説明

難燃性が与えられた熱可塑材

【課題】スチレン重合体の臭素化で用いるに適している環境的に有益で80−90℃の範囲の沸点を有していて臭素化過程で比較的不活性でありかつ白色に近い臭化スチレン重合体生成物の生成に結び付く溶媒を提供する。
【解決手段】スチレン重合体と臭素化剤をルイス酸触媒および反応溶媒としてのブロモクロロメタンの存在下で接触させることによって得られた臭化重合体は、難燃性が与えられた熱可塑材の製造に有用である。ルイス酸触媒としては塩化アルミニウムが特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規溶媒の存在下でのスチレン重合体の臭素化によって得られた臭化重合体を用いて難燃化された熱可塑材に関する。
【背景技術】
【0002】
臭化スチレン重合体、例えば臭化ポリスチレンなどはエンジニアリング熱可塑材、例えばナイロン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどで用いられる充分に認識された難燃剤である。このような難燃剤の調製は、臭素化剤(brominating agent)、例えば臭素または塩化臭素などとポリスチレンをルイス酸触媒の存在下で反応させることで行われている。このようなスチレン重合体は、通常、非常に高い粘度を有するか或は固体であることから、それをより低い粘度の溶液に入っている溶質として反応に供給する必要があると思われていた。本技術には一般にハロゲン化炭化水素、より具体的には塩化炭化水素がその溶媒であるとして記述されている。一般に塩化メチレンおよびジクロロエタンが選択される溶媒であると考えられている。この2つの溶媒は明らかに魅力的であるにも拘らず、これらは欠点を伴う。
【0003】
塩化メチレンは上記工程で比較的不活性であることから好ましい。しかしながら、それは低い沸点を有しかつ地球のオゾン層を枯渇させる可能性があると疑われていることから欠点を有する。
【0004】
それとは異なり、ジクロロエタンは容認される沸点を有しそして使用時に塩化メチレンよりも環境的に望ましい。しかしながら、それは上記工程中に有意な度合で反応を起こしそしてそれの使用は極めて低い色の臭化ポリスチレン生成物の生成に結び付かないことから万能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、スチレン重合体の臭素化で用いるに適していて環境的に有益で80−95℃の範囲の沸点を有していて臭素化過程で比較的不活性でありかつ白色に近い臭化スチレン重合体生成物の生成に結び付く溶媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はスチレン重合体の臭素化方法に関し、この方法に、スチレン重合体の臭素化をルイス酸触媒および溶媒量のブロモクロロメタンの存在下で行うことを含める。
【0007】
このスチレン重合体の臭素化を、好適には、(1)臭素化剤をスチレン重合体とブロモクロロメタンとルイス酸触媒が入っている反応槽に加えるか、(2)(i)スチレン重合体とブロモクロロメタンの溶液で構成させたスチレン重合体流れと(ii)個別であるが実質的に同時に添加する臭素化剤流れをルイス酸触媒に加えるか、或は(3)臭素化剤とスチレン重合体とブロモクロロメタンを含む混合物をルイス酸触媒に加えることで行う。このような好適な添加様式以外に、臭素化剤と触媒とスチレン重合体の間の反応性接触をもたらす如何なる添加様式もブロモクロロメタンを工程溶媒として用いることで利点を受け得ると考えている。最初に記述した添加様式が通常の様式であり、これは米国特許第4,200,703号および米国特許第4,352,909号に例示されている。
【0008】
添加様式(2)は、スチレン重合体がいくらか実質的に複雑になる
(架橋する)前に臭素化剤の少なくとも一部を上記触媒の実質的に全体に渡って分散させ
ておくことを特徴とする。臭素化用触媒がAlClである時には、一般に、スチレン重合体を導入するに先立って臭素の一部を前以て上記触媒に添加しておく必要がある。そのような場合には、臭素化剤の少なくとも5モル%を前以て加えておく。臭素化剤の予備添加に関するさらなる詳細に関しては米国特許第4,975,496号を参照のこと。
【0009】
様式(3)の場合には、反応槽の外側または内側に位置させた装置内で上記成分を混合することを通して混合物を生じさせそしてその結果として生じた混合物を上記反応槽に送り込むのが好適である。加うるに、また、上記反応槽から出る流れを混合装置に送り込むことで、結果として生じる混合物全体(これは上記反応槽に戻る)に寄与させることも可能である。添加様式(3)では、また、ブロモクロロメタンとスチレン重合体と臭素化剤を少なくとも混合する前に、それらに臭素化用触媒を実質的に含めないのが好適である。語句「臭素化用触媒を実質的に含めない」は触媒の量を触媒有効量未満にすることを意味すると解釈されるべきである。そのような低い量にすると触媒作用による臭素化も架橋もほとんどか或は全く起こらないはずである。そのような量は、一般に、存在させるスチレン重合体の500ppm(重量基準)未満であろう。
【0010】
ブロモクロロメタン溶媒の使用量は、スチレン重合体といくらか生じる臭化スチレン重合体種を溶かし得る量である。また、このブロモクロロメタンの使用量は撹拌が容易な反応マス(mass)をもたらす量であるのが好適である。この溶媒の全体使用量は、一般に、スチレン重合体を溶かして容易に流れる溶液をもたらすに必要な量と、スチレン重合体以外の反応成分に伴って反応槽内に最初に存在し得る量である。多くの場合、スチレン重合体溶液の生成で用いるブロモクロロメタンの量を、スチレン重合体が溶液全体重量を基準にして3から30重量%入っている溶液が生じる量にする。
【0011】
このブロモクロロメタンに水を存在させるか否かは選択する個々の工程の水要求に従う。例えば米国特許第4,352,909号に記述されている如き無水方法は溶媒の水含有量に敏感である。他の方法、例えば米国特許第4,200,702号に開示されている方法では水が特定レベルで必要とされており、従って溶媒の水含有量に対してあまり敏感でない。水含有量から実質的に独立している更に別の方法では溶媒の水含有量がいくらか重要でない可能性がある。上記溶媒を水を工程に入れる主要な貢献物として用いない限り、大部分の実施者は、水の量が100ppm(重量基準)未満のブロモクロロメタンを選択するであろう。
【0012】
本発明に従って臭素化を受けさせるスチレン重合体は、ビニル芳香族単量体、即ち不飽和部分と芳香族部分を有する単量体から作られたホモポリマー類およびコポリマー類である。好適なビニル芳香族単量体は式:
C=CR−Ar
[式中、
Rは、水素、または炭素原子数が1から4のアルキル基であり、そしてArは、炭素原子数が6から10の芳香族基(環がアルキルおよびハロで置換されているいろいろな芳香族単位を包含)である]
で表される。そのようなビニル芳香族単量体の例はスチレン、アルファ−メチルスチレン、オルソ−メチルスチレン、メタ−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、パラ−エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ジメチルスチレン類、t−ブチルスチレン、数種のクロロスチレン類(例えばモノ−およびジクロロ変形)、数種のブロモスチレン類(例えばモノ−、ジブロモ−およびトリブロモ変形)である。ポリスチレンが現在のところ好適なスチレン重合体であり、臭素化を受けさせるスチレン重合体が2種以上のビニル芳香族単量体から作られたコポリマーである時には、スチレンを上記単量体の1つにしてスチレンが共重合性ビニル芳香族単量体の少なくとも50重量パーセント
を構成するようにするのが好適である。
【0013】
本発明に従って臭素化を受けさせるスチレン重合体は、スチレンの重合で用いられる技術に匹敵する塊状、即ちマス、溶液、懸濁または乳化重合技術で容易に生じる。重合はフリーラジカル、カチオン性またはアニオン性開始剤、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、アゾビス(イソブチロニトリル)、ジ−ベンゾイルパーオキサイド、過安息香酸t−ブチル、ジクミルパーオキサイド、過硫酸カリウム、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素のエーテル錯体、四塩化チタン、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、クミルカリウムおよび1,3−トリリチオシクロヘキサンなどの存在下で実施可能である。スチレンの重合(単独か或はスチレンと一緒に共重合し得る1種以上の単量体の存在下で行う)はよく知られており、重合方法を更に考察する必要はないと考える。本発明に従って分子量が少なくとも1,000、好適には少なくとも50,000、最も好適には150,000から500,000のスチレン重合体に臭素化を受けさせる。そのような分子量範囲外のスチレン重合体に本発明に従う臭素化を受けさせることも可能であるが、そのようにしても典型的には経済的な利点が得られない。
【0014】
本発明の方法で用いる触媒は、この触媒が高品質臭化ポリスチレン生成物の安全かつ効率良い製造を邪魔する働きをしないことを条件として、如何なる臭素化用触媒であってもよい。好適な触媒はルイス酸触媒であり、これの例はAlCl、AlBr、FeCl、FeBr、SbClおよびZrClである。Fe、AlおよびSbを用いて、それらを単に反応系に添加することを通してルイス酸触媒を生じさせることも可能である。また、触媒の混合物も使用可能である。上記触媒を反応系に添加すると、それは触媒活性を有意に失うことなくある種の反応を起こす可能性があり、例えばAlClはある程度であるがAlBrに変化する可能性がある。より好適な触媒はアルミニウムを基とする触媒および鉄を基とする触媒である。これらの中で最も好適な触媒はハロゲン化アルミニウムおよびハロゲン化鉄、特に臭化物および塩化物である。AlClおよびFeClが最も高度に好適であり、AlClが選択した触媒である。
【0015】
上記触媒を、求める触媒効果が得られるに充分な量で用いる。このような触媒量は上記触媒の活性に依存するが、一般的には、臭素化を受けさせるスチレン重合体の重量を基準にして0.2から20重量パーセントの範囲内、好適には0.5から15重量パーセントの範囲内に入るであろう。触媒の活性が高ければ高いほど使用量を少なくすることができる一方、触媒の活性が低くければ低いほど使用量を多くする。好適なアルミニウムを基とする触媒および鉄を基とする触媒の場合には、それらを0.5から5重量パーセントの範囲内の量で用いるのが好適である。AlClおよびFeClは0.2から10重量パーセントの範囲内の量で効果を示す。AlClを触媒として用いる場合には、0.5から3重量パーセントの範囲の量が好適である。
【0016】
本発明の方法で用いるに有用な臭素化剤は、上記重合体のビニル芳香族単位(本明細書では以降またスチレン単量体単位とも呼ぶ)に含まれる芳香族炭素を臭素化し得る如何なる臭素化剤であってもよい。本技術分野ではBrおよびBrClが良好な臭素化剤であると認識されており、前者が最も好適である。臭素は二原子形態で商業的に入手可能であるか、或はHBrの酸化で生じさせることができる。Brは液体または気体のいずれかで供給可能である。本方法で用いる臭素化剤の量は、供給する臭素化剤全体とスチレン重合体全体の全体モル比が上記重合体中のスチレン単量体1単位当たり1から3の臭素置換が起こるであろうようなモル比になる量であるべきである。一般的には、本発明の臭素化を受けさせたスチレン重合体生成物の臭素含有量が臭化重合体全重量を基準にして少なくとも30重量%になるようにするのが望ましい。この臭素化を受けた重合体の臭素含有量が50重量%以上、最も好適には臭素含有量が60重量%以上になるようにするのが好適である。本方法で用いる臭素化剤の量は、所定のスチレン重合体に関して選択した工程パ
ラメーターを用いて得ることができる最大の臭素含有量を考慮した所望の臭素含有量によって決定されるであろう。臭素含有量をより高くしようとする場合には臭素化剤の量を多くする必要がある。過臭素化(perbromination)に近付くにつれて最後の臭素置換を行うのがより困難になることを指摘する。臭素化剤の添加量をより多くしたとしてもそのような困難さが必ずしも軽減されるとは限らない。しかしながら、臭素含有量を最大限にしようと試みる場合には、臭素化剤を若干化学量論的過剰量で用いるのが役立つ。10%に及ぶ化学量論的過剰量が好適である。化学量論は、求める置換当たりに1モルのBrまたはBrClが必要であるとして容易に決定される。実施者は、実際、求める臭素含有量を重量基準で決定した後、理想化した基準を基に、上記を得るに必要な臭素化剤のモル数を計算するであろう。例えば、上記スチレン重合体がポリスチレンでありそして求める臭素含有量が68重量%であるとすると、スチレン単量体1単位当たり少なくとも2.7モルの臭素またはBrClが必要であり、これには所望の化学量論的過剰量は全く含まれていない。ポリスチレンに臭素化を受けさせる場合には40から70+重量%臭素の臭素含有量にするのが望ましい。理論的には臭素とスチレン単量体単位のモル比を0.9:1から3.0:1にするとそのような範囲を得ることができる。ポリスチレンに臭素化を受けさせる場合には、臭素の含有量が60から70+重量%になるようにするのが好適であり、臭素またはBrClを用いる場合、1.9:1から3.0:1の理論的モル比を用いてそれを得ることができる。本発明の方法を用いると容易に臭素を70重量%に及ぶ量、即ち67−68重量%の量で与えることができる。添加様式(2)および(3)の場合の工程で使用する臭素化剤の量は、供給材料混合物に入っている臭素化剤の量と上記触媒に前以ていくらか添加しておいた臭素化剤の量である。本明細書で指摘するように、添加様式(3)の場合には、臭素化剤を前以て触媒に添加しておく必要はなく、従って本方法で必要な臭素化剤の全部を上記混合物の送り込みを通して供給することができる。しかしながら、実施者が臭素化剤を前以て反応槽に添加することを選択する場合には、それを行うことも可能であり、そしてその臭素化剤の量は使用する臭素化剤全体量の一部になる。
【0017】
この上に臭素化剤とスチレン重合体の間の全体的な量的関係を記述してきたが、添加様式(3)の場合の供給材料混合物に含める上記2つの反応体の間の量的関係に関してはまだ充分には考察していない。供給期間中はいつでも、供給すべき混合物の臭素化剤含有量を一般にスチレン単量体単位1モル当たり1から8モルにする。この供給中の量的関係は一定であってもよいか或は上述した範囲内で変えることも可能である(上記範囲の外側にある程度外れてもそれによって工程の効率も生成物の品質も有意な害を受けない限り容認されることは本発明の範囲内である)。供給材料混合物の好適な範囲はスチレン単量体単位1モル当たり2.5から5モルの臭素化剤である。理解されるであろうように、この選択した臭素化剤とスチレン単量体単位の全体モル比よりも低いか或は高い臭素化剤とスチレン単量体単位のモル比を与える量で臭素化剤を供給材料混合物に入れて用いると、結果として、混合物成分としての臭素化剤もしくはスチレン重合体のいずれかが他方の成分が枯渇する前に枯渇してしまうであろう。例えば、実施者が臭素含有量が70重量%の臭化ポリスチレンを製造することを選択した場合には、臭素とスチレン単量体単位の全体モル比を3.0:1するのが適切であり、望まれるならばそれよりもいくらか過剰にするのも適切である。もし実施者が臭素とスチレン単量体単位のモル比が1:1の供給材料混合物を生じさせることを選択したとしたならば、その量では必要な臭素全体量を得る前にポリスチレンの供給が完了してしまうであろうことが分かるであろう。この場合、実施者は、最初に1:1の混合物を用いた後、ポリスチレン供給材料が枯渇した時点で臭素供給材料のみを用いて供給を継続する。他方、供給材料混合物のモル比が5:1になるように選択した時には、最初に臭素が枯渇するであろうから、ポリスチレンのみを用いて供給を完成させる必要があるであろう。一般的には、全体としてのモル比および供給材料混合物のモル比を少なくともいくらか同じにするのが好適である。しかしながら、全てのケースで、最初の供給材料に含める臭素とスチレン単量体単位のモル比を好適には少なくとも1:1
にすべきである。
【0018】
本発明の方法では本質的に無水、即ち水含有量が100ppm(重量基準)未満で有機不純物、例えば油、グリース、カルボニル含有炭化水素などおよび鉄の含有量が10ppm以内の臭素を用いるのが好適である。入手可能な商業グレードの臭素はそのような純度を持ち得る。しかしながら、そのような臭素を入手することができない場合には、便利に、臭素と濃(94−98パーセント)硫酸を3対1の体積比で混合することを通して、臭素に含まれる有機不純物および水の含有量を低くすることができる。2相混合物が生じ、それを10−16時間撹拌する。撹拌後、不純物と水が一緒に入っている硫酸相を沈降させて、それを臭素相から分離する。この回収した臭素相に蒸留を受けさせて臭素の純度を更に向上させることも可能である。
【0019】
ブロモクロロメタンとスチレン重合体が入っている溶液を生じさせると、この重合体の取り扱いが容易になりかつ臭素との混合が容易になる。本発明の溶液、例えば添加様式(1)の場合の反応槽内容物および添加様式(2)および(3)の場合のポリスチレン流れの重合体含有量を一般に5から50重量%にする。重合体含有量が5から30重量%の溶液がより高度に好適である。本方法におけるブロモクロロメタン全体量を考慮する時、この全体量には添加様式(2)および(3)の場合に上記触媒が撹拌可能なようにする目的で用いるブロモクロロメタンの量が含まれ、典型的には、スチレン重合体の量を5から40重量%にする。この範囲の上限は好適には20から35重量%のスチレン重合体であり、この重量%は、本方法で用いるブロモクロロメタンとスチレン重合体の全体量を基準にした重量%である。
【0020】
臭素化用触媒を臭素化剤とスチレン重合体に接触させる時にそれが溶液、スラリー、分散液または懸濁液の状態であり得るように上記触媒をある量のブロモクロロメタンに会合させておくのが好適である。それによって反応マスの混合が向上しかつ質量移動の品質が高くなる。このような会合は懸濁液であると考えるのが最良である。ブロモクロロメタンをブロモクロロメタンと触媒の全重量を基準にして95から99.9重量%、好適には99から99.8重量%用いるのが適切である。
【0021】
本発明の方法で用いる供給材料を供給する時、工程装置が過程が発熱的であることによる熱負荷、HBrの発生および他の工程懸念を処理する能力を有するか否かを考慮して、供給を迅速に行うべきである。簡単に言えば、重要な工程パラメーターの外側に外れることなく装置が容認する最も短い時間で供給を行うことができる。商業サイズのプラントの場合の供給時間は一般に0.5から3時間になるであろうと予測される。工程の規模が小さくなればなるほど供給時間が短くなると予測される。
【0022】
本発明の方法を−20から60℃の範囲内、好適には0から10℃の範囲内の温度で行う。圧力は大気圧、大気圧以下または大気圧以上であってもよい。
【0023】
本発明の方法を実施する時、臭素化用触媒、即ちAlClを本質的に無水のブロモクロロメタンに懸濁させて撹拌が容易な懸濁液を生じさせる。この懸濁液をグラスライニングの撹拌反応槽内で調製して、−5から10℃の範囲内の温度にもって行く。この混合物を不活性な乾燥雰囲気下の反応槽内に保持する。スチレン重合体とブロモクロロメタンの溶液を調製した後、臭素の流れと密に混合することで、均一な混合物を生じさせる。この混合物を冷却して、上記反応槽内で撹拌している臭素化用触媒懸濁液に供給する。このスチレン重合体溶液と臭素化剤の密な混合は数多くの様式で達成可能である。例えば上記溶液と臭素化剤を混合装置、例えば上記反応槽に入っている懸濁液の液面下のある地点にまで伸びているディップチューブ(dip tube)の下方末端の所に位置させた混合用ノズルなどに送り込んでもよい。この混合装置は上記溶液と臭素化剤の密な混合を得るこ
とを意図したものである。また、この混合装置は上記密な混合物と触媒懸濁液に混合エネルギーを供給地点で与える働きもする。上記スチレン重合体溶液と臭素化剤の密な混合を得る別の技術は、インラインミキサー、即ち衝突ミキサー(impingement mixer)が備わっている反応槽外側ループ(exterior reactor loop)の使用である。このように反応槽の外側に位置させたループの使用は、一般に、最初に反応槽に臭素化用触媒のスラリー、即ち懸濁液を仕込んだ後その反応槽から1つの流れを取り出してそれを次に反応槽の外側に位置するミキサーに送り込むことを含む。また、少なくとも臭素とスチレン重合体から生じさせた混合物も上記ミキサーに送り込むことで、このミキサーに送り込んだ上記2つの供給材料から2番目の混合物を生じさせる。その後、この2番目の混合物を上記反応槽に戻す。上記反応槽から取り出された流れは最初上記触媒を含んでいる。上記2番目の混合物を上記反応槽に供給して工程を進行させると、その取り出される流れは触媒と一緒に臭化ポリスチレンを含むようになり始める。この工程を継続している間にポリスチレンの臭素化度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】反応槽の外側に位置させるループを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1において、反応槽を一般的に番号1で表示して示す。反応槽1は撹拌反応槽であり、これに、最初、触媒とブロモクロロメタンを含んで成る懸濁液を入れておく。1つの流れを反応槽1から反応槽出口導管4に通して取り出してポンプ5に送り込む。ポンプ5によって上記流れを加圧し、その結果として、この流れは導管7を通って衝突ミキサー10に勢い良く送り込まれる。臭素が導管20によってポンプPに送り込まれると同時に、ポリスチレンとブロモクロロメタンの溶液が導管22によってポンプPに送り込まれる。ポンプPおよびPによるインラインミキサー11への送り込みによって臭素とポリスチレンとブロモクロロメタン溶媒の密な混合物が得られる。この密な混合物は衝突ミキサー10に送り込まれ、その中で、反応槽1から来る流れと一緒に密に混ざり合う。衝突ミキサー10の排出物は導管33を通って反応槽1に送り込まれる(供給口3を通って)。反応槽1の内容物の取り出しおよび衝突ミキサー10への送り込みを臭素およびポリスチレン/ブロモクロロメタン溶液の少なくとも実質的に全部が送り込まれるまで継続して行う。
【0026】
理解されるであろうように、反応槽1の内容物の組成は上記臭素およびポリスチレン/ブロモクロロメタン溶液を供給している間変化する。最初、反応槽1の内容物は触媒とブロモクロロメタンを含んで成る。工程が進行するにつれて、反応槽の内容物は臭化ポリスチレンを含むようになってその量がより豊富になり始め、この臭化ポリスチレンのいくらかは臭素化が不完全でありかつそれのいくらかは求める臭素化度のものである。加熱処理(cook)を行っている間に最終的な臭素化が起こる。この加熱処理期間中、混合を補助する目的で、反応槽内容物の取り出しを継続して行ってもよい。
【0027】
この上で指摘したように、スチレン重合体の臭素化は置換反応である。この反応で生じる主な副生成物はHBrである。この工程で生じたHBrは、通常、反応槽内容物の上に存在する塔頂空間内に見られる。このHBrを取り出して水スクラバーに送り込むか或は乾燥HBrとして貯蔵するのが好適である。不活性な乾燥ガス、即ち窒素を反応槽内容物の上のパッド(pad)として用いてそこに存在する水の量を最小限にすることができる。
【0028】
スチレン重合体および/または臭素化剤供給材料を供給している間、場合により、反応槽を低温、例えば0から10℃、好適には4から8℃に保持する。
【0029】
この供給が終了した後、好ましくは、反応槽を0.5から6時間、好適には1から3時間の加熱処理時間保持する。加熱処理温度を0から10℃の範囲内、好適には2から5℃の範囲内にする。この加熱処理時間は、求める臭素化度が得られるまで臭素化を継続するためのものである。この時間は臭素化剤およびスチレン重合体を供給している間の反応パラメーターが穏やかな臭素化条件を与える場合には長くてもよく、或は選択したパラメーターがより苛酷な臭素化条件を与える場合には短くてもよい。この加熱処理時間は反応槽内に存在する時間であり得る。
【0030】
この加熱処理時間後、反応マスを水、亜硫酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムで処理して触媒を失活させ、いくらか残存する臭素化剤を分解させかつ反応マスのpHを調整してもよい。このような処理を行った後、反応マスを沈降させて2相反応マスを得るが、これには有機相(臭化スチレン重合体生成物が溶質として入っている)と水相が含まれている。この水相をデカンテーションで除去した後、残存する有機相からブロモクロロメタン成分を除去する。この有機相を沸騰水の中に注ぎ込むことを通して上記除去を達成するのが最も便利である。溶媒が除去されるにつれて、臭化スチレン重合体生成物が沈澱を形成してくる。この沈澱物は如何なる液体−固体分離技術で回収されてもよく、例えば濾過および遠心分離などで回収可能である。次に、この回収した沈澱物を乾燥させる。
【0031】
ブロモクロロメタン溶媒を乾燥させておく、即ちそれが含有する水の量を200ppm(重量基準)未満、より好適には水の含有量を150ppm未満または100ppm未満にしておくのが好適である。
【0032】
以下に示す実施例で本発明の方法の特徴を説明する。HunterLab Color
Quest Spectrocolorimeterを用いて行った透過率測定でデルタE値と一緒にそれから引き出したL、aおよびb値を得た。透過用セルは20mmの路長を与えるものであった。色が「デルタE−lab」の単位で報告されるようにソフトウエアを設定した。標準化/較正をクロロベンゼンを基にして行い、上記装置の黒色および白色標準タイルを用いて得た。試験を受けさせるべき臭化ポリスチレンサンプルの調製を、サンプルを5グラム計量して50mlの遠心分離管に入れることを通して行った。次に、この管にクロロベンゼンを45グラム入れた。この管をリストアクション(wrist−action)振とう器で1時間振とうする。この振とう期間が経過した後でも溶液が透明でない場合には、遠心分離を4000rpmで10分間行う。溶液がそれでも透明でない場合には、遠心分離を更に10分間行う。溶液がそれでも透明でない場合には、これの分析を行うのは不可能である。溶液が透明であると仮定して、この溶液を上記20mmのセルに注いで満たした後、上記比色計内に位置させる。上記較正を受けさせた装置を色が「デルタE−lab」として報告されるように設定する。
【0033】
実施例I
ポリスチレンのバッチ式臭素化
ブロモクロロメタン溶媒
165.0g(1.585モル)のポリスチレン(PS)を3.3g(PSを基準にして2.9重量%)の塩化アルミニウムの存在下で1,188ml(2,364g)の無水ブロモクロロメタン(BCM)に溶解させて冷却した(5℃)溶液に臭素(683.5g、4.277モル)を75分かけて加えた。反応中に発生するHBrをスクラバーに送って苛性溶液で洗浄した。窒素パージ(purge)を伴わせて5℃の加熱処理(cook)時間を2時間設けた。反応槽の内容物を2,444ml(4,863g)のBCMで希釈した後、2,000mlの水、亜硫酸ナトリウム水溶液(2,000mlの水に30g入っている)そして次に2,000mlの水で洗浄した。水相と有機相の分離が起こった。この有機相を90℃の水7,000mlに撹拌しながら分割して加えた。Dean−S
tarkトラップを用いてBCMを戻り留出液から除去した。上記混合物を冷却した後、固体状生成物を濾過し、洗浄(水を使用)した後、150℃で乾燥させることで、臭化PSを477g(95%収率)得た。分析の結果を表に示す。
【0034】
実施例II
ポリスチレンのバッチ式臭素化
二塩化エチレン溶媒
PSの臭素化を表に示す以外は実施例Iと同様に繰り返した。使用した二塩化エチレン(EDC)の量は各段階で用いたBCMと同じ体積比であった。生成物の分析結果を表に示す。
【0035】
実施例III
ポリスチレンの臭素化でポリスチレンと臭素を予備混合
ブロモクロロメタン溶媒
冷却用ジャケットが備わっているY字形の混合装置に供給ラインを2つ取り付けて、各々をポンプにつなげた。この供給ラインの1つを通して臭素を送り込みそしてもう一方を通してPSとBCMが入っている溶液を送り込んだ。その冷却(5℃)Y字形混合装置に臭素(93.3g、31.3ml、即ち0.583モル)を1ml/分(19.4ミリモル/分)の搬送速度およびPS/BCM溶液(PSが22.4g、即ち0.215モルで無水BCMが97ml、即ち194g)を4ml/分(7.17ミリモル/分)の搬送速度で同時に送り込んだ(それらの個々の供給ラインから)。次に、その結果として生じた密な混合物を、その混合装置から、0.45g(PSを基準にして2重量%)の塩化アルミニウムが49ml(98g)の無水BCMに入っている冷(5℃)懸濁液の中に送り込んだ。反応中に発生したHBrをスクラバーに送り込んで苛性溶液で洗浄した。供給を35分で終了した後、その混合物を5℃で2時間加熱処理した。水そして亜硫酸ナトリウムを用いた洗浄を行った後、この上に記述したように500mlの熱(90℃)水を用いて沈澱を起こさせることを通して固体状のBrPSを単離した。全体で66gのBrPSを得た(収率97%)。分析結果を表に示す。
【0036】
実施例IV
ポリスチレンの臭素化でポリスチレンと臭素を予備混合
二塩化エチレン溶媒
PSの臭素化を表に示す以外は実施例IIIと同様に繰り返した。使用したEDCの量は各段階で用いたBCMと同じ体積比であった。分析結果を表に示す。
【0037】
実施例V
ポリスチレンの臭素化でポリスチレンと臭素の個別流れを共供給
ブロモクロロメタン溶媒
塩化アルミニウム(3.54g、PSを基準にして2重量%)を379ml(754g)の無水BCMに懸濁させた。3℃に冷却した後、10ml部の臭素を加えた。この懸濁液にPS/BCM溶液(791ml、即ち1,574gの無水BCMに175g、即ち1.681モルのPSが溶解)を15ml/分(25.47ミリモル/分)の速度でポンプ輸送すると同時に臭素(全体で725g、230ml、4.537モル、2.7当量)を滴下漏斗から3ml/分(58ミリモル/分)の速度で滴下した。反応中に発生するHBrをスクラバーに送って苛性溶液で洗浄した。上記混合物を供給中および加熱処理期間全体に渡って5℃に保持した。3.3時間の加熱処理時間後、上記混合物をBCM(1,068ml、即ち2,127g)で希釈した後、亜硫酸ナトリウム水溶液そして水で洗浄した。生成物が水中で沈澱し、それをこの上のセクションで記述した如く単離した。全体で522gのBrPSを得た(98%収率)。分析の結果を表に示す。
【0038】
実施例VI
ポリスチレンの臭素化でポリスチレンと臭素の個別流れを共供給
二塩化エチレン溶媒
PSの臭素化を表に示す以外は実施例Vと同様に繰り返した。使用したEDCの量は各段階で用いたBCMと同じ体積比であった。分析結果を表に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
上記表から分かるであろうように、ブロモクロロメタンを用いると、この工程溶媒の劣化はほとんどか或は全く起こらず、色とデルタE値が優れた臭化生成物が得られる。
【0041】
実施例VII
循環グリコール浴で0℃で冷却されている1Lのジャケット付きフラスコ内で0.910g(6.82ミリモル)部の塩化アルミニウムを190gの乾燥(水の量が13ppmの)ブロモクロロメタン(BCM)に懸濁させた(250rpmで撹拌)。この反応フラスコの上に取り付けたジャケット付き混合用T字管(グリコールで冷却)に、乾燥BCM中10.00重量%のポリスチレン溶液を8.46g/分(8.13ミリモル/分)の一定速度で419.86g部(403.1/nミリモル)ポンプ輸送した。それと同時に、上記混合用T字管に臭素を6.09g/分(38.1ミリモル/分)の一定速度でポンプ輸送して、そのT字管の所でそれを上記ポリスチレン溶液と一緒(Br/PSの供給モル比は4.69)にした後、上記反応フラスコ内で撹拌している触媒懸濁液の中に落下させた。この臭素の供給を30.0分後に止め(1143.5ミリモル)そして上記ポリスチレン溶液の供給を49.6分後に止めた(Br/PSの全モル比は2.84である)。このポリスチレンが上記反応槽フラスコに完全に移送されることを確保する目的で、160gの乾燥BCMを用いて上記重合体溶液の供給系を濯いだ。反応温度を添加全体に渡って0−5℃に保持した後、2時間の加熱処理時間を設けた。10重量%のグルコン酸ナトリウム水溶液を16.4g添加することで触媒を失活させ、そして10重量%のNaOH水溶液を60.7g添加してpHを14に調整した。この反応混合物を10重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した後、水で洗浄した。激しく撹拌している熱(90℃)水に有機相を添加することを通して生成物を回収した。この熱水から溶媒が留出することで、臭化ポリスチレン生成物が水に入っているスラリーが残存した。濾過後、粉末状の固体
を水で濯いだ後、真空オーブン(150℃/2トール/5時間)に入れて一定重量になるまで乾燥させた。この乾燥させた固体の重量は127.08g(95%収率)であった。この生成物が含有する全Br量は68.7重量%で加水分解性Brの量は3600ppmであった。HunterLabによる溶液(クロロベンゼン中10重量%)の色値はL=94.58、a=−2.79、b=17.29、デルタE=18.34であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の臭化スチレン重合体は、熱可塑材、特にエンジニアリング熱可塑材、例えばポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートおよびナイロンなどに入れる難燃剤として用いるに適切である。本臭化重合体の使用量は難燃をもたらす量である、即ち臭化重合体の使用量を熱可塑材100重量当たり5から20重量%にする。従来技術に教示されている如き通常のブレンド技術を用いることができる。加うるに、必要に応じて、通常の添加剤、例えばUV安定剤、衝撃改良剤、難燃相乗剤、染料、顔料、充填材、可塑材、流動助剤、抗酸化剤、フリーラジカル開始剤などを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:反応槽
3:供給口
4:出口導管
5、P、P:ポンプ
7、20、22、33:導管
10:衝突ミキサー
11:インラインミキサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族単量体の重合体の臭素化をルイス酸触媒および溶媒量のブロモクロロメタンの存在下で行うことで生じさせたビニル芳香族単量体の臭化重合体で難燃性が与えられた熱可塑材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−215561(P2009−215561A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109178(P2009−109178)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【分割の表示】特願平10−515658の分割
【原出願日】平成9年9月5日(1997.9.5)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】