説明

難燃性ポリウレタンフォーム

【課題】長期にわたってクレゾール臭などの臭気を発生させることがなく、車両用シートクッションとして好適に用いることができる難燃性ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】少なくともポリエーテルオール、エチレングリコール及び/又はジエチレングリコール、イソシアネート、発泡剤及び難燃剤を含む原料を使用してなるポリウレタンフォームにおいて、該難燃剤はt−ブチルフェニルを有するリン酸エステルであることを特徴とする難燃性ポリウレタンフォーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性ポリウレタンフォームに係り、特に非ハロゲン系の難燃剤を配合した難燃性ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性ポリウレタンフォームに配合される難燃剤としてクレジルジフォスフェート等のトリアリールフォスフェートを用いることが特開平8−217846に記載されている。ただし、このトリアリールフォスフェートの具体例としてt−ブチルフェニルジフェニルホスフェートは記載されていない。
【0003】
このクレジルジフォスフェートを含むウレタンフォームは、その表面を熱溶融させて他の基材に融着させる熱融着特性を有しており、また難燃性にも優れる。
【特許文献1】特開平8−217846
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クレジルジフォスフェートは長期的には徐々に分解してクレゾール臭を発生させる。
【0005】
本発明は、長期にわたってクレゾール臭などの臭気を発生させることがなく、車両用シートクッションとして好適に用いることができる難燃性ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の難燃性ポリウレタンフォームは、少なくともポリエーテルオール、エチレングリコール及び/又はジエチレングリコール、イソシアネート、発泡剤及び難燃剤を含む原料を使用してなるポリウレタンフォームにおいて、該難燃剤はt−ブチルフェニルを有するリン酸エステルであることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の難燃性ポリウレタンフォームは、請求項1において、難燃剤がt−ブチルフェニルジフェニルホスフェートであることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の難燃性ポリウレタンフォームは、請求項1又は2において、前記原料は、ポリエーテルポリオール100重量部に対し難燃剤5〜25重量部を配合したものであり、この配合物のイソシアネートインデックスが95〜115であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の難燃性ポリウレタンフォームは、請求項1ないし3のいずれか1項において、車両シートクッション用であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、難燃剤としてt−ブチルフェニルを有するリン酸エステルを用いている。このt−ブチルフェニルを有するリン酸エステル特にt−ブチルフェニルジフェニルホスフェートは、クレジルジフォスフェートと異なり、クレゾール臭を発生させることがないことが認められた。
【0011】
これは、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェートは加水分解してクレゾールを発生しないためである。
【0012】
クレゾール臭は特に刺激臭として強烈であるが、この臭気を無くすことにより、この難燃性ポリウレタンフォームを車両用シートクッションその他の内装材として用いた場合、車両の室内環境が格段に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0014】
<ポリオール>
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールを用いる。このポリエーテルポリオールとしては、複数個のエーテル結合及び少なくとも2個のヒドロキシル基以外の官能基を実質的に含まない線状及び/又は分岐状のポリエーテルが挙げられる。ポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0015】
ポリエーテルポリオールとしては、分子量3000〜5000程度のものが好適である。
【0016】
<イソシアネート>
イソシアネートとしては、通常の芳香族、脂肪族、及び脂環族のものを挙げることができ、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート及びこれらの変性品誘導体、粗製体及び前記イソシアネートと多価アルコール類又はポリオール類との反応により得られるイソシアネートプレポリマーが挙げられる。しかしこれらに限定されるものではない。
【0017】
<発泡剤>
発泡剤としては、水及び低沸点の有機化合物を単独又は併用にて使用できる。低沸点の有機化合物としては、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフロロメタン、モノクロロジフロロメタン、トリクロロトリフロロエタン、メチレンクロライド等がある。
【0018】
<触媒>
触媒としては、金属含有触媒とアミン系触媒とを併用するのが好ましい。
【0019】
金属含有触媒は、ポリオールとポリイソシアネートの反応触媒として配合される成分である。かかる金属含有触媒の具体例としては、オクテン酸第1錫、イソオクテン酸第2錫等が挙げられる。
【0020】
アミン触媒としては、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノヘキサノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、ジメチルエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、メチルヒドロキシエチルピペラジン、テトラメチルヒドロキシプロピレンジアミン、ヒドロキシエトキシモルフォリン等が挙げられる。
【0021】
<整泡剤>
整泡剤としてはシリコーン系界面活性剤が好適である。
【0022】
<難燃剤>
難燃剤としては、t−ブチルフェニルを有するリン酸エステルを用いる。t−ブチルフェニルを有するリン酸エステルとしては、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェートが好適である。
【0023】
<その他の添加剤>
本発明では、架橋剤としてエチレングリコール及び/又はジエチレングリコールを配合する。
【0024】
また、上記した各成分の他に、公知の成分、添加剤等を配合することが可能である。このようなものとして顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、気泡連通剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0025】
<配合比>
ポリエーテルポリオール100重量部に対する好ましい配合量は次の通りであり、原料配合物のイソシアネートインデックスは95〜115であることが好ましい。
エチレングリコール及び/又は
ジエチレングリコール 0.5〜5.0重量部
低沸点有機発泡剤 0〜20重量部
水 1.5〜5.0重量部
金属含有触媒 0.1〜1.0重量部
アミン系触媒 0.1〜2.0重量部
整泡剤 0.5〜2.0重量部
難燃剤 5〜25重量部
【0026】
本発明の難燃性ポリウレタンフォームは、上記のポリオールとイソシアネート及びその他の原料を混合し、発泡硬化させることにより製造される。ポリオール及びイソシアネート以外の原料は、ポリオール、イソシアネートのいずれか又は双方に予め混合しておくのが好ましい。
【実施例】
【0027】
実施例1
下記配合にて難燃性ポリウレタンフォームの製造を行った。
ポリエーテルポリオール(分子量3000) :100重量部
ジエチレングリコール :2.0重量部
トリレンジイソシアネート(T−80) :41.307重量部
メチレンクロライド :8.0重量部
蒸留水 :2.70重量部
トリエチレンジアミン :0.5重量部
第2錫イソオクトエート :0.35重量部
t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート :10.0重量部
ポリオキシアルキレン・シリコーンコポリマー:1.70重量部
黒顔料(カーボンブラック) :3.0重量部
(イソシアネートインデックス:105)
【0028】
なお、ポリエーテルポリオールは、三菱化学ダウ社製・「ボラノール3010」である。トリレンジイソシアネートは、住友バイエルウレタン社製・スミジュールT−80)である。t−ブチルフェニルジフェニルホスフェートとしては、スプレスタ社製のフォスフレックス71Bを用いた。
【0029】
上記を配合及び混合攪拌して、ポリウレタンフォームを得た。その特性を表1に示す。
【0030】
[比較例1]
実施例1において、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェートの代わりにクレジルジフェニルホスフェートを同一重量部用いた他は同様にしてポリウレタンフォームを得た。特性を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1の通り、本発明によると、臭気が少なく、しかも従来品(比較例1)と同等の物性を有した難燃性ポリウレタンフォームが得られる。なお、この難燃性ポリウレタンフォームは、従来品と同等の熱融着性を有することが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエーテルオール、エチレングリコール及び/又はジエチレングリコール、イソシアネート、発泡剤及び難燃剤を含む原料を使用してなるポリウレタンフォームにおいて、
該難燃剤はt−ブチルフェニルを有するリン酸エステルであることを特徴とする難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
請求項1において、難燃剤がt−ブチルフェニルジフェニルホスフェートであることを特徴とする難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記原料は、ポリエーテルポリオール100重量部に対し難燃剤5〜25重量部を配合したものであり、この配合物のイソシアネートインデックスが95〜115であることを特徴とする難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、車両シートクッション用であることを特徴とする難燃性ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2009−161656(P2009−161656A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−623(P2008−623)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】