説明

難燃化熱可塑性組成物、これを製造するためのプロセス、およびこれを含有する物品

(a)少なくとも1つの芳香族ビスホスフェートと、(b)少なくとも1つの金属ホスホネートと、(c)少なくとも1つの窒素に富む化合物とを含む難燃性添加剤組成物が本願明細書に提示される。熱可塑性ポリマー、例えば、熱可塑性ポリエステルおよびこの難燃性添加剤組成物を含有する熱可塑性ポリマー組成物;この難燃性添加剤組成物を製造する方法;ならびにこの熱可塑性ポリマー組成物を含有する物品、例えば電子部品も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃化熱可塑性組成物に関し、より具体的には難燃化熱可塑性ポリエステル組成物およびこの難燃化熱可塑性ポリエステル組成物を含有する物品、例えば、難燃化電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス強化熱可塑性ポリエステルまたは非強化熱可塑性ポリエステルは、電子部品、とりわけコネクタ、フレーム、可動部品、変圧器、マイクロモーターなどの生産のために使用される。これらの応用例のほとんどにおいて、難燃性が必要とされ、この難燃性は、臭素化された難燃剤と、共力剤としての三酸化アンチモンとの組み合わせに基づく難燃剤系によって通常はもたらされる。しかし、高比較トラッキング指数(CTI)が必要とされると、この種の難燃剤系には限界があり、このような場合には、ハロゲン不含の難燃剤系が好ましい。ハロゲン不含の系を使用することについての別の理由は、いくつかの応用例およびいくつかの地理的地域においてハロゲン含有製品の使用が法的に制限されていることである。しかしながら、ハロゲン不含の系は、ポリマー物性に対する多くの悪影響のため、使用が容易ではない。
【0003】
エンジニアリング熱可塑性プラスチックのために通常考慮される非ハロゲン化難燃剤は、リン系および/または窒素系のものである。しかしながら残念なことに、これまでに公知の難燃剤組成物は、耐衝撃性および熱変形などの種々の物性の適切なレベルを依然維持しながらも、十分に改善された難燃性を提供してもなかった。特定の難燃剤のレベルを特定のレベルを超えて上昇させると、この難燃剤がポリマーマトリクスから外へ染み出すようになり、射出成形操作およびその結果得られた射出成形された部品において、物理的および美観的な問題を引き起こすことが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のことを考慮すれば、必要とされるものは、上記の問題を回避しつつ、改善された難燃性という特徴を有する、熱可塑性組成物で使用するための難燃剤である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
予想外にも、本発明において、2つの異なるリン(P)源の組み合わせおよび窒素含有化合物由来の窒素(N)源が、熱可塑性ポリマー、例えば、熱可塑性ポリエステル、好ましくはガラス強化のポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートにおいて、樹脂のメルトフロー特性、衝撃特性および熱変形温度(HDT)に対する悪影響を最小にして、著しくより効率的な難燃効率をもたらすということが見出された。
【0006】
本発明は、難燃性添加剤組成物であって、
(a)少なくとも1つの芳香族ビスホスフェートと、
(b)少なくとも1つの金属ホスホネートと、
(c)少なくとも1つの窒素に富む化合物と
を含む難燃性添加剤組成物に関する。
【0007】
さらに、本発明は、熱可塑性ポリマー、ガラス繊維、および難燃性添加剤組成物を含む電子部品であって、この組成物は芳香族ビスホスフェート、アルミニウム メチル メチルホスホネートおよびメラミン塩を含む、電子部品にも関する。
【0008】
なおさらに、本発明は、難燃化物品を製造する方法であって、熱可塑性ポリマーと、任意に固体充填剤と、上記の難燃性添加剤組成物とをブレンドすることを含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、リン化合物および窒素含有化合物の独特でかつ予想外の組み合わせを含有する難燃性添加剤組成物に関する。このような難燃性添加剤組成物は、強化されているかまたは非強化の熱可塑性ポリマーで使用することができ、適切な衝撃特性およびHDT特性を維持しつつ、難燃性をもたらすことができる。
【0010】
1つの実施形態では、この芳香族ビスホスフェートは、少なくとも1つの芳香族ビスホスフェートである。本発明の別の実施形態では、この芳香族ビスホスフェートは、欧州特許第0936243(B1)号明細書(この特許文献の内容全体は、参照により本願明細書に援用したものとする)に記載されているいずれかの芳香族ビスホスフェート、例えばレゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート(ICL−IP製のFyrolflex RDP)およびビスフェノール−A ビス(ジフェニルホスフェート)(ICL−IP製のFyrolflex BDP)などであることができる。なおさらに、芳香族ビスホスフェートは、本願明細書に記載される芳香族ビスホスフェートのうちの少なくとも2つのブレンドを含むことができる。
【0011】
好ましくは、この芳香族ビスホスフェートは、一般式(I)を有する、芳香族ビスホスフェート、または芳香族ホスフェートのブレンド:
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは、各々独立に、アリールもしくはアルカリール、好ましくは約12個までの炭素原子を含有するアリールもしくはアルカリールであり、nは約1.0〜約2.0の平均値を有し、Xは、アリーレン、例えばレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどである)
のうちの少なくとも1つである。
【0012】
本発明の1つの態様では、nが約1.0〜約1.1の平均値を有し、かつXがヒドロキノンである一般式(I)に含まれるホスフェートは、流動性のある粉末の形態にある。典型的には、式Iのホスフェートに当てはまる「流動性のある粉末」は約10μm〜約80μmの平均粒径を有するが、これらの値に限定されるわけではない。これらの流動性のある粉末は、熱可塑性プラスチックとコンパウンド化されたときに、種々の取り扱い上の問題を回避し、そのうえ、樹脂流動、UV安定性、より大きい加水分解安定性およびより高い熱変形温度(HDT)などの改善された物性を熱可塑性組成物にもたらす。
【0013】
一般に、本発明のヒドロキノンビスホスフェートは、触媒の存在下でジアリールハロホスフェートをヒドロキノンと反応させることにより調製される。本発明の好ましい実施形態では、ジフェニルクロロホスフェート(DPCP)は、MgClの存在下でヒドロキノンとの反応に供され、ヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)を生成する。本発明によれば、このプロセスによって調製される一般式(I)に含まれるヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)は、約1.1以下の平均n値を有するであろう。
【0014】
本願明細書で使用される金属ホスホネート(b)は、例えば、アルミニウム メチル メチルホスホネート(aluminum methyl methylphosphonate、AMMP)などのいずれの金属ホスホネートであってもよく、AMMPは下記の式を有する:
【化2】

【0015】
金属ホスホネートの中に存在することができる金属としては、Ca、Zn、Al、Fe、Tiおよびこれらの組み合わせからなる限定を意図しない群などのアルカリ土類または遷移金属が挙げられる。
【0016】
本発明の窒素に富む化合物は、メラミン塩、尿素、尿素誘導体、グアニジン、およびグアニジン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つであることができる。この窒素に富む化合物は、米国特許第6,503,969号明細書に記載されている窒素含有化合物のいずれのものであってもよい(この特許文献の内容全体は、参照により本願明細書に援用したものとする)。1つの実施形態では、窒素に富む化合物は、少なくとも20重量%のN、好ましくは少なくとも40重量%のNを有するいずれかの窒素含有化合物を含むことができる。
【0017】
本発明の1つの限定を意図しない実施形態では、窒素に富む化合物は、難燃上有効量の窒素含有化合物を含むことができる。
【0018】
1つの実施形態では、グアニジン誘導体は、グアニジン炭酸塩、グアニジンシアヌル酸塩、グアニジンリン酸塩、グアニジン硫酸塩、グアニジンペンタエリスリトールホウ酸塩(guanidine pentaerythritol borate)、グアニジンネオペンチルグリコールホウ酸塩(guanidine neopentyl glycol borate)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるグアニジン誘導体を含むことができる。
【0019】
1つの実施形態では、この尿素誘導体は、尿素リン酸塩、尿素シアヌル酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される尿素誘導体を含むことができる。
【0020】
この窒素に富む化合物は、アンメリン、アンメリド;ベンゾグアナミンそれ自体またはその付加体もしくは塩、またはその窒素置換誘導体もしくはそれらの付加体もしくは塩;アラントイン化合物(類)、グリコールウリルまたはこれと酸(カルボン酸など)との塩、ならびにこれらの組み合わせを含むこともできる。
【0021】
本発明の1つの実施形態では、この窒素に富む化合物は、本願明細書に記載される窒素に富む化合物のいずれかの2以上を含むことができる。
【0022】
好ましくは、このメラミン塩は、国際公開第04/031286(A1)号パンフレットに記載されているメラミン塩のうちのいずれのものであってもよい(この特許文献の内容全体は、参照により本願明細書に援用したものとする)。具体的に書けば、このメラミン塩は、メラミンリン酸塩、ジメラミンリン酸塩、メラミンピロリン酸塩、メラミンポリリン酸塩、メラミンホウ酸塩、メラミンシアヌレート(メラミンシアヌル酸塩)、メラミンシュウ酸塩、メラミン硫酸塩、メラム(melam)リン酸塩またはメレム(melem)リン酸塩、メラムポリリン酸塩またはメレムポリリン酸塩、メラミンアンモニウムリン酸塩(melamine ammonium phosphate)、メラミンアンモニウムピロリン酸塩(melamine ammonium pyrophosphate)、メラミンアンモニウムポリリン酸塩(melamine ammonium polyphosphate)、メラミンの縮合生成物、例えばメレムメラム、メロン(melon)およびメラミンのより高次の縮合生成物;ならびにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることができる。
【0023】
好ましい実施形態では、このメラミン塩は、メラミンシアヌレート、メラミンリン酸塩、メラミンピロリン酸塩、およびメラミンポリリン酸塩からなる群から選択される。
【0024】
本発明の1つの実施形態では、このメラミン塩は、本願明細書に記載されるメラミン塩のうちのいずれか2以上の組み合わせであることができる。
【0025】
本発明の難燃性添加剤組成物は、例えばエチレン、アクリルエステルおよびグリシジルメタクリレートのターポリマーなどの衝撃改質剤をさらに含むことができる。このようなターポリマーの1つの限定を意図しない例はArkemaから入手できるLotader AX8900である。
【0026】
本発明の難燃性添加剤組成物は、ガラス、好ましくはガラス繊維などの固体充填剤をさらに含むことができる。
【0027】
本発明の難燃性添加剤組成物は、熱安定剤および/または酸化防止剤をさらに含むことができる。このような熱安定剤/酸化防止剤の例は、Cibaから入手できるヒンダードフェノールであるIrganox 1010である。
【0028】
本発明の1つの実施形態では、当該難燃性添加剤組成物は約10〜約90重量%の量の芳香族ビスホスフェート(a)を含み、ホスホネート(b)は約10〜約90重量%の量で存在し、当該窒素に富む化合物(c)は約10〜約90重量%の量で存在するが、ただし当該難燃性添加剤組成物の全重量%は100重量%に等しい。
【0029】
より特定の実施形態では、当該難燃性添加剤組成物は約20〜約65重量%の量の芳香族ビスホスフェート(a)を含み、ホスホネート(b)は約20〜約65重量%の量で存在し、当該窒素に富む化合物(c)は約20〜約65重量%の量で存在するが、ただし当該難燃性添加剤組成物の全重量%は100重量%に等しい。
【0030】
本発明の1つの実施形態では、芳香族ビスホスフェート(a)、ホスホネート(b)および窒素に富む化合物(c)は、ペレットの形態で導入される。このペレットは、これらの成分を固体でブレンドし、当業者に公知のいずれかの公知の技術によってペレット化することによって製造される。粉末の代わりにペレットを使用することは、PSフォームの押出の間のダスティング(dusting)を回避するのに役立つ。
【0031】
1つの別の実施形態では、芳香族ビスホスフェート(a)、ホスホネート(b)および窒素に富む化合物(c)は、粉末形態で一緒に十分に混合され、次いでペレット化されて、当該難燃剤濃縮物のペレットが製造される。
【0032】
1つの別の実施形態では、芳香族ビスホスフェート(a)、ホスホネート(b)および窒素に富む化合物(c)および任意に酸化防止剤、安定剤、核形成剤および色素も一緒に、粉末形態で混合され、次いでペレット化されて、ペレットが製造される。
【0033】
1つの実施形態では、本願明細書に記載される難燃性添加剤組成物を含有する熱可塑性ポリマー組成物が本願明細書に提示される。適切な熱可塑性ポリマーとしては、例えばポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートのうちの少なくとも1つなどの熱可塑性ポリエステルを挙げることができる。
【0034】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマーと、本願明細書に記載される難燃性添加剤組成物とを含む熱可塑性ポリマー組成物も本願明細書に提示される。当該難燃性添加剤組成物は、このような組成物の総重量の約2〜約40重量%、好ましくは約5〜約35重量%、最も好ましくは約15〜約35重量%の量で当該熱可塑性ポリマー組成物の中に存在し、残部は熱可塑性ポリマーである。
【0035】
この熱可塑性ポリマー組成物の中での難燃剤添加剤の上記の量は、この難燃性添加剤組成物の難燃有効量である。
【0036】
本発明の熱可塑性ポリマー組成物は、UL−94試験法に従った、HB、V−2、V−1、V−0および5VAの難燃性分類を有することができる。1つの実施形態では、この熱可塑性ポリマー組成物は、ほとんどの電子機器用途で必要とされる少なくともV−1またはV−0分類の難燃性を有することができる。
【0037】
本発明の熱可塑性ポリマー組成物は、ASTM D−256−81方法Cによって測定した場合の少なくとも35J/mのノッチ付きIZOD衝撃評価を有することができる。
【0038】
本発明の熱可塑性ポリマー組成物は、ASTM D−256−81方法Eによって測定した場合の少なくとも140J/mの逆ノッチ付きIZOD衝撃評価を有することができる。
【0039】
本発明の熱可塑性ポリマー組成物は、少なくとも190℃、好ましくは少なくとも195℃の熱変形温度を有することができる。
【0040】
本発明の別の実施形態では、当該熱可塑性組成物を含む成形品が提供され、好ましくはこの成形品は射出成形によって製造される。
【0041】
本発明の組成物で使用される熱可塑性ポリマーとしては、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン4.6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6.12、ナイロン6T、ならびにこれらと他のポリマー、例えばポリカーボネートまたはポリフェニレンエーテルおよびこれらのコポリマーとのブレンド;ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の熱可塑性組成物は、典型的には、例えば、コネクタ、フレーム、可動部品、変圧器およびマイクロモーターなどの電子部品の製造において有用である。
【0043】
また本発明の熱可塑性組成物は、他の添加剤、例えば酸化防止剤、安定剤、充填剤、たれ防止剤(anti−dripping agent)(ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素化されたホモポリマーもしくはコポリマーなど)または加工助剤、核形成剤(タルクなど)、色素など、ならびに他の難燃剤も含むことができる。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、熱可塑性ポリマー、ガラス繊維、および難燃性添加剤組成物を含む射出成形された部品、例えば、電子部品が提供される。この組成物は、ヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、アルミニウム メチル メチルホスホネートおよびメラミン塩を含む。
【0045】
別の実施形態では、上記の方法によって製造される、本願明細書に記載される難燃化物品、例えば、電子部品、好ましくは射出成形された電子部品が提供される。
【0046】
以下の実施例は、本発明を例証するために使用される。
【実施例】
【0047】
本発明を例証する難燃化ガラス強化ポリブチレンテレフタレート(PBT)の試料を調製するために、以下の手順を使用した。
1.材料
本研究で使用した材料を表1に提示する。
2.コンパウンディング
コンパウンディングの前に、PBTペレットをHeraeus instruments製空気循環オーブンの中で、120℃で4時間乾燥した。
PBTペレットおよびFR−6120顆粒をSartoriusの半分析天秤で秤量し、その結果、プラスチックの袋の中で手作業で混合することとなった。この混合物を、K−Tron製K−SFS 24定量(gravimetric)供給システムのポリマーフィーダーを介して押出機の主供給ポートへと供給した。ヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)および/またはAMMPおよび/またはMelapur 200をSartoriusの半分析天秤で秤量し、その結果、プラスチックの袋の中で手作業で混合することとなった。この混合物を、K−Tron製定量供給システムの粉末フィーダーを介して押出機の主供給ポートへと供給した。
ガラス繊維を、定量供給システムの側方の繊維フィーダーを介して5番目のゾーンへと供給した。
L/D=32でBerstorff製の同方向回転二軸押出機ZE25を用いてコンパウンディングを行った。コンパウンディング条件を表2に提示する。
押し出したストランドを、Accrapak Systems Ltd製ペレタイザー750/3でペレット化した。
得られたペレットを、Heraeus instruments製の空気循環オーブンの中で、120℃で4時間乾燥した。
3.射出成形
Arburg製Allrounder 500−150で射出成形によって試験片を調製した。射出成形条件を表3に提示する。
4.コンディショニング
試験前に、試験片を23℃で168時間コンディショニングした。
5.試験方法
本研究で使用した試験を表4に要約する。
【0048】
使用した百分率は、当該組成物の総重量に基づく重量%である。
【0049】
実施例1〜7の最初のシリーズにおいて、実施例1は、何らの難燃剤も含まない基準として使用されており、これはUL−94標準に従ってHorizontal Burning(水平燃焼、HB)と分類される。この分類は、難燃性の点では非常に劣っている。
【0050】
実施例2では、当該コンパウンドに6.5%ものPをもたらす25%のAMMPの添加は、難燃性のレベルを改善しなかった。
【0051】
実施例3では、10%のFR−6120(メラミンシアヌレート)とともに20%のAMMPを添加しても、Pおよび窒素(N)の含有量はそれぞれ5.2%および4.9%であるにもかかわらず、難燃性のレベルが改善されることはなかった。
【0052】
実施例4、実施例5および実施例6では、10%のMelapur 200(メラミンポリリン酸塩)を伴う20%のAMMP、または22.5%のAMMPおよび10%のFR−6120もしくはMelapur 200を添加すると、難燃性のレベルが改善し始め、それぞれクラスV−1またはV−0を得た。
【0053】
しかし、これらのコンパウンド(実施例2〜6)の射出成形によって製造した成形部品は、コネクタなどの電子部品の製造には適していない非常に劣る衝撃特性しか有していなかった。さらに、(実施例2〜6における)すべてのこれらの難燃剤は、溶融ブレンド可能ではなく、より充填剤のようであるので、従って、これらのコンパウンドおよび30%のガラス繊維を含有する組成物のメルトフロー特性は非常に悪く、薄い壁の部品の成形に困難を生じた。
【0054】
メルトフローおよび耐衝撃を改善するために、実施例7に示すとおり、ヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)(101〜108℃の溶融範囲を有する溶融ブレンド可能なリン酸エステル)をブレンド不可能なAMMPの代替物として使用することを試みた。より良好なメルトフローおよび耐衝撃は得られたが、UL−94クラスはHBへと低下したため、難燃性のレベルは失われた。
【0055】
より高い投入量のヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)はPBTの中での相溶性の限界に到達するため、それを試すことができなかった。PBTの中でより高い投入量のヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)を用いると、この難燃剤はこのポリマーマトリクスから外へ染み出し始め、これは射出成形の際に型の表面上にプレートアウトを引き起こし、成形部品の外観を悪化させる。
【0056】
驚くべきことに、実施例8および実施例9によって例証されるように、一方は金属ホスホネートに由来し、他方はヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)に由来する2つの異なるP源を、窒素に富む化合物(メラミンシアヌレート。またはメラミンポリリン酸塩も可能である)に由来する窒素源の組み合わせは、衝撃特性およびHDTに対する悪影響を最小にして、このガラス強化PBTにおいて著しくより効率的な難燃効率をもたらすことができるということが見出された。実際、窒素含有量(窒素原子含有量)をおよそ(4.3〜4.9%)に維持しつつ最終組成物の中で著しく少ないP含有量(実施例8および実施例9:2.5〜3.7%を実施例4および実施例5:6.5および5.9%と比較のこと)を用いて、同じ難燃性のレベルが達成される。
【0057】
実施例10〜12で見ることができるように、衝撃改質剤を選択して、これまでに記載したものと同じ本発明の難燃剤系を使用して高い難燃性のレベルを失うことなく衝撃特性のさらなる改善を得ることも本発明の目的である。PBT用途について推奨される従来の衝撃改質剤は、ポリカーボネートまたはメタクリレート−ブタジエン−スチレンターポリマー(MBS)(Makrolon 1143またはClearstrength E−922など)である。しかし、これらの衝撃改質剤は、衝撃特性をまったく改善しないどころか、逆にIZOD衝撃特性は低下したが(実施例10および実施例11)、他方で、エチレン、アクリルエステルおよびグリシジルメタクリレートのターポリマー(Lotader 8900)は、より高いHDTおよびまた高い難燃性を維持しつつIZOD衝撃を著しく向上させるということが見出された(実施例12)。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性添加剤組成物であって、
(a)少なくとも1つの芳香族ビスホスフェートと、
(b)少なくとも1つの金属ホスホネートと、
(c)少なくとも1つの窒素に富む化合物と、
を含む難燃性添加剤組成物。
【請求項2】
前記芳香族ビスホスフェートは、一般式(I):
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは、各々独立に、アリールまたはアルカリールであり、nは約1.0〜約2.0の平均値を有し、かつXはアリーレンである)
からなる群から選択される少なくとも1つの芳香族ビスホスフェートである、請求項1に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項3】
アリーレンは、レゾルシノール、ヒドロキノン、4.4’−ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFの群から選択される、請求項1に記載の難燃剤組成物。
【請求項4】
前記芳香族ビスホスフェートはヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)である、請求項2に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項5】
前記金属ホスホネートはアルミニウム メチル メチルホスホネートである、請求項1に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項6】
前記窒素に富む化合物は、メラミン塩、尿素、尿素誘導体、グアニジン、およびグアニジン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項7】
前記メラミン塩は、メラミンシアヌレート、メラミンリン酸塩、メラミンピロリン酸塩、メラミンポリリン酸塩、および本願明細書に記載される他のメラミン塩のいずれかからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項6に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項8】
前記芳香族ビスホスフェート(a)は約10〜約90重量%の量で存在し、前記ホスホネート(b)は約10〜約90重量%の量で存在し、かつ前記窒素に富む化合物(c)は約10〜約90重量%の量で存在する、請求項1に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項9】
熱可塑性ポリマーと、請求項1に記載の難燃性添加剤組成物とを含む、熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーは熱可塑性ポリエステルである、請求項9に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリエチレンテレフタレート、ならびにこれらのブレンドおよびコポリマーのうちの少なくとも1つである、請求項10に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの衝撃改質剤をさらに含む、請求項9に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項13】
前記衝撃改質剤は、エチレン、アクリルエステルおよびグリシジルメタクリレートのターポリマーである、請求項12に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項14】
充填剤をさらに含む、請求項9に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項15】
前記充填剤はガラス繊維である、請求項14に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項16】
熱安定剤および/または酸化防止剤をさらに含む、請求項9に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項17】
請求項9に記載の熱可塑性ポリマー組成物を含む成形品。
【請求項18】
前記成形品は射出成形によって製造される、請求項17に記載の成形品。
【請求項19】
請求項9に記載の熱可塑性ポリマー組成物を含む電子部品。
【請求項20】
熱可塑性ポリマー、ガラス繊維、および難燃性添加剤組成物を含む電子部品であって、前記組成物は、ヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、アルミニウム メチル メチルホスホネートおよびメラミン塩を含む、電子部品。
【請求項21】
難燃化物品を製造する方法であって、熱可塑性ポリマーと、任意に固体充填剤と、難燃性添加剤組成物とをブレンドすることを含み、前記難燃性添加剤組成物は、
(a)少なくとも1つの芳香族ビスホスフェートと、
(b)少なくとも1つの金属ホスホネートと、
(c)少なくとも1つの窒素に富む化合物と、
を含む方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法によって製造される難燃化物品。
【請求項23】
前記物品は射出成形された電子部品である、請求項22に記載の難燃化物品。

【公表番号】特表2012−515832(P2012−515832A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548025(P2011−548025)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/020905
【国際公開番号】WO2010/085404
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(510181677)アイシーエル−アイピー アメリカ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】