説明

難燃性ポリアリレート樹脂組成物

【課題】透明性に優れ、機械的特性や耐熱変形性や成形性に優れた難燃性ポリアリレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】二価フェノール残基と芳香族ジカルボン酸残基とから構成されるポリアリレート樹脂の全二価フェノール成分に対し、下記一般式(I)で示されるオルガノシロキサン単位を1〜10モル%含むオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)と、オルガノシロキサン単位を含まないポリアリレート樹(B)を混合してなる難燃性ポリアリレート樹脂組成物であって、前記オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)の混合比率が10/90〜50/50(質量比)であり、厚み2mmのプレート型成形品のヘーズ値(Hz)が3≦Hz≦9であることを特徴とする難燃性ポリアリレート樹脂組成物。


(但し、nは10〜100の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れ、機械的特性や耐熱変形性や成形性に優れた難燃性ポリアリレート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
二価フェノール類とテレフタル酸及び/又はイソフタル酸とからなるポリアリレートはエンジニアリングプラスチックとして既によく知られている。ポリアリレートは耐熱性が高く、機械的強度や寸法安定性に優れ、加えて透明であるので、その成形品は電気・電子機器、自動車、機械などの分野に幅広く使用されている。
【0003】
これら電気・電子機器の分野では高度な難燃性が要求される部品が少なくなく、安全上の要求を満たすため、UL94V-0や94V-1相当の高い難燃性がプラスチック材料に求められる場合が多い。従来からポリアリレート樹脂は、自己消火性を備えたプラスチック材料として用いられてきたが、電気、電子機器の高い難燃性の要求に対して十分とは言えなかった。
【0004】
ポリアリレート樹脂に難燃性を付与する方法としては、ポリアリレート樹脂に臭素を直接反応させ難燃化する方法(特許文献1)、ポリアリレート樹脂中に臭素化ポリカーボネートオリゴマーを溶融混練し難燃化する方法(特許文献2)が知られている。
【0005】
しかしながら、難燃剤として、ハロゲン化合物を使用した場合には、燃焼時にダイオキシン等の有毒なガス発生の可能性がある問題があり、そのため、最近の環境問題の高まりから、燃焼してもダイオキシン等の発生の少ない難燃剤を使用した、いわゆるハロゲンフリーの難燃性樹脂材料が要望されている。
【0006】
ハロゲン系難燃剤以外の難燃剤としては、リン酸エステルなどのリン化合物、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの無機金属水和物、メラミン、メラミンシアヌレートなどの窒素化合物、ポリオルガノシロキサンなどのシリコン化合物、ガラス繊維やタルクなどの無機充填剤が検討されている。
【0007】
その中でも、ポリオルガノシロキサンなどのシリコン化合物を難燃剤として使用した樹脂化合物に関しては、数多くのものが開示されている(例えば、特許文献3〜5)。
【0008】
しかしながら、ポリアリレート樹脂に関してシリコン化合物単独で難燃剤として使用した場合には、シリコン化合物との相溶性が悪く、安定して難燃性を発現する添加量まで混練することができない問題があった。
【0009】
そのため、オルガノシロキサンモノマーをポリアリレートに共重合することで、難燃化することが検討されている。しかしながら、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート単独で難燃性を評価すると、効果は認められるのであるが、実用上十分な難燃性を発揮することができなかった。
【0010】
また、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート単独では、機械物性の低下が著しく、問題であった。
【特許文献1】特開平5−163338号公報
【特許文献2】特開平10−158491号公報
【特許文献3】特開昭50−77457号公報
【特許文献4】特開昭50−78643号公報
【特許文献5】特開平11―263903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、透明性に優れ、機械的特性や耐熱変形性や成形性に優れた難燃性ポリアリレート樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、このような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、オルガノシロキサンモノマーを配合し、難燃性を付与したポリアリレート樹脂組成物において、特定のオルガノシロキサンモノマーを共重合したポリアリレートとオルガノシロキサンモノマーを共重合しないポリアリレートを混合することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
【0014】
(1)二価フェノール残基と芳香族ジカルボン酸残基とから構成されるポリアリレート樹脂において、全二価フェノール成分に対し、下記一般式(I)で示されるオルガノシロキサン単位を1〜10モル%含むオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)と、オルガノシロキサン単位を含まないポリアリレート樹脂(B)を混合してなる難燃性ポリアリレート樹脂組成物であって、前記オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)の混合比率が10/90〜50/50(質量比)であり、厚み2mmのプレート型成形品のヘーズ値(Hz)が3≦Hz(%)≦9であることを特徴とする難燃性ポリアリレート樹脂組成物。
【0015】
【化1】

(但し、nは10〜100の整数を表す。)
(2)オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)と、オルガノシロキサンモノマーを含まないポリアリレート樹脂(B)を溶融混練する(1)の難燃性ポリアリレート樹脂組成物。
(3)(1)または(2)の難燃性ポリアリレート樹脂組成物の製造方法。
(4)(1)または(2)の難燃性ポリアリレート樹脂組成物を成形して得られる成形品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、難燃性ポリアリレート樹脂組成物における難燃剤が、ハロゲンを含有しないオルガノシロキサンを用いるので、燃焼時に有害なハロゲン化合物が発生することがなく、透明性に優れ、機械的特性や耐熱変形性や成形性に優れた難燃性ポリアリレート樹脂組成物を提供することができる。
【0017】
また、オルガノシロキサン共重合ポリアリレートを使用しているために、難燃性を発現する濃度までオルガノシロキサンを導入できる上、オルガノシロキサンを共重合しないポリアリレート樹脂と混合することで、さらに難燃性を高めた良好な難燃性ポリアリレート樹脂組成物が製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明でいうポリアリレート樹脂とは、二価フェノール残基と芳香族ジカルボン酸残基とから構成されているポリエステルである。
【0019】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)およびポリアリレート樹脂(B)を構成する二価フェノール残基としては、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-メチル-2-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’-ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビスフェノールフルオレン、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)チオエーテル、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,4-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロペンタン等のジフェノール類を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよいし、あるいは2種類以上混合して使用してもよい。
【0020】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)およびポリアリレート樹脂(B)を構成する二価フェノールは様々なものから選定されるが、最適なものとして、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールA)が挙げられる。
【0021】
また、前述した二価フェノールの一部を、実質的にその特性を損なわない範囲で、他の二価アルコール類で置き換えてもよい。そのような二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン等を挙げることができる。
【0022】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)およびポリアリレート樹脂(B)を構成する芳香族ジカルボン酸残基としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)およびポリアリレート樹脂(B)を構成する芳香族ジカルボン酸成分として、特に好適に用いることのできる芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸とイソフタル酸であり、これらの比率がテレフタル酸/イソフタル酸=8/2〜2/8の範囲、好ましくは、7/3〜3/7の範囲であり、コストパフォーマンスから好ましいのは両者の等量混合物である。
【0024】
また、前述した芳香族ジカルボン酸の一部を、実質的にその特性を損なわない範囲で、他の脂肪族ジカルボン酸類で置き換えてもよい。そのようなジカルボン酸としては、ジカルボキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ドデカン二酸等を挙げることができる。
【0025】
さらに、本発明のオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)は下記一般式(I)のオルガノシロキサンモノマーを成分として含有する。
【0026】
【化2】

(但し、nは10〜100の整数を表す。)
【0027】
オルガノシロキサンモノマーの共重合比率としては、所望する難燃性、機械物性、および成形加工性を勘案して決定されるが、全二価フェノール成分に対して1〜10モル%、好ましくは、1〜7モル%、最適には1〜5モル%配合する必要がある。共重合するオルガノシロキサンモノマーの種類にもよるが、10モル%を超えると重合性が極端に低下し、粘度低下が著しく問題となる。一方、1モル%より少ないと、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)と混合した場合の所望の難燃性を達成できない。
【0028】
本発明のオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)およびポリアリレート樹脂(B)は、二価フェノールと芳香族ジカルボン酸またはこれらの誘導体を原料とし、公知のポリエステル重合方法を用いて製造される。重合方法としては、界面重合、溶液重合、溶融重合などが挙げられるが、界面重合が好ましい。以下では、界面重合による製造方法を例示する。
【0029】
界面重合は、二価フェノールをアルカリ水溶液に溶解させた水相と、ジカルボン酸ハライドを水に溶解しない有機溶剤に溶解させた有機相とを、触媒の存在下で混合することによっておこなわれる(W.M.EARECKSON,J.Poly.Sci.XL399(1959)、特公昭40−1959号公報)。溶液重合と比較して反応が速く、酸ハライドの加水分解を最小限に抑えられ、結果として、高分子量のポリアリレートを得ることができる。
【0030】
本発明の必須要件としては、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)およびポリアリレート樹脂(B)を混合することである。オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)単独では難燃性が十分に発揮しないが、ポリアリレート樹脂(B)を混合することで初めて難燃性が十分に発揮される。このことに関しては、理論的に解明されているわけではないが、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)単独の場合と、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)を混合した場合とでは、相分離の程度が異なるためであると推察される。
【0031】
オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)単独の場合は、ポリアリレート中の難燃剤が微分散し、難燃剤の効果が発現されにくいのに対し、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)を混合した場合は、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)が、完全には均一に混じりあわず、ポリアリレート樹脂組成物内において、難燃剤の分布に濃淡ができ、それが相分離しているようである。相分離したポリアリレート樹脂組成物は、例えば、成形品の燃焼時に、成形品表層に、不燃層の生成がしやすく、それが難燃性を高めている。不燃層は、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)に基づく高濃度な難燃剤を含む層として、燃焼時には、一旦は炎が着火するが、一度燃焼すると、オルガノシロキサンの−Si−O−結合に起因する強固な不燃層が生成、2度目の着火に対しては、着火しないほど難燃性が高まる。本願発明は、オルガノシロキサンの高い難燃性能を、ポリアリレート樹脂において十分に発揮させるために、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)を混合するのであり、その混合状態を制御することで、難燃性能を変えることができる。
【0032】
本願発明でのオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)の混合状態の指標としては、厚さ2mmのプレート型成形品についてのヘ−ズ値(Hz)の値で評価することができる。本発明では、前記ヘーズ値(%)としては、3≦Hz(%)≦9であることが必須である。3%より小さい値では、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)との混合状態が過剰に良くなっているために、所定の難燃性を発揮することができない。一方、9%より大きい値では、逆に混合状態が著しく悪くなっているために、この場合も難燃性が悪くなる。好ましくは3≦Hz(%)≦7、最適には3≦Hz(%)≦5である。
【0033】
本発明において、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)の混合比率が10/90〜50/50(質量比)の範囲である必要があり、好ましくは10/90〜35/65(質量比)、最適には10/90〜25/75(質量比)である。オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)の配合が、10質量%より少ないと、ポリアリレート樹脂組成物としての難燃剤の配合量が少なくなるため、所望の難燃性を得ることができず、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)の配合が、50質量%を超えると、ポリアリレート樹脂組成物内の相分離が十分でないために、難燃性が低下する。
【0034】
オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)およびポリアリレート樹脂(B)を混合する方法としては、溶融混練、ペレット同士のブレンド等、特に方法を選ばないが、難燃剤の分散状態において、過剰な微分散ではなく、前記相分離の状態を発現させるために、溶融混練することが望ましい。溶融混練においては、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)に含有するオルガノシロキサンが、ポリアリレート樹脂(B)とは、完全な均一な状態に混じり合わないため、本願発明においては、そのような製造方法が特に好ましい。溶融混練は、所定の方法を用いることができるが、二軸混練機において、ポリアリレート樹脂の融点以上に加熱しながら、混練することで行われる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。各種物性値の測定は、以下の方法により実施した。
1.測定方法
(ヘーズ)
厚み2mmのプレート型成形品について、JIS-K7361に準拠し、日本電色工業社製ヘイズメータNDH-2000を使用して測定した。
(難燃性)
厚み0.8mm、長さ125mm、幅12mmの短冊型成形品について、アンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験に準拠し、垂直に保持した成形品にバーナーの炎を10秒間2回接炎した後のそれぞれの残炎時間とドリップ性によって難燃性を評価した。表1に示すようなクラスに分類した。
【0036】
【表1】

【0037】
2.製造例
【0038】
(製造例1)
攪拌装置を備えた反応容器中に、二価フェノール成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン54.62kg(239モル)、末端封止剤としてp−tert−ブチルフェノール(PTBP)1.85kg(12モル)、アルカリとして水酸化ナトリウム21.40kg(535モル)、重合触媒としてベンジル−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド(BTBAC)515g、ハイドロサルファイトナトリウム(SHS)273gを仕込み、水1200Lに溶解した(水相)。また、これとは別に、塩化メチレン70Lに、下記式(II)で示すオルガノシロキサン21.37kg(7モル)を溶解した(有機相1)。この有機相1を、先に調製した水相中に強攪拌下で添加し、そのまま15℃で30分間攪拌した。
【0039】
【化3】

【0040】
さらに、この有機相1とは別に、塩化メチレン630Lに、テレフタル酸クロライドとイソフタル酸クロライドの当量混合物であるフタル酸クロライド(モル比50:50)51.30kg(252モル)を溶解した(有機相2)。この有機相2を、すでに攪拌している水相と有機相1の混合溶液中に強攪拌下で添加し、15℃で2時間重合反応を行った。この後攪拌を停止し、水相と有機相をデカンテーションして分離した。水相を除去した後、純水1200Lと酢酸を添加して反応を停止し、15℃で30分間攪拌した。この有機相を純水で5回洗浄した後に、有機相をヘキサン中に添加してポリマーを沈殿させ、分離・乾燥後、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(P−1)を得た。得られたオルガノシロキサン共重合ポリアリレート(P−1)を1H−NMRにて、組成分析をおこなったところ、得られた重合比率は仕込み比率と同じであることが確認された。その結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
(製造例2〜9)
表2に示す配合にしたがい、製造例1と同様にして、オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(P−2)〜(P−9)、および(P−0)を得た。
【0043】
〔実施例1〕
オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)として(P−1)と、ポリアリレート樹脂(B)として(P−0)を配合比率(A)/(B)=20/80(質量比)で混合し、二軸押出機(東芝機械製TEM−41SS型)を用いて、シリンダー温度300〜340℃、スクリュー回転300rpm、吐出量50kg/hにて、溶融混練を行い、ストランド状に押し出し、冷却した後、カッティングしてポリアリレート樹脂組成物(M−1)を得た。
【0044】
得られたポリアリレート樹脂組成物(M−1)を、射出成形機(東芝機械製EC100N型)を用いて、シリンダー温度300〜340℃、金型温度100℃にて、厚み2mm、長さ70mm、幅40mmの成形品を作成し、ヘーズ値の評価を行なった。また、上記成形品と同様な射出成形の条件で、厚み0.8mm、長さ125mm、幅12mmの試験片を作成し、難燃性の評価を行なった。その結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
〔実施例2〜7〕
オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)と、ポリアリレート樹脂(B)の混合比率を変えた以外は、実施例1と同様にして行った。その結果を表3に示す。
【0047】
〔比較例1〜6〕
比較例1と比較例2については、表4のオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)と、ポリアリレート樹脂(B)の混合比率に従い、溶融混練を行わないで、ブレンドによる混合で射出成形を行い、ヘーズ値の測定、難燃性の評価を行なった。
【0048】
比較例3〜6は、表4のオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)と、ポリアリレート樹脂(B)の混合比率に従い、実施例1と同様にして行った。その結果を表4に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
実施例1〜7では、本願記載のオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)と、ポリアリレート樹脂(B)の混合を行ったため、十分な難燃性を有するポリアリレート樹脂組成物が得られた。
【0051】
比較例1および比較例2ついては、ブレンドによる混合のため相分離状態が悪く、十分な難燃性を発揮することができない。また、比較例3および比較例4については、混練が良くなり過ぎたため、十分な難燃性が発揮されない。比較例5については、オルガノシロキサンモノマーの共重合比率が低いために、難燃性は発揮されなかった。さらに、比較例6については、オルガノシロキサンモノマーの共重合比率が高くて、十分な難燃性が出なかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価フェノール残基と芳香族ジカルボン酸残基とから構成されるポリアリレート樹脂において、全二価フェノール成分に対し、下記一般式(I)で示されるオルガノシロキサン単位を1〜10モル%含むオルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)と、オルガノシロキサン単位を含まないポリアリレート樹脂(B)を混合してなる難燃性ポリアリレート樹脂組成物であって、前記オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)の混合比率が10/90〜50/50(質量比)であり、厚み2mmのプレート型成形品のヘーズ値(Hz)が3≦Hz(%)≦9であることを特徴とする難燃性ポリアリレート樹脂組成物。
【化1】

(但し、nは10〜100の整数を表す。)
【請求項2】
オルガノシロキサン共重合ポリアリレート樹脂(A)と、ポリアリレート樹脂(B)を溶融混練する請求項1に記載の難燃性ポリアリレート樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の難燃性ポリアリレート樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の難燃性ポリアリレート樹脂組成物を成形して得られる成形品。

【公開番号】特開2009−235361(P2009−235361A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86910(P2008−86910)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】