説明

離型剤の処理方法及びその装置

【課題】成形型に供給された後に回収された離型剤を処理する処理装置のメンテナンス頻度を低減するとともに、前記成形型に対して十分な量の離型剤を塗布する。
【解決手段】金属不純物及び凝集物を含む離型剤Lが回収槽22から第1貯留槽26に移される際、磁気フィルタ24の作用下に離型剤Lから金属不純物が分離される。凝集物のみが残留した離型剤Lは、第1貯留槽26に貯留された後、凝集物微細化フィルタ28に送られる。この凝集物微細化フィルタ28内で凝集物が微細化され、これにより離型剤Lから金属不純物及び凝集物の双方が除去されて清浄化されるに至る。清浄化された離型剤Lは、循環槽64に導入された後、離型剤吐出器70を介して成形型32、34に再吹き付けされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型に供給された後に回収された離型剤を再塗布可能に処理する離型剤の処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、温間鍛造成形加工を行う場合、鍛造成形装置を構成する成形型に高温のワークが接触する。この接触に伴って成形型の温度がワークと同程度まで昇温してしまうと、該成形型の強度及び耐摩耗性が低下するという不具合が惹起される。
【0003】
また、成形型の成形面には、微細な凹凸が不可避的に形成されている。このため、鍛造成形加工を行う際にワークの凸部と成形型の凸部とが摺接した場合、該摺接箇所に大きな応力が作用することになる。このような事態が発生すると、いわゆるカジリの原因となる。
【0004】
以上の不具合を回避するべく、成形型に対しては、例えば、黒鉛系の離型剤が予め塗布される。この離型剤が成形型を冷却することで該成形型の強度及び耐摩耗性が確保されるとともに、成形型の表面に膜を形成して潤滑性を付与することで成形型とワークが相対的に滑り易くなる。
【0005】
一般的に、離型剤は、成形型に対して余剰に供給される。従って、余剰分の離型剤は、前回の鍛造成形加工時に発生したバリや、成形型の成形面に生成したいわゆるスケールを同伴して成形型から滴下する(特許文献1、2参照)。
【0006】
図2は、再塗布が可能なように前記離型剤を処理する離型剤処理装置1の概略全体構成図である。この図2に示されるように、離型剤Lは、先ず、鍛造成形装置(図示せず)を囲繞するように設けられた収集槽2を介して回収槽3に回収され、ポンプ4によって循環槽5に移液された後、ポンプ6によって離型剤吐出器7に戻される。
【0007】
ここで、回収槽3と離型剤吐出器7との間に橋架された送液管8には、フィルタ9が介装されている。このフィルタ9によって、前記バリ及び前記スケール等の金属不純物が離型剤Lから除去される。従って、離型剤吐出器7には、金属不純物がほとんど含まれない離型剤Lが送られる。この状態となった離型剤Lが、離型剤吐出器7を介して成形型10、11に吹き付けられる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−965号公報
【特許文献2】国際公開第00/3820号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図2に示される離型剤処理装置1においては、離型剤Lから金属不純物を除去する除去手段がフィルタ9のみである。このため、フィルタ9が短期間で目詰まりを起こす。この場合、フィルタ9を清掃しなければならず、必然的に、離型剤Lの回収及び金属不純物の除去作業を中断しなければならない。すなわち、離型剤処理装置1の運転を停止せざるを得ず、このために離型剤Lを成形型10、11に再塗布することができなくなるので、鍛造成形加工を中断する必要がある。要するに、従来技術に係る離型剤処理装置1には、鍛造成形加工の作業効率を低下させるという不具合がある。そこで、予備のバイパスフィルタを設け、フィルタ9が目詰まりを起こした際にはこのバイパスフィルタに切り替えることも想起される。しかしながら、この場合、バイパスラインが設けられるために装置構成が複雑となる。
【0010】
しかも、フィルタ9には、金属不純物と供給液圧によって短期に破れが起こる(いわゆる、穴あき破損)ので、メンテナンスないし交換を頻繁に行わなければならず、煩雑である。
【0011】
さらに、離型剤Lに含まれる成分(例えば、黒鉛)は、比較的容易に凝集を起こして凝集物を生成する。この凝集物がフィルタ9に捕集されることなく離型剤吐出器7に戻されると、該離型剤吐出器7が凝集物によって詰まりを起こすことがある。このような事態が生じると、成形型10、11に対する離型剤Lの塗布量が不十分となり、このために成形型10、11が十分に冷却されなくなるとともに、十分な潤滑性が付与されなくなる。この場合、成形型10、11が比較的早期に破損する。
【0012】
破損した成形型10、11は新品に交換すればよいが、この種の型は概して高価であり、このため、交換頻度が高いと生産コストが高騰してしまう。
【0013】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、鍛造成形加工の作業効率を向上させるとともにメンテナンス頻度を低減することが可能であり、しかも、戻された離型剤を十分な量で成形型に塗布し得る離型剤の処理方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明は、成形型に供給された後に回収された離型剤を再塗布可能に処理する離型剤の処理方法であって、
回収された前記離型剤に含まれる金属不純物を除去する工程と、
金属不純物が除去された前記離型剤に含まれる凝集物を微細化して再塗布可能な状態とする工程と、
を有することを特徴とする。
【0015】
すなわち、本発明によれば、凝集物が微細化されることによって離型剤が本来の状態に戻る。このため、離型剤吐出器が凝集物によって詰まりを起こすことが回避されるので、十分な量の離型剤が成形型に塗布される。このため、成形型が十分に冷却されるとともに十分な潤滑性が付与され、その結果、成形型が長寿命となる。従って、成形型の交換頻度が低減するので、生産コストも低減する。
【0016】
その上、金属不純物を除去する工程と、凝集物を微細化する工程とを除去手段、凝集物微細化手段の各々で別工程として行うようにしているので、これらの2工程を同一の手段で同時に行う場合に比して、前記除去手段ないし前記凝集物微細化手段のそれぞれが早期に目詰まりを起こすことが回避される。従って、メンテナンス頻度が低減し、その結果、離型剤の回収作業及び鍛造成形加工を停止する頻度も低減する。従って、作業効率が向上する。
【0017】
この場合、凝集物が微細化されることなく残留した離型剤を上澄液として前記凝集物から分離し、得られた前記上澄液を、金属不純物を除去する前記工程、又は凝集物を微細化して再塗布可能な状態とする前記工程のいずれかに戻すようにしてもよい。この上澄液を成形型に再塗布するようにすれば、離型剤の使用効率が一層向上する。従って、新たな離型剤の補充量が低減し、このため、コスト的に有利となる。
【0018】
いずれの場合においても、金属不純物を離型剤から除去するに際しては、磁気的手法を採用することが好ましい。この場合、金属不純物を離型剤から分離することが容易であり、しかも、除去手段に対するメンテナンス作業の頻度も少ないからである。なお、金属不純物を磁気的に除去し得る除去手段は公知である。
【0019】
また、本発明は、成形型に供給された後に回収された離型剤を再塗布可能に処理する離型剤処理装置であって、
成形型に供給された後の離型剤を回収するための回収槽と、
前記回収槽に回収された前記離型剤に含まれる金属不純物を除去するための除去手段と、
金属不純物が除去された前記離型剤を貯留する離型剤貯留槽と、
前記離型剤貯留槽に貯留された前記離型剤に含まれる凝集物を微細化するための微細化手段と、
を備えることを特徴とする。
【0020】
このような構成とすることにより、金属不純物及び凝集物が除去されて本来の状態に戻された離型剤を離型剤吐出器に送ることができるので、該離型剤吐出器が詰まりを起こすことが回避される。従って、十分な量の離型剤を成形型に塗布することが可能となり、これにより、成形型が十分に冷却されるとともに該成形型に十分な潤滑性が付与される。このため、成形型が長寿命となるので交換頻度が低減し、結局、生産コストを低減することができる。
【0021】
しかも、金属不純物を除去する除去手段と、凝集物を微細化する凝集物微細化手段とを別個に設けているので、メンテナンス頻度が低減する。従って、鍛造成形加工を頻繁に停止する必要がなく、このため、作業効率が向上する。
【0022】
さらに、凝集物が微細化されることなく残留した前記離型剤を貯留する要再処理離型剤貯留槽を設けることが好ましい。この要再処理離型剤貯留槽により、前記離型剤を上澄液として凝集物から分離することができる。得られた上澄液を上記したように成形型に再塗布することにより、離型剤を効率よく使用することができる。
【0023】
なお、前記上澄液は、前記除去手段又は前記微細化手段に移液することが好ましい。この場合、仮に凝集物が上澄液に残留していたとしても、上澄液は、この凝集物を除去する除去手段を再通過した後に離型剤吐出器に送られる。従って、離型剤吐出器が詰まりを起こすことがさらに防止される。
【0024】
また、上記した理由から、前記除去手段としては、金属不純物を磁気的に引き寄せる磁気フィルタが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、金属不純物及び凝集物を含む離型剤から金属不純物を除去した後、凝集物を微細化することで離型剤を本来の状態に戻して再利用するようにしている。従って、金属不純物及び凝集物がほとんど含まれない離型剤が離型剤吐出器に送られる。このため、離型剤吐出器が詰まりを起こすことが回避されるので、十分な量の離型剤が成形型に塗布される。これに伴い、成形型が十分に冷却されるとともに、該成形型に十分な潤滑性が付与される。
【0026】
その結果、該成形型の強度及び潤滑性が確保され、これにより該成形型が長寿命化する。すなわち、該成形型の交換頻度が低減し、このため、生産コストが低減する。
【0027】
しかも、メンテナンス頻度が低減するので、離型剤の回収作業及び鍛造成形加工を停止する頻度も低減する。このために作業効率も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る離型剤の処理方法につきそれを実施する離型剤処理装置との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係る離型剤処理装置(以下、単に処理装置ともいう)20の概略全体構成図である。この処理装置20は、離型剤Lを回収するための回収槽22と、該回収槽22から送液された離型剤Lが通過する磁気フィルタ(除去手段)24と、該磁気フィルタ24を通過した離型剤Lを貯留するための第1貯留槽(離型剤貯留槽)26と、前記第1貯留槽26から送液された離型剤Lが通過する凝集物微細化フィルタ(微細化手段)28と、該凝集物微細化フィルタ28にて分離されて凝集物を含む離型剤Lが戻される第2貯留槽(要再処理離型剤貯留槽)30とを備える。なお、後述するように、第2貯留槽30の離型剤Lは、第1貯留槽26にオーバーフローして金属不純物が分離された離型剤Lと混合される。
【0030】
成形型32、34を具備する図示しない鍛造成形装置が設置された床には、該鍛造成形装置を囲繞するように収集槽36が陥没形成されている。この収集槽36の側壁は傾斜しており、このため、収集槽36に流入した離型剤Lが効率よく底部に流動し、収集槽36の底部に連結された第1送液管38を介して、鍛造成形装置の床下に設置された前記回収槽22に送液される。
【0031】
回収槽22から磁気フィルタ24に至るまでには、第2送液管40が橋架されている。この第2送液管40にはポンプ42が介装されており、回収槽22に回収された離型剤Lは、このポンプ42によって揚液されて磁気フィルタ24まで送液される。
【0032】
磁気フィルタ24は、磁力を発生させることで金属不純物を引き寄せ、これにより該金属不純物を離型剤Lから分離する。このような磁気フィルタ24は、前記特許文献2にも記載されているように公知であるので、その詳細な説明を省略する。なお、離型剤Lから分離された金属不純物は、ケーク状にされて前記磁気フィルタ24から排出される。
【0033】
第1貯留槽26と第2貯留槽30は、互いに連設されている。すなわち、第1貯留槽26及び第2貯留槽30は外壁を共有し、その内部に仕切板44が設けられることで第1貯留槽26と第2貯留槽30に区分されている。
【0034】
第1貯留槽26には、離型剤Lの液面の位置をモニタリングするための液面位置検出計46が設置される。この液面位置検出計46によって離型剤Lの液面が所定の位置よりも高いことが検知された場合、離型剤Lを凝集物微細化フィルタ28へ送るためのポンプ58(後述)が付勢される。
【0035】
また、第1貯留槽26には、該第1貯留槽26内の離型剤Lを撹拌するための撹拌機48も設置される。この撹拌機48が付勢されることに伴い、撹拌翼50が回転動作を開始する。
【0036】
第2貯留槽30は、天井面から垂下された堰止板52によって導入部54とオーバーフロー部56に区画されている。すなわち、後述するように、導入部54には、凝集物微細化フィルタ28に導入された離型剤L中、その底部から導出された分が導入され、一方、オーバーフロー部56からは、上澄液がオーバーフローして第1貯留槽26に移動する。
【0037】
第1貯留槽26から凝集物微細化フィルタ28にかけては、ポンプ58が介装された第3送液管60が橋架されている。すなわち、第1貯留槽26に貯留された離型剤Lは、ポンプ58の作用下に凝集物微細化フィルタ28に送液される。
【0038】
図示は省略するが、凝集物微細化フィルタ28は、中空容器にメッシュが収容されて構成されており、凝集物微細化フィルタ28の側部を介して前記中空容器と前記メッシュとの間に離型剤Lが導入される。離型剤Lの一部はメッシュを通過して該メッシュの内方の収集管を経由した後、凝集物微細化フィルタ28の側部を介して外部に導出される。一方、残余の離型剤Lは、前記中空容器と前記メッシュの間、換言すれば、前記メッシュの周囲を螺旋状に流動しながら凝集物微細化フィルタ28の底部に降下し、該底部から外部に導出される。
【0039】
この種の凝集物微細化フィルタ28としては、例えば、独国マーレ社製のメタルエッジフィルタ(商品名)を挙げることができる。
【0040】
凝集物微細化フィルタ28の底部から導出された離型剤Lは、第4送液管61を経由し、上記したように、第2貯留槽30の導入部54に移液される。一方、側部から導出された離型剤Lは、第5送液管62を介して循環槽64に移液される。
【0041】
循環槽64には、ポンプ66が介装された第6送液管68の一端が連結されており、この第6送液管68の他端は、離型剤吐出器70に連結されている。なお、第6送液管68におけるポンプ66の下流側には、フィルタ72が配設されている。
【0042】
本実施の形態に係る処理装置20は基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果につき、本実施の形態に係る離型剤Lの処理方法との関係で説明する。
【0043】
鍛造成形加工が終了した後、次回の鍛造成形加工が行われるのに先んじて、離型剤吐出器70から吐出された離型剤Lが成形型32、34に吹き付けられる。これにより、該成形型32、34の成形面に離型剤Lが塗布される。
【0044】
本実施の形態においても、成形型32、34に対して離型剤Lが余剰に供給される。従って、余剰の離型剤Lが成形型32、34から滴下することになる。この際には、前記鍛造成形加工時に発生したバリやスケール等、すなわち、金属不純物が離型剤Lに同伴されて成形型32、34から離脱する。
【0045】
換言すれば、離型剤Lは、金属不純物を含んだ状態で成形型32、34から滴下し、この状態で鍛造成形装置の収集槽36に収集される。収集された離型剤Lは、第1送液管38を介して回収槽22に移液される。
【0046】
ここで、上記したように、離型剤Lに含まれる成分(例えば、黒鉛)は比較的凝集を起こし易い。このため、回収槽22に移された離型剤L中に凝集物が生成し始める。すなわち、回収槽22には、金属不純物及び凝集物を含む離型剤Lが貯留されることになる。
【0047】
金属不純物及び凝集物を含む離型剤Lは、第2送液管40に配設されたポンプ42の作用下に磁気フィルタ24に送られる。この磁気フィルタ24の内部では金属不純物が磁気的に引き寄せられ、その結果、金属不純物が離型剤Lから分離される。すなわち、離型剤Lから金属不純物が除去され、凝集物のみが離型剤Lに残留する。
【0048】
除去された金属不純物は、脱水されたケーク状態として磁気フィルタ24から排出される。その一方で、凝集物を含む離型剤Lは、磁気フィルタ24から導出された後に第1貯留槽26に貯留され、回転動作する撹拌翼50によって撹拌される。さらに、第1貯留槽26内の離型剤Lの貯留量が所定量以上となることに伴って液面位置が所定の高さ以上となったことが液面位置検出計46によって検知されると、ポンプ58が自動的に付勢される。
【0049】
凝集物を含む離型剤Lは、次に、ポンプ58の作用下に第3送液管60を介して凝集物微細化フィルタ28に送られる。上記したように、離型剤Lは、凝集物微細化フィルタ28を構成する前記中空容器の側部を介して内部に導入され、その一部は、前記中空容器に収容されたメッシュを通過する。この通過の際に凝集物がメッシュで破砕され、これにより該凝集物が微細化される。
【0050】
なお、離型剤Lの残部は、メッシュの周囲を螺旋状に流動しながら凝集物微細化フィルタ28の底部に降下する。この流動に伴い、離型剤Lに対し、螺旋回転の中心、すなわち、メッシュ方向に向かう力が作用する。この力により、メッシュの外方に捕集された凝集物が該メッシュの内方に向かって押圧され、最終的に、凝集物が破砕(微細化)されてメッシュを通過する。従って、凝集物がメッシュに捕集されて留まることが回避され、結局、目詰まりを起こすことが回避される。
【0051】
このため、凝集物微細化フィルタ28に対して頻繁にメンテナンスを施す必要は特にない。すなわち、凝集物を微細化するようにしたことに伴ってメンテナンス頻度が増加することはない。却って、目詰まりが起こる頻度が低減するので、メンテナンス頻度が低減するとともに離型剤Lの処理作業及び鍛造成形加工が中断される頻度も低減し、作業効率が向上する。
【0052】
このようにして凝集物が微細化、換言すれば、除去されて清浄化された離型剤Lは、凝集物微細化フィルタ28の側部に連結された第5送液管62を介して循環槽64に移液される。その一方で、凝集物を含んだ状態で凝集物微細化フィルタ28の底部に降下した離型剤Lの残部は、第4送液管61を介して第2貯留槽30の導入部54に移される。
【0053】
以上から諒解されるように、第2貯留槽30の導入部54には、凝集物微細化フィルタ28の底部から導出されて凝集物を含む離型剤Lが導入される。凝集物中、比重が離型剤Lに比して大きいものは沈殿し、小さいものは離型剤Lの液面に浮遊する。また、比重が離型剤Lと略同等であるものは、離型剤L中を泳動する。すなわち、第2貯留槽30には、沈殿物80、浮遊物82及び泳動物84が生じる。
【0054】
この中、浮遊物82及び泳動物84は堰止板52によって堰止される。これにより、浮遊物82及び泳動物84がオーバーフロー部56に移動することが防止される。また、沈殿物80は第2貯留槽30の底部に沈殿するので、オーバーフロー部56に移動することはない。
【0055】
従って、オーバーフロー部56からは、沈殿物80、浮遊物82及び泳動物84、換言すれば、凝集物をほとんど含まない上澄液が清浄な離型剤Lとしてオーバーフローし、第1貯留槽26に流下する。すなわち、第1貯留槽26では、磁気フィルタ24を通過した離型剤Lと、第2貯留槽30のオーバーフロー部56から導入された離型剤Lとが混合され、この混合離型剤Lがポンプ58の作用下に前記凝集物微細化フィルタ28に送られることになる。このため、余剰分の離型剤Lを効率よく循環再利用することができるので、新たな離型剤Lの使用量を低減することができる。従って、コスト的に有利である。
【0056】
凝集物微細化フィルタ28の側部から導出され、第5送液管62を経由して循環槽64に移された離型剤Lは、上記から諒解されるように、金属不純物及び凝集物が除去されて清浄化されたものである。この離型剤Lは、ポンプ66の作用下に第6送液管68を介して離型剤吐出器70に送られ、成形型32、34に向けて再吹き付けされる。仮に、循環槽64に導入された離型剤Lに若干量の金属不純物及び凝集物が残留していたとしても、これらの残留物は、離型剤吐出器70から吐出される前に、第6送液管68に介装されたフィルタ72によって捕集される。
【0057】
従って、離型剤吐出器70が凝集物ないし金属不純物によって詰まりを起こすことが回避される。このため、成形型32、34に十分な量の離型剤Lが塗布され、その結果、成形型32、34が十分に冷却されるとともに、十分な潤滑性が付与される。これにより成形型32、34が長寿命化するのでその交換頻度が低減し、結局、生産コストが高騰することが回避される。
【0058】
しかも、上記から諒解されるように、フィルタ72が目詰まりや穴あき破損を起こすことはほとんどない。循環槽64に導入された離型剤Lには金属不純物及び凝集物がほとんど含まれておらず、仮に含まれていたとしてもその量は若干であるからである。
【0059】
従って、フィルタ72に対するメンテナンス頻度や交換頻度が著しく低減し、このため、離型剤Lの処理作業及び鍛造成形加工が中断される頻度も低減する。これにより、作業効率が向上するという利点も得られる。しかも、バイパスフィルタ及びバイパスラインを設ける必要がないので、離型剤処理装置20を簡素に構成することもできる。
【0060】
なお、上記した実施の形態では、金属不純物を磁気的に分離する磁気フィルタ24を用いるようにしているが、特にこれに限定されるものではなく、金属不純物を分離し得るものであれば如何なるものであってもよい。
【0061】
また、この実施の形態では、第2貯留槽30の上澄液を第1貯留槽26に戻すことで凝集物微細化フィルタ28に送るようにしているが、該上澄液を磁気フィルタ24に戻すようにしてもよい。
【0062】
さらに、成形型32、34は、鍛造成形装置を構成するものに限定されるものではなく、鋳造成形装置を構成するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施の形態に係る離型剤処理装置の概略全体構成図である。
【図2】従来技術に係る離型剤処理装置の概略全体構成図である。
【符号の説明】
【0064】
20…離型剤処理装置 22…回収槽
24…磁気フィルタ 26…第1貯留槽(離型剤貯留槽)
28…凝集物微細化フィルタ
30…第2貯留槽(要再処理離型剤貯留槽)
32、34…成形型 36…収集槽
42、58、66…ポンプ 44…仕切板
52…堰止板 54…導入部
56…オーバーフロー部 64…循環槽
70…離型剤吐出器 72…フィルタ
80…沈殿物 82…浮遊物
84…泳動物 L…離型剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型に供給された後に回収された離型剤を再塗布可能に処理する離型剤の処理方法であって、
回収された前記離型剤に含まれる金属不純物を除去する工程と、
金属不純物が除去された前記離型剤に含まれる凝集物を微細化して再塗布可能な状態とする工程と、
を有することを特徴とする離型剤の処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の処理方法において、前記凝集物が微細化されることなく残留した前記離型剤を上澄液として前記凝集物から分離し、得られた前記上澄液を、金属不純物を除去する前記工程、又は凝集物を微細化して再塗布可能な状態とする前記工程のいずれかに戻すことを特徴とする離型剤の処理方法。
【請求項3】
成形型に供給された後に回収された離型剤を再塗布可能に処理する離型剤処理装置であって、
成形型に供給された後の離型剤を回収するための回収槽と、
前記回収槽に回収された前記離型剤に含まれる金属不純物を除去するための除去手段と、
金属不純物が除去された前記離型剤を貯留する離型剤貯留槽と、
前記離型剤貯留槽に貯留された前記離型剤に含まれる凝集物を微細化するための微細化手段と、
を備えることを特徴とする離型剤処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、前記凝集物が微細化されることなく残留した前記離型剤を貯留する要再処理離型剤貯留槽をさらに有し、該要再処理離型剤貯留槽で前記離型剤を上澄液として前記凝集物から分離することを特徴とする離型剤処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、前記上澄液を、前記除去手段又は前記微細化手段のいずれかに移液することを特徴とする離型剤処理装置。

【図1】
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【図2】
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