が得られる。また、回路規模を削減でき、また、計算量の増加を抑えることが可能となる。さらに、従来から行なわれている記録・再生過程にデータの信頼性を示す誤り個数を直接観測してトレーニングを行うことにより精度の高い性能改善を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(実施例1)
図1は本発明のPRML基本構成を示す図である。パーシャルレスポンス等化器2、雑音予測復号器3で構成する。
【0037】
パーシャルレスポンス等化器2は記録再生部21、波形等化器22で構成し、図6の構成要素と同一である。説明が重複するが動作を説明する。
【0038】
記録/再生部21で記録媒体に記録された入力記録データ“0”、“1”を電気信号に再生し、波形等化器22でパーシャルレスポンス等化による波形等化を行う。図6との違いは等化波形に白色雑音に加え、有色の媒体雑音が重畳される。パーシャルレスポンス等化された再生信号は雑音予測符号器3に入力する。
【0039】
雑音予測復号器3はBM演算器31、期待値生成部32、誤差予測値生成部33、ACS34、パスメトリックメモリ35、パスメモリ36で構成する。ACS34、パスメトリックメモリ35、パスメモリ36は各々、図6の最尤復号器7のACS34、パスメトリック35、パスメモリ36と同一である。図6の説明と一部重複するが動作の説明を行なう。
1)BM演算器31:状態S(k−1)から状態Skに遷移するブランチメトリック(Branch Metric)として以下の演算を行なう。期待値生成部32からの期待値xij、誤差予測値生成部33からの誤差予測値αijを得て磁化遷移ジッタの影響の有無に対応して以下の演算を行なう。
A:磁化遷移ジッタの影響を受けないブランチ(S0⇒S0及びS1⇒S1のパス):l00、l11の場合:
ブランチメトリックは式6となる。
【0040】
【数6】
B:磁化遷移ジッタの影響を受けるブランチS0⇒S1及びS1⇒S0のパス):l01、l10の場合:
ブランチメトリックは式7となる。
【0041】
【数7】
ここで、誤差予測値αijは実際の再生信号と再生信号の期待値との予測誤差を表し有色雑音の影響を表現する任意の値である。誤差予測値αijの導出方法については後述する。
2)ACS34:式6、式7で算出した時刻kの再生信号ykのブランチメトリックを用いてパスメトリックを算出する。
【0042】
式6、式7で算出したブランチメトリックに(k−1)時刻のS0、S1の状態m(k−1)(S0)、m(k−1)(S1)を加算した式8の演算を行なう。
【0043】
【数8】
次に、時刻kにおける状態S0、S1に接続するブランチメトリックl’ijを比較し、小さいブランチメトリックを選択する。すなわち、式9で選択したブランチメトリックmk(S0)、mk(S1)をパスメトリックとして更新する。また選択したS0のパス、S1のパスはパスメモリ36に送る。
【0044】
【数9】
3)パスメトリックメモリ35:ACS34で算出した時刻kにおける状態S0、S1に接続するブランチメトリックl’ij(i=0,1、j=0,1)を保持する。
4)パスメモリ36:ACS34で選択したS0のパス、S1のパスを保持する。
【0045】
図2は本発明の一実施形態のPRML構成ブロック図(その1)を示す図である。パーシャルレスポンス等化器2、雑音予測復号器4で構成する。パーシャルレスポンス等化器2は図1と同一である。
【0046】
雑音予測復号器4は期待値/誤差予測値レジスタ41、判定/α値設定部42、データ比較/誤りカウンタ部43、MPU44で構成する。期待値/誤差予測値レジスタ41、判定/α値設定部42、データ比較/誤りカウンタ部43、MPU44の機能を、図3のトレーニングによる誤差予測値の生成と併せて説明する。ここで用いる期待値xij、誤差予測値αijの算出方法については後述する。
【0047】
その他の構成要素であるパーシャルレスポンス等化器2、雑音予測復号器4のACS34、パスメトリックメモリ35、パスメモリ36は図1で説明した内容と同一なので、説明を省略する。
5)MPU44:誤差予測値αijの初期値及び検索の可変範囲より誤差予測値の算出演算を行なう。また期待値xijは選定したパーシャルレスポンス方式における状態遷移の理論値を算出する。
6)データ比較/誤りカウント部43:試しデータに対する記録データと復号データを比較し誤りをカウントする。
7)判定/α値設定部42:誤りの回数よりMPUと連携して最良の誤差予測値αijを生成する。
8)期待値/誤差予測値レジスタ41:算出した期待値xij、誤差予測値αijを保持する。
【0048】
図3は本発明のトレーニングによる誤差予測値生成方法を示す図である。トレーニングは、試し記録・再生時に実施する。試し記録・再生の実施タイミングは、機器の電源投入時、一定時間を経過した時、記録ゾーンが変わったときなど任意の時間に実施する。記録再生に通常実行される等化フィルタの係数補正や、記録・再生のパワー調整などが行うタイミングと同じでよい。
【0049】
固定のテストパターンによるテスト記録により復号結果の評価判定を行ない、判定した磁化遷移の影響を受ける組み合わせに対し誤差予測値αijの値を選択する。ここで、テストパターンは磁化遷移の発生の可能性あるパターンの全て、あるいは全ての磁化遷移の組み合わせについて行なう。
S1:対象の磁化遷移の影響を受ける組み合わせを選択する。
S2:対象の誤差予測値αijの初期値を設定する。例えば誤差がないαij=0、あるいは最新のトレーニング結果の誤差予測値で設定する。
S3:再生を行なう。
S4:記録したデータと固定のテストパターンでのデータとの一対一比較を行い、誤り数をカウントし、評価判定を行なう。
S5:対象の誤差予測値αijについて以下の基準で評価判定を行う。
ア.誤差予測値αが所定の値に到達した場合:その時のαijを誤差予測値とする。
イ.所定の検索範囲を終えた場合:検索範囲での誤りカウントが最小となるαijを誤差予測値とする。
S6、S7:対象の誤差予測値αijの評価判定が終了した場合はS8に進む。未の場合は所定の手順(所定のステップ幅で誤差予測値をインンクリメントする等)で誤差予測値を再設定してS3に戻る。
S8:次の処理を行なう。
ア.全ての組み合わせが終了している場合は終了となる。
イ.残りの組み合わせがある場合は次ぎの組み合わせを選択してS2に戻る。
【0050】
図4の(2)は誤差予測値αと誤り個数の関係を示している。誤差予測値αを複数個求める場合、例えばα10、α01は全ての予測値を探索してもよい。あるいは、PR(1,2,1)やPR(1,0,−1)のようにビタビ復号器の状態が4状態(S0〜S3)(i、j={0,1,2,3})である場合、誤差予測値をグループ毎に分け(例えばα01=α21、α12=α32)、グループ毎に探索しても良い。ここで、4状態では、状態Si及びSjはそれぞれ(k−2、k−1)時刻の状態、(k−1、k)時刻の状態を示し、状態S0、S1、S2、S3はそれぞれ(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1,1)のデータとなる状態である。
【0051】
グループ分けの例として、現時刻のデータに影響を与える過去の遷移を考慮して誤差予測値をグループ分けする。例えば、k−1時刻までが影響を与える(それ以前のデータの影響が小と)とすれば、遷移(k−2,k−1,k)=(0,0,1)と(1,0,1)はk−1時刻までは同様のパターンであるため、α01=α21のように同じ値としても良い。
【0052】
また、誤差予測値と誤り個数の関係をビジュアル化することにより各αの感度、初期値の設定を容易にし、また、誤り個数を直接観測しながら精度の良い誤差予測値を得ることが可能となる。
【0053】
図4の手順で生成した誤差予測値αijをMPU44のマイクロプロセッサの制御により、判定条件及びα値の可変範囲を判定/α値設定部42に設定し、データ比較/誤りカウント43の演算を制御し、期待値/誤差予測値レジスタ41への書き込みを行なう。
【0054】
期待値/誤差予測値レジスタ41から期待値xij、誤差予測値αij得てBM演算器31において、図1の動作で述べたブランチメトリックの演算を行なう。
【0055】
図4は本発明(実施例1)の雑音予測復号器と従来復号器の性能比較例を示す図である。再生信号品質(SNR:Signal−to−Noise Ratio)とセクタ誤り率との関係を本発明と従来法と比較して示している。図に示すようにSNRが改善される。
(実施例2)
図5は本発明の一実施形態のPRML構成ブロック図(その2)を示す図である。パーシャルレスポンス等化器2、雑音予測復号器5で構成し、平均期待値χijから期待値xijと誤差予測値αijをデータ再生時に逐次算出する手法を実現する回路構成を示している。
【0056】
雑音予測復号器5は、BM演算器31、ACS34、パスメトリックメモリ35に加え、平均・分散推定部50で構成する。
【0057】
平均・分散推定部50は、遅延器51、DEMUX52、メモリ“00”53−1、メモリ“01”53−2、メモリ“10”53−3、メモリ“11”53−4、平均・分散計算“00”54−1、平均・分散計算“01”54−2、平均・分散計算“10”54−3、平均・分散計算“11”54−4、α計算部55、MPU56で構成する。
【0058】
図1の構成要素と異なる平均・分散推定部50の動作について説明する。その他の構成要素は図1で説明した内容と同一なので、説明を省略する。
【0059】
平均・分散推定部50を構成する各要素の処理機能を説明する前にビタビ復号における逐次演算により平均期待値χij及と雑音分散値σ2ijの算出方法を先に説明する。BM演算に用いる期待値期待値xijと誤差予測値αijは逐次演算により算出した平均期待値χij及と雑音分散値σ2ijから算出する。
【0060】
図14はビタビ復号での平均期待値と分散の逐次算出を示す図である。ビタビ復号における逐次演算による平均期待値と分散を算出する方法として知られているので、簡単に述べる。
(1)各時刻kとその時刻における再生信号ykがビタビ復号され、γ時間後に復号データが得られる。復号データdk’はγ時間後の再生信号ykに対応する復号データである。ここで、k’=k+γである。
【0061】
以下の手順は代表して復号データ“00”について説明する、残りのデータ“01”、“10”、“11”についても同じ計算を行なう。
(2)シフトレジスタにより遅延したγ時間遅延した再生信号yk’と期待値初期値x00より、DEMUX(データ分配)により復号データが“00”になった時、それに対応する遅延再生信号yk’をメモリ“00”に振り分ける。メモリ“00”では1段目に再生信号を保持し、1〜L断目に保持する情報は順次シフトし、L段目の情報は破棄される。
(3)平均計算“00”として、メモリに保持する1〜L段の値を式10により平均した結果を出力する。計算結果が時刻k’+1=k+γ+1における平均期待値であり、BM演算の期待値として用いる。
【0062】
【数10】
(4)分散計算“00”ではメモリに保持する1〜L段の値から式11で求めた結果を出力する。この逐次演算により算出した分散を用い、後述するα計算部でBM演算で用いる誤差予測値を算出する。
【0063】
【数11】
上記の平均期待値χij及び分散σ2ijを基に平均・分散推定部50の各構成要素の説明を行なう。
1)遅延器51:再生信号ykを遅延する。
2)DEMUX52:復号データを分配する。
3)メモリ“00”53−1〜メモリ“11”53−4:各々データ“00”〜データ“11”を保持する。
4)平均・分散計算“00”54−1〜平均・分散計算“11”54−4:平均期待値χijと分散σ2ijを算出し、平均期待値χijは期待値xijとしてBM演算器31に送り、分散σ2ijはα計算部に送る。
5)α計算部55:MPU56からの誤差予測値αijの初期値及び各平均・分散計算部54−nで算出した各分散値σij2(i=0,1、j=0,1)より時刻k’+1=k+γ+1における誤差予測値α01、α10を式12で算出する。α00、α11は遷移が無いためα00=α11=0とする。
【0064】
【数12】
3)MPU56:期待値xijの初期値、誤差予測値αijの初期値を設定する。
【0065】
BM演算器31は平均・分散推定部51で算出した期待値、誤差予測値を用いてブランチメリックの演算を行なう。
【0066】
即ち、実施例1でのBM演算ではパーシャルレスポンス等化に従った理論値を期待値xijとし、トレーニングにより発生した誤差予測値αijを用いるのに対し、実施例2では、ビタビ復号の逐次演算により算出した再生信号に近い平均期待値χijと雑音分散から算出した期待値xijと誤差予測値αijによりBM演算を行なう例を示している。
【0067】
以上、図1、図2、図5はPR(1,1)型のパーシャルレスポンスの例で説明したが、PR(1,1)型以外、例えばPR(1,2,1)、PR(1,0,−1)などのパーシャルレスポンス方式についても適用できる。
【0068】
また、ビタビ復号を例にとって説明したが、本発明はブランチメトリックを用いて復号するもの全てに適応可能であり、例えば、BCJR(Bahl,Cocke,Jelnek,Raviv)アルゴリズム、Max−log−MAP(Maximum A Posteriori)アルゴリズムあるいはSOVA(Soft−Output Viterbi−Algorithm)等で適用可能である。
(付記1)
パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号器であって、
前記雑音予測復号器は、
パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生する期待値発生手段と、
前記出力信号と前記期待値の誤差の予測値を発生する誤差予測値発生手段と、
前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なう手段と、
を備えたことを特徴とする雑音予測復号器。
(付記2)
付記1記載の前記誤差予測値発生手段は、
前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生する手段と、
前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を発生する手段とで構成することを特徴とする付記1記載の雑音予測復号器。
(付記3)
付記1記載の前記雑音予測復号器は、
前記ビタビ復号での逐次演算により平均期待値と雑音分散値を発生する手段と、
前記発生した平均期待値を前記期待値として発生する手段と、
前記発生した雑音分散値から前記誤差予測値を発生する手段と、
を備えたことを特徴とする付記1記載の雑音予測復号器。
(付記4)
パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号化方法であって、
前記雑音予測復号化方法は、
パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生し、
前記出力信号と前記期待値の誤差の誤差予測値を発生し、
前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なうことを特徴とする雑音予測復号化方法。
(付記5)
付記4記載の前記雑音予測復号化方法において、
前記発生する誤差予測値は前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生し、
前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を判定し、
前記所定の誤り以下の誤差予測値により前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なうことを特徴とする付記4記載の雑音予測復号化方法。
(付記6)
付記4記載の前記雑音予測復号化法において、
前記発生する誤差予測値は前記ビタビ復号での逐次演算により雑音分散値を算出し、
前記算出した雑音分散値から前記誤差予測値を算出して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なうことを特徴とする付記4記載の雑音予測復号化方法。
(付記7)
付記4記載の前記雑音予測復号化方法において、
前記発生する期待値はパーシャルレスポンス等化の状態遷移理論値あるいは前記ビタビ復号で逐次演算により発生した平均期待値であることを特徴とする付記4記載の雑音予測復号化方法。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は本発明のPRML基本構成を示す図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態のPRMLの構成(その1)を示す図である。
【図3】図3は本発明のトレーニングによる誤差予測値生成方法を示す図である。
【図4】図4は本発明(実施例1)の雑音予測復号器と従来復号器の性能比較例を示す図である。
【図5】図5は本発明の一実施形態のPRMLの構成(その2)を示す図である。
【図6】図6は従来のPRMLの構成ブロック図を示す図である。
【図7】図7はパーシャルレスポンスPR(1,1)の等化波形を示す図である。
【図8】図8はパーシャルレスポンスPR(1,1)の状態遷移を示す図である。
【図9】図9は最尤復号器(ビタビ復号器)のトレリス線図を示す図である。
【図10】ビタビ復号器のパス選択原理を示す図である。
【図11】図11は磁気記録チャネルにおける媒体雑音の発生を示す図である。
【図12】図12は本発明対象の磁化遷移ジッタの影響を受けるブランチのある場合のトレリス線図である。
【図13】図13は磁気記録チャネルにおけるPR(1,1)等化波形分布を示す図である。
【図14】図14はビタビ復号での平均期待値と分散の逐次算出を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 PRML
2 パーシャルレスポンス等化器
3 雑音予測復号器(基本構成)
4 雑音予測復号器(実施例1)
5 雑音予測復号器(実施例2)
6 PRML(従来構成)
7 最尤復号器(ビタビ復号器)
21 記録/再生部
22 波形等化器
31 BM演算器
32 期待値生成部
33 誤差予測値生成部
34 ACS
35 パスメトリックメモリ
36 パスメモリ
41 期待値/誤差予測値レジスタ
42 判定/α値設定部
43 データ比較/誤りカウント部
44 MPU(実施例1)
50 平均・分散推定部
51 遅延器
52 DEMUX
53−1〜53−4 メモリ
54−1〜54−4 平均・分散計算
55 α計算部
56 MPU(実施例2)
71 BM演算器(従来構成)
72 期待値レジスタ
73 MPU(従来構成)
【技術分野】
【0001】
本発明はハードディスク装置(HDD)、光ディスク装置におけるディジタル信号処理に係り、特にデータ復号でのディジタル信号処理量を削減するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)、HD−DVD(High Difinition Digital Versatile Disk),DVD−RAMなどの光ディスク装置において、媒体から再生した信号をディジタル信号処理により“0”及び“1”の2値情報に復号する。この処理方式として、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式による復号方法が知られている。
【0003】
図6は従来のPRMLの構成ブロック図を示す図である。2値の記録データ“0”、“1”からパーシャルレスポンス等化器、最尤復号器によるデータ復号を示している。
【0004】
PRML6は、記録データをパーシャルレスポンス方式による等化を行なうパーシャルレスポンス等化器2、ビタビ復号による最尤復号を行なう最尤復号器7で構成し、復号データ“0”、“1”を得る。
【0005】
パーシャルレスポンス等化器2は記録媒体に記録された入力記録データ“0”、“1”を電気信号に変換(通常再生と呼ぶ、以下では再生と表現)する記録/再生部21と既知の符号間干渉を与えるパーシャルレスポンス等化による波形等化を行ない、記録データを識別可能な等化波形に整形する波形等化器22で構成する。波形等化器22の入力信号には熱雑音などの白色雑音が重畳される。パーシャルレスポンス等化器2出力の等化波形は最尤復号器(ビタビ復号器)7に入力される。以下ではパーシャルレスポンス等化器出力を再生信号と記述する。
【0006】
最尤復号器7はビタビ復号器を前提にした構成である。BM演算器71、期待値レジスタ72、MPU73、ACS34、パスメトリックメモリ35、パスメモリ36で構成する。期待値レジスタ72にはMPU73で生成する期待値xijを保持し、演算処理に応じてBM演算器71に入力される。ビタビ復号器の動作の説明の前に前提となる図7、図8、図9で動作を説明する。
【0007】
図7はパーシャルレスポンスPR(1,1)の等化波形を示す図である。パーシャルレスポンスは異なる時刻のシンボルの波形が干渉しあう事を許容・前提にして等化を行なう方式であり、帯域を効率的に使用できる方式として知られている。PR(1,1)の他PR(1,2,1)、PR(1,0,−1)の方式がある。ここではPR(1,1)の説明を行なう。
【0008】
PR(1,1)はあるサンプリング時刻で再生されるべき信号が、次のサンプリング時刻の信号に干渉を与える方式であり、「0、0、0、1、1、0、0、0」の記録データは図7の波形に等化される。
【0009】
図8はパーシャルレスポンスPR(1,1)の状態遷移を示す図である。状態S0はデータが“0”、状態S1はデータが“1”となる状態をそれぞれ示す。前状態はパーシャルレスポンス等化器2入力の前時点の記録データの状態を示している。現状態は現時点のデータの状態が“0”の場合と“1”の場合を示し、再生信号は各々の前状態、現状態に対応するパーシャルレスポンス等化器出力を示している。
【0010】
例えば前状態がS0で現状態が“0”の場合のS0⇒S0に遷移する場合の復号器入力は“−1”、S0⇒S1に遷移する場合の復号器入力は“0”を示している。
【0011】
図9は最尤復号器(ビタビ復号器)のトレリス線図を示す図である。図8で示すPR(1,1)の状態遷移を基にしたビタビ復号器のトレリス線図である。S0、S1に対する前状態、現状態及び再生信号を示している。ここで、lijはブランチメトリック、y(k−1)、ykは再生信号であり、iは時刻k−1の状態、jは時刻kの状態を示す。
【0012】
ここで、xijは最尤復号器7への入力の期待値であり、MPU73で生成してMB演算器71に入力する。図8で述べた理想状態遷移結果が期待値となる。σ2はパーシャルレスポンス等化器2の入力信号に重畳される雑音の分散値である。
【0013】
上述した図7、図8、図9の動作を基に図6の最尤復号器(ビタビ復号器)7について説明する。前述した各部BM演算器71、ACS34、パスメモリ35、パスメトリックメモリ36、MPU73の機能を演算手順に沿って述べる。
1)BM演算器71:状態S(k−1)から状態Skに遷移するブランチメトリック(Branch Metric)として以下の演算を行なう。
【0014】
ブランチメトリックは式1で表される、σ2が白色雑音の分散値で一定の場合、式1を規格化し、規格化ブランチメトリックは式2となる。これより時刻kの再生信号ykに対し、ブランチメトリックは式3となる。
【0015】
【数1】
【0016】
【数2】
【0017】
【数3】
2)ACS34:式3で算出したブランチメトリックに(k−1)時刻のS0、S1の状態m(k−1)(S0)、m(k−1)(S1)を加算した式4の演算を行なう。
【0018】
【数4】
次に、時刻kにおける状態S0、S1に接続するブランチメトリックを比較し、小さいブランチメトリックを選択する。すなわち、式5で選択したブランチメトリックmk(S0)、mk(S1)をパスメトリックとして更新しパスメトリックメモリに保持する。また、パスの選択結果はパスメモリに送る。
【0019】
【数5】
即ち、ビタビ復号方法は連続して再生される再生波形を時刻毎に式3、式4、式5の手順により、最も確からしい遷移パスを選択しながら復号する。遷移パスは、パーシャルレスポンス等化された信号と期待値とのブランチメトリックを基にユークリッド距離(複数のパスがマージするまでの距離)を算出することで求めることが出来る。
【0020】
図10はビタビ復号器のパス選択原理を示す図である。上述した手順によるS0、S1のパス選択を図で示している。ここで、マージ(merge)とはある時刻において選択したパスの遷移元が同じ状態であることを示し、それ以前のパスが確定する。詳細説明は省略する。
【0021】
上述したように従来のPRMLではパーシャルレスポンス等化器の雑音は白色雑音を仮定して計算量を削減していた。しかし、近年、垂直磁気記録方式の採用により記録データ依存の媒体雑音が支配的になり、磁気記録チャネルにおける媒体雑音に起因する有色雑音が記録再生チャネルにおいて支配的になっている。
【0022】
図11は磁気記録チャネルにおける媒体雑音の発生を示す図である。記録磁化遷移点の変動によるジッタとその等化波形を示している。図11の本来破線で再生される信号がジッタによる雑音が付加された実線で示す信号となる。
【0023】
図12は本発明対象の磁化遷移ジッタの影響を受けるブランチのある場合のトレリス線図である。磁化遷移ジッタの影響を受けない“0”から“0”への遷移l00、と“1”から“1”への遷移l11に対し“0”から“1”への遷移l01と“1”から“0”への遷移l10は磁化遷移ジッタの影響を受ける。
【0024】
図13は磁気記録チャネルにおけるPR(1,1)等化波形分布を示す図である。(1)の白色雑音のみ存在する場合の等化波形(−1、0、1)の分布に対し、(2)は、白色雑音に加えジッタによる有色雑音が含まれる場合の等化波形(−1、0、1)の分布を示している。白色雑音のみの場合はデータパターンに対し一様の雑音が印加されるに対し、有色雑音がある場合は磁化遷移ジッタにより等化波形“0”において雑音量が大きくなる。このため、白色雑音に加え、有色雑音が在る場合は、データパターンに依存して、パスごとに雑音分散が異なるため式2を用いた場合、正しい復号が出来なくなる問題がある。
【0025】
このような課題に対し、非特許文献1では、自己回帰(AR:Auto−Regressive)モデルを用いた雑音予測復号化方法を開発している。非特許文献2では、期待値の平均値及びブランチメトリックの分散を用いた方法を提案している。
【0026】
しかしながら、非特許文献1では各ブランチメトリック計算において、過去(既復号)の雑音量から現在の推定雑音量を計算するために膨大な計算量を要し、高速処理及び省回路化が困難となる。
【0027】
一方、非特許文献2では各ブランチメトリック計算において、それぞれ異なる分散値を用いる。この場合、ブランチメトリック演算には分散値を加味した式1を用いる必要がある。この場合式1分散値σ2の演算は乗除演算を行うため、高速演算が難しく回路規模増大の要因となる。
【0028】
特許文献1ではPRMLにおいて、入力信号の変動に対応して各期待値を隣あう各期待値中央値などで設定して変化させる技術が開示されているが、期待値に対する誤差を予測し期待値と誤差の予測値からブランチメトリックを演算する技術はなんら記載されていない。
【特許文献1】特開平10−261272号公報
【非特許文献1】A.Kavcis.et.al、“The Viterbi Algolithm and Markov Noise Memory”、IEEE Trans.on Info.Theory、VOl.46、NO1.2000.
【非特許文献2】林他、“磁気記録システムにおけるジッタ性雑音を考慮したビタビ復号法の一検討”、信学技報、MR2002−2、June 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
解決しようとする課題はPRMLを用いた磁気記録チャネルにおいて、媒体雑音に起因する有色性雑音が発生した場合、パスによって雑音分散が異なるため、誤ったパスの選択による性能劣化があり、また、PRMLの回路規模が大きく、計算量が多い問題である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
第1の発明は、パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号器である。
【0031】
前記雑音予測復号器は、パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生する期待値発生手段と、前記出力信号と前記期待値の誤差の予測値を発生する誤差予測値発生手段と、 前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なう手段と、を備える。
【0032】
第2の発明は、第1の発明記載の前記誤差予測値発生手段は、前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生する手段と、前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を発生する手段とで構成する。
【0033】
第3の発明は、第1の発明記載の前記雑音予測復号器に、さらに前記ビタビ復号での逐次演算により平均期待値と雑音分散値を発生する手段と、前記発生した平均期待値を前記期待値として発生する手段と、前記発生した雑音分散値から前記誤差予測値を発生する手段と、を備える。
【0034】
第4の発明は、パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号化方法である。、
前記雑音予測復号化方法は、パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生し、
前記出力信号と前記期待値の誤差の誤差予測値を発生し、前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なう
第5の発明は、第4の発明記載の前記雑音予測復号化方法において、前記発生する誤差予測値は前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生し、前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を判定し、 前記所定の誤り以下の誤差予測値により前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なう。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、媒体雑音に起因する有色性雑音を持つチャネルにおいて、正しいパス選択を行うことができ、性能改善が得られる。また、回路規模を削減でき、また、計算量の増加を抑えることが可能となる。さらに、従来から行なわれている記録・再生過程にデータの信頼性を示す誤り個数を直接観測してトレーニングを行うことにより精度の高い性能改善を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(実施例1)
図1は本発明のPRML基本構成を示す図である。パーシャルレスポンス等化器2、雑音予測復号器3で構成する。
【0037】
パーシャルレスポンス等化器2は記録再生部21、波形等化器22で構成し、図6の構成要素と同一である。説明が重複するが動作を説明する。
【0038】
記録/再生部21で記録媒体に記録された入力記録データ“0”、“1”を電気信号に再生し、波形等化器22でパーシャルレスポンス等化による波形等化を行う。図6との違いは等化波形に白色雑音に加え、有色の媒体雑音が重畳される。パーシャルレスポンス等化された再生信号は雑音予測符号器3に入力する。
【0039】
雑音予測復号器3はBM演算器31、期待値生成部32、誤差予測値生成部33、ACS34、パスメトリックメモリ35、パスメモリ36で構成する。ACS34、パスメトリックメモリ35、パスメモリ36は各々、図6の最尤復号器7のACS34、パスメトリック35、パスメモリ36と同一である。図6の説明と一部重複するが動作の説明を行なう。
1)BM演算器31:状態S(k−1)から状態Skに遷移するブランチメトリック(Branch Metric)として以下の演算を行なう。期待値生成部32からの期待値xij、誤差予測値生成部33からの誤差予測値αijを得て磁化遷移ジッタの影響の有無に対応して以下の演算を行なう。
A:磁化遷移ジッタの影響を受けないブランチ(S0⇒S0及びS1⇒S1のパス):l00、l11の場合:
ブランチメトリックは式6となる。
【0040】
【数6】
B:磁化遷移ジッタの影響を受けるブランチS0⇒S1及びS1⇒S0のパス):l01、l10の場合:
ブランチメトリックは式7となる。
【0041】
【数7】
ここで、誤差予測値αijは実際の再生信号と再生信号の期待値との予測誤差を表し有色雑音の影響を表現する任意の値である。誤差予測値αijの導出方法については後述する。
2)ACS34:式6、式7で算出した時刻kの再生信号ykのブランチメトリックを用いてパスメトリックを算出する。
【0042】
式6、式7で算出したブランチメトリックに(k−1)時刻のS0、S1の状態m(k−1)(S0)、m(k−1)(S1)を加算した式8の演算を行なう。
【0043】
【数8】
次に、時刻kにおける状態S0、S1に接続するブランチメトリックl’ijを比較し、小さいブランチメトリックを選択する。すなわち、式9で選択したブランチメトリックmk(S0)、mk(S1)をパスメトリックとして更新する。また選択したS0のパス、S1のパスはパスメモリ36に送る。
【0044】
【数9】
3)パスメトリックメモリ35:ACS34で算出した時刻kにおける状態S0、S1に接続するブランチメトリックl’ij(i=0,1、j=0,1)を保持する。
4)パスメモリ36:ACS34で選択したS0のパス、S1のパスを保持する。
【0045】
図2は本発明の一実施形態のPRML構成ブロック図(その1)を示す図である。パーシャルレスポンス等化器2、雑音予測復号器4で構成する。パーシャルレスポンス等化器2は図1と同一である。
【0046】
雑音予測復号器4は期待値/誤差予測値レジスタ41、判定/α値設定部42、データ比較/誤りカウンタ部43、MPU44で構成する。期待値/誤差予測値レジスタ41、判定/α値設定部42、データ比較/誤りカウンタ部43、MPU44の機能を、図3のトレーニングによる誤差予測値の生成と併せて説明する。ここで用いる期待値xij、誤差予測値αijの算出方法については後述する。
【0047】
その他の構成要素であるパーシャルレスポンス等化器2、雑音予測復号器4のACS34、パスメトリックメモリ35、パスメモリ36は図1で説明した内容と同一なので、説明を省略する。
5)MPU44:誤差予測値αijの初期値及び検索の可変範囲より誤差予測値の算出演算を行なう。また期待値xijは選定したパーシャルレスポンス方式における状態遷移の理論値を算出する。
6)データ比較/誤りカウント部43:試しデータに対する記録データと復号データを比較し誤りをカウントする。
7)判定/α値設定部42:誤りの回数よりMPUと連携して最良の誤差予測値αijを生成する。
8)期待値/誤差予測値レジスタ41:算出した期待値xij、誤差予測値αijを保持する。
【0048】
図3は本発明のトレーニングによる誤差予測値生成方法を示す図である。トレーニングは、試し記録・再生時に実施する。試し記録・再生の実施タイミングは、機器の電源投入時、一定時間を経過した時、記録ゾーンが変わったときなど任意の時間に実施する。記録再生に通常実行される等化フィルタの係数補正や、記録・再生のパワー調整などが行うタイミングと同じでよい。
【0049】
固定のテストパターンによるテスト記録により復号結果の評価判定を行ない、判定した磁化遷移の影響を受ける組み合わせに対し誤差予測値αijの値を選択する。ここで、テストパターンは磁化遷移の発生の可能性あるパターンの全て、あるいは全ての磁化遷移の組み合わせについて行なう。
S1:対象の磁化遷移の影響を受ける組み合わせを選択する。
S2:対象の誤差予測値αijの初期値を設定する。例えば誤差がないαij=0、あるいは最新のトレーニング結果の誤差予測値で設定する。
S3:再生を行なう。
S4:記録したデータと固定のテストパターンでのデータとの一対一比較を行い、誤り数をカウントし、評価判定を行なう。
S5:対象の誤差予測値αijについて以下の基準で評価判定を行う。
ア.誤差予測値αが所定の値に到達した場合:その時のαijを誤差予測値とする。
イ.所定の検索範囲を終えた場合:検索範囲での誤りカウントが最小となるαijを誤差予測値とする。
S6、S7:対象の誤差予測値αijの評価判定が終了した場合はS8に進む。未の場合は所定の手順(所定のステップ幅で誤差予測値をインンクリメントする等)で誤差予測値を再設定してS3に戻る。
S8:次の処理を行なう。
ア.全ての組み合わせが終了している場合は終了となる。
イ.残りの組み合わせがある場合は次ぎの組み合わせを選択してS2に戻る。
【0050】
図4の(2)は誤差予測値αと誤り個数の関係を示している。誤差予測値αを複数個求める場合、例えばα10、α01は全ての予測値を探索してもよい。あるいは、PR(1,2,1)やPR(1,0,−1)のようにビタビ復号器の状態が4状態(S0〜S3)(i、j={0,1,2,3})である場合、誤差予測値をグループ毎に分け(例えばα01=α21、α12=α32)、グループ毎に探索しても良い。ここで、4状態では、状態Si及びSjはそれぞれ(k−2、k−1)時刻の状態、(k−1、k)時刻の状態を示し、状態S0、S1、S2、S3はそれぞれ(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1,1)のデータとなる状態である。
【0051】
グループ分けの例として、現時刻のデータに影響を与える過去の遷移を考慮して誤差予測値をグループ分けする。例えば、k−1時刻までが影響を与える(それ以前のデータの影響が小と)とすれば、遷移(k−2,k−1,k)=(0,0,1)と(1,0,1)はk−1時刻までは同様のパターンであるため、α01=α21のように同じ値としても良い。
【0052】
また、誤差予測値と誤り個数の関係をビジュアル化することにより各αの感度、初期値の設定を容易にし、また、誤り個数を直接観測しながら精度の良い誤差予測値を得ることが可能となる。
【0053】
図4の手順で生成した誤差予測値αijをMPU44のマイクロプロセッサの制御により、判定条件及びα値の可変範囲を判定/α値設定部42に設定し、データ比較/誤りカウント43の演算を制御し、期待値/誤差予測値レジスタ41への書き込みを行なう。
【0054】
期待値/誤差予測値レジスタ41から期待値xij、誤差予測値αij得てBM演算器31において、図1の動作で述べたブランチメトリックの演算を行なう。
【0055】
図4は本発明(実施例1)の雑音予測復号器と従来復号器の性能比較例を示す図である。再生信号品質(SNR:Signal−to−Noise Ratio)とセクタ誤り率との関係を本発明と従来法と比較して示している。図に示すようにSNRが改善される。
(実施例2)
図5は本発明の一実施形態のPRML構成ブロック図(その2)を示す図である。パーシャルレスポンス等化器2、雑音予測復号器5で構成し、平均期待値χijから期待値xijと誤差予測値αijをデータ再生時に逐次算出する手法を実現する回路構成を示している。
【0056】
雑音予測復号器5は、BM演算器31、ACS34、パスメトリックメモリ35に加え、平均・分散推定部50で構成する。
【0057】
平均・分散推定部50は、遅延器51、DEMUX52、メモリ“00”53−1、メモリ“01”53−2、メモリ“10”53−3、メモリ“11”53−4、平均・分散計算“00”54−1、平均・分散計算“01”54−2、平均・分散計算“10”54−3、平均・分散計算“11”54−4、α計算部55、MPU56で構成する。
【0058】
図1の構成要素と異なる平均・分散推定部50の動作について説明する。その他の構成要素は図1で説明した内容と同一なので、説明を省略する。
【0059】
平均・分散推定部50を構成する各要素の処理機能を説明する前にビタビ復号における逐次演算により平均期待値χij及と雑音分散値σ2ijの算出方法を先に説明する。BM演算に用いる期待値期待値xijと誤差予測値αijは逐次演算により算出した平均期待値χij及と雑音分散値σ2ijから算出する。
【0060】
図14はビタビ復号での平均期待値と分散の逐次算出を示す図である。ビタビ復号における逐次演算による平均期待値と分散を算出する方法として知られているので、簡単に述べる。
(1)各時刻kとその時刻における再生信号ykがビタビ復号され、γ時間後に復号データが得られる。復号データdk’はγ時間後の再生信号ykに対応する復号データである。ここで、k’=k+γである。
【0061】
以下の手順は代表して復号データ“00”について説明する、残りのデータ“01”、“10”、“11”についても同じ計算を行なう。
(2)シフトレジスタにより遅延したγ時間遅延した再生信号yk’と期待値初期値x00より、DEMUX(データ分配)により復号データが“00”になった時、それに対応する遅延再生信号yk’をメモリ“00”に振り分ける。メモリ“00”では1段目に再生信号を保持し、1〜L断目に保持する情報は順次シフトし、L段目の情報は破棄される。
(3)平均計算“00”として、メモリに保持する1〜L段の値を式10により平均した結果を出力する。計算結果が時刻k’+1=k+γ+1における平均期待値であり、BM演算の期待値として用いる。
【0062】
【数10】
(4)分散計算“00”ではメモリに保持する1〜L段の値から式11で求めた結果を出力する。この逐次演算により算出した分散を用い、後述するα計算部でBM演算で用いる誤差予測値を算出する。
【0063】
【数11】
上記の平均期待値χij及び分散σ2ijを基に平均・分散推定部50の各構成要素の説明を行なう。
1)遅延器51:再生信号ykを遅延する。
2)DEMUX52:復号データを分配する。
3)メモリ“00”53−1〜メモリ“11”53−4:各々データ“00”〜データ“11”を保持する。
4)平均・分散計算“00”54−1〜平均・分散計算“11”54−4:平均期待値χijと分散σ2ijを算出し、平均期待値χijは期待値xijとしてBM演算器31に送り、分散σ2ijはα計算部に送る。
5)α計算部55:MPU56からの誤差予測値αijの初期値及び各平均・分散計算部54−nで算出した各分散値σij2(i=0,1、j=0,1)より時刻k’+1=k+γ+1における誤差予測値α01、α10を式12で算出する。α00、α11は遷移が無いためα00=α11=0とする。
【0064】
【数12】
3)MPU56:期待値xijの初期値、誤差予測値αijの初期値を設定する。
【0065】
BM演算器31は平均・分散推定部51で算出した期待値、誤差予測値を用いてブランチメリックの演算を行なう。
【0066】
即ち、実施例1でのBM演算ではパーシャルレスポンス等化に従った理論値を期待値xijとし、トレーニングにより発生した誤差予測値αijを用いるのに対し、実施例2では、ビタビ復号の逐次演算により算出した再生信号に近い平均期待値χijと雑音分散から算出した期待値xijと誤差予測値αijによりBM演算を行なう例を示している。
【0067】
以上、図1、図2、図5はPR(1,1)型のパーシャルレスポンスの例で説明したが、PR(1,1)型以外、例えばPR(1,2,1)、PR(1,0,−1)などのパーシャルレスポンス方式についても適用できる。
【0068】
また、ビタビ復号を例にとって説明したが、本発明はブランチメトリックを用いて復号するもの全てに適応可能であり、例えば、BCJR(Bahl,Cocke,Jelnek,Raviv)アルゴリズム、Max−log−MAP(Maximum A Posteriori)アルゴリズムあるいはSOVA(Soft−Output Viterbi−Algorithm)等で適用可能である。
(付記1)
パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号器であって、
前記雑音予測復号器は、
パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生する期待値発生手段と、
前記出力信号と前記期待値の誤差の予測値を発生する誤差予測値発生手段と、
前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なう手段と、
を備えたことを特徴とする雑音予測復号器。
(付記2)
付記1記載の前記誤差予測値発生手段は、
前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生する手段と、
前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を発生する手段とで構成することを特徴とする付記1記載の雑音予測復号器。
(付記3)
付記1記載の前記雑音予測復号器は、
前記ビタビ復号での逐次演算により平均期待値と雑音分散値を発生する手段と、
前記発生した平均期待値を前記期待値として発生する手段と、
前記発生した雑音分散値から前記誤差予測値を発生する手段と、
を備えたことを特徴とする付記1記載の雑音予測復号器。
(付記4)
パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号化方法であって、
前記雑音予測復号化方法は、
パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生し、
前記出力信号と前記期待値の誤差の誤差予測値を発生し、
前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なうことを特徴とする雑音予測復号化方法。
(付記5)
付記4記載の前記雑音予測復号化方法において、
前記発生する誤差予測値は前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生し、
前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を判定し、
前記所定の誤り以下の誤差予測値により前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なうことを特徴とする付記4記載の雑音予測復号化方法。
(付記6)
付記4記載の前記雑音予測復号化法において、
前記発生する誤差予測値は前記ビタビ復号での逐次演算により雑音分散値を算出し、
前記算出した雑音分散値から前記誤差予測値を算出して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なうことを特徴とする付記4記載の雑音予測復号化方法。
(付記7)
付記4記載の前記雑音予測復号化方法において、
前記発生する期待値はパーシャルレスポンス等化の状態遷移理論値あるいは前記ビタビ復号で逐次演算により発生した平均期待値であることを特徴とする付記4記載の雑音予測復号化方法。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は本発明のPRML基本構成を示す図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態のPRMLの構成(その1)を示す図である。
【図3】図3は本発明のトレーニングによる誤差予測値生成方法を示す図である。
【図4】図4は本発明(実施例1)の雑音予測復号器と従来復号器の性能比較例を示す図である。
【図5】図5は本発明の一実施形態のPRMLの構成(その2)を示す図である。
【図6】図6は従来のPRMLの構成ブロック図を示す図である。
【図7】図7はパーシャルレスポンスPR(1,1)の等化波形を示す図である。
【図8】図8はパーシャルレスポンスPR(1,1)の状態遷移を示す図である。
【図9】図9は最尤復号器(ビタビ復号器)のトレリス線図を示す図である。
【図10】ビタビ復号器のパス選択原理を示す図である。
【図11】図11は磁気記録チャネルにおける媒体雑音の発生を示す図である。
【図12】図12は本発明対象の磁化遷移ジッタの影響を受けるブランチのある場合のトレリス線図である。
【図13】図13は磁気記録チャネルにおけるPR(1,1)等化波形分布を示す図である。
【図14】図14はビタビ復号での平均期待値と分散の逐次算出を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 PRML
2 パーシャルレスポンス等化器
3 雑音予測復号器(基本構成)
4 雑音予測復号器(実施例1)
5 雑音予測復号器(実施例2)
6 PRML(従来構成)
7 最尤復号器(ビタビ復号器)
21 記録/再生部
22 波形等化器
31 BM演算器
32 期待値生成部
33 誤差予測値生成部
34 ACS
35 パスメトリックメモリ
36 パスメモリ
41 期待値/誤差予測値レジスタ
42 判定/α値設定部
43 データ比較/誤りカウント部
44 MPU(実施例1)
50 平均・分散推定部
51 遅延器
52 DEMUX
53−1〜53−4 メモリ
54−1〜54−4 平均・分散計算
55 α計算部
56 MPU(実施例2)
71 BM演算器(従来構成)
72 期待値レジスタ
73 MPU(従来構成)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号器であって、
前記雑音予測復号器は、
パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生する期待値発生手段と、
前記出力信号と前記期待値の誤差の予測値を発生する誤差予測値発生手段と、
前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なう手段と、
を備えたことを特徴とする雑音予測復号器。
【請求項2】
請求項1記載の前記誤差予測値発生手段は、
前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生する手段と、
前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を発生する手段とで構成することを特徴とする請求項1記載の雑音予測復号器。
【請求項3】
請求項1記載の前記雑音予測復号器は、
前記ビタビ復号での逐次演算により平均期待値と雑音分散値を発生する手段と、
前記発生した平均期待値を前記期待値として発生する手段と、
前記発生した雑音分散値から前記誤差予測値を発生する手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の雑音予測復号器。
【請求項4】
パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号化方法であって、
前記雑音予測復号化方法は、
パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生し、
前記出力信号と前記期待値の誤差の誤差予測値を発生し、
前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なうことを特徴とする雑音予測復号化方法。
【請求項5】
請求項4記載の前記雑音予測復号化方法において、
前記発生する誤差予測値は前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生し、
前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を判定し、
前記所定の誤り以下の誤差予測値により前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なうことを特徴とする請求項4記載の雑音予測復号化方法。
【請求項1】
パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号器であって、
前記雑音予測復号器は、
パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生する期待値発生手段と、
前記出力信号と前記期待値の誤差の予測値を発生する誤差予測値発生手段と、
前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なう手段と、
を備えたことを特徴とする雑音予測復号器。
【請求項2】
請求項1記載の前記誤差予測値発生手段は、
前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生する手段と、
前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を発生する手段とで構成することを特徴とする請求項1記載の雑音予測復号器。
【請求項3】
請求項1記載の前記雑音予測復号器は、
前記ビタビ復号での逐次演算により平均期待値と雑音分散値を発生する手段と、
前記発生した平均期待値を前記期待値として発生する手段と、
前記発生した雑音分散値から前記誤差予測値を発生する手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の雑音予測復号器。
【請求項4】
パーシャルレスポンス等化器とビタビ復号を行なう雑音予測復号器で構成し、記録データパターンに依存した有色雑音と記録データパターンに依存しない白色雑音が含まれる記録再生装置の記録再生処理を行なうPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の雑音予測復号化方法であって、
前記雑音予測復号化方法は、
パーシャルレスポンス等化器の出力信号の期待値を発生し、
前記出力信号と前記期待値の誤差の誤差予測値を発生し、
前記出力信号の期待値と前記誤差予測値を使用して前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なうことを特徴とする雑音予測復号化方法。
【請求項5】
請求項4記載の前記雑音予測復号化方法において、
前記発生する誤差予測値は前記記録データを再生する前に所定の記録データパターンを発生し、
前記発生した所定の記録パターンに対する復号結果が所定の誤り以下となる誤差予測値を判定し、
前記所定の誤り以下の誤差予測値により前記ビタビ復号のブランチメトリックの演算を行なうことを特徴とする請求項4記載の雑音予測復号化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−198300(P2008−198300A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33952(P2007−33952)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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