説明

難燃化・準不燃化・不燃化木材

【課題】ホウ酸を使用する木材の難燃化・不燃化薬剤により発熱性試験において充分に改正建築基準法に耐えうる不燃木材を提供する。
【解決手段】木材の木口を高速洗浄水で洗浄し、次いで、50〜60℃程度の温水プールに60時間内外浸漬し、次いで、温水を抜き取った後に、(a)50℃以上の温水にポリリン酸(H(n+2)n(3n+1))を投入し、(b)次いで、上記ポリリン酸が完全に溶解したら、温度を維持して、リン酸二アンモニウムを投入し、攪拌溶解させ、(c)これが溶解したら、温度を維持したまま、ホウ酸を投入し、攪拌して溶解させ、(d)次いで、上記溶解水にリン酸を投入して溶解させた薬剤を注入し、50〜60℃の温度を保って、60時間〜120時間浸漬を続け、高速洗浄水で洗浄の後、天日で10日間〜20日間養生し、さらに、その後、30℃〜40℃の乾燥機内で7日〜20日の強制乾燥処理を行った不燃処理木材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用木材に関し、これを不燃化・準不燃化・難燃化に用いられる難燃化・準不燃化・不燃化薬剤薬剤及びこの薬剤による難燃化・準不燃化・不燃化木材に関する。
【背景技術】
【0002】
平成10年度改正の建築基準法によれば、物質が燃焼の際の発熱量は、酸素1kg当たり13.1MJを要することを基準とする酸素の重量消費量を基準に計測するコーンカロリーメータを用いて、その発熱が次の条件を満たせば、木材であっても「難燃材料」、「準不燃材料」、「不燃材料」として各種建築材料として用いることができる。すなわち、コーンカロリーメータの試験体を燃焼させる加熱部を20分間の加熱した場合であっても、
(1)総発熱量が8MJ/m2 以下であること。
(2)防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴がないこと。
(3)最高発熱速度が10秒以上継続して200kw/m2 を超えないこと。
そして、5分間を経ても上記の現象が出現しなければ「難燃材料」として、10分間を経ても上記が出現しなければ、「準不燃材料」として、さらには、20分間を経ても上記現象が出現しなければ「不燃材料」として用いることができる。
このうち、ホウ酸を主体的に使用する木材の難燃化・準不燃化・不燃化技術についてに、例えば、特表2001−527093号公報に開示のものが知られている。特表2001−527093号に開示の技術は、発明名称「難燃殺生組成物とその製造方法」に係り、「製造と使用が簡単な難燃剤および殺生組成物と、その製造方法を提供する」ことを目的として(同公報要約書課題欄参照)、「組成物は、ホウ酸(HBO)、ホウ砂(Na・10HOまたはNa・5HO)、バインダー、および水を含む」ことにより(同公報明細書請求項1参照)、上記目的を達成せんとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−527093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、当該特表2001−527093号に開示の木材不燃化技術は、ホウ酸(HBO)、ホウ砂(Na・10HOまたはNa・5HO)を使用するものではあるが、上記公報明細書段落番号0002にも指摘されるように、「これらの組成物の製造と使用は、通常、面倒である。」という問題があった(同公報明細書段落番号0002)。
本願発明者は、ホウ酸を主体的に使用する難燃化・準不燃化・不燃化技術を鋭意検討して、従来難しいとされるホウ酸を使用する木材の難燃化・準不燃化・不燃化薬剤を完成させること、及び、同薬剤により木材の不燃化処理を行うことにより、コーンカロリーメータの発熱性試験において充分に改正建築基準法に耐えうる難燃化・準不燃化・不燃化木材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本願請求項1に係る発明は、不燃木材において、製材された木材の木口を高速洗浄水で洗浄し、次いで、50〜60℃程度の温水プールに60時間内外浸漬し、次いで、温水を抜き取った後に、(a)50℃以上の温水にポリリン酸(H(n+2)n(3n+1))を投入し、(b)次いで、上記ポリリン酸(H(n+2)n(3n+1))が完全に溶解したら、温度を維持して、リン酸二アンモニウム((NH43HPO4)を投入し、攪拌溶解させ、(c)これが溶解したら、温度を維持したまま、ホウ酸(硼酸:H3BO3)を投入し、攪拌して溶解させ、(d)次いで、上記溶解水にリン酸(HPO)を投入して溶解させた薬剤を注入し、50〜60℃の温度を保って、60時間〜120時間浸漬を続け、薬剤浸漬後、高速洗浄水で洗浄の後、天日で10日間〜20日間養生し、さらに、その後、30℃〜40℃の乾燥機内で7日〜20日の強制乾燥処理を行った不燃処理木材の試験体が、試験体表面と50.0KW/mの熱輻射量を可能とするコーンヒータ間を25mm隔てて、20分間の加熱した場合に、(1)総発熱量が8MJ/m2 以下であり、(2)防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が発生せず、さらに、(3)最高発熱速度が10秒以上継続して200kw/m を超えないことを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は。前記請求項1に係る不燃木材において、前記薬剤注入は、薬剤濃度が、比重1.3程度を基準に、比重1.3以下となった場合には請求項1に記載の順序・方法で精製されている薬剤を注入し、1.3以上となった場合には水を注入して、比重1.3を保ちつつ50〜60℃の温度で60時間〜120時間浸漬を続け、薬剤浸漬後、高速洗浄水で洗浄の後、天日で10日間〜20日間養生し、さらに、その後、30℃〜40℃の乾燥機内で7日〜20日の強制乾燥処理を行った不燃処理木材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
ホウ酸を主体的に使用する木材の難燃化・不燃化薬剤を完成させることができ、この薬剤により木材の難燃化・不燃化処理を行うことにより、コーンカロリーメータの発熱性試験において改正建築基準法に定める難燃・準不燃・不燃認定に適合する難燃・準不燃・不燃木材とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、コーンカロリーメータの概略構成を示す図
【図2】コーンカロリーメータ試験結果グラフ図
【図3】コーンカロリーメータ試験結果グラフ図
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上述するように、ホウ酸を主体とする木材の難燃化・不燃化を達成する薬剤(組成物)を作ることは難しかった。しかしながら、次の手順により、木材の不燃化・難燃化の薬剤を精製することにより、ホウ酸を使用する木材の難燃化・不燃化薬剤を完成し、また、同薬剤により木材の不燃化処理を行うことにより、コーンカロリーメータの発熱性試験において充分に改正建築基準法に耐えうる不燃木材とすることができたものである。
以下、本発明に係る木材用不燃薬剤の精製の一実施例を説明する。
【0009】
〔木材用不燃薬剤の精製〕
高濃度のホウ酸を主体とする薬剤とするには、温度の管理と溶解させる薬剤の投入順序を厳密に選定しなければならない。
(1)まず、50℃以上の温水にポリリン酸(H(n+2)n(3n+1))を投入する。
(2)次いで、上記ポリリン酸(H(n+2)n(3n+1))が完全に溶解したら、温度を維持して、リン酸二アンモニウム((NH43HPO4)を投入し、攪拌溶解させる。
(3)そして、これが溶解したら、温度を維持したまま、ホウ酸(硼酸:H3BO3)を投入し、攪拌して溶解させる。
(4)次いで、上記溶解水にリン酸(HPO)を投入して溶解させる。
このようにして「木材用不燃薬剤を精製する。高濃度のリン酸塩溶解を達成するためには、温度管理と上記の薬剤の投入順序が肝要である。温度管理や投入順序を違えては高濃度の溶解水を得ることはできない。
【0010】
〔不燃薬剤へ木材の浸漬〕
(1)木材として原木を所定の大きさ(例えば、15mm×105mm×2000mm)に製材した木材、例えば、杉材、檜材を使用する。
製材する木材は、国産グリーン材とも称されるもので、通常は、1年ものの自然乾燥材を使用する。強制乾燥処理された木材は成績が悪かった。
(2)まず、製材された木材の木口を高速洗浄水で洗浄する。木口面からの薬剤の吸収を効率よくするためである。
(3)次いで、所定数量の木材(通常:2m=約640枚)を50〜60℃程度の温水プールに60時間内外浸漬する。木材のアク抜きのためである。
(4)同プールから温水を抜き取ったら、同プールに上記薬剤を注入し、50〜60℃の温度を保って、60時間〜120時間(通常の状態では実質3日間(73時間))、薬剤の濃度を濃度計で計測しながら浸漬を続ける。濃度は比重計で計測する。比重1.3程度を基準に薄くなったら薬剤を注入し、濃い場合には水を注入して浸漬を続ける。この場合室温の高い夏場は若干薄い濃度でも足りるが、室温が低い冬場は若干濃い濃度でなければ上記コーンカロリーメータの発熱性試験において改正建築基準法に耐えうる木材「不燃材料」とすることはできない。
(5)上記薬剤浸漬が終了したら、上記同様高速洗浄水で洗浄の後、天日で10日間〜20日間養生する。
(6)その後、養生終了後、30℃〜40℃の乾燥機内で7日〜20日の強制乾燥処理を行う。
(7)強制乾燥の後は製品として包装し出荷に備える。
【0011】
〔コーンカロリーメータ発熱性試験〕
(発熱性試験1)
コーンカロリーメータは、概略次の構造のものである。すなわち、コーンカロリーメータは、試験体を加熱する加熱部と、試験体から発生する燃焼ガス等を補修する排気部、排気中の酸素ガス濃度や温度・流量を測定する計測部からなる。 図1は、コーンカロリーメータの概略構成を示す図であり、上述するように、大きく加熱部(A)、排気部(B)、計測部(C)からなり、図中の符号1は、試験体、2は、サンプルホルダー、3は、コーンヒータ、4は、ロードセル(荷重計)、5は、排気フード、6は、排気ブロア、7は、オリフィス流量計、8は、レーザー式煙濃度計、9は、ガスサンプリング装置、10は、ガス分析器である。
前記試験体1は、およそ12mm厚さで加熱表面をおよそ0.01mに切り出された不燃処理された杉材等からなる。
【0012】
また、前記サンプルホルダー2は、100×100×50mm以内の試験体(サンプル)1を載せるホルダーであり、前記コーンヒータ3は、0〜100Kwの輻射量を設定できる円錐形のヒータである。また、前記前記試験体1の重量変化を計測するロードセル(荷重計)4は、5kgのロードセルを使用して最大約1kgの試料を測定できる。さらに、前記排気フード5は、集煙フードともいうべきもので、前記試験体1から出た煙をすべて集めることができる。
【0013】
そして、前記排気ブロア6は、排気流量を一定にするブロアーモータを備え、室温状態で流量を0.024m2/secに適合させうるものである。前記オリフィス流量計7は、管内径D1[m]、流路断面積A1[m]の直管内に中央に径D0[m]、円孔断面積A0[m]の穴を開けたオリフィス板が配置される構造からなり、管内を流れる流体はこの円孔を通過するさいに、流路の断面積が縮小して流速が増大し、下流側での静圧が低下する。
この静圧低下は流量にほぼ比例するから、前記オリフィス板前後の圧力差(差圧)を測定することで管内を流れる流体の流量を知ることができるというものである。
【0014】
また、前記レーザー式煙濃度計8は、1.0mWHe−Neレーザ光を用いて煙の濃度を測定することができるものである。さらに、前記ガスサンプリング装置9は、周囲のガスをサンプル化する装置であり、サンプル化されたガスは、前記ガス分析器10により、前記試験体1の燃焼時の酸素の消費量(酸素減少量)を測定する。
【0015】
このような基本構成からなるコーンカロリーメータを用いて、上記薬剤浸漬、洗浄、天日乾燥、強制乾燥を経た木材を試験した。すなわち、コーンカロリーメータとしては、(株)東陽精機製作所製コーンカロリーメータ3(型式C3)を使用し、前記サンプルホルダー2上に以下の所定の寸法にした処理済み試験体1を載置し、前記コーンヒータ3で試験体1を加熱することによりコーンカロリーメータ試験を実施した。
【0016】
ところが、コーンカロリーメータは、厳密な酸素の消費量の計測を必要とするため、計測の前後における周囲の酸素濃度を精密に計測しておかなければならない。このため、まず、コーンカロリーメータで計測するには、計測始動の際のキャリブレーションが必須である。上述するように、コーンカロリーメータは、試験体を加熱し、そこで消費される酸素量を精密に測定するものであるから、コーンカロリーメータ内の酸素濃度や温度、湿度の影響が大きく反映されるため、コーンキャリブレーション要素としては、少なくともこれらの酸素濃度、温度、湿度を予め計測しておかなければならないのである。
【0017】
【表1】

【0018】
表1は、2010年2月3日に実施した不燃杉材のコーンカロリーメータ試験結果を示すものである。
【0019】
(試験条件)
試験条件としては、以下のものである。まず、この試験は、上述の建築基準法に定める「不燃」の認定試験に対応するか否の試験であり、試験体1として、実施例1において処理された「不燃杉」を表面積0.010000m、厚さ12.00mm、質量90.00gの試験体1を作成し、475.94gの質量を有する前記サンプルホルダーの上にホルダーカバー(図示外)を配置して載置し、また、試験体1の表面と前記ヒータ3との間隔を25mmを離れて設置した。なお、ホルダーカバー(図示外)は、試験体1の表面のみを加熱するためのもので、上記のサンプルホルダー質量は、当該カバー質量を含むものである。
【0020】
その上で、前記コーンヒータ3に通電し、50.0KW/mの熱輻射量を確保する前記ヒータ3の温度、639.05℃を計測し、さらに、試験実施時の排気流量は、0.024m/sec(排気温度:6.7℃、排気圧力:124.946Pa)であった。
また、このときの室温は20℃、、湿度50%、気圧1013hPaであり、この状態で1200秒(20.0分)間加熱し、サンプリング間隔として2秒ごとに計測したものである。
【0021】
(換算パラメータ)
なお、前述する当初の酸素状態を知るために前記キャリブレーションを実施し、キャリブレーションファクタに基づいた換算を行わなければならない。このため、このコーンカロリーメータの固有のコンバージョンファクタは、13.100MJ/Kgであり、初期状態の酸素状態(Oベースアイン)、一酸化炭素状態(COベースライン)及び二酸化炭素状態(COベースライン)は、それぞれ20.9494%、−0.00304%、0.0749%を計測し、これに基づき上記キャリブレーションファクタ0.04542212を求めた。
【0022】
(試験結果)
この結果、この試験体1について、次の試験結果を得た。
(1)総発熱量(THR):2.80MJ/m
(2)最大発熱速度(HRR):6.06KW/m(858.10秒時)
(3)平均発熱速度(HRR):2.33KW/m
(4)平均発熱速度 T60:2.19KW/m
(5)平均発熱速度 T180:1.43KW/m
(6)平均発熱速度 T300:1.20KW/m
(7)最終サンプル質量:39.17g
(8)サンプル質量減少:50.83g
なお、この試験においては、試験体1に着火することはなく、したがって、消炎することもなかった。
また、
(9)試験体1の裏面に達する亀裂や貫通孔も発生しなかった。
さらに、
(10)200K超過継続時間:0.0sec
(11)200K超過総時間:0.0sec
であった、この結果、この試験においては、
(A)平均燃焼有効発熱量(HOC):0.55MJ/Kg
(B)平均質量減少率(MLR):4.150g/s・m
(C)平均CO収率:0.01612kg/kg
(D)平均CO収率:kg/kg
を得た。
【0023】
この試験結果を加熱時間ごとにグラフ表示すると、図2に示すとおりである。
図2において、一点鎖線は、発熱速度(KW/m)、点線は、質量(g)、波線は、酸素(O)変位(%)、実線は、総発熱量(MJ/m)(×10)を示し、横軸に加熱時間(min)を示す。
【0024】
(発熱性試験2)
【0025】
【表2】

【0026】
表2は、2010年8月20日に実施の同不燃杉試験体1のコーンカロリーメータ試験結果を示すものである。
【0027】
(試験条件)
試験条件は、前述同様、建築基準法に定める「不燃」の認定試験に対応するか否のの「不燃杉」試験体の試験である。
同様に、試験体1として、実施例1において処理された「不燃杉」を表面積0.010000m、厚さ15.00mm、質量105.00gの試験体1を作成し、2.64gの質量を有する前記サンプルホルダーの上にホルダーカバー(図示外)をつけることなく載置し、また、試験体1の表面と前記ヒータ3との間隔を25mmを離れて設置した。なお、ホルダーカバーを設けずに計測することは、結果的には、試験データは、若干低下するが、ホルダーカバーがなくても、後述するように、認定基準に適合するデータを得ることができるので、ホルダーカバーなしで計測することもあり得、この発熱性試験2は、ホルダーカバーをつけずに計測したものである。
【0028】
その上で、前記コーンヒータ3に通電し、この試験2では、50.0KW/m2の熱輻射量を確保する前記ヒータ3の温度650.5℃を計測し、さらに、試験実施時の排気流量は、0.024m/sec(排気温度:29.8℃、排気圧力:111.178Pa)であった。
また、このときの室温は20℃、、湿度50%、気圧1013hPaであり、この状態で1200秒(20.0分)間加熱し、サンプリング間隔として2秒ごとに計測したものである。
【0029】
(換算パラメータ)
このコーンカロリーメータの固有のコンバージョンファクタは、前述のように、13.100MJ/Kgであり、初期状態の酸素状態(Oベースアイン)は、20.9494%であり、これに基づきキャリブレーションファクタ0.04645239を求めた。なお、一酸化炭素状態、(COベースライン)、二酸化炭素状態(COベースライン)は、これまでの試験において、燃焼着火が発生しなかったので、計測しなかった。
【0030】
(試験結果)
この結果、この試験体1について、次の試験結果を得た。
(1)総発熱量(THR):7.57MJ/m
(2)最大発熱速度(HRR):11.10KW/m(1140.10秒時)
(3)平均発熱速度(HRR):6.38KW/m
(4)平均発熱速度 T60:0.25KW/m
(5)平均発熱速度 T180:0.46KW/m
(6)平均発熱速度 T300:1.24KW/m
(7)最終サンプル質量:53.44g
(8)サンプル質量減少:51.56g
なお、この試験においても、試験体1は着火することはなく、したがって、消炎することもなかった。
また、
(9)試験体1の裏面に達する亀裂や貫通孔も発生しなかった。
さらに、
(10)200K超過継続時間:0.0sec
(11)200K超過総時間:0.0sec
であった、この結果、この試験においては、
(A)平均燃焼有効発熱量(HOC):1.47MJ/Kg
(B)平均質量減少率(MLR):4.623g/s・m
を得た。
【0031】
なお、使用したコーンカロリーメータでは、上記の輻射熱量程度では着火燃焼が発生しないので、一酸化炭素状態、(COベースライン)、二酸化炭素状態(COベースライン)は計測せず、したがって、「(C)平均CO収率」、「(D)平均CO収率」も計測していない。
【0032】
この試験結果を加熱時間ごとにグラフ表示すると、図3に示すとおりである。
図3において、図2と同様、一点鎖線は、発熱速度(KW/m)、点線は、質量(g)、波線は、酸素(O)変位(%)、実線は、総発熱量(MJ/m)(×10)を示し、横軸に加熱時間(min)を示す。
【0033】
図2に示されるコーンカロリーメータ試験結果及び図3に示されるコーンカロリーメータ試験結果から明らかなように、20分間加熱においても、総発熱量(実線で示される)は、それぞれ、2.80MJ/m、7.57MJ/mであり、8.0MJ/mを越えることはなく、「(9)試験体1の裏面に達する亀裂や貫通孔も発生しない」、また、「(10)200K超過継続時間」、「(11)200K超過総時間」もいずれもゼロであることから、したがって、試験体1は、コーンカロリーメータにおいて、20分間の加熱した場合であっても、以下の建築基準法に定める不燃基準を充分に満たすことが明らかである。
【0034】
(1)総発熱量が8MJ/m2 以下であること。
(2)防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴がないこと。
(3)最高発熱速度が10秒以上継続して200kw/m2 を超えないこと。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、建築基準法に適合する難燃・準不燃・不燃木材に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 試験体
2 サンプルホルダー
3 コーンヒータ
4 ロードセル
5 排気フード
6 排気ブロア
7 オリフィス流量計
8 レーザー式煙濃度計
9 ガスサンプリング装置
10記ガス分析器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製材された木材の木口を高速洗浄水で洗浄し、次いで、50〜60℃程度の温水プールに60時間内外浸漬し、次いで、温水を抜き取った後に、(a)50℃以上の温水にポリリン酸(H(n+2)n(3n+1))を投入し、(b)次いで、上記ポリリン酸(H(n+2)n(3n+1))が完全に溶解したら、温度を維持して、リン酸二アンモニウム((NH43HPO4)を投入し、攪拌溶解させ、(c)これが溶解したら、温度を維持したまま、ホウ酸(硼酸:H3BO3)を投入し、攪拌して溶解させ、(d)次いで、上記溶解水にリン酸(HPO)を投入して溶解させた薬剤を注入し、50〜60℃の温度を保って、60時間〜120時間浸漬を続け、薬剤浸漬後、高速洗浄水で洗浄の後、天日で10日間〜20日間養生し、さらに、その後、30℃〜40℃の乾燥機内で7日〜20日の強制乾燥処理を行った不燃処理木材の試験体が、試験体表面と50.0KW/mの熱輻射量を可能とするコーンヒータ間を25mm隔てて、20分間の加熱した場合に、(1)総発熱量が8MJ/m2 以下であり、(2)防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が発生せず、さらに、(3)最高発熱速度が10秒以上継続して200kw/m を超えないことを特徴とする不燃木材。
【請求項2】
前記薬剤注入は、薬剤濃度が、比重1.3程度を基準に、比重1.3以下となった場合には請求項1に記載の順序・方法で精製されている薬剤を注入し、1.3以上となった場合には水を注入して、比重1.3を保ちつつ50〜60℃の温度で60時間〜120時間浸漬を続け、薬剤浸漬後、高速洗浄水で洗浄の後、天日で10日間〜20日間養生し、さらに、その後、30℃〜40℃の乾燥機内で7日〜20日の強制乾燥処理を行った不燃処理木材であることを特徴とする請求項1に記載の不燃木材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−81603(P2012−81603A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227713(P2010−227713)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(509258636)株式会社ARS (1)
【Fターム(参考)】