説明

離型フィルム

【課題】 離型面が平坦でセラミックスラリーに対する塗工性、成形後のグリーンシートに対する剥離性が良好な離型フィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化型シリコ−ン樹脂を含有する離型層を有する離型フィルムであり、下記式(1)を満足することを特徴とする離型フィルム。
0.02 ≦ Ha/Hb ≦ 0.20 ・・・(1)
(上記式(1)中、Haは、離型層のシリコーン樹脂の赤外吸収スペクトルにおいて、波数890cm−1と波数925cm−1の吸光度を直線で結んだベースラインを引き、波数900〜915cm−1間における各波数の吸光度と当該ベースラインの値の差の最大値であり、Hbは、波数750cm−1と波数850cm−1の吸光度を直線で結んだベースラインを引き、波数790〜810cm−1間における各波数の吸光度と当該ベースラインの値の差の最大値を意味する)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルムに関し、さらに詳しくは、本発明は、セラミック積層コンデンサー、セラミック基板等のセラミック電子部品製造時に使用するグリーンシート成形用として、離型フィルムの離型面から真空吸引等により垂直方向にグリーンシートを剥離する、いわゆる面剥離方式を採用する剥離工程に対応可能な離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムがセラミック積層コンデンサー、セラミック基板等のセラミック離型用として使用されている。近年、セラミック積層コンデンサーの小型化・大容量化が進むに伴い、グリーンシートの厚みも益々薄膜化する傾向にある。
【0003】
グリーンシートの更なる薄膜化に伴い、特に厚みが2μm以下の薄膜グリーンシートを成形しようとした場合、離型フィルムの離型層表面の表面粗度が高い場合には、セラミックスラリー塗工時にスラリーのはじき、あるいはピンホールの発生、グリーンシート剥離時にはグリーンシートの破断等の不具合を生じる場合がある。
【0004】
上記不具合を解決するために表面粗度の低いポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムを使用すると、離型フィルムをロール状に巻取った際にブロッキングあるいはシワ等が発生する等の不具合を生じる場合がある。
【0005】
一方、グリーンシートの剥離工程においては真空吸引等により、離型面よりグリーンシートを垂直方向に剥離する、いわゆる面剥離方式を採用する場合がある。当該面剥離方式を採用する剥離工程においては、セラミック離型用として汎用的に使用している離型フィルムでは対応困難な場合がある。その理由として、従来の剥離方式と当該剥離方式における離型フィルムからグリーンシートを剥離する速度が異なることに起因している。そのため、離型面がより平坦でかつグリーンシートを面剥離する剥離工程に対応可能な離型フィルムが必要とされている。また、剥離速度の問題は、グリーンシートの剥離だけでなく、粘着剤保護セパレータの剥離でも起きている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−195750号公報
【特許文献2】特開2005−262456号公報
【特許文献3】特開2006−289670号公報
【特許文献4】特開2009−143091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、セラミック積層コンデンサー製造時に使用する、特に厚み(乾燥後)が2μm以下のグリーンシート成形用として用いた際に、離型面が平坦でセラミックスラリーに対する塗工性、成形後のグリーンシートに対する剥離性が良好な離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成からなる離型フィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化型シリコ−ン樹脂を含有する離型層を有する離型フィルムであり、下記式(1)を満足することを特徴とする離型フィルムに存する。
【0010】
0.02 ≦ Ha/Hb ≦ 0.20 ・・・(1)
(上記式(1)中、Haは、離型層のシリコーン樹脂の赤外吸収スペクトルにおいて、波数890cm−1と波数925cm−1の吸光度を直線で結んだベースラインを引き、波数900〜915cm−1間における各波数の吸光度と当該ベースラインの値の差の最大値であり、Hbは、波数750cm−1と波数850cm−1の吸光度を直線で結んだベースラインを引き、波数790〜810cm−1間における各波数の吸光度と当該ベースラインの値の差の最大値を意味する)
【発明の効果】
【0011】
本発明の離型フィルムによれば、セラミック積層コンデンサー製造時に使用する薄膜グリーンシート成形用として、特に厚み(乾燥後)が2μm以下のグリーンシート成形用として、セラミックスラリーに対する塗工性、成形後のグリーンシートに対する剥離性が良好である離型フィルムを提供するものでき、その工業的価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、後述する実施例1および比較例1の赤外吸収スペクトルと、HaおよびHbを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、ポリエステルフィルムに使用するポリエステルはホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
【0014】
一方、共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0015】
いずれにしても本発明でいうポリエステルとは、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート単位であるポリエチレン−2,6−ナフタレート等であるポリエステルを指す。
【0016】
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらにポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0017】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等の何れを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0018】
使用する粒子の平均粒径は0.1〜5μmを満足するのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3μmの範囲である。平均粒径が0.1μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分となることがあり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において離型層を設ける場合等に不具合を生じることがある。
【0019】
さらにポリエステル中の粒子含有量は、0.01〜5重量%を満足するのが好ましく、さらに好ましくは0.01〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.01重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分になる場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルム表面の平滑性が不十分になる場合がある。
【0020】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0021】
本発明の離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、通常、9〜75μm、好ましくは9〜50μmの範囲がよい。
【0022】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、押出し機を用いて、ダイより押し出された溶融シートを用いて冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法がよい。
【0023】
この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。
【0024】
その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する延伸温度は通常130〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。また、同時二軸延伸を行うことも可能である。同時二軸延伸法としては前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で縦方向(あるいは機械方向)および横方向(あるいは幅方向)に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
【0025】
上述の延伸方式を使用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動式等、従来から公知の延伸方式を採用することができる。「スクリュー方式」はスクリューの溝にクリップを乗せてクリップ間隔を広げていく方式である。「パンタグラフ方式」はパンタグラフを用いてクリップ間隔を広げていく方式である。「リニアモーター方式」はリニアモーター原理を応用し、クリップを個々に制御可能な方式でクリップ間隔を任意に調整することができる利点を有する。
【0026】
さらに同時二軸延伸に関しては二段階以上に分割して行ってもよく、その場合、延伸場所は一つのテンター内で行ってもよいし、複数のテンターを併用してもよい。同時二軸延伸法としては、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
【0027】
また、上述のポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆる塗布延伸法(インラインコーティング)を施すことができる。それは以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。上述の塗布延伸法にてポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に塗布層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0028】
本発明の離型フィルムを構成する離型層は貼り合わせる相手方グリーンシートに対する離型性を良好とするために硬化型シリコーン樹脂を含有する必要がある。
【0029】
硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、本発明の要旨を越えない範囲において、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0030】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等、何れの硬化反応タイプでも用いることができる。また、離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0031】
本発明における離型フィルムを構成する離型層に関して、離型層中に含有する硬化型シリコーン樹脂の含有量は、通常70重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。離型層中における硬化型シリコーン樹脂の含有量が70重量%未満の場合、成形するグリーンシートに対する離型性が不十分となる場合がある。
【0032】
本発明における離型フィルムを構成する離型層の塗布量(乾燥後)は、通常0.01〜2g/m、好ましくは0.01〜1g/m、さらに好ましくは0.03〜0.5g/mの範囲である。離型層の塗布量(乾燥後)が0.01g/m未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難な場合がある。一方、塗布量(Si)が2g/mを超える場合、離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0033】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、リバースグラビアコート、バーコート、ダイコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。また、本発明における離型フィルムを構成するポリエステルフィルムには予めコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0034】
さらに本発明における離型フィルムを構成するポリエステルフィルムには予め接着層、帯電防止層等の塗布層が設けられていてもよい。本発明における離型フィルムを構成する離型層は上述の塗布延伸法(インラインコーティング法)によりポリエステルフィルム上に設けられてもよい。
【0035】
本発明の離型フィルムは、下記式(1)を満足する必要がある。
【0036】
0.02≦Ha/Hb≦0.20 …(1)
(上記式(1)中、Haは、離型層のシリコーン樹脂の赤外吸収スペクトルにおいて、波数890cm−1と波数925cm−1の吸光度を直線で結んだベースラインを引き、波数900〜915cm−1間における各波数の吸光度と当該ベースラインの値の差の最大値であり、Hbは、波数750cm−1と波数850cm−1の吸光度を直線で結んだベースラインを引き、波数790〜810cm−1間における各波数の吸光度と当該ベースラインの値の差の最大値を意味する)
Ha/Hbは、0.03〜0.10の範囲が好ましい。上記式(1)のHa/Hbが0.01未満の場合、所望する剥離性を得るのが困難になる。一方、Ha/Hbが0.20を超える場合、良好な塗布面状が得られず、はじき状の欠陥が生じる。
【0037】
本発明における離型フィルムが上記式(1)を満足するための具体的手法としては、例えば、離型層の構成材料に関して、T単位(SiO3/2)を有する分岐状硬化型シリコーン樹脂を含有させる手法等が例示される。さらに上述の分岐状硬化型シリコーン樹脂の具体例として、信越化学X−62−1387,X−62−2808、R−2431A/B等が挙げられる。
【0038】
本発明における離型フィルムに関して、グリーンシートに対する垂直方向に剥離で、グリーンシートにダメージを与えずにする剥離性を良好とするために離型層表面と樹脂層との剥離力F(300)は下記式(2)を満足することが好ましい。
【0039】
F(300)≦180mN/cm …(2)
(上記式中、F(300)は、離型フィルムにおける離型層表面と日東電工製31Bテープとの300m/分で180度方向に剥離した際の剥離力を表す)
F(300)は、さらに好ましくは150mN/cm以下である。離型フィルムの剥離力F(300)が上記式(2)を満足しない場合、離型フィルムの剥離力が重くなり、グリーンシートが剥離困難になる場合がある。
【0040】
一方、用途上、本来剥離する必要のない場面において、グリーンシートが離型層表面から容易に剥離する等の不具合を生じないようにするために離型層表面と樹脂層との剥離力F(0.3)が下記式(3)を満足するのが好ましい。
【0041】
F(0.3)≧25mN/cm …(3)
(上記式中、F(0.3)は、離型フィルムにおける離型層表面と日東電工製31Bテープとの0.3m/分で180度方向に剥離した際の剥離力を表す)
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0043】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合
溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0044】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置((株)島津製作所(製)SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0045】
(3)離型フィルムにおける剥離力(F(30)、F(0.3))の評価
試料フィルムの離型層に両面粘着テープ(日東電工製「No.31B」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0046】
(4)離型層の塗布量(Si)の測定
蛍光X線測定装置((株)島津製作所(製)型式「XRF−1500」)を用いてFP(Fundamental Parameter Method)法により、下記測定条件下、試料フィルムの離型層が設けられた面および離型層がない面の珪素元素量を測定し、その差をもって、離型層中の珪素元素量とした。次に得られた珪素元素量を用いて、−SiO(CHのユニットとしての塗布量(Si)(g/m)を算出した。
《測定条件》
分光結晶:PET(ペンタエリスリトール)
2θ:108.88°
管電流:95mA
管電圧:40kv
【0047】
(5)離型フィルムの離型層の赤外分光分析
I)KBr粉末の作製
あらかじめ試料フィルムをA4サイズに切り出し、離型面上に、臭化カリウム(KBr)粉末70〜100mgを直径20±5mmの円内におさまるように載せた。次に別の試料フィルム(A4サイズ)を離型面同士が重なるようにして、平滑な机上に置いた。次に指の腹で、KBr粉末が挟まれた箇所に、1〜2kgfの垂直加重をかけた状態で、フィルム間のKBr粉末が試料フィルムの離形面と摺動するように指を20往復させた。
【0048】
II)FT−IRの測定
上記Iで得られたKBr粉体を、フーリエ変換赤外分光光度計(BIORAD社製「FTS6000 SPECTROMETER」)を用いて、KBr錠剤法(参考文献:機器分析、田中誠之、飯田芳男著、裳華房(1990))により測定し、700±5cm−1〜4000±5cm−1における赤外吸収スペクトルを得た。
【0049】
III)Ha/Hbの算出
得られたスペクトルから次に示す手順(a)〜(g)で、Ha/Hbを算出した。(a)波数890cm−1および波数925cm−1の2点の吸光度を直線で結んだベースラインを引いた。(b)波数890〜925cm−1の範囲の得られた各吸光度から、吸光度が得られた波数のベースライン上の値を減じた。(c)上記(b)で処理された値で、波数900〜915cm−1の範囲で最も大きな値をHaとした。(d)波数750cm−1および850cm−1の2点の吸光度を直線結んだベースラインを引いた。(e)波数750〜850cm−1の範囲の得られた各吸光度から、吸光度が得られた波数のベースライン上の値を減じた。(f)上記(e)で処理された値で、波数790〜810cm−1の範囲で最も大きな値をHbとした。(g)得られたHa,Hbから、HaをHbで除して、Ha/Hbを求めた。
【0050】
(6)グリーンシート表面の平坦性評価(実用特性代用評価)
試料フィルムの離型面に下記樹脂組成物を塗布厚み(乾燥後)が2g/mになるように塗布した。その後、2kgのゴムローラーを用いて、PETフィルム(三菱樹脂(製):ダイアホイル(登録商標)T100タイプ−25μm)を1往復させて樹脂層表面に貼り合わせた。次に貼り合わせた積層フィルムを20±2℃、65±5%RHの雰囲気下、24時間放置した後、試料フィルムの離型面から未処理のPETフィルムが積層された樹脂層を、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度10m/分の条件下、180°剥離を行った。得られたグリーンシート表面(測定対象面積;1m)を走査型レーザー顕微鏡(レーザーテック社製)による表面観察を行い、下記判定基準により判定を行った。
《判定基準》
○:誘電体層表面に深さ0.5μm以上のクレーター(凹み)が1個/m以下(実用上、問題ないレベル)
×:誘電体層表面に深さ0.5μm以上のクレーター(凹み)が2個/m以上(実用上、問題あるレベル)
【0051】
《樹脂組成物》
ポリビニルブチラール樹脂
(積水化学製:エスレックシリーズ:「BM−S」タイプ) 20部
可塑剤(フタール酸ジオクチル) 5部
トルエン/エタノール(混合比率は6:4) 200部
《乾燥条件》
120℃で1分間(熱風式循環炉使用)とした。なお、サンプル作製から剥離力測定までの一連の作業は20±2℃、65±5%RHの雰囲気下にて行った。
【0052】
〈ポリエステルの製造〉
製造例1(ポリエチレンテレフタレートA)
テレフタル酸86部、エチレングリコール70部を反応器にとり、約250℃で4時間エステル交換反応を行った。三酸化アンチモンを0.03部およびリン酸0.01部、平均粒径1.5μmの二酸化珪素粒子を0.1部加え、250℃から285℃まで徐々に昇温すると共に圧力を徐々に減じて0.5mmHgとした。4時間後、重合反応を停止し、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートAを得た。
【0053】
製造例2(ポリエチレンテレフタレートB)
製造例1において、平均粒径1.5μmの二酸化珪素粒子を0.1部添加する代わりに平均粒径0.75μmの炭酸カルシウム粒子を0.1部添加する以外は製造例1と同様にして製造し、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートBを得た。
【0054】
製造例3(ポリエチレンテレフタレートC)
製造例1において、平均粒径1.5μmの二酸化珪素粒子を0.1部添加する代わりに平均粒径1.5μmの二酸化珪素粒子を0.2部添加する以外は製造例1と同様にして製造し、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートCを得た。
【0055】
実施例1:
製造例2で製造したポリエチレンテレフタレートBを原料とし、ベント式二軸押出機に供給し、285℃で溶融した後、20℃に冷却したキャスティングドラム上に押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、90℃にて縦方向に3.5倍の縦延伸倍率で延伸した後、テンター内で予熱工程を経て100℃で4.0倍の横延伸倍率で延伸し、210℃で10秒間の熱処理を行い、25μmのポリエステルフィルムF1を得た。次に下記離型剤がトルエン/メチルエチルケトンで希釈された塗布液を塗布量(乾燥後)が0.1g/mになるようにリバースグラビアコートにより塗布した後、160℃、30秒間熱処理して離型フィルムを得た。なお、該塗布液は、離型剤を固形分濃度2重量%になるようトルエン/MEK混合溶媒(混合比率は1:1)にて希釈し塗布液とした。実施例、比較例の離型剤組成を下記表1に記載した。
【0056】
離型層を構成する化合物例は以下のとおりである。
《化合物例》
A;硬化型シリコーン樹脂(信越化学製:X−62−5427)
B:硬化型シリコーン樹脂(信越化学製:X−62−1387)
C:硬化型シリコーン樹脂(信越化学製:KS−847H)
D:硬化剤(信越化学製:PL−50T)
【0057】
実施例2および3:
実施例1において、離型剤組成が異なる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た(表1に離型剤組成を記載した)。
比較例1および2:
実施例1において、離型剤組成を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た(表1に離型剤組成を記載した)。
【0058】
以上、上記実施例および比較例で得られた各フィルムの特性を表1にまとめて示す。
【0059】
【表1】

【0060】
比較例2の塗布外観であるが、目視できるハジキが散発し実用上支障があるレベルであった。
【符号の説明】
【0061】
Ha 上記測定法の説明(5)のIII)において説明したとおりである。
【0062】
Hb 上記測定法の説明(5)のIII)において説明したとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の離型フィルムはセラミック積層コンデンサー製造時に使用する、特に厚み(乾燥後)が2μm以下の薄膜グリーンシート成形用として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化型シリコ−ン樹脂を含有する離型層を有する離型フィルムであり、下記式(1)を満足することを特徴とする離型フィルム。
0.02 ≦ Ha/Hb ≦ 0.20 ・・・(1)
(上記式(1)中、Haは、離型層のシリコーン樹脂の赤外吸収スペクトルにおいて、波数890cm−1と波数925cm−1の吸光度を直線で結んだベースラインを引き、波数900〜915cm−1間における各波数の吸光度と当該ベースラインの値の差の最大値であり、Hbは、波数750cm−1と波数850cm−1の吸光度を直線で結んだベースラインを引き、波数790〜810cm−1間における各波数の吸光度と当該ベースラインの値の差の最大値を意味する)

【図1】
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【公開番号】特開2012−232496(P2012−232496A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102706(P2011−102706)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】