説明

難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法

【課題】 本発明は、樹脂粒子中に難燃剤を均一に含浸させることができ、型内発泡成形により、ニクロムカットした際に良好な切断面が得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体が得られる難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、水性懸濁液中のポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる前又は含浸中に、粉末状難燃剤を水性媒体中に分散させてなる難燃剤分散液を水性懸濁液中に供給して、ポリスチレン系樹脂粒子中に粉末状難燃剤を含浸させて難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する製造方法であって、難燃剤分散液は、水性媒体100重量部、粉末状難燃剤5〜40重量部、界面活性剤0.005〜0.10重量部及び可塑剤を含有し且つ粉末状難燃剤量と可塑剤量との比が0.4〜7であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性が要求される建材分野などにおいて好適に用いられる難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造することができる難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、直方体形状などの所望形状のポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造する方法として、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡し、得られた予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填し、予備発泡粒子を二次発泡させて予備発泡粒子同士を熱融着一体化してポリスチレン系樹脂発泡成形体を成形する、所謂、型内発泡成形が採用されている。
【0003】
又、ポリスチレン系樹脂発泡成形体が建材用途に用いられる場合には、ポリスチレン系樹脂発泡成形体は、目的とする寸法や形状に合致させるために、通電加熱したニクロム線を用いて切断されることがある。
【0004】
そして、上述のようにニクロム線を用いて切断(以下「ニクロムカット」という)してなるポリスチレン系樹脂発泡成形体を建材用パネルに用いることが近年、多くなってきており、それに伴って、ニクロム切断面に対する要求品質が高まっている。
【0005】
一方、建材用途に用いられるポリスチレン系樹脂発泡成形体は、一定の基準の難燃性が要求されており、この基準をクリアするために、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子として難燃剤が含有されたものが用いられる。
【0006】
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に難燃剤を含有させる方法として、粉末状難燃剤を反応釜(オートクレーブ)へ直接添加する方法があるが、この方法では粉末状難燃剤が懸濁液中で二次凝集を起こすことによって難燃剤の懸濁液中における分散が不均一となり、その結果、粉末状難燃剤の樹脂粒子への吸収が不均一となってしまい、一部の樹脂粒子が難燃剤を多く吸収してしまうといった問題を生じた。
【0007】
このような難燃剤を多く含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、耐熱性に劣ることから、発泡成形時の加熱に耐えきれずに破泡し収縮して硬化粒となり、ポリスチレン系樹脂発泡成形体をニクロムカットする際に、硬化粒部分においてニクロム線が跳ねてしまって、ポリスチレン系樹脂発泡成形体のニクロム切断面に凹凸状のスジが発生して製品の価値が著しく低下すると共に、パネルに対する充分な接着強度が得られないといった問題点があった。
【0008】
このような問題点を解決するために、特許文献1には、(a)100重量部のビニル芳香族ポリマー粒子、約50〜500重量部の水、有効量の懸濁剤、平均粒径が100ミクロン以下の約0.1〜2.5重量部のヘキサブロモシクロドデカン、約3〜20重量部のC4〜C6の脂肪族炭化水素発泡剤の水性懸濁液を形成し、(b)この懸濁液を約40〜140℃の温度で約0.5〜15時間加熱してヘキサブロモシクロドデカンと発泡剤をポリマー粒子中に取込んで、耐火性で膨張性の熱可塑性ビーズを形成し、(c)このビーズを水から分離することから成る耐火性で膨脹性の熱可塑性ビーズの製造方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、上記熱可塑性ビーズの製造方法は、難燃剤の投入形態が明示されておらず、その記載内容から難燃剤を粉体のまま投入すると考えられ、このように難燃剤を粉体のまま投入すると、ビーズへの吸収が不均一となると共に、難燃剤を微細化することにより、難燃剤が液中で二次凝集し易くなるといった問題点の他に、得られる熱可塑性ビーズの表面付近に多くの難燃剤が存在しがちになり、この難燃剤によって予備発泡時に二次発泡粒子同士が融着し結合してしまう、所謂、ブロッキングが発生し易いといった問題点を有していた。
【0010】
又、特許文献2には、スチレン系樹脂粒子本体に発泡剤を含有させてなる発泡性スチレン系樹脂粒子において、平均粒子径が120μm以下のテトラブロムビスフェノールAジアリルエーテルを、スチレン系樹脂粒子本体とテトラブロムビスフェノールAジアリルエーテルとの合計量に対して、1.0〜5.0重量%の範囲内で含浸させてなる難燃性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子が開示されている。
【0011】
しかしながら、難燃剤は、界面活性剤の存在下にて撹拌下で水中に分散可能であるが、難燃剤を分散させた分散液をタンクから反応釜(オートクレーブ)へ送る時には分散液は攪拌されておらず、その結果、タンクの下部や配管ラインに難燃剤が沈降し、配管ラインが閉塞する危険性があるといった問題点の他に、得られる発泡性スチレン系樹脂粒子の表面付近に多くの難燃剤が存在しがちになり、この難燃剤によって予備発泡時に二次発泡粒子同士が融着し結合してしまう、所謂、ブロッキングが発生し易いといった問題点を有していた。
【0012】
更に、特許文献3には、段落番号〔0062〕に、オートクレーブ内に難燃剤を供給しているが、特許文献1と同様に難燃剤の供給要領が明示されておらず、その記載内容から難燃剤を粉体のまま投入すると考えられ、このように難燃剤を粉体のまま投入すると、特許文献1と同様に、発泡性スチレン系樹脂粒子への吸収が不均一となったり、難燃剤が二次凝集したり、或いは、ブロッキングの発生などの問題を生じやすいものであった。
【特許文献1】特開平4−132746号公報
【特許文献2】特開平11−255946号公報
【特許文献3】特開2006−213850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、樹脂粒子中に粉末状難燃剤を均一に含浸させることができ、型内発泡成形により、ニクロムカットした際に良好な切断面が得られる難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる前又は含浸中に、粉末状難燃剤を水性媒体中に分散させてなる難燃剤分散液を上記水性懸濁液中に供給して、上記ポリスチレン系樹脂粒子中に上記粉末状難燃剤を含浸させて難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する製造方法であって、上記難燃剤分散液は、水性媒体100重量部、上記粉末状難燃剤5〜40重量部、界面活性剤0.005〜0.10重量部及び可塑剤を含有し且つ上記粉末状難燃剤量と上記可塑剤量との比(可塑剤量/粉末状難燃剤量)が0.4〜7であることを特徴とする。
【0015】
上記ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(1)水性媒体、スチレン系単量体及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を懸濁重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造する懸濁重合法、(2)水性媒体及びポリスチレン系樹脂種粒子をオートクレーブ内に供給し、ポリスチレン系樹脂種粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を連続的に或いは断続的に供給して、ポリスチレン系樹脂種粒子にスチレン系単量体を吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造するシード重合法などが挙げられる。なお、ポリスチレン系樹脂種粒子は、上記(1)の懸濁重合法により製造し分級すればよい。
【0016】
本発明の製造方法において、ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどのスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体などが挙げられ、スチレンを50重量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0017】
又、上記ポリスチレン系樹脂としては、上記スチレン系単量体を主成分とする、上記スチレン系単量体と、このスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性単量体などが挙げられる。
【0018】
そして、ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて型内発泡成形を行う場合に、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られる予備発泡粒子のキャビティ内への充填性の観点から、0.3〜2.0mmが好ましく、0.6〜1.4mmがより好ましい。
【0019】
更に、ポリスチレン系樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂のスチレン換算重量平均分子量は、小さいと、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがある一方、大きいと、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、高発泡倍率の難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができない虞れがあるので、20万〜50万が好ましく、24万〜40万がより好ましい。
【0020】
なお、上記懸濁重合法及びシード重合法において用いられる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、イソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3、3、5トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレートなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられ、これらは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0021】
そして、水性媒体中にポリスチレン系樹脂粒子を分散させてなる水性懸濁液は、上記懸濁重合法又はシード重合法による重合後の反応液を水性懸濁液として用いても、或いは、上記懸濁重合法又はシード重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を反応液から分離し、このポリスチレン系樹脂粒子を別途用意した水性媒体に懸濁させて水性懸濁液を形成してもよい。なお、水性媒体としては、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられ、水が好ましい。
【0022】
又、上記懸濁重合法又はシード重合法において、スチレン系単量体を重合させる際に、スチレン系単量体の液滴又はポリスチレン系樹脂種粒子の分散性を安定させるために懸濁安定剤を用いてもよく、このような懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムなどの難水溶性無機塩などが挙げられ、難水溶性無機塩を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
【0023】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、β−テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩などが挙げられ、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
【0024】
そして、本発明の難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法では、上記水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子中に発泡剤を公知の要領で含浸させる。このような発泡剤としては、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であって、常圧でガス状もしくは液状の有機化合物が適しており、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテルなどの低沸点のエーテル化合物、炭酸ガス、窒素、アンモニアなどの無機ガスなどが挙げられ、沸点が−45〜40℃の炭化水素が好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタンがより好ましい。なお、発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0025】
更に、本発明の難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法では、水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる前に或いは含浸中に、粉末状難燃剤を水性媒体中に分散させてなる難燃剤分散液を上記水性懸濁液中に供給して、ポリスチレン系樹脂粒子に粉末状難燃剤を加圧下にて含浸させる。
【0026】
上記難燃剤分散液は、水性媒体、粉末状難燃剤、界面活性剤及び可塑剤を含有する。なお、水性媒体は、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させている水性懸濁液と相溶性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられるが、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させてなる水性懸濁液の水性媒体と同一のものが好ましい。
【0027】
上記粉末状難燃剤としては、ポリスチレン系樹脂粒子中に含浸させる条件下において粉末状であれば、特に限定されず、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモシクロヘキサンなどの臭素化脂肪族炭化水素系化合物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、2,4,6−トリブロモフェノールなどの臭素化フェノール類、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ジグリシジルエーテルなどの臭素化フェノール誘導体などが挙げられ、臭素化脂肪族炭化水素系化合物が好ましく、テトラブロモシクロオクタンがより好ましい。
【0028】
そして、難燃剤分散液中における粉末状難燃剤の含有量は、少ないと、分散に必要な水性媒体が多くなり、製造コストが高くなる一方、多いと、難燃剤分散液中において粉末状難燃剤の微細化が困難となり、粉末状難燃剤が均一に分散した難燃剤分散液が得られ難くなるので、水性媒体100重量部に対して5〜40重量部に限定され、10〜30重量部が好ましい。なお、難燃剤分散液中における粉末状難燃剤の含有量としては、粉末状難燃剤の一部が可塑剤に溶解している場合には、可塑剤に溶解している粉末状難燃剤も含めるものとし、要するに、難燃剤分散液中に含有される全ての粉末状難燃剤を対象とする。
【0029】
更に、水性懸濁液中に難燃剤分散液を供給するにあたって、得られる難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中における粉末状難燃剤の含有量が、粉末状難燃剤を含浸させるポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは0.3〜2.0重量部となるように、より好ましくは0.5〜1.5重量部となるように、特に好ましくは0.7〜1.0重量部となるように調整することが好ましい。これは、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子における粉末状難燃剤の含有量が少ないと、得られる難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体の難燃性が低下することがある一方、多いと、得られる難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の熱融着性や発泡成形性が低下して、得られる難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体の外観が低下することがあるからである。
【0030】
そして、難燃剤分散液中に可塑剤を含有させている。これは、液体状の可塑剤を難燃剤分散液中に均一に分散させることによって、可塑剤と相溶性に優れた粉末状難燃剤を難燃剤分散液中に均一に且つ安定的に分散させている。なお、粉末状難燃剤が水性媒体中に粉状で分散しておればよく、粉末状難燃剤の一部が可塑剤に溶解していてもよい。
【0031】
上記可塑剤としては、特に限定されず、例えば、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソノニル、セバシン酸ジブチル、トルエン、エチルベンゼン、シクロヘキサンなどが挙げられ、アジピン酸ジイソブチル、トルエンが好ましい。
【0032】
更に、難燃剤分散液中における可塑剤の含有量は、少ないと、粉末状難燃剤を難燃剤分散液中に均一に且つ安定的に分散させることができない一方、多いと、ポリスチレン系樹脂粒子中に含有される可塑剤量が過剰となって発泡成形性が低下してしまうので、粉末状難燃剤量と可塑剤量との比(可塑剤量/粉末状難燃剤量)が0.4〜7となるように、好ましくは0.5〜3となるように、より好ましくは0.7〜1.5となるように調整される。
【0033】
又、難燃剤分散液中には、粉末状難燃剤と水性媒体との間における界面エネルギーを低下させることによって、粉末状難燃剤を難燃剤分散液中に安定的に分散させるために、界面活性剤を含有させている。
【0034】
このような界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、β−テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤;アルキルアンモニウム酢酸塩類、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩類、アルキルトリメチルアンモニウム塩類、ジアルキルジメチルアンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩類、オキシアルキレンアルキルアミン類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類などのカチオン界面活性剤;脂肪酸ジエタノールアミド類、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール類、ポリエーテル変性シリコーン類などのノニオン界面活性剤などが挙げられ、アニオン界面活性剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましい。なお、界面活性剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0035】
そして、難燃剤分散液中における界面活性剤の含有量は、少ないと、難燃剤分散液中において粉末状難燃剤の分散性が向上しない一方、多いと、界面活性剤に起因した泡立ちが過剰になり、生産上のトラブルが発生する虞れがあるので、水性媒体100重量部に対して0.005〜0.10重量部が好ましい。
【0036】
又、難燃剤分散液には難水溶性無機塩を含有させることが好ましく、このような難水溶性無機塩としては、例えば、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられ、ピロリン酸マグネシウムが好ましい。
【0037】
そして、難燃剤分散液中における難水溶性無機塩の含有量は、少ないと、難燃剤分散液中における粉末状難燃剤の分散性が低下することがある一方、多いと、難燃剤分散液の粘性が上昇して、粉末状難燃剤が均一に分散した難燃剤分散液を得ることができないことがあるので、水性媒体100重量部に対して0.5〜2重量部が好ましい。
【0038】
又、上記難燃剤分散液を調製する工程において、難燃剤分散液中に分散した粉末状難燃剤の平均粒子径を好ましくは100μm以下に、より好ましくは50μm以下に、特に好ましくは1〜30μmとなるように微細化することが好ましい。これは、難燃剤分散液中に分散させた粉末状難燃剤の平均粒子径が大きいと、粉末状難燃剤の樹脂粒子中への含浸が不均一となる虞れがあるからである。
【0039】
難燃剤分散液中に分散する粉末状難燃剤の平均粒子径を微細化する方法としては、予め微細化された粉末状難燃剤を用いてもよいが、難燃剤分散液を調製する工程において、水性媒体中に粉末状難燃剤、可塑剤及び界面活性剤を添加した液を、ホモミキサー、マイルダーなどの公知の乳化・分散装置を用いて微細化処理することが好ましい。この場合には、粉末状難燃剤の微細化と同時に難燃剤分散液を得ることができる。
【0040】
なお、粉末状難燃剤の粒子径は電気抵抗法によって測定され、具体的には、アパチャー(細孔)の両側に電極が配設されたアパチャー・チューブを、測定対象となる粉末状難燃剤が電解液中に懸濁されてなる懸濁液中に浸漬した状態とする。
【0041】
そして、アパチャー・チューブの電極間に上記懸濁液を介して電流を流し、電極間の電気抵抗を測定する。懸濁液中の粉末状難燃剤が吸引されてアパチャーを通過する時に粉末状難燃剤の体積に相当する電解液が置換されて、電極間の電気抵抗に変化が生じる。この電気抵抗の変化量は粒子の大きさに比例することから、上記電気抵抗の変化量を電圧パルスに変換して増幅、検出することによって粒子体積を算出することができ、この算出された粒子体積に相当する真球の直径を粉末状難燃剤の粒子径とする。
【0042】
そして、粉末状難燃剤の平均粒子径は、上記の如くして測定された各粉末状難燃剤の粒子径の平均をとることにより算出することができ、即ち、粉末状難燃剤の平均粒子径は体積平均粒子径を意味する。
【0043】
なお、粉末状難燃剤の平均粒子径は、例えば、ベックマンコールター株式会社から商品名「コールターマルチサイザーIII」で市販されている測定装置を用いて測定することができる。
【0044】
この難燃剤分散液を、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させている水性懸濁液中に添加する時期は、発泡剤の含浸前あるいは含浸途中のいずれであってもよく、又、水性懸濁液中への難燃剤分散液の添加は、難燃剤分散液を全量、一度に添加してもよいし、難燃剤分散液を複数回に分けて添加してもよいし、或いは、難燃剤分散液を少量づつ連続的に添加してもよい。
【0045】
そして、水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子中に発泡剤及び粉末状難燃剤を含浸させて難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造した後、この難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を水性懸濁液中から取り出して、必要に応じて、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に洗浄処理、乾燥処理を施せばよい。
【0046】
又、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、型内発泡成形を行う場合に、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られる予備発泡粒子のキャビティ内への充填性の観点から、0.3〜2.0mmが好ましく、0.6〜1.4mmがより好ましい。
【0047】
なお、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、粉末状難燃剤以外に、物性を損なわない範囲内において、気泡調整剤、充填剤、難燃助剤、滑剤、着色剤、溶剤などの添加剤を必要に応じて添加することができ、これら添加剤を難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に添加する場合には、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させた水性懸濁液中に添加剤を添加するか、或いは、難燃剤分散液中に添加剤を添加すればよい。
【0048】
次に、上記難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造要領について説明する。難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造する要領としては、公知の方法を採用することができ、具体的には、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡させて、嵩密度0.01〜0.05g/cm3程度のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子とし、このポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填して加熱、発泡させることによって難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0049】
上記難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体の密度は、低いと、難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体の独立気泡率が低下して、難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体の断熱性や機械的強度が低下することがある一方、高いと、型内発泡成形における一サイクルに要する時間が長くなり、難燃性ポリスチレン系樹脂発泡成形体の生産効率が低下することがあるので、0.01〜0.05g/cm3が好ましい。
【発明の効果】
【0050】
本発明の難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、水性媒体、粉末状難燃剤、可塑剤及び界面活性剤を所定量づつ含有し且つ粉末状難燃剤が分散してなる難燃剤分散液を、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させてなる水性懸濁液中に供給してポリスチレン系樹脂粒子中に粉末状難燃剤を含浸させている。
【0051】
そして、難燃剤分散液に難燃剤との相溶性に優れた可塑剤を含有させていると共に界面活性剤も含有させて粉末状難燃剤と水性媒体との間における界面エネルギーを低下させていることから、難燃剤分散液中に粉末状難燃剤が均一に且つ安定的に分散しており、この難燃剤分散液を水性懸濁液中に供給することによって水性懸濁液中の各ポリスチレン系樹脂粒子に粉末状難燃剤を均一に且つ中心部にまで充分に含浸させることができ、発泡性及び熱融着性に優れた難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることができる。
【0052】
更に、粉末状難燃剤は、難燃剤分散液中において攪拌していなくても均一に且つ安定的に分散しているので、難燃剤分散液中において粉末状難燃剤が二次凝集や沈降を生じるようなことはなく、粉末状難燃剤によって配管ラインが閉塞するなどの問題は発生しない。
【0053】
そして、本発明の難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、各難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に粉末状難燃剤を良好に含浸させることができ、得られる難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は発泡成形性に優れていることから、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡成形させて得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体には硬化粒が存在せず、ポリスチレン系樹脂発泡成形体をニクロムカットした場合にも良好な切断面を得ることができる。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
内容積100リットルの攪拌機付オートクレーブに、第三リン酸カルシウム(大平化学社製)120g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.4g、ベンゾイルパーオキサイド(純度75重量%)140g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート30g、イオン交換水40kg及びスチレン単量体40kgを供給して攪拌羽を100rpmの回転速度にて回転させて撹拌して水性懸濁液を形成した。
【0055】
次に、攪拌羽を100rpmの回転速度で回転させて水性懸濁液を攪拌しながら、オートクレーブ内の温度を90℃まで昇温して90℃にて6時間に亘って保持し、更に、オートクレーブ内の温度を120℃まで昇温し、120℃で2時間に亘って保持することによって、スチレン単量体を懸濁重合した。
【0056】
しかる後、オートクレーブ内の温度を25℃まで冷却してオートクレーブ内からポリスチレン粒子を取り出して洗浄、脱水を複数回に亘って繰り返し行い、乾燥工程を経た後、ポリスチレン粒子を分級して、粒子径が0.6〜0.85mmで且つ重量平均分子量が30万のポリスチレン粒子を得た。
【0057】
次に、別の100リットルの攪拌機付オートクレーブにイオン交換水30kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4g、ピロリン酸マグネシウム100gを供給した後、オートクレーブ内に上記ポリスチレン粒子11kgを種粒子として供給して攪拌して水中に均一に分散させた。
【0058】
又、イオン交換水6kgにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2g及びピロリン酸マグネシウム20gを分散させてなる分散液を作製する一方、スチレン単量体5kgに重合開始剤のベンゾイルパーオキサイド(純度75%)88g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート50gを溶解させてなるスチレン単量体溶液を作製し、このスチレン単量体溶液を上記分散液に添加してホモミキサーを用いて攪拌して乳濁化させて乳濁液を得た。
【0059】
そして、オートクレーブ内を75℃に加熱、保持した上でオートクレーブ内に上記乳濁液を添加し、ポリスチレン種粒子中にスチレン単量体及びベンゾイルパーオキサイドが円滑に吸収されるように30分間に亘って保持し、しかる後、オートクレーブ内を75℃から108℃まで0.2℃/分の昇温速度で昇温しながら、オートクレーブ内にスチレン単量体28kgを160分かけて連続的に滴下し、次に、スチレン単量体の滴下が終了してから20分後に、1℃/分の昇温速度で120℃まで昇温して90分間に亘って保持してシード重合によりポリスチレン粒子を得た。又、スチレン単量体は全て重合に用いられていた。
【0060】
又、イオン交換水2kgに界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8g及び難水溶性無機塩として複分解法で得られたピロリン酸マグネシウム20gを添加して攪拌した後、可塑剤としてアジピン酸ジイソブチル(田岡化学工業株式会社製 商品名「DI4A」)308g及び難燃剤としてテトラブロモシクロオクタン(第一工業製薬社製 商品名「ピロガードFR−200」)330gを常温にて添加して、ホモミキサー(特殊機化工業社製 商品名「T.K.ホモミクサー MARKII fmodel」)を用いて7000rpmの回転速度で30分間に亘って攪拌して難燃剤分散液を作製した。
【0061】
次に、オートクレーブ内を1℃/分の降温速度にて90℃まで冷却した上で、オートクレーブ内に難燃助剤としてジクミルパーオキサイド132gを供給した後、上記難燃剤分散液をオートクレーブ内に供給した。
【0062】
そして、オートクレーブ内に難燃剤分散液を供給してから30分経過後にオートクレーブを密閉し、しかる後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン(重量比)=30/70)2640gと、ペンタン(イソペンタン/ノルマルペンタン(重量比)=20/80) 1100gとを窒素加圧によってオートクレーブ内に30分間で圧入し、その状態で3時間保持した。
【0063】
しかる後、オートクレーブ内を25℃まで冷却し、オートクレーブ内から難燃性発泡性ポリスチレン粒子を取り出して洗浄、脱水を複数回に亘って繰り返し行い、乾燥工程を経た後、難燃性発泡性ポリスチレン粒子を分級して粒子径が0.85〜1.2mm、平均粒子径が1.1mmで且つ重量平均分子量が30万の難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、難燃剤分散液中の粉末状難燃剤及び可塑剤は全てポリスチレン粒子に含浸されていた。
【0064】
(実施例2)
難燃剤分散液の作製において、テトラブロモシクロオクタンを330gの代わりに440gとした以外は実施例1と同様にして難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0065】
(実施例3)
難燃剤分散液の作製において、テトラブロモシクロオクタンを330gの代わりに220gとした以外は実施例1と同様にして難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0066】
(実施例4)
難燃剤分散液の作製において、テトラブロモシクロオクタンを330gの代わりに660gとした以外は実施例1と同様にして難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0067】
(実施例5)
難燃剤分散液の作製において、テトラブロモシクロオクタンの代わりにテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)を用いた以外は実施例1と同様の要領で難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0068】
(実施例6)
難燃剤分散液の作製において、アジピン酸ジイソブチル308gの代わりにトルエン(東燃ゼネラル石油社製 商品名「トルエン」)308gを、テトラブロモシクロオクタンを330gの代わりに528g用いたこと以外は、実施例1と同様にして難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0069】
(実施例7)
実施例1のシード重合で得られたポリスチレン粒子をオートクレーブから取り出して洗浄、脱水を複数回に亘って繰り返し行い、乾燥工程を経た後、ポリスチレン粒子を分級して、粒子径が0.85〜1.2mm、平均粒子径が1.1mm、重量平均分子量が30万のポリスチレン粒子を得た。
【0070】
次に、100リットルの攪拌機付オートクレーブに、イオン交換水36kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6g及びピロリン酸マグネシウム150gを供給し、更に、上記のポリスチレン粒子44kgを添加して攪拌し水中に分散させた後、オートクレーブ内を1℃/分の昇温速度で90℃まで昇温し、90℃に保持した。
【0071】
しかる後、オートクレーブ内に難燃助剤としてジクミルパーオキサイド132gを供給した後、実施例1で作製した難燃剤分散液をオートクレーブ内に供給した。
【0072】
そして、オートクレーブ内に難燃剤分散液を供給してから30分経過後にオートクレーブを密閉し、しかる後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン(重量比)=30/70)2640gと、ペンタン(イソペンタン/ノルマルペンタン(重量比)=20/80) 1100gとを窒素加圧によってオートクレーブ内に30分間で圧入し、その状態で3時間保持した。
【0073】
しかる後、オートクレーブ内を25℃まで冷却し、オートクレーブ内から難燃性発泡性ポリスチレン粒子を取り出して洗浄、脱水を複数回に亘って繰り返し行い、乾燥工程を経た後、難燃性発泡性ポリスチレン粒子を分級して粒子径が0.85〜1.2mm、平均粒子径が1.1mmで且つ重量平均分子量が30万の難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0074】
(実施例8)
難燃剤分散液の作製において、複分解法で得られたピロリン酸マグネシウムを用いなかったこと以外は実施例1と同様の要領で難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0075】
(比較例1)
難燃剤分散液の代わりに粉末状のテトラブロモシクロオクタン330gをオートクレーブ内に直接、供給したこと以外は実施例1と同様にして難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0076】
(比較例2)
難燃剤分散液の作製において、アジピン酸ジイソブチル及びピロリン酸マグネシウムを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、難燃剤分散液を調整後、難燃剤が沈降したため、オートクレーブ添加直前に再度、難燃剤分散液を攪拌した上でオートクレーブ内に添加した。
【0077】
(比較例3)
難燃剤分散液の作製において、アジピン酸ジイソブチルを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、難燃剤分散液を調整後、難燃剤が沈降したため、オートクレーブ添加直前に再度、難燃剤分散液を攪拌した上でオートクレーブ内に添加した。
【0078】
(比較例4)
難燃剤分散液の作製において、アジピン酸ジイソブチルを308gの代わりに88gに、テトラブロモシクロオクタンを330gの代わりに440gとしたこと以外は、実施例1と同様にして難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、難燃剤分散液を調整後、難燃剤が沈降したため、オートクレーブ添加直前に再度、難燃剤分散液を攪拌した上でオートクレーブ内に添加した。
【0079】
(比較例5)
難燃剤分散液の作製において、アジピン酸ジイソブチルを308gの代わりに1100gに、テトラブロモシクロオクタンを330gの代わりに1100gとしたこと以外は、実施例1と同様にして難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0080】
(比較例6)
難燃剤分散液の作製において、アジピン酸ジイソブチルを308gの代わりに1100gに、テトラブロモシクロオクタンを330gの代わりに132gとしたこと以外は、実施例1と同様にして難燃性発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0081】
なお、難燃剤分散液中において、水性媒体を100重量部とした時の粉末状難燃剤、可塑剤、界面活性剤及び難水溶性無機塩のそれぞれの含有量、並びに、難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、ポリスチレン樹脂粒子100重量部当りの粉末状難燃剤量及び可塑剤量を表1、2に示した。
【0082】
〔難燃剤の沈降評価〕
難燃剤分散液を作製してから30分間に亘って静置した後、オートクレーブ内に供給する前に、難燃剤分散液中に難燃剤が沈降しているか否かを目視観察した。
【0083】
〔難燃剤分散液中における難燃剤の平均粒子径〕
測定装置(ベックマンコールター社製 商品名「コールターマルチサイザーIII」)を用いて、内径が400μmのアパチャー・チューブ及び電解液(ベックマンコールター社製商品名「アイソトン−II」)を用いて、難燃剤分散液中の難燃剤の平均粒子径を測定し、その結果を表1に示した。なお、難水溶性無機塩を用いている場合には、塩酸にて難水溶性無機塩を分解した上で測定した。
【0084】
〔ポリスチレン発泡成形体の成形〕
得られた難燃性発泡性ポリスチレン粒子40kg、並びに、表面処理剤としてポリエチレングリコール20g、ステアリン酸亜鉛60g、脂肪酸トリグリセライド(理研ビタミン社製 商品名「リケマールVT−50」)40g及び脂肪酸モノグリセライド(理研ビタミン社製 商品名「リケマールS−100P」)20gをタンブラーミキサーに供給し、30分間に亘って撹拌して難燃性発泡性ポリスチレン粒子の表面に表面処理剤を被覆した。
【0085】
次に、難燃性発泡性ポリスチレン粒子を15℃の保冷庫にて48時間に亘って保管した後、特許庁公報 57(1982)−133〔3347〕周知・慣用技術集(発泡成形)第39頁に記載の発泡層上面検出器までの容積量が350リットルである円筒型バッチ式加圧予備発泡機に1ショット当たり難燃性発泡性ポリスチレン粒子5.8kgを供給して水蒸気により2分間加熱しポリスチレン予備発泡粒子を得た。
【0086】
しかる後、上記ポリスチレン予備発泡粒子を室温雰囲気下で24時間に亘って放置する一方、縦1840×横930mm×高さ530mmの直方体形状のキャビティを有する金型を備えたブロック成形機(笠原工業株式会社製 商品名「PEONY‐205DS」)を用意し、この金型のキャビティ内にポリスチレン予備発泡粒子を充填して0.07MPa(ゲージ圧)の水蒸気を金型のキャビティ内に20秒間に亘って圧入することによってポリスチレン予備発泡粒子を二次発泡させ、次に、金型内圧力が−0.01MPaとなるまで金型を冷却して直方体形状の難燃性ポリスチレン発泡成形体を得た。その後、難燃性ポリスチレン発泡成形体を70℃の乾燥室にて3日間に亘って保管した。
【0087】
〔予備発泡粒子の結合〕
上述の要領で得られたポリスチレン予備発泡粒子をW1g用意し、このポリスチレン予備発泡粒子を目開きが1cmの篩でふるい、篩上に残ったポリスチレン予備発泡粒子の重量W2を測定して、下記式に基づいて予備発泡粒子の結合度を算出し、その結果を表1、2に示した。
予備発泡粒子の結合度(重量%)=100×W2/W1
【0088】
〔ポリスチレン発泡成形体のニクロムカット〕
上述の要領で得られた難燃性ポリスチレン発泡成形体を長辺1840mmで且つ短辺930mmの面が下となるようにしてニクロムカット機の台上に載置し、直径が0.4mmのニクロム線を高さ方向に50mm間隔で互いに平行に10本、張設し、ブロック送り速度600mm/分、電流3A/本の条件下にて難燃性ポリスチレン発泡成形体をその高さ方向に50mm間隔毎にニクロムカットして平板形状のスライス品を得た。
【0089】
得られたスライス品の切断面に発生した凹凸状のスジを目視にて数え、1m2当りのスジの本数を算出し、その結果を表1、2に示した。
【0090】
〔燃焼性試験〕
得られた難燃性ポリスチレン発泡成形体から縦200mm×横25mm×高さ10mmの直方体形状の試験片5個をバーチカルカッターにて切り出し、60℃オーブンで1日間養生後、JIS A9511−2006の測定方法Aに準じて測定を行い、5個の試験片の平均値を求め、消炎時間とし、下記基準に基づいて総合的に評価し、その結果を表1、2に示した。なお、上記JIS規格では消炎時間が3秒以内である必要があり、2秒以内であれば好ましく、1秒以内であればより好ましい。
×・・・消炎時間が3秒を超えているか、又は、試験片の1個でも残じんがあるか若し
くは燃焼限界指示線を超えて燃焼する。
○・・・消炎時間が3秒以内であり、5個のサンプル全てにおいて、残じんがなく燃焼
限界指示線を超えて燃焼しない。
◎・・・消炎時間が1秒以内であり、5個のサンプル全てにおいて、残じんがなく燃焼
限界指示線を超えて燃焼しない。
【0091】
〔融着率〕
ニクロムカットにより得られた下から6枚目のスライス品(縦1840mm×横930mm×厚み50mm)の上面における長辺方向の中央部分に、短辺方向に沿ってカッターナイフで深さ5mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿ってスライス品を手で二分割して縦920mm×横930mm×厚み50mmの分割片を得た。
【0092】
得られた分割片の破断面において、発泡粒子内で破断している粒子数(a)と、発泡粒子同士の界面で破断している粒子数(b)とを数え、下記式に基づいて融着率を算出し、その結果を表1、2に示した。
融着率(%)=100×粒子数(a)/(粒子数(a)+粒子数(b))
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる前又は含浸中に、粉末状難燃剤を水性媒体中に分散させてなる難燃剤分散液を上記水性懸濁液中に供給して、上記ポリスチレン系樹脂粒子中に上記粉末状難燃剤を含浸させて難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する製造方法であって、上記難燃剤分散液は、水性媒体100重量部、上記粉末状難燃剤5〜40重量部、界面活性剤0.005〜0.10重量部及び可塑剤を含有し且つ上記粉末状難燃剤量と上記可塑剤量との比(可塑剤量/粉末状難燃剤量)が0.4〜7であることを特徴とする難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
難燃剤分散液中に分散した粉末状難燃剤の平均粒子径が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
難燃剤分散液中に難水溶性無機塩を含有させていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の難燃性発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。

【公開番号】特開2008−163118(P2008−163118A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352441(P2006−352441)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】