説明

雨水利用システムおよび雨水利用方法

【課題】雨水の利用を促進し、水道として供給される上水の使用量を大幅に削減することにより、生活環境を向上し、あわせて地球環境の保全に寄与する。
【解決手段】本発明にかかる雨水利用システムの代表的な構成は、住宅に降る雨水を収集する集水部と、集水部が収集した雨水を浄化して上中水を生成する雨水浄化部と、雨水浄化部が浄化した上中水を貯留する上中水貯槽と、上中水貯槽に貯留された上中水を住宅の第1水利用設備140に供給する第1給水部と、水利用設備の排水を浄化して中水を生成する排水浄化部と、排水浄化部が浄化した中水を貯留する中水貯槽と、中水貯槽に貯留された中水を住宅の第2水利用設備170に供給する第2給水部と、第2水利用設備170の排水を下水施設へと排出する排水設備と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を生活用水として利用する雨水利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在わが国の一般家庭においては、生活用水のほとんどを上水(水道水)によってまかなっている。上水は経口しても安全なように行政によって厳しく水質が管理されており、浄水場によって浄化処理を行ってから各家庭に供給されている。
【0003】
しかし、一般家庭において本質的に必要とする水質は様々であり、代表的なところでは水洗トイレの便器洗浄水や修景用水(池や噴水の水)、散水(植木に撒く水)などは、経口用水ほどの水質は必要でない。一方、水道水のうち飲用など経口水への利用は全体の使用量の10%未満であって、残りの90%以上は入浴や洗濯、水洗トイレなどにおける使用となっている。したがってこれらの使用方法においては過剰品質の水を使用していることになり、水にかかるエネルギーおよびコストを浪費しているということができる。それにもかかわらず、住宅の屋根に降った雨や雪は大部分が樋を通って下水管に放出されており、利用されていない場合がほとんどである。
【0004】
従来からも、雨水を中水(雑用水)としてこれらの用途に用いることが提案および実行されている。例えば特許文献1(特開2002−054187号公報)には、雨水を貯留して風呂や洗濯、トイレなどに利用する雨水利用システムが提案されている。特に特許文献1は、生活用水を雨水のみでまかなうことは困難であることから、水枯渇時に雨水配管系統に上水を自動的に給水する構成が開示されている。
【0005】
また特許文献2(特開平10−337557号公報)には、一度使用した排水を浄化して中水として再利用する技術が開示されている。特許文献2には、排水を浄化し上水を補給しながら半永久的に循環させて再利用することにより、雨水貯留槽の水量を一定に保持する雨水及び中水の循環利用装置が提案されている。
【0006】
一方、近年は都市の舗装化が進み、ヒートアイランドによって集中豪雨が頻発するようになってきている。ところが舗装化により地面の吸水量が減っていることから、降水が一気に中小河川に集中して氾濫の原因となり、局所的水害をもたらしている。特許文献3(特開2007−051462号公報)には、道路の路床に貯水槽を設置し、雨水を貯留してヒートアイランド現象による路面の温度上昇を抑制すると共に、集中豪雨の際の道路の冠水を緩和させる構成が開示されている。
【特許文献1】特開2002−054187号公報
【特許文献2】特開平10−337557号公報
【特許文献3】特開2007−051462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、従来からも雨水を貯留して中水(雑用水)として利用するシステムはあり、また排水を浄化して再利用するシステムもあった。
【0008】
しかし、特許文献1の構成においては、確かに雨水の利用によって上水の使用量は削減されるが、利用した雨水はそのまま下水道へ排出されてしまう。このため貯留した雨水はすぐに尽きてしまうこととなり、雨水が枯渇すると上水を補給する必要がある。雨水の供給が不安定であるからといって上水を補給することでは、上水の使用量の大幅な削減は期待できず、まだ雨水の利用が充分であるとはいえない。
【0009】
また特許文献2の構成においては、住宅におけるいかなる排水も浄化して、中水として再び使用する構成となっている。しかし家庭の排水には比較的清浄なものと著しく汚染されているものがあり、いかなる排水も浄化しうる浄化設備は、大がかりなものとなってしまう。このため浄化設備が大きくなって設置が困難となったり、また浄化設備の価格も高額になってしまったりするおそれがある。
【0010】
また特許文献3の構成においては、雨水の利用方法としては1つの解決ではあるが、雨水は道路の冷却に使用されるのみであって、住宅の使用水量を削減しうるものではない。
【0011】
また大地震などでライフラインである水道が機能しなくなった場合、飲用水を確保しなければならない。現在は被害を受けていない地域から被災地に飲用水や食料を輸送しているが、震災時には輸送手段も不全となっている可能性が高く、各戸で貯水するシステムの構築は日本ばかりでなく世界の都市生活者にとっても、地方行政機関にとってもメリットが多く、解決が急がれる課題である。
【0012】
そこで本発明は、雨水の利用を促進し、水道として供給される上水の使用量を大幅に削減することにより、生活環境を向上し、あわせて地球環境の保全に寄与することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らが検討したところ、住宅で使用される水の水質は用途に応じて求められる水質が異なるところ、住宅から排水される水の水質も同様に、用途によってある程度は予測(期待)できることに着目した。また、住宅における水の利用態様を見直したところ、飲用や食用としての利用のほか、水の洗浄力(溶解力)を利用した風呂や洗濯、水の流動性と搬送力を利用した水洗トイレの便器洗浄水など、水の異なる性質(機能)を利用していることに着眼した。そして、水の用途は風呂設備や洗濯設備などの水利用設備に応じて特定でき、また利用態様に応じて求められる水質が異なることを鑑みて、清浄度の差分のみを浄化すれば雨水を再利用できることに想到し、さらに研究を重ねることによって本発明を完成するに到った。
【0014】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明にかかる雨水利用システムの代表的な構成は、住宅に降る雨水を収集する集水部と、集水部が収集した雨水を浄化して上中水を生成する雨水浄化部と、雨水浄化部が浄化した上中水を貯留する上中水貯槽と、上中水貯槽に貯留された上中水を住宅の第1水利用設備に供給する第1給水部と、第1水利用設備の排水を浄化して中水を生成する排水浄化部と、排水浄化部が浄化した中水を貯留する中水貯槽と、中水貯槽に貯留された中水を住宅の第2水利用設備に供給する第2給水部と、第2水利用設備の排水を下水施設へと排出する排水設備と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
中水とは、上水と下水の間に位置づけられ、排水を浄化して再利用する水をいう。本発明に定義する上中水とは、上水と中水の間に位置づけられる水であって、雨水を浄化して得られる水である。
【0016】
上記構成によれば、雨水を浄化した上中水を住宅の第1水利用設備において利用し、第1水利用設備の排水を浄化して第2水利用設備で利用することにより、雨水を複数回利用することができる。したがって雨水を効率的に利用することができ、雨水の供給が不安定であるとしても、貯留した雨水がすぐに枯渇してしまうことはない。このため、上水の使用量を大幅に削減することが可能である。
【0017】
また雨水のみを浄化して上中水を生成することにより、非常時には飲用水として利用することができる。これにより地震などの天災によりライフラインである水道が機能しなくなった場合であっても、救援を待つまでもなく飲用水を確保することができる。
【0018】
また各住宅に雨水を貯留することによって、集中豪雨が発生したとしてもバッファとして機能し、その流出量を削減することができる。したがって道路の冠水を防止し、また河川の氾濫を抑制することが可能となる。
【0019】
これらのことから、雨水の利用を促進し、水道として供給される上水の使用量を大幅に削減することができるため、生活環境を向上し、あわせて地球環境の保全に寄与することができる。
【0020】
さらに、集水部が収集した雨水から夾雑物を除去するストレーナと、夾雑物を除去した雨水を貯留して異物を沈殿分離させる分離槽を備え、雨水浄化部は、分離槽の上澄み液を浄化してもよい。
【0021】
住宅に降りそそいだ雨を収集する場合、屋根から雨樋を通じて収集することとなる。この場合において雨水には落ち葉や砂が混入するおそれがある。そこでストレーナによって夾雑物を除去し、分離槽において砂などの異物を沈殿分離させることにより、ほとんどの固形異物を除去することができる。したがってフィルタなどを用いて容易に所定の水質まで浄化することができると共に、フィルタの寿命を延ばし、メンテナンスの頻度を低下させることが可能となる。
【0022】
第1水利用設備は、風呂設備、洗濯設備、または飲用水設備であってもよく、第2水利用設備はトイレ設備であってもよい。
【0023】
上述したように雨水のみを浄化して上中水を生成することから、人間の肌に触れる風呂水として利用することができ、また人間の肌に触れる衣服の洗濯にも利用できると共に、非常時には飲用水としても利用することが可能である。そしてこれらの設備から排出される排水は屎尿を含まず、また台所排水のように調味料や油分を含まないことから、簡易な浄化によって中水として再利用することが可能となる。
【0024】
雨水浄化部および排水浄化部は異物を濾過するフィルタを有し、排水浄化部が有するフィルタは、雨水浄化部が有するフィルタよりも除去する異物が粗くてもよい。
【0025】
上中水は肌に触れたり飲用にしたりする可能性があるため、水質を高く維持するためのフィルタが必要である。一方、第1水利用設備からの排水には洗剤などの成分が溶解している場合があるが、中水では水の搬送力を利用するためにその成分には高い水質が要求されないため、簡易な浄化でよい。すなわち用途に応じた適切な浄化を行うことにより、浄化設備を簡略にし、またメンテナンスコストを抑えることができる。
【0026】
雨水浄化部または排水浄化部は、精密濾過膜を有していてもよい。
【0027】
精密濾過膜は、目が細かく、固形異物はもちろん、細菌や化学分子までも除去し、除濁、精製をすることができる。精密濾過膜としては、例えば中空糸膜型濾過フィルタを用いることができる。
【0028】
また、本発明にかかる雨水利用方法の代表的な構成は、住宅の水利用設備を、上水を利用する上水利用設備と、雨水を浄化した上中水を利用する第1水利用設備と、少なくとも第1水利用設備からの排水を浄化した中水を利用する第2水利用設備とに区分し、雨水を収集および浄化して上中水を生成し、生成した上中水を第1水利用設備に供給し、一の第1水利用設備または複数の第1水利用設備の少なくとも1つからの排水を浄化して中水を生成し、生成した中水を第2水利用設備に供給し、第2水利用設備の排水を下水施設へと排出することを特徴とする。
【0029】
上述した、雨水利用システムの技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該雨水利用方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、雨水の利用を促進し、水道として供給される上水の使用量を大幅に削減することにより、生活環境を向上し、あわせて地球環境の保全に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明にかかる雨水利用システムおよび雨水利用方法の実施形態について説明する。図1は本実施形態にかかる雨水利用システムの構成を説明する図、図2は分離槽を説明する図、図3は雨水浄化部および排水浄化部の例を説明する図である。なお、以下の実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0032】
図1示す雨水利用システム100の概略は、雨水を浄化して上中水とし、上中水を住宅の第1水利用設備で使用し、その排水を浄化して中水とし、中水を住宅の第2水利用設備で使用するものである。すなわち、雨水を複数回利用するシステムである。なお、図1の住宅の水利用設備は、上水をそのまま利用する上水利用設備(例えば、通常の飲用、炊事・調理用などの水道設備)と、雨水を浄化した上中水を利用する第1水利用設備と、少なくとも第1水利用設備からの排水を浄化した中水を利用する第2水利用設備とに区分されている。
【0033】
ここで中水とは一般に知られた用語であり、上水と下水の間に位置づけられ、雨水や排水を浄化して再利用する水をいう。しかし本発明においては、雨水を含まず、排水を浄化した水を中水と称する。そして本発明に定義する上中水とは、上水と中水の間に位置づけられる水であって、雨水を浄化して得られる水である。雨水は河川水より数段水質がよいため、地域によってはそのまま浴用水として使用する場合もあり、適切に浄化処理を行うことによって飲用にも用いることができる。なおプール水や親水用水は非常時の飲料用水源として期待されつつあるが、雨水の浄化水である上中水もこれらと同等以上の水質を容易に担保することができる。
【0034】
第1水利用設備は、例えば風呂設備、洗濯設備、または飲用水設備とすることができる。すなわち、原則としては経口飲用水ではなく、かつ肌に水が触れる可能性のある設備である。ただし上中水は非常時においては飲用水としても利用することが想定されるため、飲用水設備を第1水利用設備としてもよい。第2水利用設備はトイレ設備、散水設備、池や噴水などの修景設備であってもよい。すなわち、原則として人間の肌に水が触れない水である。
【0035】
上述したように雨水のみを浄化して上中水を生成することから、人間の肌に触れる風呂水として利用することができ、また人間の肌に触れる衣服の洗濯にも利用できると共に、非常時には飲用水としても利用することが可能である。そしてこれらの設備から排出される排水は屎尿を含まず、また台所排水のように調味料や油分を含まないことから、簡易な浄化によって中水として利用することが可能となる。
【0036】
すなわち、住宅で使用される水の水質は用途に応じて求められる水質が異なるところ、住宅から排水される水の水質も同様に、用途によってある程度は予測(期待)できる。また、住宅における水の利用態様を見直したところ、飲用や食用としての利用のほか、水の洗浄力(溶解力)を利用した風呂や洗濯、水の流動性と搬送力を利用した水洗トイレの便器洗浄水など、水の異なる性質(機能)を利用している。
【0037】
そして、水の用途は風呂設備や洗濯設備などの水利用設備に応じて特定でき、これに伴って必要な水質の程度も知ることができる。あわせて水利用設備に応じてその排水の水質も予測がつくため、特定の設備からの排水のみを軽微に浄化すれば中水として利用することができるため、清浄度の差分のみを浄化すれば雨水を再利用することができる。
【0038】
そこで、上中水は水の洗浄力(溶解力)を利用した風呂や洗濯、および飲用として利用し、中水は水の流動性と搬送力を利用した水洗トイレの便器洗浄水として利用する。このように水の異なる性質(機能)と求められる水質を対応させて利用することにより、雨水を複数回利用することができる。
【0039】
図1を参照すると、雨水利用システム100は、住宅102の屋根104に降った雨を集水部としての雨樋(軒樋106および竪樋108)によって集水する。集水部が集めた水は分離槽110に貯留され、固形異物を分離される。
【0040】
図2に示すように、分離槽110の前には、雨水から落ち葉などの夾雑物を除去するストレーナ112を備えている。分離槽110は夾雑物を除去した雨水を貯留して異物を沈殿分離させる枡であって、その上澄み液が雨水浄化部120へと供給される。また分離槽110には、落下してきた水が沈殿物を巻き上げないようにするための整流板114、庭散水用弁116、沈殿物を排出するための排泥ドレーン118を備えている。
【0041】
住宅に降りそそいだ雨を収集する場合、屋根104から雨樋を通じて収集することとなる。この場合において雨水には落ち葉や砂が混入するおそれがある。そこでストレーナ112によって夾雑物を除去し、分離槽110において砂などの異物を沈殿分離させることにより、ほとんどの固形異物を除去することができる。これにより浄化部にフィルタなどを用いて容易に所定の水質まで浄化することができると共に、フィルタの寿命を延ばし、メンテナンスの頻度を低下させることが可能となる。
【0042】
ふたたび図1を参照すると、分離槽110において固形異物を除去された水は、雨水浄化部120によって浄化されて上中水となり、上中水貯槽130に貯留される。雨水浄化部120としては、生物処理槽、濾過装置、膜分離活性汚泥処理装置、膜分離装置、活性炭処理装置、薬品注入設備、消毒槽、汚泥処理装置、脱臭装置、凝集処理槽、オゾン処理装置などを単体で、または組み合わせて構成することができる。特に微細な細孔を有するフィルタを用いた濾過装置が安価でメンテナンス性もよいため、好適に用いることができる。
【0043】
図3は雨水浄化部の例としての精密濾過膜である中空糸膜型濾過フィルタを説明する図である。雨水浄化部120は、フィルタ素材からなる中空糸122(細い管)を内包している。両端の入口124aおよび出口124bから中空糸122の内部に原液を通すと、中空糸122の内表面および外表面において2度濾過されて、排水口126から濾過水が排出される。すなわち中空糸膜型濾過フィルタは、目が細かく極めて微細な異物まで除去することができるため、固形異物はもちろん、細菌や化学分子までも除去し、除濁、精製をすることができる。
【0044】
また図1を参照すると、上中水貯槽130に貯留された上中水は、第1給水部132によって第1水利用設備140の例としての風呂設備142、洗面設備144、洗濯設備146、または飲用水設備148へと供給される。また必要に応じて、給湯器134によって加熱されて湯として供給される。なお飲用水設備148に供給する場合には、さらに精密な濾過フィルタ136を介して異物や細菌を浄化することが好ましい。
【0045】
第1水利用設備140で利用された水は、排水浄化部150によって浄化されて中水となり、中水貯槽160に貯留される。中水は第2給水部162によって、第2水利用設備170の例としてのトイレ設備172へと供給される。トイレ設備172の排水は、排水設備の例としての配水管180によって下水施設へと排出される。なお中水貯槽160が一杯である場合には、弁を切り換えることにより、第1水利用設備140の排水をそのまま配水管180へと導いてもよい。
【0046】
雨水浄化部120や濾過フィルタ136、排水浄化部150に用いる精密濾過膜としては、上記中空糸膜型濾過フィルタのほか、一般的なMF膜(Microfiltlation Membrane:精密濾過膜)やUF膜(Ultrafiltration Membrane:限外濾過膜)を用いることができる。MF膜は孔の大きさが概ね50nm〜10μm程度であって、微生物やウイルス、大半の胞子や芽胞を除去することができる。UF濾過膜は孔の大きさが概ね2nm〜200nmであって、細菌やウイルス、タンパク質などを除去することができる。これらの濾過膜は、例えばポリエチレンやポリオレフィンを用いて形成することができる。
【0047】
ここで排水浄化部150は、雨水浄化部120と同様の機構によって構成することができるが、上中水よりも中水の方が求められる水質が低い(より多い不純物が許容される)。このため、排水浄化部150における浄化の程度は、雨水浄化部120におけるそれよりも低く設定することができる。
【0048】
換言すれば、排水浄化部150が有するフィルタは、雨水浄化部120が有するフィルタよりも除去する異物が粗くてもよい。上中水は肌に触れたり飲用にしたりする可能性があるため、水質を高く維持するためのフィルタが必要である。一方、第1水利用設備140からの排水には洗剤などの成分が溶解している場合があるが、中水では水の搬送力を利用するためにその成分には高い水質が要求されないため、簡易な浄化でよい。すなわち用途に応じた適切な浄化を行うことにより、浄化設備を簡略にし、またメンテナンスコストを抑えることができる。
【0049】
図4は水の用途と水質の関係を説明する図である。図4には、修景用水(中水)、親水用水(中水)、公衆浴場水、風呂用水、プール水、および上中水が挙げられている。修景用水は人の肌に触れないことを前提とする中水、親水用水は人の肌に触れる可能性のある中水である。各種の水は用途に応じて色度や濁度、BOD(Biochemical oxygen demand:生物化学的酸素要求量:高いほど水質が悪い)などが定められている。一方、水洗トイレの便器洗浄水は求められる水質が低く、衛生上問題がないこと、利用上不快感を与えないこと、施設構造上問題がないこと、施設の維持管理上支障がないことなどが基準とされている。
【0050】
これらに対し、上中水は、雨水のみを原水として浄化することにより、公衆浴場水を上回る水質を容易に達成可能である。そして中水としてトイレの便器洗浄水に利用するのであれば、第1水利用設備140の排水と第2水利用設備170の清浄度の差分のみを浄化すれば利用することができるため、軽微に浄化するだけで雨水を再利用することができる。
【0051】
図5は水の使用量について説明する図である。図5(a)は3人家族の標準的家庭での水の使用量である。平均的に、飲用水及び調理であわせて45L、その他をあわせて一日あたり575L(一人一日あたり200L弱)を使用していることがわかる。
【0052】
図5(b)は4〜5人家族の標準的家庭において、本発明に係る雨水利用システムを適用した場合の水の使用量である。飲用水および調理等のために上水(経口水)を50L、上中水(風呂、シャワー、洗濯など)のために200L、中水(トイレ、散水など)のために350Lとする。上中水に対する中水の不足分350−200=150Lを上水でまかなうと考えると、使用される上水の総量は50+150=200Lとなる。水の総量は50+200+350=600Lであるから、200/600=33.3%である。すると、実に水道水の総使用量の66.6%を削減できることになる。したがって平均的には、60〜70%の上水の使用量を削減できることがわかる。このように、本発明に係る雨水利用システムは、雨水を上中水として使用した後に中水として二度目の使用をすることができるので、従来よりも上水使用量を大幅に減らすことができ、水道水にかかるコストを低減できるばかりか、水道水を製造するために必要なエネルギーを削減し、COの排出量を低減させることが可能である。なお、図5(b)の「下水(排水)」の水量540Lは、中水の使用量350Lに第1の水利用設備から直接排水される水量(190L)が加算されたものである。
【0053】
上中水貯槽130および中水貯槽160の容量は住宅の規模によって適宜設定することができるが、例えば家族が4〜5人であれば一人につき1m程度を蓄積することとし、合計量で4mから5mとすることができる。これにより一日あたり500Lであるとして、8〜10日分の水を貯留しておくことが可能となる。
【0054】
上記説明した如く、雨水を浄化した上中水を住宅の第1水利用設備140において利用し、第1水利用設備140の排水を浄化して第2水利用設備170で利用することにより、雨水を複数回利用することができる。したがって雨水を効率的に利用することができ、雨水の供給が不安定であるとしても、貯留した雨水がすぐに枯渇してしまうことはない。このため、上水の使用量を大幅に削減することが可能である。
【0055】
また雨水のみを浄化して上中水を生成することにより、簡易な浄化装置を用いても、非常時には飲用水として利用できるほどの水質を得ることができる。これにより地震などの天災によりライフラインである水道が機能しなくなった場合であっても、救援を待つまでもなく飲用水を確保することができる。
【0056】
また各住宅に雨水を貯留することによって、集中豪雨が発生したとしてもバッファとして機能し、その流出量を削減することができる。したがって道路の冠水を防止し、また河川の氾濫を抑制することが可能となる。
【0057】
これらのことから、雨水の利用を促進し、水道として供給される上水の使用量を大幅に削減することができるため、生活環境を向上し、あわせて地球環境の保全に寄与することができる。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0059】
例えば、上記実施形態において、雨水はその全部を上中水を生成するのみに用いるよう説明したが、一部の雨水を雨水浄化部120を通さずに中水貯槽160へと導き、中水として利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、雨水を生活用水として利用する雨水利用システムとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態にかかる雨水利用システムの構成を説明する図である。
【図2】分離槽を説明する図である。
【図3】雨水浄化部および排水浄化部の例を説明する図である。
【図4】水の用途と水質の関係を説明する図である。
【図5】水の使用量について説明する図である。
【符号の説明】
【0062】
100 …雨水利用システム
102 …住宅
104 …屋根
106 …軒樋
108 …竪樋
110 …分離槽
112 …ストレーナ
114 …整流板
116 …庭散水用弁
118 …排泥ドレーン
120 …雨水浄化部
122 …中空糸
124a …入口
124b …出口
126 …排水口
130 …上中水貯槽
132 …第1給水部
134 …給湯器
136 …濾過フィルタ
140 …第1水利用設備
142 …風呂設備
144 …洗面設備
146 …洗濯設備
148 …飲用水設備
150 …排水浄化部
160 …中水貯槽
162 …第2給水部
170 …第2水利用設備
172 …トイレ設備
180 …配水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅に降る雨水を収集する集水部と、
前記集水部が収集した雨水を浄化して上中水を生成する雨水浄化部と、
前記雨水浄化部が浄化した上中水を貯留する上中水貯槽と、
前記上中水貯槽に貯留された上中水を住宅の第1水利用設備に供給する第1給水部と、
前記第1水利用設備の排水を浄化して中水を生成する排水浄化部と、
前記排水浄化部が浄化した中水を貯留する中水貯槽と、
前記中水貯槽に貯留された中水を住宅の第2水利用設備に供給する第2給水部と、
前記第2水利用設備の排水を下水施設へと排出する排水設備と、
を備えたことを特徴とする雨水利用システム。
【請求項2】
さらに、前記集水部が収集した雨水から夾雑物を除去するストレーナと、
夾雑物を除去した雨水を貯留して異物を沈殿分離させる分離槽を備え、
前記雨水浄化部は、前記分離槽の上澄み液を浄化することを特徴とする請求項1に記載の雨水利用システム。
【請求項3】
前記第1水利用設備は、風呂設備、洗濯設備、または飲用水設備であって、前記第2水利用設備はトイレ設備であることを特徴とする請求項1に記載の雨水利用システム。
【請求項4】
前記雨水浄化部および排水浄化部は異物を濾過するフィルタを有し、
前記排水浄化部が有するフィルタは、前記雨水浄化部が有するフィルタよりも除去する異物が粗いことを特徴とする請求項1に記載の雨水利用システム。
【請求項5】
前記雨水浄化部または排水浄化部は、精密濾過膜を有することを特徴とする請求項1記載の雨水利用システム。
【請求項6】
住宅の水利用設備を、上水を利用する上水利用設備と、雨水を浄化した上中水を利用する第1水利用設備と、少なくとも第1水利用設備からの排水を浄化した中水を利用する第2水利用設備とに区分し、
雨水を収集および浄化して上中水を生成し、
生成した上中水を前記第1水利用設備に供給し、
一の第1水利用設備または複数の第1水利用設備の少なくとも1つからの排水を浄化して中水を生成し、
生成した中水を前記第2水利用設備に供給し、
前記第2水利用設備の排水を下水施設へと排出することを特徴とする雨水利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−106605(P2010−106605A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281062(P2008−281062)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】