説明

難燃性水酸化マグネシウム組成物並びに関連する製造及び使用方法

本発明は、場合により、ナノクレイ及びより大きなサイズの水酸化マグネシウム粒状組成物などのその他の難燃性添加剤と組み合わせて、合成ポリマーの難燃性添加剤として用いられ得る、D50が約0.30μm以下であり、D90が約1.5μm以下であり、BET表面積が少なくとも約35m/gである水酸化マグネシウム粒子の第1の分布を含むサブミクロンの水酸化マグネシウム粒状組成物を提供する。サブミクロンの水酸化マグネシウム粒子を含むポリマー樹脂及びサブミクロンの水酸化マグネシウム粒子を製造する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、参照によりその全体が全ての目的において本明細書に組み込まれる、2005年11月28日出願の米国特許出願第60/740,092号の利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、サブミクロン粒子を含む水酸化マグネシウム粒状組成物、このような組成物を作成する方法、及びこのような組成物を難燃剤として組み込むポリマー製品に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な形状、サイズ、及び厚さに容易に成形される熱可塑性ポリマーは、事実上あらゆるカテゴリーの消費者及び工業製品に多く用いられている。それらの使用は偏在するようになったが、このようなポリマーは対処しなければならない欠点をやはり提示している。プラスチックの使用に関係する炎及び煙の危険への意識の高まりは、難燃性に関するプラスチック配合物の立法及び標準化をもたらした。
【0004】
有機ハロゲン化合物、三酸化アンチモン、及びそれらの組合せはプラスチック物質の難燃性添加剤として用いられている。しかし、このような添加剤は炎に触れると相当な量の煙及び有毒ガスを生じる可能性がある。その結果、毒性の少ない代替物を支持してそれらの使用を最小限にする試みがなされてきた。
【0005】
より最近には、より安全な代替物としての水酸化マグネシウム粒子又は水酸化アルミニウム粒子の使用が次第に普及してきた。水酸化マグネシウムは、電線用途を含む様々なプラスチックにおいて煙の抑制だけでなく、優れた難燃性をもたらす。また、水酸化マグネシウムは無毒で非腐食性の添加剤であり、耐火性及び煙抑制に対して非ハロゲン溶液が好まれるエラストマー及びプラスチック化合物に組み入れられることが多い。
【0006】
水酸化マグネシウムは、下の式(I)に従う、約330℃で開始する吸熱分解を受ける。
【化1】

燃焼中に起こるMg(OH)の吸熱分解が、難燃剤の機構である。燃焼中に放出された水は可燃性ガスを希釈する効果を有し、バリアの機能を果たし、酸素が炎を支持することを防ぐ。水酸化マグネシウムの煙抑制特性は、水蒸気の可燃性ガスへの希釈効果に起因するか、又はポリマーとの炭化物形成に起因すると考えられる。
【0007】
水酸化マグネシウムの利点にもかかわらず、特定の用途へのその使用には問題があり得る。例えば、非常に高いレベルの難燃性能を得るため(例えば、UL94評価)、難燃性添加剤は大量に、例えば60重量%を超えて添加されなければならないが、それはポリマー樹脂の物理的特性に悪影響を与え、電線の絶縁などの用途に適さないものとする可能性がある。
【0008】
既存の水酸化マグネシウム粒状組成物はある程度の耐燃性及び煙抑制をもたらすが、当分野において、難燃剤組成物が添加されるポリマー樹脂の有益な物理的特性を犠牲にすることなくさらに大きなレベルの防火をもたらす組成物に対する必要性が残っている。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、ポリマー樹脂組成物中の難燃性添加剤としての使用に適した水酸化マグネシウム組成物を提供する。本発明の水酸化マグネシウム組成物はサブミクロンの粒径及び高粒子表面積を提示し、改良された耐燃性をもたらす。本発明の水酸化マグネシウム粒状組成物の好ましい実施形態は、D50が約0.30μm以下であり、D90が約1.5μm以下であり、BET表面積が少なくとも約35m/gである粒子の第1の分布に特徴付けられる。好ましい実施形態では、水酸化マグネシウム粒子は、界面活性剤、例えば様々な脂肪酸又は脂肪酸の塩もしくはエステルでコーティングされる。特に好ましい界面活性剤としては、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸が挙げられる。
【0010】
上記の水酸化マグネシウム組成物は、その他の難燃性添加剤、特に異なる粒子分布により特徴付けられるその他の難燃性剤と混合されてよい。例えば、組成物は、D50が少なくとも約0.9μmであり、BET表面積が約30m/g以下である水酸化マグネシウム粒子の第2の分布と混合されてよい。
【0011】
別の態様では、本発明は、(a)D50が少なくとも約0.9μmであり、BET表面積が約30m/g以下である水酸化マグネシウム粒子の第1の分布;及び(b)(i)複数のナノクレイ粒子;(ii)D50が約0.30μm以下であり、D90が約1.5μm以下であり、BET表面積が少なくとも約35m/gである水酸化マグネシウム粒子の第2の分布;もしくは(iii)(i)と(ii)の組合せを含む第2の組成物を含む、難燃性添加剤組成物を提供する。好ましいナノクレイは、ハイドロタルサイトに由来する。
【0012】
本発明の別の態様では、ポリマー樹脂組成物が提供される。ポリマー樹脂組成物は、合成ポリマー、例えば熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、又はエラストマーなど、及び上記の水酸化マグネシウム組成物又は本発明の難燃性添加剤組成物の混合物を含む。様々な合成ポリマーは、ポリマー樹脂組成物、例えばオレフィン(α−オレフィン)ポリマー及び共重合体、オレフィンとジエンの共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、ポリスチレン及びスチレンの共重合体、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、塩化ビニル又は酢酸ビニルのポリマー又は共重合体(vinyl chloride or vinyl acetate polymers or copolymers)、フェノキシ樹脂、ポリアセタール、ポリアミド樹脂、アクリル及びメタクリル樹脂、ブタジエン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、尿素樹脂、及び合成ゴムなどにおいて用いることができる。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、本発明の難燃性水酸化マグネシウム粒子又は上記の難燃性添加剤組成物が含まれる上記のポリマー樹脂組成物を含む、成形されたポリマー製品を提供する。ポリマー製品は、所望の最終用途に応じて様々な形態をとり得る。例示的なポリマー製品としては、電線の外装、電子部品、自動車部品などが挙げられる。
【0014】
さらにもう1つの態様では、本発明は、上記の水酸化マグネシウム組成物を製造する方法を提供する。本方法は、好ましくは、水酸化マグネシウム粒子(例えば、D50粒径が少なくとも約0.9μmである粒子)又は酸化マグネシウム粒子の水性スラリーを提供することを含み、該水性スラリーは、好ましくは、スラリーの総重量に基づいて約62重量パーセント以下の固体を含む。水性スラリーは、直径が約0.5mm以下、特定の実施形態では約0.3mm以下の粉砕媒体を利用する粉砕段階に付される。粉砕段階の間、水性スラリー中の固体の重量パーセントは水溶液を添加することにより約62%以下に維持され、かつ/あるいはスラリーの粘度は、例えば水溶液又は粘度調節剤を添加することにより約1,000cP以下に維持される。
【0015】
粉砕ミルのRPMは好ましくは、約6,000以下及び約2,000以上(例えば、3,000)に維持される。好ましい水性スラリーの固形分は、約55重量%以下、より好ましくは約50重量%以下、そして最も好ましくは約45重量%以下の固体である。粉砕媒体の好ましい例としては、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、及びイットリウムドープ正方晶ジルコニア多結晶体が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
これから本発明を下記により詳細に説明する。しかし、本発明は、多くの様々な形態で具体化することができ、本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきではない;むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用される法的必要条件を満たすように提供される。本明細書及び特許請求の範囲において用いられる、単数形「a」「an」及び「the」には、文脈において明らかに別に指定されない限り、複数形への言及も含まれる。
【0017】
用語「サブミクロン」とは、本明細書において、約1μm未満の範囲内にある少なくとも1つの寸法を有する粒子を指す。
【0018】
本明細書において言及される全ての粒径パラメータ、例えばメジアン粒径、D90値などは、Norcross,GAのMICROMERITICS(登録商標)製のSediGraph 5100粒径分析器を用いて測定される。試験の前に、サンプルを乾燥させ、50メッシュの篩(U.S.Standard)に通して粉砕する。その後、3.0gを清潔な100mlビーカー中に攪拌子と共に入れ、50mlのA−11 SEDISPERSE又は水を加える。サンプルを数分間攪拌し、それに続いてサンプルを20分間音波浴中に置く。次に、サンプルをさらに数分間攪拌し、音波浴中に戻してさらに20分間置く。次に、サンプルを2、3分間攪拌して確実にサンプルが完全に懸濁しているようにする。サンプルは、その時点で粒径分析器での試験の準備が整っている。粒径測定は、コーティングされていない粒子を指す。
【0019】
Xが50又は90である用語「DX値」は、本明細書において、それぞれ粒子分布の下側の50質量%又は90質量%の中に入る粒子について測定された粒子直径の上限である。例えば、D50値が0.3μmとは、質量分布において50%の粒子の直径が0.3μmよりも大きく、50質量%の粒子の直径が0.3μmよりも小さいことを意味する。D50値はまた、本明細書においてメジアン粒径とも称される。
【0020】
用語「BET表面積」とは、m/gの単位で測定され、表面積測定のBET法を用いて計算された、本発明に従う粒子の表面積を指す。Norcross,GAのMICROMERITICS(登録商標)製のFLOWSORB II 2300装置を用いて測定を行う。
【0021】
本発明は、ポリマー樹脂の添加剤として用いられる場合に改良された耐燃性及び煙抑制特性に寄与する、小さな粒径及び大きな表面積を有するサブミクロン粒子の存在により特徴付けられる水酸化マグネシウム粒状組成物を提供する。本発明は特定の運用理論に縛られるものではないが、本発明の組成物のより小さな粒径及び増大した表面積は、ポリマー樹脂中の微粒子材料のより多くの分散による、より優れた難燃性能に寄与すると考えられる。本発明の難燃性水酸化マグネシウム組成物はまた、実質的にハロゲンフリーであり、一般に約2,500ppm以下の塩化物(例えば、約2,000ppm以下)及び約750ppm以下のフッ化物(例えば、約500ppm以下のフッ化物)を含む。本発明の水酸化マグネシウム粒子は、一般に六方晶形を示す。
【0022】
本発明の水酸化マグネシウム組成物のメジアン粒径(D50)は、約0.30μm以下、好ましくは約0.25μm以下、より好ましくは約0.22μm以下、そして最も好ましくは約0.20μm以下である。一部の実施形態では、メジアン粒径は約0.18μm以下、又はさらには約0.15以下又は約0.13μm以下である。一般に、本発明のサブミクロン粒子のメジアン粒径は、約0.05〜約0.25μm、より好ましくは約0.08〜約0.20μm、そして最も好ましくは約0.10〜約0.15μm(例えば、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、又は0.15μm)となる。
【0023】
本発明のサブミクロン組成物のD90値は、好ましくは約6.0μm以下、より好ましくは約5.0μm以下、そして最も好ましくは約4.0μm以下である。一部の実施形態では、D90値は約3.5μm以下又は約3.0μm以下である。本発明の特に好ましい実施形態は、約1.5μm以下又は約1.0μm以下のD90値を特色とする。
【0024】
本発明の水酸化マグネシウム組成物のBET表面積は、少なくとも約35m/g、より好ましくは少なくとも約40m/g、そして最も好ましくは少なくとも約50m/gである。一部の実施形態では、BET表面積は約48m/g〜約80m/gである。特定の好ましい実施形態は、少なくとも約55m/g又は少なくとも約60m/gのBET表面積を特色とする。本発明のサブミクロンの水酸化マグネシウム組成物の例示的なBET表面積には、約35、約38、約40、約42、約44、約46、約48、約50、約52、約55、約58、約60、約62、約65、約68、約70、約72、約75、約78、及び約80m/gが含まれる。
【0025】
本発明の水酸化マグネシウム組成物は、当分野で公知の様々な湿式もしくは乾式粉砕法及び装置を用いて作製することができる。当分野において理解されるように、微粉化に有用な典型的な湿式粉砕ミルは粉砕媒体と呼ばれる小球又はビーズで満たされた密閉容器を含み、それは剪断力と衝撃力を作り出す攪拌機のシャフトによって動かされる。攪拌機の回転運動は周囲の媒体にエネルギーを与え、生じた力は粉砕チャンバーを通って継続的に送り出される粒子のスラリーに作用する。スラリー中の粒子に加えられた力は、粒子を引き裂き、かつ/あるいは粉砕する働きをし、結果的に全体の粒径が小さくなる。粉砕媒体は処理の間ミルの内部に保持される。主要な処理パラメータは、スラリーの固形分、攪拌機速度、生成物の流速、及び粉砕媒体の種類と大きさである。粉砕ミルの例示的な種類としては、水平型ディスクミル、高エネルギーピンミルなどが挙げられる。
【0026】
本発明の一態様では、本発明の水酸化マグネシウム組成物は、湿式粉砕技術及びビーズミルを用いて製造される。本発明の方法を実行するために用いることのできる市販のビーズミルは多数ある。好ましい一実施形態では、ビーズミルは、600mlの連続するグラスライニングチャンバー及びポリウレタンの羽根車を有する、スイスのWilly A.Bachofen AG製のDYNO(登録商標)−Mill水平型ビーズミル(KDL型)である。本発明の方法において用いられる粉砕媒体は様々であってよい。好ましい粉砕媒体としては、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム(Zircon)、及びイットリウムドープ正方晶ジルコニア多結晶体(YTZP)が挙げられる。しかし、ステンレス鋼又はタングステンカーバイドなどのその他の媒体を用いてもよい。
【0027】
好ましい粉砕媒体のサイズは、約0.5mm以下、より好ましくは約0.3mm以下(例えば、約0.1mm〜約0.3mm)であり、好ましい粉砕媒体材料は約3.0〜約6.8g/cmの密度を有する酸化ジルコニウム又はその他のジルコニア系媒体である。好ましくは、ビーズミルを通過する流速は約1〜約3ml/秒であり、ミルのRPMは、粉砕運転の間約6,000以下及び約2,000以上(例えば、約2,500、約3,000、約3,500、約4,000、約4,500、約5,000、又は約5,500)に維持される。典型的な粉砕時間は約1〜約6時間の範囲内である。
【0028】
単一の粉砕ミルを用いて本発明を実践することができる。そのような実施形態では、粉砕されているスラリーを、所望の粒径に達するまでミルに再循環させることができる。あるいは、直列につないだ2つ以上の粉砕ミルを用いてよく、次に続く各粉砕ミルにはより小さなサイズの粉砕媒体が含まれるか、又は各ミルに同じサイズの粉砕媒体が含まれる。
【0029】
下の実施例1に示されるように、粉砕ミルに供給される水酸化マグネシウム粒子の水性スラリー中の固体の割合が、所望のサブミクロン粒子を生成する粉砕プロセスの能力に影響を与えることが測定された。好ましい実施形態では、ミルに供給される水酸化マグネシウム粒子の最初の水性スラリーの固形分は、水性スラリーの総重量に基づいて約62重量%以下、より好ましくは約55%以下、そして最も好ましくは約52%以下である。一実施形態では、スラリー中の固体の割合は、約50%以下又は約45%以下である。一般に、固形分は、粉砕手順の間、約25%〜約62%の間のレベルに維持され、より好ましくは約40%〜約62%の間に維持される。
【0030】
水性スラリーの固形分及び粘度は、粉砕プロセスの間モニターすることができ、さらなる水溶液を必要に応じて添加して、粉砕の間、所望の粘度範囲又は所望の固形分を維持してもよく、あるいは、粘度調節剤、例えば様々な界面活性剤(例えば、陰イオン性界面活性剤)又は当分野で公知のポリマー(例えば、Polymer Venturesより入手可能なPC546アニオン性アミンポリマー)を添加して、粉砕の前及び/又は粉砕中に粘度を調節してもよい。
【0031】
スラリーの水性液は新しく露出した水酸化マグネシウム粒子の表面積に吸収されるので(粒子サイズが微粉化されるにつれて)、スラリーの粘度は増加する。粉砕の間、粘度を約1,000センチポイズ(cP)以下、より好ましくは約800cP以下、そして最も好ましくは約600cP以下に維持することが好ましい。粉砕プロセスの最初、出発物質の粘度は一般に100〜200cP程度に低いが、粉砕プロセスにより粘度は経時的に増大する。
【0032】
高い粘度及び低い粘度の双方とも粉砕プロセスを阻害する。粘度が高くなりすぎると(粉砕中に増加した粒子表面積による固形分の増大を示す)、粉砕プロセスは効率が低い。水酸化マグネシウムスラリーを送り出すことが一層困難となり、粒子衝突を促すために必要な粒子間の潤滑が不十分であるために粒子の相互作用が粒径の低下に理想的でなくなる。粘度が低くなりすぎると(非常に希薄なスラリーを示す)、粒子は効率的な粉砕から遠く離れすぎる可能性がある。注目すべきは、特定の実施形態では、粉砕中のパラメータを調節するための付加的な対策を何ら講じることなく(例えばより多くの水溶液又は粘度調節剤の添加によるなど)、粉砕の間、スラリーの固形分及び/又はスラリーの粘度を所望のレベルに維持することが可能であり得ることである。例えば、特定の場合では、供給材料が十分に低い固形分又は十分に高い濃度の粘度調節剤を有する場合、粉砕の間、スラリーを所望の粘度レベル又は固形分に維持するための水溶液又は粘度調節剤のさらなる添加は不必要であり得る。
【0033】
粉砕プロセスにおいて出発物質に用いられる水酸化マグネシウム粒子の水性スラリーは、当分野で公知の任意の水溶液を含んでよい。最も好ましくは、該水溶液は単に水でよいが、所望であれば粘度調節添加剤など様々な溶解された添加剤を水に含有してよい。粉砕装置に供給される水性スラリー中の水酸化マグネシウム粒子は、例えば、任意の市販の水酸化マグネシウム生成物、例えばMartin Marietta Magnesia Specialties Inc.製のMAGSHIELD(登録商標)S又はMAGSHIELD(登録商標)UF水酸化マグネシウム生成物であってよい。一般に、供給材料中の水酸化マグネシウム粒子のD50粒径は約0.9μm以上であり、BET表面積は約30m/g以下である。一実施形態では、供給材料のD50粒径は約1〜約8μmである。
【0034】
あるいは、供給材料は、水と反応して水酸化マグネシウムを形成する、微粒子形態の酸化マグネシウムであってよい。一般に、酸化マグネシウム供給材料、例えば「軽焼(light burn)」酸化マグネシウムは、水酸化マグネシウム供給材料に関して上記に示した粒径よりも大きな粒径を有する。酸化マグネシウムを粉砕の前に水和させて水酸化物形態とするか、又は水酸化マグネシウムが主に粉砕プロセス中に形成されるように、酸化マグネシウム粒子のスラリーを事前の水和段階なしで粉砕に付すことができる。粉砕プロセスは、MgOのMg(OH)への変換の反応熱と相まって、本明細書に記した所望の粒径をもたらす。
【0035】
本発明のさらなる実施形態では、粒子が凝集する傾向を低下させるため、及び粒子がポリマー樹脂中により容易に分散することを可能にするために、水酸化マグネシウム粒子を界面活性剤、好ましくは、陰イオン性界面活性剤でコーティングしてよい。脂肪酸及びその塩もしくはエステルは、好ましい表面活性コーティング剤であり、特に10以上の炭素原子を有する脂肪酸及びその誘導体が好ましい。例示的な界面活性剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、ラウリン酸、ベヘン酸、及びパルミチン酸ならびにそのアルカリ金属塩(例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、及びラウリン酸カルシウム)、ステアリン酸アンモニウム、ジラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸カリウム(potassium octadecylfsulfate)、ラウリルスルホン酸ナトリウム、及び2−スルホエチル−α−スルホステアリン酸二ナトリウム(disodium 2−sulfoethyl−α−sulfostearate)が挙げられる。
【0036】
用いることのできるその他のクラスの表面活性コーティング剤としては、(i)シランカップリング剤、例えばビニルエトキシシラン、ビニル−tris(2−メトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなど;(ii)チタン酸塩含有カップリング剤、例えばチタン酸イソプロピルトリイソステアロイル、イソプロピルトリス(ジオクチルピロリン酸)、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート及びイソプロピルトリデシルベゼンスルホニルチタネートなど;(iii)アルミニウム含有カップリング剤、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなど;(iv)リン酸エステル、例えばオルトリン酸及びステアリルアルコールのモノ−又はジエステル、これらのエステル類又はこれらのエステル類のアルカリ金属塩又はこれらのエステル類のアミンの混合物、及び(v)陰イオン性界面活性剤、例えばアミド結合脂肪族カルボン酸塩、アミド結合硫酸塩、アミド結合スルホン酸塩、アミド結合アルキルアリルスルホン酸塩、ステアリルアルコールなどの高級アルコールの硫酸塩、ポリエチレングリコールエーテルの硫酸塩、エステル結合硫酸塩、エステル結合スルホン酸塩、エステル結合アルキルアリルスルホン酸塩、及びエーテル結合アルキルアリルスルホン酸塩が挙げられる。表面活性コーティング剤は、単独で、又は2以上の混合物として用いてよい。
【0037】
水酸化マグネシウム粒子が上記表面処理剤で表面コーティングされている場合、該表面コーティングは当分野で公知の様々な湿式又は乾式コーティング法を用いて行ってよい。湿式法では、例えば、液体又はエマルジョンの形態の表面処理剤を水酸化マグネシウム粒子のスラリーに添加し、その後に機械的混合が続く。乾式法では、液体、エマルジョン、又は固体の形態の表面処理剤を水酸化マグネシウム粒子に添加し、同時に熱を適用して、又は適用せずに水酸化マグネシウム粒子をミキサー、例えばHENSCHEL(登録商標)ミキサーで十分に攪拌する。場合によっては、表面処理剤を融解し、従って、十分な混合を促すために混合プロセス中に十分な熱を導入しなくてはならない。熱は外部熱源から供給されるか、又はミキサー自体により生成されてよい。利用される表面活性コーティング材料の量は変動し得るが、一般に、水酸化マグネシウム粒子の重量に基づいて約10重量パーセント以下である。
【0038】
本発明の特定の代替的な実施形態では、本発明のサブミクロンの水酸化マグネシウム組成物は、ナノクレイ材料と組み合わせて用いるか、又はナノクレイ材料に置き換えることができる。ナノクレイ材料は当分野で公知であり、例えば、PERKALITE(商標)ナノクレイとの商標で市販され、Akzo Nobelから入手可能である。このような材料は一般に、ナノサイズの無機粒子、例えば、少なくともその1つの寸法にナノメートルサイズ範囲を有する小板状粒子として定義され得る。一般に、小板状粒子は、非常に高いアスペクト比(対象の長さ対厚さの比)を有する改質されたクレイ材料と説明され得る。従って、該粒子は、その長さに対して極めて最小の厚さ又は直径を有するとも説明され得る。
【0039】
本明細書において、「小板状粒子(platelet particles)」は、比較的平らな2つの向かい合う面を有する粒子であり、その厚さは面と面の間の距離であり、面の大きさに比べて比較的小さい。小板状粒子は剥離した層状の無機物を含む。有用な剥離した無機物質としては、膨潤性の層状物質に由来するものが挙げられ、それには、天然又は合成フィロシリケートクレイが含まれる。このような物質の例は、スメクタイト系(smectic)粘土鉱物、例えば、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ベントナイト、ボルコンスコアイト(volkonskoite)、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、マガダイト、ケニヤイト、ステベンサイトなど、ならびにバーミキュライト、ハロイサイト、アルミネート酸化物、ハイドロタルサイトなどである。これらの層状粘土は一般に、28Å以下の層間隔でしっかりと結び付けられている厚さ約4〜12Åのケイ酸塩小板を複数含有する粒子を含み、層間の面に存在するOH、NO、CO−2、Na、Ca+2、K又はMg+2などの交換性陽イオン及び陰イオンを含有する。
【0040】
本明細書においてポリマー添加剤として用いられる小板状粒子は、個別の層又は小さな集まりの厚さを有し、約10層未満、好ましくは約5層未満、及びより好ましくは約3層未満、さらにより一層好ましくは1又は2の層である。好ましくは、各層間のインターカレーションは全て又は実質的に全ての個別の層が相互に剥離して別個の小板状粒子を形成するように完結している。そのような寸法に限定されるものではないが、一般に、かかる粒子の平均厚さは約2Å未満、さらにより好ましくは、約10Å未満(例えば、約3〜6Å)であり、アスペクト比(長さ:厚さ)は約1000〜約1、最も一般的には約300〜約400の範囲である。
【0041】
ナノクレイを含有するポリマー材料を作成する多くの方法があり、これらの方法は3つの一般的な種類、(1)インサイチュー重合;(2)溶液インターカレーション;及び(3)溶解剥離に分類することができる。最初の2つの方法では、このような材料は、膨張剤、例えば長鎖有機陽イオン、及び水溶性オリゴマーもしくはポリマーが、層状のケイ酸塩、例えばスメクタイト系粘土の隣接する層の間に挿入されるか又は吸収され、それによって隣接するケイ酸塩層の間の層間隔が増大するため、層状のケイ酸塩と融解したポリマーを混合する際にケイ酸塩層の間にポリマー鎖を含むことができるプロセスで調製され得る。例えば、米国特許第5,552,469号、WO93/04117号、特開第8−151,449号、同第7−207,134号、同第7−228,762号、同第7−331,092号、同第8−259,806号、及び同第8−259,846号参照。溶解剥離又はメルトインターカレーションは、例えば、Polymer Layered Silicate Nanocomposites,Giannelis,Adv.Mater.1996,8,No.1,29に記載されている。インサイチュー重合又は溶液インターカレーションとは異なり、溶解剥離は膨張剤又は分散媒を必要とせずに粘土鉱物及びポリマーのみを必要とする。しかし、膨張剤を用いて特定のポリマーによる粘土鉱物の剥離を促進してよい。溶解剥離では、粘土鉱物及びポリマーは一緒に混合され、次にポリマーの軟化点を越える温度まで加熱される。
【0042】
ナノクレイ/ポリマーナノコンポジット材料では、2種類の構造が可能である。一方では、構造は、単一の伸びたポリマー鎖が層間に挿入されて、その結果、ポリマー/無機層が交互になった、よく整った多層となるように挿入されている。不規則又は離層していると称されるもう一方では、無機層は、ポリマーマトリックス全体にわたってランダムな配列で、ポリマー中に実質的に均一に分散している。
【0043】
好ましい実施形態では、本発明で用いられるナノクレイは、Mg及びAlの無機シートを含む陰イオン性粘土であり、一実施形態では式MgAlCO(OH)16・HOを有するハイドロタルサイトに由来する。例示的な市販の実施形態はAkzo Nobelから入手可能なPERKALITE(商標)ナノクレイである。
【0044】
上記のサブミクロンの水酸化マグネシウム組成物及び/又はナノクレイ材料(本明細書において「サブミクロンの添加剤」とも称される)は、難燃性材料、例えばその他の水酸化マグネシウム粒子分布と、ポリマー樹脂への組み込みの前に混合されてよい。例えば、サブミクロンの添加剤は、市販の水酸化マグネシウム組成物、例えばMAGSHIELD(登録商標)S又はMAGSHIELD(登録商標)UF水酸化マグネシウム生成物と混合することができる。本発明のサブミクロンの添加剤が第2の水酸化マグネシウム粒子分布と混合される場合、サブミクロンの添加剤は、一般に、水酸化マグネシウム粒子及びサブミクロンの添加剤の総重量に基づいて、少なくとも約3重量パーセント、より好ましくは少なくとも約5重量%、そして最も好ましくは少なくとも約10重量%の量で存在する。一実施形態では、本発明のサブミクロンの添加剤は、サブミクロンの添加剤及びその他の水酸化マグネシウムの粒子分布などのその他の難燃性材料の総重量に基づいて、約3重量%〜約30重量%、より好ましくは約3重量%〜約15重量%の量で存在する。
【0045】
本発明のサブミクロンの水酸化マグネシウム組成物(又はナノクレイ材料)と混合される大きなサイズの水酸化マグネシウム粒子分布は、一般に、少なくとも約0.9μmのD50(例えば、約1〜約8μmのD50)及び約30m/g以下、より好ましくは約20m/g以下、最も好ましくは約15m/g以下のBET表面積を特徴とする。本発明の組成物との混合に適している水酸化マグネシウム粒子分布の種類も、サブミクロンの水酸化マグネシウム組成物を作成するために用いられる供給スラリー中の微粒子材料としての使用に適している。理解されるように、本発明のサブミクロンの水酸化マグネシウム組成物と第2の粒子分布との混合から得られる粒子組成物は、混合されている2つの粒子分布の粒径値及びBET表面積値の間の粒径及びBET表面積により特徴付けられる。サブミクロンの添加剤を大きなサイズの水酸化マグネシウム粒子分布と混合することにより、特定のポリマー樹脂用途に必要とされる難燃性添加剤の全体的な量を減少させる可能性があり得る。
【0046】
別の態様では、本発明は、本発明のサブミクロンの水酸化マグネシウム組成物及び/又はナノクレイ及び合成ポリマー樹脂を含む、ポリマー組成物、及びそれから作成された製品を提供する。ポリマー樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又はエラストマーであってよい。一般に、ポリマーは以下のポリマーのクラス、ポリオレフィン、ポリエーテル(全てのエポキシ樹脂、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、及びポリ(フェニレンオキシド)を含む)、ポリアミド(ポリ尿素を含む)、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリベンズイミダゾール、ポリエステル(ポリカーボネートを含む)、ポリウレタン、ポリイミド、ポリヒドラジド、フェノール樹脂、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリカルボジイミド、ポリイミン、アゾポリマー、ポリスルフィド、及びポリスルホンに入る。
【0047】
本発明の水酸化マグネシウム粒子(又はナノクレイ)とブレンドされる合成樹脂は、好ましくは、一般に成形された製品を製造するために用いられる合成樹脂であり、オレフィン(α−オレフィン)ポリマー類及び共重合体類、例えばポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、鎖状低密度ポリエチレン、及びウルトラ低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、ポリブテン、ならびにポリ(4−メチルペンテン−1)など;オレフィンとジエンの共重合体類(例えば、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、及びプロピレン−4−メチルペンテン−1共重合体);エチレン−アクリレート共重合体類(例えば、エチレンエチルアクリレート樹脂(EEA)、エチレンメチルアクリレート共重合体樹脂(EMA)、及びエチレンアクリレート共重合体樹脂(EAA));ポリスチレン及びスチレンの共重合体類、例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、及びアクリロニトリル−アクリル酸塩−スチレン(AAS)など;熱可塑性ポリオレフィン(TPO);塩化ビニル又は酢酸ビニルポリマー類もしくは共重合体類、例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−塩化ビニル共重合体、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)など;フェノキシ樹脂;ポリアセタール;ポリアミド樹脂、例えばナイロン−6及びナイロン−66など;アクリル及びメタクリル樹脂;ブタジエン;ポリウレタン;ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)及びポリブチレンテレフタラート(PBT));ポリカーボネート;ポリケトン;ジアリルフタレート樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂;メラミン樹脂;アルキド樹脂;尿素樹脂;ならびにゴム類、例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレンジエンモノマー(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、塩素化ポリエチレン(CPE)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、及びフッ素ゴムなどがある。
【0048】
合成ポリマーは、前述のポリマー、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、ランダムトリポリマー、ブロックトリポリマー、交互トリポリマー、それらの誘導体(例えば、そのグラフト共重合体、エステル、又はエーテル)などのいずれかのホモポリマーであってよい。ポリマー分子量は本発明において制限因子とは考えられず、数平均分子量は一般に約250から500,000Daを超える範囲内であるが、本発明を逸脱しなければどのような分子量を用いてよい。
【0049】
ポリマー樹脂組成物は、本発明から逸脱することなく、当分野で公知の1以上の添加剤をさらに含んでよい。例示的なさらなる添加剤としては、限定されるものではないが、着色剤(例えば、蛍光染料及び色素)、着臭剤、消臭剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、増量剤、核剤、滑沢剤、界面活性剤、湿潤剤、本発明の水酸化マグネシウム粒子に加えて難燃性剤、紫外光安定剤、抗酸化薬、殺生物剤、金属不活性化剤、増粘剤、熱安定剤、消泡剤、ポリマー合金相溶化剤(compatibilizing agent)、発泡剤、乳化剤、架橋剤、ワックス、微粒子、流動促進剤、ならびにポリマー成分の加工性又は最終用途特性を促進するために添加されるその他の材料が挙げられる。このような添加剤は従来の量で用いてよく、一般に総組成物の10重量%を越えない。
【0050】
ポリマー樹脂に添加される難燃性添加剤の総量(水酸化マグネシウムの全ての粒子分布と本発明の全てのサブミクロンの添加剤(例えば、サブミクロンの水酸化マグネシウム又はナノクレイ)の総量を意味する)は、変動する可能性があり、所望のレベルの耐燃性、ポリマー樹脂の種類、形成されるポリマー製品などを含む、様々な因子によって決まる。一般に、難燃性添加剤の総量は、ポリマー樹脂(添加剤を含む)の総重量に基づいて約1〜約80重量パーセント、より好ましくは約35〜約80重量パーセント、そして最も好ましくは、ポリマー樹脂及び難燃性添加剤の総重量に基づいて約50〜約80重量パーセントとなる。十分な難燃性添加剤、例えば十分な水酸化マグネシウム又はナノクレイを添加して、少なくともV2又はそれよりも良い、より好ましくはV1又はそれよりも良い、そして最も好ましくはV0のUL94(装置及び電気機器における部品用プラスチック材料の燃焼性試験基準(Standard for Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances)、第5版;Underwriters Laboratories Inc.)評価を得ることが好ましい。さらに、十分な水酸化マグネシウム又はナノクレイを添加して約270J/g・K以下、より好ましくは、約260J/g・K以下、そして最も好ましくは約250J/g・K以下のHeat Release Capacity(HRC)値を得ることが好ましい。
【0051】
上記に延べたように、難燃性添加剤は、ナノクレイ材料又は本明細書に説明されるサブミクロンの水酸化マグネシウム組成物とその他の難燃性添加剤、例えばより大きなサイズの水酸化マグネシウム粒子分布との組合せを含んでよい。このような組合せには、ナノクレイと組み合わせたMAGSHIELD(登録商標)S又はMAGSHIELD(登録商標)UF水酸化マグネシウム生成物などのより大きなサイズの水酸化マグネシウム粒子分布、本発明に従うサブミクロンの水酸化マグネシウム粒子分布と組み合わせたより大きなサイズの水酸化マグネシウム粒子分布、及び、ナノクレイとサブミクロンの水酸化マグネシウム組成物の両方と組み合わせたより大きなサイズの水酸化マグネシウム粒子分布が含まれる。この組合せは、ポリマー樹脂への添加の前に均質な混合物の形態であってもよいし、又は2以上の難燃性添加剤がポリマー樹脂中に個別に分散していてもよい。このような組合せでは、より大きなサイズの水酸化マグネシウム粒子分布は、一般に、ポリマー樹脂の総重量に基づいて(添加剤を含む)、約50〜70重量パーセント、より好ましくは約50〜約65重量パーセントの量で存在し、サブミクロンの水酸化マグネシウム又はナノクレイ成分は、約2〜約30重量パーセント、より好ましくは約4〜約20重量パーセント、そして最も好ましくは約6〜約15重量パーセントの量で存在する。このような添加剤組成物は、一般に、当分野で公知の様々な混合装置を用いて調製することのできる混合物の形態であってよい。
【0052】
本発明の水酸化マグネシウム組成物又はその他の難燃性添加剤を含むポリマー組成物は、例えば、合成ポリマー樹脂及び水酸化マグネシウム粒子又はその他の添加剤の、ブレンディング、混練、及び成形により当分野で公知の任意の方法及び装置を用いて均質な混合物を形成することにより、形成してよい。例えば、水酸化マグネシウム粒子とポリマー樹脂の混合物はオープンロール、1軸、又は2軸押出機、Banburyミキサーなどで溶融混練してよい。その後、当分野で公知の任意の手段、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、回転成形、インフレーション成形などを用いて樹脂混合物を最終の所望の製品の形状に成型してよい。
【0053】
上記の合成ポリマー樹脂/水酸化マグネシウム粒子混合物を用いて形成されたポリマー製品は、様々な用途及び製品、例えば電力輸送及び電気通信のための電線の外装、様々な電子工学用途、自動車部品、商業用及び住居用の建材、大量輸送用車両部品、又は様々な航空宇宙/防衛用途で用いることができる。
【0054】
本発明のサブミクロンの水酸化マグネシウム組成物はまた、石油燃焼式の発電所において化石燃料の燃焼の結果生じるスラグの形成を防ぐための添加剤としても用いることができる。本目的のため、水酸化マグネシウム組成物は、粉末形態で、水性スラリー形態で、又は炭化水素流体(例えば、No.2オイル、ケロシン、又はSAE30モーター油)中の分散体の形態で使用され得る。形態に関わらず、水酸化マグネシウム組成物は燃焼の前に燃料油(例えば、No.6燃料油)に添加される。一実施形態では、本発明の水酸化マグネシウム組成物は、軽燃料油中に、分散体の総重量に基づいて約25〜約80重量パーセント、より好ましくは約30〜約50重量パーセントの濃度で分散している。
【0055】
本発明のさらにもう1つの態様では、本発明の水酸化マグネシウム組成物は、その他のマグネシウム誘導体、例えば酸化マグネシウム又は炭酸マグネシウム(例えば、マグネサイト、塩基性炭酸マグネシウム、ネスケホナイトなど)の製造における反応性前駆体として用いられ得る。本発明の組成物のサブミクロンサイズが得られれば、本発明の水酸化マグネシウムを用いて形成された最終のマグネシウム誘導体も同じサブミクロンサイズを提示することが予測され、そのことは多くの用途において貴重であり得る。
【0056】
以下の限定されない例により、本発明をこれからさらに説明する。
【実施例】
【0057】
実施例1
サブミクロンの水酸化マグネシウム粒子の製造
異なるサイズのジルコニア粉砕媒体をMg(OH)スラリーに用いて、DYNO(登録商標)−ミル(KDL型)で研究を行った。0.6mm〜0.8mmのサイズ範囲の粉砕媒体で、ミルのRPM及び粉砕時間を変えて初期試験を行った。これらの初期試験の結果を下記の表1に示す。
【表1】

【0058】
上記の試験から、ミルのRPMの増加及び粉砕時間の増加がMg(OH)粒子を粉砕する能力にマイナスの効果があったことが見出された。粒子を懸濁液中に保持する水が、粉砕プロセスの運動エネルギーにより新しく露出した表面積に吸収されたこと、及びスラリー粘度が高くなるにつれて、粉砕媒体/Mg(OH)接触面積の有効性が減少することが観察された。
【0059】
この問題を補正し、粒径をさらに小さくするため、粉砕媒体サイズを0.3mmに縮小し、水を添加してスラリーの固体%を55%未満に低下させ、さらにミルのRPMを減少させた。ミル供給スラリーのD50は1.70ミクロンであった。これらの試験の結果を下記の表2に示す。
【表2】

【0060】
これらの変更を行うことにより、D50が0.3ミクロン未満のMg(OH)粒子を、1時間の粉砕時間内に、さらにミルのRPMを減少させて製造することが可能であることが見出された。これらの結果から、特に固体%が及び55%未満で維持され、粘度が約600cP未満で維持されるならば、粉砕時間の増加こそが、さらなる微粉化に寄与することは明白である。特に注目されることは、1時間の時間間隔で2,000RPMで生じた0.295ミクロンのD50と比較して、0.261ミクロンのD50を生じる、1時間の粉砕時間内にミルを3,000RPMまで増加させることの効果である。しかし、その他のミルRPM及び固体の装填も効果的である。
【0061】
実施例2
サブミクロンの水酸化マグネシウム粒子生成のさらなる実施例
0.1〜0.3ミクロンのサイズの水酸化マグネシウム粒子を、媒体ミルを用いて生成した。このミルに酸化ジルコニウム媒体を詰め、水酸化マグネシウムのスラリーを再循環させることにより運転させた。所望のメジアン粒径が得られるまでスラリーを再循環することを継続した。媒体サイズを含む、ミルローターのRPM、スラリー供給速度、スラリー固体濃度、水酸化マグネシウム源、及び添加剤の使用を含む、いくつかの操作パラメータを調査した。標的生成物を生成する3つの異なる方法を下記に説明する。
【0062】
本実施例で用いた粉砕装置を次の通り説明する。
1.600mLのガラス製水冷粉砕チャンバー(DYNO(登録商標)−KDL型ミル)を用いる媒体ミル。
2.ウレタン製羽根車。
3.スラリーリザーバは、容量2リットルの大きな漏斗か、又は4リットルのステンレス鋼ビーカーのいずれかであった。
4.オーバーヘッド攪拌機。
5.蠕動ポンプ;Masterflex 7518−60ヘッド。
6.粉砕媒体は0.3mm酸化ジルコニウムであった;比重6.0g/cc。
【0063】
このデータ中に記載される測定値は次のように測定した。
1.MICROMERITICS(登録商標)FLOWSORB II 2300を用いてBET単一点により測定される表面積。
2.水(50mlの水および3グラムのサンプル)中、MICROMERITICS(登録商標)Sedigraph 5100を用いて測定される粒径。
3.蒸発により規定される固体。
4.Brookfield粘度計モデルRVDVII+、3番スピンドルを100RPMにて用いて測定される粘度。
【0064】
A.0.17ミクロンの粒径及び62.6m/gの表面積を生じる処理運転
固形分40%のFLOMAG(登録商標)H(Martin Marietta Materialsから入手可能)スラリーで開始した。ミルに充填された1500mlのスラリーでミル供給を開始した。次に、500mlのスラリーを、ミルからの初期フラッシの間に捨てた。ミルを3000RPMで開始させ、流速を83ml/分に調節した。スラリーをリザーバに排出した。リザーバはミル供給ラインに配管されている(plumbed to)2リットルの漏斗であった。このリザーバを、オーバーヘッドミキサーを用いて一定の攪拌下に置いた。次に、スラリーをミルに再循環して戻した。合計運転時間は5時間であった。運転の間、粉砕中に525mlの水を平均37.5mlで17.5分毎に生成物に添加した。これにより、62.6m/gの表面積及び0.17μmのメジアン粒径の最終生成物が生成された。
【0065】
FLOMAG(登録商標)Hの表面積が増大するにつれて、スラリーが増粘するため、このプロセスの間、水を添加した。特定の理論に縛られるわけではないが、これは、水酸化マグネシウム粒子の表面の吸水及び塩化物量に起因すると考えられる。
【0066】
B.0.103ミクロンの粒径及び49.5m/gの表面積を生じる処理運転
水和したMAGCHEM(登録商標)10−325MgO(Martin Marietta Materialsから入手可能)の粉砕によりこの生成物が生成された。MAGCHEM(登録商標)10−325を塩化物フリー物質の供給源として用いた。試験は、塩化物量が、粉砕中にスラリーの増粘に寄与するいくつかの因子の1つであることを示した。MAGCHEM(登録商標)10−325を、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Wajer et alのRE36,369号に記載されるように、圧力釜中で25psiにて4時間水和させた。
【0067】
強熱減量(LOI)試験を用いてMgOの水和の程度を測定した(LOIが30%より大きい場合は、一般にMgOが水酸化物形態に変換されたことを示す)。この試験は、風袋を差引いた(tared)るつぼにおいて予め秤量された量の水酸化物サンプルを用いて行われた。サンプルを含有するるつぼを850℃を超える炉に最低1時間入れる。るつぼ及びその内容物(この時点でMgOに変換し戻されている)をデシケーター中で放冷させ、その後再び秤量して減量を測定し、それを百分率ベースで報告する。本実施例における水和生成物のLOIは30.86%であり、表面積は5.49m/gであった。
【0068】
MAGCHEM(登録商標)10−325を蒸気圧で水和した後、25%スラリーを生成した。1500mlのスラリーをミルに充填した。次に、500mlのスラリーを、ミルからの初期フラッシの間に捨てた。ミルを3000RPMで開始させ、流速を125ml/分に調節した。スラリーをリザーバに排出した。リザーバはミル供給ラインに配管されている(plumbed to)2リットルの漏斗であった。このリザーバを、オーバーヘッドミキサーを用いて一定の攪拌下に置いた。次に、スラリーをミルに再循環し戻した。合計運転時間は3時間であった。運転時間中又は運転時間後に、水の添加は行わなかった。これにより、49.5m/gの表面積および0.103μmのメジアン粒径の最終生成物が生成された。この生成物の92%が1ミクロンよりも小さかった。
【0069】
C.0.103ミクロンの粒径及び54.5m/gの表面積を生じる処理運転
FLOMAG(登録商標)Hの30%スラリーを、1000ppmのPOLYMER VENTURES(登録商標)PC−546をスラリーの全容積ベースで添加して作成した。POLYMER VENTURES(登録商標)PC−546は陰イオン性アミンポリマーである。次に、スラリーを325メッシュ篩に通した。これは、スラリー中に存在し得る44μm以上の粒子を除去するために行った。ミルに充填された3500mlのスラリーでミル供給を開始した。次に、500mlのスラリーを、ミルからの初期フラッシの間に捨てた。ミルを3000RPMで開始させ、流速を98ml/分に調節した。スラリーをリザーバに排出した。リザーバはミル供給ラインに配管されている(plumbed to)4リットルのステンレス製ビーカーであった。このリザーバを、オーバーヘッドミキサーを用いて一定の攪拌下に置いた。次に、スラリーをミルに再循環し戻した。合計運転時間は6時間であった。運転時間中又は運転時間後に、水の添加は行わなかった。POLYMER VENTURES(登録商標)PC546を添加して粘度への塩化物の効果を中和した。これにより、54.5m/gの表面積及び0.103μmのメジアン粒径の最終生成物が生成された。この生成物の92%が1ミクロンよりも小さかった。
【0070】
本実施例は、媒体ミルが0.1ミクロンのメジアン粒径を有する水酸化マグネシウムを作成できることを例証する。本プロセスは、いくつかの異なる供給源、例えばFLOMAG(登録商標)Hに類似するスラリー又は水和した酸化マグネシウムなどを用いて実行されてよい。本プロセスは、例えば、30%以下に希釈したスラリーを用いてよい。この希釈は粉砕プロセス中又は粉砕プロセス前に行ってよい。粉砕の前の希釈は、スラリーの最良の粉砕をもたらすために陰イオン性ポリマーの使用を伴うことが有利である。粉砕作用を働かせ続けるプロセスの間のスラリーの一定希釈により、又はPOLYMER VENTURES(登録商標)PC546などの添加剤の使用により、有意な塩化物量を含む出発スラリー材料、例えばFLOMAG(登録商標)Hの塩化物量に対抗することが重要である。スラリー供給を生成する酸化マグネシウムの水和した低塩化物源の使用は、粉砕及び粘度などのスラリー特性に影響を及ぼす塩化物を効果的に除去する。
【0071】
実施例3
ポリマー/Mg(OH)のブレンディング及び燃焼試験
本発明のサブミクロンのMg(OH)の難燃性能を測定するため、それをポリプロピレン樹脂配合物中の様々なサイズのMg(OH)の他のサンプルと比較した。様々な水酸化マグネシウムサンプルをBET表面積及び各サンプルに対して記載されるD50とともに下記の表3に記載する。サブミクロンの水酸化マグネシウムは「サブミクロン」と呼ばれる。
【表3】

【0072】
興味深いことに、MAGSHIELD(登録商標)S又はUF生成物は、サブミクロン材料を生成するための供給材料として用いられ得ることが指摘される。水酸化マグネシウムが粉砕されてより小さな粒径となる際、サブミクロン材料のBET表面積が有意に増加することが観察される。
【0073】
上記のサンプルを、ポリプロピレン、ステアリン酸カルシウム、及びプラスチック安定剤とともにBRABENDER(登録商標)レオメーター(サンプル50g)中でブレンドした。サンプルは、62%〜65重量%の水酸化マグネシウム、0.75重量%のステアリン酸カルシウム(下記のようにさらなるステアリン酸カルシウムを含む1つのサンプルは除く)、及び0.2重量%の抗酸化薬からなった。レオロジー試験(各ブレンドについて三重に実施)を210〜220℃にて行い、トルクを測定した。結果を下の表4に示す。
【表4】

【0074】
データは、サブミクロンを含有するサンプルが最も高いトルク値を生じることを示す。サブミクロン/ポリプロピレンブレンドのトルクを低下させるため、さらなるステアリン酸カルシウムをサブミクロン/ポリプロピレンブレンドの3重量%のレベルに添加した、それは実際にトルクを低下させ、プラスチック樹脂中の粒子のより良い分散を可能にした。最低のトルク値は、天然に存在するブルサイトサンプルで得られた。水酸化マグネシウム/ポリプロピレンブレンドの難燃性を試験するため、上記のサンプルをMicroscale Combustion Calorimeter分析に提出した。サンプルを三重に試験してデータを得た。100%ポリプロピレンのサンプルを試験して樹脂の燃焼を遅らせる際の様々な水酸化マグネシウムの有効性に関するベースラインを得た。
【0075】
結果はピーク熱放出に関連し、下記の表5に熱放出能(Heat Release Capacity)(HRC)(単位はJ/g・K)として報告される。HRCの値が得られ、選択された標準値からのこの値の増減が難燃性剤の有効性を示す。
【0076】
LOI、すなわち限界酸素指数(一般に酸素指数と称される)は、ASTM E2863に従って測定され、酸素及び窒素の流動混合物中のただ火炎燃焼を支えるためだけに必要とされる酸素の濃度を測定する炎応答試験である。サンプルはろうそくのような位置で露出され、酸素量が酸素の百分率(v/v)として測定される。難燃性剤を含まないポリオレフィンの酸素指数は約16%である。本発明者らが呼吸する大気は酸素が約21%である。21%を上回る酸素量は難燃効果を示す。LOI結果も下記の表5に報告される。
【表5】

【0077】
予測されるように、全ての水酸化マグネシウムが樹脂に難燃性をもたらしたが、サブミクロン含有サンプルは最低のHRC値(最大の難燃能力)をもたらした。MAGSHIELD(登録商標)UFのD50は0.96ミクロンであったが、これはD50が4.44ミクロンであるMAGSHIELD(登録商標)Sよりも良好な樹脂中の分散と、結果として得られる良好なHRC値をもたらした。しかしD50が0.223ミクロンであるサブミクロンの水酸化マグネシウムを用いた場合、MAGSHIELD(登録商標)UFサンプルを超える、HRC値のさらなる低下が得られた。この改良は樹脂中のより小さなサブミクロン粒子のより良好な分散に起因する可能性が高い。より良好なサブミクロン粒子の分散は、さらなるステアリン酸カルシウムを添加した場合に増幅した。ステアリン酸カルシウムは溶けると滑沢剤として働くので、それがサブミクロン粒子のより良い分散に役立ち、結果としてHRC値をさらに11単位(261から250単位へ)低下させた。さらに、サブミクロン粒子をMAGSHIELD(登録商標)UFに50%添加することにより、100%のMAGSHIELD(登録商標)UF配合物に対して34HRC単位の低下が得られた。これらの試験はポリプロピレン樹脂で行われたが、同様の利点が異なる樹脂混合物に予期される。
【0078】
実施例4
ポリマー/Mg(OH)及びポリマー/ハイドロタルサイトのブレンディング及び燃焼試験
コーンカロリーメーター熱放出測定は、ポリプロピレン及び様々な水酸化マグネシウム又はハイドロタルサイト添加剤を含む5つの異なる直径10cmの円盤(厚さ3.2mm)で行われた。コーンカロリーメーターはASTM E1354−04aに従って行われる小規模試験であり、試験物質を燃やすことのできる熱源に対する試験物質の反応を示すことが意図される。これらの試験では、50kW/mの入射熱(incident heat)を用いた。試験サンプルを、火災のエネルギーを模したものである、この放射エネルギーに付した。さらに、サンプルをマッフル炉に入れること、及び全ての有機成分を焼き払うことを伴う炭化法を用いて、5つのサンプルを評価して存在する増量剤の実際の量を決定した。残りは金属酸化物である。金属水和物の量をこの酸化物の残りから計算する。
【0079】
各サンプルに関する配合を下記に示す。
対照:このサンプルは、さらなる難燃性添加剤を含まずに65重量%(サンプルの総重量に基づく)のMAGSHIELD(登録商標)UF水酸化マグネシウムを有するよう計画された。実際のMAGSHIELD(登録商標)UF水酸化マグネシウムの総量は59.5重量%であることが分かった。
MM2:このサンプルは、60重量%のMAGSHIELD(登録商標)UF水酸化マグネシウム及び5重量%のPERKALITE(商標)ハイドロタルサイト粒子(Akzo Nobel)を有するよう計画された。実際の増量剤の総含量は60.1%(水酸化マグネシウムとハイドロタルサイトを総合した重量)であることが分かった。
MM3:このサンプルは、63重量%のMAGSHIELD(登録商標)UF水酸化マグネシウム及び2重量%のPERKALITE(商標)ハイドロタルサイト粒子を有するよう計画された。実際の増量剤の総含量は61.7重量%であることが分かった。
MM5:このサンプルは、55重量%のMAGSHIELD(登録商標)UF水酸化マグネシウム及び本発明に従って調製された10重量%のサブミクロンのMg(OH)を有するよう計画され、サブミクロン粒子は0.11ミクロンの粒径および約44.4m/gの表面積を有する。実際の増量剤の総含量は64.3重量%であることが分かった。
MM7:このサンプルは、60重量%のMAGSHIELD(登録商標)UF水酸化マグネシウム及び本発明に従って調製され、MM5サンプルで用いられたものと同じサブミクロンMg(OH)粒子を5重量%有するよう計画された。実際の増量剤の総含量は64.9重量%であることが分かった。
【0080】
MAGSHIELD(登録商標)UF水酸化マグネシウムとその他の難燃性増量剤材料の合計量には変動があるので、コーンカロリーメーターの結果を標準化する必要があった。変動が小さい場合(ここでは15%未満の場合)、標準化は簡単な調整技術によって行うことができる。ピーク熱放出値に無機増量剤の所定量を掛算する。その結果を当初の所望の増量剤量で割算する。
【0081】
サブミクロンの水酸化マグネシウム粒子及びハイドロタルサイト粒子は、コーン試験において対照と比較してピーク熱放出及び3分熱放出を有意に低下させた。ハイドロタルサイトはサブミクロンの水酸化マグネシウムよりもわずかに効果的であった。MM7が相当な変動を示した(反復試験において)ことは注目され、そのために信頼性に問題がある。
【0082】
ピーク熱放出率(%PHR)の低下及び3分PHR率の低下の結果を下記の表6に示す。
【表6】

【0083】
これらの材料が有意に増大した燃焼性保護をもたらすという結論を支持するため、標準的な広く用いられている燃焼性試験であるUL94を、3.2mm及び1.6mmの2種類の厚さのサンプルの各々で行った。結果は下記の表7に示され、試験で評価されたサブミクロンの水酸化マグネシウム及びハイドロタルサイト材料についてのコーン試験により示される増大した燃焼性保護が確認される。
【表7】

【0084】
NRは評価されずという意味である。UL94 V0結果は、試験方法の性質に起因して標準化することができない。しかし、全ての試験サンプルがこの燃焼性試験において対照よりも良い結果を収めたという結論にマイナスとはならない。
【0085】
本明細書に示される本発明の多くの変形例及びその他の実施形態は、前述の説明に示される教示の利益を有する、これらの発明の属する当業者の頭に浮かぶ。そのため、本発明は開示される特定の実施形態に限定されるものではないこと、及び変更形態及びその他の実施形態は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることが理解される。具体的な用語が本明細書に用いられているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ用いられ、限定のために用いられるのではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
D50が約0.30μm以下、D90が約1.5μm以下、及びBET表面積が少なくとも約35m/gである水酸化マグネシウム粒子の第1の分布を含む水酸化マグネシウム粒状組成物。
【請求項2】
前記D50が約0.25μm以下である請求項1に記載の水酸化マグネシウム粒状組成物。
【請求項3】
前記D50が約0.22μm以下である請求項2に記載の水酸化マグネシウム粒状組成物。
【請求項4】
前記D90が約1.0μm以下である請求項1に記載の水酸化マグネシウム粒状組成物。
【請求項5】
前記BET表面積が少なくとも約40m/gである請求項1に記載の水酸化マグネシウム粒状組成物。
【請求項6】
前記BET表面積が少なくとも約50m/gである請求項5に記載の水酸化マグネシウム粒状組成物。
【請求項7】
前記粒子が界面活性剤でコーティングされている請求項1に記載の水酸化マグネシウム粒状組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤が脂肪酸又はその塩もしくはエステルである請求項7に記載の水酸化マグネシウム粒状組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤がステアリン酸カルシウム又はステアリン酸である請求項7に記載の水酸化マグネシウム粒状組成物。
【請求項10】
前記第1の分布と混合された水酸化マグネシウム粒子の第2の分布をさらに含み、前記第2の分布が少なくとも約0.9μmのD50と、約30m/g以下のBET表面積を有する請求項1に記載の水酸化マグネシウム粒状組成物。
【請求項11】
(a)D50が少なくとも約0.9μmであり、BET表面積が約30m/g以下である水酸化マグネシウム粒子の第1の分布;及び(b)(i)複数のナノクレイ粒子;(ii)D50が約0.30μm以下であり、D90が約1.5μm以下であり、BET表面積が少なくとも約35m/gである水酸化マグネシウム粒子の第2の分布;もしくは(iii)(i)と(ii)の組合せを含む第2の組成物を含む難燃性添加剤組成物。
【請求項12】
前記第2の組成物(b)が水酸化マグネシウム粒子の第2の分布(ii)を含み、前記第2の分布のD50が約0.22μm以下である請求項11に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項13】
前記第2の組成物(b)が水酸化マグネシウム粒子の第2の分布(ii)を含み、前記第2の分布のD90が約1.0μm以下である請求項11に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項14】
前記第2の組成物(b)が水酸化マグネシウム粒子の第2の分布(ii)を含み、前記第2の分布のBET表面積が少なくとも約50m/gである請求項11に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項15】
前記第2の組成物(b)が水酸化マグネシウム粒子の第2の分布(ii)を含み、前記第2の分布の粒子が界面活性剤でコーティングされている請求項11に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項16】
前記界面活性剤が脂肪酸又はその塩もしくはエステルである請求項15に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項17】
前記界面活性剤がステアリン酸カルシウム又はステアリン酸である請求項15に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項18】
前記第2の組成物(b)が前記ナノクレイ粒子(i)を含み、前記ナノクレイ粒子がハイドロタルサイトに由来する請求項11に記載の難燃性添加剤組成物。
【請求項19】
合成ポリマーと請求項1に記載の水酸化マグネシウム組成物の混合物を含むポリマー樹脂組成物。
【請求項20】
前記合成ポリマーが、オレフィン(α−オレフィン)ポリマー及び共重合体、オレフィンとジエンの共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、ポリスチレン及びスチレンの共重合体、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、塩化ビニル又は酢酸ビニルのポリマー又は共重合体、フェノキシ樹脂、ポリアセタール、ポリアミド樹脂、アクリル及びメタクリル樹脂、ブタジエン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、尿素樹脂、及び合成ゴムからなる群から選択される請求項19に記載のポリマー樹脂組成物。
【請求項21】
請求項19に記載のポリマー樹脂組成物を含む成形ポリマー製品。
【請求項22】
UL94評価がV0、V1、又はV2である請求項21に記載の成形ポリマー製品。
【請求項23】
合成ポリマーと請求項11に記載の難燃性添加剤組成物の混合物を含むポリマー樹脂組成物。
【請求項24】
前記合成ポリマーが、オレフィン(α−オレフィン)ポリマー及び共重合体、オレフィンとジエンの共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、ポリスチレン及びスチレンの共重合体、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、塩化ビニル又は酢酸ビニルのポリマー又は共重合体、フェノキシ樹脂、ポリアセタール、ポリアミド樹脂、アクリル及びメタクリル樹脂、ブタジエン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、尿素樹脂、及び合成ゴムからなる群から選択される請求項23に記載のポリマー樹脂組成物。
【請求項25】
請求項23に記載のポリマー樹脂組成物を含む成形ポリマー製品。
【請求項26】
UL94評価がV0、V1、又はV2である請求項25に記載の成形ポリマー製品。
【請求項27】
前記難燃性添加剤組成物が、前記ポリマー樹脂組成物の総重量に基づいて約50〜約80重量パーセントの量で存在する請求項23に記載のポリマー樹脂組成物。
【請求項28】
前記ポリマー樹脂が、前記ポリマー樹脂組成物の総重量に基づいて水酸化マグネシウム粒子の前記第1の分布(i)50〜約70重量パーセント、及び前記第2の組成物(ii)約2〜約30重量パーセントを含む請求項27に記載のポリマー樹脂組成物。
【請求項29】
(a)水酸化マグネシウム粒子又は酸化マグネシウム粒子の水性スラリーを提供する段階と;
(b)D50が約0.30μm以下であり、D90が約1.5μm以下であり、BET表面積が少なくとも約35m/gである水酸化マグネシウム粒子のスラリーを生成するために十分な条件下、直径が約0.5mm以下の粉砕媒体を含むビーズミル中で、前記水性スラリーを一時粉砕する段階と;
(c)前記粉砕段階の間、以下の条件、
(i)前記水性スラリーの固形分が約62重量%以下;及び
(ii)前記水性スラリーの粘度が約1,000cP以下
のうち少なくとも1つを維持する段階と
を含む水酸化マグネシウム粒状組成物を製造する方法。
【請求項30】
前記粉砕段階が約1〜約6時間継続される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記粉砕段階の間、前記水性スラリーが約55重量%以下の固形分で維持される請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記粉砕段階の間、前記水性スラリーの粘度が約800cP以下で維持される請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記水性スラリーの粘度を約1,000cP以下に維持する前記段階が、前記粉砕段階の前又は最中に粘度調節剤を前記水性スラリーに添加することを含む請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記粉砕媒体の直径が約0.1〜約0.3mmである請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記粉砕媒体が、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、イットリウムドープ正方晶ジルコニア多結晶体、ステンレス鋼、及びタングステンカーバイドからなる群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記粉砕媒体が、約3.0〜約6.8g/cmの密度を有するジルコニア系媒体である請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記ビーズミルのRPMが、前記粉砕段階中に約6,000以下かつ約2,000以上で維持される請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2009−517328(P2009−517328A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543370(P2008−543370)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/045421
【国際公開番号】WO2007/097795
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(507181752)マーティン マリエッタ マテリアルズ,インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】MARTIN MARIETTA MATERIALS,INC.
【住所又は居所原語表記】2710 Wycliff Road,Raleigh,NC 27607,U.S.A.
【Fターム(参考)】