説明

離型フィルムロール

【課題】セラミックシートを製造する際の加熱張力下における寸法変化率が工程適正に優れるとともに、セラミックスラリーを乾燥する際の熱収縮バランスにも優れ、同時に、平坦性に優れ、セラミックシート製造用離型フィルムとして求められる性能を十分に満足することのできる離型フィルム、およびかかる離型フィルムを得ることができる離型フィルムロールを提供すること。
【解決手段】特定の荷重下において特定の伸縮率を有し、無荷重下において特定の熱伸長率を有する離型フィルムをロール状に巻き取った離型フィルムロールにおいて、ロール表層のビッカース硬度を特定の数値範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルムロールに関する。さらに詳しくは、セラミックシート製造用離型フィルムとして求められる性能を十分に満足する離型フィルムを提供することができる、離型フィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムは、積層セラミックコンデンサー、セラミック基板等の各種セラミック電子部品製造時に使用するセラミックシート(グリーンシート)等を製造する際のキャリアフィルムとして用いられる。
【0003】
積層セラミックコンデンサーを製造する際に使用するセラミックシートは、例えば、キャリアフィルムの上に、セラミック粉体とバインダー剤等を溶媒に分散させたセラミックスラリーをリバースロール法等により塗布し、溶媒を加熱乾燥除去してセラミック層を形成した後、当該セラミック層上に内部電極となる金属膜を蒸着あるいは印刷等により形成し、金属膜/セラミック層/キャリアフィルム複合体を作成し、かかる複合体からキャリアフィルムを剥離除去することにより製造される。
【0004】
次に、積層セラミックコンデンサーは、上記のようにして製造した金属膜/セラミック層複合体を、所望の寸法で積層し、熱プレス後、矩形状に切断することによりチップ状の積層体を得て、このチップ状の積層体を焼成し、焼成体の所定の表面に外部電極を形成することにより得ることができる。
【0005】
ところで、近年、積層セラミックコンデンサー等のコンデンサーの分野においては、小型化・大容量化に伴う回路部品の高密度化が要求されている。したがって、使用するセラミックシートの厚みも益々薄膜化し、内部電極をさらに多層化する必要が生じている。
【0006】
しかしながら、セラミックシートの厚みを薄くしたり、積層枚数を増やしたりすると、セラミックシートのわずかな厚み斑ですら、内部電極の位置ずれを引き起こす原因となってしまう。
【0007】
そこで、セラミックシート製造時のキャリアフィルムの熱変形を小さくし、製造されるセラミックシートの厚み斑を低減させることが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、120℃における1.47MPa応力下での寸法変化率の絶対値が、長手方向および幅方向共に0.3%以下である離型フィルムであれば、加熱処理時の熱変形が非常に小さくなるため、得られるセラミックシートの厚み斑を抑制できることが記載されている。
【0008】
しかしながら、セラミックシートは、通常100℃付近の温度下で、幅方向には把持されることなく乾燥される。このため、セラミックシート製造の際に用いられるキャリアフィルムは、セラミック乾燥時には、幅方向への張力がほとんどかからない状態で収縮する。したがって、特許文献1に記載されたように、張力がかかった状態における長手方向と幅方向のそれぞれの熱収縮率が低い離型フィルムを用いたのみでは、セラミックの乾燥に至るまでの全ての工程におけるキャリアフィルムの収縮斑までは解消することはできず、いまだなお、製造されるセラミックシートには厚み斑が発生し、積層時に内部電極の位置ずれが起こる問題が残されていた。
【0009】
また、セラミックシートの厚みが薄い場合には、キャリアフィルムの表面粗度が高いと、ピンホールの発生による不良、あるいは、セラミックシート剥離時にセラミックシートの破断等を生じさせ、生産性の低下を引き起こす。すなわち、セラミックシートが薄い場合には、従来は問題とならなかった程度のキャリアフィルム表面のキズや異物等の微細な表面欠点ですら、得られるセラミックシートのピンホール欠点等の原因として顕在化してしまう。
【0010】
したがって、昨今のコンデンサー分野の小型化・大容量化に伴って、セラミックシートを製造するためのキャリアフィルムには、さらに高い精度の寸法安定性、および、さらに高いレベルの表面凹凸の平滑化が要求されている。
【特許文献1】特開2000−343663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、厚みの薄い(1μm以下)セラミックシートの製造においては、上記のような高精度の寸法安定性、および高レベルの平滑化(所謂表面粗さ)のみならず、フィルムの平坦性(フラットネスとも言う)をより高度に制御することが必要である。すなわち、キャリアフィルムの平坦性が悪い場合は、その上に塗布したセラミックスラリーの塗布厚み斑が不良となり、それによってセラミックシートの厚み斑が不良となり、積層セラミックコンデンサーにおいては容量が不均一なものとなってしまう。
【0012】
ところで、上記のようなキャリアフィルムは、一般的にはロール状に巻き取られた形態で用いられるが、表面に離型層を有するため、滑りやすく、ロールの巻き取り中あるいは運搬中等に巻きずれ等の問題が生じやすい。そのため、従来、上記のようなキャリアフィルムをロール状に巻き取る際には、巻きずれが生じないよう、ロール硬度が高くなるような条件を採用するのが一般的である。しかしながら、ロール硬度が高すぎると、キャリアフィルムがロール形状に追従しやすくなり、微細なロール形状の不具合によりキャリアフィルムが伸びてしまい、平坦性に劣るものとなってしまう。
【0013】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、セラミックシートを製造する際の加熱張力下における寸法変化率が工程適正に優れるとともに、セラミックスラリーを乾燥する際の熱収縮バランスにも優れ、同時に平坦性に優れ、セラミックシート製造用離型フィルムとして求められる性能を十分に満足することのできる離型フィルム、およびかかる離型フィルムを得ることができる離型フィルムロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の荷重下において特定の伸縮率を有し、無荷重下において特定の熱伸長率を有する離型フィルムをロール状に巻き取った離型フィルムロールにおいて、ロール表層のビッカース硬度を特定の数値範囲とすることによって、平坦性に優れ、セラミックシートを製造する際に用いられる離型フィルムに求められる性能を満足する離型フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムをロール状に巻き取った離型フィルムロールであって、前記離型フィルムは、長手方向に0.2MPa以上4.0MPa以下の張力を加えた場合の100℃における長手方向の伸縮率SMDが、下記式(1)を満たし、長手方向に垂直な方向に0.01MPaの張力を加えた場合の100℃における長手方向に垂直な方向の伸縮率STDが、下記式(2)を満たし、無荷重下での100℃における長手方向の熱伸長率HSMDが、下記式(3)を満たし、無荷重下での100℃における長手方向に垂直な方向の熱伸長率HSTDが、下記式(4)を満たし、かつ前記長手方向の熱伸長率HSMDと前記長手方向に垂直な方向の熱伸長率HSTDとが、下記式(5)を満たし、前記離型フィルムロールは、ロール表層のビッカース硬度(Hv)が0以上450以下である離型フィルムロールである。
[式1]
0.0961X−0.45≦SMD≦0.0961X−0.25 ・・・(1)
(式(1)中、Xは、フィルム単位面積にかかる張力(MPa)であり、Xは0.2MPa以上4.0MPa以下の値を示す。)
[式2]
−0.6≦STD≦−0.2 ・・・(2)
[式3]
−0.4≦HSMD≦−0.1 ・・・(3)
[式4]
−0.6≦HSTD≦−0.2 ・・・(4)
[式5]
HSMD>HSTD ・・・(5)
【0016】
さらに本発明は、離型フィルムの、離型層を有する側の表面の最大高さRmax、および離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxが、それぞれ100nm以上600nm以下であること、離型層が、離型層の重量に対して0.5質量%以上10質量%以下の界面活性剤を含有すること、離型層が、ポリエステルフィルムの製造工程中に形成されることのうち、少なくともいずれか1つの態様を具備することによって、さらに優れた離型フィルムロールを得ることができる。
また、本発明は、上記離型フィルムロールから得られた離型フィルムを包含する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の離型フィルムロールから得られる離型フィルムは、セラミックシートを製造する際の加熱張力下における寸法変化率が工程適正に優れるとともに、セラミックスラリーを乾燥する際の熱収縮バランスに優れ、同時に平坦性に優れる。すなわち、セラミックシート製造用離型フィルムとして求められる性能を十分に満足している。したがって、かかる離型フィルムをセラミックシート製造用のキャリアフィルムとして用いた場合には、搬送工程のみならず、乾燥工程においてもキャリアフィルムの熱収縮バランスに優れ、同時に平坦性に優れるため、得られるセラミックシートの厚み斑を高度に抑制することができる。その結果、本発明の離型フィルムロールから得られる離型フィルムを用いて、セラミックシートを製造し、かかるセラミックシートを用いてセラミックコンデンサーを製造した場合には、容量が均一なセラミックコンデンサーを得ることができる。
【0018】
また、本発明における好ましい態様を有する離型フィルムロールは、それを形成する離型フィルムの表面性に優れるため、ロール硬度を低くしても巻きずれが生じにくい。また、かかる離型フィルムロールから得られる離型フィルムは、表面性に優れるため、得られるセラミックシートにおけるピンホール発生を抑制することができる。したがって、本発明における好ましい態様によれば、セラミックシートおよびセラミックコンデンサーの生産性を向上することができる。
【0019】
さらに、本発明における好ましい態様を有する離型フィルムロールは、それから得られる離型フィルムの離型層が界面活性剤を含有するため、剥離帯電防止性に優れる。したがって、本発明における好ましい態様によれば、セラミックシートを積層する際の位置ずれを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<離型フィルム>
本発明における離型フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、特定の荷重下において特定の伸縮率を有し、無荷重下において特定の熱伸長率を有するものである。以下に、本発明における離型フィルムの物性および構成について説明する。
【0021】
[長手方向の伸縮率(SMD)]
本発明における離型フィルムは、離型フィルムの長手方向に0.2MPa以上4.0MPa以下の張力を加えた場合の100℃における長手方向の伸縮率SMDが、下記式(1)を満たす。セラミック層/離型フィルム複合体は、通常、100℃付近の温度下で張力がかかった状態で搬送される。したがって、温度条件として100℃を選択することにより、より実際の工程に即した状況判断が可能となる。
[式1]
0.0961X−0.45≦SMD≦0.0961X−0.25 ・・・(1)
(式(1)中、Xは、フィルム単位面積にかかる張力(MPa)であり、Xは0.2MPa以上4.0MPa以下の値を示す。)
【0022】
長手方向の伸縮率SMDが上記式(1)の左辺の値より小さい場合は、セラミック層/離型フィルム複合体の搬送張力に対してフィルムの長手方向の収縮応力が大きくなり、その結果、長手方向に不均一に収縮し、セラミックシートの厚み斑を引き起こしてしまう。他方、長手方向の伸縮率SMDが上記式(1)の右辺の値より大きい場合は、セラミック層/離型フィルム複合体の搬送張力に対してフィルムの長手方向の収縮応力が小さいため、フィルムの平坦性が悪くなり、セラミックシートの厚み斑を引き起こしてしまう。長手方向の伸縮率SMDが上記式(1)を満足する範囲にあれば、セラミック層/離型フィルム複合体の搬送張力に対して、長手方向の収縮応力が適正なバランスを有し、得られるセラミックシートの長手方向の厚み斑を抑制することができる。このような観点から、本発明における離型フィルムは、離型フィルムの長手方向に0.3MPa以上2.5MPa以下の張力を加えた場合の100℃における長手方向の伸縮率SMDが、上記式(1)を満たす態様がさらに好ましい。
【0023】
なお、長手方向の伸縮率SMD、および後記する幅方向の伸縮率STDは、下記式によって求める。式中、Mは、昇温開始前のフィルムの長手方向または幅方向の長さ、Mは、昇温開始後100℃に到達した時点のフィルムの同方向の長さを示す。すなわち、伸縮率SMDおよび伸縮率STDは、マイナスの場合にはフィルムが収縮していることを示し、プラスの場合にはフィルムが伸長していることを示す。
伸縮率(SMD、STD)=(ΔM/M)×100(%)
ΔM=M−M
【0024】
[長手方向に垂直な方向(幅方向)の伸縮率(STD)]
本発明における離型フィルムは、離型フィルムの幅方向に0.01MPaの張力を加えた場合の100℃における幅方向の伸縮率STDが、下記式(2)を満たす。ここで、温度条件として100℃を選択することにより、上記と同様に、より実際の工程に即した状況判断が可能となる。なお、伸縮率STDは、上記の式によって、熱処理前後のフィルムの幅方向の長さから求める。
[式2]
−0.6≦STD≦−0.2 ・・・(2)
【0025】
幅方向の伸縮率STDが−0.6%よりも小さい場合は、セラミック層/離型フィルム複合体の搬送工程において、フィルムの幅方向の収縮が大きく、セラミックシートの厚み斑を引き起こしてしまう。他方、幅方向の伸縮率STDが−0.2%よりも大きい場合において、伸縮率STDが0よりも大きい(フィルムが伸長する)場合は、セラミック層/離型フィルム複合体の搬送中にフィルムの幅方向の伸長によりフィルムの平坦性が崩れ、セラミックシートの厚み斑を引き起こしてしまう。また、セラミック層の収縮と離型フィルムの伸長とのバランスが悪く、セラミック層が部分的に剥離して浮いてしまう等の問題が生じる。伸縮率STDが−0.2%を超え0%以下の場合は、セラミック層の収縮と離型フィルムの収縮とのバランスが悪く、セラミック層が離型フィルムから部分的に剥離して浮いてしまう等の問題が生じる。
【0026】
[長手方向の熱伸長率(HSMD)および長手方向に垂直な方向(幅方向)の熱伸長率(HSTD)]
本発明における離型フィルムは、無荷重下での100℃における長手方向の熱伸長率HSMDが、下記式(3)を満たし、同時に、無荷重下での100℃における幅方向の熱伸長率HSTDが、下記式(4)を満たし、かつ、長手方向の熱伸長率HSMDと幅方向の熱伸長率HSTDとが、下記式(5)を満たす。
[式3]
−0.4≦HSMD≦−0.1 ・・・(3)
[式4]
−0.6≦HSTD≦−0.2 ・・・(4)
[式5]
HSMD>HSTD ・・・(5)
【0027】
フィルムの長手方向の熱伸長率HSMDと幅方向の熱伸長率HSTDがそれぞれ上記の範囲にあり、かつ、長手方向の熱伸長率HSMDを幅方向の熱伸長率HSTDよりも大きくすることにより、セラミックスラリー塗布後にセラミック層に含まれる溶媒を加熱乾燥除去する際において、離型フィルムの長手方向の収縮と幅方向の収縮のバランスがとれ、その結果、得られる乾燥セラミック層の厚み斑を低減することができる。
【0028】
なお、長手方向の熱伸長率HSMD、および幅方向の熱伸長率HSTDは、下記式によって求める。式中、Lは、熱処理前のフィルムの長手方向または幅方向の長さ、Lは、熱処理後のフィルムの同方向の長さを示す。すなわち、熱伸長率HSMDおよび熱伸長率HSTDは、マイナスの場合にはフィルムが収縮していることを示し、プラスの場合にはフィルムが伸長していることを示す。
熱伸長率(HSMD、HSTD)=(ΔL/L)×100(%)
ΔL=L−L
【0029】
[最大高さ(Rmax)]
本発明における離型フィルムは、離型層を有する側の表面の最大高さRmax、および離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxが、それぞれ100nm以上600nm以下であることが好ましい。最大高さRmaxは、JIS規格(B0601:表面粗さ−定義および表示、B0651:触針表面粗さ測定器)に準拠し、三次元表面粗さ計を使用して求められる粗さ曲線から、基準長さを抜き取った部分の最大高さをいう。
【0030】
かかる最大高さRmaxは、離型フィルムの、離型層を有する側の表面、および離型層を有さない側の表面における最大突起高さを示し、セラミックシートのピンホール欠点の指標となる。具体的には、離型層を有する側の表面の最大高さRmaxが600nmを超える場合は、当該最大高さRmaxが600nmを超える部分に形成されたのセラミック層の厚みが薄くなり、結果としてピンホール欠点が生じやすくなる。また、離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxが600nmを超える場合は、セラミックスラリーを塗布、乾燥後に巻き取る際に、当該最大高さRmaxが600nmを超える部分がセラミック層に押し付けられ、セラミック層表面に凹部が形成され、当該凹部が薄くなり、結果としてピンホール欠点が生じやすくなる。また、これらによって、ピンホール欠点には至らないとしても、セラミックシートにおいて極端に薄い部分が形成されることとなり、セラミックコンデンサーの欠点となってしまう。
【0031】
すなわち、本発明における離型フィルムの、離型層を有する側の表面、および離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxを上記数値範囲とすることによって、表面平滑性に優れることから、得られるセラミックシートの表面凹凸形状を抑制することができ、厚み斑のより抑制されたセラミックシートを得ることができる。その結果、セラミックシートにおけるピンホール発生をより抑制することができる。また、セラミックシートの剥離性がより良好なものとなる。さらに、得られるセラミックシートを用いてセラミックコンデンサーを製造した場合には、内部電極の位置ずれをより抑制することができる。このような観点から、最大高さRmaxの上限は、さらに好ましくは550nm以下、特に好ましくは500nm以下である。
【0032】
また、かかる最大高さRmaxは、離型フィルムロールにおける巻きずれの指標となる。すなわち、本発明におおける離型フィルムの、離型層を有する側の表面の最大高さRmax、および離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxを上記数値範囲とすることによって、エアー抜け性に優れることから、かかる離型フィルムをロール状に巻き取る際に巻きずれが生じにくい。最大高さRmaxが低すぎる場合は、エアー抜け性が低くなりすぎる傾向にあり、巻きずれが生じやすくなる傾向にある。このような観点から、最大高さRmaxの下限は、さらに好ましくは200nm以上、特に好ましくは300nm以上である。
【0033】
なお、最大高さRmaxは、溶融ポリマーを濾過する条件や、ポリエステルフィルムに含有される粒子の態様等を調整することにより達成することができる。
【0034】
<離型フィルムの製造方法>
上記のような物性を有する本発明における離型フィルムを製造する方法につき、以下に説明する。本発明における離型フィルムは、以下に述べる未延伸ポリエステルフィルム成形工程、一次延伸工程、インライン塗布工程、二次延伸工程、および、熱固定工程、を必須の工程とし、これらの工程を適宜調整することにより製造されるものである。
【0035】
[未延伸ポリエステルフィルム成形工程]
本発明における離型フィルムを得るにあたり、先ず、未延伸ポリエステルフィルム成形工程において、後に記載するポリエステル原料を押し出し成形して、未延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0036】
押し出し成形にあたっては、押出し機を用いて、ダイより押し出された溶融シートを冷却ロールにて冷却固化して未延伸ポリエステルフィルムを得る。このとき、ポリマー中の粗大粒子を減らす目的において、溶融押出しに先立ち、線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10μm以上30μm以下の不織布型フィルター、好ましくは10μm以上20μm以下の不織布型フィルターを用いて、溶融ポリマーを濾過することが好ましい。このように、ポリマー中の粗大粒子の個数を減らすことによって、離型フィルムの、離型層を有する側の表面、および離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxを100nm以上600nm以下の数値範囲とすることができる。
【0037】
さらに、かかる濾過処理の後、ダイの口金の直前で、平均目開き10μm以上50μm以下、好ましくは15μm以上30μm以下のフィルターを用いて、溶融ポリマーを濾過することが、ポリエステルの熱劣化物をさらに高度に取り除くことができるという観点から好ましく、最大高さRmax値をさらに好ましい数値範囲とすることができる。
【0038】
また、未延伸ポリエステルフィルムの平坦性を向上させるという観点において、ダイより押し出された溶融シートと冷却ロールとの密着性を高めることが好ましく、例えば、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0039】
[一次延伸工程]
一次延伸工程においては、上記の未延伸ポリエステルフィルム成形工程により得られた未延伸ポリエステルフィルムを、長手方向に延伸(以下、縦延伸と呼称する場合がある。)することにより、長手方向一軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0040】
このとき、一次延伸工程に先立ち、あらかじめ(Tg−10)℃以上(Tg−2)℃以下の温度条件下で予熱しておくことが、均一な厚みを有するとともに、所望の長手方向の伸縮率SMDおよび熱伸長率HSMDを有する離型フィルムを得るために好ましい。なお、ここでTgは、未延伸ポリエステルフィルムのガラス転移点温度(単位:℃)を示す。
【0041】
一次延伸工程においては、任意に予熱が施された未延伸ポリエステルフィルムを、(Tg+2)℃以上(Tg+40)℃以下の温度条件下で、長手方向に3.3倍以上4.0倍以下の範囲で延伸する。延伸倍率が3.3倍より小さい場合は、長手方向の熱伸長率HSMDがプラス値となる傾向にあり、すなわちフィルムが伸長する傾向にあり好ましくない。他方、延伸倍率が4.0倍より大きい場合は、長手方向の伸縮率SMDが小さくなりすぎる傾向にあり好ましくない。また、長手方向の熱伸長率HSMDが小さくなりすぎる傾向にあり好ましくない。延伸倍率を3.3倍以上4.0倍以下とすることは、長手方向の伸縮率SMDおよび熱伸長率HSMDを、所望の数値範囲とするためにも重要である。
【0042】
[インライン塗布工程]
インライン塗布工程においては、長手方向一軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に、インラインにて、離型層形成組成物(以下、塗剤と呼称する場合がある。)を塗布することにより、塗膜を有するポリエステルフィルムを得る。
インライン塗布工程において用いられる塗剤としては、後記する水系の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を含む水性塗液を用いることが好ましい。
【0043】
また、塗布方法としては、特に限定されるものではなく、水性エマルションの塗布方法として既知の任意の塗工技法を用いることができる。例えば、ローラーコーティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング、リバースグラビアコーティング、または、スロットコーティング等の方法により、一次延伸工程で得られた長手方向一軸延伸ポリエステルフィルム上に塗剤を塗布することができる。
【0044】
本発明における離型フィルムは、塗剤をインラインで塗布することに特徴がある。本発明における離型フィルムは、塗剤をインラインで塗布し、その後に二軸目の延伸がなされ、さらに熱固定がなされることで離型フィルムに対する熱処理が完了する。そして、その後はオフラインにて熱がかからない。このため、離型フィルムの製造の目標値として定めた物性、とりわけ、長手方向の伸縮率SMD、幅方向の伸縮率STDや、長手方向の熱伸長率HSMD、幅方向の伸縮率HSTDを、そのまま維持した状態で、実際の使用に用いることができる。すなわち、本発明における離型フィルムは、塗剤をインラインで塗布することによって、離型フィルム製造にあたっての物性の目標値がそのまま離型フィルムの最終的な物性となるため、寸法安定性に優れた離型フィルムとなる。
【0045】
一方、一度製膜したポリエステルフィルムを使用して、オフラインで離型層を形成するための塗剤を塗布する方法では、塗剤に含まれる溶媒を乾燥除去し、離型層となる樹脂を硬化させる工程を経る必要がある。離型層となる樹脂を硬化する工程では、150℃付近の温度をかける必要があるため、オフラインで離型層を形成した離型フィルムは、離型フィルムの長手方向および幅方向の両者において、伸縮率が大きくなり、セラミック層−離型フィルム複合体の搬送工程においてフィルムが伸びてしまい好ましくない。
【0046】
なお、本発明における離型フィルムにおいては、インラインにて塗剤を塗布して塗膜を得た後には、塗布後の予熱、二軸目の延伸、および、熱固定の各工程で加えられる熱のみにより、塗膜からの溶媒を乾燥除去し、塗剤に含まれる樹脂を硬化させ、そして、離型層となる樹脂をポリエステルフィルムに密着させることができる。したがって、塗膜を乾燥硬化させる工程を特別に設ける必要がなく、このため、寸法安定性に優れた離型フィルムが得られるとともに、離型フィルムを得るための工程を煩雑にすることもない。
【0047】
また、本発明における離型フィルムは、塗剤をインラインで、一軸延伸ポリエステルフィルムに塗布することに特徴がある。このような態様とすることによって、離型層とポリエステルフィルムとの密着性をより高くすることができる。また、離型層が含有する界面活性剤の種類、および添加量を調整しやすくなり、剥離帯電防止性の向上効果を高くすることができる。
【0048】
なお、塗剤の固形分濃度は、0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がさらに好ましく、1.5質量%以上10質量%以下が特に好ましい。塗剤の固形分濃度が0.5質量%未満である場合は、ポリエステルフィルム表面に塗剤を塗工する際に、塗剤がポリエステルフィルム表面ではじかれてしまい、均一に塗工できない傾向にある。他方、30質量%を超える場合は、得られる離型層に曇りが生じたり、また、塗剤がゲル化しやすくなったり、コーティングの費用がかかるわりには効果が低くなるという問題が生じる場合がある。
【0049】
[二次延伸工程]
二次延伸工程においては、インライン塗布工程により得られた塗膜を有するポリエステルフィルムを、幅方向に延伸(以下、横延伸と呼称する場合がある。)することにより、二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0050】
このとき、二次延伸工程に先立ち、あらかじめ(Tg+10)℃以上(Tg+30)℃以下の温度条件下で補助加熱を施すと、塗剤に含まれる溶媒を十分に乾燥することができ、その後に行う二次延伸工程において均一に延伸を行うことができるため好ましい。
【0051】
二次延伸工程においては、(Tg+10)℃以上(Tg+80)℃以下、好ましくは補助加熱温度以上(Tg+70)℃以下の温度条件下で、幅方向に3.0倍以上5.0倍以下の範囲で延伸する。
【0052】
なお、本発明における一次延伸工程の延伸倍率(以下、縦延伸倍率と呼称する場合がある。)と二次延伸工程における延伸倍率(以下、横延伸倍率と呼称する場合がある。)との関係は、縦延伸倍率≦横延伸倍率であることが好ましい。縦延伸倍率≦横延伸倍率の関係にあれば、長手方向の伸縮率SMD、幅方向伸縮率STD、および、長手方向の熱伸長率HSMD、幅方向の熱伸長率HSTDを、所望の値に制御することが容易となる。
【0053】
[熱固定工程]
熱固定工程においては、二次延伸工程によって得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを、熱固定することにより、離型フィルムを得る。
熱固定の温度条件は、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの種類により異なるが、一般に、(Tg+70)℃以上(Tm)℃以下の温度範囲にて行うことが好ましい。例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合は、180℃以上235℃以下の温度範囲で熱固定することが好ましい。また、ポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレートである場合には、185℃以上240℃以下の温度範囲で熱固定することが好ましい。この温度範囲で熱固定することにより、所望の伸縮率SMDおよびSTD、熱伸長率HSMDおよびHSTDを得ることができる。なお、ここでTmは、ポリエステルの融点(単位:℃)を示す。
【0054】
また、熱固定は1ゾーンのみで実施するのでなく、複数のゾーンに分けて段階的に実施することが望ましく、好ましくは3ゾーン以上として温度を制御して行うことが望ましい。例えば、熱固定を3ゾーンで実施する場合には、第1ゾーンは180℃以上210℃以下、第2ゾーンは第1ゾーンよりも高く、3ゾーンの中で最大の温度となるように設定する。そして、第3ゾーンは第2ゾーンよりも低い温度とし、180℃以上200℃以下に設定することが好ましい。このように第2ゾーンを最高温度とし、第3ゾーンをそれよりも低い温度として熱固定することにより、得られる離型フィルムの平坦性を良好に保ち、セラミックシートの厚み斑を低減することができる。
【0055】
なお、熱固定時間は、特に限定されるものではなく、例えば1秒以上60秒以下程度行うことが好ましい。
また、離型フィルムの幅方向の熱伸長率HSTDを所望の値とするために、熱固定工程の最後のゾーンにおいて、レール幅を2%以上5%以下程度縮めてフィルムを弛緩処理することが好ましい。
【0056】
[冷却工程]
本発明における離型フィルムは、熱固定工程の後に、冷却工程を設けることが好ましい。冷却工程を設けることにより、得られる離型フィルムの平坦性により優れる。
冷却工程においては、冷却温度を(Tg−30)℃以上(Tg+20)℃以下の範囲として実施することが好ましく、上記の熱固定工程と同様に、複数のゾーンに分けて行うことが好ましい。冷却温度が上記数値範囲よりも低い場合は、熱伸長率HSMD、HSTDがともに小さくなりすぎる場合がある。他方、冷却温度が上記数値範囲より高い場合は、フィルムの長手方向の中心線付近では物性が各方向に均等であっても、長手方向の側縁部では斜め配向が強くなる現象を生じるため好ましくない。なお、長手方向の側縁部が斜め配向となる現象は、上記の熱固定温度の好適範囲の下限側でも起こりうるが、その程度は比較的小さい。
【0057】
<ポリエステルフィルム>
[ポリエステル]
本発明に用いられるポリエステルフィルムを形成するポリエステルとしては、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。
【0058】
本発明に用いられるポリエステルフィルムがホモポリエステルからなる場合は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。ここで、用いられる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。また、用いられる脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。本発明に用いられるポリエステルフィルムの代表的なホモポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等を挙げることができる。
【0059】
一方、本発明に用いられるポリエステルフィルムを形成するポリエステルが、共重合ポリエステルの場合は、全酸成分に対して、20モル%以下の第三成分となるジカルボン酸および/またはグリコールを共重合させた共重合体であることが好ましい。
【0060】
共重合ポリエステルのモノマー成分となるジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸等)等を挙げることができ、これらの一種または二種以上を用いることができる。また、共重合ポリエステルのモノマー成分となるグリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等を挙げることができ、これらの一種または二種以上を用いることができる。
【0061】
本発明に用いられるポリエステルフィルムの材料としては、これらの中でも、80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート、あるいは、80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレート単位であるポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。一般にポリエチレンテレフタレートのTgは、78℃付近と低温であることから、100℃付近の温度にて処理されるセラミックシートの製造用キャリアフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合には、工程中における寸法安定性が特に問題となっていた。これに対して、本発明における離型フィルムは、寸法安定性に優れることから、Tgをはるかに超える温度においての使用であっても、離型フィルムとしての性能を十分に発揮することができる。
【0062】
[添加剤]
本発明に用いられるポリエステルフィルムの材料となるポリエステルには、フィルムとした場合の易滑性付与を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類としては、易滑性付与が可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。
【0063】
また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されているような、耐熱性の有機粒子を用いてもよい。耐熱性有機粒子のまた別の例としては、シリコーン樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等からなる粒子を挙げることもできる。さらには、ポリエステルの製造工程中にて、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0064】
上記のような易滑性を付与するための粒子の形状は、特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等の何れを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限されるものではない。さらに、これらの粒子は、必要に応じて2種類以上を併用することもできる。
【0065】
なお、粒子の平均粒径としては、0.1μm以上1μm以下が好ましく、0.2μm以上0.5μm以下がさらに好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合は、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分となることがある。他方、1μmを超える場合は、得られるポリエステルフィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、離型フィルムの、離型層を有する側の表面の最大高さRmax、および離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxを100nm以上600nm以下とすることが困難となる。
【0066】
また、易滑性を付与するために配合する粒子の含有量は、ポリエステルフィルム中において、0.01質量%以上2質量%以下が好ましく、0.01質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。粒子の含有量が0.01質量%未満の場合は、フィルムの易滑性が不十分となる傾向にある。他方、2質量%を超える場合は、フィルム表面の平滑性が不十分となる傾向にある。
【0067】
ポリエステルフィルム中に粒子を含有させる方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において、配合したい粒子を添加することが可能であるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後に粒子を配合し、その後、重縮合反応を進めることが好ましい。また、ベント付き混練押出機を用いて、エチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、あるいは、混練押出機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法等によっても行うことができる。
【0068】
[層構成]
本発明におけるポリエステルフィルムの構成は、特に限定されるものではなく、単層構成であっても積層構成であってもよい。また、積層構成である場合には、2層、3層構成以外にも、本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよい。積層構成としても特に限定されるものではなく、例えば、A/B、A/B/A、A/B/C、A/B/A´等の積層構成を挙げることができる。
【0069】
[ポリエステルフィルムの厚み]
本発明におけるポリエステルフィルム全体の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは9μm以上50μm以下、さらに好ましくは15μm以上38μm以下、特に好ましくは25μm以上31μm以下である。
【0070】
<離型層>
[シリコーン樹脂組成物]
本発明における離型層は、エマルジョンとして安定であることから、主にシリコーン樹脂組成物から形成されることが好ましい。シリコーン樹脂組成物とは、1分子中に不飽和基または水酸基の少なくともいずれか一方を少なくとも2個有するポリシロキサンからなる主剤、および、1分子中にケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも2個有するハイドロジェンポリシロキサンからなる架橋剤を構成成分として含むものである。本発明においては、かかるシリコーン樹脂組成物を含む水性塗液を塗布し、塗膜を形成し、かかる塗膜を硬化させて離型層を形成する。
【0071】
本発明におけるシリコーン樹脂組成物は、水系のシリコーン樹脂組成物であることが好ましい。水系のシリコーン樹脂組成物は、エマルジョンとした際の安定性に優れるため、結果として塗剤の安定性を高くすることができる。また、後述する界面活性剤の選択肢が広がり、例えば水酸基をより多く含む界面活性剤を使用できるようになり、剥離帯電防止性の向上効果を高くすることができる。なお、水系の塗剤とすることは、環境の面からも好ましい。
【0072】
また、本発明においては、シリコーン樹脂組成物を硬化させる方法として、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化等を例示することができるが、中でも熱硬化が好ましく、すなわちシリコーン樹脂組成物としては、熱硬化性シリコーン樹脂組成物が好ましい。本発明においては、前述のように、インライン塗布工程において塗膜を有するポリエステルフィルムを得て、その後の熱固定工程において熱処理がなされる。シリコーン樹脂組成物が熱硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、かかる熱固定工程における熱処理によって架橋反応を促進させ、シリコーン樹脂組成物の硬化を十分に進行させることができ、離型性に優れる等の優れた特性を有する離型層を得ることができる。
【0073】
以上のことから、本発明におけるシリコーン樹脂組成物としては、水系の熱硬化性シリコーン樹脂組成物が特に好ましい。なお、ここで「主に」とは、離型層の重量に対して、75質量%以上がシリコーン樹脂組成物から形成されることを表すこととする。
【0074】
シリコーン樹脂組成物としては、付加重合タイプ(主剤が、1分子中に不飽和基を少なくとも2個有するポリシロキサンからなる場合)および縮合タイプ(主剤が、1分子中に水酸基を少なくとも2個有するポリシロキサンからなる場合)のいずれであってもよいが、付加重合タイプの場合は、塗剤に触媒としての白金を含むもの、縮合タイプの場合は、塗剤に触媒としての錫を含むものであることが好ましい。このうち、剥離特性に優れるという観点から、付加重合タイプのものが好ましい。また、架橋剤は、同時に使用する主剤の製造者が推奨するものを好ましく用いることができる。
【0075】
以下に、本発明において好適に用いることのできる水系の熱硬化性シリコーン樹脂組成物の具体例を示す。
1) Wacker Silicone(ミシガン州、Adrian)の水性の400Eシリコーン樹脂組成物。ポリシロキサン、白金触媒、および、メチル水素ポリシロキサンから成るV20架橋剤系を含む。
2) Dow Corning(ミシガン州、Midland)の水性のX2−7720シリコーン樹脂組成物。メチルビニルポリシロキサン、および、白金ポリシロキサンから成るX2−7721架橋剤系を含むメチル水素ポリシロキサンから成る。
3) PCL(Phone−Poulenc Inc., サウスカロライナ州、Rock Hill)の水性のPC−105シリコーン樹脂組成物。メチルビニルポリシロキサン、白金ポリシロキサンから成るPC−95の触媒成分を含むメチル水素ポリシロキサンから成る。
4) PCL PC−107水性のシリコーン樹脂組成物(PC−105と類似)。上記のPC−95架橋剤を含む。
5) PCL PC−188水性のシリコーン樹脂組成物(PC−105と類似)。上記のPC−95架橋剤を含む。
なお、これらの水系の熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、脱イオン水を加える等によって固形分濃度が適宜調整され、塗剤として用いるこことができる。
【0076】
[シランカップリング剤]
さらに、本発明における離型層は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、ポリエステル樹脂およびシリコーン樹脂組成物のいずれか、または双方と結合する反応基を有する有機ケイ素低分子化合物が好ましく、かかる反応基として、メトキシ基、エトキシ基、シラノール基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミノ基、メルカプト基、クロル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の少なくとも1種以上を有している有機ケイ素低分子化合物が好ましい。
【0077】
かかるシランカップリング剤の含有量は、離型層の固形分重量に対して、0.1質量%以上20質量%が好ましく、1質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、3質量%以上7質量%以下が特に好ましい。含有量を上記数値範囲とすることによって、離型層の密着性を高くすることができる。
【0078】
[界面活性剤]
本発明における離型層は、離型層の固形分重量に対して0.5質量%以上10質量%以下の界面活性剤を含有することが好ましい。離型層が界面活性剤を上記数値範囲の量含有することによって、ロール状の離型フィルムを巻き出す際の剥離帯電、および離型フィルムからセラミックシートを剥離する際の剥離帯電を抑制することができる。また、積層セラミックコンデンサーを製造する際に、内部電極の位置ずれを抑制することができる。さらに、塗剤においては、界面活性剤を添加することにより、ポリエステルフィルム表面に対する塗剤の濡れ性が良好となり、その結果、塗剤の局所的なハジキ欠点等が抑制され、均一な塗膜を得ることができるばかりか、セラミックシートを剥離する際に発生するピンホール欠点を抑制することができる。含有量が少なすぎる場合は、剥離帯電が高くなる傾向にある。また、ポリエステルフィルム表面に対して、塗剤の濡れ性が不十分となる傾向にある。他方、多すぎる場合は、セラミックシートに対する剥離力が重剥離となる傾向にある。このような観点から、界面活性剤の含有量は、離型層の全乾燥重量を基準として、さらに好ましくは1.0質量%以上7.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以上5.0質量%以下である。
【0079】
本発明における界面活性剤としては、イオン系界面活性剤(アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤)、および非イオン系界面活性剤(ノニオン系界面活性剤)の、いずれの界面活性剤を用いることができるが、中でもノニオン系界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤等のイオン系界面活性剤を用いた場合は、これらの界面活性剤が離型層を形成するためのシリコーン樹脂組成物に対して触媒毒となり、シリコーン樹脂組成物が十分に硬化しない場合がある。
【0080】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン型、多価アルコール脂肪酸エステル型、多価アルコールアルキルエーテル型、含窒素型等の界面活性剤、およびノニオン系のシリコーン系界面活性剤、ノニオン系のフッ素系界面活性剤等を例示することができる。
【0081】
ポリオキシエチレン型界面活性剤としては、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、ポリ(オキシエチレン)アルキルフェニルエーテル、ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)アルキルエーテル、ポリ(オキシエチレン)脂肪酸エステル、ポリ(オキシエチレン)ソルビタン脂肪酸エステル等を例示することができる。中でも、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等の、炭素数12以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルを好ましく例示することができる。かかるアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を例示することができる。多価アルコールアルキルエーテル型界面活性剤としては、アルキルポリグリコキシド等を例示することができる。含窒素型界面活性剤としては、アルキルジエタノールアミド、アルキルアミンオキシド等を例示することができる。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン等を例示することができる。また、かかる変性シリコーンの構造としては、側鎖変形型、両末端変性型(ABA型)、片末端変性型(AB型)、両末端側鎖変性型、直鎖ブロック型(ABn型)、分岐型等に分類されるが、いずれの構造のものであってもよい。
【0082】
本発明における界面活性剤としては、中でも、ポリオキシエチレン型界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が好ましい。これらは、よりシリコーン樹脂組成物の触媒毒となりにくく、また十分な濡れ性を発現することができる。特に好ましくはシリコーン系界面活性剤であり、さらに触媒毒となりにくく、離型特性をより優れたものとすることができ、また剥離帯電防止性の向上効果をより高くすることができる。
【0083】
なお、本発明における離型層の厚み(すなわち乾燥後の厚み)は、特に限定されるものではないが、好ましくは20nm以上90nm以下である。一般に、20nm未満では、軽剥離力等の、離型層としての効果を発揮することが困難となり、他方、90nmを超える場合は、費用の割に得られる効果が少なくなる。
【0084】
<離型フィルムロール>
本発明の離型フィルムロールは、上記で得られた離型フィルムをロール状に巻き取ったものである。離型フィルムロールとしては、上述した離型フィルムの製造工程により直接得られる親ロールであってもよいし、かかる親ロールを顧客要求の幅および長さにスリットされたスリットロールであってもよい。
【0085】
本発明の離型フィルムロールは、ロール表層のビッカース硬度(Hv)が0以上450以下である。ロール表層のビッカース硬度(Hv)を上記数値範囲とすることによって、平坦性に優れた離型フィルムを得ることができる。また、離型フィルムロールにおいては、巻きずれや皺が生じにくい。
【0086】
一般に、フィルムをロール状に巻き取ると、フィルム厚みが厚い部分は、巻き径が増大するにつれて巻き締まり、所謂バンド状の欠点となる場合がある。かかる部分においては、フィルムは伸びてしまい、フィルムの平坦性が損なわれる。この傾向は、ロール表層のビッカース硬度(Hv)が高くなるにつれてより顕著なものとなる。すなわち、ロール表層のビッカース硬度(Hv)が450を超える場合は、巻き締まりが強すぎ、フィルムの伸びが大きすぎ、フィルムの平坦性に劣るものとなる。このような観点から、ロール表層のビッカース硬度(Hv)の上限は、好ましくは430以下、さらに好ましくは420以下、特に好ましくは410以下である。他方、ロール表層のビッカース硬度(Hv)が低すぎる場合は、巻きずれが生じやすくなる傾向にあるが、このような問題が生じない限り低いことが好ましい。このような観点から、ロール表層のビッカース硬度(Hv)の下限は、好ましくは340以上、さらに好ましくは360以上、特に好ましくは380以上である。
【0087】
上記のようなロール表層のビッカース硬度(Hv)は、離型フィルムを巻き取る際の巻き取り張力やニップ圧力等の巻き取り条件を調整することにより達成することができる。
巻き取り張力としては、初期張力を49N/m以下とする必要がある。初期張力を上記数値範囲とすることによって、ロール表層のビッカース硬度(Hv)を450以下とすることができる。また、巻き取り中の巻き込みエアー量が適度な量となり、フィルムの厚み斑の影響を低減することができ、すなわち巻き締まりを抑制することができ、平坦性により優れる。また巻きずれを抑制することができる。初期張力が高すぎる場合は、ロール表層のビッカース硬度(Hv)が高くなりすぎる傾向にある。また、巻き取り中の巻き込みエアー量が少なくなる傾向にあり、平坦性に劣る傾向にある。このような観点から、初期張力の上限は、好ましくは48N/m以下、さらに好ましくは47N/m以下である。他方、初期張力が低すぎる場合は、巻き取りが不安定となり、フィルムが蛇行しやすくなる傾向にあり、ロール端面が不揃いとなったり、皺が発生したり、スリット不良となったりする傾向にあるが、これらの問題が生じない限り低いことが好ましい。このような観点から、初期張力の下限は、好ましくは30N/m以上である。なお、かかる初期張力とは、実質的に製品となる離型フィルムをロール状に巻き始める際の張力を示し、必ずしもコアに巻き始めた直後の張力を示すものではない。すなわち、一般的に、コア表面の異物や傷等の影響を少なくする目的で、コアに巻き始めた直後から数m乃至数十mの長さまでの巻き取り張力を特に高くする手法が用いられるが、このような部分における巻き取り張力を示すものではない。
【0088】
また、張力テーパーをつけて、初期張力に対して最終張力を低くする必要がある。具体的には、初期張力に対する最終張力の比率(張力テーパー率)を80%以下とする必要がある。張力テーパー率を上記数値範囲とすることによって、ロール表層のビッカース硬度(Hv)を低くしたまま、巻きずれを抑制することができる。張力テーパー率が高すぎる場合は、ロール表層のビッカース硬度(Hv)が高くなりすぎる傾向にある。このような観点から、張力テーパー率の上限は、好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下である。他方、ロール硬度の観点からは、張力テーパー率は低いことが好ましいが、張力テーパー率が低すぎる場合は、最終張力が低くなりすぎ、ロール端面ずれ等の問題が生じやすくなる傾向にある。このような観点から、張力テーパー率の下限は、好ましくは30%以上である。本発明においては、初期張力から最終張力までの間、巻き取り張力が49N/mを超えない限りにおいて、巻き取り張力が増加する部分があってもよいが、ロールの主たる部分において、巻き取り張力を連続的に漸減させる態様が好ましく、一定の割合で連続的に漸減させる態様が好ましい。張力テーパーを上記のような態様とすることによって、ロールにおいて、巻き取り方向の内部応力を常に0以上とすることができ、横方向の折れ皺状欠点(Tバー)やスキマ等の不具合を抑制することができる。なお、ここで、ロールの主たる部分とは、ロール径方向に、コアの表層から5mm以上外側であって、ロールの表層から5mm以上内側の部分を示す。
【0089】
以上のような初期張力および張力テーパー率から、最終張力は39N/m以下とする必要がある。最終張力を上記数値範囲とすることによって、ロール表層のビッカース硬度(Hv)を450以下とすることができる。最終張力が高すぎる場合は、ロール表層のビッカース硬度(Hv)が高くなりすぎる傾向にある。このような観点から、最終張力の上限は、好ましくは38N/m以下、さらに好ましくは30N/m以下である。他方、ロール硬度の観点からは、最終張力は低いことが好ましいが、最終張力が低すぎる場合は、巻き取りが不安定となり、フィルムが蛇行しやすくなる傾向にあり、ロール端面ずれ等の問題が生じやすくなる傾向にある。このような観点から、最終張力の下限は、好ましくは10N/m以上、さらに好ましくは15N/m以上である。
【0090】
ニップ圧力としては、初期ニップ圧力を200N/m以下とする必要がある。初期ニップ圧力を上記数値範囲とすることによって、ロール表層のビッカース硬度(Hv)を450以下とすることができる。また、巻き取り中の巻き込みエアー量が適度な量となり、フィルムの厚み斑の影響を低減することができ、すなわち巻き締まりを抑制することができ、平坦性により優れる。また巻きずれを抑制することができる。初期ニップ圧力が高すぎる場合は、ロール表層のビッカース硬度(Hv)が高くなりすぎる傾向にある。また、巻き取り中の巻き込みエアー量が少なくなる傾向にあり、平坦性に劣る傾向にある。このような観点から、初期ニップ圧力の上限は、好ましくは180N/m以下、さらに好ましくは160N/m以下、特に好ましくは120N/m以下である。他方、初期ニップ圧力が低すぎる場合は、巻き取りが不安定となる傾向にあり、巻きずれや皺が発生しやすくなる傾向にある。このような観点から、初期ニップ圧力の下限は、好ましくは50N/m以上、さらに好ましくは80N/m以上である。
【0091】
また、ニップ圧力テーパーは、つけなくても良いが、−10%以上10%以下のニップ圧力テーパー率でニップ圧力テーパーをつけることによって、皺やピンプルの発生、ロールの端面ずれを抑制することができる。
【0092】
以上のような初期ニップ圧力およびニップ圧力テーパー率から、最終ニップ圧力は220N/m以下であればよいが、最終ニップ圧力が高すぎる場合は、ロール表層のビッカース硬度(Hv)が高くなりすぎる傾向にある。このような観点から、最終ニップ圧力の上限は、好ましくは170N/m以下、さらに好ましくは150N/m以下、特に好ましくは140N/m以下である。他方、最終ニップ圧力が低すぎる場合は、巻き取りが不安定となる傾向にある。このような観点から、最終ニップ圧力の下限は、好ましくは50N/m以上、さらに好ましくは70N/m以上、特に好ましくは90N/m以上である。
【0093】
<離型フィルムの用途>
本発明の離型フィルムは、樹脂シート、セラミックシート等のシート成形用フィルム、あるいは、ラベル用、医療用、事務用品用等の粘着用フィルムのセパレーターとして用いることができる。
【0094】
とりわけ、本発明の離型フィルムは、セラミックシート製造の際に離型フィルムに求められる性能を十分に満足していることから、セラミックシート製造用のキャリアフィルムとして好適に用いることができる。本発明の離型フィルムを用いてセラミックシートを製造すると、薄膜のセラミックシートが精度よく得られ、また、得られた薄膜のセラミックシートは、小型化・大容量化に伴って内部電極の多層化が求められている積層セラミックコンデンサーに好適に用いることができる。
【0095】
なお、セラミックシートの製造にあたっては、用意したセラミックスラリーを、本発明の離型フィルムの離型層表面に塗布し、セラミックスラリーに含まれる溶媒を乾燥除去すればよい。セラミックスラリーの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の塗布方法を用いることができる。例えば、セラミック粉体とバインダー剤等を溶媒に分散させたセラミックスラリーを、リバースロール法により塗布し、加熱乾燥により溶媒を除去する方法を用いることができる。用いるバインダー剤としては特に限定されず、例えば、ポリビニルブチラール等を用いることができる。また、用いる溶媒としても特に限定されず、例えば、エタノール、トルエン等を用いることができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。
【0097】
<測定・評価方法>
実施例および比較例においては、以下の項目について、以下の方法によって各測定・評価を実施した。
【0098】
(1)粒子の平均粒径
島津製作所製、商品名:CP−50型セントリフューグル パーティクルサイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)を用いて測定を行った。測定により得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子と、その存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径である「等価球直径」を読み取り、この値を粒子の平均粒径(単位:μm)とした(Book「粒度測定技術」日刊工業新聞発行、1975年、頁242〜頁247参照)。
【0099】
(2)最大高さ(Rmax)
JIS規格(B0601:表面粗さ−定義および表示、B0651:触針表面粗さ測定器)に準拠し、3次元表面粗さ計(小坂研究所社製、商品名:SE−3AK)により、倍率:2万倍、走査ピッチ:2μm、走査長:1mm、走査本数:100本、カットオフ:0.25mmの条件にて、その面積の最大高さを求め、これを10点測定した結果の平均値をRmax(単位:nm)とした。
【0100】
(3)荷重下の伸縮率(SMD、STD
TMA(セイコーインスツルメンツ株式会社製、商品名:SS6000)を用い、湿度:50%RH下において、サンプル幅:4mm、チャック間:20mmにて、長手方向に、単位面積あたりそれぞれ0.3MPa、1.0MPa、2.5MPaの荷重をかけて、開始温度:30℃から、昇温速度:10℃/分で昇温させた。100℃に達したときのフィルムの伸縮挙動から、下記式にて0.3MPa、1.0MPa、2.5MPaの各荷重条件下における伸縮率(SMD)(単位:%)を求めた。同様に、幅方向には0.01MPaの荷重をかけて測定を実施し、かかる荷重条件下における伸縮率(STD)(単位:%)を求めた。なお、伸縮率SMD、STDは、各々10枚の試料について測定し、それらの平均値を求めた。
伸縮率(SMD、STD)=(ΔM/M)×100 (%)
ΔM=M−M
上記式中、Mは、熱処理前のフィルムの長手方向または幅方向の長さ、Mは、熱処理後のフィルムの同方向の長さを示す。すなわち、伸縮率SMDおよび伸縮率STDは、マイナスの場合にはフィルムが収縮していることを示し、プラスの場合にはフィルムが伸長していることを示す。
【0101】
(4)無荷重下の熱伸長率(HSMD、HSTD
温度100℃に設定されたオーブン中に、予め正確な長さを測定した長さ約30cm四方のフィルムサンプルを懸垂し、無荷重下に30分間保持処理した。30分経過後、オーブンからフィルムサンプルを取り出し、室温に戻した後に、その寸法変化を計測し、下記式にて熱伸長率(HSMD、HSTD)(単位:%)を求めた。なお、伸縮率HSMD、HSTDは、各々10枚の試料について測定し、それらの平均値を求めた。
熱伸長率(HSMD、HSTD)=(ΔL/L)×100 (%)
ΔL=L−L
上記式中、Lは、熱処理前のフィルムの長手方向または幅方向の長さ、Lは、熱処理後のフィルムの同方向の長さを示す。すなわち、熱伸長率HSMDおよび熱伸長率HSTDは、マイナスの場合にはフィルムが収縮していることを示し、プラスの場合にはフィルムが伸長していることを示す。
【0102】
(5)セラミックシートの表面平滑性評価(実用特性代用評価)
幅450mm、長さ2000mの離型フィルムのロールを準備した。かかる離型フィルムの、離型層側の表面に、下記組成からなるセラミックスラリーを、ダイコーターを用いて、60m/分のフィルム搬送速度で塗布し、乾燥後の厚みが5μmとなるセラミック層を形成し、長さ1900mのセラミック層/離型フィルム複合体を得て、ロール状に巻き取った。その後、離型フィルムからセラミック層を剥離することによりセラミックシートを得た。得られたセラミックシート(測定対象面積:1m)の両面について、走査型レーザー顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて表面観察を行い、下記の評価基準にて表面平滑性の評価を実施した。
[セラミックスラリー組成]
・チタン酸バリウム(富士チタン社製、平均粒径:0.7μm):100部
・ポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックBM−S):30部
・可塑剤(フタール酸ジオクチル):5部
・トルエン/エタノール混合溶媒(混合比率:6:4):200部
[表面平滑性評価基準]
○:深さ0.5μm以上のクレーター(凹み)が2個/m以下
(実用上、問題ないレベル)
△:深さ0.5μm以上のクレーター(凹み)が2個/mを超え6個/m未満
(実用上、問題となる場合があるレベル)
×:深さ0.5μm以上のクレーター(凹み)が6個/m以上
(実用上、問題あるレベル)
【0103】
(6)離型フィルムの剥離帯電評価
上記(5)の評価を実施する際に、離型フィルムのロールを巻き出す際の剥離帯電量を測定した。ロールから巻き出した直後の離型フィルム表面(ロールにおいて、巻き内側の表面)から、垂直上方、距離5cmの位置に、集中電位測定器(春日電機株式会社製、商品名:静電電位測定器SV−10)を設置して、温度:22℃、湿度:44%RHの雰囲気下において剥離帯電量を測定した。離型フィルムのロールの全長2000mを巻き出す間に、100m毎に、少なくとも15点剥離帯電量を計測し、それらの平均値を離型フィルムの剥離帯電量(単位:kV)とした。
【0104】
(7)セラミックシートの剥離帯電評価
上記(5)と同様の方法で、セラミック層/離型フィルム複合体を得た。得られたセラミック層/離型フィルム複合体のセラミック層の表面に、金属膜として、スクリーン印刷法によって、乾燥後の厚みが3μmのパターン化されたNi電極印刷層を形成した。次いで、得られた金属膜/セラミック層/離型フィルム複合体を、300mm×300mmの大きさに断裁し、枚葉サンプルを得た。得られた枚葉サンプルについて、20m/分の剥離速度にて、離型フィルムから金属膜/セラミック層複合体を剥離し、かかる剥離における剥離帯電量を測定した。剥離した金属膜/セラミック層複合体の、セラミック層の表面から距離5cmの位置に、集中電位測定器(春日電機株式会社製、商品名:静電電位測定器SV−10)を設置して、温度:22℃、湿度:44%RHの雰囲気下において、剥離帯電量を測定した。測定は、枚葉サンプル100枚について実施し、それらの平均値をセラミックシートの剥離帯電量(単位:kV)とした。
【0105】
(8)セラミックシートの剥離評価
上記(7)における枚葉サンプルについて、離型フィルムから金属膜/セラミック層複合体を剥離した際に、かかる剥離の状況を下記の評価基準により評価を実施した。
[剥離評価基準]
◎:剥離力が適度であり、金属膜/セラミック層が破断せず、離型フィルムにセラミック層の残存が見られない(実用上全く問題ないレベル)
○:剥離力が僅かに重いか、金属膜/セラミック層に僅かな破断が見られたか、離型フィルムにセラミック層の残存が僅かに見られた(実用上全く問題ないレベル)
×:剥離力が重過ぎるか、金属膜/セラミック層に破断が見られたか、離型フィルムにセラミック層の残存が見られた(実用上問題あるレベル)
【0106】
(9)セラミックシートの積層評価(実用特性代用評価)
上記(7)と同様の方法で得られた、断裁および剥離後の金属膜/セラミック層複合体を、CCDカメラにより位置を検出する方式のスタッキングマシンを用いて10層に積層し、積層体を得た。得られた積層体について、1層目の金属膜/セラミック層複合体を基準として、各層のずれの量を、顕微鏡を用いて測定し、得られた値を位置ずれ(単位:μm)とした。評価は、下記の評価基準により実施した。なお、積層は、離型フィルムを剥離した後、直ちに実施した。
[位置ずれ評価基準]
◎:位置ずれが200μm未満(実用上全く問題ないレベル)
○:位置ずれが200μm以上400μm未満(実用上問題ないレベル)
×:位置ずれが400μm以上(実用上問題あるレベル)
【0107】
(10)ロール表層のビッカース硬度(Hv)
JIS Z2244の手法にしたがって以下の方法にて測定した。測定は、実施例にて得られた離型フィルムロールの表層において、端面から5mmの部分を除き、幅方向に10点測定し、最大値をロール表層のビッカース硬度(Hv)とした。
【0108】
(11)巻きずれ
実施例にて得られた離型フィルムロールについて、端面の巻きずれの状況を、下記の評価基準により評価した。
◎:巻きずれが1mm以下(全く問題なく好適に使用できるレベル)
○:巻きずれが1mmを超え2mm以下(問題なく使用できるレベル)
△:巻きずれが2mmを超え3mm以下(僅かに問題があるが使用できるレベル)
×:巻きずれが3mmを超える(問題があり使用できないレベル)
【0109】
(12)平坦性
離型フィルムフィルムロールから、長さ2mのフィルムサンプルを採取し、ロールに巻かれていたときにロールの表面側であった側を上にして、水平で平坦な台の上に広げる。10分静置後、フィルムサンプルの全表面を観察し、該表面に残存する皺(フルート、上記台よりフィルムが浮いている部分)の長さ(単位:cm)を計測し、その合計を測定面積(単位:m)で除してフラットネス(単位:cm/m)を算出した。平坦性の評価は、下記の評価基準により実施した。
◎:フラットネスが28cm/m以下(実用上全く問題ないレベル)
○:フラットネスが28cm/mを超え、33cm/m以下(実用上問題ないレベル)
×:フラットネスが33cm/mを越える(実用上問題あるレベル)
【0110】
<実施例1>
[ポリエステルの製造]
ジメチルテレフタレート100部とエチレングリコール70部との混合物に、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水塩を、得られるポリエステル中のマンガンの元素量が80ppmとなるように添加し、内温を150℃から徐々に上げながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、三酸化アンチモンを0.03部添加した。引き続き、系内に混入した水を充分留出させた後、内添フィラー(易滑剤)として、平均粒径0.6μmの合成炭酸カルシウム粒子を、得られるポリエステルの重量に対して0.2質量%になるように添加し、充分に撹拌した。次いで、反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行うことにより、固有粘度0.65(35℃、オルトクロロフェノール中)のポリエチレンテレフタレート組成物を得た。
【0111】
[塗剤の調製]
87部の脱イオン水に、攪拌下において、主剤として10部のシリコーンエマルション400E(Wacker Silicones社製、シリコーン:ビニル基を有するメチルポリシロキサン、架橋剤が添加されている場合は、白金触媒と早熟な反応を防止するための禁止剤が併用されている、固形分濃度50質量%)、1部の架橋剤V72(Wacker Silicones社製、メチル水素ポリシロキサンのエマルジョンであり、メチルシロキサンの中で二重結合と反応する、固形分濃度50質量%)、0.3部のシランカップリング剤(信越シリコーン社製、商品名:KBM−403)、および、ノニオン系の界面活性剤として0.15部のポリオキシエチレンオレイルエーテル(花王株式会社製、商品名:エマルゲン404)(S1成分)を添加することにより塗剤を得た。なお、塗剤の固形分濃度は6.0質量%であった。また、この塗剤から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
主剤:84.1質量%
架橋剤:8.4質量%
シランカップリング剤:5.0質量%
界面活性剤:2.5質量%
【0112】
[未延伸ポリエステルフィルム成形工程]
上記で得られたポリエチレンテレフタレート組成物を、ポリエチレンテレフタレート組成物の水分率が0.05質量%以下となるまで、170℃で5時間乾燥した。引き続き、乾燥されたポリエチレンテレフタレート組成物を押し出し機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターを用いて高精度ろ過した後、ダイより押し出して溶融シートとし、かかる溶融シートを静電密着法にて冷却ドラムに接触急冷させることにより、厚さ450μmの未延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0113】
[一次延伸工程]
得られた未延伸ポリエステルフィルムを、75℃で予熱し、引き続き、低速・高速のロール間にてフィルム温度105℃で長手方向に3.6倍に延伸し、その後、急冷することにより長手方向一軸延伸ポリエスエルフィルムを得た。
【0114】
[インライン塗布工程]
次いで、得られた長手方向一軸延伸ポリエステルフィルムに、上記で調整した塗剤を、得られる離型フィルムにおける離型層の厚みが40nmとなるよう塗布することにより、塗膜を有するポリエステルフィルムを得た。なお、塗剤の塗布は、未延伸ポリエステルフィルム成形工程において冷却ドラムに接触しなかった面に施した。
【0115】
[二次延伸工程]
続いて、得られた塗膜を有するポリエステルフィルムをステンターに供給し、105℃、115℃の2ゾーンにおいて、それぞれ2秒間ずつ予備加熱した後、120℃、130℃、145℃、155℃の4ゾーンにおいて、それぞれ2秒間ずつ、合計で横延伸倍率が4.1倍となるように均一に延伸し、二軸延伸ポリエステルフィルムとした。
【0116】
[熱固定工程]
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムにつき、210℃、225℃、195℃の3ゾーンにおいて、それぞれ2秒間、合計6秒間の熱固定を実施し、最後の195℃の熱固定ゾーンにおいては、幅方向に2.5%の弛緩処理を実施することにより、全厚み31μmの離型フィルムを得た。ここで得られた離型フィルムをスリット前の離型フィルムとして、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
【0117】
[スリット工程]
巻き取り条件として、初期張力47N/m、張力テーパー率60%(一定)、ニップ圧力150N/m、ニップ圧力テーパー率100%、速度180m/分とし、450mm幅2000m長の離型フィルムロールを得た。得られた離型フィルムロールについて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
また、得られた離型フィルムロールの表層から500mの位置でサンプリングを行い、離型フィルムを得た。ここで得られた離型フィルムをスリット後の離型フィルムとして、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
<実施例2>
各工程における各条件を以下の通りとする以外は、実施例1と同様にして、スリット前の離型フィルム、離型フィルムロール、スリット後の離型フィルムを得た。これらを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
[塗剤の調製]
界面活性剤を用いなかった。なお、塗剤の固形分濃度は5.9質量%であった。また、この塗剤から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
主剤:86.2質量%
架橋剤:8.6質量%
シランカップリング剤:5.2質量%
界面活性剤:0質量%
[二次延伸工程]
横延伸倍率を4.5倍とした。
[熱固定工程]
弛緩処理における弛緩量を4.0%とした。
【0120】
<実施例3>
各工程における各条件を以下の通りとする以外は、実施例2と同様にして、スリット前の離型フィルム、離型フィルムロール、スリット後の離型フィルムを得た。これらを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
[塗剤の調製]
界面活性剤として、ポリオキシエチレンオレイルエーテルに替えて、0.06部のノニオン系のシリコーン系界面活性剤であるポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(日本エマルジョン株式会社製、商品名:EMALEX SS−5051)(S2成分)を用いた。なお、塗剤の固形分濃度は6.0質量%であった。また、この塗剤から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
主剤:85.4質量%
架橋剤:8.5質量%
シランカップリング剤:5.1質量%
界面活性剤:1.0質量%
【0121】
<実施例4>
各工程における各条件を以下の通りとする以外は、実施例3と同様にして、スリット前の離型フィルム、離型フィルムロール、スリット後の離型フィルムを得た。これらを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
[塗剤の調製]
界面活性剤(S2成分)の添加量を0.15部とした。なお、塗剤の固形分濃度は6.0質量%であった。また、この塗剤から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
主剤:84.1質量%
架橋剤:8.4質量%
シランカップリング剤:5.0質量%
界面活性剤:2.5質量%
[スリット工程]
スリット工程における巻き取り条件を、表1に示す通りとした。
【0122】
<実施例5〜8>
スリット工程における巻き取り条件を、表1に示す通りとする以外は、実施例4と同様にして、スリット前の離型フィルム、離型フィルムロール、スリット後の離型フィルムを得た。これらを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
【0123】
<実施例9>
各工程における各条件を以下の通りとする以外は、実施例3と同様にして、スリット前の離型フィルム、離型フィルムロール、スリット後の離型フィルムを得た。これらを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
[塗剤の調製]
界面活性剤(S2成分)の添加量を0.3部とした。なお、塗剤の固形分濃度は6.2質量%であった。また、この塗剤から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
主剤:82.0質量%
架橋剤:8.2質量%
シランカップリング剤:4.9質量%
界面活性剤:4.9質量%
【0124】
<実施例10>
各工程における各条件を以下の通りとする以外は、実施例3と同様にして、スリット前の離型フィルム、離型フィルムロール、スリット後の離型フィルムを得た。これらを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
[塗剤の調製]
界面活性剤(S2成分)の添加量を0.6部とした。なお、塗剤の固形分濃度は6.5質量%であった。また、この塗剤から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
主剤:78.1質量%
架橋剤:7.8質量%
シランカップリング剤:4.7質量%
界面活性剤:9.4質量%
【0125】
<比較例1>
各工程における各条件を以下の通りとする以外は、実施例2と同様にして、スリット前の離型フィルム、離型フィルムロール、スリット後の離型フィルムを得た。これらを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
[一次延伸工程]
縦延伸倍率を3.0倍とした。
【0126】
<比較例2>
各工程における各条件を以下の通りとする以外は、実施例2と同様にして、スリット前の離型フィルム、離型フィルムロール、スリット後の離型フィルムを得た。これらを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。
[一次延伸工程]
縦延伸倍率を4.8倍とした。
[二次延伸工程]
横延伸倍率を3.0倍とした。
【0127】
<比較例3>
塗剤を塗布しない以外は、実施例1と同様にして、離型層を有さない二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次いで、付加重合タイプのシリコーン樹脂組成物(東芝シリコーン社製、商品名:TPR−6721)のトルエン溶液(固形分濃度:3質量%)に、Pt触媒(東芝シリコーン社製、商品名:CM670)を、付加重合タイプのシリコーン樹脂組成物の固形分100質量部に対して1質量部となるよう加えて、離型剤塗液を調製した。なお、この離型剤塗液には界面活性剤は含まれていない。
【0128】
引き続き、上記で得られた離型層を有さない二軸延伸ポリエステルフィルムのロールを巻き出し、巻き出された二軸延伸ポリエステルフィルムの幅方向における中央部に、上記で調製した離型剤塗液を、塗布量(wet)6g/mとなるよう塗布し、下方および上方の空気流吹き出し口の間隔がそれぞれ38cmの空気浮上搬送式乾燥装置を用いて、搬送張力:2000kPa、乾燥温度:160℃、乾燥時間:16秒間で乾燥させて離型層を形成し、離型層の乾燥硬化後の重量が0.2g/mの離型フィルムを得た。得られた離型フィルムを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。なお、離型剤塗液の塗布は、未延伸ポリエステルフィルム成形工程において冷却ドラムに接触しなかった面に施した。
【0129】
<比較例4>
スリット工程における巻き取り条件を、表1に示す通りとする以外は、実施例4と同様にして、スリット前の離型フィルム、離型フィルムロール、スリット後の離型フィルムを得た。これらを用いて、各種の測定・評価を行った結果を表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムをロール状に巻き取った離型フィルムロールであって、
前記離型フィルムは、
長手方向に0.2MPa以上4.0MPa以下の張力を加えた場合の100℃における長手方向の伸縮率SMDが、下記式(1)を満たし、
長手方向に垂直な方向に0.01MPaの張力を加えた場合の100℃における長手方向に垂直な方向の伸縮率STDが、下記式(2)を満たし、
無荷重下での100℃における長手方向の熱伸長率HSMDが、下記式(3)を満たし、
無荷重下での100℃における長手方向に垂直な方向の熱伸長率HSTDが、下記式(4)を満たし、かつ
前記長手方向の熱伸長率HSMDと前記長手方向に垂直な方向の熱伸長率HSTDとが、下記式(5)を満たし、
前記離型フィルムロールは、
ロール表層のビッカース硬度(Hv)が0以上450以下である離型フィルムロール。
[式1]
0.0961X−0.45≦SMD≦0.0961X−0.25 ・・・(1)
(式(1)中、Xは、フィルム単位面積にかかる張力(MPa)であり、Xは0.2MPa以上4.0MPa以下の値を示す。)
[式2]
−0.6≦STD≦−0.2 ・・・(2)
[式3]
−0.4≦HSMD≦−0.1 ・・・(3)
[式4]
−0.6≦HSTD≦−0.2 ・・・(4)
[式5]
HSMD>HSTD ・・・(5)
【請求項2】
離型フィルムの、離型層を有する側の表面の最大高さRmax、および離型層を有さない側の表面の最大高さRmaxが、それぞれ100nm以上600nm以下である請求項1に記載の離型フィルムロール。
【請求項3】
離型層が、離型層の重量に対して0.5質量%以上10質量%以下の界面活性剤を含有する請求項1または2に記載の離型フィルムロール。
【請求項4】
離型層が、ポリエステルフィルムの製造工程中に形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の離型フィルムロール。
【請求項5】
離型フィルムが、セラミックシート製造用である請求項1〜4のいずれか1項に記載の離型フィルムロール。
【請求項6】
セラミックシートが、セラミックコンデンサー製造用である請求項5記載の離型フィルムロール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の離型フィルムロールから得られた離型フィルム。

【公開番号】特開2010−69661(P2010−69661A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237824(P2008−237824)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】