説明

難燃性クロロプレンゴム発泡体及びその製造方法

【課題】難燃性に優れたゴム発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】クロロプレンゴム100重量部に塩素化パラフィン5〜20重量部、三酸化アンチモン10〜30重量部及び発泡剤、架橋剤、プロセスオイル、充填剤、補強剤を添加混練し、密閉金型中に充填して加圧下に加熱し、発泡剤を部分的に分解後除圧して中間発泡体を取り出した後、再度常圧下に加熱して残存発泡剤を分解後除圧して発泡体を得、得られた発泡体を常圧下にて60〜100℃で加熱して後架橋させてなる難燃性ゴム発泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性クロロプレンゴム発泡体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム発泡体は、種々の分野で広範に使用されているが、家電製品や自動車等の交通機関、住宅関連で使用されるゴム発泡体には、特に難燃性が厳しく求められている。従来からこの目的のために、各種ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、膨張性黒鉛、無機含水化合物等が添加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−206854号公報
【特許文献2】特許第3661285号公報
【特許文献3】特開2000−26659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献記載のゴム組成物はシート状ソリッドであり、難燃性に優れたブロック状のゴム発泡体は得られていない。
【0005】
本発明者らは、クロロプレンゴムに難燃剤、発泡剤、架橋剤等を添加して、2段発泡法により、難燃性に優れ、伸び特性の良いブロック状の難燃性クロロプレンゴム発泡体を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る難燃性クロロプレンゴム発泡体は、クロロプレンゴム100重量部に塩素化パラフィン5〜20重量部、三酸化アンチモン10〜30重量部及び発泡剤、架橋剤、プロセスオイル、充填剤、補強剤を添加混練して加熱、発泡させたものである。
【0007】
上記本発明に係る発泡体において、塩素化パラフィンの添加量は5〜20重量部であることが好ましい。塩素化パラフィンが5重量部未満の場合は、難燃性に劣り、20重量部を超える場合は、発泡を阻害し、満足な発泡体が得られない。
【0008】
上記本発明に係る発泡体において、三酸化アンチモンの添加量は10〜30重量部であることが好ましい。三酸化アンチモンが10重量部未満の場合は、難燃性に劣り、30重量部を超える場合は、発泡を阻害し、満足な発泡体が得られない。
【0009】
本発明に係る難燃性クロロプレンゴム発泡体の製造方法は、クロロプレンゴム100重量部に塩素化パラフィン5〜20重量部、三酸化アンチモン10〜30重量部及び発泡剤、架橋剤、プロセスオイル、充填剤、補強剤を添加混練し、密閉金型中に充填して加圧下に加熱し、発泡剤を部分的に分解後除圧して中間発泡体を取り出した後、再度常圧下に加熱して残存発泡剤を分解後除圧して発泡体を得、得られた発泡体を常圧下にて60〜100℃で加熱して後架橋させるものである。
【0010】
上記本発明に係る製造方法において、塩素化パラフィンの添加量は5〜20重量部であることが好ましい。塩素化パラフィンが5重量部未満の場合は、難燃性に劣り、20重量部を超える場合は、発泡を阻害し、満足な発泡体が得られない。
【0011】
上記本発明に係る製造方法において、三酸化アンチモンの添加量は10〜30重量部であることが好ましい。三酸化アンチモンが10重量部未満の場合は、難燃性に劣り、30重量部を超える場合は、発泡を阻害し、満足な発泡体が得られない。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、難燃性に優れたブロック状のクロロプレンゴム発泡体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明でいうクロロプレンゴムとは、クロロプレンの重合によって得られる合成ゴム(CR)である。
【0014】
本発明でいう発泡剤とは、ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;アゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等である。
【0015】
本発明でいう架橋剤とは、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物、ジチオカルバミン酸塩のジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄等、ポリアミン系化合物、ポリカルボン酸又はその酸無水物、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、高級脂肪酸金属塩、シアヌール酸類、尿素類、グアニジン類、イミダゾール類、硫黄又は硫黄供与性化合物等である。
【0016】
本発明でいうプロセスオイルとは、パラフィン系、ナフテン系、アロマティック系オイル等である。
【0017】
本発明でいう充填剤とは、クレー、炭酸カルシウム等が、補強剤充填剤としてはカーボンブラック、シリカ、タルクその他常用のゴム配合剤等を必要に応じて添加することができる。
【0018】
本発明の難燃性クロロプレンゴム発泡体の製造方法は、用いた発泡剤や架橋剤などによる発泡温度や架橋温度などにより、従来公知の方法及び適宜の条件で行うことができる。特に好ましい方法及び条件を下記に記述する。
【0019】
クロロプレンゴム100重量部に塩素化パラフィン5〜20重量部、三酸化アンチモン10〜30重量部及び発泡剤、架橋剤、プロセスオイル、充填剤、補強剤を添加し、これをミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機等によって練和する。次いで、得られた発泡性樹脂組成物をプレス中の金型に充填し、一定時間加圧下に120〜140℃で加熱して発泡剤を部分的に分解し、中間発泡体を生成させる。次いで、該中間発泡体をプレス中の金型に載置し、一定時間常圧下に150〜170℃で加熱して残存する発泡剤を分解し、除圧して発泡体を得る。
【0020】
得られた発泡体をオーブンなどの加熱槽に入れ、常圧下にて60〜100℃で後架橋させる。
【0021】
難燃性評価
米国UL(Underwriters Laboratories)94の垂直燃焼試験方法に従って測定した。難燃性基準V−0に合格したものを難燃性ありとした。
【実施例1】
【0022】
クロロプレンゴム(商品名:スカイプレンB−31、東ソー株式会社製)100重量部、4,4‘−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(商品名:ネオセルボン、永和化成工業株式会社製)12重量部、塩素化パラフィン(商品名:塩パラ70、味の素ファインテクノ株式会社製)10重量部、三酸化アンチモン15重量部、酸化亜鉛5重量部、酸化マグネシウム4重量部、プロセスオイル6.5重量部、カーボンブラック10重量部、シリカ10重量部、クレー10重量部からなる組成物を130℃に加熱されたプレス内の金型(20×150×150mm)に充填し、70kg/cmの圧力で40分加熱して中間発泡体(41×250×250mm)を生成した。
【0023】
次いで、中間発泡体を160℃に加熱されたプレス内の金型(44×350×350mm)に載置し、プレス外圧50kg/cmの圧力で40分加熱して取り出し、発泡体(52×400×400mm)を得、得られた発泡体を80℃のオーブン中に8時間入れて、後架橋を行った。
【0024】
得られた発泡体の見掛け密度は180kg/cmで、難燃性規格UL94V−0に合格した。
【実施例2】
【0025】
塩素化パラフィン5重量部、三酸化アンチモン10重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0026】
得られた発泡体の見掛け密度は176kg/cmで、難燃性規格UL94V−0に合格した。
【実施例3】
【0027】
塩素化パラフィン20重量部、三酸化アンチモン30重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0028】
得られた発泡体の見掛け密度は193kg/cmで、難燃性規格UL94V−0に合格した。
比較例1
【0029】
塩素化パラフィン3重量部、三酸化アンチモン10重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0030】
得られた発泡体の見掛け密度は174kg/cmであったが、難燃性規格UL94V−0には合格しなかった。
比較例2
【0031】
塩素化パラフィン30重量部、三酸化アンチモン30重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させたが、過剰の難燃剤により発泡が阻害され、満足な発泡体が得られなかった。
比較例3
【0032】
塩素化パラフィン5重量部、三酸化アンチモン5重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0033】
得られた発泡体の見掛け密度は166kg/cmであったが、難燃性規格UL94V−0には合格しなかった。
比較例4
【0034】
塩素化パラフィン20重量部、三酸化アンチモン40重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させたが、過剰の難燃剤により発泡が阻害され、満足な発泡体が得られなかった。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明の方法によれば、難燃性に優れたクロロプレンゴム発泡体を製造できる。本発明の方法によって製造された難燃性クロロプレンゴム発泡体は、家電製品や自動車等の交通機関、住宅関連で使用されるパッキン、シール材等に適用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンゴム100重量部に塩素化パラフィン5〜20重量部、三酸化アンチモン10〜30重量部及び発泡剤、架橋剤、プロセスオイル、充填剤、補強剤を添加混練して加熱、発泡させてなる難燃性ゴム発泡体。
【請求項2】
クロロプレンゴム100重量部に塩素化パラフィン5〜20重量部、三酸化アンチモン10〜30重量部及び発泡剤、架橋剤、プロセスオイル、充填剤、補強剤を添加混練し、密閉金型中に充填して加圧下に加熱し、発泡剤を部分的に分解後除圧して中間発泡体を取り出した後、再度常圧下に加熱して残存発泡剤を分解後除圧して発泡体を得、得られた発泡体を常圧下にて60〜100℃で加熱して後架橋させてなる難燃性ゴム発泡体の製造方法。


【公開番号】特開2011−127047(P2011−127047A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288630(P2009−288630)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000177380)三和化工株式会社 (21)
【Fターム(参考)】