説明

難燃性セルロース系不織布

本発明は、水流交絡された難燃性不織布、特に技術告示604にしたがって燃焼した場合の布重量損失の全パーセントを最少とする、自己消火性繊維を含んでなるセルロース系難燃性布を指向する。寝具部品において天然繊維の布を使用することは、この布に関連する柔軟性と耐久性のために望ましいことである;しかしながら、セルロースなどの天然繊維は極めて燃えやすく、それゆえ寝具部品においてしばしば求められる適正な燃焼防止性の提供能力を欠く。本発明によれば、モダクリル繊維などの少量の自己消火性繊維をこの天然繊維とブレンドし、水流交絡して、柔軟であり、難燃性であり、そして寝具物品に好適である不織複合布を形成する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願へのクロスリファレンス】
【0001】
この出願は、2004年2月9日に出願され、そして開示が引用により本明細書に組み込まれている、暫定出願米国特許出願番号60/542,964の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、全般的には水流交絡された難燃性不織布に関し、特に技術告示604にしたがって燃焼した場合布重量損失の全パーセントを最少とするように、自己消火性繊維を含んでなるセルロース系難燃性布に関する。
【背景技術】
【0003】
30年以上前に、燃焼性標準は消費者製品安全委員会により16C.F.R.§1632の下に制定された。これらの標準は、くすぶっているたばこに暴露した場合の着火に抵抗するマットレスの燃焼性の要求に対応するものであった。しかしながら、この米連邦規制基準は、マッチ、ライターおよびろうそくにより生じる小直火に暴露した場合のマットレスが着火に抵抗するという必要性に対応できるものでなかった。
【0004】
技術進歩は、燃焼防止性が著しく良好なマットレス、ならびに寝具部品を提供するようになった。これらの進歩を考慮して、カリフォルニア議会は、消費者製品安全委員会がマットレスおよび寝具が直火着火試験に確実に合格する改正された標準を確立することを命じた。下院法案603(AB603)として知られているが、カリフォルニア議会はこの改正された標準が2004年1月1日に発効することを命じた。
【0005】
難燃性短繊維は当業界で既知である。更には、難燃性繊維は寝具用途の不織布の加工において使用されてきた。不織布は、布の製造効率によって在来のテキスタイルに比してこれらの布に対するもたらされる経済的利点が著しい広範で多様な用途における使用に好適である。しかしながら、布の性質を比較した場合、不織布は、通常、特に多使用用途において表面磨耗、けば立ちおよび耐久性の点で不利な立場に立たされてきた。布中の繊維またはフィラメントの交絡の結果であって、改善された布の完全性をもたらす改善された性質の水流交絡された布が開発されてきた。交絡の後、バインダー組成物の塗布によりそして/あるいは交絡された繊維マトリックスの熱安定化により、布耐久性が更に増進可能である。
【0006】
Evansへの特許文献1は、引用により本明細書に組み込まれているが、不織布の水流交絡を行うための方法を開示している。更に最近には、三次元イメージ転写装置上で水流交絡を行うことにより交絡された布にイメージまたはパターンを付与する水流交絡法が開発された。このような三次元イメージ転写装置は、引用により本明細書に組み込まれている、特許文献2で開示されていて、このようなイメージ転写装置の使用は増進された物理的性質ならびに美的に心地よい外観の布を提供するのに望ましい。
【0007】
従来、引用により本明細書に組み込まれている、Kentらへの特許文献3で述べられているように、不織布は難燃性布の製造に有利に使用されてきた。通常、このタイプの用途に使用される不織布は、ニードルパンチングにより交絡され、集積化されてきたが、これは、時にはニードルフェルト化と呼ばれ、繊維状ウエブ構造物からのかかりのある針を挿入し、引き抜くことを伴う。このタイプの加工はこの繊維状構造物を集積化し、それに完全性を付与するように作用する一方で、このかかりのある針は多数の構成繊維を不可避的に剪断し、そして望ましくないこととしてはこの繊維状構造物中に孔を作る。ニードルパンチングは、得られる布の強度に対してマイナスである可能性があり、布が充分な強度を呈するために比較的高い坪量を有することを必要とする。
【特許文献1】米国特許第3,485,706号明細書
【特許文献2】米国特許第5,098,764号明細書
【特許文献3】米国特許第6,489,256号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
費用効果が高く、柔軟であるが、耐久性があり、そして限定ではないが、マットレス部品、マットレスカバー、羽根布団、ベッドカバー、キルト、カバーレット、デュベット、枕、枕カバーを含む種々の寝具物品、他の家庭使用に加えて、保護用アパレル用途、および工業用最終使用用途に好適である、費用効果が高い難燃性不織布に対する必要性がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水流交絡された難燃性不織布、特に自己消火性繊維を含んでなり、技術告示604にしたがって燃焼した場合の布重量損失の全パーセントを最少とするセルロース系難燃性布を指向する。
【0010】
寝具部品において天然繊維の布を使用することは、この布に関連する柔軟性と耐久性のために望ましいことである;しかしながら、セルロースなどの天然繊維は極めて燃えやすく、それゆえ寝具部品においてしばしば求められる適正な燃焼防止性の提供能力を欠く。本発明によれば、モダクリル繊維などの少量の自己消火性繊維をこの天然繊維とブレンドし、水流交絡して、柔軟であり、難燃性であり、寝具物品に好適であり、そして充填物を入れた寝具物品における直火抵抗性を測定するための技術標準である技術告示604にしたがって試験した場合に最少の重量損失を呈する不織複合布を形成する。
【0011】
本発明のセルロース系布は、単一層であってもよく、あるいは不織布、織布、および/またはスクリムなどの支持層から選択され得る更なる層を含んでなってもよいと考えられる。
【0012】
更には、この不織布は、限定ではないが、三次元イメージ転写装置、エンボスされたスクリーン、三次元に表面仕上げされたベルト、または孔あきドラムを含む小孔のあいた表面上で水流交絡され得、好適には、特定の最終使用用途に対して布の美的品質を更に増進する。
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、次の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は種々の形の態様が可能であるが、本発明で好ましい態様は図面中で示され、この明細書でこれ以降説明されるであろうが、これは、本発明の開示は本発明の例示と考えられ、そして本発明を例示された特定の態様に限定するようには意図されていないということを理解することによるものである。
【0015】
本発明の難燃性不織布は、費用効果が高く、柔軟であるが、耐久性があり、そして限定ではないが、マットレス部品、マットレスカバー、羽根布団、ベッドカバー、キルト、カバーレット、デュベット、枕、枕カバーを含む種々の寝具物品、他の家庭使用に加えて、保護用アパレル用途、および工業用最終使用用途に好適である。
【0016】
引用により本明細書に組み込まれている、Evansへの米国特許第3,485,706号は、不織布の水流交絡を行う方法を開示している。図1を参照すると、難燃性セルロース系不織布を形成する本発明の方法を実施するための装置が図示されている。セルロース系およびモダクリル繊維成分を梳き、場合によってはクロスラップして、Pと表示した前駆体ウエブを形成し、これを水力エネルギーにより団結させて、不織布を形成する。
【0017】
場合によっては、この前駆体ウエブは、限定ではないが、三次元イメージ転写装置、エンボスされたスクリーン、三次元に表面仕上げされたベルト、または孔あきドラムを含む小孔のあいた表面上で更に交絡され、好適には、特定の最終使用用途に対する布の美的品質を更に増進する。
【0018】
限定ではないがメラミン繊維、American Kynol,Inc.からのKynoI(商標)繊維などのフェノール系繊維、R.K.Textiles Composite Fibres Limitedへの登録商標であるPanox(登録商標)繊維などの予備酸化されたポリアクリロニトリル繊維を含む更なる難燃性繊維をこの前駆体ウエブに組み込むことは、本発明の範囲内にある。
【0019】
図1は、小孔のあいた成形表面をベルト12の形で含む水流交絡装置を更に図示する。このベルト上に前駆体ウエブPを位置付けし、マニホルド14により交絡または予備交絡する。
【0020】
図1の交絡装置は、軽く交絡された前駆体ウエブのイメージ形成およびパターン形成を行うために三次元イメージ転写装置を含んでなるイメージ形成およびパターン形成ドラム18を場合によっては含み得る。このイメージ転写装置は、このイメージ転写装置のイメージ形成表面により規定される三次元要素と協働して作用して、形成中の布のイメージ形成およびパターン形成を行う複数の交絡マニホルド22に対して移動する可動のイメージ形成表面を含む。
【0021】
スパンボンド布を含み得る1つ以上の補助層を本発明の布に付加することも考えられる。一般に、連続フィラメント前駆体ウエブの形成は、「スパンボンド」法を実施することを伴う。スパンボンド法は、溶融ポリマーを供給し、次にこれを圧力下に紡糸口金またはダイとして既知のプレート中の多数のオリフィスから押し出すことを含む。得られる連続フィラメントは急冷され、そしてスロットドローシステム、アッテネーターガン、またはゴデットロールなどの多数の方法のいずれによっても延伸される。この連続フィラメントは、ワイヤメッシュコンベヤーベルトなどの移動する小孔のあいた表面上にゆるいウエブとして捕集される。多層化された布を形成する目的で、1つ以上の紡糸口金を一線で使用する場合には、以降のウエブは前に形成されたウエブの最上表面上に捕集される。更には、連続フィラメント布の付加は、引用により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,678,379号および第6,114,017号で教示されるようにナノデニールを有するフィラメントから形成される布を含み得る。なお更には、この連続フィラメント布は慣用のフィラメントとナノデニールフィラメントの混紡から形成され得る。
【0022】
本発明の不織布はメルトブロー層を組み込むということが考えられる。メルトブロー法はメルトブロー法において不織布の層を形成するためのスパンボンド法に関連した手段である。再度であるが、溶融ポリマーは紡糸口金またはダイ中のオリフィスから圧力下で押し出される。高速空気はフィラメントに衝突し、ダイを出る時に同伴する。この段階のエネルギーは、形成されるフィラメントが直径において低下し、そして有限の長さの微少繊維が生成するように破壊されるようなものである。これは、フィラメントの連続性が保存されるスパンボンド法と異なる。単一層あるいは多層の布を形成する工程は連続的であり、すなわち、この工程段階はこのフィラメントの押し出しから妨害を受けず、この結合されたウエブがロールに巻かれるまで、最初の層を形成するこれらのタイプの布の製造方法は米国特許第4,041,203号で述べられている。メルトブロー法、ならびにメルトブローされた微少繊維の断面プロフィールは、本発明の実施に対する決定的な制約でない。
【0023】
本発明によれば、水流交絡された難燃性布はフィルム層を含んでなり得る。強固で、耐久性のあるキャリア基材層として好適な有限の厚さのフィルムを熱可塑性ポリマーから形成することはよく行われることである。熱可塑性ポリマーフィルムは、キャストフィルムとして知られているように大量の溶融ポリマーを所望の最終製品の寸法を有する金型の中に分散させるか、あるいは押し出しフィルムとして知られているように溶融ポリマーをダイから連続的に押し出すことにより形成可能である押し出された熱可塑性ポリマーフィルムは、このフィルムを冷却し、次に完成した材料として巻き取るか、あるいは二次基材材料上に直接に分配して、基材とフィルム層の両方の性能を有する複合材料を形成するように形成可能である。
【0024】
押し出しフィルムは次の代表的な直接押し出しフィルム法により形成可能である。熱可塑性ポリマーチップ用の少なくとも一つのホッパーローダーと、場合によっては熱可塑性キャリア樹脂中のペレット化された添加剤に対するものを含んでなるブレンドおよび添加貯蔵物が可変速のオーガーの中にフィードされる。この可変速のオーガーは、予め決められた量のポリマーチップと添加物ペレットを混合ホッパーの中に移す。この混合ホッパーは混合プロペラーを含んで、この混合物に均一性を向上させる。述べたような基本的な定容的なシステムは、添加物を熱可塑性ポリマーの中に精確にブレンドするための最低の要求である。このポリマーチップと添加物ペレットのブレンドは多域押し出し機の中にフィードされる。この多域押し出し機からの混合および押し出し時、このポリマーコンパウンドはスクリーン交換機から加熱されたポリマー配管経由で移送される。ここで、異なるスクリーンメッシュを有するブレーカープレートが使用されて、固体あるいは半溶融ポリマーチップおよび他の巨視的な破片を保持する。次に、この混合されたポリマーは、メルトポンプの中に、次に合体ブロックにフィードされる。この合体ブロックによって、同一の組成のものであるか、あるいは上述のように異なる系からフィードされる多層フィルムを押し出すことが可能となる。この合体ブロックは押し出しダイに連結され、これは頭上の向きに配置されて、溶融フィルム押し出し物がニップロールとキャストロールの間のニップに堆積される。
【0025】
加えて、通気性フィルムは開示された連続フィラメント積層物と一緒に使用可能である。引用により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,191,211号に教示されているモノリシックフィルム、および米国特許第6,264,864号に教示されている微細多孔性フィルムは、このような通気性フィルムを形成する機構を表す。
【0026】
布形成に続いて、このセルロース系難燃性布は1つ以上の種々の後交絡処理にかけられ得る。このような処理は、ポリマーバインダー組成物の塗布、機械的緊密化、性能増強添加物、静電的組成物の塗布または組み込み、および類似の方法を含み得る。
【0027】
本発明によれば、代表的な試料は、Courtauds Fibres(Holdings)Limitedの登録商標である60%のステープル長のTencel(登録商標)リヨセル繊維、およびKanekaの登録商標である40%PBX(登録商標)モダクリル繊維を約2.0オンス/ヤードの坪量で含んでなる。好ましくは、この不織布は、所望の性能をもたらす一方で、費用効果性を最適化するために、65/35のブレンドを、更に好ましくは70/30ブレンドを含んでなる。引き続いて、この繊維ブレンドを水流交絡法により複合難燃性不織布に団結し、そして技術告示604にしたがって試験して、直火に暴露した場合の布の重量損失を求めた。
【0028】
「縫込み」構成物と「バッグ・イン・バッグ」構成物を用いて、この燃焼試験を行った。「縫込み」構成物は、セルロース系難燃性布の2層を2つの外殻層の間に配置した層化された構成物である。この層化された構成物を4つの側の3つに沿って縫い、繊維充填物を最内側セルロース系難燃性布層内に詰め、そして続いて4番目の側を縫う。「バッグ・イン・バッグ」構成物は、繊維充填物を詰め、縫い込んだセルロース系難燃性布でできたバッグを使用する。次に、このセルロース系難燃性布バッグはシェルバッグの中に挿入され、この中にセルロース系難燃性布を封入するシェルバッグが縫い込まれている。
【0029】
本発明の布は、「縫込み」構成物により試験した場合好ましくは360秒後に坪量の0.5%〜5%の間、更に好ましくは1%〜4%の間を失う(図2、6aを参照)。本発明の布は、「バッグ・イン・バッグ」構成物により試験した場合、好ましくは360秒後に坪量の3%〜15%の間、更に好ましくは6%〜12%の間を失う(図2、6bを参照)。
【0030】
図3は上述の布の物理的試験の結果、ならびに図2に図示する比較試料に対する試験結果を図示する。
【0031】
前出から、本発明の真の精神と新規な概念の範囲から逸脱せずに多数の改変および変形を行うことができることが観察されるであろう。この明細書中で例示される特定の態様に関する制限は意図されたり、あるいは推測されるべきものでないことは理解されるべきである。この開示は、添付の特許請求の範囲によって、特許請求の範囲内に入るすべての改変を網羅するように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】難燃性不織布の製造のために本発明により使用される装置の線図である。
【図2】本発明と比較の試料を示す布の試料の写真を示す。
【図3】図2に示す試料と関連して生成されるデータを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも30%の自己消火性繊維を含んでなり、技術告示604にしたがって試験した場合、360秒後で15%より多くない坪量減少しか呈さない難燃性セルロース系不織布。
【請求項2】
少なくとも30%の自己消火性繊維を含んでなり、技術告示604にしたがって試験した場合、360秒後で15%より多くない坪量減少しか呈さない三次元にイメージ形成された難燃性セルロース系不織布。
【請求項3】
前記布が一層以上である請求項1に記載の難燃性セルロース系不織布。
【請求項4】
少なくとも30%の自己消火性繊維を含んでなり、技術告示604にしたがって試験した場合、360秒後で15%より多くない坪量減少しか呈さない難燃性セルロース系寝具物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−523269(P2007−523269A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553193(P2006−553193)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/003997
【国際公開番号】WO2005/077035
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506298150)ポリマー・グループ・インコーポレーテツド (4)
【Fターム(参考)】